説明

配管中のガス成分計測装置及び排ガス成分計測用煙道

【課題】産業設備のプラントの現場における配管長が長い場合や、ガス吸収量が大きい場合においても、オンラインでガス成分の分析が可能な配管中のガス成分計測装置及び排ガス成分計測用煙道を提供する。
【解決手段】発振された基本レーザ光22を第1のレーザ光21−1に波長変換する第1の波長変換部23と、基本レーザ光を波長変換し、第2のレーザ光22−2とする第2の波長変換部24と、第1及び第2のレーザ光を導入して、被測定ガス中のガス成分に照射するするガス測定部25と、照射される第1のレーザ光22−1及び第2のレーザ光22−2により高い準位に励起された励起分子が低い準位に電子的に緩和する際、その準位が下がるときに発生する自然放射増幅光(Amplified Spontaneous Emission:ASE)を計測する光検出器26と、前記被測定ガス11中に存在する油分由来のハイドロカーボンが発生する蛍光50を計測する蛍光検出部51とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザによる発光分析による配管中のガス成分計測装置及び排ガス成分計測用煙道に関する。
【背景技術】
【0002】
産業設備のガスプラント内のガス配管内のガス濃度を計測する方法として、従来半導体レーザ吸収法による方法が確立され、JIS化されている(JISB7993:非特許文献1)。
【0003】
この半導体レーザ吸収法によるレーザ装置の概略を図15に示す。
図15に示すように、ガス配管から分岐されたサンプル配管101に対し、レーザ装置110からレーザ光Lを照射し、被測定ガス102のガス成分を分析している。
ここで、符号101a、101bは石英窓、112は反射ミラー、113は第1の検出器であり、114は第2の検出器である。
前記第1の検出器113では、参照光(I0)を求め、第2の検出器114ではサンプル配管101内の透過した光の強度(I)を求めており、透過率T=(I/I0)を求めている。この分析手法により、様々なガス成分濃度のオンライン分析が可能となってきている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】JISB7993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガス成分の分析を行うに際して、図15のような配管から分岐されたサンプル配管101を用いて、半導体レーザ吸収法により計測する場合には、光の吸収の問題はないものの、図16に示すようなガス配管120の長さが長い場合、入射したレーザ光Lが散乱されることで、第2の検出器114で十分な光強度が検知されない、という問題がある。なお、図16中、符号121a、121bは石英窓である。
【0006】
また、ガス吸収量が大きい場合には入射したレーザ光が吸収されてしまい、十分な光強度が検知されない、という問題がある。
【0007】
そこで、産業設備の各種プラントの現場における配管長が長い場合や、ガス吸収量が大きい場合においても、入射レーザ光が吸収されることなく、オンラインでガス成分の分析が可能な方法が切望されている。
また、ガス組成以外に、ガスプラント由来のガス成分以外の成分(例えばハイドロカーボン(HC:油分)、煤塵、アルカリ金属等)についても、同時に計測することで一度の計測で多面的な分析が可能な配管中のガス成分計測装置の出現が望まれている。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、産業設備のプラントの現場における配管長が長い場合や、ガス吸収量が大きい場合においても、オンラインでガス成分の分析が可能な配管中のガス成分計測装置及び排ガス成分計測用煙道を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、レーザ装置から発振された基本レーザ光を第1のレーザ光に波長変換する第1の波長変換部と、前記基本レーザ光を波長変換し、第2のレーザ光とする第2の波長変換部と、第1及び第2のレーザ光を導入して、被測定ガス中のガス成分に照射するするガス測定部と、照射される第1のレーザ光及び第2のレーザ光により高い準位に励起された励起分子が低い準位に電子的に緩和する際、その準位が下がるときに発生する自然放射増幅光(Amplified Spontaneous Emission:ASE)を計測する光検出器と、前記被測定ガス中に存在する油分由来のハイドロカーボンが発生する蛍光を計測する蛍光検出部とを具備することを特徴とする配管中のガス成分計測装置にある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、被測定ガスのガス成分が発する蛍光の相対強度より、被測定ガスのガス温度を計測することを特徴とする配管中のガス成分計測装置にある。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、第1のレーザ光又は第2のレーザ光のいずれかを用いて、被測定ガス中に存在する煤塵が発するミー散乱光を計測する煤塵検出部を具備することを特徴とする配管中のガス成分計測装置にある。
【0012】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つにおいて、前記レーザ光を用いて、被測定ガス中に存在する金属成分が発するプラズマ光を計測する金属成分検出部を具備することを特徴とする配管中のガス成分計測装置にある。
【0013】
第5の発明は、第1の発明において、前記ガス測定部が長い配管からなる計測部であり、長い配管内に計測する排ガスの流れ方向と同一方向に、レーザ光を照射し、前記配管に沿った所定間隔の各ゾーンの計測位置毎に、蛍光検出器の焦点を順次調整してハイドロカーボン由来の蛍光を検出することを特徴とする配管中のガス成分計測装置にある。
【0014】
第6の発明は、第5の発明において、前記ガス測定部が長い配管からなる計測部であり、長い配管内に計測する排ガスの流れ方向と同一方向に、レーザ光を照射し、前記配管に沿った所定間隔のゾーン毎の計測位置に蛍光を計測する光検出ポートを複数設け、蛍光より分光器を有する第2の蛍光検出器でNO濃度を検出することを特徴とする配管中のガス成分計測装置にある。
【0015】
第7の発明は、第5又は6の発明において、前記ガス測定部が長い配管からなる計測部であり、長い配管内に計測する排ガスの流れ方向と同一方向に、レーザ光を照射し、前記配管に沿った所定間隔のゾーン毎の計測位置に煤塵が発するミー散乱光を計測する光検出ポートを複数設け、煤塵由来のミー散乱光を検出することを特徴とする配管中のガス成分計測装置にある。
【0016】
第8の発明は、第6又は7の発明において、前記配管に沿った所定間隔のゾーン毎の計測位置にレーザ光の焦点を順次合わせ、発生するプラズマ光よりアルカリ金属成分を検出することを特徴とする配管中のガス成分計測装置にある。
【0017】
第9の発明は、第5乃至8の発明のいずれか一つの配管中のガス成分計測装置を有することを特徴とする排ガス成分計測用煙道にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ASEの赤外領域での発光分析によりガス成分を計測することができるので、産業設備における計測対象の配管長が長い場合や、ガス吸収量が大きい場合においても、ガス成分の濃度分析がオンラインで分析可能となる。また、ASEは指向性のある光として発振するので、ASE発光成分を集光し易く、計測感度が高いものとなる。なお、ASEは赤外領域の光であるので、入射レーザ光(可視光線、紫外光)との分離が容易となり、シグナルノイズ比の高い検出が可能となる。
さらに、同時にガス中の油分(ハイドロカーボン)、煤塵、金属成分等の成分も計測でき、一度の計測で多面的な分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。
【図2】図2は、NOのエネルギー準位の模式図である。
【図3】図3は、COのエネルギー準位の模式図である。
【図4】図4は、実施例2に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。
【図5】図5は、NOガスの蛍光の信号強度と、回転量指数(J)との関係図である。
【図6】図6は、温度300Kと1250Kにおける「A2Σ+←X2Π(0,0)」遷移におけるP12枝におけるポンプ光のエネルギーのLIF励起スペクトル強度図である。
【図7】図7は、実施例3に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。
【図8】図8は、実施例3に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。
【図9】図9は、実施例4に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。
【図10】図10は、実施例5に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。
【図11】図11は、実施例6に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。
【図12】図12は、実施例7に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。
【図13】図13は、実施例8に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。
【図14】図14は、実施例9に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。
【図15】図15は、従来の半導体レーザ吸収法によるレーザ装置の概略図である。
【図16】図16は、煙道を半導体レーザ吸収法により計測する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0021】
本発明による実施例に係る配管中のガス成分計測装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例1に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。図1に示すように、本実施例に係る配管中のガス成分計測装置10Aは、煙道15中の被測定ガス11に対して照射される基本レーザ光(なお、実線は光軸を示す)22により高い準位に励起された励起分子が低い準位に電子的に緩和する際、準位が下がるときに発生する自然放射増幅光(Amplified Spontaneous Emission:ASE)から被測定ガス11中のガス成分を計測するものである。
【0022】
具体的な装置構成としては、図1に示すように、本実施例に係る配管中のガス成分計測装置10Aは、レーザ装置21から発振された基本レーザ光(1064nm)22を第1のレーザ光(波長:226nm)22−1に波長変換する第1の波長変換部23と、発振されたレーザ光22を波長変換し、第2のレーザ光(波長:600nm)22−2とする第2の波長変換部24と、第1のレーザ光22−1及び第2のレーザ光22−2の合波レーザ光22−3を導入して、被測定ガス11中のガス成分に照射するガス測定部25と、照射される合波レーザ光22−3(第1のレーザ光22−1及び第2のレーザ光22−2)により、高い準位(E準位)に励起された励起分子が低い準位(C準位)に電子的に緩和する際、その準位が下がるときに発生する自然放射増幅光(Amplified Spontaneous Emission:以下「ASE」という)14を計測する光検出器(例えばフォトダイオード、MCTディテクタ等)26と、被測定ガス11中の成分が発する蛍光50を計測する蛍光検出部51とを具備するものである。
図1中、15a、15bはレーザ光の透過する石英窓、29は分光器、31は集光レンズ、33は光フィルタ、34a〜34dはミラーを各々図示する。
【0023】
本発明の配管中のガス成分計測装置は、ASEの発光する原理を用いており、従来のような吸収分析と異なるので、被測定ガス11のガス吸収光強度低下の影響がなくなるものとなる。
【0024】
次に、図2に示すNOのエネルギー準位の模式図を参照してASEの発光原理を説明する。
被測定ガス中の例えば一酸化窒素(NO)にレーザ光を照射して、電子的に励起させると、図2に示すように、基底状態(X)から、励起状態に励起(X準位→A準位→E準位)する。
【0025】
具体的には第1のレーザ光(226nm)22−1の励起波長ではX準位からA準位に励起され、次いで第2のレーザ光(600nm)22−2の励起波長ではA準位からE準位に励起される。
このとき、E準位の分子の数がC準位の分子の数よりも多い場合に、反転分布状態となり、E準位からC準位に自然放出され、これがきっかけとなり、E準位からC準位の誘導放出である1170〜1184nmの自然放射増幅光(ASE)が発生する。
【0026】
被測定ガス中の計測対象のガス成分としては、一酸化窒素(NO)以外に、例えば
一酸化炭素(CO)、水(H2O)、二酸化窒素(NO2)、メタン(CH4)、アンモニア、ベンゼン等を例示することができる。
【0027】
図3は一酸化炭素(CO)のエネルギー準位の模式図である。
図3に示すように、一酸化炭素(CO)では、基底状態から215nmの2光励起により、X準位からE準位に励起される。
【0028】
このとき、E準位の分子の数がB準位の分子の数よりも多い場合に、反転分布状態となり、E準位からB準位に自然放出がされ、これがきっかけとなり、E準位からC準位の誘導放出である1.7μmの自然放射増幅光(ASE)が発生する。
【0029】
また、ASEは、赤外領域(例えばNOの場合には、1170〜1184nm)の波長であるので、可視領域や紫外領域と異なり、フィルタ33での分離が容易であり、計測精度が向上する。
【0030】
蛍光やラマン等の発光分析は等方発光であるので四方八方に光が拡がり、指向性が無いのに対し、ASEは指向性(レーザ光22の入射方向と出射方向との二方向のみASE14が発光する)があり、高感度での分離が可能となる。
よって、本実施例では、前記ガス測定部25に対してレーザ光が導入する光導入ラインと、発生したASE14を放出するレーザ光の進行方向と同方向の光放出ラインとを具備している。
【0031】
この結果、産業設備における計測対象の配管長が長い場合や、ガス吸収量が大きい場合においても、ガス成分の濃度分析がオンラインで可能となる。
また、ASEは指向性のある光として発振するので、ASE発光成分を集光し易く、計測感度が高いものとなる。
さらに、ASEは赤外領域の光であるので、入射レーザ光(可視光線、紫外光)との分離が容易となり、シグナルノイズ比の高い検出が可能となる。
【0032】
また、本実施例においては、ガス中に存在する油分由来のハイドロカーボン(HC)が発生する蛍光50を蛍光検出部51で計測している。
ここで、前記ハイドロカーボンの検出には蛍光検出部51において、波長300〜450nm(より好適には350〜400nm)以外の波長を除外する分光器を備え、ハイドロカーボン検出を良好としている。
これにより、ASE14の計測によるガス成分の計測と同時に、ガス中に存在するハイドロカーボン(HC)の分析も可能となる。
【0033】
この結果、ガスプラント由来のガス成分以外の他の成分であるハイドロカーボン(HC)についても同時に計測することで、一度の計測で多面的な分析が可能となる。
【0034】
この結果、排ガス中に含まれるハイドロカーボン量が多いような場合には、排ガス中の油分(特にタール成分)が多いと判断され、燃焼条件の見直しを行う制御を図示しない制御装置で行うようにしている。この結果、ガス精製設備の負担が軽減し、配管の閉塞等が解消される。
【実施例2】
【0035】
次に、実施例2において、本発明の他の配管中のガス成分計測装置について、図面を参照して説明する。
図4は、実施例2に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。図4に示すように、本実施例に係る配管中のガス成分計測装置10Aは、前記蛍光検出部51において、ガス成分中のNO由来の蛍光(NO)50Aを計測し、予め測定しておいた温度曲線に照らして、ガス中の温度計測を行うようにしている。
ここで、前記NO由来の蛍光(NO)50Aの検出には蛍光検出部51において、波長300nm以下の波長の光を透過するフィルタ(好適には205nm以下、例えば227nmのフィルタ等)を有する分光器を備え、NO由来の蛍光(NO)50Aの検出を良好としている。
これにより、ASE14の計測によるガス成分の計測と同時に、ガス中の温度を計測することが可能となる。
【0036】
図5はNOガスの蛍光の信号強度と、回転量子数(J)との関係図である。図5中、黒丸印は300Kにおける測定値であり、四角印は1250Kにおける測定値である。これらのプロットを結ぶ線は下記式(1)を用いたフィッテイングである。
このチャートは電子状態における基底状態から第一励起状態の電子励起振動回転スペクトルである。
【0037】
また、図6は温度300Kと1250Kにおける「A2Σ+←X2Π(0,0)」遷移におけるP12枝におけるポンプ光のエネルギーのLIF励起スペクトル強度(ポンプ光波長44060cm-1)の図である(波長226nm付近で挿引している)。
【0038】
このスペクトル線の回転量子数(J)に対応する相対強度を測定し、その測定結果から、下記式(1)を温度の関数としてあてはめることにより、測定場の温度を算出することができる。
j/Nj=0=(2J+1)exp(−[(kcBJ)・(J+1)]/(kT))…(1)
ここで、
j:回転量子数Jにおける分子数(数密度)
j=0:全分子数
J:回転量子数
k:ボルツマン定数
c:光速度
B:回転定数
T:温度(回転温度)
である。
【0039】
よって、NO由来の蛍光(NO)50Aにより信号強度を求め、比較することで、排ガスの温度を予測することができる。この結果、従来においては、例えば熱電対等における配管内部の温度計測は、スポット的な温度計測であったものが、計測場全体(レーザ光の光路長全体)の平均温度を非接触で求めることができる。
また、ハイドロカーボン(HC)由来の蛍光との分離には、HC由来の蛍光は350〜400nmの範囲で計測するので、300nm以下となるように、分光器を用いて分光する。これにより、NO由来の蛍光(NO)50AとHC由来の蛍光(HC)50Bの両方の蛍光が測定できる。
【実施例3】
【0040】
次に、実施例3において、本発明の他の配管中のガス成分計測装置について、図面を参照して説明する。
図7は、実施例3に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。図7に示すように、本実施例に係る配管中のガス成分計測装置10Bは、図1に示した蛍光検出部51以外に、さらに、第1のレーザ光22−1又は第2のレーザ光22−1のいずれかを用いて、ガス中に存在する煤塵が発するミー散乱光60を計測する煤塵検出部61を具備するものである。これにより、煤塵が発するミー散乱光60を煤塵検出部61で検出信号の強度を計測することで、煤塵濃度を求めることができる。なお、前記煤塵検出部61としては、例えばファトダイオード(Si半導体型等)を例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0041】
ここで、波長の短い第1のレーザ光(波長:226nm)22−1を用いる場合には、小さい粒径の煤塵濃度を計測することができる。
一方、波長の長い第2のレーザ光(波長:600nm)22−2を用いる場合には、大きい粒径の煤塵濃度を計測することができる。
よって、求める粒径に応じて、第1のレーザ光か第2のレーザ光かを選択し、どちらかのラインを遮断するチョッパ62−1、62−2を設けるようにしている。
【0042】
蛍光の分析との併用する場合には、実施例1で説明したように、先ず蛍光分析を行ってASEを計測した後、第1のレーザ光22−1又は第2のレーザ光22−2を用いて、煤塵濃度を計測するようにすればよい。
【0043】
また、本実施例の変形例を示す図8に示すように、例えば30cm/1ns程度の時間遅れとなるディレイライン63−1、63−2を設け、第1のレーザ光22−1及び第2のレーザ光22−2を用いて先ず、蛍光によるNOのASEを計測し、その後、タイミングをずらして煤塵濃度を計測するようにすればよい。なお、ディレイライン63−1、63−2には、前記チョッパ62−1、62−2をそれぞれ有するようにしている。
【実施例4】
【0044】
次に、実施例4において、本発明の他の配管中のガス成分計測装置について、図面を参照して説明する。
図9は、実施例4に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。図9に示すように、本実施例に係る配管中のガス成分計測装置10Cは、図1に示した蛍光検出部51以外に、前記基本レーザ光22を用いて、ガス中に存在するアルカリ金属成分が発するプラズマ光70を計測する金属成分検出部71を具備するものである。
本実施例では、レーザ装置21からの波長1064nmの基本レーザ光22を排ガス中の金属成分に照射させ、この際に発生するプラズマ光70を金属成分検出部71で計測している。
【0045】
これにより、蛍光によるNOのASEを計測した後、排ガス中に含まれる金属酸化物(Na、K、Li、Ca、Mgの酸化物等)を時間遅れで計測するようにしている。この結果、排ガス中の金属成分濃度を検出し、必要に応じて対応を行うようにすればよい。このように、金属成分の排出量が把握できるので、プラント保持に関するデータとして活用することができる。例えばNa、K成分は、スラッギング、ファウリングの原因となるため、その予測のためのデータと成りうる。
【実施例5】
【0046】
次に、実施例5において、本発明の他の配管中のガス成分計測装置について、図面を参照して説明する。
図10は、実施例5に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。図10に示すように、本実施例に係る配管中のガス成分計測装置10Dは、図1に示した装置において、前記ガス測定部が長い配管である煙道15aからなる計測部であり、長い煙道15a内に計測する排ガスの流れ方向と同一方向に、合波レーザ光22−3を照射し、前記配管81に沿った所定間隔の各ゾーンS1〜Sの計測位置毎に、第1の蛍光検出部51Aの焦点を順次調整してハイドロカーボン由来の蛍光(HC)50Bを検出するようにしている。
ここで、図10中、符号15b、15cは石英窓、81は、特定の波長の光(ASE14)を反射し、その他の波長の光(蛍光50)を透過するダイクロイックミラー、82は受光した光の内、所定の波長をカットするフィルタである。
なお、ASE14の計測は、前述したのと同様に、光検出器26にて計測する。
【0047】
前記第1の蛍光検出部51Aとしては、例えばICCDカメラを用い、受光の際の焦点を各ゾーンS1〜Sに合わせ、合波レーザ光22−3であるパルスレーザ(例えば10〜500Hz)が到達したときに、ICCDカメラにてゾーン毎に順次蛍光強度の測定を行うようにしている。各ゾーンS1〜Sの計測を順次行い、その強度の和を求め、平均濃度を求める。
【0048】
ここで、蛍光はASEと異なり、指向性を有さない光(等方的に発振する光)であるので、各ゾーンにおいて蛍光を測定し、その強度を積算し、平均を求める。これにより、長い配管内部におけるハイドロカーボンの濃度を確認することが可能となる。
ここで、本発明で長い配管とは、(配管長さ/配管直径)>10の配管をいい、産業設備の各種プラントにおける配管の場合、最低5m以上の長さのものを一般に示している。
そして、少なくとも数カ所の各ゾーンS1〜Sで計測し、その平均を求めるので、排ガス状態をより的確に把握することができる。
【0049】
また、フィルタ82として二種類(350〜400nmの波長の光を透過するフィルタ及び250以下の波長の光を透過するフィルタ)用意し、先ず350〜400nmの光を透過するフィルタを用いて蛍光(HC)50Bよりハイドロカーボンを計測する。その後250nm以下の波長の光を透過するフィルタに交換して、蛍光(NO)50AよりNO濃度を計測し、前述と同様にして温度を求めることができる。
温度情報は、各ゾーンS1〜Sでの配管内の温度分布情報と、その平均温度情報との両方を求めることができる。
なお、NO濃度の蛍光(NO)50Aの計測には、図6に示すように、J=16.5の計測と、J=4.5の計測と二回の波長挿引することが必要となる。
【0050】
これにより、実施例2のように排ガス中のハイドロカーボン濃度と温度とをピンポイントではなく、長い煙道15a内で計測でき、より排ガスの状態を計測することが可能となる。
なお、NOの代わりに、CO濃度を計測することでも温度を計測することができる。その場合の分光手段は107〜108nmの波長のみを透過できるものを用いるようにすればよい。この光学手段としては、真空紫外用分光器を例示でき、測定波長域が真空紫外域であるため、酸素のない測定場である必要がある。ここでCO濃度を計測するにはさらに、フィルタを切り替えて計測する。
【実施例6】
【0051】
次に、実施例6において、本発明の他の配管中のガス成分計測装置について、図面を参照して説明する。
図11は、実施例6に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。図11に示すように、本実施例に係る配管中のガス成分計測装置10Eは、図10に示した装置において、さらに、前記煙道15aに沿った所定間隔のゾーンS1〜S毎の計測位置に蛍光を計測する光検出ポート83−1〜83−nを複数設け、蛍光(NO)50Aより分光器51bを有する第2の蛍光検出部51BでNO濃度を検出するものである。なお、図11中、符号84は光ファイバを図示する。
本実施例では、前記煙道15aに沿った所定間隔のゾーンS1〜S毎の計測位置に蛍光を計測する光検出ポート83−1〜83−nを複数設けることにより、各ゾーンでの蛍光(NO)50Aを各ポートで各々検出し、分光器51bを有する第2の蛍光検出部51Bで蛍光強度を計測するようにしている。本実施例では、分光器51bを有するので、実施例5のような、図6に示すJ=16.5の計測と、J=4.5の計測と二回の波長挿引が不要となる。
よって、第1の蛍光検出部50Aでハイドロカーボン由来の蛍光(HC)50Bを計測すると共に、第2の蛍光検出部50BでNO由来の蛍光(NO)50Aを計測することができる。
【実施例7】
【0052】
次に、実施例7において、本発明の他のガス成分計測装置について、図面を参照して説明する。
図12は、実施例7に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。図12に示すように、本実施例に係る配管中のガス成分計測装置10Fは、実施例6に示す配管中のガス成分計測装置10Eにおいて、前記煙道15aに沿った所定間隔のゾーンS1〜S毎の計測位置に蛍光を計測する光検出ポート83−1〜83−nを複数設けることにより、各ゾーンでのミー散乱光60を各光検出ポートで各々検出し、煤塵が発するミー散乱光60を煤塵検出部61で検出信号の強度を計測することで、煤塵濃度を求めるようにしている。
よって、第1の蛍光検出部51Aでハイドロカーボン由来の蛍光(HC)50BとNO由来の蛍光(NO)50Aを計測すると共に、煤塵検出部61で煤塵濃度を計測することができる。
【実施例8】
【0053】
次に、実施例8において、本発明の他の配管中のガス成分計測装置について、図面を参照して説明する。
図13は、実施例8に係るガス成分計測装置の概略図である。図13に示すように、本実施例に係る配管中のガス成分計配管中の測装置10Gは、図11に示す配管中のガス成分計測装置10Eにおいて、さらに、各ゾーンS1〜Sでのミー散乱光60を各光検出ポート83−1〜83−nで各々検出し、煤塵が発するミー散乱光60を煤塵検出部61で検出信号の強度を計測することで、煤塵濃度を求めるようにしている。
よって、第1の蛍光検出部51Aでハイドロカーボン由来の蛍光(HC)50Bを計測すると共に、第2の蛍光検出部51BでNO由来の蛍光(NO)50Aを計測し、更に煤塵検出部61で煤塵濃度を計測することができる。
【0054】
本実施例では、NO由来の蛍光50Aを計測しているが、煤塵濃度が低い場合には、この第2の蛍光検出部51Bにおいて、ミー散乱光60より煤塵濃度を計測することができる。ただし、一般にミー散乱光の強度が強いので、NO由来の蛍光(NO)50Aとミー散乱光60の検出とは別々の独立した検出器にて検出することが好ましい。
【実施例9】
【0055】
次に、実施例9において、本発明の他の配管中のガス成分計測装置について、図面を参照して説明する。
図14は、実施例9に係る配管中のガス成分計測装置の概略図である。図14に示すように、本実施例に係る配管中のガス成分計測装置10Hは、図13に示す配管中のガス成分計測装置10Gにおいて、さらに、基本レーザ光(1064nm)22を照射するラインを有し、移動集光レンズ90が移動レール91上を移動し、基本レーザ光(1064nm)22の焦点を各ゾーンS1〜Sにあて、これにより発生するプラズマ光70を各ゾーンS1〜Sで計測し、それを光ファイバ85により、金属成分検出部71に送り、ここでレーザブレイクダウン法により、排ガス中に含まれる金属成分(Na、K、Li、Ca、Mgの酸化物等)を検出するようにしている。
【0056】
以上説明したような、配管中のガス成分計測装置を有する長い煙道15aを用い、既存の排ガス煙道からその一部の排ガスを該長い煙道15a内へバイパスさせ、この長い煙道15a内において、蛍光、ASE、プラズマ光の計測をすることで排ガス成分を効率よく計測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明に係る配管中のガス成分計測装置によれば、発光分析によりガス成分を計測することができるので、産業設備における計測対象の配管長が長い場合や、ガス吸収量が大きい場合においても、その配管全体のガス成分の濃度分析が可能となると共に、同時にガス中の油分(ハイドロカーボン)、煤塵、アルカリ金属等の成分も計測でき、信頼性の高い多面的な分析データの提供が可能となる。
【符号の説明】
【0058】
10A〜10H 配管中のガス成分計測装置
11 被測定ガス
14 ASE
21 レーザ装置
22 基本レーザ光
22−1 第1のレーザ光
22−2 第2のレーザ光
23 第1の波長変換部
24 第2の波長変換部
25 ガス測定部
26 光検出器
50 蛍光
50A 蛍光(NO)
50B 蛍光(HC)
51 蛍光検出部
51A 第1の蛍光検出部
51B 第2の蛍光検出部
60 ミー散乱光
61 煤塵検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ装置から発振された基本レーザ光を第1のレーザ光に波長変換する第1の波長変換部と、
前記基本レーザ光を波長変換し、第2のレーザ光とする第2の波長変換部と、
第1及び第2のレーザ光を導入して、被測定ガス中のガス成分に照射するするガス測定部25と、
照射される第1のレーザ光及び第2のレーザ光により高い準位に励起された励起分子が低い準位に電子的に緩和する際、その準位が下がるときに発生する自然放射増幅光(Amplified Spontaneous Emission:ASE)を計測する光検出器と、
前記被測定ガス中に存在する油分由来のハイドロカーボンが発生する蛍光を計測する蛍光検出部とを具備することを特徴とする配管中のガス成分計測装置。
【請求項2】
請求項1において、
被測定ガスのガス成分が発する蛍光の相対強度より、被測定ガスのガス温度を計測することを特徴とする配管中のガス成分計測装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
第1のレーザ光又は第2のレーザ光のいずれかを用いて、被測定ガス中に存在する煤塵が発するミー散乱光を計測する煤塵検出部を具備することを特徴とする配管中のガス成分計測装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記レーザ光を用いて、被測定ガス中に存在する金属成分が発するプラズマ光を計測する金属成分検出部を具備することを特徴とする配管中のガス成分計測装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記ガス測定部が長い配管からなる計測部であり、
長い配管内に計測する排ガスの流れ方向と同一方向に、レーザ光を照射し、
前記配管に沿った所定間隔の各ゾーンの計測位置毎に、蛍光検出器の焦点を順次調整してハイドロカーボン由来の蛍光を検出することを特徴とする配管中のガス成分計測装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記ガス測定部が長い配管からなる計測部であり、
長い配管内に計測する排ガスの流れ方向と同一方向に、レーザ光を照射し、
前記配管に沿った所定間隔のゾーン毎の計測位置に蛍光を計測する光検出ポートを複数設け、蛍光より分光器を有する第2の蛍光検出器でNO濃度を検出することを特徴とする配管中のガス成分計測装置。
【請求項7】
請求項5又は6において、
前記ガス測定部が長い配管からなる計測部であり、
長い配管内に計測する排ガスの流れ方向と同一方向に、レーザ光を照射し、
前記配管に沿った所定間隔のゾーン毎の計測位置に煤塵が発するミー散乱光を計測する光検出ポートを複数設け、煤塵由来のミー散乱光を検出することを特徴とする配管中のガス成分計測装置。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記配管に沿った所定間隔のゾーン毎の計測位置にレーザ光の焦点を順次合わせ、発生するプラズマ光よりアルカリ金属成分を金属成分検出部で検出することを特徴とする配管中のガス成分計測装置。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか一つの配管中のガス成分計測装置を有することを特徴とする排ガス成分計測用煙道。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−107094(P2011−107094A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265332(P2009−265332)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】