説明

選択的アンドロゲン受容体モジュレーター及びその使用方法

【課題】選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物であって、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドのインビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物の提供。
【解決手段】下記式で表わされる化合物


XはO等であり、Zは水素結合アクセプター、NO等であり、Yは脂質可溶性基、CF等であり、QはF,COR,NHCOCH等である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドのアンドロゲン活性及び同化作用活性を証明する新規なクラスの組織選択的アンドロゲン受容体標的剤(ARTA)に関する。本薬剤は、男性のホルモン療法の例えば経口テストステロン置換療法、男性の避妊、女性の性欲の維持、前立腺癌の治療及び前立腺癌のイメージングのために有用な組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)である新規なサブクラスの化合物を定義する。本薬剤をまた、サルコペニア、性欲の欠如、骨粗鬆症、赤血球生成、及び妊孕性の治療のために患者に投与する。本薬剤を、単独でまたはプロゲスチン若しくはエストロゲンと組み合わせて使用してよい。
【0002】
発明の背景
アンドロゲン受容体(“AR”)は、その活性によって内因性アンドロゲンと共に男性の性発育及び性機能の誘導を媒介するリガンド活性化転写調節タンパク質である。アンドロゲンは一般に男性ホルモンとして周知である。しかしながら、アンドロゲンはまた、女性の生理現象及び生殖現象において中枢的な役割を果たしている。男性ホルモンは、体内で精巣及び副腎の皮質によって産生されるかまたは実験室で合成されるステロイドである。アンドロゲンステロイドは、男性の性徴の例えば筋肉及び骨塊、前立腺の成長、精子形成、及び男性の毛髪パターンの発現並びに維持を含む多くの生理学的プロセスにおいて重要な役割を果たしている(Matsumoto, Endocrinol, Met. Clin. N. Am. 23:857-75 (1994))。内因性ステロイド系アンドロゲンとしては、テストステロン及びジヒドロテストステロン(“DHT”)が挙げられる。テストステロンは、精巣によって分泌される主要なステロイドであり、男性の血漿中に見い出される主要な循環アンドロゲンである。テストステロンは、多くの末梢組織において酵素5α−レダクターゼによってDHTに転換される。従って、DHTは大部分のアンドロゲン作用のための細胞内メディエーターとして役立つと考えられている(Zhou, et al., Molec. Endocrinol. 9:208-18 (1995))。他のステロイド系アンドロゲンとしては、テストステロンのエステルの例えばシピオネート、プロピオナート、フェニルプロピオナート、シクロペンチルプロピオナート、イソカプロレート、エナント酸エステル、及びデカノエートエステル、並びに他の合成アンドロゲンの例えば7−メチル−ノルテストステロン(“MENT”)及びその酢酸エステル(Sundaram et al., "7 Alpha-Methyl-Nortestosterone(MENT): The Optimal Androgen For Male Contraception," Ann, Med., 25:199-205 (1993) ("Sundaram"))が挙げられる。ARは男性の性発育及び性機能に関与しているので、恐らくARは、男性の避妊または他の形態のホルモン置換療法を達成するための標的である。ARはまた、女性の性機能(すなわち、性的衝動)、骨形成、及び赤血球生成を調節する。
【0003】
世界的な人口増加と家族計画に対する社会的認識とは、避妊における幾多の研究を刺激した。避妊はいかなる状況下でも困難な問題である。これは、文化的及び社会的な汚点、宗教との密接な関係、並びに間違いなくかなりの健康上の懸念を伴う。この状況は、この問題が男性の避妊に集中した場合には悪化するのみである。適切な避妊装置の入手しやすさにもかかわらず、歴史的に、社会は、女性が避妊の決定及びその結果に対して責任を負うものと期待してきた。性感染症に関する健康上の懸念から、男性は安全で信頼できる性習慣を開発する必要をより認識するようになったが、女性は依然としてしばしば避妊の選択の矢面に立たされている。女性は、スポンジ及び隔膜のような一時的な機械的装置から殺精子薬のような一時的な化学的装置に至るまで多数の選択を有する。女性はまた、本人の裁量で、IUD及び子宮頚キャップ等の物理的装置のようなより永久的な選択肢並びに経口避妊薬及び皮下植込み剤のようなより永久的な化学的処置も有する。しかしながら現在までのところ、男性が利用できる選択肢としては、コンドームまたは精管切断術の使用が挙げられるのみである。しかしながら、コンドームの使用は、性的感受性が低減すること、性行為が妨げられること、また破損または誤用によって引き起こされる妊娠の可能性がかなりあるという理由から、多くの男性に支持されない。精管切断術もまた支持されない。産児制限のより便利な方法、特に性行為の直前の準備行為を必要としない長期にわたる方法を男性が利用できれば、このような方法は、男性が避妊に対してより多くの責任を持つと思われる公算をかなり増大させる可能性がある。
【0004】
この点に関して、男性性ステロイド(例えば、テストステロン及びその誘導体)の投与は、こうした化合物のゴナドトロピン抑制特性及びアンドロゲン置換特性の組み合わせが理由となって特に有望であることを示した。(Steinberger et al., "Effect of Chronic Administration of Testosterone Enanthate on Sperm Production and Plasma Testosterone, Follicle Stimulating Hormone, and Luteinizing Hormone Levels: A Preliminary Evaluation of a Possible Male Contraceptive", Fertility and Sterility 28:1320- 28 (1977))。高い用量のテストステロンの慢性的な投与は、精子産生を完全に破壊する(無精子症)かまたは非常に低いレベルに低減する(精液過少症)。不妊を生じるのに必要な精子形成抑制の程度は、正確には知られていない。しかしながら、世界保健機関による最近の報告は、エナント酸テストステロンの毎週の筋肉内注射は、無精子症または重い精液過少症(すなわち、3百万個未満の精子/mL)及び治療を受ける男性の98%の不妊を引き起こすことを示した(World Health Organization Task force on Methods Ar Regulation of Male Fertility, "Contraceptive Efficacy of Testosterone-Induced Azoospermia and Oligospermia in Normal Men," Fertility and Sterility 65:821-29 (1996))。
【0005】
筋肉内注射後によりゆっくりと吸収され、従ってより大きなアンドロゲン効果を引き起こす様々なテストステロンエステルが開発されてきた。エナント酸テストステロンは、こうしたエステルのうちで最も広く使用されている。エナント酸テストステロンは、男性の避妊のためのホルモン剤の実現可能性を確立するという点で役立ったが、これは、毎週の注射が必要であるということと筋肉内注射直後にテストステロンの超生理学的なピークレベルが存在するということとを含む、幾つかの欠点を有する(Wu, "Effects of Testosterone Enanthate in Normal Men: Experience From a Multicenter Contraceptive Efficacy Study," Fertility and Sterility 65:626-36 (1996))。
【0006】
ARに結合し、アンドロゲン(例えばエナント酸テストステロン)としてまたは抗アンドロゲン(例えば酢酸シプロテロン)として働くステロイド系リガンドは、長年にわたって知られており、臨床的に使用されてきた(Wu 1988)。非ステロイド系抗アンドロゲンはホルモン依存性前立腺癌のために臨床的に使用されているが、非ステロイド系アンドロゲンは報告されていない。こうした理由で、男性の避妊薬に関する研究はもっぱらステロイド系化合物に集中してきた。
【0007】
発明の要約
本発明は、新規なクラスの組織選択的アンドロゲン受容体標的剤(ARTA)を提供する。本薬剤は、経口テストステロン置換療法、男性の避妊、女性の性欲の維持、骨粗鬆症、前立腺癌の治療及び前立腺癌のイメージングのために有用な組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)である新規なサブクラスの化合物を定義する。本薬剤は、ARのための非ステロイド系リガンドのアンドロゲン活性及び同化作用活性のための予想外で組織選択的なインビボ活性を有する。本薬剤は、ある組織中では部分アゴニストとして選択的に働き、一方、他の組織中では完全アゴニストとして働いて、組織選択的なアンドロゲン効果または同化作用効果を引き出すための新規で予想外の手段を提供する。本薬剤は、単独でまたはプロゲスチン若しくはエストロゲンと組み合わせて活性を有することができる。本発明はさらに、新規なクラスの非ステロイド系アゴニスト化合物を提供する。本発明はさらに、選択的アンドロゲンモジュレーター化合物または非ステロイド系アゴニスト化合物を含む組成物、並びに、ARに結合し、精子形成、骨形成及び/または骨吸収を調節し、前立腺癌を治療及びイメージングし、アンドロゲン依存性状態のためのホルモン治療を提供する方法を提供する。
【0008】
本発明は、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドの組織選択的インビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式I:
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、Xは、O、CH2、NH、Se、PR、またはNRであり;
Zは、NO2、CN、COR、COOHまたはCONHRであり;
Yは、I、CF3、Br、Cl、またはSnR3であり;
Qは、アルキル、ハロゲン、NR2、NHCOCH3、NHCOCF3、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH3、NHCSCF3、NHCSR NHSO2CH3、NHSO2R、OR、COR、OCOR、OSO2R、SO2RまたはSRであり、
ここで、Rは、アルキル、アリール、ヒドロキシ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、フェニル、ハロ、アルケニルまたはヒドロキシルであり;
またはQはそれが結合しているベンゼン環と一緒になって、構造A、BまたはC:
【0011】
【化2】

【0012】
で表される縮合環系であり、
1は、CH3、CF3、CH2CH3、またはCF2CF3であり;
Tは、OH、OR、−NHCOCH3、またはNHCORであり、ここで、Rは、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、フェニル、ハロ、アルケニルまたはヒドロキシルである。]
の構造で表される。
【0013】
1実施例においては、Qはパラ位にある。別の実施例においては、XはOである。別の実施例においては、Qはパラ位にあり、XはOである。さらに別の実施例においては、Qは、パラアルキル、ハロゲン、NR2、NHCOCH3、NHCOCF3、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH3、NHCSCF3、NHCSR NHSO2CH3、NHSO2R、OR、COR、OCOR、OSO2R、SO2RまたはSRであり、ここで、Rは、アルキル、アリール、ヒドロキシ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、フェニル、ハロ、アルケニルまたはヒドロキシルである。
【0014】
本発明は、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドのインビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式II:
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、Xは、O、CH2、NH、Se、PR、またはNRであり;
Zは、水素結合アクセプター、NO2、CN、COR、CONHRであり;
Yは、脂質可溶性基、I、CF3、Br、Cl、SnR3であり;
Rは、アルキル若しくはアリール基またはOHであり;
Qは、アセトアミド−、トリフルオロアセトアミド−、アルキルアミン類、エーテル、アルキル、N−スルホニル、O−スルホニル、アルキルスルホニル、カルボニル、またはケトンである。]
の構造で表される。
【0017】
本発明はまた、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドのインビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式III:
【0018】
【化4】

【0019】
[式中、Xは、O、CH2、NH、Se、PR、またはNRであり;
Zは、NO2、CN、COR、またはCONHRであり;
Yは、I、CF3、Br、Cl、またはSnR3であり;
Rは、アルキル、若しくはアリール基またはOHであり;
Qは、アセトアミドまたはトリフルオロアセトアミドである。]
の構造で表される。
【0020】
本発明はまた、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドの組織選択的インビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式IV:
【0021】
【化5】

【0022】
の構造で表される。
本発明はまた、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドの組織選択的インビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式V:
【0023】
【化6】

【0024】
の構造で表される。
本発明はまた、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドの組織選択的インビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式VI:
【0025】
【化7】

【0026】
の構造で表される。
本発明はまた、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドの組織選択的インビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式VII:
【0027】
【化8】

【0028】
の構造で表される。
本発明はまた、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物をアンドロゲン受容体に結合させる方法であって、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物をアンドロゲン受容体に結合させるのに有効な条件下で、アンドロゲン受容体を選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物と接触させることを含む方法に関する。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0029】
本発明の別の態様は、患者における精子形成を調節する方法であって、精子産生を増大または減少させるのに有効な条件下で、患者のアンドロゲン受容体を選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物と接触させることを含む方法に関する。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0030】
本発明はまた、ホルモン療法の方法であって、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物をアンドロゲン受容体に結合させ、アンドロゲン依存性状態の変化をもたらすのに有効な条件下で、患者のアンドロゲン受容体を選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物と接触させることを含む方法に関する。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0031】
本発明はまた、ホルモン関連状態を有する患者を治療する方法であって、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物をアンドロゲン受容体に結合させ、アンドロゲン依存性状態の変化をもたらすのに有効な条件下で、前記患者のアンドロゲン受容体を選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物と接触させることを含む方法に関する。1実施例においては、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は、アンドロゲンまたはテストステロン受容体に対して選択的である。本発明はまた、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物を経口投与する方法に関する。
【0032】
本発明はまた、慢性筋肉消耗疾患状態を有する患者を治療する方法であって、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物をアンドロゲン受容体に結合させ、アンドロゲン依存性状態の変化をもたらすのに有効な条件下で、前記患者のアンドロゲン受容体を本明細書において説明する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物と接触させることを含む方法に関する。1実施例においては、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は、アンドロゲンまたはテストステロン受容体に対して選択的である。本発明はまた、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物を経口投与する方法に関する。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0033】
本明細書において、“慢性筋肉消耗”の疾患状態は意味する
本発明はまた、前立腺癌を有する患者を治療する方法であって、有効な量の選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物を患者に投与することを含む方法に関する。1実施例においては、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は、アンドロゲンまたはテストステロン受容体に対して選択的である。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0034】
本発明はまた、選択的アンドロゲン受容体モジュレーターを単独でまたはプロゲスチン若しくはエストロゲン及び適切なキャリア、希釈剤若しくは塩と組み合わせて含む組成物及び医薬組成物に関する。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0035】
本発明は、非ステロイド系アゴニスト化合物に関し、該非ステロイド系アゴニスト化合物は式VIII:
【0036】
【化9】

【0037】
[式中、Xは、O、CH2、NH、Se、PR、またはNRであり;
1は、CH3、CF3、CH2CH3、またはCF2CF3であり;
Tは、OH、OR、−NHCOCH3、またはNHCORであり、ここで、Rは、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、フェニル、ハロ、アルケニルまたはヒドロキシルであり;
Aは、構造:
【0038】
【化10】

【0039】
で表される5或いは6員の飽和、不飽和または芳香族炭素環式若しくは複素環式環であり、
Bは、構造:
【0040】
【化11】

【0041】
で表される5或いは6員の飽和、不飽和または芳香族炭素環式若しくは複素環式環であり、
ここで、A1〜A11は、各々C、O、SまたはNであり;
1〜B11は、各々C、O、SまたはNであり;
Zは、NO2、CN、COOH COR、またはCONHRであり;
Yは、I、CF3、Br、Cl、またはSnR3であり;
1及びQ2は、互いから独立して、アルキル、ハロゲン、NR2、NHCOCH3、NHCOCF3、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH3、NHCSCF3、NHCSR NHSO2CH3、NHSO2R、OR、COR、OCOR、OSO2R、SO2RまたはSRであり、ここで、Rは、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、フェニル、ハロ、アルケニルまたはヒドロキシルである。]
の構造で表される。
【0042】
本発明はまた、非ステロイド系アゴニスト化合物を単独でまたはプロゲスチン若しくはエストロゲン及び適切なキャリア、希釈剤若しくは塩と組み合わせて含む組成物及び医薬組成物に関する。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0043】
本発明はまた、非ステロイド系アゴニスト化合物をアンドロゲン受容体に結合させる方法であって、非ステロイド系アゴニスト化合物をアンドロゲン受容体に結合させるのに有効な条件下で、アンドロゲン受容体を非ステロイド系アゴニスト化合物と接触させることを含む方法に関する。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0044】
本発明はまた、患者における精子形成を調節する方法であって、精子産生を増大または減少させるのに有効な条件下で、患者のアンドロゲン受容体を非ステロイド系アゴニスト化合物と接触させることを含む方法に関する。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0045】
本発明はまた、ホルモン療法の方法であって、非ステロイド系アゴニスト化合物をアンドロゲン受容体に結合させ、アンドロゲン依存性状態の変化をもたらすのに有効な条件下で、患者のアンドロゲン受容体を非ステロイド系アゴニストと接触させることを含む方法に関する。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0046】
本発明はまた、ホルモン関連状態を有する患者を治療する方法であって、非ステロイド系アゴニスト化合物をアンドロゲン受容体に結合させ、アンドロゲン依存性状態の変化をもたらすのに有効な条件下で、前記患者のアンドロゲン受容体を非ステロイド系アゴニスト化合物と接触させることを含む方法に関する。1実施例においては、非ステロイド系アゴニスト化合物は、アンドロゲンまたはテストステロン受容体に対して選択的である。本発明はまた、非ステロイド系アゴニスト化合物を経口投与する方法に関する。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0047】
本発明はまた、前立腺癌を有する患者を治療する方法であって、有効な量の非ステロイド系アゴニスト化合物を患者に投与することを含む方法に関する。1実施例においては、非ステロイド系アゴニスト化合物は、アンドロゲンまたはテストステロン受容体に対して選択的である。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0048】
本発明のさらに別の態様は、本発明の選択的アンドロゲン受容体モジュレーターまたは非ステロイド系ARアゴニスト化合物の製造方法に関する。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0049】
本発明はさらに、試料中の本発明の選択的アンドロゲンモジュレーター化合物及び/または非ステロイド系アゴニスト化合物の存在を決定する方法に関する。この方法は、試料を得る工程と、試料中の本化合物を検出する工程とを含み、それによって試料中の本化合物の存在を決定する。1実施例においては、試料は、血清、血漿、尿、または唾液試料である。別の実施例においては、検出工程は、本化合物の吸光度を測定することを含む。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0050】
本発明の新規な選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物及び非ステロイド系アゴニスト化合物は、単独でまたは組成物として、様々なホルモン関連状態の例えば性腺機能低下症、サルコペニア、赤血球生成、勃起機能、性的衝動の欠如、骨粗鬆症及び妊孕性の治療のために男性及び女性において有用である。さらに、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物及び非ステロイド系アゴニスト化合物は、経口テストステロン置換療法、前立腺癌の治療、前立腺癌のイメージング及び女性の性欲の維持のために有用である。本薬剤を、単独でまたはプロゲスチン若しくはエストロゲンと組み合わせて使用してよい。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0051】
本発明の選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物及び非ステロイド系アゴニスト化合物は、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドの組織選択的アンドロゲン活性及び同化作用活性を有することをインビボで示したので、本発明の選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物及び非ステロイド系アゴニスト化合物は、ステロイド系アンドロゲン治療に勝るかなりの進歩を提供する。その上、本発明の選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物及び非ステロイド系アゴニスト化合物は、重大な副作用、酸化的代謝に対する不安定性、不便な投与様式、高いコストのいずれも伴わず、依然として、経口生物学的利用率、他のステロイド受容体との交差反応性が無いこと、及び長い生物学的半減期という利点を有する。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0052】
本発明は、添付の図面と合わせて以下の詳細な説明からより十分に理解され、了解されよう。
【0053】
発明の詳細な説明
本発明は、新規なクラスのアンドロゲン受容体標的剤(ARTA)を提供する。本薬剤は、経口テストステロン置換療法、男性の避妊、女性の性欲の維持、前立腺癌の治療及び前立腺癌のイメージングのために有用な組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)である新規なサブクラスの化合物を定義する。本薬剤は、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドのアンドロゲン活性及び同化作用活性のための予想外の組織選択的なインビボ活性を有する。本薬剤は、単独でまたはプロゲスチン若しくはエストロゲンと組み合わせて活性を有することができる。本発明はさらに、新規なクラスの非ステロイド系アゴニスト化合物を提供する。本発明はさらに、選択的アンドロゲンモジュレーター化合物または非ステロイド系アゴニスト化合物を含む組成物、並びに、アンドロゲン受容体に結合し、精子形成を調節し、前立腺癌を治療及びイメージングし、アンドロゲン依存性状態のためのホルモン治療を提供する方法を提供する。
【0054】
本明細書において説明する化合物は、より低いアンドロゲン活性(例えば、前立腺の成長)と共に効力のある同化作用効果(例えば、筋肉の成長)を証明する新規なクラスの選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARMS)を定義する。この新規なクラスの薬物は、非選択性アンドロゲンに勝る幾つかの利点を有し、これは、男性及び女性における妊孕性、赤血球生成、骨粗鬆症、性欲の調節のための潜在的治療用途並びに前立腺癌を有するかまたは前立腺癌を有する危険の高い男性における潜在的治療用途を含む。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0055】
さらに、1実施例においては、本化合物は、組織特異的薬理活性を有する。図7及び8において証明されるように、GTx−007は、肛門挙筋の成長の最大刺激を引き出すことができる用量でLHレベルを抑制せず、肛門挙筋の成長の最大刺激を引き出すことができる用量でFSHレベルを抑制しない。
【0056】
本発明は、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドの組織選択的インビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式I:
【0057】
【化12】

【0058】
[式中、Xは、O、CH2、NH、Se、PR、またはNRであり;
Zは、NO2、CN、COR、COOHまたはCONHRであり;
Yは、I、CF3、Br、Cl、またはSnR3であり;
Qは、アルキル、ハロゲン、NR2、NHCOCH3、NHCOCF3、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH3、NHCSCF3、NHCSR NHSO2CH3、NHSO2R、OR、COR、OCOR、OSO2R、SO2RまたはSRであり、ここで、Rは、アリール、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、フェニル、ハロ、アルケニルまたはヒドロキシルであり;またはQはそれが結合しているベンゼン環と一緒になって、構造A、BまたはC:
【0059】
【化13】

【0060】
で表される縮合環系であり、
1は、CH3、CF3、CH2CH3、またはCF2CF3であり;
Tは、OH、OR、−NHCOCH3、またはNHCORであり、ここで、Rは、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、フェニル、ハロ、アルケニルまたはヒドロキシルである。]
の構造で表される。
【0061】
1実施例においては、Qは、それが結合しているベンゼン環のパラ位にある。別の実施例においては、Qはパラ位にあり、XはOである。別の実施例においては、Qはパラ位にあり、アルキル、ハロゲン、NR2、NHCOCH3、NHCOCF3、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH3、NHCSCF3、NHCSR NHSO2CH3、NHSO2R、OR、COR、OCOR、OSO2R、SO2RまたはSRであり、ここで、Rは、アリール、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、フェニル、ハロ、アルケニルまたはヒドロキシルである。
【0062】
本発明は、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドのインビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式II:
【0063】
【化14】

【0064】
[式中、Xは、O、CH2、NH、Se、PR、またはNRであり;
Zは、水素結合アクセプター、NO2、CN、COR、CONHRであり;
Yは、脂質可溶性基、I、CF3、Br、Cl、SnR3であり;
Rは、アルキル若しくはアリール基またはOHであり;
Qは、アセトアミド−、トリフルオロアセトアミド−、アルキルアミン類、エーテル、アルキル、N−スルホニル、O−スルホニル、アルキルスルホニル、カルボニル、またはケトンである。]
の構造で表される。
【0065】
本発明はまた、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドのインビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式III:
【0066】
【化15】

【0067】
[式中、Xは、O、CH2、NH、Se、PR、またはNRであり;
Zは、NO2、CN、COR、またはCONHRであり;
Yは、I、CF3、Br、Cl、またはSnR3であり;
Rは、アルキル若しくはアリール基またはOHであり;
Qは、アセトアミドまたはトリフルオロアセトアミドである。]
の構造で表される。
【0068】
本発明はまた、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドの組織選択的インビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式IV:
【0069】
【化16】

【0070】
の構造で表される。
本発明はまた、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドの組織選択的インビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式V:
【0071】
【化17】

【0072】
の構造で表される。
本発明はまた、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドの組織選択的インビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式VI:
【0073】
【化18】

【0074】
の構造で表される。
本発明はまた、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドの組織選択的インビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関し、該選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は式VII:
【0075】
【化19】

【0076】
の構造で表される。
本発明は、式(化合物VIII):
【0077】
【化20】

【0078】
[式中、Xは、O、CH2、NH、Se、PR、またはNRであり;
1は、CH3、CF3、CH2CH3、またはCF2CF3であり;
Tは、OH、OR、−NHCOCH3、またはNHCORであり、ここで、Rは、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、フェニル、ハロ、アルケニルまたはヒドロキシルであり;
Aは、構造:
【0079】
【化21】

【0080】
で表される5或いは6員の飽和、不飽和または芳香族炭素環式若しくは複素環式環であり、
Bは、構造:
【0081】
【化22】

【0082】
で表される5或いは6員の飽和、不飽和または芳香族炭素環式若しくは複素環式環であり、
ここで、A1〜A11は、各々C、O、SまたはNであり;
1〜B11は、各々C、O、SまたはNであり;
Zは、NO2、CN、COR、COOH、またはCONHRであり;
Yは、I、CF3、Br、Cl、またはSnR3であり;
1及びQ2は、互いから独立して、アルキル、ハロゲン、NR2、NHCOCH3、NHCOCF3、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH3、NHCSCF3、NHCSR NHSO2CH3、NHSO2R、OR、COR、OCOR、OSO2R、SO2RまたはSRであり、ここで、Rは、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、フェニル、ハロ、アルケニルまたはヒドロキシルである。]
を有する非ステロイド系アゴニスト化合物に関する。
【0083】
置換基Z及びYは、こうした置換基を担う5または6員環(下文で“A環”)の任意の位置にあることができる。同様に、置換基Qは、こうした置換基を担う5または6員環(下文で“B環”)の任意の位置にあることができる。環構成員A1〜A11またはB1〜B11の任意のものがOまたはSである場合、こうした環構成員が未置換であることは理解されよう。環構成員A1〜A11またはB1〜B11の任意のものがOまたはSである場合、該環構成員と他の環構成員との間の点線が単結合を表すことはさらに理解されよう。
【0084】
1実施例においては、A環は、任意のタイプの飽和または不飽和炭素環式環を含む。1実施例においては、A環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい6員の飽和炭素環式環である。1実施例においては、A環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい5員の飽和炭素環式環である。別の実施例においては、A環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい、1つ以上の二重結合を含む6員の炭素環式環である。別の実施例においては、A環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい、1つ以上の二重結合を含む5員の炭素環式環である。
【0085】
別の実施例においては、A環は、任意のタイプの飽和、不飽和または芳香族複素環式環を含む。別の実施例においては、A環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい6員の飽和複素環式環である。別の実施例においては、A環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい5員の飽和複素環式環である。別の実施例においては、A環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい、1つ以上の二重結合を含む6員の複素環式環である。別の実施例においては、A環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい、1つ以上の二重結合を含む5員の複素環式環である。別の実施例においては、A環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい6員の複素芳香環である。別の実施例においては、A環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい5員の複素芳香環である。
【0086】
同様に、B環は、任意のタイプの飽和または不飽和炭素環式環を含む。1実施例においては、B環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい6員の飽和炭素環式環である。1実施例においては、B環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい5員の飽和炭素環式環である。別の実施例においては、B環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい、1つ以上の二重結合を含む6員の炭素環式環である。別の実施例においては、B環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい、1つ以上の二重結合を含む5員の炭素環式環である。
【0087】
別の実施例においては、B環は、任意のタイプの飽和、不飽和または芳香族複素環式環を含む。別の実施例においては、B環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい6員の飽和複素環式環である。別の実施例においては、B環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい5員の飽和複素環式環である。別の実施例においては、B環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい、1つ以上の二重結合を含む6員の複素環式環である。別の実施例においては、B環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい、1つ以上の二重結合を含む5員の複素環式環である。別の実施例においては、B環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい6員の複素芳香環である。別の実施例においては、B環は、未置換か、上文で説明した置換基の任意のもので一置換されたか、または多置換されたものとしてよい5員の複素芳香環である。
【0088】
適切なA環及び/またはB環の非限定例は、炭素環式環の例えばシクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、及びシクロヘキセン環、並びに複素環式環の例えばピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ピロール、ジヒドロピロール、テトラヒドロピロール、ピラジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピリミジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミドン、ピラゾール、ジヒドロピラゾール、テトラヒドロピラゾール、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、モルホリン、チオモルホリン、フラン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、チオフェン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、チアゾール、イミダゾール、イソオキサゾール、及びその他同様なものである。
【0089】
本明細書において使用する、細胞外信号分子のための受容体を総称して、“細胞信号受容体”と呼ぶ。多くの細胞信号受容体は、細胞表面の膜貫通型タンパク質であり、こうしたものは、細胞外信号分子(すなわち、リガンド)に結合すると、活性化して、細胞の挙動を変更する細胞内信号のカスケードを生じる。それに反して、場合によっては、受容体は細胞内部にあり、信号リガンドは細胞に入ってこれを活性化しなければならない。従って、こうした信号分子は、細胞の形質膜を横切って拡散するのに十分に小さくかつ疎水性でなければならない。本明細書において使用するこうした受容体を総称して、“細胞内細胞信号受容体”と呼ぶ。
【0090】
ステロイドホルモンは、標的細胞の形質膜を横切って直接に拡散するかまたは横切って輸送され、細胞内細胞信号受容体に結合する小さな疎水性分子の1例である。こうした受容体は構造的に関連があり、細胞内受容体スーパーファミリー(またはステロイド−ホルモン受容体スーパーファミリー)を構成する。ステロイドホルモン受容体は、プロゲステロン受容体、エストロゲン受容体、アンドロゲン受容体、グルココルチコイド受容体、及びミネラルコルチコイド、並びに多数のオーファン受容体を含む。本発明は特に、アンドロゲン受容体及びその全てのアイソフォームに関する。
【0091】
受容体のリガンド結合の他に、受容体を遮断してリガンド結合を妨げることができる。物質が受容体に結合すると、物質の三次元構造は、受容体の三次元構造によって作り出された空間にぴったり合ってボール−ソケット形状を取る。
【0092】
ボールがソケットにぴったり合う程、これはより密着して保持される。この現象は親和性と呼ばれる。物質の親和性が十分に高い場合、これはホルモンと競合し、より高い頻度で結合部位に結合する。リガンドの結合はまた、信号を伝達するための他の重要なタンパク質の組織選択的補充を生じることがある。こうしたタンパク質はコアクチベータ及びコリプレッサーとして周知であり、情報伝達に関与し、リガンド結合によって選択的に誘導または阻害されることがある。一旦結合すると、信号は受容体を通して細胞中に送られ、ある方法で細胞の応答を生じる。これは活性化と呼ばれる。活性化すると、活性化した受容体は、特定の遺伝子の転写を直接に調節する。しかし、物質及び受容体は、親和性以外の細胞を活性化する特定の特性を有することがある。物質の原子と受容体の原子との間の化学結合が形成されることがある。場合によっては、これは、活性化プロセス(情報伝達と呼ばれる)を開始するのに十分な受容体形状の変化を生じる。このため、受容体に結合し、これを活性化する物質(受容体アゴニストと呼ばれる)またはこれを不活性化する物質(受容体アンタゴニストと呼ばれる)を製造することができる。
【0093】
本発明は、アゴニスト化合物であり、従って、ステロイド系ホルモン受容体に結合し、活性化する際に有用な選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物に関する。本化合物は非ステロイド系である。好ましくは、本発明のアゴニスト化合物は、アンドロゲン受容体に結合するアゴニストである。好ましくは、本化合物は、アンドロゲン受容体に対する高い親和性を有する。本化合物は、アンドロゲン受容体に可逆的または不可逆的に結合してよい。本発明の化合物は、アンドロゲン受容体のアルキル化(すなわち、共有結合形成)を可能にする官能基(親和性標識)を含んでよい。従って、この場合、本化合物は受容体に不可逆的に結合し、従って、内因性リガンドであるジヒドロテストステロン及びテストステロンのようなステロイドによって置換されることができない。しかしながら、本発明の化合物は、アンドロゲン受容体に可逆的に結合することが好ましい。
【0094】
本発明の1態様によれば、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物をアンドロゲン受容体に結合させるのに有効な条件下で、受容体を選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物と接触させることによって、本発明の選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物をアンドロゲン受容体に結合させる方法が得られる。選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物とアンドロゲン受容体との結合は、本発明の化合物を、男性及び女性における多数のホルモン療法において有用にする。アゴニスト化合物は、アンドロゲン受容体に結合し、活性化する。アゴニスト化合物の結合は可逆的または不可逆的であり、好ましくは可逆的である。
【0095】
本発明の1態様によれば、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物をアンドロゲン受容体に結合させ、精子産生を増大または減少させるのに有効な条件下で、患者のアンドロゲン受容体を選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物と接触させることによって、精子形成を調節する方法が得られる。
【0096】
本発明の別の態様によれば、患者(すなわち、アンドロゲン依存性状態に苦しんでいる)におけるホルモン療法の方法であって、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物をアンドロゲン受容体に結合させ、アンドロゲン依存性状態の変化をもたらすのに有効な条件下で、患者のアンドロゲン受容体を選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物と接触させることを含む方法が得られる。本発明に従って治療できるアンドロゲン依存性状態としては、加齢に関連する状態の例えば性腺機能低下症、サルコペニア、赤血球生成、骨粗鬆症、及び低アンドロゲン(例えば、テストステロン)レベルに依存すると後に決定される任意の他の状態が挙げられる。1実施例においては、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物を単独で投与する。別の実施例においては、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物をプロゲスチンと組み合わせて投与する。さらに別の実施例においては、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物をエストロゲンと組み合わせて投与する。
【0097】
本発明の別の態様によれば、前立腺癌を有する患者を治療する方法が得られる。この方法は、有効な量の選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物を患者に投与することを含む。1実施例においては、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は、アンドロゲンまたはテストステロン受容体に対して選択的である。
【0098】
本発明はまた、慢性筋肉消耗疾患状態を有する患者を治療する方法であって、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物をアンドロゲン受容体に結合させ、アンドロゲン依存性状態の変化をもたらすのに有効な条件下で、前記患者のアンドロゲン受容体を選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物と接触させることを含む方法に関する。1実施例においては、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物は、アンドロゲンまたはテストステロン受容体に対して選択的である。本発明はまた、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物を経口投与する方法に関する。1実施例においては、本化合物は化合物Iである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物IVである。別の実施例においては、本化合物は化合物Vである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIである。別の実施例においては、本化合物は化合物VIIIである。
【0099】
本発明の1態様によれば、非ステロイド系アゴニスト化合物をアンドロゲン受容体に結合させるのに有効な条件下で、受容体を非ステロイド系アゴニスト化合物と接触させることによって、本発明の非ステロイド系アゴニスト化合物をアンドロゲン受容体に結合させる方法が得られる。非ステロイド系アゴニスト化合物とアンドロゲン受容体との結合は、本発明の化合物を、男性及び女性における多数のホルモン療法において有用にする。アゴニスト化合物は、アンドロゲン受容体に結合し、活性化する。アゴニスト化合物の結合は可逆的または不可逆的であり、好ましくは可逆的である。
【0100】
本発明の1態様によれば、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物をアンドロゲン受容体に結合させ、精子産生を増大または減少させるのに有効な条件下で、患者のアンドロゲン受容体を非ステロイド系アゴニスト化合物と接触させることによって、精子形成を調節する方法が得られる。
【0101】
本発明の別の態様によれば、患者(すなわち、アンドロゲン依存性状態に苦しんでいる人)におけるホルモン療法の方法であって、非ステロイド系アゴニスト化合物をアンドロゲン受容体に結合させ、アンドロゲン依存性状態の変化をもたらすのに有効な条件下で、患者のアンドロゲン受容体を非ステロイド系アゴニスト化合物と接触させることを含む方法が得られる。本発明に従って治療できるアンドロゲン依存性状態としては、加齢に関連する状態の例えば性腺機能低下症、サルコペニア、赤血球生成、骨粗鬆症、性欲の欠如、及び低アンドロゲン(例えば、テストステロン)レベルに依存すると後に決定される任意の他の状態が挙げられる。1実施例においては、非ステロイド系アゴニスト化合物を単独で投与する。別の実施例においては、非ステロイド系アゴニスト化合物をプロゲスチンと組み合わせて投与する。さらに別の実施例においては、非ステロイド系アゴニスト化合物をエストロゲンと組み合わせて投与する。
【0102】
本発明の別の態様によれば、前立腺癌を有する患者を治療する方法が得られる。この方法は、有効な量の非ステロイド系アゴニスト化合物を患者に投与することを含む。1実施例においては、非ステロイド系アゴニスト化合物は、アンドロゲンまたはテストステロン受容体に対して選択的である。
【0103】
本発明の化合物は不斉中心を有し、R若しくはS異性体、または両者の混合物とすることができる。1実施例においては、本化合物はR及びSエナンチオマーのラセミ混合物である。別の実施例においては、本化合物は実質的に純粋なRエナンチオマーである。別の実施例においては、本化合物は実質的に純粋なSエナンチオマーである。“実質的に純粋な”は、1種の異性体が約95%を超えて優位なことであると本明細書において定義される。本発明において役立つ化合物の上記に説明した製造法が立体異性体の混合物を生じる場合、こうした異性体を分取クロマトグラフィーのような従来の手法によって分離してよい。本化合物をラセミ形態で製造してよく、または個々のエナンチオマーをエナンチオ特異的合成によって若しくは分割によって製造してよい。
【0104】
本明細書において使用する“医薬組成物”は、適切な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント及び/またはキャリアと一緒になった治療上有効な量の本発明のSARMまたは非ステロイド系アゴニスト化合物を意味する。本明細書において使用する“治療上有効な量”は、所定の状態及び投与計画のために治療効果を提供する量を指す。このような組成物は液体であるかまたは凍結乾燥若しくは別の方法で乾燥した製剤であり、様々な緩衝液含量(例えば、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH及びイオン強度を有する希釈剤、表面への吸収を防ぐための添加剤の例えばアルブミンまたはゼラチン、洗剤(例えば、トゥイーン 20(Tween 20)、トゥイーン 80、プルロニック F68(Pluronic F68)、胆汁酸塩)、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレグリセロール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン類)、充填物質または張度修正剤(例えば、ラクトース、マンニトール)、ポリエチレングリコールのようなポリマーとタンパク質との共有結合、金属イオンとの錯形成、或いはポリアクチン酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲル等のようなポリマー化合物の粒子状製剤中に若しくはこの上への、またはリポソーム、マイクロエマルション、ミセル、単膜若しくは多重膜リポソーム、赤血球ゴースト、若しくはスフェロプラスト上への材料の取り入れを含む。このような組成物は、物理的状態、溶解度、安定性、インビボ放出の速度、及びインビボクリアランスの速度に影響を与えよう。制御放出または持続放出組成物としては、親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中の製剤が挙げられる。
【0105】
また本発明によって理解されるものは、ポリマー(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)でコーティングした粒子状組成物である。本発明の組成物の他の実施例は、非経口、肺、鼻及び経口を含む様々な投与経路のために粒子状形態、保護コーティング、プロテアーゼインヒビターまたは浸透増強剤を取り入れたものである。1実施例においては、本医薬組成物を、非経口、癌付近に、経粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、室内、頭蓋内及び腫瘍内投与する。
【0106】
さらに、本明細書において使用する“薬学的に許容可能なキャリア”は当業者には周知であり、0.01〜0.1Mの、好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液または0.8%生理的食塩水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。加えて、このような薬学的に許容可能なキャリアは、水性または非水性の溶液、懸濁液、及びエマルションとしてよい。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油の例えばオリーブ油、及び注射可能な有機エステルの例えばオレイン酸エチルである。水性キャリアとしては、水、アルコール性/水溶液、エマルションまたは懸濁液が挙げられ、生理的食塩水及び緩衝化媒質が挙げられる。
【0107】
非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルまたは不揮発性油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養素補充液、電解質補充液の例えばリンゲルデキストロースに基づくもの、並びにその他同様なものが挙げられる。保存剤及び他の添加剤の例えば抗菌物質、抗酸化剤、コレーティング剤、不活性ガス及びその他同様なものもまた存在してよい。
【0108】
制御放出または持続放出組成物としては、親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中の製剤が挙げられる。また本発明によって理解されるものは、ポリマー(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)でコーティングした粒子状組成物、及び組織特異的受容体を指向する抗体、リガンド若しくは抗原に結合したかまたは組織特異的受容体のリガンドに結合した化合物である。
【0109】
本発明の組成物の他の実施例は、非経口、肺、鼻及び経口を含む様々な投与経路のために粒子状形態、保護コーティング、プロテアーゼインヒビターまたは浸透増強剤を取り入れたものである。
【0110】
ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはポリプロリンのような水溶性ポリマーの共有結合によって修正した化合物は、対応する未修正の化合物よりも実質的に長い半減期を静脈内注射に続いて血液中で示すことが周知である(Abuchowski et al., 1981; Newmark et al., 1992; and Katre et al., 1987)。このような修正はまた、水溶液中の化合物の溶解度を増大させ、凝集を無くし、化合物の物理的及び化学的安定性を増強し、化合物の免疫原性及び反応性を大きく低減することができる。この結果、所望のインビボ生理活性は、このようなポリマー−化合物アブダクトを投与することで、未修正の化合物を用いるよりも低い頻度でまたはより低い用量で実現できる。
【0111】
さらに別の実施例においては、本医薬組成物を制御放出系中で送達できる。例えば、薬剤を、静脈内注入、植込み型浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または他の投与様式を使用して投与してよい。1実施例においては、ポンプを使用してよい(Langer, supra; Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987); Buchwald et al., Surgery 88:507 (1980); Saudek et al., N. Engl. J. Med, 321:574 (1989)を参照されたい)。別の実施例においては、ポリマー材料を使用できる。さらに別の実施例においては、制御放出系を、治療標的、すなわち脳に接近させて置くことができ、従って必要なのは全身用量の一部分のみである(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-139 (1984)を参照されたい)。好ましくは、制御放出装置を、不適切な免疫活性化または腫瘍の部位に接近させて患者に導入する。他の制御放出系は、Langer(Science 249:1527-1533 (1990))による概説において検討されている。
【0112】
本医薬製剤は、選択的アンドロゲン受容体モジュレーターを単独で含むことができ、または薬学的に許容可能なキャリアをさらに含むことができ、並びに、錠剤、散剤、カプセル、ペレット、液剤、懸濁液剤、エリキシル剤、エマルション、ゲル、クリーム、若しくは肛門坐剤及び尿道坐剤を含む坐剤のような固体または液体形態とすることができる。薬学的に許容可能なキャリアとしては、ガム、デンプン、糖、セルロース系材料、及びこれらの混合物が挙げられる。選択的アンドロゲン受容体モジュレーターを含む本医薬製剤を、例えばペレットの皮下植込みによって患者に投与することができ、さらなる実施例においては、ペレットは、選択的アンドロゲン受容体モジュレーターのある期間にわたる制御放出に対処したものである。本製剤をまた、液体製剤の静脈内、動脈内、若しくは筋肉内注射、液体若しくは固体製剤の経口投与、または局所適用によって投与することができる。投与はまた、肛門坐剤または尿道坐剤を使用して成し遂げることができる。
【0113】
本発明の医薬製剤を、周知の溶解、混合、造粒、または錠剤形成プロセスによって製造することができる。経口投与の場合、選択的アンドロゲン受容体モジュレーターまたはその生理学的に許容された誘導体の例えば塩、エステル、N−酸化物、及びその他同様なものを、この目的のために慣用の添加剤の例えばビヒクル、安定剤、または不活性希釈剤と混合し、慣用の方法によって、投与に適した形態の例えば錠剤、コーティング錠、軟質または硬質ゼラチンカプセル、水性、アルコール性または油性液剤に転換する。適切な不活性ビヒクルの例は、従来の錠剤ベースの例えばラクトース、スクロース、またはコーンスターチを、結合剤の例えばアカシア、コーンスターチ、ゼラチンと、または崩壊剤の例えばコーンスターチ、じゃがいもデンプン、アルギン酸と、または滑沢剤の例えばステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムと組み合わせたものである。
【0114】
適切な油性ビヒクルまたは溶媒の例は、植物油または動物油の例えばヒマワリ油または魚肝油である。製剤は、乾燥及び湿潤顆粒の両方として実現することができる。非経口投与の場合(皮下、静脈内、動脈内、または筋肉内注射)、SARM剤若しくは非ステロイド系アゴニスト剤またはその生理学的に許容された誘導体の例えば塩、エステル、N−酸化物、及びその他同様なものを、希望するならこの目的のために慣用でありかつ適した物質の例えば可溶化剤または他の補助物と共に、液剤、懸濁液剤、またはエマルションへと転換する。例は、滅菌した液体の例えば水及び油であり、界面活性剤及び他の薬学的に許容可能なアジュバントは加えても加えなくてもよい。例示となる油は、石油、動物、植物、または合成由来のものであり、例えば落花生油、大豆油、または鉱油である。一般に、水、生理的食塩水、水性デキストロース及び関連糖溶液、並びにグリコールの例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールは、特に注射可能な液剤にとって好ましい液体キャリアである。
【0115】
活性成分を含む医薬組成物の製造は、従来技術において十分に理解されている。典型的には、このような組成物は、鼻咽頭に送達するポリペプチドのエアロゾルとして、または注射可能物質として液体液剤若しくは懸濁液剤として製造されるが、注射の前に液体中に溶解または懸濁させるのに適した固体形態も製造することができる。製剤はまた乳化することができる。活性治療成分はしばしば、薬学的に許容可能でありかつ活性成分と相溶性がある賦形剤と混合される。適切な賦形剤は、例えば水、生理的食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、またはその他同様なもの及びこれらの組合せである。
【0116】
加えて、希望するなら、本組成物は、活性成分の有効性を高める少量の補助物質の例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤を含むことができる。
活性成分を製剤化して、中和された薬学的に許容可能な塩形態として組成物にすることができる。薬学的に許容可能な塩としては、無機酸の例えば塩酸若しくはリン酸、または有機酸の例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸、及びその他同様なものを用いて形成される酸付加塩類(ポリペプチドの遊離アミノ基または抗体分子を用いて形成される)が挙げられる。遊離カルボキシル基から形成される塩はまた、無機塩基の例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄、及び有機塩基の例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン、並びにその他同様なものから誘導できる。
【0117】
例えば、クリーム、ゲル、滴剤、及びその他同様なものを使用した体表面への局所投与の場合、SARM剤若しくは非アゴニストステロイド系化合物またはその生理学的に許容された誘導体の例えば塩、エステル、N−酸化物、及びその他同様なものを、生理学的に許容可能な希釈剤中の液剤、懸濁液剤、またはエマルションとして製造し、適用し、この際、薬剤用キャリアは加えても加えなくてもよい。
【0118】
別の実施例においては、活性化合物を小胞、特にリポソーム中で送達できる(Langer, Science 249:1527-1533 (1990); Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez- Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353-365 (1989), Lopez-Berestein, ibid., pp. 317-327;一般に同書を参照されたい)。
【0119】
薬剤中に使用するためには、SARMまたは非ステロイド系アゴニスト化合物の塩は薬学的に許容可能な塩となろう。しかしながら他の塩は、本発明による化合物またはその薬学的に許容可能な塩の製造において有用なことがある。本発明の化合物の適切な薬学的に許容可能な塩としては、例えば、本発明による化合物の溶液と薬学的に許容可能な酸の例えば塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸の溶液とを混合することで形成できる酸付加塩が挙げられる。
【0120】
本発明はさらに、試料中の本発明の選択的アンドロゲンモジュレーター化合物及び/または非ステロイド系アゴニスト化合物の存在を決定する方法に関する。この方法は、試料を得る工程と、試料中の本化合物を検出する工程とを含み、それによって試料中の本化合物の存在を決定する。
【0121】
1実施例においては、試料は血清試料である。別の実施例においては、試料は血漿試料である。別の実施例においては、試料は尿試料である。別の実施例においては、試料は唾液試料である。別の実施例においては、試料は任意の他の組織試料である。
【0122】
1実施例においては、検出工程は、予め定められた波長で本化合物の吸光度を測定することを含む。例えば、本発明の化合物は、スペクトルの紫外領域において吸収があり、吸光度ピークは270nmである。従って、本発明の1実施例においては、本化合物は、試料のUV吸光度を270nmで測定することで検出される。本発明はUV吸収に限定されるものではなく、同定の任意の他の分光方法を利用可能であることに注意されたい。例えば、本化合物は、その赤外または可視部の吸光度を測定することで検出することができる。
【0123】
別の実施例においては、本発明はさらに、試料中の本発明の選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物及び/または非ステロイド系アゴニスト化合物の濃度を測定する方法を提供する。この方法は、試料を得る工程と、試料中の本化合物のレベルを決定する工程と、既知の濃度の本化合物を含む標準試料とレベルを比較することで、試料中の本化合物の濃度を計算する工程とを含む。試料中の既知の濃度の本化合物の検量線を得ることができ、試験試料中の本化合物の濃度をこれから計算する。“レベル”は、測定波長での本化合物の吸収レベルを意味する。
【0124】
別の実施例においては、試料中の本化合物は、本化合物に特異的に結合する結合タンパク質と試料を接触させ、本化合物に結合した結合タンパク質の量を決定することで検出される。本化合物の濃度は、本化合物に結合した結合タンパク質の量を測定し、この量を既知の濃度の化合物−結合タンパク質複合体を含む標準試料と比較することで決定することができる。
【0125】
タンパク質レベルは、Sambrook et al.において説明されている標準的な手法に従って決定することができる。簡潔に述べると、患者から得た試料を、本発明の特定の化合物に特異的に結合する結合タンパク質と接触させ、結合タンパク質と化合物との間に形成された複合体の量を決定する。1実施例においては、結合タンパク質は、本発明の1つ以上の化合物に特異的に結合する抗体である。別の実施例においては、結合タンパク質はこれに結合した検出可能な標識を有し、結合タンパク質−標識化合物間の複合体は、複合体を視覚化することで測定する。
【0126】
本明細書において定義する“接触させる”は、結合タンパク質を、試験管、フラスコ、組織培養、チップ、アレイ、プレート、マイクロプレート、キャピラリー、またはその他同様なものの中の試料中に導入し、標的を含む細胞若しくはその分画または血漿/血清若しくはその分画と結合成分とを結合させるのに十分な温度で十分な時間インキュベートすることを意味する。試料を結合タンパク質または他の特異的結合成分と接触させる方法は当業者には周知であり、実行するアッセイプロトコールのタイプによって選択してよい。インキュベーション方法もまた標準的であり、当業者には周知である。
【0127】
複合体を“視覚化する”ことは、従来技術において周知の任意の手段によって実行してよく、ELISA、ラジオイムノアッセイ、フローサイトメトリー、ドットブロット法、ゲル電気泳動法と組み合わせたウェスタンイムノブロッティング、光学レベル及び電子peレベルでの免疫組織化学、HPLC及び質量分析法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
本発明の選択的アンドロゲンモジュレーター化合物または非ステロイド系アゴニスト化合物に対して特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体(並びに任意の組換え抗体)を、様々なイムノアッセイにおいて使用することができる。抗体を、従来技術には周知の従来の標識手法を利用して検出可能に標識してよい。本明細書において使用する“標識”という用語は、本明細書において定義する結合タンパク質に複合するかまたは別の方法で結合する(すなわち、共有結合でかまたは非共有結合で)ことができる分子を指す。標識は当業者には周知である。従って、抗体を、従来技術において周知の手法を使用して、放射性同位体、非放射性同位体標識、蛍光標識、酵素標識、化学発光標識、生物発光標識、フリーラジカル標識、またはバクテリオファージ標識を用いて標識してよい。放射性同位体標識の例は、3H、125I、131I、35S、14C等である。非放射性同位体標識の例は、55Mn、56Fe等である。蛍光標識の例は、好ましい蛍光標識を用いて直接に標識された蛍光標識であり、または、好ましい蛍光標識を用いて間接的に標識された蛍光標識である。最後の場合、好ましい蛍光標識は、抗種Ig抗体のような第1抗体を指向する第2抗体に複合する。典型的な蛍光標識としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:フルオレセイン標識、イソチオシアナート標識、ローダミン標識、フィコエリトリン標識等の例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC、インターナショナル・バイオロジカル・サプライズ、メルボルン、FL(FITC, International Biological Supplies, Melbourne, FL))、ローダミン、フィコエリトリン(P.E.、コールターCorp.、ハイアーリア、FL(P.E., Coulter Corp., Hialeah, FL)、フィコシアニン、アロフィコシアニン、フィコエリトリン−シアニン染料5(PECy5、コールター)標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、O−フタルアルデヒド標識、フルオレサミン及びテキサスレッド。
【0129】
酵素標識の例としては、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、マレエートデヒドロゲナーゼ、及びペルオキシダーゼが挙げられる。2つの主要なタイプの酵素免疫測定法は、酵素免疫抗体法(ELISA)及び均質酵素免疫測定法(また酵素多重免疫測定法(EMIT、シヴァ・コーポレーション、パロアルト、CA(EMIT, Syva Corporation, Palo Alto, CA))として周知である)である。ELISA系においては、分離を、例えば固相に結合した抗体を使用することで実現してよい。EMIT系は、トレーサー−抗体複合体中の酵素の失活に依存し、従って分離工程の必要無しに活性を測定することができる。
【0130】
特に適切な標識としては、フローサイトメトリー、例えば、蛍光色素による分析を可能にするものが挙げられる。他の適切な検出可能な標識としては、比色酵素系において有用なもの、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)及びアルカリホスファターゼ(AP)が挙げられる。他の近接酵素系は当業者には周知であり、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼと併用されるヘキソキナーゼが挙げられる。
【0131】
加えて、化学発光化合物を標識として使用してよい。化学発光標識の例えばグリーン蛍光タンパク質、ブルー蛍光タンパク質、及びこれらの変形例は周知である。また生物発光または化学発光を、それぞれ、NADオキシドレダクターゼとルシフェラーゼ及び基質であるNADH及びFNINまたはペルオキシダーゼとルミノール及び基質である過酸化物を使用して検出できる。典型的な化学発光化合物としては、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、及びシュウ酸エステルが挙げられる。同様に、生物発光化合物を標識のために利用してよく、生物発光化合物としてはルシフェリン、ルシフェラーゼ、及びエクオリンが挙げられる。一旦標識したら、抗体を用い、従来技術には周知の手法を利用して免疫学的相対物(抗体または抗原性ポリペプチド)を同定及び定量化できる。
【0132】
以下の実施例を、本発明の好適な実施例をより十分に説明するために提出する。しかしながらこれを、いかなる点でも本発明の広い範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0133】
実験の詳細の節
実施例1
アンドロゲン活性及び同化作用活性を有する非ステロイド系リガンド
本明細書において提供するSARM化合物を設計し、合成し、インビトロ及びインビボ薬理活性に関して評価した。去勢動物におけるインビトロアンドロゲン受容体結合親和性とアンドロゲン依存性組織成長を維持する能力とを研究した。アンドロゲン活性を、SARM化合物が前立腺及び精嚢の成長を維持及び/または刺激する能力として重量で測定して観察した。同化作用活性を、SARM化合物が肛門挙筋の成長を維持及び/または刺激する能力として重量で測定して観察した。
【0134】
化合物I〜VIIIの合成手順:
(2R)−1−メタクリロイルピロリジン−2−カルボン酸(R−129)。D−プロリン(R−128、14.93g、0.13mol)を71mLの2NNaOH中に溶解させ、氷浴中で冷却し、得られたアルカリ溶液を、アセトン(71mL)を用いて希釈した。メタクリロイルクロリド127(13.56g、0.13mol)のアセトン溶液(71mL)と2NNaOH溶液(71mL)とを、氷浴中のD−プロリンの水溶液に40分間にわたって同時に加えた。メタクリロイルクロリドを加える間中、10〜11℃で混合物のpHを維持した。撹拌(3時間、室温)後、混合物を、35〜45℃の温度で真空中で蒸発させて、アセトンを除去した。得られた溶液を、エチルエーテルを用いて洗浄し、濃HClを用いてpH2に酸性化した。酸性混合物を、NaClを用いて飽和させ、EtOAc(100mL×3)を用いて抽出した。合わせた抽出物をNa2SO4上で乾燥し、セライトを通してろ過し、真空中で蒸発させて、未精製の生成物を無色の油状物として与えた。油状物をエチルエーテル及びヘキサンから再結晶化して、16.2(68%)の所望の化合物を無色の結晶として与えた。mp 102-103℃ (lit. [214] mp 102.5-103.5℃);この化合物のNMRスペクトルは、標題化合物の2種の回転異性体の存在を証明した。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 5.28(s)及び5.15(s):第1の回転異性体、5.15(S)及び5.03(s):第2の回転異性体(両方の回転異性体に関して全体で2H、ビニルCH2)、4.48-4.44:第1の回転異性体、4.24-4.20(m):第2の回転異性体(両方の回転異性体に関して全体で1H、CH、キラル中心にて)、
【0135】
【化23】

【0136】
(3R,8aR)−3−ブロモメチル−3−メチル−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−1,4−ジオン(R,R−130)。100mLのDMF中のNBS(23.5g、0.132mol)の溶液を、アルゴン下、室温で、70mLのDMF中の化合物R−129(16.1g、88mmol)の撹拌した溶液に滴下し、得られた混合物を3日間撹拌した。溶媒を真空中で除去して、黄色の固体を沈殿させた。固体を水中に懸濁させ、一晩室温で撹拌し、ろ過し、乾燥して、18.6(81%)(乾燥するとより少ない重量になった、〜34%)の標題化合物を黄色の固体として与えた。
【0137】
【化24】

【0138】
(2R)−3−ブロモ−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン酸(R−131)。300mLの24%HBr中のブロモラクトンR−130(18.5g、71mmol)の混合物を、還流にて1時間加熱した。得られた溶液を、ブライン(200mL)を用いて希釈し、酢酸エチル(100mL×4)を用いて抽出した。合わせた抽出物を、飽和NaHCO3(100mL×4)を用いて洗浄した。水溶液を、濃HClを用いてpH=1に酸性化し、これを次に、酢酸エチル(100mL×4)を用いて抽出した。合わせた有機溶液をNa2SO4上で乾燥し、セライトを通してろ過し、真空中で蒸発させて乾燥した。トルエンから再結晶化して、10.2g(86%)の所望の化合物を無色の結晶として与えた。
【0139】
【化25】

【0140】
N−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−(2R)−3−ブロモ−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパンアミド(R−132)。塩化チオニル(8.6g、72mmol)を、アルゴン下、−5〜−10℃で、70mLのDMA中のブロモ酸R−131(11.0g、60mmol)の溶液に滴下した。得られた混合物を2時間、同じ条件下で撹拌した。80mLのDMA中の4−ニトロ−3−トリフルオロメチル−アニリン(12.4g、60mmol)の溶液を、上記の溶液に滴下し、得られた混合物を一晩室温で撹拌した。溶媒をロータベーパ(Rotavapor)上で高真空オイルポンプを使用して除去した。残留分を、飽和NaHCO3溶液を用いて希釈し、エチルエーテル(100mL×3)を用いて抽出した。合わせた抽出物を無水Na2SO4上で乾燥し、セライトを通してろ過し、塩化メチレンを溶離剤として使用したシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、18.0g(80%)の所望の化合物を与えた。
【0141】
【化26】

【0142】
N−[4−ニトロ−3−トリフルオロメチル)フェニル]−(2S)−3−[4−(アセチルアミノ)フェノキシ]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパンアミド(S−147)。標題化合物を、20mLのメチルエチルケトン中の化合物R−132(0.37g、1.0mmol)、4−アセトアミドフェノール(0.23g、1.5mmol)、K2CO3(0.28g、2.0mmol)、及び相間移動触媒として10%のベンジルトリブチルアンモニウムクロリドから製造した。これらをアルゴン下で還流にて一晩加熱した。反応に続いてTLCを行い、得られた混合物を、セライトを通してろ過し、真空中で濃縮して乾燥した。シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル、3:1)によって精製して、0.38g(86%)(Rf=0.18、ヘキサン−酢酸エチル、3:1)の所望の化合物を淡黄色の粉末として与えた:mp 70-74℃;固体を酢酸エチル及びヘキサンから再結晶化できる。
【0143】
【化27】

【0144】
[デュエン挿入]
SARM化合物、特に化合物VIIのインビトロ活性は、高いアンドロゲン受容体結合親和性(Ki=7.5nM)を証明した。SARM化合物、特に化合物Vを用いた動物の研究は、これが効力のあるアンドロゲン及び同化作用非ステロイド系剤であることを証明した。4つの群のラットを、こうした研究のために使用した:(1)未去勢対照、(2)去勢対照、(3)プロピオン酸テストステロン(100μg/日)を用いて処理した去勢動物、及び(4)化合物V(1000μg/日)を用いて処理した去勢動物である。テストステロン及び化合物VIIを、皮下浸透圧ポンプによって一定の速度で14日間送達した。
【0145】
こうした研究の結果を図1に示す。去勢は、アンドロゲン(例えば、前立腺及び精嚢)組織及び同化作用(例えば、肛門挙筋)組織の重量を有意に低減したが、動物の体重(BW)にほとんど影響を及ぼさなかった。プロピオン酸テストステロンまたは化合物VIIを用いた去勢動物の処理は、アンドロゲン組織の重量を同程度に維持した。化合物VIIはプロピオン酸テストステロンと同様のアンドロゲン活性を有した(すなわち、前立腺及び精嚢の重量は同じだった)が、同化作用剤としてはるかに大きな効力を有した。化合物VIIは、試験した用量で、プロピオン酸テストステロンよりも大きな同化作用活性を示した(すなわち、肛門挙筋は未去勢対照動物と同じ重量を維持し、テストステロンに関して観察されたものを超えた)。本明細書において提出する実験は、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドの組織選択的アンドロゲン活性及び同化作用活性を証明する最初のインビボの結果である(すなわち、様々に異なるアンドロゲン及び同化作用効力)。
【0146】
実施例2
アンドロゲン活性及び同化作用活性を有する非ステロイド系リガンド
4種の新規な非ステロイド系アンドロゲン(化合物IV、V、VI及びVII)のラットにおけるインビボ効力及び急性毒性を調べた。インビトロアッセイは、こうした化合物は、非常に高い親和性を有してアンドロゲン受容体に結合することを立証した。4種の化合物の構造及び名称を下記に提示する。
【0147】
【化28】

【0148】
実験方法
材料。化合物GTx−014(化合物IV)、GTx−015(化合物V)、GTx−016(化合物VI)及びGTx−007(化合物VII、ここで、Rは、NHCOCH3である)のS異性体及びGTx−014のR異性体を、図9に説明するスキームに従って合成した。プロピオン酸テストステロン(TP)、ポリエチレングリコール300(PEG300、試薬用)及び中性の緩衝化したホルマリン(10%W/V)をシグマ・ケミカル・カンパニー(セントルイス、MO(Sigma Chemical Company (St Louis, MO)))から購入した。アルゼット浸透圧ポンプ(モデル2002)(Alzet osmotic pump (model 2002))をアルザCorp.(パロアルト、CA)(Alza Corp. (Palo Alto, CA))から購入した。
【0149】
動物。未成熟の雄性スプレーグ・ドーリーラット(体重90〜100g)をハーラン・バイオサイエンセス(インディアナポリス、IN)(Harlan Biosciences (Indianapolis, IN))から購入した。動物を12時間の明/暗サイクルに維持し、食餌及び水を自由に摂取させた。動物プロトコールは、動物実験委員会(the Institutional Laboratory Animal Care and Use Committee)が検討し、承認した。
【0150】
研究設計。ラットを、各群当り動物5匹にて無作為に29の群に分配した。処理群を表1に説明する。薬物処理の開始の1日前に、群2〜29の動物を個別に檻から取り出し、体重を測定し、ケタミン/キシラジン(87/13mg/kg;約1mL/kg)の腹腔内投与によって麻酔をかけた。適切に麻酔がかかったら(すなわち、つま先をつねって応答がない)、動物の耳に識別のために印を付けた。次に動物を滅菌したパッド上に置き、その腹部及び陰嚢をベタジン及び70%アルコールを用いて洗浄した。精巣を正中線陰嚢切開によって除去し、その際、滅菌した縫合糸を使用して睾丸上組織を結紮し、その後各精巣を外科的に除去した。手術創部位を、滅菌したステンレス鋼創傷クリップで閉じ、部位をベタジンで清浄化した。動物を滅菌したパッド上で回復させ(立てるまで)、次に檻に戻した。
【0151】
24時間後、群2〜29の動物に、ケタミン/キシラジンによって再度麻酔をかけ、アルゼット浸透圧ポンプ(モデル2002)を皮下の肩の領域に入れた。この場合、肩の領域の毛を剃り、清浄化し(ベタジン及びアルコール)、滅菌したメスを使用して小さく切開した(1cm)。浸透圧ポンプを挿入し、創傷を、滅菌したステンレス鋼創傷クリップで閉じた。動物を回復させ、檻に戻した。浸透圧ポンプは、ポリエチレングリコール300(PEG300)中に溶解させた適切な治療薬(表1に示す)を含んだ。浸透圧ポンプには、植込みの1日前に適切な溶液を充填した。動物を、薬物処理に対する急性毒性の徴候に関して毎日観察した(例えば、嗜眠、きめの粗い毛皮)。
【0152】
14日間の薬物処理後、ラットに、ケタミン/キシラジンによって麻酔をかけた。次に動物を麻酔下で出血によって犠牲にし、血液試料を腹部大動脈の静脈穿刺によって集め、全血球分析のために提出した。血液の一部分を別個の管に入れ、12,000gで1分間遠心分離し、血漿層を除去し、−20℃で冷凍した。腹側前立腺、精嚢、肛門挙筋、肝臓、腎臓、脾臓、肺、及び心臓を除去し、異質組織を取り除き、重量を測定し、10%の中性の緩衝化したホルマリンを含むバイアル中に入れた。保存した組織を、組織病理学的分析のためにGTx、Inc.に送った。
【0153】
データ解析のために、全ての臓器の重量を体重に対して基準化し、単一因子ANOVAによって、任意の有意な差に関して解析した。前立腺及び精嚢の重量をアンドロゲン活性の評価の指標として使用し、肛門挙筋重量を使用して同化作用活性を評価した。
【0154】
結果
化合物GTx−014、GTx−015、GTx−016及びGTx−007のS異性体、並びにGTx−014のR異性体のアンドロゲン活性及び同化作用活性を、14日間の投与後、去勢ラットモデルにおいて調べた。次第に増加する用量のプロピオン酸テストステロンを、同化作用効果及びアンドロゲン効果の陽性対照として使用した。
【0155】
図2及び3に示すように、去勢したビヒクル処理ラットにおける前立腺、精嚢、及び肛門挙筋の重量は、内因性アンドロゲン産生の消耗が原因で有意に減少した。アンドロゲンステロイドでありかつアナボリックステロイドであるプロピオン酸テストステロンの外因的投与は、去勢ラットにおける前立腺、精嚢、及び肛門挙筋の重量を用量依存性にて増大させた。GTx−014のR異性体、並びにGTx−015及びGTx−016のS異性体は、去勢動物における前立腺、精嚢、及び肛門挙筋の重量に影響を及ぼさなかった(データは示さない)。GTx−007のS異性体(図2:S−GTx−007)及びGTx−014のS異性体(図3:S−GTx−014)は、前立腺、精嚢、及び肛門挙筋の重量に用量依存性の増大をもたらした。プロピオン酸テストステロンと比較して、S−GTx−007は、前立腺及び精嚢の重量の増加においてより低い効力及び固有の活性を示したが、肛門挙筋の重量の増加においてより大きな効力及び固有の活性を示した。特に、S−GTx−007は、0.3mg/日もの低さの用量で、去勢動物の肛門挙筋重量を未去勢動物のものと同じレベルに維持することができた。従って、S−GTx−007は、プロピオン酸テストステロンよりも低いアンドロゲン活性とより高い同化作用活性とを有する、効力のある非ステロイド系同化作用剤である。このことは、本化合物が、筋肉の成長及び他の同化作用効果を選択的に刺激するが、同時に前立腺及び精嚢に及ぼす影響がより少ないという点で、先のクレームに勝る重要な改良である。これは、前立腺癌の発現または進行に関連した懸念を有する高齢化しつつある男性に特に関連がある。
【0156】
GTx−014は、GTx−007ほどの効力はなかったが、より大きな組織選択性を示した(図2及び3に、前立腺及び精嚢に及ぼす影響を比較する)。GTx−014は肛門挙筋重量を有意に増大させたが、前立腺及び精嚢の成長を刺激する能力がほとんどないから全くないことを示した(すなわち、前立腺及び精嚢の重量は、未去勢動物またはプロピオン酸テストステロンを用いて処理した動物に観察されるものの20%未満だった)。
【0157】
結果は、調べた化合物のいずれも、体重または他の臓器(すなわち、肝臓、腎臓、脾臓、肺及び心臓)の重量に及ぼす有意な影響を生じないことを示した。また、治療薬を受けている動物の診断用血液学試験及び目視検査によって測定して、どの化合物もいかなる急性毒性の徴候も生じなかった。重要なことには、GTx−007は、0.3mg/日の用量(すなわち、最大の同化作用効果を示す用量)で、黄体形成ホルモン(LH)の産生も卵胞刺激ホルモン(FSH)の産生も抑制しなかった。
【0158】
要約すると、S−GTx−007は、内因性アンドロゲンの除去後に肛門挙筋の重量を維持することで、動物において並外れた同化作用活性を示した。この発見は、治療上有用な非ステロイド系アンドロゲンの開発へ向けての大きな前進とこのクラスの従来の薬物に勝る大きな改良(すなわち、組織選択性及び効力)を表す。S−GTx−014及びS−GTx−07は、アンドロゲンステロイドでありかつアナボリックステロイドであるプロピオン酸テストステロンと比較して、選択的同化作用活性を示した。組織選択的活性は、同化作用関連用途という面から見て、実際に非ステロイド系アンドロゲンの利点のうちの1つである。
【0159】
構造及びインビトロ機能活性における類似性にもかかわらず、化合物GTx−014、GTx−015、GTx−016、及びGTx−007のS異性体はそのインビボ活性の点では大きな差を示した。GTx−007は、動物における最も有効なアンドロゲン活性及び同化作用活性を有し、同化作用活性はプロピオン酸テストステロンのものを超えた。GTx−014は、低いアンドロゲン活性を示したが、同化作用活性はプロピオン酸テストステロンに匹敵した。それに反して、GTx−015及びGTx−016は、インビボでいかなるアンドロゲン活性も同化作用活性も生じることができなかった。
【0160】
こうした研究は、より低いアンドロゲン活性(例えば、前立腺の成長)と共に効力のある同化作用効果(例えば、筋肉の成長)を証明する新規なクラスの選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARMS)の2つの構成員(GTx−014及びGTx−007化合物、それぞれ化合物II及びV)を発見したことを示す。この新規なクラスの薬物は、非選択性アンドロゲンに勝る幾つかの利点を有し、これは、男性及び女性における妊孕性、赤血球生成、骨粗鬆症、性欲の調節のための潜在的治療用途並びに前立腺癌を有するかまたは前立腺癌を有する危険の高い男性における潜在的治療用途を含む。
【0161】
さらに、図7及び8は、ラットにおいてにGTx−014及びGTx−007がLHレベル及びFSHレベルに及ぼす影響を証明する。こうした結果は、こうした生殖ホルモンに及ぼす影響に差があることが理由となって、こうしたSARMの新規性をさらに証明し、従って組織特異的薬理活性を証明する。図7において、TP及びGTx−014を用いて処理した去勢動物におけるLHレベルは、0.3mg/日以上の用量で、未処理の動物(すなわち、去勢対照)のものよりも有意に低かった。しかしながら、LHレベルの有意な減少が観察されるまでに、GTx−007ではより高い用量(すなわち、0.5mg/日以上)が必要だった。従って、GTx−007は、肛門挙筋の成長の最大刺激を引き出すことができる用量でLHレベルを抑制しない。図8において、GTx−014を用いて処理した去勢動物におけるFSHレベルは、0.5mg/日以上の用量で、未処理の動物(すなわち、去勢対照)のものよりも有意に低かった。同様に、TPを用いて処理した動物においてはより低いFSHレベルが観察された。しかしながら、この差は0.75mg/日の用量でのみ有意だった。GTx−007を用いて処理した動物におけるFSHレベルは、試験したいかなる用量レベルでも未処理の動物のものと有意に異なった。従って、GTx−007は、肛門挙筋の成長の最大刺激を引き出すことができる用量でFSHレベルを抑制しない。
【0162】
【表1−1】

【0163】
【表1−2】

【0164】
実施例3
犬におけるGTx−007の薬動学
新規な選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)であるS−GTx−007の薬動学をビーグル犬において確認した。4処理4期間の交差法を研究において利用し、各性別につき3匹で合計6匹のビーグル犬を含んだ。各動物は、無作為に割り当てた順序で、液剤で3mg/kgのIV投与、10mg/kgのIV投与、10mg/kgのPO投与、及びカプセルで10mg/kgのPO投与を受けた。処理と処理との間に1週間のワッシュアウト期間を置いた。薬物投与後、72時間まで血漿試料を集めた。血漿中S−GTx−007濃度を実証済みのHPLC法によって分析した。クリアランス(CL)、分配の体積(Vss)、半減期(T1/2)、及び他の薬動学パラメータを非コンパートメント方法で測定した。結果は、IV投与後、S−GTx−007は犬の血漿から取り除かれ、終末T1/2は約4時間であり、CLは4.4mL/分/kgであることを示した。図4、5、及び6は、それぞれ静脈内液剤、経口液剤、及び経口カプセルの投与後のS−GTx−007の血漿中濃度−時間プロフィールを示す。薬動学は用量及び性別に依存しなかった。S−GTx−007の経口生物学的利用率は剤形によって変化し、液剤及びカプセルの場合、平均してそれぞれ38%及び19%だった。従って、S−GTx−007は、ビーグル犬における適度の半減期、ゆっくりとしたクリアランス及び適度の生物学的利用率を証明し、これが新規なクラスの経口で生物学的に利用可能な組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーターの最初のものであることを確認する。
【0165】
実施例4
HPLCによるGTx−007の分析
逆相高速液体クロマトグラフ(HPLC)アッセイを、犬の血漿中のGTx−007濃度を定量するために開発した。犬の血液試料を静脈穿刺によって得、1000gで15分間遠心分離した。試料を分析まで−20℃で冷凍保管した。個々の試料を急速に融解し、アリコート(0.5mL)に内標準(CM−II−87の200μg/mLの水溶液の20μl)を加えた。1mLのアセトニトリルのアリコートを試料に加え、血漿タンパク質を沈殿させた。試料を撹拌し、次に1000gで15分間遠心分離した。上澄みを傾瀉してガラス抽出管に入れ、7.5mLの酢酸エチルを加えた。抽出混合物を室温で20分間放置し、この間数回撹拌した。次に試料を1000gで10分間遠心分離し、有機相を除去し、コニカル型の底のガラス管中に入れた。有機相を窒素下で蒸発させた。試料を200μlの移動相(35:65のアセトニトリル:水)中で再構成し、HPLC注入用のオートサンプラー用バイアル(ウォーターズ 717 プラス・オートサンプラー、ウォーターズCorp.、ミルフォード、MA(Waters 717 plus autosampler, Waters Corp., Milford, MA))に移した。水中の35%(v/v)アセトニトリルのアイソクラチック移動相を流量1mL/分でポンプで送った(モデル510、ウォーターズCorp.)。固定相はC18逆相カラム(ノヴァパック C18(Novapak C18)、3.9×150mm)だった。被検体を、270nmでのUV検出を用いて測定した(モデル486吸光度検出器、ウォーターズCorp.)。GTx−007及びCM−II−87の保持時間は、それぞれ11.1及び16.9分だった。クロマトグラフィーデータを集め、ミレニアム・ソフトウェア(Millennium software)を使用して分析した。各試料中のGTx−007の血漿中濃度を、検量線と比較して決定した。検量線は、犬の血漿に既知量のGTx−007を加えることで作成した。検量線において使用した、犬の血漿試料中の最終GTx−007濃度は、0.08、0.2、0.4、2、4、10、及び20μg/mLだった。検量線はこの濃度範囲で直線であり、相関係数(r2)0.9935以上を示した。標準物質の1日内及び日毎の変動係数は、0.08μg/mLの場合の6.4%から20μg/mLの場合の7.9%の範囲にわたった。
【0166】
融点をトマス−フーバーキャピラリー融点測定装置(Thomas-Hoover capillary melting point apparatus)で測定し、補正はしていない。赤外スペクトルをパーキン・エルマー・システム 2000 FT−IR(Perkin Elmer System 2000 FT-IR)で記録した。旋光性をオートポル(登録商標)III自動偏光計(ルドルフ・リサーチ・モデルIII−589−10、フェアフィールド、ニュージャージー)(Autopol(登録商標) III Automatic Polarimeter (Rudolph Research Model III-589-10, Fairfield, New Jersey))で測定した。プロトン及びカーボン−13磁気共鳴スペクトルを、ブルーカー AX 300スペクトロメーター(Bruker AX 300 spoctrometer)(1H及び13Cに関してそれぞれ300及び75MHz)で得た。化学シフト値は、テトラメチルシラン(TMS)を基準としたppm(δ)として報告する。スペクトルデータは、与えられた構造と一致した。質量スペクトルを、ブルーカー−HPエスクワイアLCシステム(Bruker-HP Esquire LC System)で測定した。元素分析をアトランティック・マイクロラブInc.(ノークロス、GA)(Atlantic Microlab Inc. (Norcross, GA))によって実行し、実測値は理論値の0.4%以内だった。常用の薄層クロマトグラフィー(TLC)をアルミニウムプレート上のシリカゲル(シリカゲル 60F 254、20×20cm、オールドリッチ・ケミカル・カンパニーInc.、ミルウォーキー、WI(silica gel 60 F 254, 20 x 20 cm, Aldrich Chemical Company Inc., Milwaukee, WI))上で実行した。フラッシュクロマトグラフィーをシリカゲル(メルク(Merck)、等級60、230〜400メッシュ、60)上で実行した。テトラヒドロフラン(THF)をナトリウム金属上での蒸留によって乾燥した。アセトニトリル(MeCN)及び塩化メチレン(CH2Cl2)をP25からの蒸留によって乾燥した。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】ラットにおける(S)−GTx−007のアンドロゲン活性及び同化作用活性。ラットを未処理のままにするか(未去勢対照)、去勢するか(去勢対照)、プロピオン酸テストステロン(TP)を用いて処理するか、またはS−GTx−007を用いて処理し、体重増加並びにアンドロゲン応答性組織(前立腺、精嚢及び肛門挙筋)の重量を測定した。
【図2】ラットにおけるS−GTx−007のアンドロゲン活性及び同化作用活性。ラットを未処理のままにするか(未去勢対照)、去勢するか(去勢対照)、0.1、0.3、0.5、0.75及び1.0mg/日のプロピオン酸テストステロン(TP)を用いて処理するか、または0.1、0.3、0.5、0.75及び1.0mg/日のS−GTx−007を用いて処理し、アンドロゲン応答性組織(前立腺、精嚢及び肛門挙筋)の重量を測定した。
【図3】ラットにおけるS−GTx−014のアンドロゲン活性及び同化作用活性。ラットを未処理のままにするか(未去勢対照)、去勢するか(去勢対照)、0.1、0.3、0.5、0.75及び1.0mg/日のプロピオン酸テストステロン(TP)を用いて処理するか、または0.1、0.3、0.5、0.75及び1.0mg/日のS−GTx−014を用いて処理し、アンドロゲン応答性組織(前立腺、精嚢及び肛門挙筋)の重量を測定した。
【図4】3及び10mg/kgでIV投与後のビーグル犬におけるS−GTx−007の平均血漿中濃度−時間プロフィール。
【図5】10mg/kgで液剤としてPO投与後のビーグル犬におけるS−GTx−007の平均血漿中濃度−時間プロフィール。
【図6】mg/kgでカプセルとしてIV投与後のビーグル犬におけるS−GTx−007の平均血漿中濃度−時間プロフィール。
【図7】GTx−014及びGTx−007がLHレベルに及ぼす影響。
【図8】GTx−014及びGTx−007がFSHレベルに及ぼす影響。
【図9】GTx−007の合成スキーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II:
【化1】

[式中、Xは、Oであり;
Zは、水素結合アクセプター、NO2、CN、COR、CONHRであり;
Yは、脂質可溶性基、I、CF3、Br、Cl、SnR3であり;
Rは、アルキル若しくはアリール基またはOHであり;
Qは、アセトアミド、トリフルオロアセトアミド、アルキルアミン類、エーテル、アルキル、N−スルホニル、O−スルホニル、アルキルスルホニル、カルボニルまたははケトンである。]
の構造で表される、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物であって、アンドロゲン受容体のための非ステロイド系リガンドのインビボアンドロゲン活性及び同化作用活性を有する、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物。
【請求項2】
Xは、Oであり、Zは、NO2であり、Yは、脂質可溶性であり、Qは、アセトアミドである、請求項1の選択的アンドロゲン受容体モジュレーター化合物。
【請求項3】
対象におけるホルモン療法のための、請求項1又は2の化合物を含む組成物。
【請求項4】
対象におけるホルモン関連状態を治療するための、請求項1又は2の化合物を含む組成物。
【請求項5】
対象における前立腺癌を治療するための、請求項1又は2の化合物を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−306880(P2006−306880A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147596(P2006−147596)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【分割の表示】特願2002−521186(P2002−521186)の分割
【原出願日】平成13年8月23日(2001.8.23)
【出願人】(500296088)ユニバーシティ オブ テネシー リサーチ ファウンデーション (9)
【Fターム(参考)】