説明

配管減肉測定装置

【課題】配管内の湾曲部をスムーズに通過することができ、配管内での姿勢を一定に保持して検査することが可能な配管減肉測定装置を提供する。
【解決手段】配管11内に挿入される測定台車12と、測定台車12の前側に設けられ配管11の厚みを測定する厚み測定手段13と、測定台車12の後部に配置される推進手段14とを有する配管減肉測定装置10であって、測定台車12は、中央に配置される円筒ケーシング17と、円筒ケーシング17の外周部から半径方向外側に向けて突出する3つの平行リンク機構18と、各平行リンク機構18の半径方向外側に設けられた前後対となる全方向移動車輪19を有し、厚み測定手段13は、円筒ケーシング17の軸心位置に配置されて回転するセンサホルダ43に直交して取付けられた厚み測定センサ44とを有し、円筒ケーシング17の半径方向外側の一部には、測定台車12の位置を一定方向に保持する錘20が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平面内又は傾斜面内に配置され、湾曲部を有する長距離の配管の肉厚測定を行う配管減肉測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所、化学プラント、都市ガス供給設備、下水道設備等で使用されている液体やガス等の流体移送用の配管は、保全のために定期的に検査が行われている。しかし、地中に埋設された配管、高所に設けられた配管、管径の小さな(例えば、500mm以下の)配管等の配管内に直接人が入って内部点検を行うことができない配管では、検査機器を搭載した自走式の測定台車を配管内に挿入し、配管内を移動させながら検査を行っている。このとき、測定台車の側部から半径方向外側に突出する複数の車輪を配管の内面に当接させて移動することで、測定台車の配管内での姿勢(周方向位置)を一定に保つと共に、測定台車の中心を配管の軸心上に保持している(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−066562号公報
【特許文献2】特開平08−230666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載された測定台車では、測定台車が配管内の湾曲部(エルボ部)を通過しようとすると、車輪を回転方向に対して斜めに滑らせる必要があり、測定台車が湾曲部をスムーズに通過することが困難となるという問題がある。また、湾曲部を通過する際に、測定台車の車輪が回転方向に対して斜めに滑るために、湾曲部を通過する前後で測定台車の配管内での周方向位置が変化している。したがって、測定台車の配管内での姿勢(周方向位置)を基準として検査データを収集する場合、検査データの相対的な(測定台車に対する)周方向位置は特定できても、配管内での絶対的な周方向位置の特定はできないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、配管内の湾曲部をスムーズに通過することができると共に、測定台車の配管内での姿勢を保持して検査データの配管内での絶対的な周方向位置の特定が可能な配管減肉測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る配管減肉測定装置は、水平面内又は傾斜面内に配置された配管内に挿入される測定台車と、該測定台車の前側に設けられ前記配管の厚みを測定する厚み測定手段と、前記測定台車の後部に配置され、該測定台車を前進させる推進手段とを有する配管減肉測定装置であって、
前記測定台車は、中央に配置される円筒ケーシングと、該円筒ケーシングの外周部から半径方向外側に向けて突出する少なくとも3つの平行リンク機構と、該各平行リンク機構の半径方向外側に設けられた前後対となる全方向移動車輪とを有し、
前記厚み測定手段は、前記円筒ケーシング内に配置されたモータと、該モータによって回転駆動され前記円筒ケーシングの軸心位置に配置されたセンサホルダと、該センサホルダに直交して取付けられた厚み測定センサとを有し、
しかも、前記円筒ケーシングの半径方向外側の一部には、前記測定台車の周方向位置を一定方向に保持する錘が設けられている。
【0007】
本発明に係る配管減肉測定装置において、前記少なくとも3つの平行リンク機構は、前記円筒ケーシングの前後の一方側に固定配置された固定リングと、前記円筒ケーシングの前後の他方側に前後方向に移動可能に配置された摺動リングと、前記固定リング及び前記摺動リングにそれぞれ基部が回動自在に連結されたクロスアームと、前記各クロスアームの先側に設けられ、前後両側にそれぞれ前記全方向移動車輪が設けられたリンクプレートと、前記摺動リングを前記固定リングの方向に付勢するスプリングとを有する構成とすることができる。
【0008】
本発明に係る配管減肉測定装置において、前記測定台車の前側には、前記センサホルダの1回転を検出する1回転検出センサが設けられていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る配管減肉測定装置において、前記推進手段は、前記円筒ケーシングの後部に該円筒ケーシングの軸心回りに回転自在に連結された長尺の可撓性部材と、該可撓性部材を前記配管内に挿入する送出し機構とを有することができる。
【0010】
本発明に係る配管減肉測定装置において、前記モータの動力線、前記厚み測定センサの信号線、及び前記1回転検出センサの信号線を含むケーブルは、前記可撓性部材の内部に収納されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る配管減肉測定装置においては、測定台車は全方向移動車輪を介して移動するため、測定台車の前後方向を保ったまま、任意の方向に移動することができ、配管内の湾曲部をスムーズに通過することができる。そして、円筒ケーシングの半径方向外側の一部に錘が設けられているため、配管内において、配管の軸に直交する面内(縦断面内)で測定台車が傾斜して、錘が配管内の最下位置に対向しない状態になると、錘に加わる重力により、測定台車に円筒ケーシングの中心軸の回りに回転する回転モーメントが発生し、測定台車は錘が配管内の最下位置に対向するように全方向移動車輪を介して配管内を円周方向に移動し、測定台車の傾斜を解消することができる。その結果、配管内での測定台車の姿勢(周方向位置)は一定方向に保持される。
【0012】
本発明に係る配管減肉測定装置において、少なくとも3つの平行リンク機構が、円筒ケーシングの前後の一方側に固定配置された固定リングと、円筒ケーシングの前後の他方側に前後方向に移動可能に配置された摺動リングと、固定リング及び摺動リングにそれぞれ基部が回動自在に連結されたクロスアームと、各クロスアームの先側に設けられ、前後両側にそれぞれ全方向移動車輪が設けられたリンクプレートと、摺動リングを固定リングの方向に付勢するスプリングとを有する場合、簡単な構成で、配管内に測定台車を挿入した際に、円筒ケーシングの軸心を配管の中央に容易に保持できる。
【0013】
本発明に係る配管減肉測定装置において、測定台車の前側に、センサホルダの1回転を検出する1回転検出センサが設けられている場合、1回転検出センサの信号から厚み測定センサの1回転を求めることができ、厚みセンサで得られた検査データの周方向位置の特定が可能となる。
【0014】
本発明に係る配管減肉測定装置において、前記推進手段が、円筒ケーシングの後部に円筒ケーシングの軸心回りに回転自在に連結された長尺の可撓性部材と、可撓性部材を配管内に挿入する送出し機構とを有する場合、可撓性部材の捩れ状態が測定台車に伝達するのを簡単な構成で防止することができ、測定台車を配管の内面に沿ってスムーズに移動させて、目標とする測定位置まで移動させることができる。
【0015】
本発明に係る配管減肉測定装置において、モータの動力線、厚み測定センサの信号線、及び1回転検出センサの信号線を含むケーブルが、可撓性部材の内部に収納されている場合、ケーブルが測定台車に引っ掛かってその走行を妨げる恐れがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る配管減肉測定装置の使用状態の説明図である。
【図2】同配管減肉測定装置の一部省略側面図である。
【図3】同配管減肉測定装置の全方向移動車輪の説明図である。
【図4】同配管減肉測定装置の円筒ケーシング内の構造を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図3に示すように、本発明の一実施の形態に係る配管減肉測定装置(以下、単に測定装置ともいう)10は、水平面内又は傾斜面内に配置された配管11内に挿入される測定台車12と、測定台車12の前側に設けられ配管11の厚み(肉厚)を測定する厚み測定手段13と、測定台車12の後部に配置され、測定台車12を前進させる推進手段14とを有するものであり、測定台車12を配管11内に挿入してその目標とする測定位置まで移動させた後、この測定台車12を配管11内から引出しながら、配管11の厚み測定を行う。以下、測定台車12の配管11内への挿入方向(引出し方向とは反対の方向)を、測定台車12の進行方向(前方)として、詳しく説明する。
【0018】
配管11は、直線部15と曲がり部16を組合わせて構成されている。なお、測定対象となる配管は、この構成に限定されるものではなく、例えば、直線部のみで構成されたものでもよく、また曲がり部のみで波形状に構成されたものでもよい。ここで、配管11は、例えば、50mm以上500mm以下程度の内径を有し、30m以上(主として、50m以上、更には70m以上)の長さを有している。なお、測定装置10は、長距離の配管の測定に適しているため、長さの上限値については規定していないが、例えば、200m以下(主として、150m以下、更には120m以下)程度である。
【0019】
図1、図2に示すように、測定台車12は、中央に配置される円筒ケーシング17と、円筒ケーシング17の外周部から半径方向外側に向けて突出する3つの平行リンク機構18と、各平行リンク機構18の半径方向外側に設けられた前後対となる全方向移動車輪19とを有している。更に、円筒ケーシング17の半径方向外側の一部(円筒ケーシング17の外周で最下位置となる部位)には、測定台車12の周方向位置を一定方向に保持する棒状の錘20が円筒ケーシング17の軸方向(前後方向)に沿って設けられている。
【0020】
ここで、測定台車12は、耐食性を備える金属(例えば、ステンレスやアルミニウム合金)やプラスチック(例えば、繊維強化プラスチック等)で構成され、軽量(例えば、3kg以下程度、更には1kg以下程度)であり、その全長(円筒ケーシング17の長さ)が30cm以下、更には15cm以下程度である。一方、錘20は、比重の大きな耐食性を備えた金属(例えば、ステンレス)で形成され、その重量は、測定台車12の重量に対して、例えば、0.5〜3倍とする。
【0021】
3つの平行リンク機構18は、円筒ケーシング17の前後の一方側(例えば、前側)の周囲に環状に固定配置された固定リング21と、円筒ケーシング17の前後の他方側(後側)の周面に環状に設けられ、前後方向に移動可能な摺動リング22と、固定リング21及び摺動リング22にそれぞれ基部が回動自在に連結されたクロスアーム23と、各クロスアーム23の先側に設けられ、前後両側にそれぞれ全方向移動車輪19が設けられたリンクプレート24と、摺動リング22を固定リング21の方向に付勢する引張りばね(スプリングの一例)25とを有している。クロスアーム23は、側面視してX字状に交差配置される主ロッド26と2つのガイドロッド27、28とを有するパンタグラフ式のものである。
【0022】
2つのガイドロッド27、28は、主ロッド26を幅方向両側から挟み込むように対向配置され、その交差部分が回動自在にねじ止め固定されている。この主ロッド26の基部が、固定リング21に回動自在に取付けられ、2つのガイドロッド27、28の基部が、摺動リング22に回動自在に取付けられている。ここで、各平行リンク機構18は、円筒ケーシング17の周囲に等間隔で設けているが、異なる間隔で設けてもよい。そして、平行リンク機構18は、円筒ケーシング17を配管11の軸心位置に保持するため3組設けているが、4組以上(上限は、8組程度)でもよい。また、リンクプレート24は、対向配置されて、全方向移動車輪19の車軸29を前後両側にそれぞれ回転可能に保持する2つのプレート部30、31で構成されている。なお、主ロッド26の先部は、対向配置されたプレート部30、31の間に配置され、しかも各プレート部30、31に形成された長孔32内を移動可能に取付けられている。また、各ガイドロッド27、28の先部は、プレート部30、31を、外側から挟み込むように、回動自在に取付けられている。
【0023】
摺動リング22を固定リング21の方向に付勢する引張りばね25の両側には、フック部33、34が設けられ、一方側のフック部33が、固定リング21にねじ止めされた係合部35に、また他方側のフック部34が、摺動リング22にねじ止めされた係合部36に、それぞれ引っ掛けられている。なお、引張りばね25は、円筒ケーシング17の周方向に隣り合うクロスアーム23の間に、1つずつ配置されている(ここでは、合計3つ)。しかし、その一部に配置してもよく(合計が1つ又は2つ)、また、隣り合うクロスアームの間に2つ以上配置してもよい。
【0024】
このように、各クロスアーム23は、固定リング21と摺動リング22に取付けられているため、配管11の半径方向に同期して伸縮できる。具体的には、リンクプレート24が、図2に示す実線の位置から二点鎖線の位置へ移動した場合、主ロッド26の先部がプレート部30、31の長孔32に沿って、測定台車12の後側へ移動する。このとき、固定リング21と摺動リング22との間隔S1が広がるように、摺動リング22が測定台車12の後側へ移動するため、他のリンクプレート24も同期して、その位置が変わる。この状態では、各引張りばね25に縮もうとする方向の力(圧縮力)が加わる。なお、この力は、各引張りばね25を固定リング21と摺動リング22に取付ける係合部35、36のねじ止め位置を変更することで調整できる。従って、測定台車12を配管11内に挿入した場合、各リンクプレート24は配管11の半径方向外側へ同期して広がろうとするため、円筒ケーシング17の軸心を配管11の軸心位置に配置できる。
【0025】
図3に示すように、全方向移動車輪19は、中央に車軸29が挿通される軸孔37が形成され、車軸29を介してリンクプレート24の前後両側にそれぞれ取付けられる回転体38と、回転体38の外縁とは非接触の状態で軸孔37の中心と同心の円周に沿って隙間を設けて環状に配置された複数の樽状の小回転体39とを有している。また、全方向移動車輪19は、回転体38の外縁に、小回転体39間に形成されている各隙間に嵌入するように突出して設けられ、各小回転体39を回転体38(車軸29)の回転方向に対して直交する方向に回転自在に支持する小回転体支持部40を有している。
【0026】
このような構成とすることで、車軸29を中心に回転可能な回転体38の周囲に、車軸29に直交する方向の軸を中心に回転可能な複数の小回転体39を配置することができ、全方向移動車輪19はあらゆる方向に回転可能となる。なお、小回転体39は、配管11の内面41から滑りにくい材質で構成する必要があるため、例えば、MCナイロン(登録商標)と呼ばれる6ナイロン(PA6)で構成することが好ましい。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、ゴム製やプラスチック製のものも使用できる。そして、全方向移動車輪19には、例えば特許3346996号公報に記載されているオムニホイールを使用することができる。
【0027】
回転体38の外側に設けられた複数の小回転体39が一体で回転体38(車軸29)の回りに回転することによって、測定台車12は配管11内をその軸方向に移動することができる。また、配管11の内面41に当接する各小回転体39が車軸29に対して直交する軸回りに回転することで、測定台車12は配管11内を円周方向(配管11の軸方向に直交する方向)に移動することができる。そして、測定台車12を配管11内に挿入した際に、配管11の軸に直交する面内(縦断面内)で測定台車12が傾斜すると(円筒ケーシング17の外周部で最下位置となる部位に取付けられている錘20が配管11内の最下位置に対向しない状態になると)、錘20に加わる重力により、測定台車12に円筒ケーシング17の中心軸の回りに回転する回転モーメントが発生し、測定台車12は錘20が配管11内の最下位置に対向するように全方向移動車輪19を介して配管11内を円周方向に移動して測定台車12の傾斜を解消する。その結果、配管11内では、測定台車12の姿勢(周方向位置)が一定方向に保持される。
【0028】
図4に示すように、厚み測定手段13は、円筒ケーシング17内に配置されたモータの一例であるギヤ付きモータ42と、ギヤ付きモータ42によって回転駆動され円筒ケーシング17の軸心位置に配置されたセンサホルダ43と、センサホルダ43に直交して取付けられた厚み測定センサの一例である超音波探触子44とを有している。ここで、円筒ケーシング17の前側には断面円形の前蓋部45が、後側には断面円形で後部に縮径した突出部61を備えた後蓋部46が、それぞれ嵌込まれている。そして、ギヤ付きモータ42と前蓋部45との間、及びギヤ付きモータ42と後蓋部46との間には、それぞれモータ押え47、48が配置され、円筒ケーシング17内でのギヤ付きモータ42の位置決めがなされている。
【0029】
ギヤ付きモータ42の出力軸49には、カップリング50及び回転軸51を介してセンサホルダ43が設けられている。センサホルダ43は、回転軸51の先部にねじ固定されて、円筒ケーシング17の前方へ突出して設けられ、しかも測定台車12の前側中心位置にある。このセンサホルダ43には、超音波探触子44が探触子カバー52を介して直交した状態で取付け固定されている。これにより、ギヤ付きモータ42によってセンサホルダ43が回転駆動することで、超音波探触子44を回転させることができる。
【0030】
また、カップリング50の前方には、周知のスリップリング53が設けられ、円筒ケーシング17内の信号用コード(図示せず)が、スリップリング53を介し、回転軸51の内部を通って超音波探触子44に接続されている。ここで、スリップリング53は、リング押え54により円筒ケーシング17内に取付けられている。なお、図4において、符号55、56は、円筒ケーシング17内への水の侵入を防止するOリングである。
【0031】
図1、図2に示すように、センサホルダ43の基部には、センサホルダ43の回転軸に直交させ、しかも超音波探触子44と平行に腕部材57が設けられている。そして、錘20の前側端面にはホール素子58が取付けられ、腕部材57の先側にはホール素子58と対向する位置に磁石59が取付けられて、1回転検出センサ60が形成されている。これによって、磁石59がホール素子58の前方を通過する度に、ホール素子58から出力信号が発生し、腕部材57の1回転を検出することができる。
【0032】
また、センサホルダ43を介して腕部材57と超音波探触子44は同期して回転するので、腕部材57の1回転を検出することで、超音波探触子44の1回転を検出することができる。更に、センサホルダ43の中心を挟んで、超音波探触子44の検出部と腕部材57の先側に取付けられた磁石59はそれぞれ反対側(180°位置)にあるので、配管11の縦断面内で磁石59が最下位置にある(磁石59がホール素子58の前方を通過する)とき、超音波探触子44の検出部は最上位置(配管11内の最上位置と対向する位置)にあることが分かる。なお、測定台車12には、測定台車12の走行距離を測定する図示しない距離センサ(例えば、ロータリエンコーダ等)も取付けられている。
【0033】
図1、図2、図4に示すように、推進手段14は、円筒ケーシング17の後部に、スリップリング62を介して円筒ケーシング17の軸心回りに回転自在に連結された長尺の可撓性部材の一例であるコイルスプリング63と、配管11の入口の外側に配置され、コイルスプリング63を配管11内に挿入する(送出す)図示しない送出し機構とを有している。ここで、コイルスプリングの代わりに、例えば、フレキシブルホース(樹脂ホース、FRP製のホース等)、ワイヤー等を使用することもできる。更に、配管が直線部から構成される場合は、棒を使用することもできる。そして、コイルスプリング63の内部には、ギヤ付きモータ42の動力線、超音波探触子44の信号線、1回転検出センサ60の信号線を含むケーブルが収納されている。なお、各信号線は、配管11の位置ごとの損傷状況を出力する演算部を有する制御装置(例えば、コンピュータ)や電源等(図示しない)に、それぞれ接続されている。
【0034】
スリップリング62は、後蓋部46の突出部61に外装されるベアリング64を介して回転可能に連結される断面円形の第1の接続部65と、第1の接続部65に締結部材(例えば、ねじ)を介して固定される断面円形の第2の接続部66と、第2の接続部66の後部に形成された雄ねじ部に先側が螺合し、後部にコイルスプリング63の先端部が固定されている連結部材67とを有している。このような構成とすることにより、コイルスプリング63を配管11内に送出して測定台車12を配管11内で移動させる際に、コイルスプリング63が測定台車12に対して捩れても、第1の接続部65がベアリング64を介して突出部61の外側で回転することができ、コイルスプリング63の捩れの影響が測定台車12に伝わるのを防止できる。
【0035】
続いて、本発明の一実施の形態に係る配管減肉測定装置を用いた配管減肉測定方法について説明する。
まず、測定対象となる配管11の近傍で、図2に示すように、測定台車12に推進手段14のコイルスプリング63を連結して配管減肉測定装置10を組立てる。次いで、前記したケーブルを構成する各線を、制御装置や電源等にそれぞれ接続する。これにより、配管減肉測定装置10による測定準備が整う。次に、厚み測定手段13が設けられた測定台車12を配管11内に挿入する。このとき、測定台車12に設けられた各全方向移動車輪19が、配管11の内面41を押圧するように、予め引張りばね25の圧縮力を係合部35、36により調整しておく。これにより、ギヤ付きモータ42の出力軸49の回転中心を、配管11の軸心位置に合わせることができる。
【0036】
そして、図示しない送出し機構を介して、コイルスプリング63を配管11内に挿入する。これにより、測定台車12に推進力が与えられ、全方向移動車輪19の回転体38が車軸29の回りに回転することによって、回転体38の外側に設けられた複数の小回転体39が回転体38と一体で車軸29の回りに回転し、測定台車12を配管11内をその軸方向に沿って測定範囲の起点位置まで移動させることができる。なお、起点位置までの距離は、測定台車12に設けられた距離センサからの信号により検出できるが、配管11内に挿入されたコイルスプリング63の長さから検出することもできる。
【0037】
そして、測定台車12が、目標とする測定位置まで移動したことを検出すれば、コイルスプリング63の配管11内への挿入を停止する。測定台車12が停止した際に、配管11の軸に直交する面内(縦断面内)で測定台車12が傾斜していると、錘20に加わる重力により測定台車12に円筒ケーシング17の中心軸の回りに回転する回転モーメントが発生し、測定台車12は錘20が配管11内の最下位置に対向するように全方向移動車輪19を介して配管11内を円周方向に移動する。その結果、測定台車12の傾斜が解消される。また、測定台車12のギヤ付きモータ42を作動させると、超音波探触子44の検出部と配管11の内面41との距離S2を略一定に維持しながら、超音波探触子44を回転させることができる。
【0038】
そして、起点位置に到達した測定台車12に接続しているコイルスプリング63を配管11内から引出しながら、測定台車12の超音波探触子44で配管11の厚みを測定する。なお、配管11内からのコイルスプリング63の引出しは、巻取り機等を用いて自動的に等速で行うことが好ましいが、作業者が行ってもよい。これにより、長距離の配管であっても、配管内からその厚みを作業性よく効率的に測定できる。なお、コイルスプリング63を配管11内から引出しながら測定台車12を移動させているときに、測定台車12が配管11の縦断面内で傾斜すると、測定台車12には円筒ケーシング17の中心軸の回りに回転する回転モーメントが発生し、測定台車12は底部が配管11内の最下位置に対向するように、全方向移動車輪19を介して配管11内の軸方向に移動しながら配管11内を円周方向に移動して測定台車12の傾斜を解消する。これにより、測定台車12が配管11内を移動する際に、配管11内での測定台車12の姿勢(周方向位置)が一定に保たれる。
【0039】
1回転検出センサ60で磁石59が検知されたとき、超音波探触子44の検出部は配管11内の最上位置と対向する位置にあるので、1回転検出センサ60で磁石59が検知されてから次に磁石59が検知させる間に、超音波探触子44の検出部は配管11内の最上位置に対向する位置から最下位置に向けて移動して再度配管11内の最上位置に戻ってくることになる。このため、1回転検出センサ60で磁石59が検知されてから次に磁石59が検知させる間に得られた検査データは、配管11内の最上位置から最下位置を通過して最上位置に戻るまでに得られた配管11の周方向の肉厚の変化に対応している。
【0040】
ここで、超音波探触子44を一定の速度で回転させると、1回転検出センサ60で磁石59が検知されてから次に磁石59が検知させるまでの時間は一定時間Tとなるため、1回転検出センサ60で磁石59が検知されてから時間がtだけ経過したとき、磁石は配管11内の最下位置から360t/T度だけ回転している。したがって、超音波探触子44の検出部は最上位置から、360t/T度だけ回転しており、1回転検出センサ60で磁石59が検知されてからの経過時間tを求めると、超音波探触子44の検出部が対向する(肉厚測定が行われる)配管11内の絶対的な(配管11内の最上位置を基準とした)周方向角度位置が分かる。
【0041】
一方、測定範囲の起点位置から配管11の軸方向に移動した距離は、測定台車12に設けられた距離センサから分る。このため、検査データが得られたときの、起点位置からの距離と、配管11内の最上位置を基準とした周方向角度位置とを組合わせることで、測定範囲内の配管の3次元の肉厚分布を正確に求めることができる。
【0042】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の配管減肉測定装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
そして、前記実施の形態においては、平行リンク機構がパンタグラフ式のクロスアームを備えている場合について説明したが、厚み測定センサを回転させるモータの出力軸を、配管の軸心位置に配置できる構成であれば、この構成に限定されるものではない。
また、センサホルダの1回転を検出するのに、ホール素子と磁石を用いて1回転検出センサを形成したが、1回転検出センサとしてエンコーダを使用することもできる。
【符号の説明】
【0043】
10:配管減肉測定装置、11:配管、12:測定台車、13:厚み測定手段、14:推進手段、15:直線部、16:曲がり部、17:円筒ケーシング、18:平行リンク機構、19:全方向移動車輪、20:錘、21:固定リング、22:摺動リング、23:クロスアーム、24:リンクプレート、25:引張りばね、26:主ロッド、27、28:ガイドロッド、29:車軸、30、31:プレート部、32:長孔、33、34:フック部、35、36:係合部、37:軸孔、38:回転体、39:小回転体、40:小回転体支持部、41:内面、42:ギヤ付きモータ、43:センサホルダ、44:超音波探触子、45:前蓋部、46:後蓋部、47、48:モータ押え、49:出力軸、50:カップリング、51:回転軸、52:探触子カバー、53:スリップリング、54:リング押え、55、56:Oリング、57:腕部材、58:ホール素子、59:磁石、60:1回転検出センサ、61:突出部、62:スリップリング、63:コイルスプリング、64:ベアリング、65:第1の接続部、66:第2の接続部、67:連結部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面内又は傾斜面内に配置された配管内に挿入される測定台車と、該測定台車の前側に設けられ前記配管の厚みを測定する厚み測定手段と、前記測定台車の後部に配置され、該測定台車を前進させる推進手段とを有する配管減肉測定装置であって、
前記測定台車は、中央に配置される円筒ケーシングと、該円筒ケーシングの外周部から半径方向外側に向けて突出する少なくとも3つの平行リンク機構と、該各平行リンク機構の半径方向外側に設けられた前後対となる全方向移動車輪とを有し、
前記厚み測定手段は、前記円筒ケーシング内に配置されたモータと、該モータによって回転駆動され前記円筒ケーシングの軸心位置に配置されたセンサホルダと、該センサホルダに直交して取付けられた厚み測定センサとを有し、
しかも、前記円筒ケーシングの半径方向外側の一部には、前記測定台車の位置を一定方向に保持する錘が設けられていることを特徴とする配管減肉測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の配管減肉測定装置において、前記少なくとも3つの平行リンク機構は、前記円筒ケーシングの前後の一方側に固定配置された固定リングと、前記円筒ケーシングの前後の他方側に前後方向に移動可能に配置された摺動リングと、前記固定リング及び前記摺動リングにそれぞれ基部が回動自在に連結されたクロスアームと、前記各クロスアームの先側に設けられ、前後両側にそれぞれ前記全方向移動車輪が設けられたリンクプレートと、前記摺動リングを前記固定リングの方向に付勢するスプリングとを有することを特徴とすることを特徴とする配管減肉測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の配管減肉測定装置において、前記測定台車の前側には、前記センサホルダの1回転を検出する1回転検出センサが設けられていることを特徴とする配管減肉測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の配管減肉測定装置において、前記推進手段は、前記円筒ケーシングの後部に該円筒ケーシングの軸心回りに回転自在に連結された長尺の可撓性部材と、該可撓性部材を前記配管内に挿入する送出し機構とを有していることを特徴とする配管減肉測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の配管減肉測定装置において、前記モータの動力線、前記厚み測定センサの信号線、及び前記1回転検出センサの信号線を含むケーブルは、前記可撓性部材の内部に収納されていることを特徴とする配管減肉測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−158392(P2011−158392A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21456(P2010−21456)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(591053856)新日本非破壊検査株式会社 (29)
【Fターム(参考)】