説明

遮熱板の固定具

【課題】大がかりな作業を伴うことなく、劣化したボルトの交換を容易に行えるようにした、遮熱板の固定具を提供する。
【解決手段】この固定具10は、遮熱板3を樹脂製の燃料タンク1に取付けるもので、樹脂製の本体20と、本体20に頭部54を保持されると共に軸部52を挿出させて取付けられるボルト50と、ナット60とを備え、ボルト頭部54は、軸部52の中心に対する距離が一定でない形状とされ、本体20は、溶着部26と、頭部54を保持すると共に軸部52を挿出させる支持壁22とを有し、支持壁22は、ボルト50を所定回動角度にしたとき頭部54が通過できる貫通孔28と、ボルト50を前記とは異なる回動角度にしたとき頭部54が嵌合する凹部30とを有し、溶着部26と支持壁22との間には、ボルト頭部54を回動可能とする空間32が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の燃料タンクの所定部位に遮熱板を取付けるための、遮熱板の固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料タンクには、金属製のものと樹脂製のものとが用いられている。樹脂製の燃料タンクは金属製のものと比べると耐熱性が低いため、樹脂製の燃料タンクの周囲に、排気管やマフラー等の高温になる部材が配置される場合には、樹脂製の燃料タンクとそれらとの間に遮熱板を取付けて、樹脂製の燃料タンクを熱から保護することが行われている。
【0003】
遮熱板を燃料タンクに取付けるための構造として、下記特許文献1には、樹脂製の燃料タンクと、この燃料タンクの所定部位に取付けられる遮熱板とを備え、該遮熱板が、前記燃料タンクに溶着された樹脂部材と、該樹脂部材に取付けられたボルトとを介して固定される構造であって、前記樹脂部材は、前記燃料タンクに溶着可能な第1筒部材と、該第1筒部材よりも溶融温度が高い第2筒部材とを有し、前記第1筒部材は、前記第2筒部材の外周に接合され、軸方向一端には前記第1筒部材が突出し、軸方向他端には前記第2筒部材が突出しており、前記ボルトは、前記第1筒部材が突出した一端側から、前記第2筒部材の内部を通して、前記第2筒部材が突出した端面より突出するように挿通され、前記第1筒部材の突出端面が前記燃料タンクに溶着されている燃料タンクへの遮熱板取付け構造が開示されている。
【0004】
更に詳しく説明すると、前記ボルトの頭部は四角形状をなしている。また、前記第2筒部材の、燃料タンク側の端部内周には、ボルト頭部の適合する四角形状の凹部が形成されており、同凹部の中心には、ボルト軸部が挿通する挿通孔が形成されている。そして、ボルト頭部を第2筒部材の凹部に嵌合させて回り止めすると共に、軸部を挿通孔に挿入して挿通孔周縁にボルト頭部を係合させて保持した状態で、第1筒部材の突出端部を燃料タンクに溶着することで、樹脂部材が燃料タンクに固着される。その後、前記ボルトを遮熱板の取付孔に挿通し、その軸部にナットを螺着することにより、燃料タンクの所定部位に遮熱板が締付け固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−291669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような遮熱板の取付構造では、ボルトが錆により劣化したり、車両の振動や外部衝撃等により破損したりして、ボルトや遮熱板を交換する必要が生じることがある。
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の構造では、ボルトを引っ張っても、頭部が挿通孔周縁に引っ掛かって樹脂部材からボルトを取外すことができず、また、樹脂部材も燃料タンクに強固に固着しているため取外すことができない。
【0008】
そのため、ボルト一つを交換するのに、燃料タンクごと交換する必要が生じ、大がかりな作業となってしまうという問題があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、大がかりな作業を伴うことなく、劣化したボルトの交換を容易に行えるようにした、遮熱板の固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の遮熱板の固定具は、遮熱板を樹脂製の燃料タンクの所定部位に取付けるための固定具であって、前記燃料タンクに溶着される樹脂製の本体と、該本体に頭部を保持されると共に軸部を挿出させて取付けられるボルトと、該ボルトを前記遮熱板の取付孔に挿通させた状態で該ボルトに螺着されるナットとを備え、前記ボルトの頭部は、軸部の中心に対する距離が一定でない周縁形状を有し、前記本体は、前記燃料タンクへの溶着部と、前記ボルトの頭部を保持すると共に前記軸部を挿出させる支持壁とを有し、前記支持壁は、前記ボルトを所定回動角度にしたときその頭部が通過できる貫通孔と、前記ボルトを前記とは異なる回動角度にしたときその頭部が嵌合する凹部とを有しており、前記本体の溶着部と前記支持壁との間には、前記本体を前記燃料タンクに溶着させ、前記ボルトの頭部を前記凹部より抜き出した状態で、前記ボルトの頭部を回動可能とする空間が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の遮熱板の固定具においては、前記ボルトの頭部は、一方向に長く伸びる長尺形状に形成され、前記本体の凹部及び貫通孔が前記頭部に対応した長尺形状をなし、かつ、前記凹部と前記貫通孔とは互いに交差して配置されていることが好ましい。
【0012】
本発明の遮熱板の固定具においては、前記本体の溶着部と支持壁との間の空間は筒状壁で囲まれ、この筒状壁の端面が前記溶着部をなしており、前記筒状壁の内周及び/又は前記支持壁の内周には、前記溶着部に向けて次第に広がるテーパ面が形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の遮熱板の固定具においては、前記支持壁と前記溶着部との間は円筒壁で形成され、前記支持壁と前記遮熱板の当接部との間は角筒壁で形成されており、前記円筒壁と前記角筒壁との間には、前記円筒壁側から前記角筒壁に向けて縮径する段部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ボルトの軸部を本体の挿通孔に溶着部側から挿入し、ボルトの頭部を支持壁の凹部に嵌合させることにより、ボルトを本体に保持させることができる。その状態で、本体の溶着部を燃料タンクに溶着させることにより、本体が燃料タンクに固着されて、該本体からボルトの軸部が挿出した状態とすることができる。そして、この軸部を遮熱板に設けられた取付孔に挿通し、その挿出された軸部にナットを螺着させて締め付けることにより、遮熱板を燃料タンクに固着することができる。
【0015】
そして、ボルトが、例えば錆により劣化したり破損したりして交換する必要が生じた場合には、ナットを外して、ボルトを燃料タンク側に押し込むことにより、ボルトの頭部が支持壁の凹部から抜き出され、溶着部と支持壁との間に設けられた空間でボルトの頭部を回動させることができるので、ボルトの頭部を貫通孔に整合させてボルトを抜き出すことができる。こうして古いボルトを抜き出した後、新しいボルトの頭部を、前記貫通孔を通して支持壁の内側に挿入し、ボルトを回動して頭部を凹部と整合させ、その状態で軸部を引っ張ることにより、頭部を凹部に嵌合させて保持させることができる。そして、再び軸部を遮熱板に設けられた取付孔に挿通し、その挿出された軸部にナットを螺着させて締め付けることにより、遮熱板を燃料タンクに固着することができる。
【0016】
また、本体の溶着部が燃料タンクに溶着され、ボルトの頭部が支持壁の凹部に嵌合した状態で、溶着部と支持壁との間にボルトの頭部の厚さ以上の空間が形成されているため、ボルトの頭部が燃料タンクに直接接触することがなく、前記空間が断熱層として機能するので、ボルトを介して排気管等からの熱が燃料タンクに伝わるのを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る遮熱板の固定具の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同固定具を構成する本体を示しており、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢示線における断面図である。
【図3】本体にネジを保持させた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る遮熱板の固定具を用いて、燃料タンクに遮熱板を取付けた状態を示す断面図である。
【図5】本体にボルトが取付けられた状態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B矢示線における断面図、(c)は底面図である。
【図6】本体からボルトを取外す際の状態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D矢示線における断面図である。
【図7】図6(a)のE−E矢示線における断面図である。
【図8】本発明に係る遮熱板の固定具を用いて、燃料タンクに遮熱板を取付けた状態を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜8を参照して、本発明に係る遮熱板の固定具の一実施形態について説明する。
【0019】
図1に示すように、この遮熱板の固定具10(以下、「固定具10」)は、樹脂製の燃料タンク1(図4,8参照)に溶着される樹脂製の本体20と、本体20に頭部54を保持されると共に軸部52を挿出させて取付けられるボルト50と、ボルト50を遮熱板3の取付孔5に挿通させた状態で、ボルト50に螺着されるナット60とを備えている。なお、図5は本体20にボルト50が取付けられた状態を示し、図6,7は本体20からボルト50を取外す際の状態を示しているが、便宜上、図5〜7では燃料タンク1を省略している。
【0020】
図1に示すように、この実施形態におけるボルト50は所定の金属で形成されており、外周にタッピングねじが螺刻された軸部52と、同軸部52の基端に固設された頭部54とを有している。この実施形態における頭部54は、一方向に長く伸びる長尺形状をなしており、図5(a)に示すように、軸部52の中心Cに対する距離L1,L2が一定でない周縁形状を呈している。ここでの頭部54は、所定長さの長方形状となっているが、楕円形状や、軸部52中心Cに対して中心位置をずらした円形状等であってもよい。
【0021】
上記ボルト50に螺着されるナット60は、タッピングねじが形成された軸部52に対応して、その中央に挿通孔62を設けた樹脂製とされている。但し、ナット60を、挿通孔62内に雌ねじを設けた金属製とし、ボルト50の軸部52外周に対応する雄ねじを形成してもよく、特に限定されるものではない。
【0022】
図1〜7に示すように、前記本体20は、燃料タンク1への溶着部26と、ボルト50の頭部54を保持すると共に軸部52を挿出させる支持壁22とを有している。
【0023】
前記支持壁22は、所定厚さの円盤板状をなしている。図2、図6及び図7に示すように、この支持壁22には、前記ボルト50を所定回転角度にしたとき、その頭部54及び軸部52が通過できる貫通孔28が形成されている。この貫通孔28は、ボルト50の頭部54に対応して、支持壁22の中心を通る長方形状をなしている。
【0024】
更に支持壁22には、ボルト50を、貫通孔28に通過可能な角度とは異なる回動角度にしたとき、その頭部54が嵌合する凹部30が形成されている(図2,4,5参照)。この実施形態での凹部30は、前記貫通孔28に対して直交するように、前記支持壁22の中心を通り、前記ボルト50の頭部54に適合した長方形状で形成されている。
【0025】
また、支持壁22の内周には、前記貫通孔28の中心に向けて、すり鉢状に傾斜したテーパ面22aが形成されており、前記凹部30及び前記貫通孔28の周縁部が溶着部26(後述)に向けて広がった形状をなしている。
【0026】
上記の円盤形状をなした支持壁22の外周縁からは、円筒状をなした円筒壁24が所定高さで立設しており、この円筒壁24の先端面が、燃料タンク1に対する前記溶着部26となっている(図4参照)。また、前述した支持壁22と同様に、円筒壁24の内周に、溶着部26に向けて次第に広がるテーパ面を設けてもよい。
【0027】
また、本体20の溶着部26と支持壁22との間には、本体20の溶着部26を燃料タンク1に溶着させ、ボルト50の頭部54を凹部30より抜き出した状態で(図5(b)想像線参照)、ボルト50の頭部54を回動可能とする空間32が設けられている。この実施形態の空間32は、前述した円筒壁24及びテーパ面22aの内側に形成されている。また、ボルト50の頭部54を凹部30から抜き出し可能で且つ回動可能となるように形成された空間32は、溶着部26が燃料タンク1に溶着された状態で、その高さHが、少なくともボルト50の頭部54の厚さT以上となっている(図4参照)。
【0028】
なお、テーパ面22aの高さが、ボルト50の頭部54の厚さT以上となっていれば、溶着部26が全て溶けても、ボルト50の頭部54を回動可能にすることができる。
【0029】
支持壁22の円筒壁24とは反対側の面からは、四角筒状をなした角筒壁34が所定高さで立設しており、その先端面が遮熱板3に当接する当接部36をなしている(図4参照)。角筒壁34の外周は、前記円筒壁24の外周に対して小さく形成されており、それにより円筒壁24と角筒壁34との間に、円筒壁24側から角筒壁34に向けて縮径する段部38が形成されている(図2及び図3参照)。
【0030】
また、図2〜5に示すように、前記支持壁22の円筒壁24とは反対側の面であって、前記貫通孔28の周縁からは、一対の仮止め片40,40が前記角筒壁34に囲まれるように延出している。一対の仮止め片40,40の先端は、互いに近接する方向に突出し、前記ボルト50の軸部52のネジ溝に係合する係止爪42をなしている。
【0031】
なお、上記実施形態では、本体20に筒状の円筒壁24を設けて、その先端を溶着部26とし、その内側に空間32を設けたが、例えば、支持壁22の両側から一対の突片を設けて、その先端面を溶着部26とし、その内側を空間32としてもよく、特に限定されるものではない。
【0032】
次に、本発明に係る固定具10の使用方法及び作用効果について説明する。
【0033】
まず、ボルト50の頭部54を本体20の凹部30に整合させた状態で、軸部52を本体20の溶着部26側から貫通孔28に挿入し、ボルト50を押し込むことにより、図3に示すように、軸部52外周のネジ溝に一対の仮止め片40,40の係止爪42,42がそれぞれ係合して、軸部52が仮保持されると共に、図5(a),(b)に示すように、頭部54が凹部30に嵌合して回り止めされて、ボルト50を本体20に保持させることができる。
【0034】
そして、角筒壁34を治具や工具等で挟み込んで保持し、その状態で固定具10を燃料タンク1に向けて押し付けて、本体20の溶着部26を燃料タンク1の所定部位に当接させ、熱板溶着等の溶着手段で、溶着部26を溶着させることにより、本体20が燃料タンク1に固着されて、本体20からボルト50の軸部52が挿出した状態とすることができる。
【0035】
次いで、軸部52を遮熱板3に形成された取付孔5に挿通し、本体20の当接部36を取付孔5の周縁に当接させると共に、取付孔5から挿出された軸部52を、そのタッピングねじによって、挿通孔62内に雌ねじを形成しつつナット60に螺着させることにより、本体20の当接部36とナット60との間で遮熱板3が締付け固定されて、図4及び図8に示すように、遮熱板3を燃料タンク1に固着することができる。この実施形態では、複数の固定具10により遮熱板20が固着されている(図8参照)。
【0036】
このとき、本体20の、溶着部26を設けた円筒壁24とは反対側に、角筒壁34を設けたことにより、この角筒壁34を治具や工具等で挟み込みやすくなり、燃料タンク1への本体20の溶着作業の際に、本体20をしっかりと保持することができる。また、円筒壁24と角筒壁34との間に段部38が設けられているので、この段部38に治具や工具等を当接させることで、本体20を燃料タンク1に向けて押し付けやすくなり、溶着作業性を向上させることができる。更に、円筒壁24の先端面が溶着部26をなし、溶着部26が円環状となっているので、燃料タンク1に均等に接触させることでき、溶着ムラ等を少なくして、燃料タンク1に対する接合力を高めることができる。また、本体20の角筒壁34の先端面が当接部36をなし、該当接部36が取付孔5周縁を囲むように遮熱板3に対して広い接触面積で当接するので、遮熱板3を安定して支持することができる。
【0037】
そして、ボルト50が錆により劣化したり、破損したりして交換する必要が生じた場合には、次のようにしてボルト50を交換することができる。これについて図5〜7を参照して説明する。
【0038】
まず、ナット60を緩めてボルト50の軸部52から外すと共に、凹部30に頭部54が嵌合した状態(図5(a),(b)参照)から、ボルト50を燃料タンク1側に向けて押し込む。すると、図5(b)の想像線で示すように、ボルト50の頭部54が凹部30から抜き出され、溶着部26と支持壁22との間に設けられた空間32内で、頭部54を回動可能となる。そこで、図6(a),(b)及び図7に示すように、頭部54を貫通孔28に整合するように回動させ、軸部52を引っ張り、貫通孔28を通して頭部54を抜き出すことにより、本体20からボルト50を取外すことができる(図6(b)想像線及び図7参照)。
【0039】
なお、この実施形態では支持壁22の内周に、貫通孔28中心に向けすり鉢状に傾斜したテーパ面22aが形成されているので、頭部54を回動させるときに、凹部30と貫通孔28との間の壁に、頭部54が引っ掛かりにくくなり、スムーズに回動させることができる。
【0040】
以上のようにして古いボルト50を取外した後、新しいボルト50の頭部54を貫通孔28に整合させて押し込み、ボルト50の頭部54を、貫通孔28を通して支持壁22の内側に挿入し、凹部30から突出するように燃料タンク1側へ深く押し込む。その状態で、ボルト50を回動して頭部54を凹部30に整合させて、軸部52を引っ張ることにより、頭部54を凹部30に嵌合させて、ボルト50が回り止めされると共に一対の仮止め片40,40により仮止め保持されて、本体20からボルト50の軸部52が挿出した状態で保持させることができる。
【0041】
このように、この固定具10においては、劣化したり破損したりした古いボルト50を新しいボルト50に交換する際に、従来のように燃料タンク1ごと交換する必要がなく、古いボルト50だけを新しいボルト50に簡単かつ確実に交換することができ、コスト低減を図ることが可能となる。
【0042】
また、この実施形態では、支持壁22の内周面に、前記溶着部26に向けて次第に広がるテーパ面22aが形成され、凹部30や貫通孔28の周縁部が溶着部26に向けて次第に広がる形状となっているので、支持壁22の凹部にボルト50の頭部54をスムーズに引き込んで嵌合させることができると共に、貫通孔28から頭部54をスムーズに抜き出すこともできる。
【0043】
そして、図4に示すように、溶着部26が燃料タンク1に溶着され、ボルト50の頭部54が支持壁22の凹部30に嵌合した状態で、溶着部26と支持壁22との間に、ボルト50の頭部54の厚さT以上の高さHで、空間32が形成されている。その結果、ボルト50の頭部54が燃料タンク1に直接接触することがなく、前記空間32が断熱層として機能するので、ボルト50を介して排気管P(図8参照)等からの熱が燃料タンク1に伝わるのを効果的に防止することができる。
【0044】
また、この実施形態におけるボルト50の頭部54は、一方向に長く伸びる長尺形状に形成され、本体20の凹部30及び貫通孔28が頭部54に対応した長尺形状をなし、かつ、凹部30と貫通孔28とは互いに交差して配置されている。これによれば、貫通孔28が長尺形状をなしているため、同貫通孔28を細長く幅の狭い形状に形成できるので、本体20の強度低下を防止でき、ボルト50の頭部54が凹部30に嵌合したときの強度を高めることができる。
【0045】
なお、上記実施形態においては、図3に示すように、予め本体20にボルト50を組付けた状態で、本体20を燃料タンク1に固着しているが、この態様に限定されるものではない。すなわち、本体20にボルト50を組付けずに、本体20だけを燃料タンク1に固着しておき、前述した、古いボルトを取外した後に、新しいボルト50を取付けるときと同じ作業を行うことにより、本体20からボルト50の軸部52が挿出した状態で保持させておくことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 燃料タンク
3 遮熱板
5 取付孔
10 遮熱板の固定具(固定具)
20 本体
22 支持壁
22a テーパ面
24 円筒壁
26 溶着部
28 貫通孔
30 凹部
32 空間
34 角筒壁
36 当接部
38 段部
50 ボルト
52 軸部
54 頭部
60 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮熱板を樹脂製の燃料タンクの所定部位に取付けるための固定具であって、
前記燃料タンクに溶着される樹脂製の本体と、該本体に頭部を保持されると共に軸部を挿出させて取付けられるボルトと、該ボルトを前記遮熱板の取付孔に挿通させた状態で該ボルトに螺着されるナットとを備え、
前記ボルトの頭部は、軸部の中心に対する距離が一定でない周縁形状を有し、
前記本体は、前記燃料タンクへの溶着部と、前記ボルトの頭部を保持すると共に前記軸部を挿出させる支持壁とを有し、
前記支持壁は、前記ボルトを所定回動角度にしたときその頭部が通過できる貫通孔と、前記ボルトを前記とは異なる回動角度にしたときその頭部が嵌合する凹部とを有しており、
前記本体の溶着部と前記支持壁との間には、前記本体を前記燃料タンクに溶着させ、前記ボルトの頭部を前記凹部より抜き出した状態で、前記ボルトの頭部を回動可能とする空間が設けられていることを特徴とする遮熱板の固定具。
【請求項2】
前記ボルトの頭部は、一方向に長く伸びる長尺形状に形成され、
前記本体の凹部及び貫通孔が前記頭部に対応した長尺形状をなし、かつ、前記凹部と前記貫通孔とは互いに交差して配置されている請求項1記載の遮熱板の固定具。
【請求項3】
前記本体の溶着部と支持壁との間の空間は筒状壁で囲まれ、この筒状壁の端面が前記溶着部をなしており、前記筒状壁の内周及び/又は前記支持壁の内周には、前記溶着部に向けて次第に広がるテーパ面が形成されている請求項1又は2記載の遮熱板の固定具。
【請求項4】
前記支持壁と前記溶着部との間は円筒壁で形成され、前記支持壁と前記遮熱板の当接部との間は角筒壁で形成されており、前記円筒壁と前記角筒壁との間には、前記円筒壁側から前記角筒壁に向けて縮径する段部が形成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の遮熱板の固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−255737(P2011−255737A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130288(P2010−130288)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】