説明

遮光膜及びその製造方法、並びに固体撮像素子

【課題】平面上のみならず、角度を持った側壁面等にも容易に形成され、且つ、赤外線の遮光と赤外線の反射抑制が可能な遮光膜を提供する。
【解決手段】少なくとも一方の面に受光素子を備えた撮像素子部を有し、且つ、該撮像素子部を備えた面に立上がる立上壁を有する固体撮像素子用の遮光膜であって、(A)黒色顔料を含む被分散体と分散剤と有機溶媒とを含み、該被分散体の90%以上が15nm以上30nm以下の粒径を有する顔料分散物、(B)重合性化合物、及び(C)重合開始剤を含有する感放射線性組成物を、該基板の受光素子を備えた面と、該受光素子を備えた面に立上がる立上壁の表面にスプレー塗布して形成された固体撮像素子用遮光膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタンブラック等の黒色顔料を含む遮光膜及びその製造方法、並びに固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子には、ノイズ発生防止、画質の向上等を目的として遮光膜が設けられる。
【0003】
固体撮像素子用の遮光膜を形成するための組成物としては、カーボンブラックやチタンブラック等の黒色色材を含有する感放射線性組成物が知られている。
具体的には、光学濃度の向上等を目的として、特定のX線回折ピーク強度比を有するチタンブラックを含む感放射線性組成物(例えば、特許文献1〜2参照)や、特定の窒素濃度や特定の結晶子径を有するチタンブラックを含む感放射線性組成物(例えば、特許文献3〜5参照)が検討されている。
【0004】
また、薄膜で高い遮光性を得ることを目的として、チタンブラックと樹脂成分とを含有する遮光膜形成用組成物が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【0005】
近年、固体撮像素子の小型化や薄型化、高感度化に伴い、一方の面に撮像素子部を有するシリコン基板において、撮像素子部形成領域以外の領域への可視光の透過や、反射による光のノイズを防止する要求が強くなっている。
その理由は、固体撮像素子の基体であるシリコン基板が可視光に対し高い透過率を示すためであり、更に、固体撮像素子に備えられる撮像素子が可視光に高い感度を示すために、入射面のみならず側面からの反射光を抑制することが高解像度の達成において重要となっているためである。
また、固体撮像素子の形状が複雑化し、従来の平面、即ち、重力方向に対して水平な面のみならず、基板の側面など、水平面に対し角度を有する面にも遮光膜を形成し、可視光の遮光のみならず、反射も抑制してノイズをより低減することが要求されている。
【0006】
従来は、ウエハレベルレンズや撮像素子部が形成された平面やその裏面に遮光膜を形成するため、スピンコートなどが適用されていたが、例えば、ユニット中に撮像素子部が形成された構造の場合、平面のみならず、側面にも遮光膜を効率よく形成するためには、新たな塗布法を適用することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3724269号公報
【特許文献2】国際公開第2005/037926号パンフレット
【特許文献3】特開2006−182627号公報
【特許文献4】特開2006−206891号公報
【特許文献5】特開2006−209102号公報
【特許文献6】特開2007−115921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の遮光膜形成用の感放射線組成物はスピンコートを想定しており、且つ、表面の凹凸についても小さい組成物を想定していたため、平面のみならず、ユニットの側面などの水平面に対し角度を持った面にも効率よく塗布することができる遮光膜が望まれていた。
【0009】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、平面上のみならず、角度を持った側壁面等にも容易に形成され、且つ、可視光の遮光と可視光の反射抑制が可能な遮光膜を提供することにある。
また、本発明の目的は、可視光の遮光と可視光の反射防止能に優れた遮光膜の製造方法、及び、得られた遮光膜を備えた、可視光の透過や反射によるノイズが低減された固体撮像素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 少なくとも一方の面に受光素子を備えた撮像素子部を有し、且つ、該撮像素子部を備えた面に立上がる立上壁を有する固体撮像素子用の遮光膜であって、(A)黒色顔料を含む被分散体と分散剤と有機溶媒とを含み、該被分散体の90%以上が15nm以上30nm以下の粒径を有する顔料分散物、(B)重合性化合物、及び(C)重合開始剤を含有する感放射線性組成物を、該基板の受光素子を備えた面と、該受光素子を備えた面に立上がる立上壁の表面にスプレー塗布して形成された固体撮像素子用遮光膜。
<2> 前記スプレー塗布の散布角度がスプレーノズルの吐出口に対し、20°以上160°以下である<1>に記載の固体撮像素子用遮光膜。
<3> 前記感放射線性組成物の25℃における粘度が2mPa・s以上50mPa・s以下である<1>又は<2>に記載の固体撮像素子用遮光膜。
<4> 表面粗さ(Ra)が10000Å以上70000Å以下である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の固体撮像素子用遮光膜。
<5> 前記被分散体が、チタンブラックを含有する<1>〜<4>のいずれか1項に記載の固体撮像素子用遮光膜。
<6> 前記被分散体が、チタンブラックとSi原子とを含み、該被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)が0.20以上0.50以下である有する<1>〜<5>のいずれか1項に記載の固体撮像素子用遮光膜。
【0011】
<7> (A)黒色顔料を含む被分散体を含有する顔料分散物、(B)重合性化合物、及び(C)重合開始剤を含有し、且つ、前記被分散体の90%以上が15nm以上30nm以下の粒径を有する感放射線性組成物を、少なくとも一方の面に受光素子を備えた撮像素子部を有し、且つ、該撮像素子部を備えた面に立上がる立上壁を有する固体撮像素子のシリコン基板と立上壁との表面にスプレー塗布して感放射線性層を形成する工程と、前記感放射線性層を露光する工程と、を有する固体撮像素子用遮光膜の製造方法。
<8> 前記前記感放射線性層を露光する工程が、前記感放射線性層をパターン状に露光する工程であり、さらに、露光後に現像する工程を有する<7>に記載の固体撮像素子用遮光膜の製造方法。
<9> 少なくとも一方の面に受光素子を備えた撮像素子部を有し、且つ、該撮像素子部を備えた面に立上がる立上壁を有する固体撮像素子のシリコン基板及び立上壁の表面に、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の固体撮像素子用遮光膜を有する固体撮像素子。
<10> 少なくとも一方の面に受光素子を備えた撮像素子部を有し、且つ、該撮像素子部を備えた面に立上がる立上壁を有するシリコン基板と、前記シリコン基板の前記撮像素子部が設けられた面に設けられ、前記撮像素子部の少なくとも1部が露出するようにパターニングされた<1>〜<6>のいずれか1項に記載の遮光膜と、前記撮像素子部を有する面の立上がる立上壁表面に設けられた<1>〜<6>のいずれか1項に記載の遮光膜と、を有する<9>に記載の固体撮像素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、平面のみならず、角度を持った面にも容易に形成され、且つ、赤外線の遮光と赤外線の反射抑制が可能な遮光膜を提供することができる。
また、本発明によれば、赤外遮光能と赤外反射防止能に優れた遮光膜の製造方法、及び、得られた遮光膜を備えた、赤外光によるノイズが低減された固体撮像素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の遮光膜が形成された基板の一態様を示す概略断面図である。
【図2】本発明の一例に係る固体撮像素子を備えたカメラモジュールの構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の一例に係る固体撮像素子の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪固体撮像素子用遮光膜≫
本発明の固体撮像素子用遮光膜は、少なくとも一方の面に受光素子を備えた撮像素子部を有し、且つ、該撮像素子部を備えた面に立上がる立上壁を有する固体撮像素子用の遮光膜であって、(A)黒色顔料を含む被分散体と分散剤と有機溶媒とを含み、該被分散体の90%以上が15nm以上30nm以下の粒径を有する顔料分散物、(B)重合性化合物、及び(C)重合開始剤を含有する感放射線性組成物を、該基板の受光素子を備えた面と、該受光素子を備えた面に立上がる立上壁の表面にスプレー塗布して形成されたことを特徴とする。
【0015】
本発明の遮光膜が形成される基板は、図示されない撮像素子部が設けられた平面状の底部12に立上がる立上壁14を有する基板である。図1は、本発明に係る基板10の一態様を示す概略断面図である、本実施形態では、立上壁14は、平面状の底部12の端部に設けられた、平面状の底部12との角度(図1中にαで示す角度)が90°のものを示すが、立上壁14の角度はこれに限定されず角度αは平面状の底部に対し、0°を超え180°未満のいずれの角度でもよいが、特に垂直に近い角度で立ち上がる立上壁、角度αが45°以上135°以下、特には90°近傍の角度で立ち上がる立上壁に用いたときに、一工程で均一な塗布、遮光膜を形成しうるという本発明の効果が著しいといえる。平面状の基板の底部12に設けられる立上壁14は、例えば、撮像レンズを有するレンズホルダー側面や、複数設けられた受光素子部の隔壁、受光素子面と相対する上部壁などを構成する。
【0016】
本発明の遮光膜形成に用いられる感放射線性組成物は、黒色顔料を含む被分散体の粒径が微細であり、且つ、分散性に優れるため、スプレー塗布に好適に使用される。スプレー塗布適性向上の観点からは、感放射線性組成物は25℃における粘度が2mPa・s以上50mPa・s以下の範囲であることが好ましい。ここで、25℃の粘度は、E型粘度計を使用して測定した値を用いている。25℃における粘度は、5mPa・s以上40mPa・s以下の範囲であることがより好ましい。
なお、スプレー塗布では、スプレー塗布時のノズル詰まりがないという観点からはスプレー塗布時の粘度は、15mPa・s以下であることが好ましく、また、水平面以外の面、例えば垂直面などにスプレーにより適用された場合、液だれがなく均一な塗膜を形成しうるという観点からは、粘度は4mPa・s以上であることが好ましい。
粘度は、例えば、感放射線性組成物に含まれるバインダーポリマーの種類や量、有機溶剤の種類や量、固形分の割合などを調整したり、増粘剤を添加したり、することで制御される。
【0017】
スプレー塗布適性に優れた感放射線性組成物の条件としては、黒色顔料を含む被分散体の粒径として、被分散体の90%以上が粒径15nm〜30nmであること、これらの被分散物の分散性が良好であることなどが挙げられる。
【0018】
近年、固体撮像素子の小型化や薄型化、高感度化に伴い、一方の面(以下、「第1の主面」や「オモテ面」ともいう)に撮像素子部を有するシリコン基板の他方の面(以下、「第2の主面」や「裏面」ともいう)側から該シリコン基板に入射される赤外光を遮光する要求が強くなっている。また、これらをユニットとして、その側面にも遮光膜を形成するという要求もある。このような観点かは、水平面と垂直面の両方に一工程で遮光膜を形成しうるスプレー塗布法は重要である。ここで、スプレー塗布法により形成された遮光膜は、赤外遮光能及び赤外反射防止能に優れるため、上記要求を満たす遮光膜として好適ではある。
本発明におけるスプレー塗布は、公知のスプレー塗布方法及び噴射装置を適用すればよい。
本発明において、「赤外」とは、700nm〜1200nmの波長領域を指し、「可視光」とは400nm〜800nmの波長領域を指す。
また、「赤外光あるいは可視光を遮光する」とは、前記した波長領域全域にわたり透過率が10%以下である状態を指す。また、「可視域の反射を防止する」とは、450nm付近の波長領域で、表面の反射率が1%以下である状態を指す。反射率は以下に示す方法で測定される。
【0019】
また、本明細書中において撮像素子部とは、複数の撮像素子(CCD、CMOS、等)が、(例えばマトリクス状に)配列されている領域を指す。
本明細書中では、撮像素子部が設けられたシリコン基板を「固体撮像素子」や「固体撮像素子基板」ということがある。前記固体撮像素子には、更に、その他の要素(カラーフィルタ、マイクロレンズ等)が形成されていてもよい。
【0020】
以下、本発明の遮光膜の形成に用いられる感放射線性組成物に含有される各成分について順次説明する。
<(A)黒色顔料を含む被分散体と分散剤と有機溶媒とを含み、該被分散体の90%以上が15nm以上30nm以下の粒径を有する顔料分散物>
本発明における顔料分散物は、チタンブラック粒子などの黒色顔料を含む被分散体を含有する。
(a−1)黒色顔料
黒色顔料としては、広範な波長領域に吸収を有し、遮光膜の形成に有用な公知の黒色顔料であれば特に制限なく用いられる。本発明に好適に使用される黒色顔料は、以下の吸光度を示すものが好ましく挙げられる。
即ち、評価対象顔料を有機溶剤に分散させて調製した顔料分散物を、2.5μmの膜厚となるように、ガラス基板上に塗布して塗膜を形成し、その後、90℃120秒でプリベークを行い、有機溶剤を揮発させて、顔料含有塗膜膜(乾燥膜)を形成する。形成された膜の波長740nmにおける吸収を測定し、吸光度ABSを得る。
得られた膜のABSの値から顔料のみを2.5μm塗布した場合の計算上の吸光度ABS(r)を、顔料と分散剤の重量比率およびそれぞれの比重から顔料と分散剤の体積比率を計算することで算出し、顔料の吸光度ABS(r)の値が1.0以上となるものを、可視域の遮光性が本発明に係る遮光膜の形成に有用なレベルに到達しているものと考え、本発明における好適な黒色顔料とする。
このような黒色顔料としては、例えば、チタンブラック(ABS(r)=11.0)、カーボンブラック(ABS(r)=10.4、)、セシウム酸化タングステン(ABS(r)=1.1)などが挙げられ、チタンブラック粒子を含むことが好ましい。
本発明における顔料分散は、黒色顔料を含有する。該黒色顔料は、分散組成物中において被分散体として含有されるものであり、被分散体の90%以上が15nm以上30nm以下の粒径を有することを要する。
本発明における黒色顔料の好ましい態様としては、チタンブラック粒子が挙げられ、特に被分散体がチタンブラック粒子とSi原子を含み、該被分散体中のSi原子とTi原子との含有比が0.20以上0.5以下の範囲であることが好ましい。
ここで、本発明における「黒色顔料を含む被分散体」は、黒色顔料が一次粒子の状態であるもの、凝集体(二次粒子)の状態であるものの双方を包含する。
本発明における被分散体の粒径とは、被分散体の粒子直径を意味し、粒子直径とは、粒子の外表面の投影面積と等しい面積をもつ円の直径である。粒子の投影面積は、電子顕微鏡写真での撮影により得られた面積を測定し、撮影倍率を補正することにより得られる。
【0021】
本発明の遮光膜は、感放射線性組成物を硬化して得られた硬化膜(遮光膜)中に含有される黒色顔料を含む被分散体についても、その90%以上が15nm以上30nm以下の粒径を有するものである。
【0022】
本発明においては、黒色顔料を含む被分散体の90%以上が15nm以上30nm以下の粒径を有することで、感放射線性組成物をスプレー塗布する際にノズル詰まりがよくせいされ、形成された遮光膜は均一な膜厚を有する。また、この粒径とすることで、パターン形成時の未露光部の残渣物が低減される。これは、特定粒径とすることで、遮光膜の硬化に使用される放射線の吸収や散乱が軽減され、且つ、粒径の小さい被分散体が、遮光膜の形成における未硬化の感放射線性組成物(特に、チタンブラック粒子)の除去性向上に寄与するためと考えられる。なお、残渣物は、チタンブラック等の黒色顔料、樹脂成分等の感放射線性組成物に由来する成分を含むものである。
【0023】
本発明における黒色顔料としては、チタンブラック粒子が好ましい。これは、チタンブラック粒子は、紫外から赤外までの広範囲に亘る波長領域の光に対する遮光性に優れ、特に可視光のみならず赤外光に対する遮光性(赤外遮光性)に優れるためである。
【0024】
(A)顔料分散物又は感放射線性組成物に含有される被分散体について、その90%が15nm以上30nm以下の粒径を有するか否かを判断するには、下記に示す方法(1)を用いる。
【0025】
また、本発明に係る感放射線性組成物を硬化して得られた硬化膜(遮光膜)に含有される被分散体について、その90%が30nm以下の粒径を有するか否かを判断するには、下記に示す方法(2)を用いる。
【0026】
<方法(1)>
チタンブラック分散物又は感放射線性組成物を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAとも略称する。)により500倍に希釈し、カーボン薄膜上に滴下、乾燥させて投下型電子顕微鏡を用いて形態観察写真を撮影する。得られた写真から、粒子400個について外表面の投影面積を求め、この面積に相当する円の直径を算出し、度数分布を評価する。
【0027】
<方法(2)>
製膜された基板の断面を、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、S−3400N(商品名))及びエネルギー分散型X線分析装置(EDAX社製Genesis(商品名))により、形態観察写真及びTiとSiの元素マップを撮影する。得られた写真から、Ti元素が検出されている粒子400個について外表面の投影面積を求め、この面積に相当する円の直径を算出し、度数分布を評価する。
【0028】
以下、チタンブラック粒子について、更に詳細に説明する。
本発明においてチタンブラック粒子とは、チタン原子を有する黒色粒子であり、好ましくは低次酸化チタンや酸窒化チタン等の黒色粒子である。
【0029】
チタンブラック粒子は、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、粒子表面を修飾することが可能である。粒子表面の修飾としては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等で被覆処理が可能であり、また、特開2007−302836号公報に示されるような撥水性物質での処理も可能である。
【0030】
チタンブラック粒子の市販品の例としては、チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M−C、13R、13R−N、13M−T(商品名:以上、三菱マテリアル電子化成(株)製)、ティラック(Tilack)D(商品名:赤穂化成(株)製)などが挙げられる。
【0031】
チタンブラック粒子の製造方法としては、二酸化チタンと金属チタンの混合体を還元雰囲気で加熱し還元する方法(特開昭49−5432号公報に記載の方法)、四塩化チタンの高温加水分解で得られた超微細二酸化チタンを水素を含む還元雰囲気中で還元する方法(特開昭57−205322号公報に記載の方法)、二酸化チタンまたは水酸化チタンをアンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭60−65069号公報、特開昭61−201610号公報に記載の方法)、二酸化チタン又は水酸化チタンにバナジウム化合物を付着させ、アンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭61−201610号公報に記載の方法)などがあるが、これらに限定されるものではない。
本発明に適用されるチタンブラック粒子としては、一次粒径の小さいものであることが好ましい。
【0032】
本発明に用いられる顔料分散物は、被分散体としてチタンブラック粒子のみを含有するものであってもよく、その他の黒色顔料や吸収調整のための他の色相の顔料を含んで、2種以上の顔料を含有してもよい。
【0033】
また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、チタンブラック粒子と共に、分散性、着色性等を調整する目的で、Cu、Fe、Mn、V、Ni等の複合酸化物、酸化コバルト、酸化鉄、カーボンブラック、アニリンブラック等からなる黒色顔料を1種又は2種以上組み合わせて、被分散体として併用してもよい。この場合、被分散体の50質量%以上をチタンブラック粒子からなる被分散体が占めることが好ましい。
【0034】
また、被分散体がチタンブラック粒子とSi原子とを含み、該被分散体中のSi原子とTi原子との含有比が0.20以上0.50以下の範囲であることが好ましい。
被分散体のSi/Tiを0.20以上0.50以下の範囲とするためには、以下のような手段を用いることができる。
例えば、酸化チタンとシリカ粒子とを、例えば、酸化チタン100gに対しシリカ粒子を12.5gの比で混合し、分散機を用いて分散することにより分散組成物を得て、この分散組成物を高温(例えば、850〜1000℃)にて還元処理することにより、チタンブラック粒子を主成分とし、SiとTiとを含有する被分散体を得ることができる。このときすでに還元処理済みのチタンブラックにシリカ粒子を混合するだけでは本発明の効果を奏するSiとTiとを含有する被分散体を得ることができない。
また、例えば、特開2008−266045公報の段落番号〔0005〕(6)及び同段落番号〔0016〕〜〔0021〕に記載の方法に類似の方法により作製することができる。
【0035】
本発明に係る感放射線性組成物は、顔料分散物に由来する黒色顔料を含む被分散体を含有する。該感放射線性組成物及びこれを硬化して得られた硬化膜(遮光膜)中に含有されるチタンブラック粒子を含む被分散体についても、被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)が0.20以上0.50以下の範囲であり、その好ましい範囲についても、上述と同様である。
【0036】
本発明においては、被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)は、既述のように、0.20以上0.50以下であることが好ましく、0.35以上0.45以下の範囲であることがより好ましい。この範囲であると、顔料分散物の製造が容易であり、分散安定性が向上するために、例えば、スプレー塗布適性に優れ、粒子の沈降や凝集に起因するスプレー塗布時の噴霧性の低下が抑制されるために、経時後でもスプレー塗布法による均一な塗膜の形成が可能となり、高い遮光能を有する均一な遮光膜が、水平面のみならず垂直面や局面、あるいは、被塗布面に凹凸があった場合でも均一な遮光膜が容易に形成される。
また、上記のような被分散体の粒径が30nm以下であるために、さらにスプレー塗布適性が向上する。また、この被分散体のSi原子が含まれる成分が増すことにより、被分散体と分散剤との相互作用が大きくなり、パターン成形した上面の現像液耐性が向上することによってパターン上面の表面荒れが低減するという利点をも有するものと推測している。
【0037】
また、後述するように、遮光性の調整等を目的として、本発明の効果を損なわない限りにおいて、チタンブラック粒子などの黒色顔料と共に、他の着色剤(有機顔料や染料など)を所望により併用してもよい。
【0038】
(A)顔料チタンブラック分散物中の(a−1)チタンブラック粒子に代表される黒色顔料の含有量は、分散物の全質量に対し、5質量%〜60質量%であることが好ましく、10質量%〜50質量%であることがさらに好ましい。
また、感放射線性組成物中の(a−1)黒色顔料の含有量は、分散物の全質量に対し、2.5質量%〜30質量%であることが好ましく、5質量%〜20質量%であることがさらに好ましい
【0039】
(a−2)分散剤
(A)顔料分散物及び感放射線性組成物は(a−2)分散剤を含有する。
本発明における分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、顔料誘導体等を挙げることができる。
本発明における分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、及びブロック型高分子に分類することができる。
【0040】
本発明における分散剤は、チタンブラック粒子及び所望により併用する顔料等の被分散体の表面に吸着し、再凝集を防止するように作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。
一方で、本発明における分散剤は被分散体の表面を改質することで、分散樹脂の吸着を促進させる効果を有する。
【0041】
本発明に用いうる分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−101(商品名、ポリアミドアミン燐酸塩)、107(商品名、カルボン酸エステル)、110(商品名、酸基を含む共重合物)、130(商品名、ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170、180(商品名、高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(商品名、高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050、4010、4165(商品名、ポリウレタン系)、EFKA4330、4340(商品名、ブロック共重合体)、4400、4402(商品名、変性ポリアクリレート)、5010(商品名、ポリエステルアミド)、5765(商品名、高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(商品名、脂肪酸ポリエステル)、6745(商品名、フタロシアニン誘導体)、6750(商品名、アゾ顔料誘導体)」、味の素ファインテクノ(株)製「アジスパーPB821、PB822(商品名)」、共栄社化学(株)製「フローレンTG−710(商品名、ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(商品名、アクリル系共重合体)」、楠本化成(株)製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(商品名、脂肪族多価カルボン酸)、#7004(商品名、ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725(商品名)」、花王(株)製「デモールRN、N(商品名、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(商品名、芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(商品名、高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(商品名、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(商品名、ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(商品名、フタロシアニン誘導体)、22000(商品名、アゾ顔料誘導体)、13240(商品名、ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(商品名、末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(商品名、グラフト型高分子)」、日光ケミカル社製「ニッコールT106(商品名、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(商品名、ポリオキシエチレンモノステアレート)」等が挙げられる。また、川研ファインケミカル(株)製 ヒノアクトT−8000E(商品名)などの両性分散剤も挙げられる。
これらの分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
分散剤の酸価は、5.0mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは10mgKOH/g以上150mgKOH/g以下の範囲、更に好ましくは60mgKOH/g以上150mgKOH/g以下の範囲である。
分散剤の酸価が200mgKOH/g以下であれば、遮光膜を形成する際の現像時におけるパターン剥離がより効果的に抑えられる。また、分散剤の酸価が5.0mgKOH/g以上であればアルカリ現像性がより良好となる。また、分散剤の酸価が60mgKOH/g以上であれば、チタンブラック粒子の沈降をより抑制でき、粗大粒子数をより少なくすることができ、チタンブラック分散物又は感放射線性組成物の経時安定性をより向上できる。
【0043】
本発明において、分散剤の酸価は、例えば、分散剤中における酸基の平均含有量から算出することができる。また、分散剤の構成成分である酸基を含有するモノマー単位の含有量を変化させることで所望の酸価を有する樹脂を得ることができる。
【0044】
本発明における分散剤の重量平均分子量は、遮光膜を形成する際において、現像時のパターン剥離抑制と現像性の観点から、10,000以上300,000以下であることが好ましく、15,000以上200,000以下であることがより好ましく、20,000以上100,000以下であることが更に好ましく、25,000以上50,000以下であることが特に好ましい。なお、分散剤の重量平均分子量は、例えば、GPCによって測定することができる。
【0045】
(グラフト共重合体)
本発明においては、分散剤として、グラフト共重合体(以下、「特定樹脂」ともいう)を用いることも好ましい。分散剤としてグラフト共重合体を用いることで、分散性及び保存安定性をより向上させることができる。
【0046】
グラフト共重合体としては、水素原子を除いた原子数が40〜10000の範囲であるグラフト鎖を有するものが好ましい。この場合のグラフト鎖とは、共重合体の主鎖の根元から、主鎖から枝分かれしている基の末端までの部分を示す。
この特定樹脂は、チタンブラック粒子に分散性を付与しうる分散樹脂であり、優れた分散性と、グラフト鎖による溶媒との親和性を有するために、チタンブラック粒子の分散性、及び経時後の分散安定性に優れる。また、感放射線性組成物としたとき、グラフト鎖の存在により重合性化合物又はその他の併用可能な樹脂などとの親和性を有するので、アルカリ現像で残渣を生じにくくなる。
【0047】
また、この特定樹脂に、さらに、カルボン酸基などのアルカリ可溶性の部分構造を導入することで、アルカリ現像によるパターン形成のために現像性を付与する樹脂としての機能をも付与することができる。
従って、前記グラフト共重合体に、アルカリ可溶性の部分構造を導入することで、(A)顔料分散物は、チタンブラック粒子の分散に不可欠の分散樹脂自体がアルカリ可溶性を有することになる。このようなチタンブラック分散物を含有する感放射線性組成物は、露光部の遮光性に優れたものとなり、且つ、未露光部のアルカリ現像性が向上される。
【0048】
グラフト鎖が長くなると立体反発効果が高くなり分散性は向上するが、一方グラフト鎖が長すぎるとチタンブラックへの吸着力が低下して分散性は低下してしまう。このため、本発明で使用されるグラフト共重合体としては、グラフト鎖1本あたりの水素原子を除いた原子数が40〜10000であることが好ましく、グラフト鎖1本あたりの水素原子を除いた原子数が50〜2000であることがより好ましく、グラフト鎖1本あたりの水素原子を除いた原子数が60〜500であることがさらに好ましい。
【0049】
グラフト鎖のポリマー構造の例としては、ポリ(メタ)アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエーテルなどが挙げられる。グラフト鎖としては、グラフト部位と溶媒との相互作用性を向上させ、それにより分散性を高めるために、ポリ(メタ)アクリル、ポリエステル、又はポリエーテルを有するグラフト鎖であることが好ましく、ポリエステル又はポリエーテルを有するグラフト鎖であることがより好ましい。
【0050】
このようなポリマー構造をグラフト鎖として有するマクロモノマーの構造としては、ポリマー主鎖部と反応可能な置換基を有し、且つ本発明の要件を満たしていれば、特に限定されないが、好ましくは、反応性二重結合性基を有するマクロモノマーを好適に使用することができる。
【0051】
特定樹脂の合成に好適に用いられる市販のマクロモノマーとしては、AA−6(商品名、東亜合成(株)製)、AA−10(商品名、東亜合成(株)製)、AB−6(商品名、東亜合成(株)製)、AS−6(商品名、東亜合成(株)製)、AN−6(商品名、東亜合成(株)製)、AW−6(商品名、東亜合成(株)製)、AA−714(商品名、東亜合成(株)製)、AY−707(商品名、東亜合成(株)製)、AY−714(商品名、東亜合成(株)製)、AK−5(商品名、東亜合成(株)製)、AK−30(商品名、東亜合成(株)製)、AK−32(商品名、東亜合成(株)製)、ブレンマーPP−100(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPP−500(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPP−800(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPP−1000(商品名、日油(株)製)、ブレンマー55−PET−800(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPME−4000(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPSE−400(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPSE−1300(商品名、日油(株)製)、ブレンマー43PAPE−600B(商品名、日油(株)製)、などが用いられる。このなかでも、好ましくは、AA−6(商品名、東亜合成(株)製)、AA−10(商品名、東亜合成(株)製)、AB−6(商品名、東亜合成(株)製)、AS−6(商品名、東亜合成(株)製)、AN−6(商品名、東亜合成(株)製)、ブレンマーPME−4000(商品名、日油(株)製)などが用いられる。
【0052】
前記グラフト共重合体は、少なくとも下記式(1)〜式(4)のいずれかで表される構造単位を含むことが好ましく、少なくとも、下記式(1A)、下記式(2A)、下記式(3A)、下記式(3B)、及び前記(4)のいずれかで表される構造単位を含むことがより好ましい。
【0053】
【化1】

【0054】
式(1)〜式(4)において、W、W、W、及びWはそれぞれ独立に酸素原子或いはNHを表す。W、W、W、及びWは酸素原子であることが好ましい。
式(1)〜式(4)において、X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。X、X、X、X、及びXとしては、合成上の制約の観点からは、好ましくはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基であり、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であることがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0055】
式(1)〜式(4)において、Y、Y、Y、及びYは、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、該連結基は特に構造上制約されない。Y、Y、Y、又はYで表される2価の連結基として、具体的には、下記の(Y−1)〜(Y−21)の連結基などが例として挙げられる。下記に示した構造において、A、Bはそれぞれ、式(1)〜式(4)における左末端基及び右末端基との結合部位を意味する。下記に示した構造のうち、合成の簡便性から、(Y−2)又は(Y−13)であることがより好ましい。
【0056】
【化2】

【0057】
式(1)〜式(4)において、Z、Z、Z、及びZは、それぞれ独立に1価の有機基を表す。該有機基の構造は、特に限定されないが、具体的には、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基、及びアミノ基などが挙げられる。これらの中でも、Z、Z、Z、及びZで表される有機基としては、特に分散性向上の観点から、立体反発効果を有するものが好ましく、Z〜Zで表される有機基としては、それぞれ独立に炭素数5から24のアルキル基又は炭素数5から24のアルコキシ基が好ましく、その中でも、特に各々独立に炭素数5から24の分岐アルキル基を有するアルコキシ基或いは炭素数5から24の環状アルキル基を有するアルコキシ基が好ましい。また、Zで表される有機基としては、各々独立に炭素数5から24のアルキル基が好ましく、その中でも、特に各々独立に炭素数5から24の分岐アルキル基或いは炭素数5から24の環状アルキル基が好ましい。
【0058】
式(1)〜式(4)において、n、m、p、及びqは、それぞれ1から500の整数である。
式(3)において、pが2〜500のとき、グラフト共重合体中に複数存在するRは互いに同じであっても異なっていてもよい。式(4)において、qが2〜500のとき、グラフト共重合体中に複数存在するX及びRは互いに同じであっても異なっていてもよい。
また、式(1)及び式(2)において、j及びkは、それぞれ独立に、2〜8の整数を表す。式(1)及び式(2)におけるj及びkは、分散安定性、現像性の観点から、4〜6の整数が好ましく、5が最も好ましい。
【0059】
式(3)中、Rは分岐若しくは直鎖のアルキレン基を表し、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基であることがより好ましい。
式(4)中、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、この1価の有機基としては特に構造上限定はされない。Rとして好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基が挙げられ、更に好ましくは、水素原子、又はアルキル基である。該Rがアルキル基である場合、該アルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐状アルキル基、又は炭素数5〜20の環状アルキル基が好ましく、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基が特に好ましい。
式(4)中、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、この1価の有機基としては特に構造上限定はされない。Rとして好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基が挙げられ、更に好ましくは、水素原子、又はアルキル基である。該Rがアルキル基である場合、該アルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐状アルキル基、又は炭素数5〜20の環状アルキル基が好ましく、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基が特に好ましい。
【0060】
特定樹脂において、式(1)〜式(4)で表される構造単位は、質量換算で、特定樹脂の総質量に対し10%〜90%の範囲で含まれることが好ましく、30%〜70%の範囲で含まれることがより好ましい。式(1)〜式(4)で表される構造単位が、この範囲内で含まれるとチタンブラック粒子の分散性が高く、遮光膜を形成する際の現像性が良好である。
また、特定樹脂においては、2種以上の構造が異なるグラフト部位を含有することができる。
【0061】
前記式(1)で表される構造単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(1A)で表される構造単位であることがより好ましい。
また、前記式(2)で表される構造単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(2A)で表される構造単位であることがより好ましい。
【0062】
【化3】

【0063】
式(1A)中、X、Y、Z及びnは、前記式(1)におけるX、Y、Z及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(2A)中、X、Y、Z及びmは、前記式(2)におけるX、Y、Z及びmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
また、前記式(3)で表される構造単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(3A)又は式(3B)で表される構造単位であることがより好ましい。
【0064】
【化4】

【0065】
式(3A)又は(3B)中、X、Y、Z及びpは、前記式(3)におけるX、Y、Z及びpと同義であり、好ましい範囲も同様である。
特定樹脂としては、前記式(1A)で表される構造単位を有するものであることがより好ましい。
【0066】
特定樹脂には、グラフト部位以外にチタンブラック粒子などの黒色顔料と相互作用を形成しうる官能基を導入することができる。なお、以下、黒色顔料として好ましいチタンブラック粒子をもちぃいたばあいを例に挙げて説明するが、これに制限はされない。
このチタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基としては、例えば、酸基、塩基性基、配位性基、反応性を有する官能基等があげられ、特定樹脂には、酸基を有する構造単位、塩基性基を有する構造単位、配位性基を有する構造単位、反応性を有する構造単位を用いて導入される。
【0067】
チタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基である酸基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基などがあり、特に好ましいものは、チタンブラック粒子への吸着力が良好で、且つ、その分散性が高いカルボン酸基である。特定樹脂には、これらの酸基を1種或いは2種以上有してもよい。
また、このような酸基を導入することで、特定樹脂のアルカリ現像性を向上させるという利点をも有する。
特定樹脂に共重合成分として導入されうる酸基を有する構造単位の好適な含有量は、0.1モル%以上50モル%以下であり、特に好ましくは、アルカリ現像による画像強度のダメージ抑制という観点から、1モル%以上30モル%以下である。
【0068】
チタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基である塩基性基としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、N原子を含むヘテロ環、アミド基などがあり、特に好ましいものは、顔料への吸着力が良好で、且つ、その分散性が高い第3級アミノ基である。特定樹脂には、これらの塩基性基を1種或いは1種以上導入することができる。
特定樹脂に共重合成分として導入される場合、塩基性基を有する構造単位の好適な含有量は、特定樹脂における全構造単位に対し、0.01モル%以上50モル%以下であり、特に好ましくは、現像性阻害抑制という観点から、0.01モル%以上30モル%以下である。
【0069】
チタンブラック粒子等の黒色顔料と相互作用を形成しうる官能基である配位性基、及び反応性を有する基としては、例えば、アセチルアセトキシ基、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、酸無水物、酸塩化物などが挙げられる。特に好ましいものは、顔料への吸着力が良好で分散性が高いアセチルアセトキシ基である。特定樹脂には、これらの基を1種あるいは1種以上有してもよい。
特定樹脂共重合成分として導入されうる塩基性基を有する構造単位又は反応性を有する構造単位の好適な含有量は、特定樹脂における全構造単位に対し、0.5モル%以上50モル%以下であり、特に好ましくは、現像性阻害抑制という観点から、1モル%以上30モル%以下である。
【0070】
本発明における特定樹脂が、グラフト部位以外に、チタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基を有する場合、上述したような、各種のチタンブラック粒子と相互作用を形成しうる官能基を含有していればよく、これらの官能基がどのように導入されているかは特に限定はされないが、下記一般式(i)〜(iii)のいずれかで表される単量体から得られる構造単位の少なくとも1種を用いて導入されていることが好ましい。
【0071】
【化5】



【0072】
式(i)〜(iii)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、又は炭素原子数が1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す。
、R、及びRは、より好ましくは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数が1〜3のアルキル基であり、最も好ましくは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。R及びRは、それぞれ水素原子であることが特に好ましい。
Xは、酸素原子(−O−)又はイミノ基(−NH−)を表し、酸素原子であることが好ましい。
【0073】
式(i)〜(ii)中のLは、単結合又は2価の連結基を表す。該2価の連結基の例としては、2価の脂肪族基(例えば、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、及び置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(例えば、アリーレン基、及び置換アリーレン基)、2価の複素環基及びそれらと酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、イミノ基(−NH−)、置換イミノ基(−NR31−、ここでR31は脂肪族基、芳香族基又は複素環基)又はカルボニル基(−CO−)のうちの一つ以上との組合せ等が挙げられる。
【0074】
前記2価の脂肪族基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。前記脂肪族基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10が更に好ましい。脂肪族基は不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。また、脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、芳香族基および複素環基が挙げられる。
【0075】
前記2価の芳香族基の炭素原子数は、6〜20が好ましく、6〜15がさらに好ましく、6〜10が最も好ましい。また、前記芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、脂肪族基、芳香族基及び複素環基を挙げられる。
【0076】
前記2価の複素環基は、複素環として5員環又は6員環を有することが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環のうち1つ以上が縮合していてもよい。また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N−R32、ここでR32は脂肪族基、芳香族基または複素環基)、脂肪族基、芳香族基及び複素環基を挙げられる。
【0077】
Lは、単結合、アルキレン基又はオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であることが好ましい。オキシアルキレン構造は、オキシエチレン構造又はオキシプロピレン構造であることがより好ましい。また、Lはオキシアルキレン構造を2以上繰り返して含むポリオキシアルキレン構造を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン構造としてはポリオキシエチレン構造又はポリオキシプロピレン構造が好ましい。ポリオキシエチレン構造は、−(OCHCH−で表され、nは、2以上の整数が好ましく、2〜10の整数であることがより好ましい。
【0078】
式(i)〜(iii)中、Zは、グラフト部位と別にチタンブラックと相互作用を形成しうる官能基を表し、カルボン酸、第三級アミノ基であることが好ましく、カルボン酸であることがより好ましい。また、Yは、メチン基又は窒素原子を表す。
【0079】
式(iii)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、または炭素原子数が1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、−Z、又は−L−Zを表す。ここでL及びZは、上記におけるL及びZと同義であり、好ましい例も同様である。
、R、及びRとしては、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数が1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0080】
本発明においては、一般式(i)で表される単量体として、R、R、及びRがそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、Lがアルキレン基又はオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であって、Xが酸素原子又はイミノ基であって、Zがカルボン酸である化合物が好ましい。
【0081】
また、一般式(ii)で表される単量体として、Rが水素原子又はメチル基であって、Lがアルキレン基であって、Zがカルボン酸であって、Yがメチン基である化合物が好ましい。また、一般式(iii)で表される単量体として、R、R、及びRがそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、Lが単結合又はアルキレン基であって、Zがカルボン酸である化合物が好ましい。
【0082】
以下に、式(i)〜(iii)で表される単量体(化合物)の代表的な例を示す。
該単量体の例としては、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物(例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)とコハク酸無水物の反応物、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物とフタル酸無水物の反応物、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物とテトラヒドロキシフタル酸無水物の反応物、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物と無水トリメリット酸の反応物、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物とピロメリット酸無水物の反応物、アクリル酸、アクリル酸ダイマー、アクリル酸オリゴマー、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、4−ビニル安息香酸、ビニルフェノール、4−ヒドロキシフェニルメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0083】
特定樹脂中における酸性基を有する単量体などのチタンブラックと相互作用を形成しうる官能基の含有量は、チタンブラックとの相互作用、分散安定性、及び現像液への浸透性の観点から、特定樹脂に対して0.05質量%〜90質量%が好ましく、1.0質量%〜80質量%がより好ましく、10質量%〜70質量%が更に好ましい。
【0084】
さらに、本発明に係るチタンブラックの分散組成物に含まれる特定樹脂は、画像強度などの諸性能を向上する目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、前記グラフト部位を有する構造単位及びチタンブラックと相互作用を形成しうる官能基に加えて、さらに種々の機能を有する他の構造単位、例えば、分散物に用いられる分散媒との親和性を有する官能基、などを有する構造単位を共重合成分として含むことができる。
【0085】
特定樹脂に共重合可能な共重合成分の例としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0086】
これらを1種あるいは2種以上用いることができ、特定樹脂中、これら共重合成分の好適に使用される含有量は、0モル%以上90モル%以下であり、特に好ましくは、0モル%以上60モル%以下である。含有量が前記の範囲において十分なパターン形成が得られる。
【0087】
特定樹脂を合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0088】
このような特定樹脂の具体例としては、以下の例示化合物1〜55が挙げられる。なお、各構成単位(主鎖部分)の添数字は質量%である。
【0089】
【化6】



【0090】
【化7】



【0091】
【化8】




【0092】
【化9】




【0093】
【化10】



【0094】
【化11】



【0095】
【化12】



【0096】
【化13】



【0097】
【化14】



【0098】
【化15】



【0099】
【化16】



【0100】
【化17】



【0101】
【化18】



【0102】
【化19】



【0103】
【化20】

【0104】
本発明に係る(A)顔料分散物における分散剤の含有量としては、被分散体(チタンブラック粒子を含む被分散体及び他の着色剤を含む)の全固形分質量に対して、1質量%〜90質量%が好ましく、3質量%〜70質量%がより好ましい。
また、感放射線性組成物における分散剤の含有量としては、被分散体(チタンブラック粒子からなる被分散体及び他の着色剤を含む)の全固形分質量に対して、1質量%〜90質量%が好ましく、3質量%〜70質量%がより好ましい。
【0105】
(a−3)有機溶媒
本発明に用いられる(A)顔料分散物は、(a−3)有機溶媒を含有する。
有機溶媒の例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶媒を2種以上組み合わせて用いる場合、特に好ましくは、上記の3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液である。
チタンブラック分散物に含まれる有機溶媒の量としては、該分散物の全量に対し、10質量%〜80質量%であることが好ましく、20質量%〜70質量%であることがより好ましく、30質量%〜65質量%であることが更に好ましい。
また、感放射線性組成物に含まれる有機溶媒の量としては、該組成物の全量に対し、10質量%〜90質量%であることが好ましく、20質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜75質量%であることが更に好ましい。
【0107】
(B)重合性化合物
本発明の遮光膜形成に用いられる感放射線性組成物は、重合性化合物を含有する。
重合性化合物としては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物であることが好ましい。
【0108】
少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物の例としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号の各公報に記載のウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号の各公報に記載のポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレートを挙げることができる。
更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用できる。
【0109】
また、特開平10−62986号公報において一般式(1)及び(2)としてその具体例と共に記載の、前記多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も用いることができる。
【0110】
中でも、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらのアクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介してジペンタエリスリトールに連結している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0111】
また、特公昭48−41708号、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、及び特公平2−16765号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、及び特公昭62−39418号の各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、及び特開平1−105238号の各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(商品名、日本製紙ケミカル(株)製)、UA−7200」(商品名、新中村化学工業(株)製、DPHA−40H(商品名、日本化薬(株)製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(商品名、共栄社化学(株)製)などが挙げられる。
【0112】
また、酸基を有するエチレン性不飽和化合物類も好適であり、市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のカルボキシル基含有3官能アクリレートであるTO−756、及びカルボキシル基含有5官能アクリレートであるTO−1382などが挙げられる。
本発明に用いられる重合性化合物としては、4官能以上のアクリレート化合物がより好ましい。
【0113】
重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
2種以上の光重合性化合物を組み合わせて用いる場合、その組み合わせ態様は、感光性組成物に要求される物性等に応じて適宜設定することができる。光重合性化合物の好適な組み合わせ態様の一つとしては、例えば、前掲した多官能のアクリレート化合物から選択した2種以上の重合性化合物を組み合わせる態様が挙げられ、その一例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートの組み合わせが挙げられる。
重合性化合物の感光性樹脂成物中における含有量としては、質量換算で、全固形分100部に対して、3部〜55部が好ましく、より好ましくは10部〜50部である。
【0114】
(C)重合開始剤
本発明に係る感光性樹脂性組成物は、重合開始剤を含有する。
光重合開始剤は、光や熱により分解し、前述した重合性化合物の重合を開始、促進する化合物であり、波長300〜500nmの領域の光に対して吸収を有するものであることが好ましい。
【0115】
重合開始剤の具体的な例としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、有機過酸化化合物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、アシルホスフィン(オキシド)化合物が挙げられる。
より具体的な例としては、例えば、特開2006−78749号公報の段落番号[0081]〜[0100]、[0101]〜[0139]等に記載される重合開始剤が挙げられる。
前記重合開始剤としては、オキシムエステル化合物が特に好ましい。
【0116】
本発明にかかる感放射線性組成物における重合開始剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分中、0.1質量%〜30質量%であることが好ましく、1質量%〜25質量%がより好ましく、2質量%〜20質量%が更に好ましい。
【0117】
(F)その他の添加剤
本発明に係る感放射線性組成物には、(A)顔料分散物、(B)重合性化合物、及び(C)重合開始剤に加え、目的に応じて種々の添加剤を含むことができる。
【0118】
(F−1)バインダーポリマー
感放射線性組成物においては、皮膜特性向上などの目的で、必要に応じて、更にバインダーポリマーを使用することができる。
バインダーポリマーとしては、線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような「線状有機ポリマー」としては、公知のものを任意に使用できる。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とするために、水或いは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或いは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。
【0119】
例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーの例としては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、カルボキシル基を有するモノマーを単独或いは共重合させた樹脂、酸無水物を有するモノマーを単独或いは共重合させ酸無水物ユニットを加水分解若しくはハーフエステル化若しくはハーフアミド化させた樹脂、エポキシ樹脂を不飽和モノカルボン酸及び酸無水物で変性させたエポキシアクリレート等が挙げられる。カルボキシル基を有するモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4−カルボキシルスチレン等があげられ、酸無水物を有するモノマーの例としては、無水マレイン酸等が挙げられる。
また、同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体も例として挙げられる。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0120】
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特願平10−116232号等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、低露光適性の点で有利である。
【0121】
また、欧州特許第993966号、欧州特許第1204000号、特開2001−318463号等の各公報に記載の酸基を有するアセタール変性ポリビニルアルコール系バインダーポリマーは、膜強度、現像性のバランスに優れており、好適である。更に、この他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0122】
特に、これらの中でも、〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体、及び〔アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体は、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
【0123】
本発明に係る感放射線性組成物に使用されるバインダーポリマーの重量平均分子量は、現像時のパターン剥離抑制と現像性の観点から、1,000〜300,000であることが好ましく、1,500〜250,000であることがより好ましく、2,000〜200,000であることが更に好ましく、2,500〜100,000であることが特に好ましい。バインダーポリマーの数平均分子量については、好ましくは1000以上であり、更に好ましくは1500〜25万の範囲である。バインダーポリマーの多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
【0124】
これらのバインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよい。
【0125】
本発明で用いうるバインダーポリマーは、従来公知の方法により合成できる。合成する際に用いられる溶媒の例としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いられる。
また、バインダーポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤の例としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等公知の化合物が挙げられる。
【0126】
種々のバインダーポリマーの中でも、側鎖に二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂を含有することで、特に露光部の硬化性と未露光部のアルカリ現像性の双方を向上させることができる。
側鎖に二重結合を有するアルカリ可溶性バインダーポリマーは、その構造中に、樹脂がアルカリ可溶となるための酸基と、少なくとも1つの不飽和二重結合を有することで、非画像部除去性などの諸性能を向上させる。このような部分構造を有するバインダー樹脂は、特開2003−262958号公報に詳細に記載され、ここに記載の化合物を本発明にも使用することができる。
【0127】
なお、バインダーポリマーの重量平均分子量は、例えば、GPCによって測定することができる。
【0128】
本発明に係る感放射線性組成物におけるバインダーポリマーの含有量は、組成物の全固形分中に対して、0.1質量%〜7.0質量%であることが好ましく、遮光膜の剥がれ抑制と現像残渣抑制の両立の観点からは、0.3質量%〜6.0質量%であることがより好ましく、1.0〜5.0質量%であることがさらに好ましい。
【0129】
(F−2)着色剤
本発明では、所望の遮光性を発現させるべく、公知の有機顔料や染料などの無機顔料以外の着色剤を併用することが可能である。
【0130】
併用することができる着色剤としては、有機顔料では、例えば、特開2008−224982号公報段落番号〔0030〕〜〔0044〕に記載の顔料や、C.I.Pigment Green 58、C.I.Pigment Blue 79のCl置換基をOHに変更したものなどが挙げられ、これらのなかでも、好ましく用いることができる顔料として、以下のものを挙げることができる。但し、本発明に適用しうる着色剤は、これらに限定されるものではない。
【0131】
C.I.Pigment Yellow 11,24,108,109,110,138,139,150,151,154,167,180,185,
C.I.Pigment Orange 36,38,62,64,
C.I.Pigment Red 122,150,171,175,177,209,224,242,254、255
C.I.Pigment Violet 19,23,29、32,
C.I.Pigment Blue 15:1,15:3,15:6,16,22,60,66,
C.I.Pigment Green 7,36,37、58
C.I.Pigment Black 1
【0132】
着色剤として使用可能な染料の例としては、特に制限はなく、公知の染料を適宜選択して使用できる。例えば、特開昭64−90403号公報、特開昭64−91102号公報、特開平1−94301号公報、特開平6−11614号公報、特登2592207号、米国特許第4,808,501号明細書、米国特許第5,667,920号明細書、米国特許第5,059,500号明細書、特開平5−333207号公報、特開平6−35183号公報、特開平6−51115号公報、特開平6−194828号公報、特開平8−211599号公報、特開平4−249549号公報、特開平10−123316号公報、特開平11−302283号公報、特開平7−286107号公報、特開2001−4823号公報、特開平8−15522号公報、特開平8−29771号公報、特開平8−146215号公報、特開平11−343437号公報、特開平8−62416号公報、特開2002−14220号公報、特開2002−14221号公報、特開2002−14222号公報、特開2002−14223号公報、特開平8−302224号公報、特開平8−73758号公報、特開平8−179120号公報、特開平8−151531号公報等に記載の色素が挙げられる。
【0133】
染料が有する化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アンスラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ペンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の化学構造を有する染料が挙げられる。
【0134】
本発明に係る感放射線性組成物における着色剤としては、該組成物が必須に含有するチタンブラック粒子と組み合わせた場合において、硬化性と遮光性を両立しうるという観点から、オレンジ顔料、赤色顔料、及び、バイオレット顔料からなる群より選択される1種以上の有機顔料が好ましく、最も好ましくは赤色顔料との組み合わせである。
【0135】
本発明におけるチタンブラック粒子と組み合わせて用いられるオレンジ顔料、赤色顔料、及びバイオレット顔料としては、例えば、前記で例示した「C.I.Pigment Orange」、「C.I.Pigment Red」、「C.I.Pigment Violet」に属する各種顔料から、目的とする遮光性に応じて適宜選択すればよい。遮光性向上の観点からは、C.I.Pigment Violet 29、C.I.Pigment Orange 36,38,62,64、C.I.Pigment Red 177,254、255などが好ましい。
【0136】
(F−3)増感剤
感放射線性組成物には、重合開始剤のラジカル発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、増感剤を含有していてもよい。
増感剤としては、用いられる重合開始剤を、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。
増感剤の好ましい例としては、特開2008−214395号公報の段落番号〔0085〕〜〔0098〕に記載された化合物を挙げることができる。
増感剤の含有量は、感度と保存安定性の観点から、感放射線性組成物の全固形分に対し、0.1〜30質量%の範囲内であることが好ましく、1〜20質量%の範囲内であることがより好ましく、2〜15質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0137】
(F−4)重合禁止剤
本発明に係る感放射線性組成物には、該組成物の製造中或いは保存中において、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の重合禁止剤を含有することが望ましい。重合禁止剤としては、公知の熱重合防止剤を用いることができ、具体的には、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
熱重合防止剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対し、約0.01〜約5質量%が好ましい。
【0138】
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を含有させて、塗布後の乾燥の過程で塗布膜の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の含有量は、全組成物の約0.5〜約10質量%が好ましい。
【0139】
(F−5)密着向上剤
本発明に係る感放射線性組成物には、支持体などの硬質表面との密着性を向上させるために、密着向上剤を含有することができる。密着向上剤の例としては、シラン系カップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。
【0140】
シラン系カップリング剤の例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、が好ましく、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく挙げられる。
【0141】
密着向上剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分中0.5質量%30質量%であることが好ましく、0.7質量%〜20質量%であることがより好ましい。
【0142】
(F−6)界面活性剤
本発明に係る感放射線性組成物は、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0143】
特に、本発明に係る感放射線性組成物は、フッ素系界面活性剤を含有することで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上することから、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。
即ち、フッ素系界面活性剤を含有する感放射線性組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力を低下させることにより、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行える点で有効である。
【0144】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%〜40質量%が好適であり、より好ましくは5質量%〜30質量%であり、特に好ましくは7質量%〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、感放射線性組成物中における溶解性も良好である。
【0145】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)等が挙げられる。
【0146】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセリンエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)等が挙げられる。
【0147】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株))、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0148】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)等が挙げられる。
【0149】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株「トーレシリコーンDC3PA」、「トーレシリコーンSH7PA」、「トーレシリコーンDC11PA」,「トーレシリコーンSH21PA」,「トーレシリコーンSH28PA」、「トーレシリコーンSH29PA」、「トーレシリコーンSH30PA」、「トーレシリコーンSH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−4460」、「TSF−4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、「KF6001」、「KF6002」、ビックケミー社製「BYK307」、「BYK323」、「BYK330」等が挙げられる。
【0150】
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
界面活性剤の含有量は、本発明に係る感放射線性組成物の全質量に対して、0.001質量%〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%〜1.0質量%である。
【0151】
(F−7)その他の添加剤
更に、感放射線性組成物は、増感色素や開始剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、あるいは酸素による光重合性化合物の重合阻害を抑制する等の目的で共増感剤を含有してもよい。また、硬化皮膜の物性を改良するために、希釈剤、可塑剤、感脂化剤等の公知の添加剤を必要に応じて加えてもよい。
【0152】
−チタンブラック分散物の調製−
(A)顔料分散物の調製態様は、特に制限されないが、例えばチタンブラック粒子、分散剤、及び有機溶剤を、攪拌機、ホモジナイザー、高圧乳化装置、湿式粉砕機、湿式分散機、等を用いて分散処理を行なうことにより調製することができるが、その方法はこれらに限定されない。
分散処理は、2回以上の分散処理(多段分散)により行ってもよい。
【0153】
−感放射線性組成物の調製−
本発明に係る感放射線性組成物の調製態様についても特に特に制限されないが、例えば、前記(A)顔料分散物、(B)重合開始剤、(C)重合性化合物、及び、所望により併用される各種添加剤を混合し調製することができる。
なお、本発明に係る感放射線性組成物の調製に際しては、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、各成分を混合した後、フィルタにより濾過することが好ましい。フィルタは、従来、ろ過用途等に用いられているものが特に限定されることなく用いられる。具体的には、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量を含む)等によるフィルタが挙げられる。これらフィルタ素材の中でも、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂、ポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)が好ましい。
フィルタの孔径は、0.01〜7.0μm程度が適しており、好ましくは0.01〜2.5μm程度、さらに好ましくは0.01〜2.0μm程度である。この範囲とすることにより、後工程において均一な感放射線性組成物の調製を阻害する、微細な異物が確実に除去され、均一及び平滑な感放射線性組成物層の形成が可能となる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタを用いたフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせて、第1のフィルタを複数のフィルタからなるものとして、第1回目のフィルタリングとしてもよい。ここでいう孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
第2のフィルタは、上述した第1のフィルタと同様の材料等で形成されたものを使用することができる。
また、例えば、第1のフィルタでのフィルタリングは、顔料分散物のみにたいして行い、該顔料分散物に他の成分を混合して感放射線性組成物とした後に、第2のフィルタリングを行ってもよい。
【0154】
以上で説明した、(A)顔料分散物及び感放射線性組成物は、表面に撮像素子部を有するシリコン基板の裏面や仕切り壁(立上壁)の側面等に設けられた遮光膜であって、赤外光を遮光する遮光膜を形成する用途(即ち、固体撮像素子の基体であるシリコン基板の裏面側から入射される赤外光を遮光するための遮光膜を形成する用途)に特に制限なく用いることができる。
固体撮像素子の中でも、後述する構造Kに係る固体撮像素子の構造は、前記裏面側から入射される赤外光を遮光する必要性、及び、金属電極上の現像残渣を低減する必要性が強い構造である。
このため、赤外遮光能向上及び残渣物低減の効果を有する(A)顔料分散物及び感放射線性組成物は、後述する構造Kに係る固体撮像素子の遮光膜の形成に特に好適である。
【0155】
≪遮光膜≫
本発明の遮光膜は、前記本発明に係る感放射線性組成物をスプレー塗布することで形成されたものである。スプレー塗布及び乾燥後の遮光膜は、JIS B 0601−1994に準拠して測定した表面粗さ(Ra)が10000Å以上70000Å以下であることが好ましく、より好ましくは、30000Å以上60000Å以下である。
本発明においては、表面粗さ(Ra)は、ULVAC製 Dektak 6M(接触式表面形状測定器)を使用して、測定を行った値を用いている。
このような表面粗さを有することで本発明の遮光膜は赤外遮光能及のみならず赤外反射防止能にも優れる。
また、本発明の遮光膜をパターン状に形成した場合、その周辺(シリコン基板上の該遮光膜が形成されていない領域)では、残渣物が低減される。
【0156】
遮光膜の膜厚としては、特に限定はなく、本発明による効果をより効果的に得る観点から、0.1μm〜10μmが好ましく、0.3μm〜5.0μmがより好ましく、0.5μm〜3.0μmが特に好ましい。また、遮光膜のパターンサイズとしては、特に限定はなく、本発明による効果をより効果的に得る観点から、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、300μm以下が特に好ましい。下限については、1μmが望ましい。
【0157】
また、本発明の遮光膜の分光特性としては特に限定はないが、赤外遮光能をより向上させる観点、可視域と赤外域との遮光能のバランスの観点等から、波長1200nmにおける光学濃度(OD1200)と波長365nmにおける光学濃度(OD365)との比〔OD1200/OD365〕が、0.5以上3以下であることが好ましい。
光学濃度(OD)は、(株)島津製作所製UV-3600を用い、得られた膜の透過率測定を行ない、得られた透過率(%T)を下記式Bにより変換しOD値とする。
OD値=−Log(%T/100) … 式B
【0158】
(遮光能)
本発明では、波長λnmにおける光学濃度を「ODλ」で表す。
可視域と赤外域との遮光能のバランスの観点、及び本発明の効果をより効果的に得る観点より、遮光膜の光学濃度としては以下の条件が好適である。即ち、
前記〔OD1200/OD365〕は、1.0以上2.5以下がより好ましく、1.3以上2.0以下が特に好ましい。
前記遮光膜の波長1200nmにおける光学濃度(OD1200)は、1.5〜10であることが好ましく、2〜10であることがより好ましい。
前記遮光膜の波長365nmにおける光学濃度(OD365)は、1〜7であることが好ましく、2〜6であることがより好ましい。
前記遮光膜の、900nm〜1300nmの波長領域における光学濃度は、2以上10以下であることが好ましく、2以上9以下であることがより好ましく、2以上8以下であることが特に好ましい。
前記遮光膜の比〔OD900/OD365〕は、1.0以上2.5以下であることが好ましく、1.1以上2.5以下であることがより好ましい。
前記遮光膜の比〔OD1100/OD365〕は、0.6以上2.5以下であることが好ましく、0.7以上2.5以下であることがより好ましい。
前記遮光膜の比〔OD1300/OD365〕は、0.4以上2.3以下であることが好ましく、0.5以上2.0以下であることがより好ましい。
【0159】
(反射防止能)
遮光膜の反射防止能は、反射率により評価される。
本発明においては、日立ハイテクノロジー製分光光度計、U−4100にて、波長450nmの可視域で、入射角度5度にて表面反射率を測定した(反射率は%にて表す)。反射率が低いほど反射防止能に優れると判断する。
本発明の如き固体撮像素子用途の場合には、4%以下の表面反射率ならば実用上問題のないレベルであると判断される。
【0160】
以上で説明した本発明の遮光膜の具体的形態としては、固体撮像素子用の遮光膜が挙げられる。
【0161】
≪遮光膜の製造方法≫
本発明の遮光膜の製造方法は、一方の面に撮像素子部を有し、且つ、立上壁(側壁)を有するシリコン基板の、撮像素子部形成面に既述の本発明に係る感放射線性組成物をスプレー塗布して、当該面の(底面)表面と立上壁表面とに、感放射線性層を形成する工程(以下、「感放射線性層形成工程」ともいう。)と、前記感放射線性層を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)と、を含むものである。なお、撮像素子部を含む全面に、まず感放射線性層を形成し、遮光膜が必要な領域のみを残してその他の領域は遮光膜を形成しない場合には、前記露光工程においてパターン状の露光を行い、その後、露光後の前記感放射線性層を現像してパターンを形成する工程(以下、「現像工程」ともいう。)をおこなってもよい。例えば、立上壁には遮光膜を全面に形成し、底面は撮像素子部を除いた領域に遮光膜を形成する場合でも、それに応じた露光により、底面と側面のように角度の違う面に、感放射線性層を一工程で形成しうる。
本発明の遮光膜の製造方法によれば、可視光の遮光能と可視光の反射防止とに優れた遮光膜を、互いに角度の異なる2つの表面に一工程で簡易に塗膜(感放射線性層)を形成することができ、さらに該遮光膜をパターン状に形成する際、該遮光膜の形成領域外における残渣物(以下、「現像残渣」ともいう)を低減できるという効果をも有する。
以下、本発明の遮光膜の製造方法における各工程を説明する。
【0162】
−感放射線性層形成工程−
感放射線性層形成工程では、シリコン基板上に、本発明に係る感放射線性組成物をスプレー塗布して感放射線性層を形成する。
【0163】
基板上への本発明に係る遮光膜形成用の感放射線性組成物の塗布方法としては、スプレー塗布法を適用する。スプレー塗布時の散布角度は20度から160度の範囲であることが好ましく、40度から120度であることがより好ましい。なお、散布角度は、スプレーの吐出口から、散布対象である基板への法線から左右両方への角度を指す。上記範囲において、散布時に平面のみならず、平面上の基板端部から立ち上がる立上壁表面へも一工程で均一な塗膜を形成しうる。
感放射線性組成物の塗布膜厚(乾燥膜厚)としては、解像度と現像性の観点から、0.35μm〜3.0μmであることが好ましく、0.50μm〜2.5μmであることがより好ましい。
【0164】
シリコン基板上に塗布された感放射線性組成物は、通常は70℃〜130℃で2分〜4分程度の条件下で乾燥され、感放射線性層が形成される。
【0165】
−露光工程−
露光工程では、前記感放射線性層形成工程で形成された感放射線性層を、必要に応じて、例えばマスクを介して、パターン状に露光して硬化させる(マスクを介して露光する場合には、光照射された塗布膜部分だけを硬化させる)。また、側壁などにおいて、全面に遮光膜を形成する場合には、感放射線性層の全面に露光を行ってもよい。
【0166】
露光は放射線の照射により行なうことが好ましく、露光に際して用いることができる放射線の例としては、特に、g線、h線、i線等の紫外線が挙げられ、高圧水銀灯がより好ましい。照射強度は5mJ〜3000mJが好ましく10mJ〜2000mJがより好ましく、10mJ〜1000mJが最も好ましい。
【0167】
−現像工程−
前記露光工程に引き続いて、露光後の感放射線性層を例えばアルカリ現像処理により現像してパターンを形成する。現像工程では、露光工程における感放射線性層の非照射部分をアルカリ水溶液等に溶出させることにより、光照射部分だけを残す。全面露光を行った場合には、現像工程を省略してもよい。
【0168】
現像液としては、下地の回路などにダメージを起さない点で、有機アルカリ現像液であることが望ましい。現像温度は、通常は20℃〜30℃であり、現像時間は通常は20秒〜240秒である。
【0169】
前記現像液の例としては、有機アルカリ化合物を0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%の濃度となるように純水で希釈したアルカリ性水溶液が挙げられる。使用可能な有機アルカリ化合物の例としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5、4、0]−7−ウンデセンなどが挙げられる。なお、アルカリ性水溶液を現像液として用いた場合、一般には現像後に純水で洗浄(リンス)が行なわれる。
【0170】
本発明の遮光膜の製造方法においては、上記の感放射線性層形成工程、露光工程、及び現像工程に加え、必要により、現像後のパターンを加熱及び/又は露光により硬化する硬化工程を更に含んでもよい。
【0171】
≪固体撮像素子≫
本発明の固体撮像素子は、前記本発明の遮光膜を有して構成される。
即ち、本発明の固体撮像素子は、本発明に係る感放射線性組成物を用いて形成された遮光膜を備えるため、撮像素子部が設けられた面の反対側の面からシリコン基板(固体撮像素子の基体)に入射される赤外光によるノイズや、残渣物によるノイズが低減される。
本発明の固体撮像素子の構造は、シリコン基板の一方の面に撮像素子部(詳しくは、複数の撮像素子が例えばマトリクス状に配列されて構成された撮像素子部)が設けられ、該シリコン基板の他方の面に前記本発明の遮光膜が設けられた構造であれば特に限定はない。
また、撮像素子は、CCDであってもCMOSであってもよい。
【0172】
中でも、特開2009−99591号公報や特開2009−158863号公報に記載されているような、撮像素子部が形成された面の反対側の面に、実装基板(以下、「回路基板」ともいう)との接続用の金属電極を有する固体撮像素子の構造は、本発明の固体撮像素子の構造として好適である。
即ち、本発明の固体撮像素子の好適な一構造(本明細書中構造Kとも称する)は、一方の面(以下、「第1の主面」ともいう)に撮像素子部を有するシリコン基板と、前記シリコン基板の他方の面(以下、「第2の主面」ともいう)に設けられ、前記撮像素子部と電気的に接続された金属電極と、前記シリコン基板の前記金属電極が設けられた面に設けられ、前記金属電極の少なくとも1部が露出するようにパターニングされた前記本発明の遮光膜と、を有する固体撮像素子である。
【0173】
まず、前記構造Kとの対比として、ワイヤボンディング方式が採用されていた従来の固体撮像素子について述べる。
従来より固体撮像素子は、ワイヤボンディング方式により回路基板に接続されてきた。 詳細には、固体撮像素子を回路基板の上に配置し、前記シリコン基板の撮像素子部側の面に設けられた接続用電極と、回路基板上の接続用電極と、をワイヤにより接続していた。このワイヤボンディング方式を採用する構造は、ボンディング領域の面積が大きくなり、カメラモジュールの小型化が難しい構造である。
【0174】
これに対し、上記構造Kの固体撮像素子は、ワイヤではなく、ハンダボール等の接続材料を介して実装基板(以下、回路基板ともいう)に接続されるものである。
上記構造Kの固体撮像素子と前記回路基板との接続は、前記固体撮像素子と前記回路基板とを、前記金属電極と回路基板上の接続用電極とが対向する向きに配置し、接続材料により前記金属電極と前記接続用電極とを接続することにより行われる(例えば、後述する図2及び図3参照)。
上記構造Kの固体撮像素子のように、(ワイヤを用いず)裏面側の金属電極により回路基板と接続される固体撮像素子を用いることで、ワイヤボンディングスペースを省略できるので、カメラモジュールの大幅な小型化が可能となる(例えば、”株式会社東芝ニュースリリース「携帯電話用CMOSカメラモジュール内製化によるCMOSイメージセンサ事業の強化について」”、[online]、平成19年10月1日、[平成21年11月12日検索]、インターネット<URL:http://www.toshiba.co.jp/about/press/2007_10/pr_j0102.htm>、参照)。
【0175】
前記構造Kでは、更に、前記遮光膜の下層側(シリコン基板に近い側)であって前記金属電極の上層側(シリコン基板から離れた側)に、ソルダーレジスト層等の保護絶縁層を有していてもよい。
即ち、前記構造Kは、前記金属電極が形成された第2の主面上に設けられ、前記金属電極の少なくとも1部を露出するようにパターニングされた保護絶縁層を有する形態であってもよい。
【0176】
なお、前記構造Kにおいて「電気的に接続された」とは、直接的に接続されている形態に限られず、周辺回路等を介して間接的に接続されている状態も含む。
【0177】
以下、前記構造Kの具体例について、図2及び図3を参照しながら説明するが本発明は以下の具体例によって限定されることはない。
なお、図2及び図3にわたり、共通する部分には共通する符号を付す。
また、説明に際し、「上」、「上方」及び「上側」は、シリコン基板10からみて遠い側を指し、「下」、「下方」及び「下側」は、はシリコン基板10に近い側を指す。
【0178】
図2は、前記構造Kの具体例に係る固体撮像素子を備えたカメラモジュールの構成を示す概略断面図である。
図2に示すカメラモジュール200は、実装基板である回路基板70に接続部材であるハンダボール60を介して接続されている。
詳細には、カメラモジュール200は、シリコン基板の第1の主面に撮像素子部を備えた固体撮像素子基板100と、固体撮像素子基板100の第1の主面側上方に配置されるガラス基板30(光透過性基板)と、ガラス基板30の上方に配置される赤外線カットフィルタ42と、ガラス基板30及び赤外線カットフィルタ42の上方に配置され内部空間に撮像レンズ40を有するレンズホルダー50と、固体撮像素子基板100及びガラス基板30の周囲を囲うように配置された遮光兼電磁シールド44と、を備えて構成されている。各部材は、接着剤20、41、43、45により接着されている。
カメラモジュール200では、外部からの入射光hνが、撮像レンズ40、赤外線カットフィルタ42、ガラス基板30を順次透過した後、固体撮像素子基板100の撮像素子部に到達するようになっている。
【0179】
ここで、この撮像レンズ40に入射した入射光hνが、撮像レンズ40と接するレンズホルダー50表面で反射すると、反射光がノイズとなるおそれがあり、さらに、ノイズを防止する目的で、底面や、入射光hνを受け入れるレンズホルダー50の開口部周辺における反射も抑制する必要があるため、レンズホルダー50と撮像レンズ40との界面であるレンズホルダー50表面には、本発明の遮光膜18が設けられる。
遮光膜18は既述のように、レンズホルダー50に撮像レンズ40をセットする前にレンズホルダー50の表面に形成するが、スプレー塗布適性に優れるため、下方の赤外線カットフィルタ42との界面、レンズホルダー50の側面、及び、上方の撮像レンズ40周縁部の3つの面に、一工程にて塗布することができる。なお、下方の赤外線カットフィルタ42との界面や上方の撮像レンズ40との界面などにおいて所望されない領域に感放射線層が形成された場合には、パターン露光により遮光膜18の形成が必要とされる領域のみを硬化させ、その他の領域は現像除去すればよい。
カメラモジュール200は、固体撮像素子基板100の第2の主面側で、ハンダボール60(接続材料)を介して回路基板70に接続されている。
【0180】
図3は、図2中の固体撮像素子基板100を拡大した断面図である。
固体撮像素子基板100は、基体であるシリコン基板10、撮像素子12、層間絶縁膜13、ベース層14、カラーフィルタ15R、カラーフィルタ15G、カラーフィルタ15B、オーバーコート16、マイクロレンズ17、絶縁膜22、金属電極23、ソルダーレジスト層24、内部電極26、及び素子面電極27を備えて構成されている。
但し、ソルダーレジスト層24は省略されていてもよい。
【0181】
まず、固体撮像素子基板100の第1の主面側の構成を中心に説明する。
図2に示すように、固体撮像素子基板100の基体であるシリコン基板10の第1の主面側に、CCDやCMOS等の撮像素子12が2次元に複数配列された撮像素子部が設けられている。
撮像素子部における撮像素子12上には層間絶縁膜13が形成されており、層間絶縁膜13上にはベース層14が形成されている。更にベース層14上には、撮像素子12に対応するように、赤色のカラーフィルタ15R、緑色のカラーフィルタ15G、青色のカラーフィルタ15B(以下、これらをまとめて「カラーフィルタ15」ということがある)がそれぞれ配置されている。
赤色のカラーフィルタ15R、緑色のカラーフィルタ15G、青色のカラーフィルタ15Bの境界部、及び撮像素子部の周辺には、図示しない遮光膜が設けられていてもよい。この遮光膜は、例えば、公知のブラックのカラーレジストを用いて作製できる。
カラーフィルタ15上にはオーバーコート16が形成され、オーバーコート16上には撮像素子12(カラーフィルタ15)に対応するようにマイクロレンズ17が形成されている。
【0182】
また、第1の主面側の撮像素子部の周辺は、周辺回路(不図示)及び内部電極26が設けられており、内部電極26は、周辺回路を介して撮像素子12と電気的に接続されている。
さらに、内部電極26上には、層間絶縁膜13を介して素子面電極27が形成されている。内部電極26と素子面電極27間の層間絶縁膜13内には、これら電極間を電気的に接続するコンタクトプラグ(不図示)が形成されている。素子面電極27は、コンタクトプラグ、内部電極26を介して電圧の印加及び信号の読み出しなどに使用される。
素子面電極27上には、ベース層14が形成されている。ベース層14上にはオーバーコート16が形成されている。素子面電極27上に形成されたベース層14及びオーバーコート16が開口されて、パッド開口部が形成され、素子面電極27の一部が露出している。
【0183】
以上が固体撮像素子基板100の第1の主面側の構成である。
固体撮像素子基板100の第1の主面側において、撮像素子部の周辺には接着剤20が設けられ、この接着剤20を介し、固体撮像素子基板100とガラス基板30とが接着される。
【0184】
また、シリコン基板10は、該シリコン基板10を貫通する貫通孔を有しており、貫通孔内には、金属電極23の一部である貫通電極が備えられている。この貫通電極により、撮像素子部と回路基板70とが電気的に接続されている。
【0185】
次に、固体撮像素子基板100の第2の主面側の構成を中心に説明する。
該第2の主面側には、第2の主面上から貫通孔の内壁にわたり絶縁膜22が形成されている。
絶縁膜22上には、シリコン基板10の第2の主面上の領域から貫通孔の内部に至るようにパターニングされた金属電極23が設けられている。金属電極23は、固体撮像素子基板100中の撮像素子部と回路基板70との接続用の電極である。
前記貫通電極は、この金属電極23のうち、貫通孔の内部に形成された部分である。貫通電極は、シリコン基板10及び層間絶縁膜の一部を貫通して内部電極26の下側に至り、該内部電極26に電気的に接続されている。
【0186】
更に、第2の主面側には、金属電極23が形成された第2の主面上を覆い、かつ、該金属電極23上の1部を露出する開口部を有するソルダーレジスト層24(保護絶縁膜)が設けられている。
露出された金属電極23上には、接続部材としてのハンダボール60が設けられ、このハンダボール60を介し、固体撮像素子基板100の金属電極23と、回路基板70の不図示の接続用電極と、が電気的に接続される。
【0187】
以上、固体撮像素子基板100の構成について説明したが、固体撮像素子基板100のうち遮光膜18以外の各部は、特開2009−158863号公報中段落0033〜0068に記載の方法や、特開2009−99591号公報中段落0036〜0065に記載の方法など、公知の方法により形成できる。
遮光膜18の形成は、既述の本発明の遮光膜の製造方法によって形成できる。
層間絶縁膜13は、例えば、スパッタやCVD(Chemical vapor deposition)等によりSiO膜またはSiN膜として形成する。
カラーフィルタ15(15R、15G、15B)は、例えば、公知のカラーレジストを用い、フォトリソグラフィーにより形成する。
オーバーコート16及びベース層14は、例えば、公知の有機層間膜形成用レジストを用い、フォトリソグラフィーにより形成する。
マイクロレンズ17は、例えば、スチレン系樹脂等を用い、フォトリソグラフィー等により形成する。
ソルダーレジスト層24は、例えばフェノール系樹脂、あるいはポリイミド系樹脂、アミン系樹脂を含む公知のソルダーレジストを用い、フォトリソグラフィーにより形成する。
ハンダボール60は、例えば、Sn−Pb(共晶)、95Pb−Sn(高鉛高融点半田)、Pbフリー半田として、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Ag−Cuなどを用いて形成する。ハンダボール60は、例えば、直径100μm〜1000μm(好ましくは直径150μm〜700μm)の球状に形成する。
内部電極26及び素子面電極27は、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)、またはフォトリソグラフィー及びエッチングにより、Cu等の金属電極として形成する。
金属電極23は、例えば、スパッタ、フォトリソグラフィー、エッチング、及び電解めっきにより、Cu、Au、Al、Ni、W、Pt、Mo、Cu化合物、W化合物、Mo化合物等の金属電極として形成する。金属電極23は、単層構成でも2層以上からなる積層構成であってもよい。
金属電極23の膜厚は、例えば、0.1μm〜20μm(好ましくは0.1μm〜10μm)とする。
シリコン基板10としては特に限定されないが、基板裏面を削ることによって薄くしたシリコン基板を用いることができる。基板の厚さは限定されないが、例えば、厚み20〜200μm(好ましくは30〜150μm)のシリコンウエハを用いる。
シリコン基板10の貫通孔は、例えば、フォトリソグラフィー及びRIE(Reactive Ion Etching)により形成する。
【0188】
以上、前記構造Kの具体例である固体撮像素子基板100について図2及び図3を参照して説明したが、前記構造Kは図2及び図3の形態に限られず、裏面側に金属電極及び遮光膜を有する構成であれば、その構成に特に限定はない。
【実施例】
【0189】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。また、「室温」は25℃を指す。
【0190】
(チタンブラックの作製)
粒径15nmの酸化チタンMT−150A(商品名:テイカ(株)製)を100g、BET表面積300m/gのシリカ粒子AEROPERL(登録商標)300/30(エボニック製)を25g、及び、Disperbyk190(商品名:ビックケミー社製)を100g秤量し、イオン電気交換水71gを加えてKURABO製MAZERSTAR KK−400Wを使用して、公転回転数1360rpm、自転回転数1047rpmにて20分間処理することにより均一な混合物水溶液を得た。この水溶液を石英容器に充填し、小型ロータリーキルン(株式会社モトヤマ製)を用いて酸素雰囲気中で920℃に加熱した後、窒素で雰囲気を置換し、同温度でアンモニアガスを100mL/minで5時間流すことにより窒化還元処理を実施した。終了後回収した粉末を乳鉢で粉砕し、粉末状のSi原子を含むチタンブラックA(被分散体)を得た。
また、チタンブラックAの作製にて使用したシリカ粒子AEROPERLを、それぞれ12.5g、10g、5gとすることにより、それぞれチタンブラックB、チタンブラックC、チタンブラックXを得た。
【0191】
(分散剤1の合成)
500mL三口フラスコに、ε−カプロラクトン600.0g、2−エチル−1−ヘキサノール22.8gを導入し、窒素を吹き込みながら、攪拌溶解した。モノブチル錫オキシド0.1gを加え、100℃に加熱した。8時間後、ガスクロマトグラフィーにて原料が消失したのを確認後、80℃まで冷却した。2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1gを添加した後、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート27.2gを添加した。5時間後、1H−NMRにて原料が消失したのを確認後、室温まで冷却し、固体状の前駆体1〔下記構造〕を200g得た。M1であることは、1H−NMR、IR、質量分析により確認した。
【0192】
【化21】

【0193】
前記前駆体M1を30.0gと、NKエステル CB−1( 2-メタクリロイロキシエチルフタル酸 新中村化学製)を70.0gと、ドデシルメルカプタン2.3gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート233.3gとを、窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して75℃まで昇温した。これに、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル(和光純薬(株)製の「V−601」)0.2gを加え、75℃にて2時間加熱攪拌を行なった。2時間後、更にV−601を0.2g加えて3時間、加熱攪拌の後、下記分散剤1の30%溶液を得た。
【0194】
【化22】



【0195】
分散剤1の組成比、酸価、及び重量平均分子量(Mw)は、以下の通りである。なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により測定し、ポリスチレン換算で算出した値である。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムをTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製)として測定した。
・組成比: x=35(質量%)、y=65(質量%)
・酸価 : 80mgKOH/g
・Mw : 30,000
【0196】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
1.チタンブラック分散組成物の調製
下記組成1に示す成分を、攪拌機(IKA社製EUROSTAR)を使用して、15分間混合し、分散物aを得た。
(組成1)
・(a−1)被分散体:前記にて作製したチタンブラックA 25部
・(a−2)分散剤:分散剤1の30%溶液 25部
・(a−3)有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 50部
得られた分散物aに対し、寿工業(株)製のウルトラアペックスミルUAM015を使用して下記条件にて分散処理を行い、実施例1の遮光膜形成に用いるチタンブラック分散組成物A(顔料分散物)を得た。
【0197】
(分散条件)
・ビーズ径:φ0.05mm
・ビーズ充填率:75体積%
・ミル周速:8m/sec
・分散処理する混合液量:500g
・循環流量(ポンプ供給量):13kg/hour
・処理液温度:25〜30℃
・冷却水:水道水
・ビーズミル環状通路内容積:0.15L
・パス回数:90パス
【0198】
チタンブラック分散組成物Aの調製において使用したチタンブラックAを、チタンブラックB、C、X、三菱マテリアル製のチタンブラック「13M−T(商品名)」とした以外は、チタンブラック分散組成物Aと同様にして、実施例2、3及び比較例1〜2のチタンブラック分散液B、C、X、Yを得た。
【0199】
1.黒色感放射線性組成物の調製
(バインダー溶液1の調製)
1,000mL三口フラスコに1−メトキシ−2−プロパノール159gを入れ、窒素気流下、85℃まで加熱した。これに、ベンジルメタクリレート63.4g、メタクリル酸72.3g、V−601(和光純薬製)4.15gを1−メトキシ−2−プロパノール159gに添加して調製した溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に5時間加熱して反応させた。
次いで、加熱を止め、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(30/70mol比)の共重合体を含む溶液得た。
次に、得られた共重合体溶液の内、120.0gを、300mL三口フラスコに移し、グリシジルメタクリレート16.6g、p−メトキシフェノール0.16gを加え、撹拌し溶解させた。溶解後、トリフェニルホスフィン3.0gを加え、100℃に加熱し、付加反応を行った。グリシジルメタクリレートが消失したことを、ガスクロマトグラフィーで確認し、加熱を止めた。反応液に、1−メトキシ−2−プロパノール184gを加え、重量平均分子量12,000(GPC法により求めたポリスチレン換算値)、酸価35mgKOH/g、 固形分30質量%のバインダー溶液1を調製した。
【0200】
(黒色感放射線性組成物Aの調製)
下記組成2の成分を攪拌機で混合し、フィルタでろ過して、実施例1の黒色感放射線性組成物Aを調製した。
(組成2)
・(A)チタンブラック分散組成物A 50部
・(F−1)アルカリ可溶性樹脂:バインダー溶液1 17.0部
・(B)重合性化合物:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製) 5.0部
・(C)重合開始剤:IRGACURE OXE02(BASF社製) 2.5部
・(F−4)重合禁止剤:p−メトキシフェノール 0.003部
・(F−6)界面活性剤:メガファックF781(フッ素系界面活性剤、
大日本インキ化学工業(株)製) 0.01部
・有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10部
・有機溶媒:シクロヘキサノン 10部
【0201】
(黒色感放射線性組成物B、C、X、Yの調製)
黒色感放射線性組成物Aの調製において、組成2に示される成分のうち、チタンブラック分散物Aを、チタンブラック分散物B、C、X、Yに、それぞれ変更した以外は、黒色感放射線性組成物Aと同様にして、実施例2、3及び比較例1〜3の黒色硬化性組成物B、C、X、Yを調製した。
なお、黒色感放射線性組成物A、B、C、X、及びYの粘度は、それぞれ、6.1mPa・s(A)、6.5mPa・s(B)、6.3mPa・s(C)、7.0mPa・s(X)、6.6mPa・s(Y)であった。
【0202】
−黒色感放射線性組成物の評価−
上記にて得られた各黒色感放射線性組成物について、被分散体のSi/Ti比、被分散体の粒径について評価した。
<Si/Ti比>
得られた黒色感放射線性組成物A、B、C、X、Yから分取した測定用試料を、市販の石英ボート上にのせ電気炉を使用して100mL/minの酸素フロー下にて500℃で60分間加熱処理した。加熱処理により得られた粉体について、S−4800(商品名、(株)日立テクノロジーズ製)、及び、INCA EnergyPentaFETx3(Oxford社製)を用いて、Si原子量、Ti原子量を求め、Si/Ti比を算出した。
その結果、各黒色感放射線性組成物中の被分散体におけるSi/Ti比の結果を以下の表1に示す。
【0203】
<被分散体の粒径>
黒色感放射線性組成物A、B、C、X、Yを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを溶剤として用いて100倍に希釈し、これをカーボンフォイル上に滴下、乾燥し、これをTEMにより観察することにより被分散体の平均粒径を測定した。
その結果、各黒色感放射線性組成物に含まれる被分散体の粒径および、15nm以上30nm以下の粒子割合を以下の表1に示す。
【0204】
【表1】

【0205】
(遮光膜形成用塗布液1)
調液直後の黒色組成物Aをスプレー塗布装置の溶液カップに入れて遮光膜形成用塗布液を調製し、以下の塗布および加熱条件でガラス基板に塗布を行い、遮光膜1(実施例1の遮光膜)を形成した。

スプレー塗布装置:GSIクレオス製 PS−268
スプレー塗布空気圧条件:3000cc/分
塗布量:0.2cc/分
ノズル径:0.4mm
スプレーの吐出口とガラス基板塗布面は垂直の向きに設置。
スプレーの吐出口とガラス基板の距離:3cm
スプレーの散布角度*:90度
(*スプレーの吐出口からガラス基板への法線から左右両方への角度)
塗布部分の平均膜厚が2.5μmとなるまでスプレー塗布実施し、塗布後ホットプレートにて120℃で2分加熱した。
【0206】
遮光膜形成用塗布液1の調製において用いた黒色組成物Aを黒色組成物B,C,X,Yにそれぞれ変更した以外は前記と同じようにして、実施例2,3、比較例1,2の遮光膜を作製した
(比較例3の遮光膜の作製)
前記で得た黒色組成物Bを、基板上に塗布膜厚が2.5μmとなるようにスピンコートを行い、ホットプレートにて120℃で2分加熱して遮光膜(比較例3)を得た。
なお、スピンコート法により形成した比較例3の遮光膜の表面粗さは5326Åであった。
【0207】
(スプレー塗布の目詰まり評価)
黒色組成物A,B,C、X,及びYについて、以下の条件でスプレー塗布を行い、目詰まりを評価した。
スプレー塗布装置:GSIクレオス製 PS−268
前記スプレー塗布装置の溶液カップに評価する黒色組成物を入れ、25℃にて96時間放置した後、上記スプレー塗布装置により以下の条件で塗布を行い、目詰まりが発生するしないを評価した。

スプレー塗布空気圧条件:3000cc/分
塗布量:0.2cc/分
ノズル径:0.4mm
【0208】
(表面反射率の測定)
各サンプルを、日立ハイテクノロジー製分光光度計、U−4100にて、波長450nmで表面反射率を測定し(入射角度5度)、反射率を%にて測定した。
特に固体撮像素子用途の場合、4%以下の表面反射率ならば実用性があると判断する。
実施例1、2、3、比較例1、2、及び3の遮光膜形成時の目詰まり評価結果と、形成された遮光膜の表面反射率を以下に示す。
(遮光性)
各サンプルを、日立ハイテクノロジー製分光光度計、U−4100にて、波長550nmにおける透過率を測定し、遮光率の指標とした。
【0209】
【表2】

【0210】
表2の結果より、本発明の遮光膜はスプレー塗布適性が良好で、反射防止能に優れることがわかる。他方、同じ黒色感放射線性組成物を用いても、スピンコート法により形成された遮光膜は、反射防止能が実用上のレベルに達していないことが分わかる。
なお、スピンコート法により形成された比較例3の遮光膜は、既述のように表面粗さが5326Åであり、本発明の好ましい範囲外である。このため、スプレー塗布法により形成された実施例の遮光膜に比較し、反射防止能が劣ることがわかる。
[実施例4〜実施例8]
前記実施例2において、スプレー塗布装置の吐出口形状を調整し、スプレーの散布角度を20、35,62、118、152°にそれぞれ変更した以外は同様にして塗布膜を作製し、それぞれ実施例4,5,6,7、8として、表面反射率を測定した。その結果を実施例2と共に下記表3に示す。なお、スプレーの散布角度を20度とした実施例4の塗膜の表面粗さは75211Åであった。
【0211】
【表3】

【0212】
表3に明らかなように、スプレーノズルの吐出口に対し、20度以上160度以下の範囲においては、いずれも均一塗布が可能であり、表面反射率の優れた遮光膜が形成されることがわかる。なお、スプレー角度が35°においては、若干の塗布ムラが認められた。このことから、スプレー角度が40度〜120度が好ましいことが分かる。
【0213】
[実施例9〜実施例13]
実施例2において、スプレー塗布装置の吐出口とガラス基板の距離を10,5,4,2,1cmにそれぞれ変更して、表面粗さRaの異なるサンプルを作製し、それぞれ実施例8,9,10,11,12とした。
ここで表面粗さRaはULVAC製 Dektak 6M(接触式表面形状測定器)を使用して、測定を行ったものである。
実施例2と合わせて、表面粗さRaの測定結果と、表面反射率を下記表4に示す。
【0214】
【表4】

【0215】
表4に示すように、本発明の遮光膜は表面粗さが10000Å以上70000Å以下であり、好ましい表面反射率であることがわかる。
【符号の説明】
【0216】
10 シリコン基板
12 撮像素子
13 層間絶縁膜
14 ベース層
15R 赤色のカラーフィルタ
15G 緑色のカラーフィルタ
15B 青色のカラーフィルタ
16 オーバーコート
17 マイクロレンズ
18 遮光膜
22 絶縁膜
23 金属電極
24 ソルダーレジスト層
26 内部電極
27 素子面電極
30 ガラス基板
40 撮像レンズ
42 赤外線カットフィルタ
44 遮光兼電磁シールド
50 レンズホルダー
60 ハンダボール
70 回路基板
100 固体撮像素子基板
hν 入射光
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面に受光素子を備えた撮像素子部を有し、且つ、該撮像素子部を備えた面に立上がる立上壁を有する固体撮像素子用の遮光膜であって、(A)黒色顔料を含む被分散体と分散剤と有機溶媒とを含み、該被分散体の90%以上が15nm以上30nm以下の粒径を有する顔料分散物、(B)重合性化合物、及び(C)重合開始剤を含有する感放射線性組成物を、該基板の受光素子を備えた面と、該受光素子を備えた面に立上がる立上壁の表面にスプレー塗布して形成された固体撮像素子用遮光膜。
【請求項2】
前記スプレー塗布の散布角度がスプレーノズルの吐出口に対し、20°以上160°以下である請求項1に記載の固体撮像素子用遮光膜。
【請求項3】
前記感放射線性組成物の25℃における粘度が、2mPa・s以上50mPa・s以下である請求項1又は請求項2に記載の固体撮像素子用遮光膜。
【請求項4】
表面粗さ(Ra)が10000Å以上70000Å以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の固体撮像素子用遮光膜。
【請求項5】
前記被分散体が、チタンブラックを含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の固体撮像素子用遮光膜。
【請求項6】
前記被分散体が、チタンブラックとSi原子とを含み、該被分散体中のSi原子とTi原子との含有比(Si/Ti)が0.20以上0.50以下である有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の固体撮像素子用遮光膜。
【請求項7】
(A)黒色顔料を含む被分散体を含有する顔料分散物、(B)重合性化合物、及び(C)重合開始剤を含有し、且つ、前記被分散体の90%以上が15nm以上30nm以下の粒径を有する感放射線性組成物を、少なくとも一方の面に受光素子を備えた撮像素子部を有し、且つ、該撮像素子部を備えた面に立上がる立上壁を有する固体撮像素子のシリコン基板と立上壁との表面にスプレー塗布して感放射線性層を形成する工程と、前記感放射線性層を露光する工程と、を有する固体撮像素子用遮光膜の製造方法。
【請求項8】
前記前記感放射線性層を露光する工程が、前記感放射線性層をパターン状に露光する工程であり、さらに、露光後に現像する工程を有する請求項7に記載の固体撮像素子用遮光膜の製造方法。
【請求項9】
少なくとも一方の面に受光素子を備えた撮像素子部を有し、且つ、該撮像素子部を備えた面に立上がる立上壁を有する固体撮像素子のシリコン基板及び立上壁の表面に、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の固体撮像素子用遮光膜を有する固体撮像素子。
【請求項10】
少なくとも一方の面に受光素子を備えた撮像素子部を有し、且つ、該撮像素子部を備えた面に立上がる立上壁を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板の前記撮像素子部が設けられた面に設けられ、前記撮像素子部の少なくとも1部が露出するようにパターニングされた請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の遮光膜と、前記撮像素子部を有する面の立上がる立上壁表面に設けられた請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の遮光膜と、
を有する請求項9に記載の固体撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−169556(P2012−169556A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31284(P2011−31284)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】