説明

部分めっき装置

【課題】めっきすべき製品を変える際のノズル板およびめっきマスクの交換の手間を省くことができる部分めっき装置を提供する。
【解決手段】被めっき物のめっき対象領域に対して開口した開口部50が設けられためっきマスク38と、めっきマスク38の開口部50に向けてめっき液を噴射するノズル47が設けられたノズル板40と、めっき液を貯留するスパージャ34とを具備する部分めっき装置30において、めっきマスク38とノズル板40とが一体となって構成されためっきマスクユニット36が、スパージャ34に対して脱着可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分めっき装置に関し、より詳細にはリードフレームやTABテープ等の帯状部材のめっきに用いる部分めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置に用いられるリードフレームは、金属製の帯状部材を加工したものであり、単位リードフレームが該帯状部材に多数連接して形成される。
各単位リードフレームには、半導体素子を搭載するためのステージの部位と、ワイヤボンディングがなされるインナーリード先端部に銀めっき等の部分めっきが施される。
【0003】
このようなリードフレームに部分めっきを施すためには、部分めっき装置が用いられる。
従来の部分めっき装置を、図6および図7に基づいて説明する。
部分めっき装置10は、スパージャ11、スパージャ11内に設けられた整流板12、スパージャ11の開放された一方側に設けられたノズル板13、およびめっきマスク14を有している。
【0004】
スパージャ11は、内部にめっき液が貯留される加圧室14が形成されている箱状の部材である。箱状のスパージャ11の一方側は開放されており、この一方側にノズル板13とめっきマスク14が取り付けられる。
スパージャ11の加圧室14の内部には、めっき液を均一にノズル板13に流すための整流板12が設けられている。整流板12は、多数の小孔が穿設された板状の部材である。図面上では整流板12の小孔は省略して図示している。
【0005】
スパージャ11内部において整流板12よりも一方側(開放側)の位置には、ノズル板13がボルト17によって取り付けられている。ノズル板13は、めっき液をめっきマスク14の開口部16に向けて噴射するノズル19が設けられた板状の部材である。ノズル板13のノズル突出側には、陽極極板20が配置されている。
スパージャ11の一方側(開放側)の端部には、めっきマスク14がボルト21によって取り付けられている。めっきマスク14は、リードフレーム(図示せず)のめっきすべき領域に対応する位置に開口部16が形成された板状の部材である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
なお、リードフレームは製品ごとに様々な形状を有しており、その製品ごとにめっきマスク14の開口部16の形状や位置、ノズル板13に設けられるノズル19の位置等が異なる。一方、スパージャ11は、製品が変わっても共通して用いることができる。
したがって、同じスパージャ11を利用して異なるリードフレームに対して部分めっきを施すには、スパージャ11からノズル板13とめっきマスク14を取り外し、めっきすべきリードフレームに対応するノズル板13とめっきマスク14を取り付ける必要がある。
【特許文献1】特開2001−303297号公報(0023、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の部分めっき装置10においては、異なるリードフレームに部分めっきを施すためには、まずめっきマスク14の複数箇所に設けられているボルト21を緩めてめっきマスク14をスパージャ11から取り外し、次いでノズル板13の複数箇所に設けられているボルト17を緩めてノズル板13をスパージャ11から取り外す必要があり、さらにめっきすべきリードフレームに対応するノズル板13を複数箇所にボルト17で固定し、同様に対応するめっきマスク14を複数箇所にボルト21で固定する必要があった。
このように、従来の部分めっき装置10では、異なるリードフレームを製造しようとする都度、ノズル板13およびめっきマスク14をボルト17,21によって脱着しなくてはならず、交換に手間がかかっているという課題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、めっきすべき製品を変える際のノズル板およびめっきマスクの交換の手間を省くことができる部分めっき装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成すべく、以下の構成を備える。
すなわち、被めっき物のめっき対象領域に対して開口した開口部が設けられためっきマスクと、前記めっきマスクの開口部に向けてめっき液を噴射するノズルが設けられたノズル板と、めっき液を貯留するスパージャとを具備する部分めっき装置において、前記めっきマスクと前記ノズル板とが一体となって構成されためっきマスクユニットが、前記スパージャに対して脱着可能に設けられていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、異なるリードフレームをめっきする際に、めっきマスクとノズル板とをそれぞれ脱着する必要がなく、めっきマスクユニットのみを脱着するだけで異なるリードフレームに対応できるので、交換の際の手間を省くことができる。
【0010】
また、前記めっきマスクユニットは、連結手段を介して前記めっきマスクと前記ノズル板とが連結されて固定されることを特徴としてもよい。
【0011】
さらに、前記めっきマスクユニットは、前記スパージャと前記めっきマスクユニットとを挟み込んで固定するクランプ装置によって前記スパージャに取り付けられることを特徴としてもよい。
この構成によれば、クランプ装置の締付けを緩めるだけでめっきマスクユニットのスパージャからの取り外しを行なうことができ、まためっきマスクユニットのスパージャへの取り付けもクランプ装置を締付けるだけで可能となる。このため、複数本のボルトを介してめっきマスクユニットを脱着する場合よりも、はるかに手間を省いた交換が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる部分めっき装置によれば、同じスパージャを用いて異なる被めっき物に部分めっきを施す場合における、めっきマスクとノズル板の交換の際の手間を省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は部分めっき装置の全体構成の正面図、図2は部分めっき装置の全体構成の側面図、図3は部分めっき装置の平面図、図4は部分めっき装置におけるスパージャやめっきマスクユニット等の断面図である。
本実施形態の部分めっき装置30は、半導体装置に用いるリードフレーム31に対してめっきを施すための装置である。被めっき物であるリードフレーム31としては、リールに巻かれた状態のフープ状のものであっても、所定の長さに切断されている短冊状のものであってもどちらでもよい。
【0014】
リードフレーム31は、図に示すように平面部分が正面を向くように縦置きされ、フィーダ装置32によって水平方向(図1では右方向)に定寸送りされる。フィーダ装置32は、部分めっき装置30を挟んでリードフレーム31の進行方向の前後に配置されている。
各フィーダ装置32には、リードフレーム31の上端縁31aと下端縁31bに当接して、リードフレーム31を移動させる上フィーダローラ33aおよび下フィーダローラ33bが設けられている。
したがって、リードフレーム31は、その下端縁31bによって部分めっき装置30に対する上下方向の位置決めがなされる。
【0015】
部分めっき装置30は、内部にめっき液が貯留されるスパージャ34、スパージャ34の前面に設けられためっきマスクユニット36、リードフレーム31を挟んでめっきマスクユニット36と対向する位置にある裏当て板37を有している。めっきマスクユニット36とは、めっきマスク38とノズル板40とが一体に構成された部材である。
また、部分めっき装置30には、めっきマスクユニット36と裏当て板37をスパージャ34に取り付けるために、めっきマスクユニット36、裏当て板37およびスパージャ34を締付ける2台のクランプ装置43,43が設けられている。
【0016】
以下、上述した各構成要素について説明する。
スパージャ34は、内部にめっき液が貯留される箱状の部材であり、一方側が開放されている。スパージャ34の他方側(底部)にはめっき液が供給される供給孔41が形成されており、図示しないポンプによってポンプアップされためっき液が供給孔41を介して加圧室42内に流入可能となっている。
【0017】
スパージャ34の内壁面は一方側に向けて階段状に内径が広がるような段差44,51が形成されており、底部に最も近い位置の段差44に整流板46が取り付けられている。整流板46とスパージャ34の底部との間の空間がめっき液の加圧室42となる。整流板46には多数の小孔が形成されており、後述するノズル板40の複数のノズル47に均一にめっき液が行き渡るように設けられている。なお、図面では整流板46の小孔は省略して図示している。
【0018】
図5に示すように、めっきマスクユニット36は、ノズル板40とめっきマスク38とが複数本のカラー49によって連結されて成る。カラー49は、所定長さの棒状の部材であって、ノズル板40とめっきマスク38の間に立設され、双方をネジ止めによって連結して固定している。なお、ノズル板40とめっきマスク38との連結は、棒状の部材以外にも板状の部材等、何らかの連結手段により連結すればよい。
めっきマスクユニット36は、ノズル板40の端部がスパージャ34の内壁面の段差51に位置し、めっきマスク38の端部がスパージャ34の一方側の端面52に位置するようにスパージャ34に取り付けられる。
【0019】
めっきマスクユニット36を構成するノズル板40は、めっき液をめっきマスク38の開口部50に向けて噴射するために複数のノズル47,47・・が設けられている。また、ノズル板40のめっきマスク側の面は陽極極板54が配置されている。
めっきマスク38は、リードフレーム31のめっき領域に対応する位置に複数の開口部50,50・・が形成されている。
【0020】
次に、クランプ装置について説明する。
クランプ装置43は、側面からみると各構成部材が四角形状に連結するように構成されており、四角形の辺のうちの少なくとも一辺が開放可能となるように設けられている。
具体的には、クランプ装置43は、裏当て板37の表面に当接するように設けられた背板56と、背板56からスパージャ34方向に延びる下部支持部材58と、下部支持部材58のスパージャ34方向側端部から上方に向けて延びる底面支持部材60と、底面支持部材60の上端部から背板56方向に延びる回動部材62と、底面支持部材60からスパージャ34方向に延びてスパージャ34の底面を押圧する押え部64を有するトグルクランプ66とから構成される。
【0021】
クランプ装置43の構成要素のうち、背板56と下部支持部材58とはそれぞれ互いに可動しないように強固に固定されているが、回動部材62は底面支持部材60の上端部に設けられた回動軸69を中心に鉛直面内で回動可能に設けられている。また、底面支持部材60は、下部支持部材58の底面側端部に設けられた回動軸61を中心に鉛直面内で回動可能に設けられている。
回動部材62の先端部70は、背板56の表面側を引っ掛けるように鉤状に形成されており、この鉤状の先端部70が背板56の表面側に掛けられることによって、背板56と押え部64との間に、裏当て板37とめっきマスクユニット36とスパージャ34とが挟み込まれる。
【0022】
なお、回動部材62の下面と、めっきマスクユニット36の上面との間には隙間が形成されているが、この隙間を埋めるために、めっきマスクユニット36の上部には上当て部材63が配置されている。
同様に、下部支持部材58の上面と、めっきマスクユニット36の下面との間の隙間を埋めるために、めっきマスクユニット36の下部には下当て部材65が配置されている。
【0023】
トグルクランプの構成および動作を、図2と図3に基づいて説明する。
トグルクランプ66は、鉛直面内で鉛直下向きと鉛直上向きとの間で回動可能に設けられた操作ハンドル72と、操作ハンドル72とリンク機構73を介して水平方向に移動可能に設けられたロッド64とを有しており、底面支持部材60に設けられたトグルクランプ取り付け板80に取り付けられている。
なお、このロッド64が、上述した押え部64に該当する。
【0024】
トグルクランプ取り付け板80には、ロッド64の中途部を保持する筒状の軸受部78が固定されている。軸受部78は、ロッド64をスパージャ34方向に突出入自在となるように保持している。
軸受部78には、2枚の側板79,79が、スパージャ34と反対方向に突出するように設けられており、側板79,79の間に操作ハンドル72の回動軸74が設けられる。このようにして操作ハンドル72は、側板79,79に対して回動自在に固定される。
【0025】
リンク機構73は、操作ハンドル72自体の回動軸74と、操作ハンドル72の延出方向とはほぼ直交する方向にのびたリンク部75と、リンク部75の先端部に回動軸76を介してリンク部75に対して回動可能に取り付けられた第2リンク部77とから構成されている。第2リンク部77の先端部は、回動軸85を介してロッド64の後端部と連結されている。
【0026】
このようなトグルクランプ66において、操作ハンドル72を鉛直上向きに回動させることによって、リンク機構73のリンク部75は図面上で時計回りに回動して第2リンク部77を介してロッド64をスパージャ34から離れる方向に移動させる。
また、操作ハンドル72を鉛直下向きに回動させることによって、リンク機構73のリンク部75は図面上で反時計回りに回動して第2リンク部77を介してロッド64をスパージャ34方向に移動させる。
【0027】
そして、操作ハンドル72が鉛直下向きに位置したところで、ロッド64の先端部が適度な押圧力でスパージャ34の底面を押圧することができる。また、操作ハンドル72を鉛直下向きに位置させたときに、操作ハンドル72が反時計回りに戻ってしまうことを防止するために、操作ハンドル72の戻り防止用のストッパー機構を設けるとよい(図示せず)。
【0028】
上述してきた構成の部分めっき装置30におけるめっきマスクユニット36の交換動作について説明する。
作業者は、トグルクランプ66の操作ハンドル72を鉛直上向きに回動させ、押え部64がスパージャ34を押圧している力を緩める。すると、背板56に引っ掛けられていた回動部材62が緩み、回動可能となる。作業者は回動部材62を回動させて鉤状の先端部70を背板56から外す。
【0029】
すると、トグルクランプ66によって締付けられて固定されていた、スパージャ34とめっきマスクユニット36との締付けが緩み、めっきマスクユニット36はスパージャ34から取り外し可能な状態となる。
作業者は、上当て部材63、めっきマスクユニット36、下当て部材65をスパージャ34から取り外す。そして、作業者は、新たなめっきマスクユニット36をスパージャ34の開放側の前面に配置し、上当て部材63と下当て部材65も新たなめっきマスクユニット36の上面および下面に配置する。
【0030】
作業者は、回動部材62を回動させて鉤状の先端部70を背板56の上端部に引っ掛ける。
次いで作業者は、トグルクランプ66の操作ハンドル72を鉛直下向きに回動させ、押え部64をスパージャ34方向に押し込む。すると、押え部64がスパージャ34の底面を押圧し、スパージャ34とめっきマスクユニット36と裏当て板37は、トグルクランプ66の押え部64と背板56との間で強固に締付けられる。
このようにして、めっきマスクユニット36はスパージャ34に取り付けられる。
【0031】
なお、上述してきた実施形態では、スパージャ34とめっきマスクユニット36との取り付けは、クランプ装置43によって行なうものであった。しかし、本発明としては、めっきマスクユニット36を従来通りボルトで固定するようにしてもよいし、またその他の方法によってもよい。
さらに、クランプ装置43を採用した場合であってもトグルクランプ66を用いた機構に限定するものではなく、押え部64をねじ込み式にして押え部64をスパージャ34方向にねじ込むことにより、スパージャ34とめっきマスクユニット36とを押え部64と背板56との間で挟み込んで取り付けるようにしてもよく、シリンダー等のアクチュエータを用いてスパージャ34にめっきマスクユニット36を取り付けるようにしてもよい。
また、クランプ装置43の台数も2台に限定することはなく、1台でもよいし2台以上の台数であってもよい。
【0032】
なお、めっきマスクユニット36におけるめっきマスク38とノズル板40との固定方法は、上述したような棒状のカラー49によるものに限定されるものではなく、板状の部材等、その他の形状の部材であってもよい。
【0033】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】部分めっき装置の正面図である。
【図2】部分めっき装置の側面図である。
【図3】部分めっき装置の平面図である。
【図4】部分めっき装置のスパージャ部分の断面図である。
【図5】めっきマスクユニットの脱着を示す説明図である。
【図6】従来の部分めっき装置の断面図である。
【図7】従来の部分めっき装置の正面図である。
【符号の説明】
【0035】
30 部分めっき装置
31 リードフレーム
32 フィーダ装置
33a 上フィーダローラ
33b 下フィーダローラ
34 スパージャ
36 めっきマスクユニット
37 裏当て板
38 めっきマスク
40 ノズル板
41 供給孔
42 加圧室
43 クランプ装置
44,51 段差
46 整流板
47 ノズル
49 カラー
50 開口部
52 端面
54 陽極極板
56 背板
58 下部支持部材
60 底面支持部材
62 回動部材
63 上当て部材
64 押え部(ロッド)
65 下当て部材
66 トグルクランプ
69,74,76,85 回動軸
70 先端部
72 操作ハンドル
73 リンク機構
75 リンク部
77 第2リンク部
78 軸受
79 側板
80 取り付け板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき物のめっき対象領域に対して開口した開口部が設けられためっきマスクと、
前記めっきマスクの開口部に向けてめっき液を噴射するノズルが設けられたノズル板と、
めっき液を貯留するスパージャとを具備する部分めっき装置において、
前記めっきマスクと前記ノズル板とが一体となって構成されためっきマスクユニットが、前記スパージャに対して脱着可能に設けられていることを特徴とする部分めっき装置。
【請求項2】
前記めっきマスクユニットは、
連結手段を介して前記めっきマスクと前記ノズル板とが連結されて固定されていることを特徴とする請求項1記載の部分めっき装置。
【請求項3】
前記めっきマスクユニットは、
前記スパージャと前記めっきマスクユニットとを挟み込んで固定するクランプ装置によって前記スパージャに取り付けられることを特徴とする請求項1または請求項2記載の部分めっき装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−152348(P2006−152348A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342705(P2004−342705)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】