説明

還元鉄塊成化物の冷却設備及び冷却方法

【課題】回転ドラム式間接冷却装置のドラムの回転数を上げることなく、被冷却物である還元鉄塊成化物の送り速度を従来よりも上げることができる還元鉄塊成化物の冷却技術を提供すること。
【解決手段】酸化鉄塊成化物を還元して還元鉄塊成化物とする還元炉から排出される還元鉄塊成化物を回転ドラム式間接冷却装置10で冷却する還元鉄塊成化物の冷却設備において、回転ドラム式間接冷却装置10のドラム11の内面に複数条の螺旋状通路15〜17を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転炉床炉やロータリーキルン等の還元炉から排出される高温の還元鉄塊成化物を冷却する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、製鋼ダストや粉鉱等に含まれる酸化鉄を利用するため、これらと還元剤(炭材)やバインダを混練し造粒して酸化鉄塊成化物を作り、この酸化鉄塊成化物を回転炉床炉やロータリーキルン等の還元炉に装入して、加熱・還元することにより還元鉄塊成化物を製造することが行われている。
【0003】
還元炉から排出される還元鉄塊成化物は900℃以上の高温であり、冷却後に高炉、転炉あるいは電気炉にてすぐに利用される以外に、熱間成型(ホットブリケット)されて保存や輸送される場合がある。
【0004】
還元鉄塊成化物のホットブリケットは、一般的に500〜800℃で行われる。そこで、還元炉から排出される還元鉄塊成化物は900℃以上の高温のため、これを再酸化させることなくホットブリケット装置前で500〜800℃になるように軽冷却する装置が必要となる。
【0005】
このような用途に使われる冷却装置としては、例えば特許文献1に開示されているように回転ドラム式間接冷却装置が知られている。この従来の回転ドラム式間接冷却装置には、ドラムの内面に螺旋状の送り羽根を設けることにより1条の螺旋状通路が設けられている。
【0006】
しかしながら、従来の回転ドラム式間接冷却装置は、元来、十分に時間をかけて還元鉄塊成化物を低温まで冷却するものであるため、500℃以上の温度を保ったまま還元鉄塊成化物を排出するには、ドラムの回転数を上げて送り速度を上げる必要があった。しかし、ドラムの回転数を上げると、ドラムと還元鉄塊成化物の摩擦によりドラムの摩耗が顕著になるという問題があった。さらに、還元炉の操業状態等により回転ドラム式間接冷却装置に装入される還元鉄塊成化物の量(処理量)が大幅に減ると、ドラムの回転数を上げたとしてもドラム出側の温度が目標温度よりも低くなり、ホットブリケットできなくなるという問題もあった。
【特許文献1】特開2001−330379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、回転ドラム式間接冷却装置のドラムの回転数を上げることなく、被冷却物である還元鉄塊成化物の送り速度を従来よりも上げることができる還元鉄塊成化物の冷却技術を提供することにある。
【0008】
他の課題は、還元鉄塊成化物の処理量が変動したとしても、一定の冷却効率を維持できる還元鉄塊成化物の冷却技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の還元鉄塊成化物の冷却設備は、酸化鉄塊成化物を還元して還元鉄塊成化物とする還元炉から排出される還元鉄塊成化物を回転ドラム式間接冷却装置で冷却する還元鉄塊成化物の冷却設備において、前記回転ドラム式間接冷却装置のドラムの内面に複数条の螺旋状通路を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の還元鉄塊成化物の冷却方法は、酸化鉄塊成化物を還元して還元鉄塊成化物とする還元炉から排出される還元鉄塊成化物を回転ドラム式間接冷却装置で冷却する還元鉄塊成化物の冷却方法において、前記回転ドラム式間接冷却装置のドラムの内面に設けた複数条の螺旋状通路に還元鉄塊成化物を挿入して通過させながら冷却し、ドラム出側での温度を500〜800℃とすることを特徴とするものである。
【0011】
このように本発明では、回転ドラム式間接冷却装置のドラムの内面に複数条の螺旋状通路を設けたことで、ドラムの回転数を上げることなく、還元鉄塊成化物の送り速度を従来よりも上げることができる。すなわち、従来の回転ドラム式間接冷却装置では1条の螺旋状通路しかなかったのに対し、本発明では複数条の螺旋状通路を設けたので、ドラム1回転当たりの還元鉄塊成化物の送り量を増やすことができ、その分、ドラムの回転数を上げなくても還元鉄塊成化物の送り速度を上げることができる。したがって、還元鉄塊成化物がドラム内を通過する時間(冷却時間)を短くでき、ドラム出側での温度が500〜800℃というホットブリケットに適した温度までの軽冷却を、ドラムの回転数を上げなくても実現できるとともに、ドラム内面の摩耗の問題も軽減できる。
【0012】
本発明において複数条の螺旋状通路は、回転ドラム式間接冷却装置のドラム長の少なくとも1/2以上に配置することが好ましい。1/2未満では螺旋状通路を複数条設けたことによる効果が十分には得られない。
【0013】
また、本発明では、回転ドラム式間接冷却装置の入側に、複数条の螺旋状通路の入口を開閉(開放・閉塞)する開閉装置を設け、この開閉装置にて複数条の螺旋状通路の入口を選択的に開閉することによって、還元鉄塊成化物の冷却効率を調整することができる。このように、複数条ある螺旋状通路の入口を選択的に開閉することで、ドラム内面と還元鉄塊成化物との接触面積を加減できるので、ドラムの回転数を大きく変えることなく、一定の冷却効率を維持しながら処理量の大幅な増減にも対応可能となる。例えば、還元鉄塊成化物の処理量が減少した場合は、複数条ある螺旋状通路のうち例えば1条の螺旋状通路の入口を閉鎖すれば、他の螺旋状通路における1条当たりの処理量を処理量減少前と同等に維持することでき、ドラム内面と還元鉄塊成化物との接触面積も同等に維持できるので、ドラムの回転数を大きく変えることなく、一定の冷却効率を維持できる。
【0014】
本発明では、回転ドラム式間接冷却装置のドラム長をL、ドラム直径をDとしたとき、L/Dは4未満であることが好ましい。L/Dが4以上であると過冷却になるおそれがある。
【0015】
また、本発明において回転ドラム式間接冷却装置の回転数は、0.6rpm〜4rpmとすることが好ましい。回転数が4rpmを超えるとドラムの摩耗が激しくなり、逆に0.6rpm未満ではドラムが局所的に過熱し変形するおそれがある。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、回転ドラム式間接冷却装置のドラムの内面に複数条の螺旋状通路を設けたので、ドラムの回転数を上げることなく、還元鉄塊成化物の送り速度を従来よりも上げることができる。したがって、還元鉄塊成化物がドラム内を通過する時間(冷却時間)を短くでき、ドラム出側での温度が500〜800℃というホットブリケットに適した温度までの軽冷却を、ドラムの回転数を上げなくても実現できるとともに、ドラム内面の摩耗の問題も軽減できる。
【0017】
また、複数条の螺旋状通路の入口を開閉する開閉装置を設け、この開閉装置にて複数条の螺旋状通路の入口を選択的に開閉することによって、還元鉄塊成化物の冷却効率を調整することができる。したがって、還元鉄塊成化物の処理量が大幅に変動したとしても、ドラムの回転数を大きく変えることなく、一定の冷却効率を維持することができ、ドラム出側での温度を目標温度に維持することができる。このため、一度冷却した還元鉄塊成化物を再度加熱する等の非効率なプロセスが不要となり、省エネルギーに貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る還元鉄塊成化物の冷却設備の要部を示す斜視図である。
【0020】
本発明に係る還元鉄塊成化物の冷却設備は、図1に示すように回転ドラム式間接冷却装置10を備える。回転ドラム式間接冷却装置10のドラム11は円筒形をなし、略水平に保持されて図1中の矢印方向に回転する。このドラム11の内面には、120°ずつ位相をずらして合計3条の送り羽根12〜14が螺旋状に設けられおり、この3条の送り羽根12〜14によって3条の螺旋状通路15〜17が形成されている。すなわち、螺旋状通路15は送り羽根12と送り羽根13とによって形成され、螺旋状通路16は送り羽根13と送り羽根14とによって形成され、螺旋状通路17は送り羽根14と送り羽根12とによって形成され、結果として、これらの3条の螺旋状通路15〜17も120°ずつ位相をずらして形成されている。
【0021】
このドラム11は、図示しない水冷機構によって冷却されるようになっている。水冷機構はドラム11の外周側に配置しても良いし、ドラム11の内周面と外周面との間に配置しても良い。
【0022】
また、ドラム11の入側には、3条の螺旋状通路15〜17の入口を開閉する開閉装置が設けられている。図1には、螺旋状通路15を開閉する開閉装置18のみを示すが、他の螺旋状通路16,17にも、開閉装置18と同様の開閉装置を設け、その入口を開閉可能としている。なお、1台の開閉装置によって、3条の螺旋状通路15〜17の入口を選択的に開閉可能とすることもできる。開閉装置は、手動、自動のいずれも可能で、通路の入口を開閉できるものであれば良い。
【0023】
以上の構成において、還元炉から排出された900℃以上の高温の還元鉄塊成化物が回転ドラム式間接冷却装置10のドラム11の入側から装入されると、還元鉄塊成化物は3条の螺旋状通路15〜17に分配され、ドラム11の回転に伴い、3条の螺旋状通路15〜17に沿って出側に向けて移送される。この過程で還元鉄塊成化物は、水冷されているドラム11の内面と接触することで500〜800℃まで冷却され、ドラム11の出側から連続的に排出される。排出された還元鉄塊成化物は、ホットブリケットされる。
【0024】
図2には、ドラム11の内面に設けた3条の螺旋状通路15〜17による移送経路を示す。また、図3には、従来例として回転ドラム式間接冷却装置20のドラム21の内面に1条の送り羽根22を設け、これによって1条の螺旋状通路23を設けた還元鉄塊成化物の冷却設備を示し、図4には、図3の1条の螺旋状通路23による移送経路を示す。
【0025】
図2と図4を対比すると、従来例を示す図4では、ドラム21の1回転(図中のAに相当する部分)で、還元鉄塊成化物を1条分しか移送できないが、本発明例を示す図2では、ドラム11の1回転(図中のAに相当する部分)で、還元鉄塊成化物を3条分移送でき、図2の従来例に比べ、3倍の送り速度を達成できることがわかる。
【0026】
このように本発明によれば、ドラム11の回転数を上げることなく、還元鉄塊成化物の送り速度を従来よりも上げることができる。
【0027】
また、本発明において還元鉄塊成化物の処理量が減少した場合は、3条の螺旋状通路15〜17のうち例えば螺旋状通路15の入口を開閉装置18にて閉鎖することによって、他の螺旋状通路16,17における1条当たりの処理量を処理量減少前と同等に維持する。これによって、ドラム11内面と還元鉄塊成化物との接触面積も同等に維持されるので、ドラム11の回転数を大きく変えることなく、一定の冷却効率を維持しながら処理量の大幅な増減にも対応可能となる。
【0028】
なお、本発明においては、図2に示すように回転ドラム式間接冷却装置10のドラム長をL、ドラム直径をDとしたとき、L/Dは上述のとおり4未満であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る還元鉄塊成化物の冷却設備の要部を示す斜視図である。
【図2】図1に示す還元鉄塊成化物の冷却設備のドラムの内面に設けた3条の螺旋状通路による移送経路を示す説明図である。
【図3】回転ドラム式間接冷却装置のドラムの内面に1条の螺旋状通路を設けた従来の還元鉄塊成化物の冷却設備の要部を示す斜視図である。
【図4】図3に示す還元鉄塊成化物の冷却設備のドラムの内面に設けた1条の螺旋状通路による移送経路を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
10,20 回転ドラム式間接冷却装置
11,21 ドラム
12〜14,22 送り羽根
15〜17,23 螺旋状通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化鉄塊成化物を還元して還元鉄塊成化物とする還元炉から排出される還元鉄塊成化物を回転ドラム式間接冷却装置で冷却する還元鉄塊成化物の冷却設備において、前記回転ドラム式間接冷却装置のドラムの内面に複数条の螺旋状通路を設けたことを特徴とする還元鉄塊成化物の冷却設備。
【請求項2】
前記複数条の螺旋状通路は、回転ドラム式間接冷却装置のドラム長の少なくとも1/2以上に配置されている請求項1に記載の還元鉄塊成化物の冷却設備。
【請求項3】
前記回転ドラム式間接冷却装置の入側に、前記複数条の螺旋状通路の入口を開閉する開閉装置を設けた請求項1又は2に記載の還元鉄塊成化物の冷却設備。
【請求項4】
前記回転ドラム式間接冷却装置のドラム長をL、ドラム直径をDとしたとき、L/Dが4未満である請求項1〜3のいずれかに記載の還元鉄塊成化物の冷却設備。
【請求項5】
酸化鉄塊成化物を還元して還元鉄塊成化物とする還元炉から排出される還元鉄塊成化物を回転ドラム式間接冷却装置で冷却する還元鉄塊成化物の冷却方法において、前記回転ドラム式間接冷却装置のドラムの内面に設けた複数条の螺旋状通路に還元鉄塊成化物を装入して通過させながら冷却し、ドラム出側での温度を500〜800℃とすることを特徴とする還元鉄塊成化物の冷却方法。
【請求項6】
前記回転ドラム式間接冷却装置の回転数を0.6rpm〜4rpmとする請求項5に記載の還元鉄塊成化物の冷却方法。
【請求項7】
前記複数条の螺旋状通路の入口を開閉装置にて選択的に開閉することによって、還元鉄塊成化物の冷却効率を調整する請求項5又は6に記載の還元鉄塊成化物の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−287887(P2009−287887A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143282(P2008−143282)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】