説明

配線システム

【課題】機能モジュールの内部回路における異常の有無を機能モジュールに電源を供給する前にあらかじめ検出することを可能にした配線システムを提供する。
【解決手段】基本モジュール1と複数台の機能モジュール2とが電力線Lpおよび情報線Liを介して接続される。基本モジュール1は診断部14を備え、診断部14では、各機能モジュール2を個別に選択し、選択した機能モジュール2について通常モードの電力を供給する前に検査用の電力を内部回路20に与える。このとき、内部回路20に流入する電流を検出する電流監視部27で検出した電流値が規定の閾値以上であるときに、診断部14は内部回路20に異常が生じていると判断し、当該機能モジュール2への電力の供給を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行配線された電力線と情報線とを介して接続した基本モジュールと複数台の機能モジュールとの間で、電力線と情報線との両方を通して基本モジュールから機能モジュールへの電力供給を可能とし、情報線を通して基本モジュールと機能モジュールとの間で通信を行う配線システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、信号線を介して中央監視装置と複数台の端末器とを接続し、信号線を伝送路に用いて複極のベースバンド信号からなる伝送信号を中央監視装置から端末器に対して時分割多重伝送方式によって伝送することにより、スイッチやセンサを接続した端末器と負荷を接続した端末器とを対応付け、スイッチやセンサの動作に呼応して負荷を動作させるようにした遠隔監視制御システムが提供されている(たとえば、特許文献1参照)。この遠隔監視制御システムでは、各端末器において、伝送信号を利用して中央監視装置との間で通信を行うとともに、伝送信号の電力を端末器の内部回路の電源に用いるように構成してある。
【特許文献1】特許第3136006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した遠隔監視制御システムでは、端末器の内部回路に異常が生じると、中央監視装置から端末器に伝送信号を伝送しても端末器からの応答が得られない場合がある。また、端末器の内部回路の異常により信号線の線間が短絡し、伝送信号を伝送できなくなる場合もある。したがって、端末器に電源を供給する前に内部回路の異常の有無をあらかじめ検査する技術が望まれている。
【0004】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、機能モジュールの内部回路における異常の有無を機能モジュールに電源を供給する前にあらかじめ検出することを可能にした配線システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、先行配線された電力線と情報線とが基本モジュールに接続されるとともに、複数台の機能モジュールがそれぞれ電力線と情報線とに接続され、基本モジュールから電力線と情報線との両方を通して各機能モジュールに電力供給が可能であり、基本モジュールと各機能モジュールとの間で情報線を通して通信を行う配線システムであって、基本モジュールは、各機能モジュールの異常の有無を個別に検査する診断部を備え、機能モジュールは、基本モジュールから情報線を通して伝送される信号に応じて内部回路への電力の供給を制御する電源制御回路と、内部回路に流入する電流を監視する電流監視部とを備え、診断部は、電源制御回路が内部回路に電力の供給を開始する前に各機能モジュールを個別に選択し、選択した機能モジュールの電源制御回路に指示を与えて内部回路に検査用の電力を供給するとともに電流監視部が検出した電流値を取得し、取得した電流値が規定した閾値以上であるときに、当該機能モジュールの内部回路に異常があると判定することを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、内部回路に電力を供給する前に、各機能モジュールごとに検査用の電力を供給して各機能モジュールごとに内部回路の異常の有無を個別に判定するから、各機能モジュールの内部回路を実際に動作させる前に内部回路の異常の有無を検査することができる。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記診断部が、選択した前記機能モジュールの前記内部回路に異常がないと判定すると、内部回路に動作用の電力を供給させるように前記電源制御回路に指示することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、内部回路に検査用の電力を供給したときに内部回路に流入する電流値により、内部回路の異常の有無を判断し、異常が生じていないときに当該機能モジュールの内部回路に対する動作用の電力の供給を開始するから、内部回路が正常に動作する機能モジュールだけを選択して動作させることが可能になる。言い換えると、情報線に接続された機能モジュールの一部に異常が生じている場合に、システム全体の停止を回避しながら正常な機能モジュールを動作させることができる。
【0009】
請求項3の発明では、請求項1または請求項2の発明において、前記診断部が、選択した前記機能モジュールの前記内部回路に異常があると判定すると、内部回路への電力の供給を遮断させるように前記電源制御回路に指示することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、内部回路に異常を生じている機能モジュールについては、内部回路への電力の供給を遮断するから、動作させない機能モジュールにおいて電力が消費されるのを防止し、システム全体において無駄な電力消費が生じるのを防止することができる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記検査用の電力は、前記内部回路のすべての機能が動作可能になる最小値に設定されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、検査用の電力の大きさを内部回路のすべての機能が動作可能になるように設定しているから、内部回路のすべての機能について異常の有無を判定することが可能になり、内部回路の異常判定を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成によれば、内部回路に電力を供給する前に、各機能モジュールごとに主電源回路から検査用の電力を供給して各機能モジュールごとに内部回路の異常の有無を個別に判定するから、各機能モジュールの内部回路を実際に動作させる前に内部回路の異常の有無を検査することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本実施形態の配線システムでは、図3に示すように、建物内の適所に埋込配置されたスイッチボックス3にゲート装置4と称する配線器具を収納する。ゲート装置4には壁内に先行配線された電力線Lpと情報線Liとが接続される。スイッチボックス3およびゲート装置4は1個ずつでもよいが、本発明は複数個の場合に有効であるから、以下では複数個設ける場合について説明する。また、図示例では、ルータとハブとを内蔵したゲートウェイの機能を有している基本モジュール1と、メインブレーカMBおよび分岐ブレーカBBとを内蔵した配線盤5を用いている。
【0015】
基本モジュール1には、複数系統(図示例では3系統)の情報線Liが接続され、ゲートウェイとして各情報線Liを外部のインターネット網NTに接続する。基本モジュール1は、情報線Liを複数系統に分岐したり情報線Liをインターネット網NTに接続するだけでなく、情報線Liを通して後述する各機能モジュール2の動作状態を監視する機能も備えている。また、メインブレーカMBは商用電源ACに接続され、分岐ブレーカBBに電力線Lpが接続される。図示例では分岐ブレーカBBを1系統で代表して示しているが通常は複数系統の分岐ブレーカBBを設ける。
【0016】
図3に示す例では、機能モジュール2として、コンセントあるいはスイッチのように負荷制御を主な機能とするものと、スピーカあるいは表示器のように情報の授受を主な機能とするものとを示している。本実施形態の構成では、負荷制御を主な機能とする場合であっても、コンセントに接続した負荷で使用した電力量やスイッチを操作した回数などを情報として情報線Liを介して監視することが可能になる。
【0017】
各系統のゲート装置4の間は電力線Lpおよび情報線Liの送り配線によって接続される。また、各系統のゲート装置4のうちの1個は配線盤5との間で電力線Lpおよび情報線Liを介して接続される。つまり、各系統のゲート装置4は電力線Lpに並列接続され、また情報線Liに並列接続されることになる。
【0018】
ゲート装置4は、電力線Lpと情報線Liとに接続されたコネクタからなる接続口6(図4参照)を備える。したがって、後述する機能モジュール2のコネクタをゲート装置4の接続口6に接続するだけで、機能モジュール2に電力を供給する電力路と、機能モジュール2との間で通信するための情報路とを同時に確保することができる。しかも、ゲート装置4は電力線Lpと情報線Liとにそれぞれ並列接続されているだけであるから、機能モジュール2はどのゲート装置4にも接続することができる。つまり、機能モジュール2は、ゲート装置4の配置されている範囲内で自由に配置することができるから、レイアウトの自由度が高い施工性に優れた配線システムを提供することができる。
【0019】
スイッチボックス3は、たとえばJIS規格(C 8375)に規定する取付枠10(図4参照)を取り付けることができるものを用いる。図示する取付枠10は一連形と呼ばれており、JIS規格(C 8304)において大角連用形スイッチの1個モジュールとして規格化されている埋込形の配線器具を3個取り付けることができる。
【0020】
取付枠10は、図4に示すように、中央部に表裏に貫通した器具取付用の矩形状の窓孔10aを備える。取付枠10に取付対象である配線器具を取り付けるには、窓孔10aの後方から配線器具の前部を挿入し、取付枠10の左右両側の枠片10bに設けた器具係止部に配線器具の左右両側に設けた被係止部を結合させる。図示例では、配線器具に被係止部として爪を設け取付枠10の枠片10bに器具係止部として間隙を設けている。ただし、配線器具に被係止部として穴を設け取付枠10の枠片10bに器具係止部として爪を設けた構成もある。取付枠10の上下の枠片10cには挿入孔10dが貫設されている。取付枠10をスイッチボックス3に取り付けるには、取付枠10に配線器具を装着した状態で、図示しない取付ねじを挿入孔10dに前方から挿入してスイッチボックス3に設けたねじ受け(図示せず)に螺入させる。
【0021】
なお、取付枠10を壁パネルに取り付ける場合には、壁パネルに取付孔を貫設し、挿入孔10dに挿入される引締ねじを挟み金具(図示せず)と称する部材に螺合させ、壁パネルに貫設した取付孔の周部を取付枠10と挟み金具との間で挟持するように引締ねじを締め付けてもよい。あるいはまた、取付枠10を通して壁材に木ねじを螺合させることによって、取付枠10を壁に取り付けることも可能である。
【0022】
本実施形態では、各スイッチボックス3の上部からは、配電ボックス1または他のスイッチボックス3に接続された電力線Lpおよび情報線Liが導入され、各系統の末端に位置するスイッチボックス3を除いた各スイッチボックス3の下部からは他のスイッチボックス3への送り配線である電力線Lpおよび情報線Liが導出される。また、ゲート装置4を取り付けた取付枠10を各スイッチボックス3に取り付けることによって、上述したように、各スイッチボックス3にそれぞれゲート装置4が収納される。ここにおいて、ゲート装置4には、電力線Lpと情報線Liとが接続されるから、電力線Lpと情報線Liとの混触を防止するために、電力線Lpと情報線Liとのスイッチボックス3への導入口および導出口はそれぞれ個別に設けるのが望ましい。
【0023】
ゲート装置4は、板ばねのばね力を利用して電線を結線する、いわゆる速結端子構造の端子を器体に内蔵しており、器体の背面に開口する電線挿入口に電線を挿入することにより、電線の機械的保持と電気的接続とがなされる構成を採用している。電線挿入口は、電力線Lpと情報線Liとについて2対ずつ設けてある。各1対は送り配線を接続するために用いられる。ゲート装置4の器体の前面には、電力線Lpが接続される端子に電気的に接続されている接触部を設けた電力路接続口6aと、情報線Liが接続される端子に電気的に接続されている接触部を設けた情報路接続口6bとが配置される。
【0024】
電力路接続口6aと情報路接続口6bとは1個の接続口6としてモジュール化されている。配線システム内の各ゲート装置4において、各電力路接続口6aと各情報路接続口6bとはそれぞれ同仕様(接触部の配列や接続口のサイズなど)であり、また電力路接続口6aおよび情報路接続口6bの位置関係は統一されている。接続口6には、機能モジュール2の背面に設けた接続体7が着脱可能に結合される。すなわち、機能モジュール2の接続体7には、電力路接続口6aに着脱可能に結合される電力路接続体7aと、情報路接続口6bに着脱可能に結合される情報路接続体7bとをモジュール化した接続体7が設けられる。機能モジュール2の接続体7をゲート装置4の接続口6に接続した状態において、機能モジュール2はゲート装置4の前面を覆う。ここに、接続口6と接続体7とはコネクタを構成する。
【0025】
機能モジュール2は、図5に示すように、ゲート装置4に対して1台だけ接続することによって単独で用いることができる基本機能モジュール2aと、基本機能モジュール2aに対して壁面に沿う面内で配列され基本機能モジュール2aと組み合わせて用いることにより基本機能モジュール2aの機能を拡張する拡張機能モジュール2bとがある。拡張機能モジュール2aは、基本機能モジュール2aに対して1台接続するだけではなく、複数台を接続することも可能であるが、本発明では拡張機能モジュール2aは要旨ではないから詳述しない。
【0026】
本発明の技術思想は、基本機能モジュール2aを単独で用いるか、基本機能モジュール2aに拡張機能モジュール2bを結合して用いるかにかかわらず、適用されるから、以下の説明においては、基本機能モジュール2aを単独で用いるか、基本機能モジュール2aに拡張機能モジュール2bを結合して用いるかにかかわらず、どちらの場合についても機能モジュール2として説明する。
【0027】
機能モジュール2は、図6、図7に示すように、合成樹脂製の扁平なハウジング8aを備える。すなわち、ゲート装置4に取り付けたときに壁面からの突出寸法が小さく、かつハウジング8aの前面側に露出する表示、報知、操作などの各種機能を持つ機能部に割り当てる面積を大きくとることができる薄型に形成されている。ハウジング8aの背面には接続体7が設けられ、接続体7をゲート装置4の接続口6に結合すれば、機能モジュール2が電力線Lpおよび情報線Liと電気的に接続される。ハウジング8aの上部および下部には取付用孔8cが開口しており、ハウジング8aをゲート装置4に結合した状態で、ハウジング8aの前面側から取付用孔8cに取付ねじ(図示せず)を挿入し、取付枠10の取付ねじ孔10eに取付ねじを螺入することにより、機能モジュール2が取付枠10に対して機械的に固定され、結果的に機能モジュール2のゲート装置4に対する結合強度を高めることができる。ハウジング8aの前面部には化粧カバー8bが着脱可能に被着され、化粧カバー8bをハウジング8aに装着した状態では、取付ねじの頭部が隠される。
【0028】
基本モジュール1には、図1に示すように、商用電源ACから直流電圧を生成する主電源回路11が設けられ、主電源回路11の出力電圧は情報線Liの線間に印加される。また、基本モジュール1には情報線Liを通して機能モジュール2との間で情報を授受するための通信回路12が設けられる。また、主電源回路11および通信回路12と情報線Liとの間には主フィルタ回路13が挿入される。
【0029】
主フィルタ回路13は、主電源回路11の出力端と情報線Liとの間に挿入される直流通過部13aと、通信回路12と情報線Liとの間に挿入される信号通過部13bとを備える。直流通過部13aは、たとえば主電源回路11の出力端と情報線Liの各線との間にそれぞれ挿入される2個のダイオードまたはインダクタを用いて構成し、信号通過部13bは、たとえば通信回路12と情報線Liの各線との間にそれぞれ挿入される2個のコンデンサを用いて構成する。ここに、情報線Liを伝送する信号は高周波の矩形波信号を想定している。つまり、主フィルタ回路13は、主電源回路11の出力電圧に通信回路12の出力信号を重畳して情報線Liに送出し、情報線Liを通る信号を直流電流から分離して通信回路12に与えることになる。主フィルタ回路13を用いることによって、主電源回路11により情報線Liに印加された直流電圧に通信回路12からの信号を重畳して伝送することができ、また機能モジュール2から送信された信号を直流電圧から分離して通信回路12で受信することが可能になる。
【0030】
基本モジュール1には、通信回路12を介して各機能モジュール2の動作状態を監視する診断部14が設けられており、診断部14では機能モジュール2から後述する電流監視部26による監視結果を取得し、各機能モジュール2ごとに設けた電源回路25の動作に関して指示を与える。診断部14の動作については後述する。
【0031】
一方、機能モジュール2は、主電源回路11からの直流電流により充電される大容量のコンデンサ21と、通信回路12との間で情報を授受するための通信回路22とを備える。コンデンサ21および通信回路22と情報線Liとの間には主フィルタ回路23が挿入される。なお、コンデンサ21に代えてメモリ効果のない二次電池を用いることも可能である。
【0032】
主フィルタ回路23は、コンデンサ21と情報線Liとの間に挿入される直流通過部23aと、通信回路22と情報線Liとの間に挿入される信号通過部23bとを備える。直流通過部23aは、たとえばコンデンサ21の両端と情報線Liの各線との間にそれぞれ挿入される2個のインダクタを用いて構成し、信号通過部23bは、たとえば通信回路22と情報線Liの各線との間に挿入される2個のコンデンサを用いて構成する。したがって、直流通過部23aは直流電流が双方向に通過し、信号通過部23bは信号が双方向に通過する。主フィルタ回路23を用いることによって、通信回路12から送信された信号を直流電圧から分離して通信回路22で受信することが可能になり、コンデンサ21により情報線Liに印加される直流電圧に通信回路22からの信号を重畳して伝送することができる。通信回路22の電源はコンデンサ21の両端から得ており、情報線Liが正常であれば内部回路20の動作にかかわらず通信回路22を動作させることが可能になっている。
【0033】
基本モジュール1の通信回路12と機能モジュール2の通信回路22との間で通信を行う際のプロトコルにはとくに制限はないが、通信回路12は各通信回路22との間で個別に通信が可能でなければならない。また、通信回路22には各機能モジュール2を識別するための識別子が設定されており、基本モジュール1が各機能モジュール2と個別に通信できるようにしてある。
【0034】
上述のように、機能モジュール2は、主フィルタ回路23とコンデンサ21とを備えているから、情報線Liの線間に印加された直流電圧に信号が重畳されていても、コンデンサ21の両端電圧は安定した電圧になる。コンデンサ21はスイッチ要素24と逆流防止用のダイオードD1とを介して内部回路20に接続される。また、ダイオードD1のアノードにはダイオードD2のアノードが共通接続され、電力線Lpから供給される交流電源(商用電源)から内部回路20に供給する電源を生成する電源回路25がダイオードD2を介して内部回路20に接続される。スイッチ要素24には、機械式のリレーあるいは半導体リレーを用いることができる。
【0035】
スイッチ要素24の開閉および電源回路25の運転と停止とは、電源制御回路26が制御し、電源制御回路26は通信回路22を通して基本モジュール1から受ける指示に応じて動作する。言い換えると、電源制御回路26は基本モジュール1から情報線Liを通して伝送される信号に応じて内部回路20への電力の供給を制御する。ここに、機能モジュール2に設けた電源回路25には、ダイオードブリッジのような整流回路とスイッチング素子を用いたDC−DCコンバータを用いている。電源回路25には電源制御回路26が付設されており、電源制御回路26では通信回路22を通して基本モジュール1から指示を受けると、DC−DCコンバータのスイッチング素子の動作を制御することにより、電源回路25の運転と停止とを制御する。
【0036】
上述のように、基本モジュール1が情報線Liを通して指示した内容に応じて電源制御回路26がスイッチ要素24の開閉を制御し、また電源回路25の運転と停止とを制御する。スイッチ要素24と電源回路25との動作のタイミングについては後述する。内部回路20には、内部回路20に流入する電流を監視する電流監視部27が設けられる。電流監視部27による監視結果は、通信回路22を通して基本モジュール1の診断部14に転送される。
【0037】
機能モジュール2が、基本機能モジュール2aだけではなく拡張機能モジュール2bも含んでいる場合には、電源回路25は拡張機能モジュール2bにも電力を供給する。基本機能モジュール2aから拡張機能モジュール2bへの電力の供給は交流を用いる。また、基本機能モジュール2aと拡張機能モジュール2bとの内部においては、交流−直流変換を行って直流電力を内部回路に供給する。そのため、基本機能モジュール2aと拡張機能モジュール2bとには、それぞれ電源回路25が設けられる。ただし、拡張機能モジュール2bに設けた電源回路25は本発明の要旨ではないから説明を省略する。
【0038】
以下に、本実施形態の主要部分の動作を図2に従って説明する。まず、前提として基本モジュール1において、情報線Liに接続されている機能モジュール2の台数が既知であるものとする。基本モジュール1において機能モジュール2の台数を把握するには、各機能モジュール2をゲート装置3に接続したときに基本モジュール1に通知するのが望ましいが、情報線Liに接続されている機能モジュール2の台数を基本モジュール1に直接設定することも可能である。
【0039】
診断部14は、機能モジュール2に通常の動作を行わせるのに先立って動作する。つまり、機能モジュール2の動作には、通常動作を行う通常モードと、機能モジュール2の異常の有無を判定する診断モードとがあり、診断部14から情報線Liを通して機能モジュール2に指示を与えることにより、機能モジュール2は診断モードで動作する。すなわち、以下に説明する動作は診断モードにおける動作を意味する。
【0040】
診断部14は、まず各機能モジュール2を個別に指定して選択する(S1)。次に、電源制御回路26に対して電源回路25を動作させるように指示を与える(S2)。このとき、電源回路25の出力電力は検査用の電力であって通常モード時よりも小さくなるように制限しておく。つまり、電源回路25に電流制限回路を設けておき、電源回路25から内部回路20に供給する最大電力を制限しておく。検査用の電力は、内部回路20のすべての機能が動作可能になる最小値に設定しておくのが望ましい。この設定により、内部回路のすべての機能について異常の有無を判定することが可能になる。ここに、ステップS2においてはスイッチ要素24はオフに保つのが望ましい。
【0041】
ステップS2において電源回路25から内部回路20に電流が流れると、電流監視部27では内部回路20に流入する電流を検出し、検出した電流値を通信によって診断部14に通知する。診断部14には、各機能モジュール2について内部回路20が正常である場合の電流値に関する閾値が規定されており、電流監視部27から取得した電流値が当該閾値以上であるときには、内部回路20において短絡のような異常が生じているものと判断する(S3)。内部回路20に異常が生じているときには、電源回路25から通常モードの電力を内部回路20に供給すると機能モジュール2において発熱したり破損したりするおそれがあるから、電源回路25を停止させ(S4)、当該機能モジュール2の動作を禁止する。
【0042】
このような動作を情報線Liに接続されているすべての機能モジュール2に対して行い、内部回路20に異常を生じている機能モジュール2を選別する(S5,S6)。内部回路20に異常がある機能モジュール2では電源回路25が停止した状態に保たれるから、発熱を生じることがない。その後、通常モードに移行すれば(S7)、異常のない機能モジュール2のみを動作させることができる。なお、診断モードは、適宜に選択するのが望ましく、たとえば機能モジュール2の動作状態を監視しておき、機能モジュール2が使用されていない期間において定期的に通常モードから診断モードに移行させればよい。
【0043】
診断モードにより正常と判断された機能モジュール2では、電源回路25から内部回路20に対して動作用の電力を供給する(つまり、電源回路25の出力電流の制限を引き上げる)。また、正常な機能モジュール2ではスイッチ要素24もオンにし、情報線Liを介して接続されている主電源回路11からも内部回路20に電力を供給させる。
【0044】
なお、上述した例では、診断モードにおいて電源回路25から内部回路20に電流を流しているが、スイッチ要素24をオフにした状態で主電源回路11によってコンデンサ21を充電し、コンデンサ21の充電後に図示しないスイッチ要素によりコンデンサ21を情報線Liから切り離し、このコンデンサ21の電荷を用いて内部回路20に電流を流すようにしてもよい。このような動作であれば、内部回路21に短絡が生じていても情報線Liが短絡することはなく、しかも主電源回路11から供給される電力で内部回路20の診断が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態を示す要部回路図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】同上の全体構成を示す構成図である。
【図4】同上に用いる機能ブロックを取付枠に取り付けた状態の正面図である。
【図5】同上の機能ブロックの他の構成例を示す構成図である。
【図6】同上に用いるゲート装置と機能ブロックとを示す斜視図である。
【図7】同上に用いる機能ブロックを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 基本モジュール
2 機能モジュール
14 診断部
20 内部回路
25 電源制御回路
27 電流監視部
Li 情報線
Lp 電力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行配線された電力線と情報線とが基本モジュールに接続されるとともに、複数台の機能モジュールがそれぞれ電力線と情報線とに接続され、基本モジュールから電力線と情報線との両方を通して各機能モジュールに電力供給が可能であり、基本モジュールと各機能モジュールとの間で情報線を通して通信を行う配線システムであって、基本モジュールは、各機能モジュールの異常の有無を個別に検査する診断部を備え、機能モジュールは、基本モジュールから情報線を通して伝送される信号に応じて内部回路への電力の供給を制御する電源制御回路と、内部回路に流入する電流を監視する電流監視部とを備え、診断部は、電源制御回路が内部回路に電力の供給を開始する前に各機能モジュールを個別に選択し、選択した機能モジュールの電源制御回路に指示を与えて内部回路に検査用の電力を供給するとともに電流監視部が検出した電流値を取得し、取得した電流値が規定した閾値以上であるときに、当該機能モジュールの内部回路に異常があると判定することを特徴とする配線システム。
【請求項2】
前記診断部は、選択した前記機能モジュールの前記内部回路に異常がないと判定すると、内部回路に動作用の電力を供給させるように前記電源制御回路に指示することを特徴とする請求項1記載の配線システム。
【請求項3】
前記診断部は、選択した前記機能モジュールの前記内部回路に異常があると判定すると、内部回路への電力の供給を遮断させるように前記電源制御回路に指示することを特徴とする請求項1または請求項2記載の配線システム。
【請求項4】
前記検査用の電力は、前記内部回路のすべての機能が動作可能になる最小値に設定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の配線システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−174419(P2007−174419A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371059(P2005−371059)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【特許番号】特許第3918857号(P3918857)
【特許公報発行日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】