説明

部品実装装置および部品実装方法

【課題】部品実装工程においてペーストの転写不良を有効に防止することができる部品実装装置および部品実装方法を提供することを目的とする。
【解決手段】バンプ付きの部品にペーストを転写した後に基板に実装する部品実装において、ペースト転写ユニットにおけるペーストの転写動作の回数または動作累積時間のカウント値が予め転写状態確認のインターバルとして設定された規定数値に到達したならば、カメラで転写ステージを撮像して取得された画像データを認識処理して、塗膜や転写痕など転写ステージの状態の良否を判定する。これにより、部品実装工程においてペースト転写の不良を有効に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下面にバンプが形成されたバンプ付きの部品を基板に実装する部品実装装置および部品実装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フリップチップやBGAなど、下面に金属バンプが形成されたバンプ付きの部品を基板に実装する際には、フラックスや半田ペーストなどの接合補助剤(以下、単に「ペースト」と称する。)を金属バンプに供給した状態で金属バンプを基板の電極に着地させることが行われている。このためこのようなバンプ付きの部品を対象とする部品実装装置には、ペーストを転写するためのペースト転写ユニットが配置される(例えば特許文献1、2,3参照)。いずれの特許文献例においても、金属バンプに転写されるペーストを供給する方法として、転写ステージなどの平坦面上でスキージを移動させることにより、ペーストを一定の膜厚に調製された塗膜の形で供給するようにしている。
【特許文献1】特許第3289604号公報
【特許文献2】特許第3399225号公報
【特許文献3】特許第3235755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでバンプ付き部品の実装においては、金属バンプへのペーストの転写不良は金属バンプと回路電極との接合不良を招くおそれがあるため、生産過程においてはペーストの転写が常に良好に行われるよう、品質管理面での考慮が求められる。しかしながら従来技術においては、ペーストの転写状態は転写動作そのものが実行される部品実装工程における品質管理の対象とはされていなかった。このため、後工程において接合不良などの不具合が発生し原因が遡及追跡されて初めて、ペーストの転写に問題が生じていたことが事後的に判明する場合が多く、部品実装工程においてこのようなペーストの転写不良を防止してするための手法が求められていた。
【0004】
そこで本発明は、部品実装工程においてペーストの転写不良を有効に防止することができる部品実装装置および部品実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の部品実装装置は、下面にバンプが形成されたバンプ付きの部品を搭載ヘッドによって保持して基板に実装する部品実装装置であって、前記搭載ヘッドの移動経路に配設され、前記搭載ヘッドに保持された部品の前記バンプに転写により塗布されるペーストを転写ステージの塗膜形成面に形成された塗膜の形で供給するペースト転写ユニットと、前記バンプにペーストを転写する転写動作の回数または動作累積時間をカウントしてカウント値を出力する動作カウント手段と、前記転写動作後に前記塗膜形成面を撮像して取得した画像データを認識処理することにより、前記塗膜の状態およびまたは前記塗膜に前記バンプを接触させることにより生じた転写痕の良否を判定する転写状態良否判定手段と、前記カウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、前記転写状態良否判定手段による前記良否の判定を実行させる制御手段とを備えた。
【0006】
本発明の部品実装方法は、搭載ヘッドの移動経路に配設され、前記搭載ヘッドに保持された部品の前記バンプに転写により塗布されるペーストを転写ステージの塗膜形成面に形成された塗膜の形で供給するペースト転写ユニットと、前記バンプにペーストを転写する転写動作後に前記塗膜形成面を撮像して取得した画像データを認識処理することにより、
前記塗膜の状態およびまたは前記塗膜に前記バンプを接触させることにより生じた転写痕の状態の良否を判定する転写状態良否判定手段とを備えた部品実装装置によって、下面にバンプが形成されたバンプ付きの部品を前記搭載ヘッドによって保持して基板に実装する部品実装方法であって、前記転写動作の回数または動作累積時間をカウントしたカウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、前記転写状態良否判定手段による前記良否の判定を実行する。
【0007】
また本発明の部品実装装置は、下面にバンプが形成されたバンプ付きの部品を搭載ヘッドによって保持して基板に実装する部品実装装置であって、前記搭載ヘッドの移動経路に配設され、前記搭載ヘッドに保持された部品の前記バンプに転写により塗布されるペーストを転写ステージの塗膜形成面に形成された塗膜の形で供給するペースト転写ユニットと、前記バンプにペーストを転写する転写動作の回数または動作累積時間をカウントしてカウント値を出力する動作カウント手段と、前記カウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、前記塗膜の状態およびまたは前記塗膜に前記バンプを接触させることにより生じた転写痕の状態をマシンオペレータが目視確認できるように、報知部にその旨報知させるとともに前記ペースト転写ユニットにおいて前記塗膜を形成する成膜動作を停止する転写状態確認用処理を行う制御手段とを備えた。
【0008】
また本発明の部品実装方法は、搭載ヘッドの移動経路に配設され、前記搭載ヘッドに保持された部品の前記バンプに転写により塗布されるペーストを転写ステージの塗膜形成面に形成された塗膜の形で供給するペースト転写ユニットを備えた部品実装装置によって、下面にバンプが形成されたバンプ付きの部品を前記搭載ヘッドによって保持して基板に実装する部品実装方法であって、前記バンプにペーストを転写する転写動作の回数または動作累積時間をカウントしたカウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、前記塗膜の状態およびまたは前記塗膜に前記バンプを接触させることにより生じた転写痕の状態をマシンオペレータが目視確認できるように、報知部にその旨報知させるとともに前記ペースト転写ユニットにおいて前記塗膜を形成する成膜動作を停止する転写状態確認用処理を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ペースト転写ユニットにおけるペーストの塗膜形成およびバンプへの転写において、転写動作の回数または動作累積時間のカウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、塗膜形成面を撮像して取得された画像データを認識処理して塗膜の状態や転写痕の状態の良否を判定することにより、またはオペレータによる塗膜の状態や転写痕の状態の目視観察を実行することにより、部品実装工程においてペースト転写の不良を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の部品実装装置の正面図、図2は本発明の実施の形態1の部品実装装置におけるペースト転写ユニットの構造説明図、図3は本発明の実施の形態1の部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図、図4は本発明の実施の形態1の部品実装装置における表示画面を示す図、図5は本発明の実施の形態1の部品実装方法におけるペーストの転写状態良否判定のフロー図である。
【0011】
まず図1を参照して部品実装装置1の構成を説明する。部品実装装置1は下面にバンプが形成されたバンプ付きの部品を搭載ヘッドによって保持して基板に実装する機能を有するものである。図1において部品実装装置1は、部品供給部2、ペースト転写ユニット4、基板保持部9をY方向に平面配置し、これらの上方に搭載ヘッド13をヘッド移動機構12によって移動させる構成の部品搭載機構11およびカメラ移動機構16によって移動
するカメラ15を配設した構成となっている。なお本明細書では、基板保持部9における基板搬送方向(紙面と垂直方向)をX方向と定義している。
【0012】
部品供給部2には、複数のあるチップ3を規則配列で平面収納する部品トレイ2aが配置されている。チップ3は、下面に半田により形成されたバンプ3aを有するバンプ付きの部品である。部品供給部2の側方には、ペースト転写ユニット4およびチップ廃棄箱8が配設されている。ペースト転写ユニット4は転写ステージ5の上方にスキージユニット6をY方向に往復動自在に配設した構成となっており、転写ステージ5にはスキージユニット6によってペーストであるフラックス7の塗膜が形成される。
【0013】
フラックス7の塗膜が形成された転写ステージ5に対して、搭載ヘッド13に保持されたチップ3を昇降させることにより、チップ3のバンプ3aにはフラックス7が転写により塗布される。すなわち、ペースト転写ユニット4は、搭載ヘッド13の移動経路に配設され、搭載ヘッド13に保持されたチップ3のバンプ3aに転写により塗布されるフラックス7を、転写ステージ4の塗膜形成面に形成された塗膜の形成で供給する機能を有している。部品供給部2とペースト転写ユニット4との間にはチップ廃棄箱8が配置されており、ペースト転写動作においてバンプ3aにフラックス7が転写された後、基板10に実装されないまま所定時間が経過した場合には、当該チップ3はチップ廃棄箱8に投入廃棄される。
【0014】
基板保持部9はX方向に配設された搬送レール9aを備えており、上流側装置から搬送された基板10を位置決めして保持する。部品供給部2、ペースト転写ユニット4、チップ廃棄箱8、基板保持部9の上方には、搭載ヘッド13を備えた部品搭載機構11が配設されており、搭載ヘッド13はヘッド移動機構12によってX方向、Y方向に移動する。搭載ヘッド13はチップ3を吸着保持する吸着ノズル14を備えており、吸着ノズル14は、搭載ヘッド13に内蔵した昇降機構によって昇降自在となっている。
【0015】
ヘッド移動機構12による搭載ヘッド13のX方向、Y方向の水平移動と吸着ノズル14の昇降動作とを組合わせることにより、部品搭載動作が行われる。すなわち、搭載ヘッド13は吸着ノズル14によって部品供給部2からチップ3を取り出して、ペースト転写ユニット4においてバンプ3aにフラックス7を転写した後基板保持部9に移送し、位置決めされた基板10にチップ3を実装する。カメラ15は部品搭載動作における基板10を認識するための撮像を行うとともに、ペースト転写ユニット4における転写ステージ5の状態の良否判定のための撮像を行う。
【0016】
次に図2を参照して、ペースト転写ユニット4の構造を説明する。図2(b)は、図2(a)におけるA−A矢視を示している。ペースト転写ユニット4は、上面に凹部5aが形成された矩形の転写ステージ5およびスキージ昇降機構20によって昇降する1対のスキージ21を備えた構成のスキージユニット6を備えている。凹部5aの底面は平滑な塗膜形成面5bとなっており、塗膜形成面5bにはフラックス7をスキージユニット6によって塗膜7aが形成される。
【0017】
すなわち、予めフラックス7が供給された転写ステージ5上で、スキージ21の下端部と塗膜形成面5bとの間に成膜隙間を保った状態でスキージ21をY方向に移動させる成膜動作を行わせることにより、塗膜形成面5b上にはフラックス7が所定膜厚で延展された塗膜7aが形成される。そして塗膜形成面5bにおいて予め一定位置に設定された転写エリアA(図2(b)参照)に対して、吸着ノズル14に保持されたチップ3を昇降させることにより、バンプ3aにはフラックス7が転写により塗布される。この転写動作により、塗膜7aにはバンプ3aが接触することによりフラックス7がバンプ3aに転写されて部分的に除去された転写痕7bが形成され、成膜動作・転写動作を反覆実行することに
よりフラックス7が消費されると、フラックス供給装置22によってフラックス7が塗膜形成面5b上に吐出されて供給される。
【0018】
次に図3を参照して制御系の構成を説明する。制御部30はCPUによる制御演算処理部であり、以下に説明する各部を制御する。記憶部31は、部品搭載動作の実行に必要な各種のプログラムやデータを記憶する。操作・入力部32はキーボードやタッチパネルなどの人力装置であり、各種のデータ入力や操作のための指示入力を行う。表示部33はディスプレイ装置であり、後述するペーストの転写状態確認用処理の実行時における警告画面などの画面を表示する。この表示により、マシンオペレータに対して必要な報知が行われる。すなわち、表示部33は必要な報知を行う報知部として機能する。そしてこの処理において必要とされる指示入力は、表示画面のタッチパネルに設定された選択ボタン(図7参照)の操作によって行われる。
【0019】
カウント部34は、ペースト転写ユニット4における転写動作、すなわちバンプ3aにフラックス7を転写により塗布する動作の回数をカウントする。このカウント値は、フラックス7の転写状態の確認を実行するインターバルを決定するために用いられる。すなわちカウント部34は、ペースト転写ユニット4において実行される転写動作をカウントしてカウント値を出力し、制御部30がこのカウント値と記憶部31に予め記憶された規定数値とを比較することにより、転写テーブル5の状態、すなわち塗膜形成面5bにおける塗膜7aの状態や塗膜7aにバンプ3aを接触させることにより生じた転写痕7bの状態の良否の確認を実行すべきタイミングであるか否かを判断する。
【0020】
記憶部31に記憶される規定数値は、部品実装装置1の運転条件設定時に、所望の確認間隔にしたがって入力される。なお、転写動作の回数をカウントする替りに、転写動作を行った動作累計時間をカウント部34によって計時することにより、前述の確認の実行タイミングを判断してもよい。したがってカウント部34は、転写動作の回数または動作累積時間をカウントする動作カウント手段となっている。
【0021】
ヘッド駆動部35は、搭載ヘッド13や搭載ヘッド13を移動させるヘッド移動機構12を駆動する。スキージ駆動部36は、ペースト転写ユニット4に設けられたスキージユニット6を駆動する。カメラ駆動部37は、カメラ15の撮像動作やカメラ15を移動させるカメラ移動機構16を駆動する。認識部38は、カメラ15による撮像データの認識処理を行う。すなわち、カメラ15によって基板10を撮像した撮像データを認識処理することにより、基板10の位置認識が行われる。またペーストの転写動作後に、カメラ15によって転写ステージ5の転写エリアAを撮像した撮像データを認識処理することにより、ペースト転写ユニット4における転写テーブル5の状態の良否を判定することができる。
【0022】
ここでは、前述のように塗膜形成面5bにおける塗膜7aの状態またはバンプ3aが塗膜7aに接触することによって生じる転写痕7bもしくはこれらの双方が認識の対象となる。すなわち、カメラ15および認識部38は、バンプ3aにフラックス7を転写する転写動作後に塗膜形成面7aを撮像して取得された画像データを認識処理することにより、塗膜7aの状態およびまたは塗膜7aにバンプ3aを接触させることにより生じた転写痕7bの状態を判定する転写状態良否判定手段を構成する。そしてこの良否判定の実行タイミングは、制御部30がカウント部34のカウント値を監視することによって指示され、このカウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、前述の転写状態良否判定手段による良否の判定を実行するようにしている。
【0023】
図4を参照して、良否判定例について説明する。図4(a)は、転写痕7bの状態が正常な場合を示している。判定用画面40はカメラ15によって塗膜形成面5bの転写エリ
アAを撮像した画面を示しており、判定用画面40においては、塗膜7aに相当するフラックス画像42を背景画像として、チップ3の外形を示す部品範囲41内に転写痕7bに相当する転写痕画像43が表われている。図4(a)においては、転写痕画像43はチップ3におけるバンプ3aの配置に対応した配列で欠落無く現われており、これにより全てのバンプ3aには正常にフラックス7が転写されたと判定される。
【0024】
これに対し、図4(b)に示す例では、部品範囲41内にバンプ3aに対応する位置であるにも拘わらず転写痕画像43が正常に現われていない転写痕欠落部43*が存在しており、したがってこの部分のバンプ3aにはフラックス7が正常に転写されていないと判定される。この不良例は、吸着ノズル14の部品吸着面に異物が付着したままチップ3を待機している場合や、転写ステージ5が何らかの原因で僅かに傾斜している場合などに発生する。
【0025】
また図4(c)に示す例では、部品範囲41内に転写痕画像43が正常に現われており、バンプ3aへのフラックス7の転写は正常ではあるものの、判定用画面40内に塗膜7aが部分的に塗膜形成されていないことによるフラックス画像42の欠落、すなわち塗膜7aの「カスレ」に相当するフラックス欠落部42*が存在している。この場合には、スキージユニット6による塗膜形成に異常が発生していることが判る。この不良例は、転写ステージ5におけるフラックス7の貯留量が減少した場合や、スキージ21の摺動異常などによって発生する。
【0026】
次に部品実装装置1による部品実装方法における転写テーブル5の状態の良否判定のフローについて、図5を参照して説明する。この部品実装方法においては、搭載ヘッド13によって部品供給部2からチップ3を取り出し、ペースト転写ユニット4にてチップ3のバンプ3aにフラックス7を転写した後に、搭載ヘッド13を基板保持部9に移動させて基板10にチップ3を搭載する部品搭載動作が反覆実行される。図5はこの部品搭載動作におけるフラックス7の転写動作および転写動作を反覆実行する過程で行われる転写テーブル5における転写状態判定処理を示すものである。
【0027】
図5において動作がスタートすると、まずスキージ動作、すなわちペースト転写ユニット4にて転写ステージ5上でスキージ21を移動させて塗膜7aを形成する成膜動作が実行される(ST1)。次いで転写が実行される(ST2)。すなわち塗膜形成面5b上の塗膜7aに対してチップ3を昇降させて、バンプ3aにフラックス7を転写により塗布する。そして(ST1)、(ST2)を実行する都度、カウント部34のカウント値を予め状態確認用のインターバル回数として設定された規定数値と比較することにより、所定回数転写を実行したか否かを判断し(ST3)、カウント値が規定数値に到達してなければ(ST1)、(ST2)を反覆する。そして(ST3)にて、転写動作の回数または動作累積時間のカウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、転写状態良否判定手段による前記良否の判定を実行する。
【0028】
すなわちカメラ15を転写ステージ5上に移動させて転写エリアA(図2(b)参照)を撮像し、撮像データを認識処理することにより、カメラ15で転写テーブル5の状態を認識する(ST4)。そして認識結果が正常であるか否か、すなわち図4(b)、(c)に示す不良が発生しているか否かを判定する(ST5)。ここで正常であれば(ST1)に戻って通常の動作を反覆実行する。(ST5)において正常ではないと判断された場合には、以下の処理を行う。
【0029】
まず、このタイミングにて吸着ノズル14に保持されているチップ3、すなわちフラックス7の転写が正常に行われなかったチップ3をチップ廃棄箱8に廃棄する(ST6)。この動作とともに、装置停止を行った後、認識結果が正常でない旨報知する(ST8)。
そしてチップ廃棄後には、フラックス供給装置22により既に実行されたフラックス7の供給回数が予め上限回数として定められた所定回数内であるか否かを判断する(ST7)。
【0030】
ここで供給回数が所定回数内ではない場合には、フラックス7が既に十分に供給されてフラックス不足以外の何らかの異常が発生していると判断して、(ST8)に進み、装置停止してその旨報知する。また供給回数が所定回数内である場合には、フラックス不足が発生している可能性ありと判断して、フラックス供給装置22を作動させてフラックス供給を行う(ST9)。そして供給回数のインクリメントを実行し(ST10)、この後転写状態を確認するための試行を実行する。
【0031】
すなわち、(ST1)、(ST2)と同様にスキージ動作(ST11)、転写(ST12)を実行し、この後(ST4)に戻ってカメラ15で転写テーブル5の状態を認識する。そして(ST8)にて装置停止後、認識結果が正常でない旨の報知を行った場合には、マシンオペレータは転写ステージ5の状態を確認し、必要な処理を行う。上述の処理は、制御部30が図3に示す各部を制御することにより実行される。したがって制御部30は、転写動作の回数または動作累積時間のカウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、転写状態良否判定手段による良否の判定を実行させる制御手段となっている。
【0032】
上記説明したように、本実施の形態1においては、ペースト転写ユニット4におけるフラックス7の塗膜形成およびバンプ3aへの転写において、転写動作の回数または動作累積時間をカウントしたカウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、塗膜形成面5bを撮像して取得された画像データを認識処理して、転写ステージ5の状態の良否を自動的に判定するようにしている。これにより、塗膜7aや転写痕7bの不良を確実に検出して、部品実装工程においてペースト転写の不良を有効に防止することができる。
【0033】
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2の部品実装方法におけるペーストの転写状態確認用処理のフロー図、図7は本発明の実施の形態2の部品実装方法における表示画面を示す図である。本実施の形態2においては、部品実装装置1による部品実装方法で用いられたカメラ15によって塗膜形成面5bを撮像して転写ステージ5の状態を認識により良否判定する方法に替えて、マシンオペレータの目視によって転写ステージ5の状態を確認するようにした例を示している。これ以外の構成については実施の形態1と同様である。
【0034】
図6において、(ST21)〜(ST23)は図5における(ST1)〜(ST3)と同様である。(ST23)にて所定回数転写が実行されたと判断されたならば、表示部33に予め設定された所定の警告画面を表示することによりオペレータコールを行うとともに、装置停止する(ST24)。このオペレータコールに際しては、図7(a)に示すメッセージ画面44が表示され、画面表示された内容の処置の実行をマシンオペレータに促すとともに、フラックス7の使用許容時間として定められた所定時間が既に経過しているか否かの判断が行われる(ST25)。
【0035】
そしてマシンオペレータがアクセスしたタイミングにおいて、吸着ノズル14に保持されているチップ3へのフラックス7の転写後、所定時間が既に経過している場合には、図7(b)に示すメッセージ画面44が表示される。すなわち、図7(b)のメッセージ画面44が表示されることにより、(ST25)の判断において、既に所定時間を超えて時間が経過していることがマシンオペレータに対して明示され、チップ廃棄の入力待ち(ST26)の状態となる。ここでマシンオペレータがメッセージ画面44において選択ボタン47を操作することにより、搭載ヘッド13をチップ廃棄箱8へ移動させて当該チップ3aをチップ廃棄箱8に投入廃棄するチップ廃棄(ST27)が実行され、その後試行の
ためのスキージ動作(ST28)、転写(ST29)が実行される。そしてこの後、転写ステージ5の状態の目視確認ためのオペレータコールが再度行われる。
【0036】
(ST24)のオペレータコールを承けて、マシンオペレータが前述の所定時間内に当該装置の状態を確認可能な場合には、マシンオペレータは、図7(a)に示すメッセージ画面44の表示内容に沿って転写ステージ5の状態を目視で確認後、次の処理を行う(ST30)。すなわち、まず転写ステージ5の状態の確認結果に応じ、必要があればフラックス7の供給など状態改善作業を行う。このとき、部品実装装置1は選択ボタン45が押されたか否かを判断待機している状態にあり、マシンオペレータが今までの生産を続けることを選択してメッセージ画面44上で選択ボタン45を操作することにより、すなわち、部品実装装置1による生産を通常通り続行すべき旨の第1の指示入力を行うことにより、(ST21)に戻って通常の生産が続行される。
【0037】
そしてマシンオペレータが直ちに通常の生産に戻るのではなく前述の転写状態確認用処理を再度実行することを選択する場合には、生産再開後即転写ステージ5の状態を確認するための選択である選択ボタン46を操作する。すなわち(ST31)において選択ボタン45が操作されず選択ボタン46の入力待ち(ST32)となっている状態にて、選択ボタン46が操作されることにより、成膜動作およびバンプ3aへの転写を試行した後に転写状態確認用処理を再度実行すべき旨の第2の指示入力が行われる。これにより、状態確認のための試行が実行され、スキージ動作(ST33)、転写(ST34)が実行された後、再度オペレータコール/装置停止(ST24)に戻る。そしてこれ以降、同様の処理が反覆実行される。
【0038】
上述の処理は、制御部30が図3に示す各部を制御することにより実行される。したがって制御部30は、転写動作の回数または動作累積時間のカウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、塗膜7aの状態およびまたは塗膜形成面5bにバンプ3aを接触させることにより生じた転写痕7bを含む転写ステージ5の状態をマシンオペレータが目視確認できるように、報知部の機能を有する表示部33にその旨報知させるとともに、ペースト転写ユニット4における成膜動作を停止する転写状態確認用処理を行う制御手段となっている。
【0039】
このような転写状態確認用処理を予め設定されたインターバル毎に自動的に実行する構成を採用することにより、転写ステージ5において塗膜7aや転写痕7bが確実に保存される。これにより、塗膜7aや転写痕7bの状態に何らかの不良が存在する場合には、マシンオペレータがこれらの不良状態を確実に観察することが可能となっている。すなわち、従来装置においては、生産続行中はペースト転写ユニット4においては常に成膜動作が反復実行されているため、塗膜7aや転写痕7bに何らかの不良が存在する場合においても、これらの不良を目視観察によって検出することは困難であった。これに対し、本実施の形態に示す部品実装装置1においては、マシンオペレータには常にこれらの不良を監視するための目視観察のタイミングが自動的に提供される。
【0040】
そして操作・入力部32は、上述の報知を承けてマシンオペレータが前述の目視確認を実行した後に、第1の指示入力または第2の指示入力をマシンオペレータが選択的に行うための指示入力手段を構成する。ここでは、表示部33に表示されるメッセージ画面44に設定された選択ボタン45,46を含むタッチパネルが、操作・入力部32となっている。
【0041】
図6に示すフローにおいては、転写動作の回数または動作累積時間をカウントしたカウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、塗膜7aの状態およびまたは塗膜7aにバンプ3aを接触させることにより生じた転写痕7bを含む転写ステージ5の状態を
マシンオペレータが目視確認できるように、報知部にその旨報知させるとともに成膜動作を停止する転写状態確認用処理を行うようにしている。さらに転写ステージ5の状態の目視確認を実行した後に、前述の第1の指示入力または第2の指示入力を、マシンオペレータが選択的に行うべき旨を表示部33に表示する形態を採用している。
【0042】
このような構成を採用することにより、カメラによる画像認識などの機能を必要とすることなく、転写テーブル5の状態をマシンオペレータが確実に目視確認して塗膜7aや転写痕7bの不良を検出することができ、したがって部品実装工程においてペーストの転写不良を有効に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の部品実装装置および部品実装方法は、部品実装工程においてペーストの転写不良を有効に防止することができるという効果を有し、バンプが形成された部品を基板に実装する分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態1の部品実装装置の正面図
【図2】本発明の実施の形態1の部品実装装置におけるペースト転写ユニットの構造説明図
【図3】本発明の実施の形態1の部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態1の部品実装装置における表示画面を示す図
【図5】本発明の実施の形態1の部品実装方法におけるペーストの転写状態良否判定のフロー図
【図6】本発明の実施の形態1の部品実装方法におけるペーストの転写状態確認用処理のフロー図
【図7】本発明の実施の形態1の部品実装装置における表示画面を示す図
【符号の説明】
【0045】
1 部品実装装置
2 部品供給部
3 チップ(部品)
3a バンプ
4 ペースト転写ユニット
5 転写ステージ
5a 塗膜形成面
6 スキージユニット
7 フラックス(ペースト)
7a 塗膜
7b 転写痕
9 基板保持部
10 基板
13 搭載ヘッド
15 カメラ
21 スキージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面にバンプが形成されたバンプ付きの部品を搭載ヘッドによって保持して基板に実装する部品実装装置であって、
前記搭載ヘッドの移動経路に配設され、前記搭載ヘッドに保持された部品の前記バンプに転写により塗布されるペーストを転写ステージの塗膜形成面に形成された塗膜の形で供給するペースト転写ユニットと、
前記バンプにペーストを転写する転写動作の回数または動作累積時間をカウントしてカウント値を出力する動作カウント手段と、
前記転写動作後に前記塗膜形成面を撮像して取得した画像データを認識処理することにより、前記塗膜の状態およびまたは前記塗膜に前記バンプを接触させることにより生じた転写痕の良否を判定する転写状態良否判定手段と、
前記カウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、前記転写状態良否判定手段による前記良否の判定を実行させる制御手段とを備えたことを特徴とする部品実装装置。
【請求項2】
搭載ヘッドの移動経路に配設され、前記搭載ヘッドに保持された部品の前記バンプに転写により塗布されるペーストを転写ステージの塗膜形成面に形成された塗膜の形で供給するペースト転写ユニットと、前記バンプにペーストを転写する転写動作後に前記塗膜形成面を撮像して取得した画像データを認識処理することにより、前記塗膜の状態およびまたは前記塗膜に前記バンプを接触させることにより生じた転写痕の状態の良否を判定する転写状態良否判定手段とを備えた部品実装装置によって、下面にバンプが形成されたバンプ付きの部品を前記搭載ヘッドによって保持して基板に実装する部品実装方法であって、
前記転写動作の回数または動作累積時間をカウントしたカウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、前記転写状態良否判定手段による前記良否の判定を実行することを特徴とする部品実装方法。
【請求項3】
下面にバンプが形成されたバンプ付きの部品を搭載ヘッドによって保持して基板に実装する部品実装装置であって、
前記搭載ヘッドの移動経路に配設され、前記搭載ヘッドに保持された部品の前記バンプに転写により塗布されるペーストを転写ステージの塗膜形成面に形成された塗膜の形で供給するペースト転写ユニットと、
前記バンプにペーストを転写する転写動作の回数または動作累積時間をカウントしてカウント値を出力する動作カウント手段と、前記カウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、前記塗膜の状態およびまたは前記塗膜に前記バンプを接触させることにより生じた転写痕の状態をマシンオペレータが目視確認できるように、報知部にその旨報知させるとともに前記ペースト転写ユニットにおいて前記塗膜を形成する成膜動作を停止する転写状態確認用処理を行う制御手段とを備えたことを特徴とする部品実装装置。
【請求項4】
前記報知を承けてマシンオペレータが前記目視確認を実行した後に、前記部品実装装置による生産を通常通り続行すべき旨の第1の指示入力、または前記成膜動作および前記バンプへの転写を試行した後に前記転写状態確認用処理を再度実行すべき旨の第2の指示入力を、前記マシンオペレータが選択的に行うための指示入力手段を備えたことを特徴とする請求項3記載の部品実装装置。
【請求項5】
搭載ヘッドの移動経路に配設され、前記搭載ヘッドに保持された部品の前記バンプに転写により塗布されるペーストを転写ステージの塗膜形成面に形成された塗膜の形で供給するペースト転写ユニットを備えた部品実装装置によって、下面にバンプが形成されたバンプ付きの部品を前記搭載ヘッドによって保持して基板に実装する部品実装方法であって、
前記バンプにペーストを転写する転写動作の回数または動作累積時間をカウントしたカ
ウント値が予め設定された規定数値に到達したならば、前記塗膜の状態およびまたは前記塗膜に前記バンプを接触させることにより生じた転写痕の状態をマシンオペレータが目視確認できるように、報知部にその旨報知させるとともに前記ペースト転写ユニットにおいて前記塗膜を形成する成膜動作を停止する転写状態確認用処理を行うことを特徴とする部品実装方法。
【請求項6】
前記目視確認を実行した後に、前記部品実装装置による生産を通常通り続行すべき旨の第1の指示入力、または前記成膜動作および前記バンプへの転写を試行した後に前記転写状態確認用処理を再度実行すべき旨の第2の指示入力を、前記マシンオペレータが選択的に行うべき旨を表示部に表示することを特徴とする請求項5記載の部品実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−159845(P2008−159845A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347152(P2006−347152)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】