説明

部品組付装置

【課題】エネルギー資源を消費せず、設備全体がより小型で済む部品組付装置を提供する。
【解決手段】ワークWを支持可能なワーク支持部12を組付位置に移動させるワーク供給機構6と、部品マガジン13から一つのリング状部品Pを組付位置Aに送り込む部品供給機構7と、組付位置AにおいてワークWにリング状部品Pを装着する部品装着機構8と、単一のハンドルHを変位させる操作に基づいて、ワーク供給機構6によるワーク支持部12の移動と、部品供給機構7によるリング状部品Pの送り込みと、部品装着機構8によるリング状部品Pの装着とを完結させる運動変換機構35,36,50とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークが支持されたワーク支持部を組付位置に移動させるワーク供給機構と、複数のリング状部品を収納した部品マガジンから一つの前記リング状部品を抽出して前記組付位置に送り込む部品供給機構と、前記組付位置にて前記ワークに前記リング状部品を装着する部品装着機構とを有する部品組付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の部品組付装置に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記された部品組付装置は、ワークを取り付けたクランプを組付位置へ順次搬送するラインコンベア状のワーク搬送装置、部品のフィーダからリング状部品を一つずつ組付位置へ供給する供給装置、供給されたリング状部品をワークに外嵌装着するために油圧シリンダによって上下動される部品プッシャなどで構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭64−34619号公報(2頁下右欄の2行目−3頁上右欄の6行目、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記された部品組付装置は、部品プッシャを上下動させる手段として油圧シリンダなどの機械的駆動手段を用いているので、電力などのエネルギー資源の消費を余儀なくされるものであった。また、同上の部品組付装置は、そのような機械的駆動手段のための頑丈な支持構造を必要とするために設備全体が大型化してしまう傾向があった。
【0005】
さらに、特許文献1には、装置の部品供給部にリング状部品が欠品状態となった場合や、ワーク搬送装置にワークが欠品状態となった場合の解決手段について何も記載されていないため、部品未装着のワークが排出される、リング状部品が装置内に単独で落下する、などの懸念があった。
【0006】
本発明の目的は、上に例示した従来技術による部品組付装置の持つ欠点に鑑み、電力などのエネルギー資源の消費をする必要がなく、同時に、設備全体がより小型で済む部品組付装置を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、リング状部品またはワークが欠品状態となった場合にも、部品未装着のワークが排出されるたり、リング状部品が装置内に単独で落下するなどの事態が生じない部品組付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による部品組付装置の第1の特徴構成は、
ワークを支持可能なワーク支持部を組付位置に移動させるワーク供給機構と、
複数のリング状部品を収納可能な部品マガジンから一つの前記リング状部品を抽出して前記組付位置に送り込む部品供給機構と、
前記組付位置において前記ワークに前記リング状部品を装着する部品装着機構と、
単一のハンドルを変位させる操作に基づいて、前記ワーク供給機構による前記ワーク支持部の移動と、前記部品供給機構による前記リング状部品の送り込みと、前記部品装着機構による前記リング状部品の装着とを完結させる運動変換機構と、を備えている点にある。
【0009】
本発明の第1の特徴構成による部品組付装置では、油圧シリンダなどの機械的駆動手段を用いず、ワークを組付位置へ移動させる操作と、リング状部品を一つずつ組付位置へ送り込む操作と、組付位置でワークにリング状部品を装着する操作とを、単一のハンドルに対する人力による変位操作によって実現できる。したがって、電力などのエネルギー資源を消費する必要がない。また、機械的駆動手段を支持する構造も不要となるため、設備全体も小型で済む。
【0010】
本発明の他の特徴構成は、運動変換機構は、ハンドルの変位をワーク供給機構及び部品供給機構のための第1直線運動に変換する第1カムリンク機構と、ハンドルの変位を部品装着機構のための、第1直線運動と交差する第2直線運動に変換する第2カムリンク機構とを含む点にある。
【0011】
本構成であれば、作業者がハンドルを単純に変位操作するだけで、その操作力の一部は、第1カムリンク機構によって第1直線運動に変換されてワーク供給機構及び部品供給機構が駆動され、同操作力の残り一部は、第2カムリンク機構によって第2直線運動に変換されて部品装着機構が駆動される。
【0012】
本発明の他の特徴構成は、第1カムリンク機構は、ワーク供給機構及び部品供給機構と一端で連結された第1リンクアームと、部品装着機構と一端で連結された第2リンクアームと、第1リンクアームと第2リンクアームとの各他端どうしの連結部を一定の軌跡に沿って案内するためのカム部材とを備え、
カム部材は、第2直線運動を停止させつつ第1直線運動のみを発生させる第1カム面と、第1直線運動を停止させつつ第2直線運動のみを発生させる第2カム面とを連続的に備え、
第1リンクアームの一部にハンドルが直結されている点にある。
【0013】
本構成であれば、作業者によるハンドルの変位操作によって第1リンクアームが操作されるが、この時に先ず、第1リンクアームと第2リンクアームとの連結部は第1カム面に沿って移動するので、第2直線運動に関わる部品装着機構は動かず、第1直線運動に関わるワーク供給機構及び部品供給機構のみを駆動させることができる。同連結部は次に第2カム面に沿って移動するので、ここでは、第1直線運動に関わるワーク供給機構及び部品供給機構は動かず、第2直線運動に関わる部品装着機構のみを駆動させることができる。このため、ワーク供給機構及び部品供給機構と部品装着機構とが互いに干渉し合う虞がない。
【0014】
本発明の他の特徴構成は、第1カム面は、部品装着機構と連結された第2リンクアームの一端を中心とする円弧からなり、第2カム面は、ワーク供給機構及び部品供給機構と連結された第1リンクアームの一端を中心とする円弧からなる点にある。
【0015】
これによってワーク供給機構及び部品供給機構と部品装着機構とが互いに干渉し合う虞のない構成が簡単に実現される。すなわち、本構成によれば、第1リンクアームと第2リンクアームとの連結部が第1カム面を移動している間は、たとえ第2リンクアームが第1カム面に沿って揺動されても部品装着機構には影響が及ばない。逆に、同連結部が第2カム面を移動している間は、たとえ第1リンクアームが第2カム面に沿って揺動されてもワーク供給機構及び部品供給機構には影響が及ばない。このように本構成であれば、簡単で無駄の少ない構成の部品組付装置を得ることができる。
【0016】
本発明の他の特徴構成は、ワーク支持部にワークが欠品中においてワーク供給機構の動作を規制する第1規制機構が設けられている点にある。
【0017】
本構成であれば、ワーク支持部にワークが欠品中の場合、ワーク供給機構の動作が自動的に規制され、組付け操作が進まなくなる。よって、リング状部品のみが単独で装置の内部に落下する虞が無く、作業者が無駄に操作ハンドルを操作してしまう虞もない。
【0018】
本発明の他の特徴構成は、部品マガジンにリング状部品が欠品中において部品供給機構の動作を規制する第2規制機構が設けられている点にある。
【0019】
本構成であれば、部品マガジンにリング状部品が欠品中の場合、部品供給機構の動作が自動的に規制され、組付け操作が進まなくなるので、リング状部品が未装着状態のワークが得られる事態が防止される。
【0020】
本発明の他の特徴構成は、部品供給機構は、リング状部品を部品マガジンから組付位置に送り出すための部品供給板と、部品供給板によって送り出されるリング状部品を支持案内する部品供給ステージと、部品供給板によるリング状部品の供給に先行して部品供給ステージを組付位置に到達させる先行到達機構とを含む点にある。
【0021】
本構成であれば、リング状部品が組付位置に供給される前に部品供給ステージが組付位置に到達する。このため、リング状部品が落ち込み得る間隙が組付位置の手前に存在していても、この間隙は部品供給ステージによって事前に埋められることとなり、部品供給板によって送り出されたリング状部品が装置の内部に落下する虞が無い。
【0022】
本発明の他の特徴構成は、前記リング状部品を前記組付位置に供給した直後の前記部品供給板及び前記部品供給ステージを、前記単一のハンドルの位置と無関係に前記組付位置から引退させる即時復帰機構を含む点にある。
【0023】
本構成であれば、部品供給板及び部品供給ステージは、リング状部品を組付位置に供給完了した直後に組付位置から引退される。よって、もしもハンドルを短いインターバルで操作することで高速の組付け処理を行っても、部品装着機構がワーク供給機構または部品供給機構と干渉して装置が故障する虞がない。
【0024】
本発明の他の特徴構成は、前記単一のハンドルを変位させる前記操作に基づいて、前記部品装着機構による前記リング状部品の装着に続いて、前記リング状部品が装着された完成品としての前記ワークを前記ワーク支持部から除去する払出機構が設けられている点にある。
【0025】
本構成であれば、ハンドルを初期位置に戻す間に、完成品としてのワークがワーク支持部から自動的に除去され、次のワークをワーク支持部に取り付け可能な状態になる。したがって、作業者は、このようにワーク支持部が空になるのを、次のワークを手に持ったままで待つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明による最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1〜図9に示す部品組付装置1は、円筒状のキャップW(ワークの一例)の上端付近に形成された環状溝Wdにゴム製などのOリングP(リング状部品の一例)を外嵌装着する作業を、動力として人力のみを用いて実施する装置である。
以降、便宜的に、部品組付装置1を作業者が操作する際、同作業者が対向する側を部品組付装置1の正面側と呼び、真上から見てこの正面と180°の角度をなす裏面側を部品組付装置1の背面側と呼ぶことにする。
【0027】
(部品組付装置の概略構成)
図1に示すように、部品組付装置1は、平らな下面を備えた支持台2と、支持台2に互いに間隔を空けて略垂直に立設された一対の支柱3と、支持台2に固定されたマルチ連動機構4とを備える。作業者による操作ハンドルHの操作に基づいてキャップWにOリングPが装着される組付位置Aは、一対の支柱3の間に設定されている。一対の支柱3の上端どうしは水平に延びた天板5によって連結されている。
以下、部品組付装置1の各部位の構成、及び、操作ハンドルHの変位に応じて実行される各部位の動きについて、部品組付装置1を右側面から見た作用説明図である図2〜図9を用いて説明する。
【0028】
(ワーク支持体及び部品セットホルダ)
図2に示すように、部品組付装置1の正面側(図2の左端部)には、作業者がワークとしてのキャップWをセットするための概して円筒状のワーク支持体12(ワーク支持部の一例)が配置されている。
また、支持台2の中央付近には、作業者が多数(数十個など)のOリングPを外嵌状に装填可能なロッド状の部品ホルダ13(部品マガジンの一例)が上下に延びている。部品ホルダ13は、天板5の中央よりも正面寄りに上下移動自在に係止されている。
【0029】
部品ホルダ13の上端付近には天板5と係止されるストッパー13sが設けられている。部品ホルダ13は、自重によって、このストッパー13sが天板5の上面と接当した状態で静止される。この静止状態で、後述する部品供給ステージ16の上面と部品ホルダ13の下端との間に、OリングPを一つだけ収納可能な、OリングPの外径より僅かに大きな上下方向の部品スペースSが形成されるようにストッパー13sの位置が調節されている。
【0030】
また、部品ホルダ13には、装填された多数のOリングPを下方に向けて押し付ける筒状ウェイト14が上下に摺動自在に外嵌設置されている。作業者によるセットが完了すると、図2に示すように、最も下のOリングPは常に、筒状ウェイト14の押し付け作用で、部品供給ステージ16の上面に押し付けられつつ、部品ホルダ13の下方の部品スペースSに配置され、部品ホルダ13から解放された供給スタンバイ状態となっている。
【0031】
(マルチ連動機構の概略構成)
マルチ連動機構4は、作業者が手前側のプリセット位置PPでワーク支持体12にセットしたキャップWを奥の組付位置Aに移動させるワーク供給機構6と、部品ホルダ13からOリングPを一つずつ抽出して組付位置Aに送り込む部品供給機構7と、組付位置AにてキャップWにOリングPを装着する部品装着機構8と、OリングPが装着された完成品のキャップWをワーク支持体12から手前側に払い出す払出機構9とを含む。
【0032】
操作ハンドルHは、部品組付装置1の右サイドに人力によって概して上下に変位可能な形態で設けられている。この操作ハンドルHは下向きの往路と上向きの復路とからなる単純なアクションで操作される。このアクションによる操作ハンドルHの変位に基づいて、上述したワーク供給機構6、部品供給機構7、部品装着機構8、及び、払出機構9が互いに関連し合って作動することで、個々のキャップWにOリングPを装着する作業が連続的に進められる。
【0033】
操作ハンドルHの変位は、部品組付装置1の背面側に設けられたカムリンク機構60によって、上述したワーク供給機構6、部品供給機構7、部品装着機構8、及び、払出機構9の各動作に変換される。
尚、キャップWにOリングPを装着する操作は、作業者がワーク支持体12に取り付けたキャップWの上に、OリングPを強制的に拡径する補助治具としての概して円錐形のコーン治具Cを載置した状態で実施される。
【0034】
(部品装着操作の概略的な流れ)
装置構造の理解を容易にするために、詳細な構成を説明する前に、先ず、部品組付装置1によってキャップWにOリングPを装着する操作の流れを簡単に説明する。
(1)図2に示すように、作業者によって、部品ホルダ13にOリングPがセットされ、キャップWがプリセット位置にあるワーク支持体12にセットされる。
【0035】
(2)図3は、作業者によって操作ハンドルHが初期位置から手前下向きに押し下げ操作され始めた状態を示す。この操作に伴って、ワーク供給機構6によってキャップWが部品ホルダ13と共にプリセット位置から組付位置Aに供給され始める(往路の第1直線運動)、同時に、部品供給機構7によって部品ホルダ13から一つのOリングPが組付位置Aに供給され始める(第1直線運動の往路)。図4に示すように、操作ハンドルHの変位がさらに進むと部品ホルダ13とOリングPとが組付位置Aに到達する。
【0036】
(3)図5に示すように、操作ハンドルHがさらに手前下向きに押し下げ操作されると、部品装着機構8の一部の働き(往路の第2直線運動)によってコーン治具CがキャップWの上に載置される。次に、組付位置Aに準備されていたOリングPがコーン治具Cの外周に落とされ、部品装着機構8の他の一部の働き(往路の第2直線運動)によってコーン治具Cが固定される。
(4)図6は、コーン治具Cの外周に落とされたOリングPが、部品装着機構8の更に他の一部によってOリングPがキャップWに装着された状態を示す。
【0037】
(5)次に、作業者が操作ハンドルHに加えていた力を緩めると、操作ハンドルHが初期位置に押し上げられ、図7に示すように、部品装着機構8の各部が初期位置に戻る過程で、コーン治具Cの固定が解除され(復路の第2直線運動)、コーン治具CがキャップWの上から引き上げられる(復路の第2直線運動)。
【0038】
(6)操作ハンドルHがさらに戻されると、図8に示すように、ワーク供給機構6によって完成したキャップWがワーク支持体12と共に組付位置Aからプリセット位置に戻され(復路の第1直線運動)、最後に、図9に示すように、払出機構9によってキャップWがワーク支持体12から除去され(復路の第1直線運動)、一連の組付け作業が完結する。
【0039】
(ワーク供給機構の構成)
図1及び図2に示すように、ワーク供給機構6は、支持台2に対して前後方向に水平に摺動可能(第1直線運動)に支持された下ラック部材17を備える。前述した円筒状のワーク支持体12が、この下ラック部材17の正面側端部付近の上面にフローチング機構(不図示)を介して固定されている。フローチング機構の具体的な構成としては、例えば、前端付近に大径部を備えた連結ロッドを下ラック部材17から前方向き延設し、他方、ワーク支持体12の下部などに、前記大径部を、前記連結ロッドの軸心回りで回動自在に係止収納可能なナックル部材を設けた形態とすればよい。
【0040】
図2に示すように、操作ハンドルHが初期位置(上死点)にある時、ワーク支持体12は作業者から見て手前側のプリセット位置PPにある。作業者がワーク支持体12にキャップWをセットした後、操作ハンドルHを初期位置から降ろしていくと、図3に示すように、ワーク支持体12は下ラック部材17と共に組付位置Aに向かって移動し始める。尚、図9に示すように、操作ハンドルHを初期位置に戻すと、ワーク支持体12は下ラック部材17と共に組付位置Aからプリセット位置PPに復帰する。操作ハンドルHと下ラック部材17との連動機構については後述する。
【0041】
(部品供給機構の構成)
図3に示すように、部品供給機構7は、支持台2に対して前後方向に水平に摺動可能に支持された上ラック部材18と、上ラック部材18と連動して組付位置Aの側に向けて前方に移動することで、部品ホルダ13の下方で供給スタンバイ状態のOリングPを組付位置Aの上方に送り込む部品供給板15とを有する。図4に示すように、部品供給板15が送り込んだOリングPは、後述する開閉アーム21の下端付近に位置する部品保持面21pに供給される。
【0042】
部品供給機構7は、部品ホルダ13の下方で供給スタンバイ状態のOリングPを支持している部品供給ステージ16を含む。部品供給ステージ16は、後述する先行到達機構57の働きによって、図3に示すように、部品供給板15によるOリングPの移動操作に先行して、やはり上ラック部材18と連動して組付位置Aの側に摺動移動する。部品供給ステージ16は、この摺動移動によって、開閉アーム21の下端部と部品供給ステージ16との間に存在する間隙を一時的に無くすことで、部品供給板15によって送り出されたOリングPが同間隙を介して自重で無用に落下するのを防ぐ。
【0043】
(部品装着機構の構成)
部品装着機構8は、図5に示すように、組付位置Aに供給されたキャップWの上面にコーン治具Cを載置させる操作と、次に部品供給板15が送り込んだOリングPをコーン治具C上に落下させる操作とを行う部品プリセット機構10を備える。さらに、図6に示すように、コーン治具Cに外嵌されたOリングPをコーン治具Cの下端まで押し下げ、さらにキャップWの環状溝Wdに移動させるための部品押下機構11を有する。
【0044】
(部品プリセット機構の構成)
図10に示すように、部品プリセット機構10は、いずれも一対の支柱3に沿って上下に移動可能(第2直線運動)に外嵌支持された第1上下動板19と、第1上下動板19よりも下方に支持された第2上下動板20とを備える。操作ハンドルHの変位に基づいて第2上下動板20は支柱3に沿って押し下げられる。第1上下動板19の正面には前述した開閉アーム21が揺動可能に懸吊されており、第2上下動板20の正面には開閉アーム21を開閉操作するための開閉カム部材22が固定されている。開閉アーム21を構成する左右のアームの間には、開閉カム部材22を収納可能な空間が形成されている。
【0045】
開閉アーム21の下端には、コーン治具Cを吊下げ支持するための一対のチャックアーム21aが設けられており、チャックアーム21aの上面には、供給されたOリングPを受け入れるための部品保持面21pが形成されている。この部品保持面21pにはOリングPのずれを防止するための凹面も形成されている。
第1上下動板19の上面の一部からは補助ロッド19rが上方に延設され、天板5の貫通孔に挿通され、補助ロッド19rの上端付近にはナット状のストッパー19sが上下に位置調整可能に螺着されている。ストッパー19sが天板5の上面と接当することで第1上下動板19の下死点が決定される。第2上下動板20の上面の左右両端付近からは、支柱3に摺動自在に外嵌され、且つ、第1上下動板19の下端と接当可能な一対の棒状スペーサ20rが上方に延出している。
【0046】
図10に示すように、操作ハンドルHが初期位置にある時、補助ロッド19rのストッパー19sは天板5から上方に離間している。第2上下動板20の棒状スペーサ20rは、第2上下動板20を上方に付勢するように支柱3に外嵌された圧縮コイルバネSp1の付勢力によって、第1上下動板19の下面に押し付けられている。開閉アーム21は左右の開閉アームの間に懸架された閉鎖コイルバネSp2によって、開閉カム部材22の両側面と開閉アーム21との間に間隙を殆ど残さない閉鎖姿勢に保持されている。
【0047】
図10の状態から、操作ハンドルHの操作に基づいて第2上下動板20が押し下げられると、開閉アーム21は、開閉カム部材22によって閉鎖コイルバネSp2によって閉鎖姿勢に保持されたままで、第1上下動板19と共に下方に移動操作される。この下方移動で、開閉アーム21のチャックアーム21aに吊下げ支持されたコーン治具Cもまた下方に移動操作される。
【0048】
引き続き、第2上下動板20が下方に移動操作されると、図11に示すように、予めワーク支持体12にセットされているキャップWの上端にコーン治具Cが載置され(図5も参照のこと)、この載置と同じタイミングで、ストッパー19sが天板5の上面と接当する。
【0049】
第2上下動板20がさらに下方に移動操作されると、第1上下動板19はストッパー19sによって下死点に達しており、第2上下動板20のみが引き続き下方に移動操作される。このため、図12に示すように、開閉アーム21が、開閉カム部材22の下面に形成された一対の傾斜カム面22cによって、閉鎖コイルバネSp2の付勢力に抗して開放操作される。
【0050】
その目的で、開閉アーム21の内面側にも傾斜カム面22cを受ける傾斜した被操作カム面21cが形成されている。
開閉アーム21が開放操作されると、チャックアーム21aはコーン治具Cから左右に離間され、同時に、OリングPがチャックアーム21aの部品保持面21pから自重で落下して、コーン治具Cのネック部に係止される。
【0051】
(部品押下機構の構成)
図2及び図13に示すように、部品押下機構11は、天板5、第1上下動板19及び第2上下動板20の各中央部に形成された貫通孔に挿通され、下端が第2上下動板20から下方に延出した治具固定ロッド24と、治具固定ロッド24に外嵌される形で第2上下動板20の下面に固定された部品プッシャ27とを有する。
【0052】
図2に示すように、治具固定ロッド24の長手方向の中心付近には大径のフランジ部24fが設けられている。このフランジ部24fと天板5の間に位置する治具固定ロッド24の部分には、フランジ部24fを第2上下動板20の上面に向けて付勢するコイルバネ状のロッド付勢バネSp3が外嵌配置されている。
【0053】
図2に示すように、第2上下動板20が上死点に位置している時、フランジ部24fはロッド付勢バネSp3によって第2上下動板20の上面に押し付けられている。図2の状態から、操作ハンドルHの操作に基づいて第2上下動板20が押し下げられると、治具固定ロッド24が第2上下動板20と一体的に下降していき、図5に示すように、治具固定ロッド24の先端が、ワーク支持体12上のキャップWの上端に載置されているコーン治具Cの上端に接当する。さらに第2上下動板20が押し下げられると、第2上下動板20はフランジ部24fから下方に離間するが、図6に示すように、治具固定ロッド24はロッド付勢バネSp3によってコーン治具CをキャップWの上端に押し付けた状態で保持される。
【0054】
図13に示すように、部品プッシャ27は、第2上下動板20の下面に固定される円筒状の基端部27aと、基端部27aの下端から下方に延びたやはり円筒状の操作部27bとが一体的に設けられた樹脂製の部材からなる。操作部27bは、その上端付近から下端まで上下に延びた複数のスリット27sによって4〜10個程度のセクションに分割されている。部品プッシャ27を構成する素材の弾性に基づいて、これらの各セクションは個々に径方向に揺動自在となっている。操作部27bの下端付近の外周には環状の溝27dが形成されており、この溝27dには、操作部27bの下端側を縮径方向に付勢するためのOリング28が係入されている。
【0055】
外力から解放された初期状態では、Oリング28の付勢力によって操作部27bの内径は治具固定ロッド24の外径と略一致し、且つ、コーン治具Cの円錐面に係止されているOリングPの外径よりも十分に小さい。
そこで、部品プッシャ27が第2上下動板20と共に下降していくと、操作部27bの各セクションの下端面が、コーン治具C上のOリングPを確実に係止し、コーン治具Cの円錐状の外周面に沿って下方に押し下げていく。図6に示すように、この押し下げ操作によって、操作部27bの下端はOリング28の付勢力に抗して次第に広がり、OリングPも同時に拡径操作される。
コーン治具C上のOリングPがコーン治具Cの下端を下方に越えた時、OリングPはキャップWの環状溝Wdに外嵌装着される。
【0056】
図13に示すように、コーン治具Cの上端には、開閉アーム21のチャック部21aによる確実な吊下げ支持を受けるためのネック部Cnが形成されており、ネック部Cnの上方に隣接する拡径部Cfの上端には、治具固定ロッド24の下端を受け入れるための係合凹部Cvが形成されている。
また、コーン治具Cの下面にはキャップWの上端付近を受け入れる浅い嵌合凹部Cpが形成されている。
【0057】
(払出機構の構成)
図2及び図14に示すように、払出機構9は、操作ハンドルHの操作に基づいて、ワーク支持体12と同様に、下ラック部材17と共に前後移動する排出部材29と、下ラック部材17の前後移動に応じて排出部材29を上下に移動操作する排出カムユニット30とを有する。
【0058】
図14に示すように、排出部材29は、平面視で円形の外形を呈する上方の排出ヘッド29h、平面視で矩形の外形を呈する下方のカム部29c、及び、排出ヘッド29hとカム部29cとを接続する接続部29jを有する。排出ヘッド29hは、円筒状のワーク支持体12の内面に上下方向に摺動自在に介装されている。カム部29cはワーク支持体12の下方に位置し、排出カムユニット30と協働して後述する排出部材29の上下運動を作り出す。
【0059】
図15に示すように、排出カムユニット30は、左右に数ミリ程度の長さで変位可能に設けられた一対のカム形成部材31と、カム形成部材31を中央部寄りの位置に付勢するための一対のコイルバネSp4とを有する。カム形成部材31は概して板状を呈し、カム形成部材31の外側の側面から横向きに延出したガイド棒33を介して支持台2に支持されている。
【0060】
図14に示すように、カム形成部材31の内側の側面には、側面視で概して三角形の隆起部31Bが、手前側が高く奥側ほど低くなるように形成されている。隆起部31Bの手前下部は、前方側の端部から後方に向かって次第に内側に隆起する第1カム面31aとなっている。隆起部31Bの傾斜した長辺の縁部は、奥から手前に向かって次第に高くなる第2カム面31bとなっている。ワーク支持体12がプリセット位置PPにある時、排出部材29のカム部29cは、第1カム面31aよりも前方の初期位置に位置する。
【0061】
ワーク支持体12がワークWを組付位置Aに供給する動作に伴って、排出部材29が、図2及び図15(a)に示すプリセット位置PPから後方に移動する時、排出部材29のカム部29cは、図3及び図15(b)に示すように、カム形成部材31をコイルバネSp4の付勢力に抗して左右に均等に押し広げながら移動する。図15(c)に示すように、ワーク支持体12が組付位置Aに達する前に、排出部材29のカム部29cは隆起部31Bから一旦離合するので、カム形成部材31はコイルバネSp4の付勢力によって初期の互いに近接した状態に戻る。
【0062】
ワークWへのOリングPの装着が完了して、ワーク支持体12が組付位置Aから手前側への移動を開始する際には、図8及び図15(d)に示すように、排出部材29のカム部29cは第2カム面31bに沿って進むので、排出部材29が持ち上げられる。排出部材29のこの上昇運動に基づいて、図9に示すように、排出部材29の排出ヘッド29hはワークWをワーク支持体12から排出する。
【0063】
排出部材29がプリセット位置PPへ復帰する際に、排出部材29も第2カム面31bの前方側の端部から自重で落下し、第1カム面31aよりも前方の初期位置に自動的に戻される。
キャップWは、手前側に移動するワーク支持体12から得る手前向きの初速の作用によって、排出ヘッド29hによって真上ではなく手前側に排出されるので、支持台2の手前側上方に配置されたトレー部Tの中に受け止められる。
【0064】
(カムリンク機構の構成)
作業者による操作ハンドルHの変位操作をワーク供給機構6、部品供給機構7、部品装着機構8、払出機構9の各動作に変換するカムリンク機構60について以下に説明する。
図1及び図2に示すように、支持台2の中央付近には、ワーク支持体12を備えた前述した下ラック部材17の前方部を摺動自在に収納支持する第1筐体Bfが設けられている。図1に示すように、第1筐体Bfの後方には、下ラック部材17の後方部と上ラック部材18とを水平前後方向に摺動自在に収納支持する第2筐体Brが設けられている。図2に示すように、第2筐体Brには、上ラック部材18の前方向きの動きを下ラック部材17の後方向きの動きに変換するピニオンギヤ34が、下ラック部材17及び上ラック部材18と同調して動作するように回動自在に支持されている。
【0065】
図2に示すように、カムリンク機構60は、上ラック部材18の後端付近に、横向きシャフト40を介して揺動自在に連結され、概して前方に延出した第1リンクアーム35、及び、第1リンクアーム35と支柱3に支持された第2上下動板20とを連結する第2リンクアーム36とを有する。第1リンクアーム35の中間部には入力アーム35Aが固着されて、概して手前斜め上方に延出されている。操作ハンドルHは、この入力アーム35Aの手前側の端部に横向きに設置されている。さらに、カムリンク機構60は、第1リンクアーム35の前端と第2リンクアーム36の下端とを連結する軸部材に対して転動自在に外嵌支持された案内ローラ37と、カムフォロワとして設けられたこの案内ローラ37の移動軌跡を規定するために第2筐体Brの側面に固定されたカム板部材50とを含む。
【0066】
カム板部材50には、互いに延出方向の異なる第1カム面50aと第2カム面50bとが形成されている。第1カム面50aは概して前方側ほど下降する傾斜面を備え、第2カム面50bは概して後方側ほど下降する傾斜面を備えており、その結果、第1カム面50aの下端部と第2カム面50bの上端部とは互いに略垂直に交差するように接続されている。操作ハンドルHが初期位置にある時、案内ローラ37は第1カム面50aの上端付近(同時に後端付近でもある)に位置する。
【0067】
第1リンクアーム35と第1カム面50aとは「第1カムリンク機構」を構成し、第2リンクアーム36と第2カム面50bとは「第2カムリンク機構」を構成する。第1カム面50a及び第2カム面50bは、案内ローラ37を介して、第1リンクアーム35と第2リンクアーム36とに次のような作用をもたらす。
【0068】
人力によって操作ハンドルHが辿る下向き(往路)の前期の操作力では、案内ローラ37が第1カム面50aを前方に向かって転がるので、上ラック部材18の後端付近に連結された第1リンクアーム35は、幾らか下方に揺動しながら第2筐体Brに対して前方に移動操作される。したがって、この操作力は上ラック部材18の前方向きの水平運動に変換され、同時に、ピニオンギヤ34によって、下ラック部材17の後方向きの水平運動が生じる。
【0069】
この下ラック部材17の後方向きの水平運動は、案内ローラ37が第1カム面50aの下端に達するまでに、ワークWの組付位置Aへの供給(ワーク供給機構6)を実現し、これと相前後して、上ラック部材18の前方向きの運動がOリングPの切り出しと組付位置Aへの供給(部品供給機構7)を実現する。
【0070】
第1カム面50aの断面形状は、第2上下動板20が上死点にある状態における、第2上下動板20と第2リンクアーム36との枢支軸X1を中心とする円の一部からなる円弧で構成されている。したがって、案内ローラ37が第1カム面50aの上を上向きや下向きに移動する間に、第2リンクアーム36によって第2上下動板20が上下に移動操作される虞はない。また、第1カム面50aの円弧は全体として後方上側から前方下側に向かって傾斜した斜面からなるので、操作ハンドルHを介して比較的弱い力で案内ローラ37を移動させることができ、また、操作ハンドルHを操作する時に部品組付装置1を横移動させるような力が発生し難い。
【0071】
人力によって操作ハンドルHが辿る下向き(往路)の後期の操作力では、案内ローラ37が第2カム面50bを下方に向かって転がり降りて来るので、第2上下動板20に連結された第2リンクアーム36が支持台2に対して概して下方に引き降ろされ、同操作力は第2上下動板20の下方向きの運動に変換される。
【0072】
この第2上下動板20の下方向きの運動は、案内ローラ37が第2カム面50bの下端に達するまでに、供給されたキャップWにコーン治具Cを載置して、治具固定ロッド24でコーン治具Cを固定し、OリングPをコーン治具C上に落下させる操作(部品プリセット機構10)、及び、部品プッシャ27でOリングPをコーン治具CからキャップWの環状溝Wdに移し替える操作(部品押下機構11)を実現する。
【0073】
第2カム面50bの断面形状は、上ラック部材18の前方向きの移動が完了し、操作軸部材61の第2筐体Brに対する前方向きの変位が前記ストッパーによって規制された状態における、上ラック部材18の後端と第1リンクアーム35との枢支軸(横向きシャフト40の軸心)を中心とする円の一部からなる円弧からなる。したがって、案内ローラ37が第2カム面50bの上を上向きや下向きに移動する間に、第1リンクアーム35によって上ラック部材18が前後に移動操作される虞はない。また、第2カム面50bの円弧は全体として前方上側から後方下側に向かって傾斜した斜面からなるので、操作ハンドルHを介して比較的弱い力で案内ローラ37を移動させることができ、また、操作ハンドルHを操作する時に部品組付装置1を横移動させるような力が発生し難い。
【0074】
人力によって操作ハンドルHが辿る上向き(複路)の前期の操作力では、案内ローラ37が第2カム面50bを上方に向かって転がり上がるので、第2リンクアーム36が支持台2に対して概して上方に引き上げられ、同操作力は第2上下動板20の上方向きの運動に変換される。
この第2上下動板20の上方向きの運動は、案内ローラ37が第2カム面50bの下端に達するまでに、部品プッシャ27と治具固定ロッド24とを順次コーン治具Cから離間させ、コーン治具CをキャップWから離間させる操作を実現する。
【0075】
最後に、人力によって操作ハンドルHが辿る上向き(複路)の後期の操作力では、案内ローラ37が第1カム面50aを後方に向かって上がるので、第1リンクアーム35は幾らか上方に揺動しながら第2筐体Brに対して後方に移動操作される。したがって、この操作力は上ラック部材18の後方向きの水平運動に変換され、同時に、下ラック部材17の前方向きの水平運動が生じる。
【0076】
上ラック部材18の後方向きの運動は、案内ローラ37が第1カム面50aの下端に達するまでに、部品供給板15と部品供給ステージ16とを後方の各初期位置に復帰させる。これと相前後して、下ラック部材17の前方向きの運動は、ワーク支持体12及びワークWの組付位置Aへの復帰(ワーク供給機構6)を実現し、その復帰の最終段階付近で、払出機構9によるワークWのトレー部Tへの排出が実現される。
【0077】
図2に示すように、第2筐体Brの後端付近には、第1リンクアーム35の後端部付近から更に後方上向きに延びたバネ支持アーム41が固定されており、このバネ支持アーム41の上端部と第1リンクアーム35の後端部付近との間には、入力アーム35A及び操作ハンドルHの初期位置への復帰を助ける引っ張りコイルバネSp6が懸架されている。さらに、操作ハンドルHを備えた入力アーム35Aの側面には、軽量化のための肉抜き凹部(不図示)が形成されており、これも入力アーム35Aの初期位置への上向きの移動(復帰)を容易化している。
【0078】
(第1規制機構の構成)
図16に示すように、部品組付装置1には、ワーク支持体12にワークWが係止されていない(欠品中)状態で、操作ハンドルHを下方に操作しようとした時、ワーク供給機構6の動作を規制する第1規制機構51が設けられている。第1規制機構51の役割は、リング状部品Pのみが無用に組付位置Aに供給される現象を防止することにある。第1規制機構51をワーク欠品検出機構と呼ぶこともできる。
【0079】
図16(a)に示すように、第1規制機構51は、支持台2の上端部の前方側に、ワークWのための収納空間を左右に横断するように配置されたラッチピン52と、第1筐体Bfの一方の側面に形成された係止溝53と、第1筐体Bfの他方の側面に鉛直軸心X2回りで揺動自在に設置された検出レバー54とを有する。
ラッチピン52の一端には、係止溝53に進入可能な被係止爪部52aが設けられ、ラッチピン52の他端には検出レバー54の一部と接当可能な被接当部52bが設けられ、ラッチピン52の後方側面にはワークWの側面の一部を受け入れ可能な係止凹部52rが形成されている。
【0080】
ラッチピン52は、図16(d)に示す、被係止爪部52aが係止溝53に進入したロック位置と、図16(a)などに示す、被係止爪部52aが係止溝53から退避したロック解除位置との間で左右に変位可能に支持されている。
検出レバー54と第1筐体Bfとの間には、検出レバー54の前端部をラッチピン52の被接当部52bに押し付けるコイルバネSp5が配置されている。
【0081】
操作マニュアルの通りに図16(a)に例示された組付位置Aのワーク支持体12にワークWを係止した状態で操作ハンドルHが下方に変位操作された場合、ラッチピン52は、係止凹部52rに入り込んだワークWによってロック解除位置に保持されているので、図16(b)に示すように、係止溝53を無事に通過できる。したがって、ワーク支持体12は組付位置Aに向かって後方に移動し、図16(c)に示すように組付位置Aに到達する。
【0082】
他方、もしもワーク支持体12にワークWが係止されていない状態で操作ハンドルHが下方に変位操作された場合、ラッチピン52はロック解除位置に保持されていない。したがって、図16(d)に示すように、この移動開始の直後に、ラッチピン52は検出レバー54からの横向きの力によって係止溝53に進入して、鉛直な係止面53aと係合するため、ワーク支持体12のそれ以上の後方移動は阻止され、操作ハンドルHの下方への変位操作も阻止される。
【0083】
係止溝53の後方側の係止面53aはラッチピン52との確実な係止状態を得るために垂直に形成されており、他方、係止溝53の前方側には、ワーク支持体12がプリセット位置PPへ復帰する際に、ワークWの有無と無関係にラッチピン52の前方向きの通過を許すための傾斜したカム面53bが形成されている。ラッチピン52の被係止爪部52aの前方寄りにも、ワークWの有無と無関係にラッチピン52が係止溝53のカム面53bを円滑に通過するためのカム面52dが形成されている。
【0084】
(第2規制機構の構成)
図17に示すように、部品組付装置1には、部品ホルダ13にリング状部品Pが全く外嵌されていない(欠品中)状態で、操作ハンドルHを操作しようとした時、部品供給機構7の動作を規制する第2規制機構56が設けられている。第2規制機構56の役割は、作業者が部品ホルダ13にリング状部品Pがないことに気付かずに、リング状部品Pが未装着のワークWが払出機構9によって払い出される現象を防止することにある。第2規制機構56を部品欠品検出機構と呼ぶこともできる。
【0085】
第2規制機構56は、筒状ウェイト14の下方に形成された挿入阻止部14sを備える。図17(a)に示すように、部品供給板15によって送り出されるリング状部品Pを支持案内する部品供給ステージ16には、リング状部品Pの外径と略一致する幅を持つ案内溝16dが形成されており、挿入阻止部14sはこの案内溝16dに係入可能な外径に設定されている。第2筐体Brには筒状ウェイト14の下部を摺動自在に外嵌支持するブラケット状ガイド体14Hが設置されており、部品ホルダ13の下端の径方向の変位はこのブラケット状ガイド体14Hによって規制されている。
【0086】
図17(b)に示すように、部品ホルダ13の下方の部品スペースSにリング状部品Pが存在する場合は、挿入阻止部14sはこのリング状部品PによってスペースSよりも上方に位置するので、部品供給板15は挿入阻止部14sの下方を通過してリング状部品Pを組付位置Aに供給する動きを行うことが可能である。しかし、図17(c)に示すように、部品スペースSにリング状部品Pが無い状態では、供給阻止部14sが部品スペースSまで下降するので、部品供給板15は供給阻止部14sと衝突し、それ以上後方に移動できない。
【0087】
(先行到達機構及び即時復帰機構の構成)
図2に示すように、部品供給機構7は、組付位置Aに近接した部品供給板15及び部品供給ステージ16を、操作ハンドルHの位置と無関係に、OリングPを供給後に組付位置Aから即刻引退させる即時復帰機構58を含む。ここでは、前述した先行到達機構57及び即時復帰機構58の構成について解説する。
【0088】
部品供給機構7は、上ラック部材18の後端から更に後方に一体的に延出した操作軸部材61、及び、第2筐体Brに対して操作軸部材61とは独立して前後に変位可能に支持された主可動体62を備える。
操作軸部材61の後端には、第1リンクアーム35の後端が前述した横向きシャフト40を介して連結されており、操作軸部材61の軸心方向の中間位置には、環状などのトリガー部材61Tが固定されている。
操作軸部材61の一部には、第2筐体Brの一部と接当することで、操作ハンドルHの前後方向の変位に基づく、操作軸部材61の第2筐体Brに対する前方向き及び後方向きの変位を所定の範囲に規制するストッパー(不図示)が設けられている。このストッパーは操作軸部材61に対して前後方向に位置調節可能となっている。
【0089】
主可動体62は、筐体状の本体62aと、本体62aの上面から前方に延出した上板部材62bと、本体62aの下端から前方に一体的に延出した下板部材62cとを備えている。本体62aの内部には係止部材63が配置され、係止部材63の下端に設けられた係止爪63Cが本体62aの底部に形成された貫通孔から下方に突出している。係止部材63は、係止爪63Cが操作軸部材61のトリガー部材61Tと係止可能な下方の係止位置と、係止爪63Cがトリガー部材61Tと係止不能な上方の非係止位置との間で上下に変位可能に支持され、コイルバネSp7によって前記係止位置に向けて付勢されている。
【0090】
係止部材63の側面には、被操作ピン63pが立設されており、被操作ピン63pの先端は本体62aの側面に形成された貫通孔から側方に突出している。
第2筐体Brの前後方向の中間位置には、被操作ピン63pの先端と係合することで、係止部材63を一時的に非係止位置に切り替え可能なカム面65aを備えた操作ポイント65が固定されている。
【0091】
主可動体62の本体62aの後端からは、直線状の制御シャフト66が後方向きに延出配置され、制御シャフト66には、制御シャフト66の後端と第2筐体Brの一部とを離間させるように作用する圧縮コイルバネSp9が外嵌されている。この圧縮コイルバネSp9によって、主可動体62は第2筐体Brに対して後方向きに付勢されている。
【0092】
上板部材62bと下板部材62cとの間には、やはり概して板状の補助可動体64が主可動体62に対して前後に相対移動可能に配置されている。この補助可動体64の前端部が前述した部品供給ステージ16を構成し、他方、上板部材62bの先端からは、前述した部品供給板15が前方向きに延びている。
【0093】
補助可動体64の下面の後端には後端突起16aが下向きに立設され、部品供給ステージ16に相当する位置の下面には被操作部16bが立設されている。また、下板部材62cの前後方向の中間部には、後端突起16aの前方向きの相対移動を規制する規制端面62sが形成されている。部品供給ステージ16は、この被操作部16bと第2筐体Brの一部との間に懸吊された圧縮コイルバネSp8によって、後端突起16aが規制端面62sと接当した前端位置に向けて付勢されている。
【0094】
図2の初期状態から、操作ハンドルHが手前下方に変位操作されると、図3に示すように、第1リンクアーム35は横向きシャフト40を介して、操作軸部材61を上ラック18と共に前方に移動させる。すると、操作軸部材61のトリガー部材61Tが、係止部材63の係止爪63Cを介して、主可動体62を圧縮コイルバネSp9の付勢力に抗して前方に移動させる。
【0095】
主可動体62の前方移動によって、主可動体62と一体の部品供給板15が前方に移動開始するが、同時に、圧縮コイルバネSp8によって前方に付勢されている部品供給ステージ16も前方に移動開始する。その結果、図3に示すように、部品供給板15が部品ホルダ13の下方にある一つのOリングPを前方に供給開始し、これと同時に、部品供給ステージ16の前端が開閉アーム21の下端部に当接されることで、OリングPの前端が開閉アーム21に達する以前に、開閉アーム21の後方に存在する間隙が解消される(先行到達機構57)。
【0096】
操作軸部材61が更に前方に移動されると、図4に示すように、OリングPは、開閉アーム21の下端の後端を越えて進入した部品供給板15によって、開閉アーム21の下方に位置する部品保持面21pに供給される。この供給完了と略同時に、係止部材63に設けられた被操作ピン63pの先端が、操作ポイント65のカム面65aによって上方に操作されるために、係止部材63は上方の非係止位置に切り替えられる。そのため、図4の右向きの一点鎖線矢印が示すように、主可動体62と一体の部品供給板15は、圧縮コイルバネSp9の付勢力によって後方の初期位置に即時に復帰操作される。
【0097】
図5に示すように、部品供給板15が復帰の動作を開始した直後に、補助可動体64と一体の部品供給ステージ16も、部品供給ステージ16の後端突起16aと後方向きに対向している規制端面62sを介して、部品供給ステージ16の前端が開閉アーム21の下端部から後方に離間した初期位置に復帰操作される(即時復帰機構58)。この時、操作軸部材61のトリガー部材61Tは係止部材63よりも前方に来る。
【0098】
その後、部品プリセット機構10及び部品押下機構11によってOリングPの装着が完了すると、操作ハンドルHからの上向きの操作力に基づいて、第1リンクアーム35及び操作軸部材61が後方の初期位置に復帰する。この復帰の際に、図8に示すように、操作軸部材61のトリガー部材61Tは、係止部材63を乗り越え、係止部材63よりも後方寄りの初期状態に自動復帰する。そのために、係止部材63の係止爪63C及びトリガー部材61Tの各々には、トリガー部材61Tが係止部材63を後方向きにのみ乗り越えることを許すための傾斜した案内面63G,61Gが形成されている。
【0099】
図5に示すように、上述した、即時復帰機構58による部品供給板15及び補助可動体64の初期位置への復帰操作は、操作ハンドルHや、第1リンクアーム35及び操作軸部材61の位置と無関係に、実際には操作ハンドルHの手前下方向きの変位に基づいて、案内ローラ37が未だカム板部材50の第1カム面50aと第2カム面50bの中間位置にある間に完結する(即時復帰機構58)。したがって、後続する部品押し下げのための工程でコーン治具の周面に向かって下降操作される部品プッシャ27が、部品供給板15や補助可動体64と干渉する虞はない。
【0100】
〔別実施形態〕
〈1〉上記実施形態に記されたキャップWにOリングPを装着するための装置として記載されたが、これに限らず、ワークの筒状の部位に概して環状で拡径可能な部品を装着する目的の装置であれば、OリングPの代わりにCリングを装着する装置や、ピストンの環状溝にピストンリングを装着するための装置など、種々の部品組付装置として適用可能である。
【0101】
〈2〉上記実施形態は、動力として人力のみを用いる構成として記述しているが、本発明による部品組付装置は、ワークWの取り付けと、OリングPの補充とを除く全ての操作を自動的に処理する半自動装置に変形することが十分に可能な構成を備えている。そのためには、例えば、操作ハンドルHの付いた入力アーム35Aの代わりとして、カム板部材50の中心付近に水平な回転軸心を有する板状の入力部材をカム板部材50の側面に配置し、この入力部材に案内ローラ37の枢支軸を径方向に移動自在に係止する長孔を設け、この入力部材を正転と逆転を交互に繰り返すモータによって回転駆動させれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】部品組付装置の外観を示す斜視図
【図2】部品組付装置を構成する各部位の作用説明図
【図3】部品組付装置を構成する各部位の作用説明図
【図4】部品組付装置を構成する各部位の作用説明図
【図5】部品組付装置を構成する各部位の作用説明図
【図6】部品組付装置を構成する各部位の作用説明図
【図7】部品組付装置を構成する各部位の作用説明図
【図8】部品組付装置を構成する各部位の作用説明図
【図9】部品組付装置を構成する各部位の作用説明図
【図10】部品装着機構の作用説明図
【図11】部品装着機構の作用説明図
【図12】部品装着機構の作用説明図
【図13】部品装着機構の一部とコーン治具とワークの斜視図
【図14】払出機構を説明する斜視図
【図15】払出機構の作用説明図
【図16】第1規制機構の作用説明図
【図17】第2規制機構の作用説明図
【符号の説明】
【0103】
A 組付位置
C コーン治具
H 操作ハンドル
P Oリング(リング状部品)
S 部品スペース
W キャップ(ワーク)
X1 枢支軸(第2上下動板20/第2リンクアーム36)
X2 鉛直軸心(検出レバー54)
1 部品組付装置
6 ワーク供給機構
7 部品供給機構
8 部品装着機構
9 払出機構
11 部品押下機構
12 ワーク支持体
14s 挿入阻止部(第2規制機構)
15 部品供給板
19 第1上下動板
20 第2上下動板
21 開閉アーム
27 部品プッシャ
29 排出部材
35 第1リンクアーム(運動変換機構)
36 第2リンクアーム(運動変換機構)
37 案内ローラ
50 カム板部材(運動変換機構)
50a 第1カム面
50b 第2カム面
51 第1規制機構
56 第2規制機構
57 先行到達機構
58 即時復帰機構
60 カムリンク機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持可能なワーク支持部を組付位置に移動させるワーク供給機構と、
複数のリング状部品を収納可能な部品マガジンから一つの前記リング状部品を抽出して前記組付位置に送り込む部品供給機構と、
前記組付位置において前記ワークに前記リング状部品を装着する部品装着機構と、
単一のハンドルを変位させる操作に基づいて、前記ワーク供給機構による前記ワーク支持部の移動と、前記部品供給機構による前記リング状部品の送り込みと、前記部品装着機構による前記リング状部品の装着とを完結させる運動変換機構と、を備えている部品組付装置。
【請求項2】
前記運動変換機構は、前記ハンドルの変位を前記ワーク供給機構及び前記部品供給機構のための第1直線運動に変換する第1カムリンク機構と、前記ハンドルの変位を前記第1直線運動と交差する前記部品装着機構のための第2直線運動に変換する第2カムリンク機構とを含む請求項1に記載の部品組付装置。
【請求項3】
第1カムリンク機構は、前記ワーク供給機構及び前記部品供給機構と一端で連結された第1リンクアームと、前記部品装着機構と一端で連結された第2リンクアームと、前記第1リンクアームと前記第2リンクアームとの各他端どうしの連結部を一定の軌跡に沿って案内するためのカム部材とを備え、
前記カム部材は、前記第2直線運動を停止させつつ前記第1直線運動のみを発生させる第1カム面と、前記第1直線運動を停止させつつ前記第2直線運動のみを発生させる第2カム面とを連続的に備え、
前記第1リンクアームの一部に前記ハンドルが直結されている請求項2に記載の部品組付装置。
【請求項4】
第1カム面は、前記部品装着機構と連結された前記第2リンクアームの前記一端を中心とする円弧からなり、第2カム面は、前記ワーク供給機構及び前記部品供給機構と連結された第1リンクアームの前記一端を中心とする円弧からなる請求項3に記載の部品組付装置。
【請求項5】
前記ワーク支持部に前記ワークが欠品中において前記ワーク供給機構の動作を規制する第1規制機構が設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の部品組付装置。
【請求項6】
前記部品マガジンに前記リング状部品が欠品中において前記部品供給機構の動作を規制する第2規制機構が設けられている請求項1から5のいずれかに記載の部品組付装置。
【請求項7】
前記部品供給機構は、前記リング状部品を前記部品マガジンから前記組付位置に送り出すための部品供給板と、前記部品供給板によって送り出される前記リング状部品を支持案内する部品供給ステージと、前記部品供給板による前記リング状部品の供給に先行して前記部品供給ステージを前記組付位置に到達させる先行到達機構とを含む請求項1から6のいずれかに記載の部品組付装置。
【請求項8】
前記リング状部品を前記組付位置に供給した直後の前記部品供給板及び前記部品供給ステージを、前記単一のハンドルの位置と無関係に前記組付位置から引退させる即時復帰機構を含む請求項7に記載の部品組付装置。
【請求項9】
前記単一のハンドルを変位させる前記操作に基づいて、前記部品装着機構による前記リング状部品の装着に続いて、前記リング状部品が装着された完成品としての前記ワークを前記ワーク支持部から除去する払出機構が設けられている請求項1から8のいずれか一項に記載の部品組付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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