説明

還元剤供給装置

【課題】還元剤ガスの大気放出のおそれを低減する。
【解決手段】NH3ガス(還元剤ガス)を貯蔵するガスタンク30と、排気管11の中へNH3ガスを添加する添加弁20へ、ガスタンク30からNH3ガスを供給する供給配管40と、ガスタンク30および供給配管40の全体を覆うカバー部材60とを備える。これによれば、ガスタンク30や供給配管40がNH3ガスにより腐食してNH3ガスが漏出しても、その漏出したNH3ガスが大気に放出されることを、カバー部材60により抑制できる。また、交通事故等の衝撃が生じた場合であっても、ガスタンク30や供給配管40はカバー部材60により保護されるので、ガスタンク30や供給配管40が損傷してNH3ガスが大気放出されることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)を還元して浄化する浄化システムに対して、還元剤ガスを供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)を還元して浄化する浄化システムとして、尿素水溶液を排気管中へ添加する方式(液体添加式)のものが従来より知られている。この浄化システムでは、添加した尿素水溶液が排気管中で排気熱によりアンモニアに変換され、そのアンモニアを触媒へ供給することでNOxを還元させるものである。しかしこの方式では、排気温度が十分に高くなっていなければ(例えば150℃)尿素水溶液がアンモニアに変換されないので、内燃機関の冷間始動時には十分な浄化能力を発揮できないことが懸念される。
【0003】
そこで、特許文献1等では、還元剤タンク内でヒータにより還元剤を加熱してアンモニアガス(還元剤ガス)を発生させておき、そのアンモニアガスを排気管中へ添加する方式(ガス添加式)の浄化システムを提案している。この方式であれば、排気温度が低い冷間始動時であっても十分な浄化能力が発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−267321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、還元剤ガスは尿素水溶液に比べて金属を腐食させる作用が強い。そのため、上述したガス添加式の浄化システムでは、還元剤ガスを添加弁へ供給する供給配管や還元剤タンクが還元剤ガスにより腐食してしまい、還元剤ガスが大気中に放出されることが懸念される。また、例えば車両に搭載された内燃機関に適用された排気浄化装置の場合において、交通事故等により外部から衝撃が加わることにより供給配管や還元剤タンクが損傷して、還元剤ガスが大気中に放出されることも懸念される。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、還元剤ガスの大気放出のおそれを低減する還元剤供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明では、還元剤ガスを貯蔵するガスタンクと、内燃機関の排気管の中へ還元剤ガスを添加する添加弁へ、前記ガスタンクから還元剤ガスを供給する供給配管と、前記ガスタンクおよび前記供給配管の全体を覆うカバー部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記発明によれば、ガスタンクおよび供給配管の全体をカバー部材で覆うので、ガスタンクおよび供給配管が還元剤ガスにより腐食して還元剤ガスが漏出しても、その漏出した還元剤ガスが大気に放出されることを、カバー部材により抑制できる。また、交通事故等の衝撃が生じた場合であっても、ガスタンクや供給配管はカバー部材により保護されるので、ガスタンクや供給配管が損傷することを抑制できる。よって、上記発明によれば還元剤ガスの大気放出のおそれを低減できる。
【0010】
請求項2記載の発明では、前記ガスタンクおよび前記供給配管と、前記カバー部材との間には空気が封入されており、前記カバー部材の封入内部の圧力を検出する圧力センサを備えることを特徴とする。
【0011】
上記発明によれば、圧力センサによる検出圧力に基づき、ガスタンク、供給配管およびカバー部材のいずれかが損傷したことを検知できる。例えば、カバー部材の封入内部の圧力(以下、「封入圧」と記載)が、ガスタンク内部の圧力(以下、「ガス供給圧」と記載)と異なるように空気を封入させておけば、ガスタンクや供給配管の腐食箇所から還元剤ガスが漏出(或いは腐食箇所から封入空気が流入)した場合、封入圧が変化することとなる。また、例えば、封入圧が大気圧と異なるように空気を封入させておけば、外部衝撃等によりカバー部材が損傷すると、損傷箇所から封入空気が漏出(或いは損傷箇所から大気が流入)した場合、封入圧が変化することとなる。したがって、上記発明によれば、圧力センサの検出値変化をモニタリングすることにより、ガスタンク、供給配管およびカバー部材のいずれかが損傷したことを検知して運転者に報知することができる。
【0012】
請求項3記載の発明では、前記ガスタンクおよび前記供給配管と、前記カバー部材との間には二酸化炭素ガスが封入されていることを特徴とする。
【0013】
ここで、還元剤ガスは二酸化炭素に接触すると化学変化により個体物質となる。この点に着目した上記発明では、カバー部材内部に二酸化炭素ガスを封入しているので、ガスタンクや供給配管が腐食すると、腐食部近傍にある還元剤ガスがカバー部材内部の二酸化炭素ガスと化学反応して固体物質になる。そのため、生成した固体物質が腐食部に付着することが期待でき、腐食部の開口面積を小さくして還元剤ガスの漏出抑制を図ることができる。
【0014】
請求項4記載の発明では、前記カバー部材の封入内部の圧力を検出する圧力センサを備えることを特徴とする。
【0015】
還元剤ガスは二酸化炭素に接触すると化学変化により個体物質となることは先述した通りであるが、このような化学変化が生じると、カバー部材内部の二酸化炭素ガスによる圧力(封入圧)は低下する。この点に着目した上記発明では、封入圧を検出する圧力センサを備えるので、還元剤ガスの漏出に伴い上記化学変化が生じたことを検知して運転者に報知することができる。
【0016】
請求項5記載の発明では、前記カバー部材の封入内部の圧力が前記ガスタンク内の圧力と同じになるよう、前記二酸化炭素ガスが封入されていることを特徴とする。
【0017】
ここで、上記発明に反して封入圧とガス供給圧が大きく異なっていると、ガスタンクや供給配管が腐食した時に、封入圧とガス供給圧との圧力差により気流が生じてしまうので、生成された固体物質が腐食部に付着しにくくなる。この点を鑑みた上記発明では、封入圧とガス供給圧が同じに設定されているので、前記気流の発生を抑制でき、固体物質が腐食部に付着しやすくなるようにできる。よって、還元剤ガスの漏出抑制の効果を向上できる。
【0018】
請求項6記載の発明では、前記カバー部材は、前記ガスタンクおよび前記供給配管に加えて前記添加弁も覆うように形成されていることを特徴とする。
【0019】
これによれば、ガスタンクおよび供給配管のみならず、添加弁についてもカバー部材で覆うので、添加弁が腐食して還元剤ガスが漏出した場合であっても、その漏出ガスが大気へ放出されることをカバー部材により抑制できる。また、外部衝撃に対して添加弁もカバー部材により保護されるので、添加弁が損傷することを抑制でき、還元剤ガスの大気放出抑制効果を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる還元剤供給装置を示す図。
【図2】第1実施形態にかかる還元剤供給装置の構成、および異常検知の手順を示す図。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる還元剤供給装置の構成、および異常検知の手順を示す図。
【図4】本発明の他の実施形態にかかる還元剤供給装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した還元剤供給装置の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0022】
(第1実施形態)
本実施形態の還元剤供給装置は、排気中のNOxを還元して浄化する浄化システムへ還元剤を供給する装置であり、図1は、本実施形態に係る還元剤供給装置が適用される浄化システムの概要を示す構成図である。この浄化システムは、自動車に搭載されたディーゼルエンジン(図示略)により排出される排気を浄化対象として、排気を浄化するための各種アクチュエータ及び各種センサ、並びに電子制御ユニット(ECU70)等を有して構築されている。
【0023】
図1のエンジン排気系において、エンジン本体に接続される排気管11には、排気上流側から順に酸化触媒装置12、攪拌装置13、選択還元型触媒装置(以下、SCR触媒装置14と記載)、スリップ触媒装置15が取り付けられている。また、排気管11のうちSCR触媒装置14の上流側、かつ、攪拌装置13の下流側部分には、アンモニアガス(還元剤ガス)を排気管11内へ添加する添加弁20が取り付けられている。
【0024】
酸化触媒装置12は、白金系の酸化触媒を担持する基材を有して構成されており、排気中の未燃燃料HC及びCOを酸化して浄化するとともに、排気中のNOを酸化してNO2に変換する。攪拌装置13は、排気を攪拌してNO2の分布を均一化させるとともに、排気温度の分布を均一化させる。
【0025】
SCR触媒装置14は、酸化バナジウム等のNOx還元触媒13aを担持する基材を有して構成されており、酸素共存下でも選択的に排気中のNOxをアンモニアガスと反応させて、NOxを還元して浄化する。ちなみに、酸化触媒装置12へ流入するNOxの大半はNOであるが、酸化触媒装置12によりNOの一部をNO2に変換することで、SCR触媒装置14へ流入するNO2量をNO量に近づけさせ、ひいてはNOx浄化率の向上が図られることとなる。
【0026】
スリップ触媒装置15は、添加弁20から添加されたアンモニアガスのうち、過剰に添加されてSCR触媒装置14にてNOxと反応することなく排出された余剰アンモニアガスを酸化して浄化する。
【0027】
次に、アンモニアガスを排気管11へ供給する還元剤供給装置の構成について説明する。当該装置は、以下に説明するガスタンク30、供給配管40、アキュムレータ50、カバー部材60、圧力センサ71、および先述した添加弁20等を備えて構成されている。
【0028】
ガスタンク30内には、カルバミン酸アンモニウム等の固体尿素が貯蔵されているとともに、電気ヒータ30hが収容されている。そして、電気ヒータ30hにより固体尿素を加熱して分解させることで、ガスタンク30内にてアンモニアガスを発生させている。つまり、ガスタンク30は固体尿素およびアンモニアガスを貯蔵している。なお、固体尿素およびアンモニアガスを貯蔵するガスタンク30は、アルミニウム等の金属製の板材により形成されている。
【0029】
供給配管40は、ガスタンク30のうちアンモニアガスを貯蔵する部分に接続されている。この供給配管40には、アキュムレータ50および添加弁20が取り付けられている。そして、ガスタンク30内のアンモニアガスは、供給配管40内を流通してアキュムレータ50および添加弁20へ供給される。また、供給配管40には電気ヒータ40hが取り付けられており、供給配管40内を流通するアンモニアガスを電気ヒータ40hで加熱している。これにより、アンモニアガスが供給配管40内で液化、固化することの防止を図る。
【0030】
アキュムレータ50は、添加弁20へ供給するのに十分な量のアンモニアガスを蓄える。なお、アキュムレータ50にも電気ヒータ50hが取り付けられており、アンモニアガスの液化、固化の防止を図っている。なお、アキュムレータ50、供給配管40および添加弁20の材質は、アルミニウム等の金属製である。
【0031】
添加弁20は、排気管11に取り付けられてアンモニアガスを流出させるノズル配管21と、ノズル配管21を開閉する電磁バルブ22とを有して構成されている。電磁バルブ22の開閉作動はECU70により制御される。なお、電磁バルブ22を閉弁させた状態で電気ヒータ30hにより固体尿素を加熱してアンモニアガスを発生させると、ガスタンク30、供給配管40およびアキュムレータ50の内部圧力は上昇していく。そのため、アンモニアガスは大気圧よりも高い圧力(例えば0.15MPa以上)になっている。よって、電磁バルブ22を開弁させると、高圧のアンモニアガスがノズル配管21から排気管11へ流出することとなる。なお、カルバミン酸アンモニウムを固体尿素として採用した場合には、固体尿素を70℃以上に加熱するとアンモニアガスが発生する。
【0032】
酸化触媒装置12の下流側かつSCR触媒装置14の上流側には、図示しないNOxセンサが配置されている。このNOxセンサにより検出されたNOx量に応じて、アンモニアガスの添加量に過不足が生じないよう、添加弁20の開閉作動をECU70が制御する。
【0033】
カバー部材60は、ガスタンク30、供給配管40、およびアキュムレータ50の全体を覆うとともに、添加弁20のうち排気管11の外部に位置する部分の全体を覆うように形成されている。具体的には、カバー部材60は、ガスタンク30を覆うカバー61、供給配管40を覆うカバー62、アキュムレータ50を覆うカバー63、および添加弁20を覆うカバー64を有して構成されている。なお、カバー部材60の材質は金属であってもよいし合成樹脂であってもよい。
【0034】
カバー61とガスタンク30との間には空間61aが形成され、カバー62と供給配管40との間には空間62aが形成され、カバー63とアキュムレータ50との間には空間63aが形成され、カバー64と添加弁20との間には空間64aが形成されている。これらの空間61a,62a,63a,64aは互いに連通しており、かつ、ガスタンク30、供給配管40、アキュムレータ50および添加弁20と、カバー部材60との間において密閉された空間(以下、「密閉空間61a〜64a」と記載)となっている。
【0035】
図2(a)に示すように、密閉空間61a〜64aには空気が大気圧(0.1MPa)の状態で封入されている。つまり、カバー部材60の外部の圧力をP1、密閉空間61a〜64a内の圧力(封入圧)をP2、ガスタンク30内の圧力(ガス供給圧)をP3とした場合において、本実施形態ではP1(外部圧)=P2(封入圧)、かつ、P2(封入圧)<P3(ガス供給圧)となるように構成されている。
【0036】
また、カバー部材60には、密閉空間61a〜64a内の封入圧P2を検出する圧力センサ71が取り付けられている。本実施形態では、圧力センサ71をカバー61に取り付けて封入圧P2を検出している。但し、空間61a,62a,63a,64aは互いに連通しているので、いずれのカバー61〜64に圧力センサ71を取り付けてもよい。
【0037】
ここで、アンモニアガスは金属を腐食させる作用が強い。そのため、ガスタンク30、供給配管40、アキュムレータ50、および添加弁20のいずれかがアンモニアガスにより腐食して、その腐食部からアンモニアガスが大気に放出されることが懸念される。この懸念に対し本実施形態では、カバー部材60により密閉空間61a〜64aを形成するとともに、P2(封入圧)<P3(ガス供給圧)となるように構成するので、腐食部からアンモニアガスが密閉空間61a〜64aへ漏出すると、封入圧P2が上昇する。したがって、封入圧P2を検出する圧力センサ71の検出値が上昇した場合には、ガスタンク30、供給配管40、アキュムレータ50、および添加弁20のいずれかが腐食してアンモニアガスが漏出している蓋然性が高い。
【0038】
この点を鑑み、ECU70は、圧力センサ71の検出値に基づき、各種部材30,40,50,20のいずれかが腐食してアンモニアガスの大気放出のおそれがある異常の有無を判定する。そして、前記異常の発生と判定された場合には、車室内に設置された警告ランプ72を点灯作動させて車両乗員に異常発生の旨を報知する。
【0039】
図2(b)は、ECU70が有するマイクロコンピュータによる上記異常判定の処理手順を示すフローチャートであり、当該処理は所定周期で繰り返し実行される。
【0040】
先ず、図2(b)に示すステップS10において、圧力センサ71から出力される検出圧力を逐次取得して、検出圧力の変化をモニタリングする。続くステップS20では、取得した検出圧力が上昇しているか否かを判定する。例えば、所定時間内で検出圧力が所定値以上上昇したか否かを判定する。上昇していると肯定判定された場合(S20:YES)には、次のステップS30に進み、警告ランプ72を点灯作動させる。
【0041】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0042】
(1)本実施形態では、ガスタンク30、供給配管40、アキュムレータ50および添加弁20をカバー部材60で覆い、これらの部材30,40,50,20とカバー部材60との間で密閉空間61a〜64aを形成する。そして、P2(封入圧)<P3(ガス供給圧)となるように構成する。そのため、各種部材30,40,50,20が腐食してその腐食部からアンモニアガスが漏出しても、封入圧P2の上昇を圧力センサ71でモニタリングすることで、その漏出を検知できる。よって、警告ランプ72の点灯を見た車両乗員は速やかに車両を修理することとなるので、アンモニアガスが大気に放出されるおそれを抑制できる。
【0043】
(2)カバー部材60を備えて密閉空間61a〜64aを形成するので、各種部材30,40,50,20が腐食してその腐食部からアンモニアガスが漏出しても、腐食部の修理が為されるまでの期間は、漏出したアンモニアガスを密閉空間61a〜64a内に滞留させておくことができ、漏出したアンモニアガスが直接大気へ放出されることを回避できる。
【0044】
(3)カバー部材60を備えるので、交通事故等により車両が衝撃を受けた場合であっても、各種部材30,40,50,20はカバー部材60により保護されるので、各種部材30,40,50,20が衝撃により損傷することを抑制できる。よって、各種部材30,40,50,20からアンモニアガスが漏出して大気へ放出されるおそれを抑制できる。
【0045】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、密閉空間61a〜64aに空気を封入しているのに対し、図3(a)に示す本実施形態では、密閉空間61a〜64aに二酸化炭素ガスを封入している。また、二酸化炭素ガスの封入圧P2はガス供給圧P3と同じに設定されている。なお、ガス供給圧P3は0.15MPa以上であるため、封入圧P2は外部圧P1よりも高くなっている。
【0046】
ここで、還元剤ガスは二酸化炭素に接触すると化学変化により個体物質となる。そして、このような化学変化が生じると、密閉空間61a〜64a内の二酸化炭素ガスが消費されて、封入圧P2は低下する。したがって、封入圧P2を検出する圧力センサ71の検出値が減少した場合には、各種部材30,40,50,20のいずれかが腐食してアンモニアガスが漏出している蓋然性が高い。
【0047】
この点を鑑み、ECU70は、圧力センサ71の検出値に基づき、各種部材30,40,50,20のいずれかが腐食してアンモニアガスの大気放出のおそれがある異常の有無を判定する。そして、前記異常の発生と判定された場合には、警告ランプ72を点灯作動させて車両乗員に異常発生の旨を報知する。
【0048】
図3(b)は、ECU70が有するマイクロコンピュータによる上記異常判定の処理手順を示すフローチャートであり、当該処理は所定周期で繰り返し実行される。
【0049】
先ず、図3(b)に示すステップS10において、圧力センサ71から出力される検出圧力を逐次取得して、検出圧力の変化をモニタリングする。続くステップS21では、取得した検出圧力が減少しているか否かを判定する。例えば、所定時間内で検出圧力が所定値以上減少したか否かを判定する。減少していると肯定判定された場合(S21:YES)には、次のステップS30に進み、警告ランプ72を点灯作動させる。
【0050】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0051】
(1)本実施形態では、ガスタンク30、供給配管40、アキュムレータ50および添加弁20をカバー部材60で覆い、これらの部材30,40,50,20とカバー部材60との間で密閉空間61a〜64aを形成する。そして、密閉空間61a〜64aに、アンモニアガスと化学反応する二酸化炭素ガスを封入しておく。そのため、各種部材30,40,50,20が腐食してその腐食部からアンモニアガスが漏出しても、封入圧P2の減少を圧力センサ71でモニタリングすることで、その漏出を検知できる。よって、警告ランプ72の点灯を見た車両乗員は速やかに車両を修理することとなるので、アンモニアガスが大気に放出されるおそれを抑制できる。
【0052】
(2)密閉空間61a〜64aに二酸化炭素ガスを封入するので、各種部材30,40,50,20が腐食してその腐食部からアンモニアガスが漏出しても、アンモニアガスが二酸化炭素ガスと化学反応して固体物質となるので、漏出したアンモニアガスが大気へ放出されることを抑制できる。
【0053】
(3)密閉空間61a〜64aに二酸化炭素ガスを封入するので、生成した固体物質が腐食部に付着することが期待でき、腐食部の開口面積を小さくしてアンモニアガスの漏出抑制を図ることができる。
【0054】
(4)しかも、封入圧P2はガス供給圧P3と同じに設定されているので、封入圧P2とガス供給圧P3との圧力差により気流が生じることを抑制して、二酸化炭素ガスとの化学反応により生成された固体物質が腐食部に付着しやすくできる。よって、アンモニアガスの漏出抑制の効果を向上できる。
【0055】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、以下のように変更して実施してもよい。また、各実施形態の特徴的構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0056】
・図1に示すカバー部材60は、添加弁20を覆うカバー64を有しており、ガスタンク30から排気管11までのアンモニアガス供給経路について、その経路の全体をカバー部材60で覆っている。これに対し、図4に例示するように、添加弁20Aを覆うカバーを廃止して、ガスタンク30から添加弁20Aまでのアンモニアガス供給経路について、その経路の全体をカバー部材60で覆うようにしてもよい。
【0057】
・図1に示すカバー61は、ガスタンク30のうちアンモニアガスおよび固体尿素を貯蔵する部分のみならず、電気ヒータ30hを収容する部分も覆っている。これに対し、図4に例示するように、電気ヒータ30hの収容部分を覆うことは廃止して、アンモニアガスおよび固体尿素を貯蔵する部分のみを覆うようにカバー61Aを形成してもよい。
【0058】
・図1に示すカバー部材60は、各種部材30,40,50,20との間に密閉空間61a〜64aを形成して空気等の気体を封入させているが、密閉空間の形成を廃止してもよい。但しこの場合には、カバー部材60により衝撃に対する保護機能を期待できるものの、封入圧P2の変化をモニタリングしてアンモニアガスの漏出を検知することはできなくなる。
【0059】
・図1に示すガスタンク30は、アンモニアガスの発生源として固体尿素を採用しているが、ガスタンク30の容量を十分に大きくして、ガスタンク30へアンモニアガスを直接補給するようにしてもよい。或いは、固体尿素に替えて液体の尿素水溶液を貯蔵して、その尿素水溶液を電気ヒータ30hで加熱してアンモニアガスを発生させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
11…排気管、20,20A…添加弁、30…ガスタンク、40…供給配管、60…カバー部材、71…圧力センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤ガスを貯蔵するガスタンクと、
内燃機関の排気管の中へ還元剤ガスを添加する添加弁へ、前記ガスタンクから還元剤ガスを供給する供給配管と、
前記ガスタンクおよび前記供給配管の全体を覆うカバー部材と、
を備えることを特徴とする還元剤供給装置。
【請求項2】
前記ガスタンクおよび前記供給配管と、前記カバー部材との間には空気が封入されており、
前記カバー部材の封入内部の圧力を検出する圧力センサを備えることを特徴とする請求項1に記載の還元剤供給装置。
【請求項3】
前記ガスタンクおよび前記供給配管と、前記カバー部材との間には二酸化炭素ガスが封入されていることを特徴とする請求項1に記載の還元剤供給装置。
【請求項4】
前記カバー部材の封入内部の圧力を検出する圧力センサを備えることを特徴とする請求項3に記載の還元剤供給装置。
【請求項5】
前記カバー部材の封入内部の圧力が前記ガスタンク内の圧力と同じになるよう、前記二酸化炭素ガスが封入されていることを特徴とする請求項3または4に記載の還元剤供給装置。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記ガスタンクおよび前記供給配管に加えて前記添加弁も覆うように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の還元剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−237291(P2012−237291A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108398(P2011−108398)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】