説明

部品ユニットの取付構造及び取付方法

【課題】本発明は、部品ユニットを車体フレームにブラケットを介して取付ける部品ユニットの取付構造及び取付方法において、作業者が車体フレームの取付位置を視認できなくても、確実にブラケットの切欠きを車体フレームの締結ボルトに差し込むことができ、作業者の負担を軽減して作業性を向上できる部品ユニットの取付構造及び取付方法を提供することを目的とする。
【解決手段】取付ブラケット6の載置部64をフロントサイドフレーム4の上面41に当接させた状態で、取付ブラケット6を車両後方側にスライド移動させる。そうすると、取付ブラケット6の固定部65も後方に移動して、固定部65の下部切欠部70とフロントサイドフレーム4の下部ボルト12が略一致する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の部品ユニットの取付構造及び取付方法に関し、特に、重量を有する部品ユニットを、ブラケットを介して車体フレームに取付ける部品ユニットの取付構造及び取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンルーム内の車体フレームにブラケットを介して部品ユニットを取付けることが知られている。例えば、下記特許文献1では、ABSアクチュエータを、ブラケットを介して車体フレームに取付ける構造が開示されている。
【0003】
この特許文献1では、サスタワー及びホイールエプロン近傍の車体フレームに、ABSアクチュエータを取付ける作業性を向上するため、予め車体フレームにボルトを仮組みしておき、その仮組みしたボルトに対して、ブラケットに設けた「切欠き」を差し込むことで、ABSアクチュエータとブラケットを車体フレームに仮預けして、その後、仮組みしたボルトを本締め固定することで、ABSアクチュエータを車体フレームに取付ける取付構造が開示されている。
【特許文献1】特開2002−211375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確かに、前述の特許文献1のように、ブラケットに切欠きを設け、この切欠きを利用して、部品ユニットを車体フレームに仮預けすれば、部品ユニットの取付け作業性は向上する。
【0005】
しかし、こうした仮預けの方法によって取付けを行うには、ブラケットの切欠きを、確実に、車体フレームのボルトに差し込む必要があり、例えば、サスタワーやホイールエプロンがエンジンルーム内方側に大きく張り出している場合には、フロントフェンダー側方に立つ作業者が車体フレームの取付部分を視認することができず、「切欠き」をボルトに差し込むことが困難になるといった問題がある。
【0006】
特に、部品ユニットが重たい場合に、こうした差し込み作業を何度も繰り返えすことになれば、作業者に多大な負担を課すことになり、作業効率が悪化するという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、部品ユニットを車体フレームにブラケットを介して取付ける部品ユニットの取付構造及び取付方法において、作業者が車体フレームの取付位置を視認できなくても、確実にブラケットの切欠きを車体フレームの締結ボルトに差し込むことができ、作業者の負担を軽減して作業性を向上できる部品ユニットの取付構造及び取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の部品ユニットの取付構造は、部品ユニットを車体フレームにブラケットを介して取付ける部品ユニットの取付構造であって、前記ブラケットが、部品ユニットを取付ける取付部と、該取付部の下方に前記車体フレーム上面に沿うように形成した載置部と、該載置部から車体フレーム側面に沿って下方に延びる固定部とを備え、該固定部には、車体フレーム側面に仮組みしたボルトに係合させることで前記部品ユニットを車体フレームに仮預けする切欠部を形成したものである。
【0009】
上記構成によれば、ブラケットの載置部を車体フレーム上面に載置することで、ブラケットの車体フレームに対する相対的な上下方向の位置関係が規定される。これにより、車体フレーム側面のボルトとブラケットの切欠部の位置を略一致させることができる。
このため、作業者は、車体フレームの取付位置を目視することなく、ブラケットを車体フレーム上面に載置するだけで、切欠部をボルトに差し込むことができる。
なお、部品ユニットは、特に限定されるものではないが、例えば、DSC(ダイナミック・スタビリティー・コントロール)装置の油圧ユニット等の重たいユニットが考えられる。
また、車体フレームもフロントサイドフレームやリアサイドフレーム、クロスメンバー等が考えられる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、前記固定部の切欠部に近接した位置に、第二のボルトによって車体フレーム側面に締結固定される固定穴を形成したものである。
上記構成によれば、切欠部に近接した位置に固定穴を形成したことで、ブラケットを、切欠部だけでなく固定穴でも車体フレーム側面に締結固定することになる。
このため、切欠部を設けることでブラケットの締結強度が低下しても、固定穴を設けたことでブラケットの締結強度を高めることができ、部品ユニットが重たい場合であっても、確実に部品ユニットを車体フレームに取付けておくことができる。
よって、ブラケットの取付け作業性を向上しつつも、ブラケットの取付剛性を高めることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、前記固定穴を上部に、前記切欠部を下部に形成したものである。
上記構成によれば、固定穴を上部に形成し、切欠部を下部に形成することで、固定部の下部を切欠いて切欠部を形成できる。
このため、ブラケットの固定部の中央位置を切欠かなくてもよいため、固定部の剛性をできるだけ落とすことなく切欠部を形成できる。また、切欠部の形状を比較的自由にできるため、ボルトの誘い込み範囲(角度)を広くすることもでき、より仮預けをしやすい切欠部にすることができる。
よって、ブラケットの固定部の剛性を落とすことなく、また、切欠部の機能をより高めることができ、ブラケットの取付け作業性を向上できる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、前記切欠部に部品ユニットの仮預け状態を保持するボルト嵌り込み部を形成したものである。
上記構成によれば、仮預けの際に、ボルト嵌り込み部にボルトを嵌め込むことで、部品ユニットの仮預け状態を確実に保持できる。
このため、作業者が部品ユニットから手を離しても、部品ユニットが仮預け状態を維持することができ、その後の取付け作業を容易に行うことができる。
よって、取付け作業性を向上することができ、より確実に部品ユニットの取付け作業を行うことができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、前記載置部を車体フレームの下向き傾斜面に沿うように傾斜状に形成して、前記切欠部に該載置部の傾斜角よりも緩やかに傾斜したボルト案内部を形成したものである。
上記構成によれば、載置部を車体フレームの傾斜面に沿って下方にスライドさせると、その傾斜角よりも緩やかに傾斜したボルト案内部にボルトが確実に引っ掛かり、切欠部内にボルトが案内される。
このため、ブラケットを車体フレームの傾斜面に沿って下方にスライド移動させるだけで、確実に、仮組みしたボルトに切欠部を係合させることができる。
よって、部品ユニットの仮預け作業を容易に行うことができ、特に重たい部品ユニットの場合には、下方にスライド移動させるだけで係合させることができるため、作業者の負担を軽減することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記部品ユニットの上部を、車体側の支持部に連結し、該支持部と前記ブラケットによって部品ユニットを車体に固定したものである。
上記構成によれば、部品ユニットは、ブラケットだけでなく、上部の車体側の支持部によっても、車体に取付けられる。
よって、部品ユニットは上下位置で車体に固定されるため、重たい部品ユニットであっても、確実に車体に固定できる。
【0015】
この発明の部品ユニットの取付方法は、車体フレーム側面にボルトを仮組みする仮組みステップと、部品ユニットを取付けたブラケットを、車体フレーム上面に沿ってスライドさせるスライド案内ステップと、前記車体フレーム側面のボルトに、ブラケットの切欠部を係合させる仮預けステップと、前記ボルトを本締めして、ブラケットを車体フレームに固定する固定ステップとを備える取付方法である。
上記構成によれば、仮預けステップの前に、スライド案内ステップを設定することで、ブラケットを、車体フレーム上面でスライド移動させるだけで、ブラケットの上下位置を定めることができる。よって、ブラケットの切欠部を車体フレーム側面のボルトに容易に案内することができる。
このため、作業者は、取付位置を目視しなくても、車体フレームのボルトにブラケットの切欠部を差し込むことが可能となり、容易に部品ユニットを仮預けすることができる。
よって、作業者が車体フレームの取付位置を視認できなくても、確実にブラケットの切欠きを車体フレームの締結ボルトに差し込むことができ、作業者の負担を軽減して作業性を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、作業者は、車体フレームの取付位置を目視することなく、ブラケットを車体フレーム上面に載置するだけで、切欠部をボルトに差し込むことができる。
よって、部品ユニットを車体フレームにブラケットを介して取付ける部品ユニットの取付構造及び取付方法において、作業者が車体フレームの取付位置を視認できなくても、確実にブラケットの切欠きを車体フレームの締結ボルトに差し込むことができ、作業者の負担を軽減して作業性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について、以下、図面に基づいて詳述する。
図1は、第一実施形態の部品ユニットの取付構造が採用された自動車の前部のエンジンルームEの全体斜視図である。
【0018】
この斜視図に示すように、自動車前部のエンジンルームEは、その後壁を構成するダッシュパネル1と、側壁を構成するホイールエプロン2とサスタワー3とによって区画されており、その内部には図示しないエンジン等を設置している。
【0019】
また、ホイールエプロン2、サスタワー3の下部内方には、車両前後方向に延びるフロントサイドフレーム4を設置して、その後端4aがダッシュパネル1下側に潜り込むように、後下がりに傾斜するように設置している。
【0020】
前述のホイールエプロン2は、エンジンルームE内方側に張り出すように形成しており、また前述のサスタワー3もエンジンルームE内方側に大きく張り出すように形成している。
【0021】
また、前述のフロントサイドフレーム4は、略水平方向に延びる前部水平部4Aと、後下がりに傾斜して延びる後部傾斜部4Bとを備えており、共に横方向に延びる上面41と、縦方向に延びる側面42とを有する閉断面構造で構成している。
【0022】
このうち、フロントサイドフレーム4の後部傾斜部4Bには、DSC(ダイナミック・スタビリティー・コントロール)装置の油圧ユニット5を取付ブラケット6を介して取付けている。
【0023】
このDSC装置とは、ABSとトラクションコントロールの機能を統合して、四輪それぞれの制動力と駆動力をコントロールすることで自動車の横滑りを抑制する装置であり、この油圧ユニット5では、各車輪のブレーキ装置(図示せず)のブレーキ油圧等を制御している。
【0024】
油圧ユニット5は、下部を取付ブラケット6に取付け固定して、上部に車幅方向に延びる金属製のブレーキパイプ7,7を設けている。この油圧ユニット5は、内部に油圧機構を設けているため、比較的重量を有する(約5〜10kg)ユニットとなっている。
【0025】
ブレーキパイプ7,7は、前述のダッシュパネル1前面の取付けた二つのクリップ部材8,8を介して、ダッシュパネル1に取付けている。
【0026】
また、取付ブラケット6は、前述のフロントサイドフレーム4の側面42に上下二本のボルト11,12によって締結固定している。
【0027】
この取付ブラケット6の具体構造について、図2の単品斜視図によって説明する。
取付ブラケット6は、一つの金属製のプレス成形品によって構成しており、上部には、略水平に車幅方向に延びて油圧ユニット5の取付穴61,61を形成したユニット取付部62と、ユニット取付部62の一端から鉛直に下方に延びる立ち上がり部63と、立ち上り部63の下端から車幅方向に延びて後下がりに傾斜する棚状の載置部64と、載置部64の他端から下方に垂直方向に延びてフロントサイドフレーム4に固定される固定部65と、を備える。
【0028】
このうち、固定部65の下部には、車幅方向外方側に突出して上下方向に延びる締結部66を形成している。この締結部66の上部には上部固定穴67を穿設して、締結部66の下部には下部切欠部70を形成している。
【0029】
前述のユニット取付部62の取付穴61,61には、油圧ユニット5側(上方)から鉛直方向に延びる二本のボルト51,51を差し込むことで、油圧ユニット5を締結固定している。
【0030】
一方、固定部65の上部固定穴67と下部切欠部70には、車幅方向内方側から水平方向に延びる二本のボルト(上部ボルト11と下部ボルト12)を差し込むことで、取付ブラケット6をフロントサイドフレーム4に締結固定するように構成している。
【0031】
この上部固定穴67と下部切欠部70について、図3の詳細図によって、さらに説明する。
締結部66に設けた上部固定穴67は、略円形に穿設したボルトの挿通穴であり、この上部固定穴67に上部ボルト11を横方向から挿通して、フロントサイドフレーム4の側面42(内部ウェルドナット)に螺合することで、取付ブラケット6を締結固定するように構成している。
【0032】
この上部固定穴67は、後述するように、取付ブラケット6を仮預けした状態でフロントサイドフレーム4の側面42に締結固定される。
【0033】
一方、下部切欠部70は、下部ボルト12が嵌り込む略半円状の嵌り込み部71と、後部から下部にかけて略扇子状に広がる案内開口部72とを有している。また、嵌り込み部71と案内開口部72の上辺72aとの間には、下方に突出した角部73を形成している。この角部73を形成することで、下部ボルト12を嵌り込み部71に案内するときに、「カタッ」とした節度が発生するようにしている。
【0034】
また、案内開口部72の上辺72aの傾斜角度αは、載置部64の傾斜角度βよりも緩やか(水平方向側)に設定している。これは、後述するように、取付ブラケット6をスライド移動させる際に、下部切欠部70に下部ボルト12を係合しやすくするためである。
【0035】
次に、この取付ブラケット6による油圧ユニット5のフロントサイドフレーム4への取り付け方法について、図4の取付作業のフローチャートと、図5〜図7の各作業ステップ時の取付状態を示した斜視図を使って説明する。
【0036】
本実施形態の自動車では、前述のようにサスタワー3やホイールエプロン2がエンジンルームE内方側に大きく張り出していることから、フロントフェンダー(図示せず)側方に立って作業を行なう作業者からは、油圧ユニット5の取付位置を直接目視することが困難である。また、前述したように油圧ユニット5が重量を有するため、この油圧ユニット5をエンジンルームE内に持ち込んでフロントサイドフレーム4に仮預けする際に、何度も仮預け位置へアプローチを行なうことになると、作業者に過大な負担を課すことになる。
【0037】
そこで、本実施形態では、以下の取付作業フローにより、こうした取付作業時の問題を解消している。
【0038】
まず、作業者は、S1に示すように、フロントサイドフレーム4の側面42に下部ボルト12を仮組み固定する。この状態を示した図が図5である。
図5のように、フロントサイドフレーム4の側面42には、後部傾斜部4Bの中央位置に車幅方向に傾斜した取付面43を形成している。この取付面43は、フロントサイドフレーム4の車両内方側への傾斜に対して、取付ブラケット6を取付けた状態で車幅方向へ向くようにするため、こうした傾斜角度を持つように形成している。この取付面43に形成した下部取付穴44(内部ウェルドナット)に対して、下部ボルト12のネジ部12aの一部を螺合固定することで、下部ボルト12をフロントサイドフレーム4の側面42に仮組み固定している。
【0039】
次に、作業者は、S2に示すように、油圧ユニット5を取付けた取付ブラケット6をフロントサイドフレーム4に載置する。この載置作業は、取付ブラケット6の載置部64をフロントサイドフレーム4の前部水平部4Aの上面41(図1参照)に載置することで行なう。この作業は、作業者が直接フロントサイドフレーム4を目視しなくても、大凡の感覚によって行なうことができる。
【0040】
その後、作業者は、S3に示すように、取付ブラケット6をフロントサイドフレーム4の後部傾斜部4Bに沿って後方側下方にスライド移動させる。この状態を示した図が図6である。
図6に示すように、取付ブラケット6の載置部64の下面64aをフロントサイドフレーム4の上面41に当接させた状態で、取付ブラケット6を車両後方側にスライド移動させる。そうすると、取付ブラケット6の固定部65も後方に移動して、固定部65の下部切欠部70とフロントサイドフレーム4の下部ボルト12が近接することになる。
【0041】
すなわち、下部ボルト12は、フロントサイドフレーム4の側面42の一定位置に仮組みされていることから、取付ブラケット6の上下方向位置がフロントサイドフレーム4の上面41を基準として定まると、下部ボルト12と下部切欠部70の位置がほぼ一致するのである。
【0042】
また、前述したように、下部切欠部70の案内開口部72の上辺72a(図3参照)が、載置部64の傾斜角度βより緩やかに傾斜(傾斜角度α)しているため、取付ブラケット6を後方へスライド移動させることで、徐々に下部ボルト12に係合することになり、製品誤差等で多少上下位置がズレていても、その誤差を吸収して、下部切欠部70の嵌り込み部71に下部ボルト12を案内することができる。
【0043】
さらに、フロントサイドフレーム4の上面41が、後部傾斜部4Bで後下がりに傾斜しているため、作業者は、油圧ユニット5が重たくても、比較的容易にスライド移動させることができる。
【0044】
次いで、作業者は、S4に示すように、取付ブラケット6の下部切欠部70を下部ボルト12に係合させて仮預けを行なう。具体的には、下部切欠部70の嵌り込み部71に下部ボルト12のネジ部12aを嵌め込んで、取付ブラケット6をフロントサイドフレーム4に仮預けすることで行なう。
【0045】
ここで、前述のように、角部73で嵌り込み部71を開口案内部72から区画しているため、下部ボルト12が角部73を乗り越えて再度開口案内部72に戻らないようになっている。これにより、作業者が油圧ユニット5から手を離しても、容易に倒れるのを防止している。
【0046】
また、取付面43の後方位置に略凹状の谷面45(図5参照)を形成して、それに対応して取付ブラケット6の固定部65にも縦壁部68(図6参照)を形成していることから、この谷面45でも取付ブラケット6からの荷重を受けることができ、仮預けの際の油圧ユニット5の倒れを確実に防止できる。
【0047】
次に、作業者は、S5に示すように、上部ボルト11で取付ブラケット6を締結固定する。具体的には、上部ボルト11を上部固定穴67に挿通してフロントサイドフレーム4の側面42(内部ウェルドナット)に締結固定することによって行なう。これにより、取付ブラケット6が確実にフロントサイドフレーム4に締結固定されることになる。
【0048】
そして次に、作業者は、S6に示すように、下部ボルト12をフロントサイドフレーム4に本締結することで、取付ブラケット6を固定する。この状態を示した図が図7である。
図7に示すように、取付ブラケット6は、フロントサイドフレーム4の側面42に上下二つのボルト11,12によって締結固定されている。このように二つのボルト11,12で締結固定されることで、取付ブラケット6は、下部切欠部70を設けて締結強度が低下しても、締結強度を十分に確保することができ、重量を有する油圧ユニット5であっても、確実にフロントサイドフレーム4に取付けておくことができる。
【0049】
最後に、作業者は、S7に示すように、油圧ユニット5の上部に設けたブレーキパイプ7,7をダッシュパネル1のクリップ部材8,8へ固定する。この固定は、クリップ部材8,8に対してブレーキパイプ7,7を押し込むことにより行なう。
【0050】
このブレーキパイプ7,7の固定により、油圧ユニット5を間接的に上部においても車体側部材で固定することになるため、重たい油圧ユニット5を上下位置で車体に取付けることになり、油圧ユニット5の支持剛性をさらに高めることができる。
【0051】
以上の取付作業ステップを経ることにより、本実施形態では、前述した取付作業時の問題を解消して、油圧ユニット5の取付作業性を向上している。
【0052】
次に、本実施形態の作用効果について、詳述する。
この実施形態の油圧ユニット5の取付構造は、油圧ユニット5をフロントサイドフレーム4に取付ブラケット6を介して取付ける油圧ユニット5の取付構造であって、取付ブラケット6が、油圧ユニット5を取付けるユニット取付部62と、そのユニット取付部62の下方でフロントサイドフレーム4の上面41に沿うように形成した載置部64と、その載置部64からフロントサイドフレーム4の側面42に沿って下方に延びる固定部65とを備えており、この固定部65には、フロントサイドフレーム4の側面42に仮組みした下部ボルト12に係合させることで油圧ユニット5をフロントサイドフレーム4に仮預けする下部切欠部70を形成している。
【0053】
これにより、取付ブラケット6の載置部64を、フロントサイドフレーム4の上面41に載置することで、取付ブラケット6のフロントサイドフレーム4に対する相対的な上下方向の位置関係が規定される。よって、下部ボルト12と取付ブラケット6の下部切欠部70の位置を略一致させることができる。
このため、作業者は、フロントサイドフレーム4の取付位置を目視することなく、取付ブラケット6をフロントサイドフレーム4の上面41に載置するだけで、下部切欠部70を下部ボルト12に差し込むことができる。
よって、油圧ユニット5をフロントサイドフレーム4に取付ブラケット6を介して取付ける油圧ユニット5の取付構造において、作業者がフロントサイドフレーム4の取付位置を視認できなくても、確実に取付ブラケット6の下部切欠部70を上部ボルト11に差し込むことができ、作業者の負担を軽減して作業性を向上できる。
【0054】
なお、本実施形態では、DSC装置の油圧ユニット5の取付構造で発明を実施しているが、必ずしも、部品ユニットはこの油圧ユニット5に限定されるものではなく、例えば、ABS装置やTRC装置、さらには、エンジンやミッションの制御装置、ハイブリッド車の制御装置等の部品ユニットであってもよい。
【0055】
また、部品ユニットを取り付ける車体フレームについても、フロントサイドフレーム4以外に、リアサイドフレーム、クロスメンバーやサブフレーム等であってもよい。
【0056】
また、この実施形態では、固定部65の下部切欠部70に近接した位置に、フロントサイドフレーム4の側面42に締結固定される上部固定穴67を形成している。
これにより、取付ブラケット6を、下部切欠部70だけでなく上部固定穴67でもフロントサイドフレーム4の側面42に締結固定することになる。
このため、下部切欠部70を設けることで取付ブラケット6の締結強度が低下しても、上部固定穴67を設けたことで取付ブラケット6の締結強度を高めることができ、油圧ユニット5が重たくても、確実に油圧ユニット5をフロントサイドフレーム4に取付けておくことができる。
よって、取付ブラケット6の取付け作業性を向上しつつも、取付ブラケット6の取付剛性を高めることができる。
【0057】
また、この実施形態では、上部固定穴67を上部に、下部切欠部70を下部に形成している。
これにより、取付ブラケット6の固定部65の中央位置を切欠かなくてもよいため、固定部65の剛性をできるだけ落とすことなく、下部切欠部70を形成できる。また、下部切欠部70の形状を比較的自由にできるため、案内開口部72を広く形成することもでき、下部ボルト12の誘い込み範囲(角度γ、図3参照)を広くすることができる。このため、より仮預けをしやすい下部切欠部70にすることができる。
よって、取付ブラケット6の固定部65の剛性を落とすことなく、また、下部切欠部70の機能をより高めることができ、取付ブラケット6の取付け作業性を向上できる。
【0058】
また、この実施形態では、下部切欠部70に油圧ユニット5の仮預け状態を保持する嵌り込み部71を形成している。
これにより、仮預けの際に、取付ブラケット6が油圧ユニット5の仮預け状態を確実に保持できる。
このため、作業者が油圧ユニット5から手を離しても、油圧ユニット5が仮預け状態を維持することができ、その後の取付け作業を容易に行うことができる。
よって、取付け作業性を向上することができ、より確実に油圧ユニット5の取付け作業を行うことができる。
【0059】
また、この実施形態では、載置部64をフロントサイドフレーム4の後下がりの傾斜面(上面41)に沿うように傾斜状に形成して、下部切欠部70にその載置部64の傾斜角度βよりも緩やかに傾斜(傾斜角度α)した開口案内部72上辺72aを形成している。
これにより、載置部64をフロントサイドフレーム4に沿って後方にスライド移動させると、開口案内部72の上辺72aに下部ボルト12が確実に引っ掛かり、下部切欠部70内に下部ボルト12が案内されることになる。
このため、取付ブラケット6を、フロントサイドフレーム4に沿って後側下方にスライド移動させるだけで、確実に、仮組みした下部ボルト12に下部切欠部70を係合させることができる。
よって、油圧ユニット5の仮預け作業を容易に行うことができ、特に重たい油圧ユニット5の場合に、傾斜を利用して下方にスライド移動させるだけで係合させることができるため、作業者の負担を軽減することができる。
【0060】
また、この実施形態では、油圧ユニット5の上部を、ブレーキパイプ7,7と、クリップ部材8,8を介してダッシュパネル1に連結している。
これにより、油圧ユニット5は、下部の取付ブラケット6だけでなく、上部のブレーキパイプ7,7、クリップ部材8,8を介しても、車体に取付けられる。
よって、油圧ユニット5は、上下位置で車体に固定されるため、重たい油圧ユニット5であっても、確実に車体に固定できる。
【0061】
また、この実施形態の油圧ユニット5の取付方法は、フロントサイドフレーム4の側面42に下部ボルト12を仮組みするステップ(S1)と、油圧ユニット5を取付けた取付ブラケット6を、フロントサイドフレーム4の上面41に沿ってスライド移動させるステップ(S3)と、フロントサイドフレーム4の側面42の下部ボルト12に、取付ブラケット6の下部切欠部70を係合させるステップ(S4)と、下部ボルト12を本締めして、取付ブラケット6をフロントサイドフレーム4に固定するステップ(S6)とを備えている。
【0062】
これにより、仮預けをする前に、取付ブラケット6をスライド案内するステップを設定することで、取付ブラケット6をフロントサイドフレーム4の上面をスライド移動させるだけで、取付ブラケット6の上下位置を定めることができる。よって、取付ブラケット6の下部切欠部70をフロントサイドフレーム4の側面42の下部ボルト12に容易に案内することができる。
このため、作業者は、取付位置を目視しなくても、フロントサイドフレーム4の下部ボルト12に取付ブラケット6の下部切欠部70を差し込むことが可能となり、容易に油圧ユニット5を仮預けすることができる。
よって、作業者がフロントサイドフレーム4の取付位置を視認できなくても、確実に取付ブラケット6の下部切欠部70をフロントサイドフレーム4の下部ボルト12に差し込むことができ、作業者の負担を軽減して作業性を向上できる。
【0063】
なお、こうした方法を採用した場合には、取付ブラケット6の具体構造は、この実施形態のものに限定されることはなく、例えば、単にL字形状のブラケットやT字形状のブラケット、さらには、U字形状のブラケット等であってもよい。
【0064】
次に、第二実施形態について、図8によって説明する。図8は、図2に対応する取付ブラケット106の単品斜視図である。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、その他の前提の構成要素については、第一の実施形態と同様である。
【0065】
図8に示す第二実施形態は、取付ブラケット106の載置部164に、車両前方側に延びる延出部165を形成して、この延出部165にフロントサイドフレーム4の上面41にボルト締結するボルト穴166を形成したものである。
【0066】
載置部164の延出部165にボルト穴166を形成することで、この取付ブラケット106では、フロントサイドフレーム4に対して、側面42だけでなく上面41でもボルト締結することになる。
【0067】
このため、載置部164を、フロントサイドフレーム4の上面41との間のスライド面としてだけでなく、取付ブラケット106の固定部としても利用することができる。
【0068】
よって、本実施形態によると、取付ブラケット106のフロントサイドフレーム4に対する取付強度をさらに高めることができ、重い油圧ユニット5であっても、確実にフロントサイドフレーム4に固定しておくことができる。
また、その他の作用効果については、第一実施形態と同様である。
【0069】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
発明の部品ユニットは、実施形態の油圧ユニット5に対応し、
以下、同様に、
車体フレームは、フロントサイドフレーム4に対応し、
取付部は、ユニット取付部62に対応し、
ボルトは、下部ボルト12に対応し、
切欠部は、下部切欠部70に対応し、
固定穴は、上部固定穴67に対応し、
ボルト嵌り込み部は、嵌り込み部71に対応し、
ボルト案内部は、開口案内部72の上辺72aに対応し、
支持部は、クリップ部材8に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる部品ユニットの取付構造に適用する実施形態を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第一実施形態が採用された自動車前部のエンジンルームの全体斜視図。
【図2】取付ブラケットの単品斜視図。
【図3】上部固定穴と下部切欠部についての詳細図。
【図4】取付作業のフローチャート。
【図5】作業ステップ初期の取付状態を示した斜視図。
【図6】作業ステップ中期の取付状態を示した斜視図。
【図7】作業ステップ後期の取付状態を示した斜視図。
【図8】第二実施形態の取付ブラケットの単品斜視図。
【符号の説明】
【0071】
4…フロントサイドフレーム
5…油圧ユニット
6,106…取付ブラケット
11…上部ボルト
12…下部ボルト
62…ユニット取付部
64,164…載置部
65…固定部
67…上部固定穴
70…下部切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品ユニットを車体フレームにブラケットを介して取付ける部品ユニットの取付構造であって、
前記ブラケットが、部品ユニットを取付ける取付部と、
該取付部の下方に前記車体フレーム上面に沿うように形成した載置部と、
該載置部から車体フレーム側面に沿って下方に延びる固定部とを備え、
該固定部には、車体フレーム側面に仮組みしたボルトに係合させることで前記部品ユニットを車体フレームに仮預けする切欠部を形成した
部品ユニットの取付構造。
【請求項2】
前記固定部の切欠部に近接した位置に、第二のボルトによって車体フレーム側面に締結固定される固定穴を形成した
請求項1記載の部品ユニットの取付構造。
【請求項3】
前記固定穴を上部に、前記切欠部を下部に形成した
請求項2記載の部品ユニットの取付構造。
【請求項4】
前記切欠部に仮預け状態を保持するボルト嵌り込み部を形成した
請求項1〜3いずれか記載の部品ユニットの取付構造。
【請求項5】
前記載置部を車体フレームの下向き傾斜面に沿うように傾斜状に形成して、
前記切欠部に該載置部の傾斜角よりも緩やかに傾斜したボルト案内部を形成した
請求項1〜4いずれか記載の部品ユニットの取付構造。
【請求項6】
前記部品ユニットの上部を、車体側の支持部に連結し、
該支持部と前記ブラケットによって部品ユニットを車体に固定した
請求項1〜5いずれか記載の部品ユニットの取付構造。
【請求項7】
車体フレーム側面にボルトを仮組みする仮組みステップと、
部品ユニットを取付けたブラケットを、車体フレーム上面に沿ってスライドさせるスライド案内ステップと、
前記車体フレーム側面のボルトに、ブラケットの切欠部を係合させる仮預けステップと、
前記ボルトを本締めして、ブラケットを車体フレームに固定する固定ステップとを備える
部品ユニットの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−62865(P2008−62865A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245027(P2006−245027)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】