説明

部材排出装置

【課題】部材の姿勢を安定させることが可能な部材排出装置を提供する。
【解決手段】複数の階段形状部31及び波形状部32は、部材25の一部を支える部分として形成されている。部材25の一辺の長さをAとすると、階段形状部31はこれよりも短い寸法B(A>B)となる大きさの階段に形成されている。また、波形状部32は、階段形状部31の寸法Bよりも短い寸法C(B>C)となる大きさの階段に形成されている。階段形状部31は、振動伝達・制御部24からの振動が後壁27に伝達されることにより、部材25の姿勢を整えることができる機能を有している。これに対して波形状部32は、振動伝達・制御部24からの振動が前壁26に伝達されることにより、部材25を部材案内方向に落下させることができる機能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材を排出して供給対象へ部材を一つずつ供給する部材排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部材排出装置に関しては、例えば下記特許文献1に次のような技術が開示されている。図4(a)において、部材排出装置としての端子排出装置1(端子供給装置)は、椀状容体2の内部に螺旋状にのびる螺旋状整列路3を有するボール状の螺旋フィーダ部4と、直線状にのびるリニア整列路5を有するリニアフィーダ部6とを備えて構成されている。リニアフィーダ部6は、リニア整列路5の一端部が螺旋状整列路3の排出部7に連成されている。また、リニアフィーダ部6は、リニア整列路5の他端が端子セット位置に位置するように配置されている。
【0003】
上記構成において、端子排出装置1は、螺旋フィーダ部4及びリニアフィーダ部6に振動を加えると、螺旋フィーダ部4内に多数収容された端子8が螺旋状整列路3に沿って整列しながら上昇する。この後、排出部7を介してリニア整列路5の一端部に端子8が受け渡される。そして、端子8はリニア整列路5に沿って移動し、上記端子セット位置に送り込まれる。尚、端子排出装置1のような装置では、端子8が線材端子である場合、この線材端子の長手方向が進行方向となる。
【0004】
ところで、端子排出装置1を用いての端子の供給の他には、図4(b)に示す如くの供給方法も知られている。すなわち、予め方向を整えて帯状部材11に線材端子12を係止させて横並び(横連鎖状)の状態とし、そして、このような帯状部材11の穴を使って線状端子12を送り出し供給する方法である。
【特許文献1】特開2002−104648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4(a)に示す如くの端子排出装置1にあっては、安定供給するための端子8の姿勢として、端子8が線材端子である場合、この長手方向を進行方向としているため、端子8の長さ分だけの送り量が必要となる。また、端子8の長さ分だけの送り時間も必要になる。従って、端子排出装置1は、単位時間当たりの供給量が少ないという問題点を有している。
【0006】
一方、図4(b)に示す如くの、線材端子12を係止した帯状部材11を用いる場合、線材端子12を係止するコストと、帯状部材11自体のコストとが掛かってしまうことになる。従って、コスト増大を引き起こすという問題点を有している。
【0007】
本願発明者は、図5(a)に示す如くの形状の容体15であれば部材(線材端子)16を短い送り量及び送り時間で排出することができると考えている。容体15は、互いに相対向する位置に配置され且つ相対的な距離が下方向(部材16の自重方向)に小さくなるような略V字状の側面17を一対有するものである。引用符号18は部材16が通過する供給部、引用符号19は部材16が排出される排出部をそれぞれ示している。
【0008】
しかしながら、上記形状の容体15にあっては、下方に行くに従って狭まる形状に形成されることから、下方の部材16は上方の部材16の重量によって側面17に押し付けられてしまう。従って、図5(b)に示す如くの寄せ集まって固まってしまうような現象が懸念される。部材16が寄せ集まって固まってしまうと(部材16の姿勢が安定しないと)、排出部19からの排出ができなくなってしまうことになる。
【0009】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、部材の姿勢を安定させることが可能な部材排出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の部材排出装置は、所望の量で供給される部材が通過する供給部、及び供給される量よりも少ない量で前記部材が排出される排出部を有するとともに、前記供給部の側から前記排出部へと前記部材が案内される形状の部材案内手段と、該部材案内手段に機械的に振動を加えて該部材案内手段内の前記部材に振動を伝達させる振動伝達・制御手段とを備え、前記部材案内手段は、前記供給部から前記排出部へと向かう部材案内方向に対し逆方向に、前記部材の幅方向の一部を支える複数の略真っ直ぐにのびる階段形状部を有し、前記振動伝達・制御手段は、前記複数の階段形状部が、前記部材案内手段内の前記部材を前記排出部の側に移動させないように一時的に停滞させてから前記部材を前記排出部へと案内するように、前記部材案内手段を機械的に振動させることを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の本発明の部材排出装置は、請求項1に記載の部材排出装置において、前記部材案内手段は、互いに相対向する位置に配置され且つ相対的な距離が前記部材案内方向に小さくなる側面視略V字状に配置される第一ガイド手段及び第二ガイド手段を有し、前記第一ガイド手段は、前記部材の前記幅方向の一部を支える大きさの階段に形成される前記複数の階段形状部を有し、前記第二ガイド手段は、前記複数の階段形状部の階段よりも小さな階段に形成される複数の略真っ直ぐにのびる波形状部を有することを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の本発明の部材排出装置は、請求項1又は請求項2に記載の部材排出装置において、前記振動伝達・制御手段は、前記部材案内手段を前記部材案内方向に対し略直交する方向に機械的に振動させることを特徴としている。
【0013】
以上のような特徴を有する本発明によれば、複数の階段形状部を有することにより、また、複数の波形状部を有することにより、さらには、部材案内手段を部材案内方向に対して略直交する方向に機械的に振動させることにより、部材の姿勢を一定方向に矯正するとともに、部材案内手段内における多数の部材の重量を分散させて排出部からの排出を安定させることが可能になる。本発明において、複数の波形状部は、部材を部材案内方向に落下させる機能を有し、複数の階段形状部は、部材の姿勢を整える機能を有する。これらの機能によって、部材が寄せ集まって固まってしまうような現象を起こり難くすることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載された本発明によれば、部材の姿勢を安定させることができるという効果を奏する。また、この効果によって、部材を短い送り量及び送り時間で排出することができるという効果も奏する。
【0015】
請求項2に記載された本発明によれば、部材の姿勢を一定方向に矯正することができるという効果を奏する。また、部材案内手段内における多数の部材の重量を分散させることにより、排出部からの排出を安定させることができるという効果も奏する。
【0016】
請求項3に記載された本発明によれば、部材の落下と部材の姿勢矯正とに有効な振動方向を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の部材排出装置の一実施の形態を示す模式的な図であり、(a)は構成説明図、(b)は波形状部の拡大図、(c)は階段形状部の拡大図である。また、図2は部材がリニアフィーダ部を進む状態を示す平面図、図3はリニアフィーダ部全体に部材が送り出された状態を示す平面図である。
【0018】
図1において、本発明の部材排出装置21は、ホッパー部22(部材案内手段)と、リニアフィーダ部23と、振動伝達・制御部24(振動伝達・制御手段)とを備えて構成されている。部材排出装置21は、ホッパー部22から部材25を排出してリニアフィーダ部23の端部から図示しない供給対象へ部材25を一つずつ供給することができるように構成されている。以下、各構成部材について説明する。
【0019】
ホッパー部22は、平面視略矩形状であるとともに側面視略V字形状となり、さらには内部が中空となる、図示のような断面略漏斗状の形状に形成されている。ここで図中の矢印Pを前後方向、矢印Qを上下方向、点R(紙面に対して垂直になるため矢印で表せない)を左右方向と定義すると、ホッパー部22は、前壁26(第二ガイド手段)と、後壁27(第一ガイド手段)と、一対の側壁28とを備えて構成されている。本形態の後壁27は、後方への移動(寸法調整のための移動。部材25の寸法に合わせて微調整する)が可能に組み立てられている。ホッパー部22は、所望の量で供給される部材25が通過する供給部29と、供給される量よりも少ない量で部材25が排出される排出部30とを有している。
【0020】
下向きの矢印Qは部材25の自重方向であり、また、ホッパー部22内における部材案内方向であるものとする(供給部29から排出部30へと向かう方向)。
【0021】
前壁26と後壁27は、互いに相対向する位置に配置されており、且つ相対的な距離が上記部材案内方向に小さくなる側面視略V字状に配置されている(例えば90度に近い角度で開く)。後壁27の内面には、複数の階段形状部31が形成されている。また、前壁26には、複数の波形状部32が形成されている。一対の側壁28は、前壁26及び後壁27の左右両側に配置されている。一対の側壁28は、この内面が上記左右方向に直交する平坦な面となるように形成されている。
【0022】
複数の階段形状部31及び波形状部32は、部材25の幅方向の一部を支える部分として形成されている。本形態における部材25は、線材端子であって、断面略正方形の細長いピン形状に形成されている(断面円形状であっても良いものとする。尚、線材端子に限らないものとする)。部材25の一辺の長さ(幅方向の長さと同じ)をAとすると、階段形状部31は、これよりも短い寸法B(A>B)となる大きさの階段に形成されている。また、波形状部32は、階段形状部31の寸法Bよりも短い寸法C(B>C)となる大きさの階段に形成されている。階段形状部31及び波形状部32は、各段の位置が同じになるように形成されている。階段形状部31及び波形状部32は、上記左右方向に沿って略真っ直ぐにのびるように形成されている。階段形状部31及び波形状部32は、部材25の一辺の長さAに対して1/2〜2/3となる長さに設定されている。
【0023】
階段形状部31は、これが複数段あることにより、また、振動伝達・制御部24からの振動が後壁27に伝達されることにより、部材25の姿勢を整えることができる機能を有している。これに対して波形状部32は、これが複数段あることにより、また、振動伝達・制御部24からの振動が前壁26に伝達されることにより、多くの部材25の重量を分散して、部材25を部材案内方向(下向きの矢印Qの方向)へと落下させることができる機能を有している。階段形状部31及び波形状部32は、これらの最下段が排出部30に連続するように配置されている。排出部30は、部材25に対して1.4〜1.5倍(一例であるものとする)のクリアランスが生じるように開口形成されている。
【0024】
リニアフィーダ部23は、直線状にのびるリニア整列路33を有している。リニア整列路33は、この左右両側に配置されるガイド突条34の存在によって部材25を前方へ案内することができるように形成されている。リニア整列路33は、部材25の全長を考慮して幅寸法が設定されている。リニア整列路33は、この一端部が排出部30に連続するように配置されている。また、リニア整列路33の他端は、図示しない供給対象における端子セット位置35(図2及び図3参照)に連続するように配置されている。
【0025】
振動伝達・制御部24は、ホッパー部22に対して機械的に振動を加えてホッパー部22内の部材25に振動を伝達させるための部材であって、基台36と、この基台36に設けられる振動発生機構37と、振動発生機構37を制御する制御手段38とを備えて構成されている。振動伝達・制御部24は、矢印Sで示す方向に振動を発生させることができるように構成されている(矢印Sは上記部材案内方向に直交する方向である)。
【0026】
ここで、ホッパー部22及びリニアフィーダ部23を振動させて部材25を移動させる原理について一例を挙げて説明する。例えば、机上の紙の上に物品を置き、この物品を前方に移動させようとする場合、紙の一端を手で持ち、そして紙を前方へゆっくりと押して物品と一緒に前進させ、この後、急激に紙を引っ張ると、物品は滑って移動する。つまり、この動作を繰り返し行うように構成したのが振動伝達・制御部24(振動発生機構37及び制御手段38)である。
【0027】
上記構成及び構造において、ホッパー部22の上方から部材25を落とし、ホッパー部22の内部に所定量(例えばホッパー部22の最大収容量の半分)の部材25を供給した後、振動伝達・制御部24によって矢印Sの方向に振動を発生させて装置全体を作動状態にすると、部材25は直接的に排出部30へと案内されるのではなく、一時的に停滞してから排出部30へと案内される。これは、複数の階段形状部31及び波形状部32の機能によるものである。すなわち、矢印Sで示す方向の振動状態にある中では、複数の階段形状部31によって部材25の姿勢が整えられ、また、複数の波形状部32によって部材25が上記部材案内方向へと確実に落下するようになる。本発明においては、排出部30の上で部材25が寄せ集まって固まってしまうようなことはない。
【0028】
排出部30へと落下した部材25は、排出部30を介してリニア整列路33に受け渡され、この後、図2に示す如くの状態から、図3に示す如くの状態へと送り出される。従って、本発明では、部材25を短い送り量及び送り時間で排出部30から排出するとともに、これによって端子セット位置35においても部材25を短い送り量及び送り時間で一つずつ供給することができる。
【0029】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0030】
尚、ホッパー部22の外側に詰まり検知センサ39を設けても良いものとする。詰まり検知センサ39は、部材25の排出が途絶えていないか検知するもので、制御手段38に信号が送られるようになっている。仮に部材25の排出が途絶えていたとすると、排出部30の下からシリンダ40によって突き上げを行い、排出の再開を図るようにすることが好ましいものとする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の部材排出装置の一実施の形態を示す模式的な図であり、(a)は構成説明図、(b)は波形状部の拡大図、(c)は階段形状部の拡大図である。
【図2】部材がリニアフィーダ部を進む状態を示す平面図である。
【図3】リニアフィーダ部全体に部材が送り出された状態を示す平面図である。
【図4】従来例の模式的な図であり、(a)は従来の端子排出装置の平面図、(b)は帯状部材を用いた場合の図である。
【図5】部材が排出される過程で寄せ集まって固まってしまう現象を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
21 部材排出装置
22 ホッパー部(部材案内手段)
23 リニアフィーダ部
24 振動伝達・制御部(振動伝達・制御手段)
25 部材
26 前壁(第二ガイド手段)
27 後壁(第一ガイド手段)
28 側壁
29 供給部
30 排出部
31 階段形状部
32 波形状部
33 リニア整列路
34 ガイド突条
35 端子セット位置
36 基台
37 振動発生機構
38 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の量で供給される部材が通過する供給部、及び供給される量よりも少ない量で前記部材が排出される排出部を有するとともに、前記供給部の側から前記排出部へと前記部材が案内される形状の部材案内手段と、
該部材案内手段に機械的に振動を加えて該部材案内手段内の前記部材に振動を伝達させる振動伝達・制御手段とを備え、
前記部材案内手段は、前記供給部から前記排出部へと向かう部材案内方向に対し逆方向に、前記部材の幅方向の一部を支える複数の略真っ直ぐにのびる階段形状部を有し、
前記振動伝達・制御手段は、前記複数の階段形状部が、前記部材案内手段内の前記部材を前記排出部の側に移動させないように一時的に停滞させてから前記部材を前記排出部へと案内するように、前記部材案内手段を機械的に振動させる
ことを特徴とする部材排出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部材排出装置において、
前記部材案内手段は、互いに相対向する位置に配置され且つ相対的な距離が前記部材案内方向に小さくなる側面視略V字状に配置される第一ガイド手段及び第二ガイド手段を有し、
前記第一ガイド手段は、前記部材の前記幅方向の一部を支える大きさの階段に形成される前記複数の階段形状部を有し、
前記第二ガイド手段は、前記複数の階段形状部の階段よりも小さな階段に形成される複数の略真っ直ぐにのびる波形状部を有する
ことを特徴とする部材排出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の部材排出装置において、
前記振動伝達・制御手段は、前記部材案内手段を前記部材案内方向に対し略直交する方向に機械的に振動させる
ことを特徴とする部材排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−58875(P2010−58875A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224301(P2008−224301)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(308017283)ティーエフシー株式会社 (2)
【出願人】(508265309)株式会社駿遠商会 (1)
【Fターム(参考)】