説明

部分共沸組成物

2種以上の揮発成分、特に、HFC365mfcと、分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物と、1種以上の高沸点の不揮発性成分からなる非共沸性多成分系組成物であって、洗浄性、乾燥性、安全性、環境保全性に優れ、かつ、長時間の使用わたって成分組成変動を容易に制御できる洗浄剤組成物として好適にもちいることができる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密機械部品、光学機械部品等の加工時に使用される種々の加工油類やグリース類やワックス類、電気電子部品のハンダ付け時に使用されるフラックス類、基板製造時に使用されるスクリーンに付着したインキやペースト類および樹脂吐出装置のミキシング部に付着した樹脂類を洗浄するのに好適に用いられる、洗浄剤およびリンス剤に好適に用いられる組成物とその洗浄剤およびリンス剤を用いた洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
精密機械部品、光学機械部品等の加工時に種々の加工油類、例えば、切削油、プレス油、引抜き油、熱処理油、防錆油、潤滑油等、または、グリース類、ワックス類等が使用されるが、これらの汚れは最終的には除去する必要があり,溶剤による除去が一般的に行われている。
【0003】
また、電子回路の接合方法としてはハンダ付けが最も一般的に行われているが、ハンダ付けすべき金属表面の酸化物の除去清浄化、再酸化防止、ハンダ濡れ性の改良の目的で、ロジンを主成分としたフラックスでハンダ付け面を予め処理することが通常行われている。ハンダ付けの方法としては溶液状のフラックス中に基板を浸漬する等により、フラックスを基板面に付着させた後、溶融ハンダを供給する方法や予めフラックスとハンダの粉末を混合してペースト状にしたものをハンダ付けすべき場所に供給した後加熱する方法等があるが、いずれにしても、フラックス残渣は金属の腐食や絶縁性の低下の原因となるため、ハンダ付け終了後、十分に除去する必要がある。
【0004】
また、近年、スクリーン印刷法が電子工業分野をはじめとして広く活用されている。これらは絹、ナイロン,テトロンなどの繊維、あるいはステンレスの針金などで織った布地(スクリーン)を枠に張って四周を固定し、その上にポリビニルアルコール、酢酸ビニルエマルジョン、アクリルモノマー等の主剤とジアゾニウム塩類や重クロム酸塩等の感光剤を撹拌混合したものを塗布し、光化学的方法で乳剤膜を作って必要な画線以外の目をふさぎ、パターンを形成したスクリーンと、スキージと呼ばれるウレタン製ゴムを取り付けた道具を使い、印刷を行うものである。印刷を終えたスクリーンとスキージは保管または再使用のため、スクリーンおよびスキージに付着したインキ、ペーストを洗浄、除去する必要がある。
【0005】
また、各種電気・電子部品等をエポキシ、ウレタン、シリコーンおよびポリエステル等の樹脂で接合、充填または封止するために樹脂吐出装置が広く使用されている。この用途に使用される樹脂には常温付近で架橋・硬化する2液タイプ(主剤と硬化剤)のものも多く使われており,2液を自動的に比率計量、混合撹拌する工程で作業を中断する際、吐出装置内での樹脂の硬化を防止するためにミキシング部やノズル部を洗浄する必要がある。
【0006】
これらの洗浄、除去には、不燃性で毒性が低く、優れた溶解性を示す等、多くの特徴を有することから、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(以下CFC113という)やCFC113とアルコールなどを混合した溶剤で洗浄していた。しかしながら、CFC113についてはオゾン層破壊等の地球環境汚染問題が指摘され、日本では1995年末にその生産が全廃された。このCFC113の代替品として、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンと1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンの混合物(以下HCFC225という)や1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(以下HCFC141bという)等のハイドロクロロフルオロカーボンが提案されているが、これらについても僅かにオゾン層破壊能があるために日本では2020年にその使用が禁止される予定である。
【0007】
そこで、近年、塩素原子を全く含まないハイドロフルオロカーボン類(以下HFCという)やハイドロフルオロエーテル類(以下HFEという)等のオゾン層破壊能が全くなく、不燃性のフッ素系溶剤が提案されているが、塩素原子を含まないために溶解能が低く単独では洗浄剤として使用できないため、HFCやHFEに溶解能の高い可燃性溶剤を組み合わせた共沸様洗浄剤の技術がいくつか開示されている。(特許文献1)
例えば、特許文献2には、HFCやHFEに溶解力を高めるため、高沸点のグリコールエーテル類を併用した洗浄剤が開示されている。しかし、この洗浄剤には沸点55℃以上のHFCやHFEを使用しているために沸騰時の蒸気中に高沸点のグリコールエーテル類が多く含まれることとなり、HFCやHFEが本来有する高い速乾性が生かされず、洗浄剤蒸気にさらされた被洗物の乾燥性が低下するために洗浄用途が限定されてしまう。更にその分子内の全アルキル基に対して、フッ素原子を有さないアルキル基の割合がいずれも少ないため、加工油等の汚れに対する溶解性が低い。そのため、長期間使用し汚れが混入した洗浄液が被洗物に付着し、リンス工程、蒸気洗浄工程に持ち込まれた場合に、汚れの再付着を防ぐことが困難になる。
【0008】
また、特許文献3には、沸点が40℃のHFCにグリコールエーテル類を併用した洗浄が開示されている。この洗浄剤で使用しているHFCは、その最小着火エネルギーが10mjと小さく、引火点を有する可燃性のグリコールエーテル類と併用して使用するには自己消火性が不十分である。さらに、3.6〜13.6容量%の燃焼範囲を有するため、加熱して蒸気洗浄を行う場合、不燃性成分としての効果が低い。
【0009】
以上のように、従来知られている、溶解能の高い可燃性溶剤に不燃性のHFC類やHFE類を組み合わせた洗浄剤では、溶解能が洗浄剤として使用するには、いまだ不十分であったり、あるいは、自己消火性が不十分あったりして、洗浄剤として使用する上で多くの問題を抱えているのが現状である。
【0010】
一方、特に、高沸点成分を含む多成分系洗浄剤組成物をもちいた洗浄法では、一般に、洗浄操作中、洗浄装置の開口部より洗浄剤組成物蒸気が散逸することが原因で、恒常的に洗浄剤組成物の組成が変動し、そのため、洗浄剤組成物の物性を、洗浄開始時とおなじレベルに保つことが困難であるという問題があった。この組成変動の問題を解決するため、種々の、共沸混合物を形成する多成分系の洗浄剤組成物を使用することが試みられている(特許文献1)。しかし、共沸混合物を形成する組成物を構成する成分は、その種類、組成比がかぎられたものとなるため、それら、成分の種類、組成比に依存する洗浄剤組成物の溶解力、自己消火性等も同様に制約をうけるという問題があった。
【0011】
以上のごとく、CFC113の代替品として、これまで提案されてきた洗浄剤は、洗浄が可能であってもオゾン層破壊の問題により将来その使用が禁止されていたり、洗浄剤の組成変動を抑制するために共沸混合物を利用してもフッ素系溶剤に洗浄力が低いために十分な洗浄ができなかったり、溶解力を高めるために可燃性の高沸点溶剤をフッ素系溶剤に添加しても洗浄剤の組成が変動して一定の洗浄剤性能を維持することができなかったり、引火の危険性があるために洗浄機等の設備を防爆構造とするのに設備コストが上昇し、CFC113の代替品として要求される、種々の特性、すなわち、環境安全性、洗浄性、乾燥性、低引火性、自己消化性、低毒性、組成安定性のすべてを兼ね備えた洗浄剤として使用する上で多くの問題を抱えているのが現状である。
【0012】
【特許文献1】特表2003−518144
【特許文献2】特開平10−212498
【特許文献3】特開2003−129090
【発明の開示】
【0013】
本発明は、洗浄におけるあらゆるタイプの汚れに対して、HCFC225に匹敵するような高い洗浄力を示し、かつ、高温下における蒸気洗浄時の酸化劣化が少なく、低毒性、低引火性で、自己消火性、乾燥性にも優れ、かつ、非共沸組成物である多成分系組成物でありながら、長期にわたる洗浄作業においても、その組成変動を容易に制御できる、洗浄剤、並びに、その洗浄剤を用いた洗浄方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明者は、各々に洗浄剤成分として優れた特性を有する2種以上の揮発成分、特に、優れた乾燥性、リンス性、蒸気洗浄性等を有するHFC365mfc(日本ソルベイ(株)製)、および、優れた自己消火性を有するHFCやHFEからなり、更に不揮発成分、特に溶解能の高い高沸点溶剤であるグリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、およびヒドロキシカルボン酸エステル類からなる非共沸組成物が、その沸点において発生する複数の成分からなる蒸気の組成が長時間にわたって一定となることを見出し、長期間使用した場合でも共沸組成物と同様に液組成変動が少なく、しかも、引火点が出現せず、十分な自己消火性を有しつつ、あらゆる汚れを洗浄でき、リンス剤や蒸気洗浄剤としても利用でき、また、酸化防止剤等の添加により高温下で連続して使用できる多成分系洗浄剤組成物を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の第1は、20℃における蒸気圧が、式(1)で定義される基準蒸気圧Poよりも大きい揮発成分(A)の少なくとも2種、20℃における蒸気圧がPoよりも小さい不揮発成分(B)の少なくとも1種からなり、その常圧下での沸点における気相と液相の成分組成が式(3)および(4)の関係をみたす部分共沸組成物である。
【0016】
Po=Pav/5 (1)
(式中、Pavは、式(2)で定義される成分平均蒸気圧)
Pav=(ΣPai+ΣPbj)/(na+nb) (2)
(式中、Paiは、組成物中の各揮発成分(Ai)の20℃における蒸気圧、Pbjは各不揮発成分(Bj)の20℃における蒸気圧、naは、組成物中の揮発成分(A)の数、nbは組成物中の不揮発成分(B)の数であり、各々2≦na、1≦nbを満たす整数であり、iおよびjは、各々1≦i≦na、1≦j≦nbを満たす整数である。)。
【0017】
(ΣBvj/ΣBoj)≦0.1 (3)
(式中、Bvjは、気相における各不揮発成分(Bj)の重量割合、Bojは、部分共沸組成物中の各不揮発成分(Bj)の重量割合で、jは式(2)に同じである。)。
【0018】
−0.1≦(Avi/ΣAvi)−(Aoi/ΣAoi)≦0.1 (4)
(Aviは、気相における各揮発成分(Ai)の重量割合、Aoiは部分共沸組成物中の各揮発成分(Ai)の重量割合、iは式(2)に同じである。)
発明の第2は、式(5)の関係をみたす発明1の部分共沸組成物である。
0.0001≦(ΣBvj/ΣBoj)≦0.1 (5)
(式中、Boj、Bvj、jは式(3)、(4)に同じである。)
発明の第3は、一部が気化し、その気相が残部の液相表面を覆っている発明1、2いずれかの部分共沸組成物である。
【0019】
発明の第4は、組成物中のすべての揮発成分(A1〜Ana)の20℃における蒸気圧が1.33×10Pa以上の化合物であり、すべての不揮発成分(B1〜Bnb)の20℃における蒸気圧が1.33×10Pa未満の化合物である発明1〜3いずれかの部分共沸組成物である。
【0020】
発明の第5は、揮発成分(A)が、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類、アルコール類、エステル類、ケトン類から選ばれる化合物からなる、発明1〜4いずれかの部分共沸組成物である。
【0021】
発明の第6は、揮発成分(A)が、ハロゲン化炭化水素類から選ばれる2種以上の化合物からなる発明5の部分共沸組成物である。
【0022】
発明の第7は、ハロゲン化炭化水素類が、非塩素系フッ素化合物である発明6の部分共沸組成物である。
【0023】
発明の第8は、揮発成分(A)が、2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)(A1)と、揮発成分分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物から選ばれる一種または二種以上の化合物(A2)からなる発明7の部分共沸組成物である。
【0024】
発明の第9は、不揮発成分(B)が、炭化水素類、アルコール類、ケトン類から選ばれる化合物からなる発明1〜8いずれかの部分共沸組成物である。
【0025】
発明の第10は、不揮発成分(B)が、エーテル結合及び/またはエステル結合を有する有機化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物からなる発明1〜9いずれかの部分共沸組成物である。
【0026】
発明の第11は、不揮発成分(B)が、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類およびヒドロキシカルボン酸エステル類からなる群から選ばれる一種または二種以上の化合物からなる発明10の部分共沸組成物である。
【0027】
発明の第12は、不揮発成分(B)が、グリコールエーテル類から選ばれる一種以上の化合物とグリコールエーテルアセテート類およびヒドロキシカルボン酸エステル類からなる群から選ばれる一種以上の化合物からなる発明11の部分共沸組成物である。
【0028】
発明の第13は、不揮発成分(B)が、下記一般式(6)、(7)、(8)、(9)で示される化合物よりなる群から選ばれる一種または二種以上の化合物からなる発明11の部分共沸組成物である。
【0029】
【化1】

【0030】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、またはシクロアルキル基、R、R、Rは水素またはメチル基、nは0または1の整数を表す。)
【0031】
【化2】

【0032】
(式中、Rは炭素数4〜6のアルキル基、アルケニル基、またはシクロアルキル基、R、R、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数3〜6のアルキル基、アルケニル基またはシクロアルキル基、nは0または1の整数を表す。)
【0033】
【化3】

【0034】
(式中、R10は炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基又はシクロアルキル基、R11、R12、R13は水素またはメチル基、nは0〜1の整数、mは1〜4の整数を示す)
【0035】
【化4】

【0036】
(式中、R14は炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基又はシクロアルキル基を示す。)
発明の第14は、不揮発成分(B)が、グリコールエーテルモノアルキルエーテル類から選ばれる一種以上の化合物(B1)とグリコールエーテルジアルキルエーテル類から選ばれる一種以上の化合物(B2)からなる発明11の部分共沸組成物である。
【0037】
発明の第15は、成分(B1)が、親水性化合物であり、成分(B2)が疎水性化合物である発明14の部分共沸組成物である。
【0038】
発明の第16は、成分(B1)が、疎水性化合物であり、成分(B2)が親水性化合物である発明14の部分共沸組成物である。
【0039】
発明の第17は、成分(B1)および成分(B2)がともに親水性化合物である発明14の部分共沸組成物である。
【0040】
発明の第18は、成分(B1)および成分(B2)がともに疎水性化合物である発明14の部分共沸組成物である。
【0041】
発明の第19は、成分(B1)が、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルから選ばれる一種または二種以上の化合物を含む発明14の部分共沸組成物である。
【0042】
発明の第20は、成分(B2)が、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルから選ばれる一種または二種以上の化合物を含む発明14の部分共沸組成物である。
【0043】
発明の第21は、不揮発成分(B)が、グリコールエーテルモノアルキルエーテル類から選ばれる一種以上の化合物(B1)とグリコールエーテルアセテート類から選ばれる一種以上の化合物(B3)を含む発明11、14いずれかの部分共沸組成物である。
【0044】
発明の第22は、引火点のないことを特徴とする発明1〜21いずれかの部分共沸組成物である。
【0045】
発明の第23は、自己消火性に優れることを特徴とする発明1〜22いずれかの部分共沸組成物である。
【0046】
発明の第24は、発明1〜23いずれかの部分共沸組成物からなる洗浄剤である。
【0047】
発明の第25は、発明1〜23いずれかの部分共沸組成物を加熱して発生させた蒸気の凝縮液である。
【0048】
発明の第26は、発明25の凝縮液と同一組成のリンス剤である。
【0049】
発明の第27は、発明25の凝縮液と同一組成の洗浄剤の補充剤である。
【0050】
発明の第28は、発明24の洗浄剤と発明26のリンス剤を用いる洗浄方法である。
【0051】
発明の第29は、発明24の洗浄剤と発明27の洗浄剤の補充剤を用いる洗浄方法である。
【0052】
発明の第30は、発明24の洗浄剤と発明26のリンス剤と発明27の洗浄剤の補充剤を用いる洗浄方法である。
【0053】
発明の第31は、発明第25の凝縮液と同一組成の仕上げ洗浄剤である。
【0054】
発明の第32は、揮発成分(A1)として、2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)、揮発成分(A2)として、分子内におけるフッ素原子/水素原子の数量比が2以上の非塩素系フッ素化合物から選ばれる一種または二種以上の化合物、および、成分(B)として、20℃における蒸気圧が1.33×10a未満の化合物からなり、それらの重量割合[(A1)+(A2)]/(B)が、80/20〜99.9/0.1重量%の組成物である。
【0055】
発明の第33は、発明第32の組成物からなるリンス剤である。
【0056】
発明の第34は、発明第32の組成物からなる洗浄剤の補充剤である。
【0057】
発明の第35は、発明第32の組成物からなる仕上げ洗浄剤である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の洗浄剤組成物をもちいた洗浄を実施するための洗浄装置の一例であり、実施例で使用した洗浄装置である。
【図2】実施例1における洗浄剤中の各成分の組成変化を示したグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1洗浄槽
2リンス槽
3蒸気ゾーン
4水分離器
5超音波振動子
6ヒーター
7冷却管
8蒸気の流れ
9凝縮液用配管
10水分離後の凝縮液用配管
11オーバーフロー液の流れ
12冷却管
13洗浄機開口部
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0061】
本発明において、洗浄とは被洗物に付着している汚れ成分を洗浄剤組成物をもちいて、次工程に影響のないレベルまで除去する操作であり、単に洗浄剤とは、このときにもちいる洗浄剤組成物を意味する。また、リンスとは洗浄後、被洗物に付着している汚れ成分を含む洗浄剤を汚れ成分を含まない組成物に置換する操作であり、リンス剤とは、このときもちいる組成物のことである。さらに、蒸気洗浄とは洗浄剤やリンス剤から発生させた蒸気を被洗物表面で凝縮液化させ、これにより、洗浄後、被洗物表面にわずかに残留する汚れ成分を除去する操作のことである。また、仕上げ洗浄とは、例えば製品出荷前洗浄の様に、被洗物に僅かに残っている加工油、フラックス、異物、指紋等ごく軽微な汚れを除去する操作であり、仕上げ洗浄剤とはこのときにもちいる洗浄剤組成物のことである。さらに、補充液とは洗浄中に洗浄装置系内から、蒸気として大気中に散逸する洗浄剤組成物の一部を補充するために系内に補給される組成物のことである。
【0062】
本発明の部分共沸組成物は、2種以上の揮発成分(A)と1種以上の不揮発成分(B)からなる全体として非共沸性の多成分組成物であって、その常圧下での沸点における、液相中の揮発成分(A)の組成と気相中の揮発成分(A)の組成が常に一定である。したがって、この部分共沸組成物を洗浄剤組成物とし、予め準備された、その沸点における蒸気組成と同一組成の組成物を補充液として用いることにより、洗浄槽系内における洗浄剤組成物の組成変動を抑制できることを見出した。これにより、従来の共沸組成物系洗浄剤の優れた特性(例えば優れた乾燥性等)を維持しつつ、共沸組成物系洗浄剤では解決し得なかった課題(例えば洗浄性等)を解決し、更にその優れた特性を長期の洗浄操作期間中、安定に維持することが可能となった。従来、このような長期間安定に使用するための多成分洗浄剤組成物としては、共沸組成物であることが必須と考えられてきたが、本発明の組成物により、たとえ非共沸組成物であっても共沸組成物同様に多成分洗浄剤の組成変動の問題を解決できることを見出した。
【0063】
本発明の部分共沸組成物は、20℃における蒸気圧が、式(1)、(2)で定義される基準蒸気圧Poより大きい2種以上の揮発成分と、Poより小さい1種以上の不揮発成分(B)からなる。ここで式中の成分平均蒸気圧Pavは、本発明の組成物を構成する、各揮発成分(Ai)および不揮発成分(Bj)単独での20℃における蒸気圧の相加平均である。基準蒸気圧Poを境として区分された2つのグループに属する成分を併用することにより、本願発明の洗浄性、乾燥性、不燃性に優れ、かつ長期の洗浄操作中の組成変動が少ない、部分共沸組成物を得ることができる。
【0064】
また、本発明の部分共沸組成物は、その常圧下での沸点において、組成物の発生する気相と液相中の各不揮発成分(Bj)の組成が式(3)の関係を満たすものである。蒸気相に存在する不揮発成分(B)の量が一定量以下のときに、長期の洗浄操作中の組成変動が少なく、また蒸気洗浄時における優れた乾燥性と洗浄性を両立した多成分組成物を得ることができる。ここでいう常圧下での沸点は、例えば、後述するリフラックス試験において、試料の本発明組成物が到達する定温状態において観測される気相温度として求めることができる。また、式(3)中のBvjはこの時の蒸気相を凝縮させた凝縮液を採取し、その組成を分析することによって求めることができる。
【0065】
多成分洗浄剤組成物において、汚れ溶解性の向上を目的に高沸点の不揮発成分を使用することが多く、このような高洗浄性成分が、不揮発成分(B)として、沸点下でも、大量に液相に残存することは、洗浄剤の高洗浄性を安定的に確保するのに貢献する。蒸気洗浄を行う必要がある場合は、良好な乾燥性を維持しつつ、蒸気相にも一定の洗浄性を求められる場合があるが、その場合は、(ΣBvj/ΣBoj)の値が0.0001以上0.1以下の範囲で、不揮発成分(B)が蒸気相に存在することが必要であり、より好ましくは0.001以上0.05以下である。
【0066】
さらに、本発明の部分共沸組成物は、その常圧下での沸点において、組成物の発生する気相と液相中の各揮発成分(Ai)の組成が式(4)の関係を満たす。気相における各揮発成分(Ai)の気相における全揮発成分に対する重量割合と、室温下での部分共沸組成物における各揮発性成分(Ai)の室温下での部分共沸組成物における全揮発成分に対す重量割合の差が±0.1以内である時に、組成変動が少なく、組成物自体が非共沸組成であっても、実際には共沸組成物と同様に洗浄剤としての組成変動を抑制することが可能となる。より好ましくはその差が±0.07以内であり、更に好ましくは±0.05以内である。なお、ここで式(4)中のAviは上述した、Bvjと同じ方法にて求めることができる。
【0067】
この部分共沸組成物を構成する成分としては、式(1)、(2)で定義された基準蒸気圧Poに基づき選定された2種以上の揮発成分(A)と1種以上の不揮発成分(B)からなる非共沸組成物であって、その各成分が式(3)、(4)を満たすものであれば、いずれの化合物も使用可能であるが、例えばハロゲン化炭化水素類、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル結合及び/またはエステル結合を有する有機化合物等を挙げることができる。
【0068】
以下、本発明の部分共沸組成物に用いることができる各化合物について室温における蒸気圧の高い順に例示をする。
【0069】
ハロゲン化炭化水素類としては、非塩素系臭素化合物、非塩素系フッ素化合物を挙げることができる。非塩素系臭素化合物類としては、臭化イソプロピル、臭化プロピル等を挙げることができる。非塩素系フッ素化合物とは、炭化水素類やエーテル類の水素原子の一部がフッ素原子のみで置換され、塩素原子を含まないフッ素化合物であり、例えば、下記一般式(11)で示される環状HFC、式(12)で示される鎖状HFC、又は式(13)で示されるHFEの、塩素原子を含まない、炭素原子、水素原子、酸素原子、フッ素原子からなる化合物、及びこれらの中から選ばれる2種以上の化合物の組み合わせを挙げることができる。
2n−m (11)
(式中、nおよびmは、4≦n≦6、5≦m≦2n−1をみたす整数を示す)
2x+2−y (12)
(式中、xおよびyは、4≦x≦6、6≦y≦12の整数を示す)
2s+1OR (13)
(式中、4≦s≦6、Rは炭素数1〜3のアルキル基)
環状HFCの具体例としては3H,4H,4H−パーフルオロシクロブタン、4H,5H,5H−パーフルオロシクロペンタン、5H,6H,6H−ノナフルオロシクロヘキサンを挙げることができる。
【0070】
鎖状HFCの具体例としては1H,2H−パーフルオロブタン、1H,3H−パーフルオロブタン、1H,4H−パーフルオロブタン、2H,3H−パーフルオロブタン、4H,4H−パーフルオロブタン、1H,1H,3H−パーフルオロブタン、1H,1H,4H−パーフルオロブタン、1H,2H,3H−パーフルオロブタン、1H,1H,4H−パーフルオロブタン、1H,2H,3H,4H−パーフルオロブタン、2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)、1H,2H−パーフルオロペンタン、1H,4H−パーフルオロペンタン、2H,3H−パーフルオロペンタン、2H,4H−パーフルオロペンタン、2H,5H−パーフルオロペンタン、1H,2H,3H−パーフルオロペンタン、1H,3H,5H−パーフルオロペンタン、1H,5H,5H−パーフルオロペンタン、2H,2H,4H−パーフルオロペンタン、1H,2H,4H,5H−パーフルオロペンタン、1H,4H,5H,5H,5H−パーフルオロペンタン、1H,2H−パーフルオロヘキサン、2H,3H−パーフルオロヘキサン、2H,4H−パーフルオロヘキサン、2H,5H−パーフルオロヘキサン、3H,4H−パーフルオロヘキサン等を挙げることができる。
HFEの具体例としてはメチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロペンチルエーテル、メチルパーフルオロシクロヘキシルエーテル、エチルパーフルオロペンチルエーテルを挙げることができる。
【0071】
炭化水素類としては、例えば、ペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、メンタン、ビシクロヘキシル、シクロドデカン、2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナンが挙げられる。
【0072】
アルコール類では、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノ−ル、tert−ブタノール、1−プロパノ−ル、sec−ブタノール、イソブタノール(20℃における蒸気圧1.06×10Pa)、n−ブタノール、イソアミルアルコール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられる。
【0073】
ケトン類ではアセトン、メチルエチルケトン、3−ペンタノン、2−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘキサノン(20℃における蒸気圧3.99×10Pa)、メチル−n−アミルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、アセトフェノンを挙げられる。
【0074】
エーテル結合を有する有機化合物とは、分子構造の中にエーテル結合(C−O−C)を少なくとも1個以上含有する化合物であり、エステル結合を有する有機化合物とは、分子構造の中にエステル結合(−COO−)を少なくとも1個以上含有する化合物である。
【0075】
エーテル結合を有する化合物としては、例えば、下記一般式(14)で特定される化合物を挙げることができる。
【0076】
【化5】

【0077】
(式中、R15およびR16はアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アセチル基、カルボニル基、水酸基、エステル結合およびエーテル結合の中から選ばれる一種以上を有する脂肪族化合物残基、脂環式化合物残基、芳香族化合物残基および複素環化合物残基を表し、R17〜R20は水素またはアルキル基を表す)
より具体的な例としては、グリコールエーテル類、および、グリコールエーテルアセテート類が挙げられる。
【0078】
まず、グリコールエーテル類としては、グリコールエーテルモノアルキルエーテル類やグリコールエーテルジアルキルエーテル類を挙げることができる。グリコールエーテルモノアルキルエーテル類とは、2個の水酸基が2個の相異なる炭素原子に結合している脂肪族あるいは脂環式化合物において、該水酸基のうち1個の水酸基の水素が炭化水素残基またはエーテル結合を含む炭化水素残基に置換されている化合物である。また、グリコールエーテルジアルキルエーテル類とは2個の水酸基が2個の相異なる炭素原子に結合している脂肪族あるいは脂環式化合物において、2個の水酸基の水素のいずれもが炭化水素残基またはエーテル結合を含む炭化水素残基に置換されている化合物である。例えば、下記一般式(15)で示されるグリコールエーテルモノアルキルエーテル類および下記一般式(16)で示されるグリコールエーテルジアルキルエーテル類を挙げることができる。
【0079】
【化6】

【0080】
(式中、R21は炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基又はシクロアルキル基、R22、R23,R24は水素またはメチル基、nは0〜1の整数、mは1〜4の整数を示す)
【0081】
【化7】

【0082】
(式中、R25は炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基又はシクロアルキル基、R26は炭素数1〜4のアルキル基又はアルケニル基、R27、R28、R29は水素またはメチル基、nは0〜1の整数、mは1〜4の整数を示す)
また、グリコールエーテル類は、親水性グリコールエーテル類及び疎水性グリコールエーテル類に分類され、本発明の部分共沸組成物に使用する親水性グリコールエーテルモノアルキルエーテル類および親水性グリコールエーテルジアルキルエーテル類とは、30℃においてグリコールエーテル類/水を60/40の質量割合で混合した時、相分離が認められず均一な単一の液相を形成することができるグリコールエーテル類であり、疎水性グリコールエーテルモノアルキルエーテル類および疎水性グリコールエーテルジアルキルエーテル類とは、30℃において、グリコールエーテル類/水を60/40の質量割合で混合した時、相分離が認められるグリコールエーテル類である。
【0083】
好ましい親水性グリコールエーテルモノアルキルエーテル類および親水性グリコールエーテルジアルキルエーテル類としては、30℃において、水と任意の割合で溶解できるグリコールエーテル類であり、好ましい疎水性グリコールエーテルモノアルキルエーテル類および疎水性グリコールエーテルジアルキルエーテル類としては、30℃において、水への溶解度が60質量%以下のグリコールエーテル類である。
【0084】
グリコールエーテルモノアルキルエーテル類において、例えば、親水性グリコールエーテルモノアルキルエーテルの具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(20℃における蒸気圧8.91×10Pa)、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等を挙げることができ、疎水性グリコールエーテルモノアルキルエーテルの具体例としては、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(20℃における蒸気圧7.98×10Pa)、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等を挙げることができる。
【0085】
グリコールエーテルジアルキルエーテル類において、例えば、親水性グリコールエーテルジアルキルエーテルの具体例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル(20℃における蒸気圧3.99×10Pa)、ジエチレングリコールジエチルエーテル等を挙げることができ、疎水性グリコールエーテルジアルキルエーテルとしては、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(20℃における蒸気圧6.65×10Pa)、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル等を挙げることができる。
【0086】
本発明の部分共沸組成物に使用するグリコールエーテル類としては、人体における代謝系でアルコキシ酢酸を生成しない3−メトキシブタノール(20℃における蒸気圧1.20×10Pa)、3−メトキシ−3−メチルブタノール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等がより毒性が低く好ましい。
【0087】
ついで、グリコールエーテルアセテート類とは、水酸基を有するグリコールエーテル類をアセチル化した化合物であり、好ましくは下記一般式(17)で示される。
【0088】
【化8】

【0089】
(式中、R30は炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基又はシクロアルキル基、R31、R32、R33は水素またはメチル基、nは0〜1の整数、mは1〜4の整数を示す)
具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコール等のモノアルキルエーテルのアセテート等を挙げることができる。
【0090】
本発明の部分共沸組成物に使用するグリコールエーテルアセテート類としては、人体における代謝系でアルコキシ酢酸を生成しない3−メトキシブチルアセテートおよび3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等がより毒性が低く好ましい。
【0091】
エステル結合を有する化合物としては、例えば、下記一般式(18)で示される化合物を挙げることができる。
【0092】
【化9】

【0093】
(式中、R34およびR35はアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アセチル基、カルボニル基、水酸基、エステル結合およびエーテル結合の中から選ばれる一種以上を有する脂肪族化合物残基、脂環式化合物残基、芳香族化合物残基および複素環化合物残基を表す。)
具体例としては酢酸イソプロピル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソブチル、酢酸−n−ブチル(20℃における蒸気圧1.33×10Pa)、酢酸イソアミル、アセト酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、酢酸シクロヘキシル、アセト酢酸エチル、乳酸ブチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、コハク酸ジメチル、酢酸−2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0094】
また、エステル結合を有する化合物の別の例としては、ヒドロキシカルボン酸エステル類を挙げることができる。ヒドロキシカルボン酸エステル類とは水酸基を有するエステル化合物であり、好ましくは下記一般式(19)で特定される。
【0095】
【化10】

【0096】
(式中、R36は炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基又はシクロアルキル基を示す。)
具体例としては、グリコールモノエステル、乳酸エステル、リンゴ酸エステル、酒石酸エステル、クエン酸エステル、グリセリンモノエステル、グリセリンジエステル、リシノール酸エステルおよびヒマシ油等を挙げることができる。
【0097】
本発明の部分共沸組成物は、上記成分のうち、式(1)、(2)で定義される基準蒸気圧Poを基準として不揮発成分(B)、揮発成分(A)を選定し、これらを式(3)、(4)の関係を満たすような特定の割合で混合することにより得ることができる。
【0098】
一般的には、物質内分子間水素結合強度が互いに近い複数の揮発成分(A)と、これらとは、物質内分子間水素結合強度が著しく異なる、不揮発成分(B)とを組合せることができる。ここでいう水素結合強度は、各化合物中の電気陰性度の大きい原子(酸素、窒素、フッ素)や活性水素原子(酸素、窒素等と結合している水素原子)の有無及びその数に依存する。
【0099】
例えば、揮発成分(A)に電気陰性度の大きい原子及び活性水素原子を含むアルコール等を選択し、不揮発成分(B)に物質内分子間水素結合を持たない炭化水素を選択する組み合わせや、揮発成分(A)にフッ素原子を含む非塩素系フッ素化合物を選択し、不揮発成分(B)にフッ素原子を含まない化合物類を選択する組み合わせを挙げることができる。
【0100】
上記、組み合わせのうち、例えば、複数の揮発成分(A)がそれら自体で、共沸組成物を形成し、かつ、この組成物の共沸性が、不揮発成分(B)の存在下でもその影響をほとんど受けないものは、結果として、本発明の部分共沸組成物を実現することができる。
【0101】
より具体的には、20℃における蒸気圧が互いに近く、共沸組成物を構成する2種以上の化合物を揮発成分(A)とし、20℃における蒸気圧がこれら揮発成分(A)より十分に低い1種以上の化合物を不揮発成分(B)とすることができる。
【0102】
このとき選定された、各揮発成分(Ai)の望ましい成分組成を決定するには、一例として、揮発成分(A)のみを各必要量、例えば等量用いた、精留試験を行い得られた凝縮液組成を測定する方法が挙げられる。この、精留試験では、精留塔をつけた、所定の容器内に投入した、組成が既知の揮発成分(A)からなる組成物を加熱していったん蒸気となし、これを冷却凝縮して液体としたものを、再びもとの組成物に戻す操作を気相の組成が一定になるまで連続して行なう。このとき、発生した蒸気の冷却凝縮した液体組成を測定することにより、各揮発成分(A)の重量割合が決定される。
【0103】
このようにして得られた、揮発成分(A)のみからなる組成物に、不揮発成分(B)を加えて新たな組成物を調製する場合、その各不揮発成分(Bj)の組成物全体に対する重量割合(Boj)が揮発成分(A)の有する共沸性に影響を及ぼさない適当な範囲にあるとき、新たな組成物中の全成分は、式(3)および(4)を満たすことができる。Bojの適当な範囲は、Bojの異なるいくつかの新たな組成物についてリフラックス試験を行い得られた凝縮液の組成を測定することによって確認、決定することができる。
【0104】
この、リフラックス試験では、所定の容器内に投入した、組成が既知の揮発成分(A)および不揮発成分(B)からなる組成物を加熱していったん蒸気となし、これを冷却凝縮して液体としたものを、再びもとの組成物に戻す操作を気相及び液相の組成が一定になるまで連続して行なう。このとき、発生した蒸気の冷却凝縮した液体組成を測定し、その凝縮液中の不揮発成分(B)の含有量が所定の値以下であることを確認する。
【0105】
また、上記、事前のリフラックス試験を行わず、所望の乾燥性、不燃性、洗浄性を満たすべく、各揮発成分、各不揮発成分組成を調整した、組成物を調製し、得られた組成物の部分共沸性を、リフラックス試験により確認することもできる。
【0106】
以下、洗浄剤組成物として特に好適に用いることができる本発明の部分共沸組成物の揮発成分(A)および不揮発成分(B)について解説する。
【0107】
洗浄剤組成物成分としての、本発明の揮発成分(A)において、少なくとも1種は非引火性揮発成分であることが好ましい。非引火性揮発成分を用いることで、本発明の引火点のない部分共沸組成物を得ることができる。ここでいう、「非引火性」や「引火点のない」とは、JISK2265に記載の引火点評価試験により、洗浄剤に引火点なしと認められることを意味する。このような部分共沸組成物を特に洗浄剤として用いた場合、非引火性揮発成分からなる蒸気相で液相表面を覆うことにより、操業安全性を確保することが可能となる。好ましい非引火性揮発成分としては、ハロゲン化炭化水素類が挙げられる。より好ましくはオゾン層破壊係数を有さない非塩素系フッ素化合物、非塩素系臭素化合物が挙げられる。更に好ましくは、不燃性の分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物が挙げられる。
【0108】
分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物としては、例えば、下記一般式(20)で示される環状HFC、(21)で示される鎖状HFC、又は(22)で示されるHFEの、塩素原子を含まない、炭素原子、水素原子、酸素原子、フッ素原子からなる化合物、及びこれらの中から選ばれる2種以上の化合物の組み合わせ等を挙げることができる。
2n−m (20)
(式中、nおよびmは、4≦n≦6、(4/3)n≦m≦2n−1をみたす整数を示す)
2x+2−y (21)
(式中、xおよびyは、4≦x≦6、4(x+1)/3≦y≦2x+1の整数を示す)
2s+1OC2t+1 (22)
(式中、sおよびtは、(4t+1)/2≦s≦7、1≦t≦3をみたす整数を示す)
より具体的には、例えば前述の例示した非塩素系フッ素化合物のうち、式(20)〜(22)を満たすものが挙げられる。これらのうち、フッ素原子数の水素原子数に対する比が3以上の鎖状HFCまたはHFEは、それらを用いることにより、本発明の自己消火性に優れた部分共沸組成物が得られるため、より好ましい成分である。ここでいう、自己消火性とは、物質の難燃性の一種で、この性質を有する物質は、いったん着火されても、一定時間後には、その炎が、自発的に消滅する。さらに、「自己消火性に優れる」とは、後述する自己消火性試験において、着火後、10秒以内に自発的な消火が認められることを意味する。
【0109】
本発明の部分共沸組成物の自己消火性を向上させる効果に優れる揮発成分の具体例としては、最小着火エネルギーを持たず優れた不燃性を有する2H,3H−パーフルオロペンタン(HFC43−10mee)、メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびメチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルとの混合物(HFE7100)が挙げられる。
【0110】
本発明の洗浄剤組成物においては、不燃性揮発成分としてこれら、分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物の中から選ばれる1種又は2種以上の化合物を組み合わせて用いることができる。
【0111】
また、揮発成分(A)としては、これら分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物の中から選ばれる1種以上と、アルコール類、炭化水素類、エステル類、ケトン類から選ばれる1種以上を組み合わせたものも、非引火性、優れた自己消火性及び低粘度の加工油等軽度の汚れに対する優れた溶解性を同時に達成するため好ましい。
【0112】
さらに、本発明の優れた揮発成分(A)として、非塩素系フッ素化合物で、その分子内の全アルキル基に対してフッ素原子を有さないアルキル基が半数以上である化合物が挙げられる。これらは加工油等の溶解性が他の非塩素系フッ素化合物よりも高く、その結果優れたリンス性や蒸気洗浄性を有する。例えば、2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)(A1)が挙げられる。
【0113】
また、他の好ましい揮発成分(A)として、常圧における沸点が35℃以上50℃未満の化合物が挙げられる。これらは沸点が低いため、洗浄剤の蒸気中の不揮発成分(B)量を一定量以下に抑えられるので、蒸気洗浄において乾燥性を特に重視する場合に好ましい。例えば、沸点が40℃である2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)(A1)が挙げられる。
【0114】
本発明の洗浄剤組成物成分として、特に優れた揮発成分(A)としては、例えば、上記、乾燥性に優れるHFC365mfc(A1)と、不燃性の分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物(A2)を併用したものが、成分(A1)の自己消火性の向上、及び不揮発成分(B)が可燃性である場合、その引火危険性の低減に効果を奏し、好ましい。この場合、さらに好ましくは、成分(A2)として、2H,3H−パーフルオロペンタン(HFC43−10mee)をメチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、または、その両者の混合物(HFE7100)のいずれかと組み合わせたものを使用することで、洗浄剤組成物における成分(A2)の配合量を減らすことができ、その結果洗浄剤組成物の沸点が低下し、その蒸気層中の成分(B)濃度が減少することにより蒸気洗浄後の被洗浄物の乾燥性を高めると共に、使用中の洗浄剤組成物の組成変動を抑制することができる。
【0115】
揮発成分(A)として、非塩素系フッ素化合物を用いる場合、不揮発成分(B)としては、加工油類、グリース類、ワックス類やフラックス類等のあらゆる汚れに対する洗浄力の向上及びリンス性の向上を目的として、20℃における蒸気圧が1.33×10Pa未満の成分から選ばれる化合物の一種、または二種以上の組み合わせたものを用いるのが好ましい。
【0116】
成分(B)の蒸気圧が、この範囲にあるときに、本願発明に係る、乾燥性、洗浄性、および非引火性に優れ、かつ、組成変動の少ない洗浄剤組成物を得るのが容易となる。より好ましくは、20℃における蒸気圧が6.66×10Pa以下であり、蒸気洗浄性を考慮するとさらに好ましくは0.13Pa以上1.33×10Pa以下である。
【0117】
このような不揮発成分(B)の例として、各種汚れに対して良好な洗浄性を有する、種々の炭化水素類、アルコール類、ケトン類およびエーテル結合及び/またはエステル結合を有する有機化合物を挙げることができ、より具体的な例として、前述の例示された炭化水素類、アルコール類、ケトン類等のうち、この上記蒸気圧を有する化合物を挙げることができる。これら化合物のうち、加工油、グリース、ワックス、液晶等の洗浄には炭化水素類が好適に用いられ、フラックスなどの樹脂類の洗浄にはグリコールエーテル類、エステル類、ケトン類、なかでもグリコールエーテル類が特に好適に用いられる。
【0118】
上記、不揮発成分(B)の中でも、エーテル結合及び/またはエステル結合を有する化合物が好ましく、特に、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類およびヒドロキシカルボン酸エステル類は、他の成分として引火性のアルコール類を併用する場合、その引火性を抑制する効果が特に高いのでより好ましい。
【0119】
これらの化合物のうち、不揮発成分(B)として、グリコールエーテル類を用いるときは、グリコールエーテルモノアルキルエーテル類(B1)、およびグリコールエーテルジアルキルエーテル類(B2)が、その優れた、汚濁溶解性のゆえに、より好適に用いられる。
【0120】
成分(B1)としては、下記一般式(6)で示される化合物が、特に各種汚れに対して優れたな洗浄性を有しており、例として、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノールを挙げることができる。
【0121】
【化11】

【0122】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、またはシクロアルキル基、R、R、Rは水素またはメチル基、nは0または1の整数を表す。)
さらに、成分(B1)として、特に、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルが、フラックス洗浄におけるイオン性残渣の原因となるアミンの塩酸塩や有機酸等の汚れおよびハンダ付け工程によって生成され、白色残渣の原因となる重合ロジンやロジンの金属塩等の汚れに対する洗浄性に優れている。
【0123】
成分(B2)としては、下記一般式(7)で示される化合物が、特に各種汚れに対して優れたな洗浄性を有しており、例として、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテルを挙げることができる。
【0124】
【化12】

【0125】
(式中、Rは炭素数4〜6のアルキル基、アルケニル基、またはシクロアルキル基、R、R、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数3〜6のアルキル基、アルケニル基またはシクロアルキル基、nは0または1の整数を表す。)
さらに、成分(B2)として、特に、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルが、フラックス成分に含まれるロジンに対する洗浄性に優れている。
【0126】
本発明の部分共沸組成物を用いた洗浄剤組成物においては、その洗浄目的に応じて、各種汚れに対するより好ましいグリコールエーテルモノアルキルエーテル類(B1)とグリコールエーテルジアルキルエーテル類(B2)との組み合わせを選ぶことができる。
【0127】
例えば、成分(B1)、(B2)のうちいずれか一方が親水性、他方が疎水性の組み合わせは、各種フラックス洗浄や基板表面に塗布される各種ソルダーレジストインキ等の熱硬化性インキやUV硬化性インキ等の洗浄および液晶洗浄に特に適しており,両成分が共に親水性の組み合わせは、各種フラックス洗浄や各種電気および電子部品の接着や封止等に使用されるエポキシやウレタン系の2液性樹脂の混合吐出機(ディスペンサー)ミキサー部やノズル部の洗浄に特に適している。また、両成分が共に疎水性の組み合わせは、極性の低い精密機械部品、光学機械部品等の加工時に種々の加工油類、例えば、切削油、プレス油、引抜き油、熱処理油、防錆油、潤滑油等、やグリース類、ワックス類等や液晶等の洗浄に特に適している。
【0128】
また、本発明の洗浄剤組成物においては、加工油洗浄性の向上を目的にグリコールエーテルモノアルキルエーテル類(B1)をグリコールエーテルアセテート類(B3)と組み合わせて用いることができる。成分(B1)と(B3)を併用することにより、極性の低い精密機械部品、光学機械部品等の加工時に使用する種々の加工油類、例えば、切削油、プレス油、引抜き油、熱処理油、防錆油、潤滑油等、または、グリース類、ワックス類等の洗浄に好適な、洗浄剤組成物を得ることができる。例えば、成分(B1)として3−メトキシ−3−メチルブタノール、成分(B3)として、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートを併用したものは、沸騰洗浄時に高い加工油洗浄性を示す一方、室温における加工油分離性に優れるので洗浄剤中に持ち込まれた加工油を容易に分離でき、洗浄剤の寿命が長くなるばかりでなく、さらに3−メチル−3−メトキシブチルアセテートのエステル臭も抑制できるので好ましい。
【0129】
不揮発成分(B)として用いられるヒドロキシカルボン酸エステル類としては乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルおよび乳酸ペンチル等を挙げることができる。これらの中でも、特に好ましい例としては、その分子構造の一部としてブチル基またはイソブチル基の少なくとも一種以上を含む化合物および炭素数4〜6の鎖状炭化水素構造と酸素原子を分子内に含む化合物を挙げることができる。例えば、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸ブチル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−イソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−i−ブチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノールおよびジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル等を挙げることができる。これらの化合物は、フラックス洗浄において、単にロジン溶解性に優れるだけでなく、イオン性物質および白色残渣原因物質に対する洗浄性にも優れている。
【0130】
本発明の部分共沸組成物からなる洗浄剤組成物はあらゆる汚れに対して優れた洗浄性を示す。
【0131】
なお、不揮発成分(B)としては、洗浄剤組成物に、特に、リンス性が必要とされる場合は、低粘度の成分であることが好ましく、20℃における粘度が100cp以下がより好ましく、更に好ましくは50cp以下である。
【0132】
さらに、本発明において、不揮発成分(B)は、界面活性剤でないものが好ましい。界面活性剤は、一般的に発泡性を有するため、この界面活性剤を含む洗浄剤を沸騰させ洗浄を行った場合、リンス剤等他の液の入った槽に洗浄剤飛沫が混入し、その結果リンス剤の性能が劣化する場合がある。更に、蒸気洗浄を行う必要がある場合、蒸気相にも一定の洗浄性が求められる場合があり、この場合には、蒸気相にも、その乾燥性を損なわない程度に、溶解性の高い不揮発成分(B)が存在することが必要である。しかし、界面活性剤は、一般的に蒸気圧が低すぎ、このような物質を洗浄剤の蒸気相に含ませることは困難である。さらに液中で汚れを乳化分散して除去する洗浄機構の界面活性剤では、蒸気洗浄において被洗物周辺に凝縮した液量では充分な効果は得られず、単に乾燥性を低下させるにすぎず、特に蒸気洗浄性を有する洗浄剤組成物の不揮発成分(B)としては不適当である。
【0133】
本発明の部分共沸組成物は、各揮発性成分(Ai)、各不揮発性成分(Bj)を定法に従って混合し均一化して得られる。各成分の重量割合は式(3)、(4)を満たし、本発明の部分共沸組成物の要求される性能を満たす範囲であれば、特に制限はないが、揮発成分量と不揮発成分量の比、(ΣAoi)/(ΣBoj)は95/5〜10/90であることが好ましい。両者の量比がこの範囲にあるとき、得られる洗浄剤組成物が、好ましい洗浄性と乾燥性を両立し得る。より、好ましくは20/80〜80/20であり、いっそう好ましくは30/70〜70/30であり、さらにいっそう好ましくは、40/60〜60/40である。
【0134】
特に、成分(A1)としてHFC365mfc、成分(A2)として分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物から選ばれる一種または二種以上の化合物を用いる場合の各成分の重量割合については、本発明の洗浄剤組成物の特徴である、高洗浄性、低毒性、低引火性、高自己消火性が損なわれない範囲であれば、特に制限はないが、揮発成分量と不揮発成分量の比、(Ao1+Ao2)/(ΣBoj)が、95/5〜30/70であることが好ましい。成分(B)の重量割合が5より大きいときに、各種汚れに対するより好ましい溶解力改善効果が得られ、70より小さいときにより好ましい低引火性、高自己消火性を達成できる。洗浄剤の洗浄性と低引火性、高自己消火性のバランスを考慮した、より好ましい範囲は90/10〜40/60である。
【0135】
また、この場合、成分(A1)、成分(A2)の組成比の割合、Ao1/Ao2の範囲は97/3〜60/40であることが好ましい。成分(A2)の重量割合が3より大きいときに、より好ましい自己消火性向上効果が得られ、40より小さいときに、蒸気洗浄時のより好ましい優れた乾燥性が得られる。洗浄剤の自己消火性と蒸気洗浄時における乾燥性のバランスを考慮した、より好ましい範囲は97/3〜85/15であり、さらに、好ましい範囲は95/5〜88/12である。
【0136】
さらに、この場合、上記洗浄剤を用いたリフラックス試験において得られる蒸気相組成と同一の組成を有する組成物は、同洗浄剤とともに、洗浄工程で用いられる、リンス剤および補充液として利用することができる。このリンス剤および補充液中の(Ao1+Ao2)/(ΣBoj)の範囲は、リンス剤の特徴である、高乾燥性、低毒性、低引火性、高自己消火性及び併用する洗浄剤の組成変動抑制効果が損なわれない範囲であれば、特に制限はないが、98/2〜99.9/0.1であることが好ましい。成分(B)の重量割合が2より小さいときに、高乾燥性、低引火性、高自己消火性が得られ、0.1より大きいときにより好ましい併用する洗浄剤の組成変動抑制効果が得られる。リンス剤の高乾燥性と組成変動抑制効果のバランスを考慮した、さらに好ましい範囲は99/1〜99.8/0.2である。
【0137】
リンス剤および補充液における成分(A1)、成分(A2)の好ましい組成比の割合は前述の洗浄剤における割合と同じである。
【0138】
特に、成分(A1)として、2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)を含有するリンス剤は他の非塩素系フッ素化合物からなるリンス剤より加工油の溶解性が高い。そのため、長期の使用により蓄積された汚れを多く含む洗浄剤が付着した被洗物が、リンス工程に持ち込まれた場合でも、汚れの被洗物への再付着を抑制し、充分なリンス機能を発揮することができる。したがって、リンス機能の低下を目安とした洗浄剤の交換頻度を下げることができ、結果として洗浄剤の寿命を延長することが可能となる。さらに成分(B)を併用することで、揮発成分(A)のみを含む場合より広汎な種類の汚れに対応することが可能となる。
【0139】
また、上記、リンス剤および補充液と同一組成を有する組成物は、仕上げ洗浄剤として使用することも可能である。特に洗浄方法に揺動や超音波、シャワーまたは拭き取り等の物理的な力を付与することができる場合や、洗浄対象の汚れが異物や低粘度の加工油等比較的軽微な場合に、このような洗浄剤が、仕上げ洗浄性と乾燥性を両立できるのでより好適に用いられる。
【0140】
例えば実装部品をハンダ付けしたプリント基板を本願記載の洗浄剤で洗浄した後、局所的に残存したフラックスや白色残渣を、綿棒等で簡易的に拭き取る部分修正を行う場合があるが、このときは1液で洗浄を完了する必要がある。不揮発成分を多量に含有する洗浄剤では実装部品の間に不揮発成分が広がり、後にリンス剤で拭き取ることは困難であり乾燥不良となる。一方、溶解性の劣る揮発成分のみでは、洗浄性が不十分である。
【0141】
本発明の部分共沸組成物における、不揮発成分(B)として、グリコールエーテルモノアルキルエーテル類(B1)、およびグリコールエーテルジアルキルエーテル類(B2)を併用して使用する場合の成分(B1)の成分(B2)に対する質量割合の範囲は、90/10〜10/90であることがより好ましい。成分(B1)の質量割合が10より大きい時に、より好ましいロジン溶解性が得られ、90より小さい時に、重合ロジンやロジンの金属塩に対するより好ましい洗浄性が得られる。洗浄剤のロジンに対する溶解性と重合ロジン等の白色残渣の原因となる汚れに対する洗浄性のバランスを考慮した時、さらに好ましい成分(B1)の成分(B2)に対する質量割合の範囲は80/20〜20/80であり、いっそう好ましくは70/30〜30/70である。
【0142】
また、本発明の部分共沸組成物における、不揮発成分(B)として、グリコールエーテルモノアルキルエーテル類(B1)、およびグリコールエーテルアセテート類(B3)を併用して使用する場合の成分(B1)の成分(B3)に対する質量割合の範囲は、90/10〜10/90であることがより好ましい。成分(B1)の質量割合が10より大きい時に、より好ましい優れた金属安定性や低臭性が得られ、90より小さい時に、各種加工油に対するより好ましい洗浄性が得られる。洗浄剤の加工油に対する溶解性と優れた金属安定性や低臭性のバランスを考慮した時、さらに好ましい成分(B1)の成分(B3)に対する質量割合の範囲は80/20〜20/80であり、いっそう好ましくは70/30〜30/70である。
【0143】
本発明の洗浄法における、リンス剤および補充液を構成する成分(B1)の成分(B3)に対する質量割合の範囲および成分(B1)の成分(B3)の質量割合の範囲は、併用する洗浄剤をリフラックス試験して得られる液組成と同一とする。同一組成とすることで洗浄剤と併用して使用する場合に、洗浄剤組成の変動を抑制し、また、洗浄剤の優れた洗浄性自己消火性を維持することが可能となる。
【0144】
本発明の洗浄剤組成物には、本発明の効果を著しく損なわない程度において、必要に応じて各種助剤、例えば,酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、安定剤、消泡剤等を必要に応じて添加しても良い。以下に本発明の洗浄剤組成物に添加できる添加剤の具体例を例示する。
【0145】
酸化防止剤として、以下、その種類ごとに例示する。
【0146】
フェノール系酸化防止剤としては、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等の化合物を挙げることができる。
【0147】
アミン系酸化防止剤としては、ジフェニル−p−フェニレン−ジアミン、4−アミノ−p−ジフェニルアミン、p,p‘−ジオクチルジフェニルアミン等の化合物を挙げることができる。
【0148】
リン系酸化防止剤としては、フェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルジイソオクチルホスファイト、ジフェニルジイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tブチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト等の化合物を挙げることができる。
【0149】
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3‘−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3‘−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3‘−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3‘−チオジプロピオン酸エステル等の化合物を挙げることができる。
【0150】
これら例示された化合物のなかで、フェノール系酸化防止剤の添加効果が大きく、特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールが好ましい。また、洗浄剤を連続して加熱使用する蒸気洗浄を行う場合には、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤の群から選ばれる少なくとも一種以上とリン系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤の群から選ばれる一種以上を併用することによって、長期間洗浄剤の酸化分解を抑制することが可能となる。
【0151】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる紫外線吸収剤としては、4−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2‘−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4‘−クロロベンゾフェノン、2、2‘−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2‘−ジヒドロキシ−4,4‘−ジメトキシベンゾフェノン、4−ドデシル−2−ヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、4−オクチルフェニルサリシレート、ビスフェノールA−ジ−サリシレート等のフェニルサリシレート類および2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α‘−ジジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2‘−ヒドロキシ−4‘−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2‘−ヒドロキシ−5‘−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2‘−ヒドロキシ−5‘−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾ−ル類を挙げることができる。
【0152】
洗浄剤に酸化防止剤あるいは紫外線吸収剤を添加する場合には各揮発成分(Ai)と不揮発成分(Bj)の合計質量に対して、1〜1000ppm、より好ましくは10〜1000ppmである。
【0153】
本発明の洗浄剤の融点は15℃以下が好ましいが、冬期使用することも考慮すると10℃以下がより好ましく,さらに好ましくは5℃以下である。
【0154】
本発明のリンス剤に酸化防止剤あるいは紫外線吸収剤を添加する場合にはリンス剤を構成する各揮発成分(Ai)と不揮発成分(Bj)の合計質量に対して、1〜1000ppm、より好ましくは10〜1000ppmである。
【0155】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤及び両性界面活性剤を添加しても良い。アニオン系界面活性剤としては、炭素数が6〜20の脂肪酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルカリ金属類、アルカノールアミン類およびアミン塩等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、アルキルフェノール、炭素数が8〜18の直鎖または分岐の脂肪族アルコールのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレンオキサイドポリプロピレンオキサイドのブロックポリマー等が挙げられる。両性界面活性剤としては,ベタイン型、アミノ酸型等が挙げられる。
【0156】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる安定剤としてはニトロメタン、ニトロエタン等のニトロアルカン類、ブチレンオキサイド等のエポキシド類、1,4−ジオキサン等のエーテル類、トリエタノールアミン等のアミン類、ベンゾトリアゾール類等が挙げられる。
【0157】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる消泡剤としては、自己乳化シリコーン、シリコン、脂肪酸、高級アルコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびフッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0158】
これら、界面活性剤や安定剤、消泡剤を、本発明の洗浄剤組成物に添加する場合にはリンス性を考慮して、各揮発成分(Ai)と不揮発成分(Bj)の合計質量に対して、1〜1000ppm、より好ましくは10〜1000ppmである。
【0159】
本発明の洗浄剤組成物をもちいて、以下に示す洗浄方法により、効果的な洗浄を行うことができる。
【0160】
本発明の洗浄方法では、本願発明の揮発成分(A)、不揮発成分(B)を含む部分共沸組成物からなる洗浄剤から発生する、蒸気の凝縮液組成と同じ組成を有するリンス剤を用いる。本発明の洗浄法により、優れた洗浄性、被洗物の速乾性、洗浄剤組成物蒸気の自己消火性に起因する作業安全性をかねそなえた洗浄法が実現できる。
【0161】
また、本発明の洗浄方法では、上記リンス剤と同じ組成の組成物を補充液として使用することで洗浄中、洗浄装置系内から散逸する洗浄剤組成物の量をおぎなうと同時に洗浄剤の組成変動を抑制し、その所定の洗浄能を長時間維持することができる。このようにして、洗浄剤組成物全体として、共沸混合物を形成しない場合でも、作業安定性の高い洗浄方法を実現することができる。
【0162】
上記リンス剤および補充液の組成は、洗浄剤としてもちいた部分共沸性洗浄剤組成物についての前述のリフラックス試験によりあらかじめ決定することができる。また、リフラックス試験にかえて、蒸留試験により補充液組成を決定することもできる。蒸留試験では、洗浄剤組成物の加熱により発生した蒸気の冷却凝縮液を、組成物に戻さずそのまま留出液として回収するもので、所定の留出率で回収された留出液の組成を測定することにより、必要な補充液の組成を知ることができる。洗浄剤の組成変動を抑制するために好ましい補充液の組成としては留出率20容量%以下、より好ましくは留出率10容量%以下で回収された留出液組成である。リフラックス試験のほうが、組成物の種類についての適用範囲が広いため、蒸留試験より一般的であるが、試験する多成分系組成物中の成分(B)の組成比が高い場合は、蒸留試験で、より簡便に目的を達成することができる。
【0163】
さらに、本発明の洗浄法に用いる部分共沸組成物において、揮発成分(A1)としてHFC365mfc、揮発成分(A2)として分子内におけるフッ素原子の水素原子数に対する比が2以上である非塩素系フッ素化合物、および、不揮発成分(B)として20℃における蒸気圧が1.33×10Pa未満の化合物をもちいる場合、自己消火性を有する蒸気を発生する洗浄剤組成物として、成分(A2)分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上であると、この部分共沸組成物を加熱し発生させた成分(A2)を含む揮発成分を主成分とする蒸気で洗浄剤液面を覆うことでその優れた自己消火性により、安全性の高い洗浄法を実現できる。このように部分共沸組成物は、加熱し発生させた特長(例えば優れた自己消火性)のある揮発成分を主成分とする蒸気組成で液面上部を覆うことにより、系全体がその優れた特長を有することも可能とする。このときに用いられる洗浄装置については、上記の蒸気被覆を実現できるものであれば特に制限はないが、例えば、1槽以上の洗浄槽、または、1槽以上の洗浄槽及び1槽以上のリンス槽を含む洗浄機が挙げられる。
【0164】
なお、本発明の洗浄法においては、洗浄工程及びリンス工程には洗浄性、リンス性を向上することを目的とした浸漬、スプレー、シャワー等の他の洗浄方法を組み合わせることもできる。
【実施例】
【0165】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0166】
<実施例1〜5、比較例1〜4>
(1)リフラックス試験
下記洗浄剤が部分共沸組成物であることの確認と、補充液およびリンス剤の組成を決定するため、以下の要領でリフラックス試験を実施した。
【0167】
式(1)および(2)を満たす揮発成分(A)と不揮発成分(B)として、表1、2の各成分を、表記載の組成で混合し、洗浄剤を調製した。得られた洗浄剤を還流装置つきの500mlナス型フラスコに300mlを入れ、2時間リフラックスした後、トップに留出した凝縮液をサンプリングし、ガスクロマトグラフィーによりその組成を分析した。えられた分析値を補充液およびリンス剤の組成とした。このときの組成分析値を表1、2に示す。
【0168】
表1に示された、実施例1〜5のいずれの組成物も式(3)及び(4)を満たしていることより、この組成物は部分共沸組成物であることが確認された。一方、表2に示された比較例1〜4の組成物は式(4)を満たしておらず、部分共沸組成物でないことが確認された。比較例1〜4の組成物は、その沸点における気相中の揮発成分(A)の組成比が、常温下の組成物中における揮発成分(A)の組成比と大きく異なっている。したがって、比較例1〜4の結果は、揮発成分(A)としての炭化水素やアルコールに良好な溶解性を示す加工油やフラックス等の汚れに対する洗浄の場合、沸騰中の洗浄剤が示す洗浄性とその蒸気相が示す蒸気洗浄性が異なるため、処方設計時の安定した洗浄効果を得ることができないことを示している。また処方設計時の引火危険性と異なるため、引火危険性が高まる場合があることを示している。
【0169】
つづいて、実施例1、2の洗浄剤とリンス剤および補充液を用いて実機稼動試験を行い、これら洗浄剤の長期の組成安定性の確認を行った。
【0170】
(2)実機稼働試験1(組成変動性1)
以下に記載する方法により、7日間の実機稼働試験を行なった。
【0171】
図1に示す洗浄装置の洗浄槽1に洗浄剤として、実施例1の部分共沸組成物を投入し、リンス槽2、水分離器4に、リフラックス試験によりあらかじめその組成を決定したリンス剤を入れる。洗浄槽1の洗浄剤をヒーター6により加熱沸騰させ、発生した蒸気を蒸気ゾーン3に満たす。蒸気ゾーン3に充満した蒸気を冷却管7によって凝縮液化させ、その凝縮液の一部と冷却管7に付着した水とを水分離器4で冷却管12により冷却しながら静置分離し、水分の除去された凝縮液がリンス槽2に入り、最終的にオーバーフロー11して洗浄槽1に戻る。
【0172】
試験開始後、洗浄機開口部13からの蒸気の散逸による、系内の洗浄剤組成物の減少を、以下に示す稼働条件下で、補充液として上記リンス剤を系内に補給することにより補う、液補充を2時間ごとに実施した。試験期間中の洗浄剤の組成変動をしらべるため、液補充直後の洗浄槽1内の洗浄剤をサンプリングし、ガスクロマトグラフィーにより組成分析を行った。また、試験機を停止後再運転した場合は、再運転直前に液補充を行った後、サンプリングを行い、同様に組成分析を行った。得られた分析値から、以下の計算式により洗浄剤組成変動率を算出した。
・洗浄剤組成変動率(%)
={(サンプリング液組成−試験開始前組成)/試験開始前組成}×100
・稼働条件
稼働時間:168時間(運転と停止を交互に行なう)
運転サイクル
運転時:8時間×5回(ヒーター6が作動している時間帯を運転時とみなす)
停止時:16時間×4回、64時間×1回(ヒーター6が停止している時間帯を停止状態とみなす)
液補充
運転時 :2時間ごとに洗浄液とリンス液の減少量を測定し、減少分に対応する量の補充液を洗浄槽1に補給する。
【0173】
停止時 :運転開始前に洗浄液とリンス液の減少量を測定し、減少分に対応する量の補充液を洗浄槽1に補給する。
洗浄機開口部
運転時:フタをしない。
【0174】
停止時:フタをする
冷凍機
運転時:稼働
停止時:停止
冷却管温度:10℃
ヒーター容量:370w
フリーボード比:0.92
稼働時間帯における、成分組成および、上記、組成変動率の経時変化を表3に、成分組成の経時変化を図2に示す。1週間の連続稼働中、洗浄槽内の洗浄剤組成変動率を20%以内に安定して制御できることが確認された。
【0175】
(3)実機稼働試験2(組成変動性2)
実施例2の洗浄剤組成物に変更し、液補充及びサンプリングの頻度を、1日ごとに変更して、試験機を停止後の再運転直前に液補充を行った後、サンプリングを行った。その他の方法、操作は試験(2)と同様にして7日間の実機試験を行った。
【0176】
実施例2の組成の洗浄剤、リンス剤、および補充液をもちいておこなった、試験(3)の結果を表4に示す。1週間の連続稼働中、洗浄槽内の洗浄剤組成変動率を20%以内に安定して制御できることが確認された。
【0177】
(4)洗浄性試験
30メッシュのステンレス金網(0.01×0.02m)に下記金属加工油を含浸させ、100℃で30分間加熱して作成した試験片を、図1に示した装置で、試料洗浄剤組成物をもちいて下記洗浄条件にて洗浄、ついで、リンスした後、試料洗浄剤組成物より発生させた蒸気をもちいて蒸気洗浄して乾燥した。乾燥後のステンレス金網の状態を目視で評価し、試料洗浄剤の洗浄性を判定した。
【0178】
評価は以下の基準による。
◎:加工油の残留なし
○:一部に加工油の残留あり
×:加工油の残留あり
(5)フラックス洗浄性試験
ガラスエポキシ製プリント基板(35mm×48mm)を市販のフラックスに片面浸漬し風乾した後、250℃でハンダ付けして作成した試験片を試料洗浄剤組成物をもちいて下記洗浄条件にて洗浄、リンスした後、試料洗浄剤組成物より発生させた蒸気をもちいて蒸気洗浄して乾燥した。乾燥したプリント基板のイオン性残渣値α(単位:μgNaCl/sqin)をオメガメーター(600R−SC、アルファメタルズ社製)で測定し、得られた測定値を以下の基準で評価して、試料洗浄剤のフラックス洗浄性を判定した。
◎:α≦7
○:7<α≦14
×:14<α
・試験(4)に用いた金属加工油:パークロロエチレン中に染料(ズダン)0.1重量%、ユニカットGH35(商品名、日本石油(株)製)を25重量%含有する液を調整し、試験用金属加工油とした。
・試験(5)に用いたフラックスの商品名:JS−64ND((株)弘輝製)
・洗浄条件
洗浄槽:2分間沸騰洗浄
リンス槽:2分間浸漬揺動(20回/分、洗浄剤を加熱して得られる蒸気の凝縮液をリンスとする。)
蒸気ゾーン:洗浄剤を加熱して得られる蒸気内に1分間静置
<実施例6〜24>
表5に記載の組成で各成分を混合し、目的とする部分共沸性を有する洗浄剤を得た。各洗浄剤について上記(4)洗浄試験、(5)フラックス洗浄試験を行ない、結果を表5にまとめた。成分(A1)2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)と成分(A2)分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物から選ばれる一種または二種以上の化合物と成分(B)20℃における蒸気圧が1.33×10Pa未満の化合物とを併用することにより加工油溶解性、フラックス溶解性に優れた洗浄剤が得られた。
【0179】
<比較例5〜7>
表5に記載の化合物について実施例6〜24と同じ試験を行なった。結果を表5にまとめた。2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)、2H,3H−パーフルオロペンタン(HFC43−10mee)、メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルとの混合物(HFE7100)では加工油溶解性、フラックス溶解性が不十分であった。
【0180】
(6)引火点測定
JIS K 2265に従い、測定温度80℃まではタグ密閉式、測定温度81℃以上はクリーブランド開放式で引火点の測定を行った。評価は以下の基準による。
○:引火点なし
×:引火点あり
<実施例25〜37>
表6に記載の組成で各成分を混合し、目的とする部分共沸性を有する洗浄剤を得た。各洗浄剤について、上記(6)引火点測定を行ない、結果を表6にまとめた。成分(A1)2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)、成分(A2)分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物から選ばれる一種または二種以上の化合物、成分(B)20℃における蒸気圧が1.33×10Pa未満の化合物を併用することにより、引火点が消去されることが確認された。
【0181】
<比較例8〜12>
表6に記載の化合物について実施例25〜37と同じ引火点測定を行なった。結果を表6にまとめた。測定した全ての化合物で引火点が確認された。
(7)自己消火性試験
ガラス製簡易型蒸気洗浄機(円筒形)に試料洗浄剤500mlを入れホットプレート上で加熱し、冷却管で蒸気を凝縮しながら還流する。30分間還流後開口部に着火マンの炎を近づけ着火後、自然に炎が消えるまでの時間(自己消火時間)を同一条件で20回測定し、20回の平均値で自己消火性を評価する。
【0182】
評価基準は以下の基準による。
○:着火後、10秒以内に消火
×:着火後、10秒以上燃焼
・試験条件
測定場所:ドラフト内(無風状態)
開口面積:150cm(直径:138mm)
冷却水温度:5℃
フリーボード比:0.3
湿度:80%
<実施例38〜47>
表7に記載の組成で各成分を混合し、目的とする部分共沸性を有する洗浄剤を得た。各洗浄剤について、上記(7)自己消火性試験を行ない、結果を表7にまとめた。成分(A1)2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)、成分(A2)分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物から選ばれる一種または二種以上の化合物、成分(B)20℃における蒸気圧が1.33×10Pa未満の化合物を併用することにより、着火後10秒以内に炎が自然に消滅した。
【0183】
<比較例13>
表7に記載の化合物について実施例38〜47と同じ自己消火性試験を行なった。結果を表7にまとめた。測定した2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)では着火後、10秒以上燃えつづけた。
【0184】
(8)乾燥性試験
ガラスファイバー(直径:0.17mm、長さ:100mm)を20本束にした状態で図1の装置にて試料洗浄剤で洗浄し、ついで、下記のリンス剤でリンスした後、蒸気洗浄して乾燥する。乾燥性は蒸気洗浄して引上げてから30秒間室温で放置した後、20本のガラスファイバーの状態を目視により評価し、試料洗浄剤の乾燥性を判定した。
【0185】
評価基準は以下の基準による。
○:20本のガラスファイバーが容易にバラける。
×:20本のガラスファイバーが塊となったままバラけない。
・試験条件
リンス剤:洗浄剤を加熱して得られる蒸気の凝縮液
洗浄槽:2分間沸騰洗浄
リンス槽:2分間浸漬揺動(20回/分、)
蒸気ゾーン:洗浄剤を加熱して得られる蒸気内に1分間静置
<実施例48〜55>
表8に記載の組成で各成分を混合し、目的とする部分共沸性を有する洗浄剤を得た。各洗浄剤について、上記(8)乾燥性試験を行ない、結果を表8にまとめた。成分(A1)2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)と成分(A2)分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物と成分(B)20℃における蒸気圧が1.33×10Pa未満の化合物とを併用することにより、洗浄後20本のガラスファイバーが容易にバラけ、優れた乾燥性を有することが確認された。
【0186】
<比較例14〜17>
表8に記載の成分からなる、非部分共沸性組成物について実施例48〜55と同じ自己消火性試験を行なった。結果を表8にまとめた。成分(A2)分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物で沸点55℃のHFCあるいは沸点61℃のHFEと(B)20℃における蒸気圧が1.33×10Pa未満の化合物とを併用した場合には、洗浄後20本のガラスファイバーが塊となったままバラけず、乾燥性に劣ることが確認された。
【0187】
(9)リンス性試験
30メッシュのステンレス金網(0.01×0.02m)に金属加工油(商品名ユニカットテラミAM30、新日本石油(株)製)を含浸させ、100℃で30分間加熱して試験片を作成した。15%上記加工油を混入させた下記洗浄剤組成物の入った冷却管付きガラス製蒸気洗浄機をホットプレート上で加熱し、先の試験片を加工油入り洗浄剤組成物中に浸漬することで、沸騰洗浄を行った。ついで、試験片を、各試料リンス剤を使用し室温でリンスした後、乾燥した。乾燥後の試験片に残存した加工油量を油分測定装置(OIL−20、セントラル科学(株)製)を使用し測定し、得られた測定値を以下の基準にて評価することによりリンス性を判定した。
【0188】
洗浄剤組成:
<1>HFC365mfc
<2>HFE7100
<3>3−メトキシ−3−メチルブタノール
<4>3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート
組成
<1>/<2>/<3>/<4>
=45.0/5.0/20.0/30.0質量%
評価は以下の基準による。
○:残存加工油量5μg/cm以下
×:残存加工油量5μg/cmを超える。
【0189】
<実施例56〜57>
表9に記載の組成で各成分を混合し、目的とする試料リンス剤を得た。各試料リンス剤について、上記(9)リンス性試験を行ない、結果を表9にまとめた。成分(A1)として2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)、成分(A2)として分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物から選ばれる一種または二種以上の化合物、および成分(B)20℃における蒸気圧が1.33×10Pa未満の化合物を少量併用することによりリンス性に優れたリンス剤が得られた。
【0190】
<比較例18〜20>
表9に記載の溶剤について実施例56、57と同じ試験を行なった。結果を表9にまとめた。2H,3H−パーフルオロペンタン、メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物(HFE7100)、2H,3H−パーフルオロペンタンと20℃における蒸気圧が1.33×10Pa未満の化合物を少量併用したものではリンス性は不十分であった。
【0191】
(10)仕上げ洗浄性試験
試験片(SUS304、2×13×80mm)に、マジックインキを塗布し30分放置した後、試料仕上げ洗浄剤を含浸させた綿棒で、10回拭き取り洗浄後、3分室温放置した。放置後の試験片の状態を目視により評価し、試料仕上げ洗浄剤の仕上げ洗浄性、乾燥性を判定した。
【0192】
評価基準は以下の基準による。
仕上げ洗浄性
○:拭き取り箇所、ほとんどインキ残りなし
×:拭き取り箇所、明らかにインキ残りあり
乾燥性
○:試験片上に液残りなし
×:試験片上に液残りあり
<実施例58〜61>
表10に記載の組成で各成分を混合し、目的とする仕上げ洗浄剤を得た。各洗浄剤について、上記(10)仕上げ洗浄性試験を行ない、結果を表10にまとめた。成分(A1)2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)と成分(A2)分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物から選ばれる一種または二種以上の化合物と成分(B)20℃における蒸気圧が1.33×10Pa未満の化合物を若干量併用することにより仕上げ洗浄性、乾燥性に優れた洗浄剤が得られた。
【0193】
<比較例21〜22>
表10に記載の溶剤について実施例58〜61と同じ試験を行なった。結果を表10にまとめた。2H,3H−パーフルオロペンタン(HFC43−10mee)、メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルとの混合物(HFE7100)では仕上げ洗浄性が不十分であった。
【0194】
【表1】

【0195】
【表2】

【0196】
【表3】

【0197】
【表4】

【0198】
【表5】

【0199】
【表6】

【0200】
【表7】

【0201】
【表8】

【0202】
【表9】

【0203】
【表10】

【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明は、精密機械部品、光学機械部品等の加工時に使用される種々の加工油類やグリース類やワックス類、電気電子部品のハンダ付け時に使用されるフラックス類、基板製造時に使用されるスクリーンに付着したインキやペースト類および樹脂吐出装置のミキシング部に付着した樹脂類を洗浄するのに好適な洗浄剤、リンス剤とその洗浄剤及びリンス剤使用する洗浄方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃における蒸気圧が、式(1)で定義される基準蒸気圧Poよりも大きい揮発成分(A)の少なくとも2種、20℃における蒸気圧がPoよりも小さい不揮発成分(B)の少なくとも1種からなり、その常圧下での沸点における気相と液相の成分組成が式(3)および(4)の関係をみたす部分共沸組成物。
Po=Pav/5 (1)(式中、Pavは、式(2)で定義される成分平均蒸気圧)
Pav=(ΣPai+ΣPbj)/(na+nb) (2)
(式中、Paiは、組成物中の各揮発成分(Ai)の20℃における蒸気圧、Pbjは各不揮発成分(Bj)の20℃における蒸気圧、naは、組成物中の揮発成分(A)の数、nbは組成物中の不揮発成分(B)の数であり、各々2≦na、1≦nbを満たす整数であり、iおよびjは、各々1≦i≦na、1≦j≦nbを満たす整数である。)。
(ΣBvj/ΣBoj)≦0.1 (3)
(式中、Bvjは、気相における各不揮発成分(Bj)の重量割合、Bojは、部分共沸組成物中の各不揮発成分(Bj)の重量割合で、jは式(2)に同じである。)。
−0.1≦(Avi/ΣAvi)−(Aoi/ΣAoi)≦0.1 (4)
(Aviは、気相における各揮発成分(Ai)の重量割合、Aoiは部分共沸組成物中の各揮発成分(Ai)の重量割合、iは式(2)に同じである。)
【請求項2】
式(5)の関係をみたす請求項1の部分共沸組成物。
0.0001≦(ΣBvj/ΣBoj)≦0.1 (5)
(式中、Boj、Bvj、jは式(3)、(4)に同じである。)
【請求項3】
一部が気化し、その気相が残部の液相表面を覆っている請求項1、2いずれかの部分共沸組成物。
【請求項4】
組成物中のすべての揮発成分(A1〜Ana)の20℃における蒸気圧が1.33×10Pa以上の化合物であり、すべての不揮発成分(B1〜Bnb)の20℃における蒸気圧が1.33×10Pa未満の化合物である請求項1〜3いずれかの部分共沸組成物。
【請求項5】
揮発成分(A)が、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類、アルコール類、エステル類、ケトン類から選ばれる化合物からなる、請求項1〜4いずれかの部分共沸組成物。
【請求項6】
揮発成分(A)が、ハロゲン化炭化水素類から選ばれる2種以上の化合物からなる請求項5の部分共沸組成物。
【請求項7】
ハロゲン化炭化水素類が、非塩素系フッ素化合物である請求項6の部分共沸組成物。
【請求項8】
揮発成分(A)が、2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)(A1)と、揮発成分分子内におけるフッ素原子数の水素原子数に対する比が2以上の非塩素系フッ素化合物から選ばれる一種または二種以上の化合物(A2)からなる請求項7の部分共沸組成物。
【請求項9】
不揮発成分(B)が、炭化水素類、アルコール類、ケトン類から選ばれる化合物からなる請求項1〜8いずれかの部分共沸組成物。
【請求項10】
不揮発成分(B)が、エーテル結合及び/またはエステル結合を有する有機化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物からなる請求項1〜9いずれかの部分共沸組成物。
【請求項11】
不揮発成分(B)が、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類およびヒドロキシカルボン酸エステル類からなる群から選ばれる一種または二種以上の化合物からなる請求項10の部分共沸組成物。
【請求項12】
不揮発成分(B)が、グリコールエーテル類から選ばれる一種以上の化合物とグリコールエーテルアセテート類およびヒドロキシカルボン酸エステル類からなる群から選ばれる一種以上の化合物からなる請求項11の部分共沸組成物。
【請求項13】
不揮発成分(B)が、下記一般式(6)、(7)、(8)、(9)で示される化合物よりなる群から選ばれる一種または二種以上の化合物からなる請求項11の部分共沸組成物。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、またはシクロアルキル基、R、R、Rは水素またはメチル基、nは0または1の整数を表す。)
【化2】

(式中、Rは炭素数4〜6のアルキル基、アルケニル基、またはシクロアルキル基、R、R、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数3〜6のアルキル基、アルケニル基またはシクロアルキル基、nは0または1の整数を表す。)
【化3】

(式中、R10は炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基又はシクロアルキル基、R11、R12、R13は水素またはメチル基、nは0〜1の整数、mは1〜4の整数を示す)
【化4】

(式中、R14は炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基又はシクロアルキル基を示す。)
【請求項14】
不揮発成分(B)が、グリコールエーテルモノアルキルエーテル類から選ばれる一種以上の化合物(B1)とグリコールエーテルジアルキルエーテル類から選ばれる一種以上の化合物(B2)からなる請求項11の部分共沸組成物。
【請求項15】
成分(B1)が、親水性化合物であり、成分(B2)が疎水性化合物である請求項14の部分共沸組成物。
【請求項16】
成分(B1)が、疎水性化合物であり、成分(B2)が親水性化合物である請求項14の部分共沸組成物。
【請求項17】
成分(B1)および成分(B2)がともに親水性化合物である請求項14の部分共沸組成物。
【請求項18】
成分(B1)および成分(B2)がともに疎水性化合物である請求項14の部分共沸組成物。
【請求項19】
成分(B1)が、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルから選ばれる一種または二種以上の化合物を含む請求項14の部分共沸組成物。
【請求項20】
成分(B2)が、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルから選ばれる一種または二種以上の化合物を含む請求項14の部分共沸組成物。
【請求項21】
不揮発成分(B)が、グリコールエーテルモノアルキルエーテル類から選ばれる一種以上の化合物(B1)とグリコールエーテルアセテート類から選ばれる一種以上の化合物(B3)を含む請求項11、14いずれかの部分共沸組成物。
【請求項22】
引火点のないことを特徴とする請求項1〜21いずれかの部分共沸組成物。
【請求項23】
自己消火性に優れることを特徴とする請求項1〜22いずれかの部分共沸組成物。
【請求項24】
請求項1〜23いずれかの部分共沸組成物からなる洗浄剤。
【請求項25】
請求項1〜23いずれかの部分共沸組成物を加熱して発生させた蒸気の凝縮液。
【請求項26】
請求項25の凝縮液と同一組成のリンス剤。
【請求項27】
請求項25の凝縮液と同一組成の洗浄剤の補充剤。
【請求項28】
請求項24の洗浄剤と請求項26のリンス剤を用いる洗浄方法。
【請求項29】
請求項24の洗浄剤と請求項27の洗浄剤の補充剤を用いる洗浄方法。
【請求項30】
請求項24の洗浄剤と請求項26のリンス剤と請求項27の洗浄剤の補充剤を用いる洗浄方法。
【請求項31】
請求項25の凝縮液と同一組成の仕上げ洗浄剤。
【請求項32】
2H,2H,4H,4H,4H−パーフルオロブタン(HFC365mfc)(成分A1)、分子内におけるフッ素原子/水素原子の数量比が2以上の非塩素系フッ素化合物から選ばれる一種または二種以上の化合物(成分A2)、20℃における蒸気圧が1.33×10Pa未満の化合物(成分B)を含有し、その含有量が(A1)+(A2)/(B)=80/20〜99.9/0.1重量%である組成物。
【請求項33】
請求項32の組成物からなるリンス剤。
【請求項34】
請求項32の組成物からなる洗浄剤の補充剤。
【請求項35】
請求項32の組成物からなる仕上げ洗浄剤。

【図1】
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【図2】
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【国際公開番号】WO2005/033257
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514462(P2005−514462)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014485
【国際出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】