説明

遮音コンクリート板

【課題】 鉛遮音シートを用いて遮音性能の優れた遮音コンクリート板を得ること。
【解決手段】 鉄筋コンクリート床板11の表面11Aの全面を覆うようにして鉛遮音シート14を一体化して遮音コンクリート板を構成する。表面11Aと鉛遮音シート14との間に絶縁層15を設け鉛遮音シート14にコンクリートが直接接しないようにする。鉛遮音シート14は鉄筋コンクリート床板11内に配筋した鉄筋12に鋼棒13を用いて結束することにより一体化する。鉛遮音シート14は高密度、高質量な材質のものであるから、鉛遮音シート14と鉄筋コンクリート床板11とを一体化させたことで単純累加以上の遮音性能が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛遮音材とコンクリート構造体とを一体化させた遮音コンクリート板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建物内での上下階、及び隣戸間の防音・遮音対策は、振動源から発生する固体伝播音の構造体への伝播低減を目的に、二重床等の床上げ構造、床スラブ厚のふかし、及び給排水管等の防振支持など仕上げ材や吸音材、遮音材を組み合わせた方法が採用されてきている。そして、建物躯体が出来た後の防音・遮音対策は、床や天井、間仕切壁等の下地工事で実施されている。
【0003】
この種の防音・遮音対策として、従来においては、鉄板やボード類を遮音材として用いたものが一般的である。また、特許文献1に開示されているように、鉛シートをALCパネルや床板に粘着剤等を用いて貼り付け、貼り付けられた鉛シートが相手側の板材と同じ形でひずまないことにより生じる相対運動の発生を利用し、制振効果を果たすことができるようにした構成も公知である。
【特許文献1】特開2003−302976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、鉄板やボード類を用いた遮音対策では、共振現象により遮音性が低下することが多く、有効な防音・遮音対策とは言えない。また、予め構築されている壁体や床板に後から鉛シートを接着剤を用いて貼り付ける構成によると、遮音効果に関しては不充分であり、後からの貼り付けのために工程が複雑となり、工期が長くなる傾向を有するという問題点を有している。
【0005】
本発明の目的は、従来技術における上述の問題点を解決することができる遮音コンクリート板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明によれば、コンクリート板材の主面に鉛遮音シートを一体化して成る遮音コンクリート板において、鉛遮音シートをコンクリート板材内に配筋した鉄筋等に鋼棒等を用いて結束することにより前記コンクリート板材と前記鉛遮音シートとを一体化すると共に、前記主面と前記鉛遮音シートとの間に絶縁層を設けたことを特徴とする遮音コンクリート板が提案される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、遮音性とX線の遮蔽性に優れ、且つ、省力化及び工期短縮を可能とする遮音性能に優れた遮音コンクリート板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例につき詳しく説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施の形態の一例を示す断面図であり、鉛遮音シート材を、コンクリート床スラブ内に配筋した鉄筋等に鋼棒等で結束することにより、コンクリート床スラブに一体化して成る遮音コンクリート板10の例が示されている。
【0010】
図1において、11はプレキャストの鉄筋コンクリート床板で、鉄筋12が配筋されており、鉄筋12には複数の帯結束鋼棒13が適宜の間隔をあけて溶接その他の適宜の手段で取り付けられている。これらの帯結束鋼棒13の先端13Aは鉄筋コンクリート床板11の表面11Aから突出している。鉄筋コンクリート床板11の主面である表面11Aには、鉛遮音シート14が鉄筋コンクリート床板11の表面11A全体を覆うように設けられている。
【0011】
表面11Aと鉛遮音シート14との間には、鉛遮音シート14がコンクリートと直接接触することにより生じる腐食、又は変質を防止するための絶縁層15が設けられている。絶縁層15は、コンクリートにふくまれるアルカリ成分が鉛遮音シート14に悪影響を及ぼすのを阻止する目的で設けられている。すなわち、絶縁層15は、コンクリート打設時に鉛遮音シート14にコンクリートを含んだ水分が直接触れるのを防止する防水層の機能を有すると共に、コンクリートが固化した後も、コンクリートに含まれているアルカリ成分を鉛遮音シート14から絶縁(遮断)する機能を有しており、これにより、鉛遮音シート14が腐食し、又は変質するのを有効に防止することができる。
【0012】
そして、鉛遮音シート14は帯結束鋼棒13の先端13Aにより鉄筋コンクリート床板11の表面11Aに絶縁層15を介して密着せしめられ、これにより、鉄筋コンクリート床板11と鉛遮音シート14との一体化が達成されている。
【0013】
本実施の形態では、鉄筋コンクリート床板11と鉛遮音シート14との上述の一体化はプレキャスト工場において行われ、このようにして得られた遮音コンクリート板10の上に、現場打設のコンクリート板20が構築され、全体として床スラブを構成している。しかし、鉄筋コンクリート床板11と鉛遮音シート14との上述の一体化を、建設現場において行うこともできることは勿論である。
【0014】
以上のように、鉄筋コンクリート床板11と鉛遮音シート14とが一体化されて遮音コンクリート板10が構成されているので、遮音コンクリート10は良好な遮音特性を得ることができる。そして、鉄筋コンクリート床板11の表面11Aと鉛遮音シート14との間に絶縁層15を設けた構成としたので、コンクリート打設時に鉛遮音シート14からコンクリート又はコンクリートを含んだ水分を絶縁し、また、コンクリートが固化した後も、コンクリートに含まれているアルカリ成分を鉛遮音シート14から絶縁するので、これにより、鉛遮音シート14が腐食し、又は変質するのを有効にを防止することができる。
【0015】
遮音コンクリート10の遮音特性について図2を参照して説明する。鉛遮音シートの遮音特性が図2(a)に示す通りであり、一方コンクリート床板の遮音特性が図2(b)に示す通りである場合、これらを一体化した場合には、その総合遮音特性は図2(c)中に実線で示されるようになる。これは、図2(a),(b)に示される2つの遮音性能を単純累加した遮音特性(点線で示す)よりも優れた特性となっている。
【0016】
ここで、中高音域では、鉛シートの2mm厚はコンクリートの10mm厚と同程度の質量増による遮音性能向上の効果しか得られないが、空気中の音波の波長とコンクリート板の曲げ波の波長が近接することにより、特定の周波数で遮音性能が低下するコインシデンス周波数(コンクリート150mmの場合160Hz帯域)では、鉛の制振効果により、コンクリート厚増に比べて遮音性能の低下は小さくなる。鉛板をプレキャストの一体成形とすることにより、制振効果がより顕著になり、高性能の遮音効果が得られる。
【0017】
遮音コンクリート板10は、遮音材としての鉛シートがコンクリート板と一体化しているため、構造躯体が出来た段階で、精度良く振動源を区画された室空間毎に密閉することが可能となる。これらの鉛遮音コンクリート板は、集合住宅やホテル、事務所等の床スラブ、及び、隣戸界壁や間仕切壁に適用することができ、極めて良好な遮音効果を得ることができる。
【0018】
上記実施の形態では、本発明を床材としての遮音コンクリート板10について説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されず、遮音のために床以外の、例えば壁材等に同様に適用して同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す図の説明図である。
【図2】図1に示した遮音コンクリート板の遮音特性を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0020】
10 遮音コンクリート板
11 鉄筋コンクリート床板
11A 表面
12 鉄筋
13 帯結束鋼棒
13A 先端
14 鉛遮音シート
15 絶縁層
20 コンクリート板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート板材の主面に鉛遮音シートを一体化して成る遮音コンクリート板において、鉛遮音シートをコンクリート板材内に配筋した鉄筋等に鋼棒等を用いて結束することにより前記コンクリート板材と前記鉛遮音シートとを一体化すると共に、前記主面と前記鉛遮音シートとの間に絶縁層を設けたことを特徴とする遮音コンクリート板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−283458(P2006−283458A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107038(P2005−107038)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】