説明

部材のコーティング法

本発明は、繊維強化複合材料から成る成分のコーティング法に関する。このコーティング法に従って、a)有機および金属部分から成る複合材が、接着層として溶射手段によってコーティング対象部材表面に塗布され、b)主として金属部分を含む層が、中間層として、溶射または動的スプレー手段によって接着層に塗布され、c)金属、金属−カーバイド複合材、セラミック酸化物、または、前記材料の混合物から成る機能的カバー層が、溶射または動的スプレー手段によって中間層に塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶射および動的スプレーの塗布による繊維強化複合材料の機能的表面の生成であって、磨耗、機械的損傷および付着に対する当該部材表面の保護、ならびに、シート剥離(剥離挙動)の改良が特に重要と考えられる繊維強化複合材の機能的表面の生成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料、特に、ポリマーマトリックスならびにカーボンファイバー強化ポリマーを含む材料は、低密度、高引張および捩り強度、および、高弾性率または高剛性などの驚くべき機械的および物理的特性をそれぞれ有する部材の製造を可能にする。カーボンファイバー、グラスファイバー、シリコンカーバイド繊維、ならびに、多くのさらなるオキサイド、カーバイドおよび他の材料の繊維を含めて、様々な高強度繊維材料が使用されることができる。フェノール樹脂、エポキシ樹脂および多くの他の材料を含めて、様々なポリマー材料も使用されることができる。当該繊維は、非常に長い状態であること、特定のパターンで配列されること、あるいは、比較的短く、無秩序に分布されることができる。長繊維が特定パターンで配列される場合、当該繊維は、一方向に向けられることができ、あるいは、前記繊維強化複合材料に二次元または三次元強度を付与するように指定されたパターンに配列されることができる。よって、当該繊維強化複合材料の構造の機械的特性は、部材の特定の必要条件に合わせられることができる。
【0003】
不運なことに、繊維強化複合材料の表面は、特に付着磨耗、磨損および浸食磨耗に対する低い耐磨耗性を有し、その付着および湿潤特性は、製紙業などの多くの用途には不十分である。さらに、当該材料は、酸化や他種の腐食に感受性を示すことが多く、熱保護を必要とし、求められる光学的および電気的特性などを起こさない。そのため、繊維強化複合材料の有用性は、多くの利用分野で制限される、あるいは、他の部材または材料との接触に曝され、それによって、磨耗増加に曝される部分への金属もしくはセラミック挿入物またはコーティング剤の使用を必要とする。
【0004】
それでもなお、繊維強化複合材料製ローラーの使用は、印刷、製紙およびフォイルの各産業では、特に興味深い。その理由は、当該ローラーが、例えばスチール製のローラーよりも、実質的に軽く、固く、よって、容易かつ安全に取り扱われることができるからである。さらに、当該ローラーは、慣性が低めであるため、必要なエネルギーと加速および制動時間が少ない。これは、取扱いおよび取り付けだけでなく、運転の面で経費の節約を可能にする。当該ローラーは、必要な特性を当該ローラーの作業面に備えるために、金属、セラミックもしくはカーバイド、または、それらのプラスチックとの混合物のコーティングを含み、当該コーティングは、求められる耐磨耗性や他の必要な特性を示す。溶射法を使用すると、多様な金属およびセラミック層、サーメット層、即ち、金属マトリックスに埋め込まれたカーバイド粒子、ならびに、一部のポリマーコーティングが生成されることができる。
【0005】
溶射法群は、爆発溶射(detonation spraying)(とりわけ、Super D−Gun(登録商標))、高速フレーム溶射(high velocity flame spraying)およびそれらの変法、例えば、空気燃料溶射(air−fuel spraying)、プラズ溶射、フレーム溶射および電気ワイヤーアーク溶射を含む。大半の熱コーティング法において、溶射材料は、粉末状、ワイヤー状またはロッド状で、当該材料の融点に相当する温度まで、あるいは、当該融点よりもやや高い温度まで加熱され、当該材料の液滴もしくは融解粒子が、気流中で加速される。当該液滴は、コーティング対象基材の表面に向けられ、当該表面で、当該液滴は、付着、固化し、層状構造を有する連続層を形成する。断続運転する爆発溶射法の場合、個々の、重なり合う、強固に結合された溶射スポットによって、層が形成される。かかる方法は、当業者に周知であり、多数の文書に詳述されている。
【0006】
繊維強化複合材料表面に金属ベース、セラミックベースもしくはカーバイドベース溶射層を直接塗布する試みが多数なされているという事実にもかかわらず、通常、得られた当該層の付着は非常に不良であるにすぎなかった。当該層は、繊維強化基材に付着せず、あるいは、すでに、わずかな層厚の配置時にはがれ落ちることが多かった。通常、部材の表面は、前記溶射層の塗布前は、付着を向上させるために粗面化される。粗面化は、たいてい、表面のコランダム噴射仕上げによって達成される。しかし、コーティング対象表面のランダム噴射仕上げもしくは他のタイプの粗面化は、繊維の露出と同時に、ポリマーマトリックスの受容不可能な浸食を生じる可能性がある。当該繊維露出は、前記層の特性を著しく損なう可能性がある。
【0007】
これらやその他の問題は、例えば、米国特許第5,857,950号に記述されている方法を適用した際に明らかになった。この場合、カーボンファイバーローラーの表面は、サンドブラスティングを受け、その際、亜鉛コーティングが遮熱手段として適用される。この亜鉛コートローラーに再度サンドブラスティングが実施された後、接着コーティング剤が塗布されるが、当該コーティング剤は、アルミ青銅とポリエステルの混合物から成ることができる。その後、当該接着コーティング剤は、サンドブラスティングを受け、セラミック溶射コーティング剤が塗布され、彫刻される。この方法は、受容不可能であることが認められている。
【0008】
別法が、EP 0 514 640 B1に記述されている。この場合、第一に、合成樹脂と、当該合成樹脂に分散された金属粒子の混合物から成る層が、繊維強化複合材料表面に生成される。この層の硬化時、分散粒子を露出させ、それによって、当該粒子材料が、第一層に溶射される外層の材料と化学結合するために、当該表面が切削されることができる。この方法で限られた成果が得られるにすぎないにもかかわらず、合成樹脂と粒子材料の混合物は、前記複合材料に適切に付着することができず、材料小球を表面に生じる傾向があり、そのため、商業生産には適さない。
【0009】
DE 100 37 212 A1によれば、溶射法によって、プラスチック表面に付着表面が塗布され、この付着表面は、溶射法の過程で発熱反応する亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム合金および/またはニッケル−アルミニウム合金などの材料から成ることができる。その後、溶射法によって同様に生成される機能コーティング剤が付着表面に塗布される。
【0010】
さらに、EP 1 129 787 B1は、線維強化複合材料の基板が、ポリマーのみを含有する第一層、ポリマー/金属混合物の第二層、および、その後、溶射コーティングでコートされるコーティング法を記述している。層間の十分な結合強度を得るためには、最初の2層のコーティング層に適したポリマー材料が選択されなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の基本を成す問題は、コート済み繊維強化複合材料において、コーティング層の当該複合材料への付着がさらに改良されたコート済み繊維強化複合材料を提供することである。本発明は、特に、2種類よりも多い溶射層系列または動的スプレー層系列の配合によって、繊維強化プラスチック材料の耐磨耗性を改良する課題に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この問題は、本発明に従って、第一に、前記繊維強化プラスチック材料の表面に有機および金属成分から成る複合材が接着層として溶射手段によって塗布される、主として金属成分を含む溶射層または動的スプレー層が中間層として前記接着層に塗布される、また、金属、サーメット(CERMET、金属−カーバイド複合材)、セラミック酸化物、または、前記材料の混合物もしくはプラスチック材料とのそれらの混合物から成る溶射または動的スプレーされた機能的カバー層が前記中間層に塗布される点で解決される。金属−プラスチック複合材の溶射に2種類よりも多い異なる材料の混合物が使用されることができ、これが接着層として塗布される。溶射法中に2種類よりも多い分流を使用する代わりに、ワイヤーもしくは粉末状の溶射材料自体が、材料の複合体から成ることができる。
【0013】
前記の接着層の目的は、そのプラスチック成分を介して、前記繊維強化ベース材料のマトリックスへの改良された結合を提供することであり、同時に、どの露出繊維でもより良い湿潤性、同様に、当該接着層の付着に好ましいもの、を保証することである。当該接着層の金属成分の目的は、後から塗布される予定の金属中間層への結合を可能にすることである。
【0014】
この中間層は、機能的カバー層の最終塗布に不可欠である。当該中間層は、ほぼ脆弱な耐磨耗性カバー層用の安定ベースとして働き、同時に、当該接着層と当該カバー層の弾性率の適度な適合を提供する。さらに、当該金属中間層は、例えば高速フレーム溶射または爆発溶射による部材のさらなるコーティング中に導入される熱の均一な分布および放散を提供する。熱の十分な放散がない場合は、基材本体の有機結合剤の局所蒸発が起こる可能性があり、これは、層系列全体の剥離を生じることになる。
【0015】
本提案の方法は、高い動的荷重に適した繊維強化複合材量のコート済み部材、ならびに、広い層面積を有する部材の製造を可能にする。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態は、下位クレームから得られる。
【0017】
好ましくは、前記接着層の有機成分、例えばポリエステルは、5〜60%、好ましくは20〜50%、最も好ましくは30〜40%に達する。
【0018】
前記接着層の金属成分、例えばアルミニウム、銅またはニッケルは、好ましくは40〜90%、さらに好ましくは60〜80%に達する。
【0019】
前記接着層の厚さは、0.1〜2mm、さらに好ましくは0.1〜1mm、最も好ましくは0.2〜0.4mmである。
【0020】
特に好ましい実施の形態では、0.2mmの厚さの接着層が、プラズマ溶射によって塗布され、金属−ポリエステル複合材から成る。他の特に好ましい実施の形態では、約0.1〜1mmの厚さを有する金属層は、溶射法によって、当該接着層に溶射される。
【0021】
ある実施の形態では、前記中間層の厚さは、0.5〜2mmである。前記カバー層を塗布する前に、当該中間層は、先行する方法段階によって起こる凹凸を平らにするために、例えば研削もしくは旋盤によって切削されることができる。
【0022】
前記金属中間層は、アーク溶射、プラズマ溶射または動的スプレーなどの燃焼が関与しない方法によって塗布し、それによって、繊維強化プラスチックのベース材への入熱ができる限り低く保たれるのが好ましい。
【0023】
前記中間層には、できる限り高い延性を有する金属材料を使用するのも好ましい。
【0024】
さらなる実施の形態では、すでに、前記中間層は、強度増加を提供するために、金属と硬質材料の複合材、例えば、動的スプレーされたアルミニウム−アルミナ複合材層から成ることができる。
【0025】
前記繊維強化材料のコーティングが、特に、耐磨耗性の増加を目指す場合、前記層系列の機能的カバー層は、好ましくは、セラミック酸化物(例、クロミア)またはCERMET(サーメット、金属−カーバイド複合材、例えば、金属コバルトマトリックスに埋め込まれたタングステンカーバイド粒子)から成る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化複合材料の部材のコーティング法において、
(a)第一に、有機および金属成分から成る複合材が接着層として溶射手段によってコーティング対象部材表面に塗布される段階と、
(b)主として金属成分を含む層が、中間層として、溶射または動的スプレー手段によって前記接着層に塗布される段階と、
(c)金属、金属−カーバイド複合材、セラミック酸化物、または、前記材料の混合物から成る機能的カバー層が、溶射または動的スプレー手段によって前記中間層に塗布される段階
を含むことを特徴とする繊維強化複合材料の部材のコーティング法。
【請求項2】
前記接着層の有機成分が、5〜60%、好ましくは20〜50%、最も好ましくは30〜40%に達することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接着層の金属成分が、40〜90%、好ましくは60〜80%に達することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接着層の厚さが、0.1〜2mm、好ましくは0.1〜1mm、さらに好ましくは0.2〜0.4mmであることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記中間層の金属成分が60%以上に達することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記中間層の厚さが、0.1〜2mm、好ましくは0.2〜1mm、最も好ましくは0.3〜0.6mmであることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記中間層が、カバー層塗布前に切削されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2009−511751(P2009−511751A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535879(P2008−535879)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際出願番号】PCT/DE2006/001797
【国際公開番号】WO2007/045217
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(500092413)プラックセアー エス.ティ.テクノロジー、 インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】