説明

配線基板、及び、配線基板の製造方法

【課題】基板の縁部において絶縁層の厚みが大きくなることを抑制し、縁部における接続不良の発生を防止すること。
【解決手段】FPC48の、圧電アクチュエータ8の共通電極44に対応する第2配線60は、個別電極42に対応する第1配線58よりも幅が広い先端部分60aを有し、この先端部分60aは基板55の縁部55aに配置されている。また、先端部分60aには、導電性接着剤からなるバンプ53を介して圧電アクチュエータ8と接続される第2接続電極部59が設けられている。さらに、第2配線60の先端部分60aの領域内であって、第2接続電極部59と基板55の縁61との間の位置には穴部60bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板、及び、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な技術分野において、アクチュエータ上に配置された電極や接続端子に接続されて、アクチュエータへの電力供給や制御信号の送受信等を行う、フレキシブル配線基板が広く用いられている。ここで、フレキシブル配線基板とアクチュエータとの接続には、従来からハンダが広く用いられているが、ハンダ以外にも、導電性粒子を含有した熱硬化性樹脂からなる導電性接着剤が用いられる場合もある。
【0003】
例えば、特許文献1には、プラズマディスプレイパネル(アクチュエータに相当する)の表面に設けられた電極と、フレキシブル配線基板の接続端子とを、導電性接着剤のバンプを介して加熱加圧することにより接続する技術が開示されている。尚、特許文献1にも示されているように、フレキシブル配線基板の端子形成面(プラズマディスプレイパネルとの接続面)には、前記接続端子以外の配線パターンを被覆する絶縁層(カバーレイ、あるいは、ソルダーレジスト等)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−197001号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、導電性接着剤による配線基板の接続においては、通常、導電性接着剤のバンプが加熱硬化時に収縮し、このバンプの硬化収縮に伴って、基板の、バンプの周辺部分がアクチュエータ側に引き込まれるように変形する。
【0006】
ここで、フレキシブル配線基板のアクチュエータとの接続面を被覆する絶縁層は、通常は一定の厚みに管理されて形成(塗布)されるのであるが、基板の縁部においては厚み管理が難しく、図10に示すように、この基板101の縁部においては、絶縁層102の厚みが、中央側(図ではバンプ104よりも右側)よりも大きい箇所が生じやすい。このような状況下において、基板100の縁部にアクチュエータ100との接続端子103が設けられている場合に、硬化収縮時のバンプ104の収縮に伴って可撓性の基板101がアクチュエータ100側に変形しようとしたとき、絶縁層102の厚みの大きい部分がアクチュエータ100と干渉してしまう。これにより、基板101の変形が阻害されてバンプ104に大きな力が作用し、バンプ104が破断して接続不良が生じる虞がある。
【0007】
本発明の目的は、基板の縁部において絶縁層の厚みが大きくなることを抑制し、縁部における接続不良の発生を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の配線基板は、複数の個別電極と共通電極を備えたアクチュエータの一表面に配置された、前記複数の個別電極にそれぞれ対応する複数の個別電極用接続端子、及び、前記共通電極に対応する共通電極用接続端子と接続される配線基板であって、
前記アクチュエータの一表面と対向するように配置される、絶縁性材料からなる可撓性の基板と、前記基板の前記アクチュエータの一表面と対面する接続面に設けられ、前記アクチュエータの前記複数の個別電極用接続端子と導電性接着剤からなるバンプによってそれぞれ接続される複数の第1接続電極部、及び、これら複数の第1接続電極部にそれぞれ導通する複数の第1配線と、同じく前記基板の前記接続面に設けられ、前記アクチュエータの前記共通電極用接続端子と導電性接着剤からなるバンプによって接続される第2接続電極部、及び、この第2接続電極部と導通する第2配線と、を有し、
前記共通電極に対応する前記第2配線は、前記個別電極に対応する前記第1配線よりも幅が広い幅広部を有し、前記第2接続電極部は前記幅広部に設けられ、さらに、前記幅広部と前記第2接続電極部は前記基板の縁部に配置されており、前記複数の第1配線と前記第2配線は前記接続面を覆う絶縁層によって被覆される一方で、前記複数の第1接続電極部と前記第2接続電極部は前記絶縁層から露出しており、前記幅広部の領域内であって、前記第2接続電極部と前記基板の縁との間の位置に、前記幅広部を形成する導電性材料が局部的に存在しない穴部が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の配線基板は、複数の個別電極と、これら複数の個別電極に対して共通に設けられる共通電極とを有するアクチュエータに接続されるものである。そして、このようなアクチュエータの共通電極に導通する第2配線は、電気抵抗をできるだけ小さくするために、個別電極に導通する第1配線よりも十分に幅を広く(面積を大きく)することが好ましい。そこで、本発明では、第2配線のうち、少なくとも、アクチュエータとバンプを介して接続される、第2接続電極部が設けられる部分が、第1配線よりも幅の広い幅広部となっている。但し、このような面積の大きな幅広部が基板の接続面の中央部に配置されると、多数の第1配線(個別配線)の引き回しに制約が出ることから、幅広部、及び、これに設けられる第2接続電極部は基板の縁部に配置されている。
【0010】
その上で、基板の接続面に配置された複数の第1配線や第2配線は、保護や短絡防止等の目的で絶縁層によって被覆される。ここで、先にも述べたように、基板の縁部においては絶縁層の厚み管理が難しいために厚みの大きな部分が生じやすく、その結果、基板の縁部に設けられる第2接続電極部とアクチュエータとの接続において接続不良が発生しやすい。しかし、本発明においては、第2配線の幅広部の、第2接続電極部と基板の縁との間に、導電性材料が局所的に存在しない穴部が形成されていることから、基板の接続面に絶縁層を形成したときに、縁部においては余剰の絶縁材料が穴部に逃されることになり、縁部における絶縁層の厚みが大きくなることが抑制される。また、導電性材料からなる幅広部そのものが縁部における基板の変形を阻害する一因にもなるが、この幅広部に穴部が形成されることで、幅広部による基板の変形阻害が緩和される。
【0011】
第2の発明の配線基板は、前記第1の発明において、前記穴部は、前記基板の縁に沿って延在する長穴形状を有し、前記穴部のうちの、その幅方向において前記第2接続電極部に隣接する部分の幅は、それ以外の部分の幅と比べて大きいことを特徴とするものである。
【0012】
導電性接着剤のバンプでアクチュエータと接続される第2接続電極部に隣接する位置においては、穴部の幅を大きくしておくことで、余剰の絶縁材料を確実に逃がすことができるようになり、バンプが硬化収縮する際の、基板のバンプ周辺部分の変形阻害を効果的に抑制できる。
【0013】
第3の発明の配線基板は、前記第2の発明において、前記幅広部には、前記第2接続電極部と比べて、サイズの大きいバンプによって前記アクチュエータの一表面と接続される、第3接続電極部が設けられ、前記穴部は、前記第3接続電極部と前記基板の縁との間の位置にも形成されており、前記穴部の、その幅方向において前記第3接続電極部に隣接する部分の幅は、前記第2接続電極部に隣接する部分の幅と比べて大きいことを特徴とするものである。
【0014】
導電性接着剤のバンプのサイズが大きいほど、硬化時の収縮量も大きいため、サイズの大きいバンプの周囲において基板が大きく変形できることが要求される。本発明では、サイズの大きいバンプによってアクチュエータと接続される、第3接続電極部に隣接する位置において穴部の幅を大きくすることで、余剰の絶縁材料を確実に逃がすことができるようになり、バンプが硬化収縮する際の、基板のバンプ周辺部分の変形阻害を効果的に抑制できる。
【0015】
第4の発明の配線基板は、前記第3の発明において、前記第3接続電極部とバンプによって接続される前記アクチュエータ側の部分は、前記共通電極と導通していない部分であることを特徴とするものである。
【0016】
第3接続電極部が、共通電極との導通をとるためでなく、共通電極と導通していない部分と接合されて、アクチュエータと配線基板の接合補強のために設けられる場合には、その接合強度を高めるために、第3接続電極部とアクチュエータとを接続するバンプは、共通電極との導通のための第2接続電極部用のバンプよりも大きくすることが好ましい。
【0017】
第5の発明の配線基板は、前記第1〜第4の何れかの発明において、前記基板の前記幅広部が形成された領域には、前記穴部を挟むように2つの貫通孔が形成され、前記2つの貫通孔に導電性材料が充填されるとともに、前記基板の前記穴部と反対側において、前記穴部を跨ぐように前記2つの貫通孔内の導電性材料を導通させる導電性のブリッジ部が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
基板の穴部と反対側において、穴部を跨ぐように設けられたブリッジ部によって穴部の両側部分が導通することから、幅広部に穴部が設けられて面積が減少することによる、幅広部の電気抵抗の増加を抑制することができる。
【0019】
第6の発明の配線基板は、前記第5の発明において、前記穴部は前記基板の縁に沿って延在する長穴形状を有し、前記ブリッジ部は、前記穴部の、その幅方向において前記第2接続電極部と隣接しない部分を、前記幅方向に跨ぐように設けられていることを特徴とするものである。
【0020】
導電性材料が充填された貫通孔や、導電性材料からなるブリッジ部が、バンプで接合される第2接続電極部とは隣接しない位置に設けられることから、バンプの硬化収縮時の、バンプ周辺の基板の変形阻害を抑えることができる。
【0021】
第7の発明の配線基板の製造方法は、複数の個別電極と共通電極を備えたアクチュエータの一表面に配置された、前記複数の個別電極にそれぞれ対応する複数の個別電極用接続端子、及び、前記共通電極に対応する共通電極用接続端子と接続される、配線基板の製造方法であって、
絶縁性材料からなる可撓性の基板の、前記アクチュエータの一表面と対面する接続面に、前記アクチュエータの前記複数の個別電極用接続端子と導電性接着剤からなるバンプによってそれぞれ接続される複数の第1接続電極部、及び、これら複数の第1接続電極部にそれぞれ導通する複数の第1配線とを形成する第1パターン形成工程と、前記基板の前記接続面に、前記アクチュエータの前記共通電極用接続端子と導電性接着剤からなるバンプによって接続される第2接続電極部、及び、この第2接続電極部と導通する第2配線とを形成する第2パターン形成工程と、前記第1パターン形成工程及び前記第2パターン形成工程の後に、前記接続面に絶縁材料を塗布することにより、前記複数の第1配線と前記第2配線を絶縁層で被覆しつつ、前記複数の第1接続電極部と前記第2接続電極部を前記絶縁層から露出させる被覆工程を備え、
前記第2パターン形成工程において、前記第2配線を、前記第1配線よりも幅が広い幅広部を有するように形成するとともに、前記第2接続電極部を前記幅広部に設け、さらに、前記幅広部と前記第2接続電極部を前記基板の縁部に配置し、さらに、前記幅広部の領域内であって、前記第2接続電極部と前記基板の縁との間の位置に、前記幅広部を形成する導電性材料が局部的に存在しない穴部を形成することを特徴とするものである。
【0022】
本発明では、基板の接続面の縁部に配置されて、且つ、第2接続電極部が設けられる、第2配線の幅広部に穴部を設けた上で、接続面に絶縁材料を塗布する。これにより、基板の縁部の余剰の絶縁材料が穴部に逃がされるため、縁部の絶縁層の厚みが大きくなるのを抑制し、接続不良を防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、アクチュエータの共通電極に対応する第2配線の幅広部が基板の縁部に設けられた上で、この幅広部の、第2接続電極部と基板の縁との間に、導電性材料が局所的に存在しない穴部が形成されていることから、基板を絶縁層で被覆したときの、縁部における余剰の絶縁材料が穴部に逃されることになり、縁部の絶縁層の厚みが大きくなることが抑制される。また、導電性材料からなる幅広部そのものが縁部における基板の変形を阻害する一因にもなるが、この幅広部に穴部が形成されることで、幅広部による基板の変形阻害が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略平面図である。
【図2】インクジェットヘッドの平面図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】図3のV-V線断面図である。
【図6】圧電アクチュエータとの接続面側から見たFPCの平面図である。
【図7】(a)は図6のC部拡大図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図8】バンプによって接続される圧電アクチュエータと基板の、縁部を拡大した図である。
【図9】変更形態に係るFPCの縁部の断面図である。
【図10】従来の圧電アクチュエータと基板の接続構造の、縁部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、記録用紙に対してインクの液滴を噴射するインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタに本発明を適用した一例である。
【0026】
まず、本実施形態のインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。図1は、本実施形態のインクジェットプリンタの概略平面図である。図1に示すように、プリンタ1は、所定の走査方向(図1の左右方向)に沿って往復移動可能に構成されたキャリッジ2と、このキャリッジ2に搭載されたインクジェットヘッド3と、記録用紙Pを、走査方向と直交する搬送方向に搬送する搬送機構4等を備えている。
【0027】
キャリッジ2は、走査方向(図1の左右方向)に平行に延びる2本のガイド軸17に沿って往復移動可能に構成されている。また、キャリッジ2には、無端ベルト18が連結されており、キャリッジ駆動モータ19によって無端ベルト18が走行駆動されたときに、キャリッジ2は、無端ベルト18の走行に伴って走査方向に移動するようになっている。尚、プリンタ1には、走査方向に間隔を空けて配列された多数の透光部(スリット)を有するリニアエンコーダ10が設けられている。一方、キャリッジ2には、発光素子と受光素子とを有する透過型のフォトセンサ11が設けられている。そして、プリンタ1は、キャリッジ2の移動中にフォトセンサ11が検出したリニアエンコーダ10の透光部の計数値(検出回数)から、キャリッジ2の走査方向に関する現在位置を認識できるようになっている。
【0028】
このキャリッジ2には、インクジェットヘッド3が搭載されている。インクジェットヘッド3は、その下面(図1の紙面向こう側の面)に多数のノズル30(図2〜図5参照)を備えている。このインクジェットヘッド3は、搬送機構4により図1の下方(搬送方向)に搬送される記録用紙Pに対して、図示しないインクカートリッジから供給されたインクを多数のノズル30から噴射するように構成されている。
【0029】
搬送機構4は、インクジェットヘッド3よりも搬送方向上流側に配置された給紙ローラ12と、インクジェットヘッド3よりも搬送方向下流側に配置された排紙ローラ13とを有する。給紙ローラ12と排紙ローラ13は、それぞれ、給紙モータ14と排紙モータ15により回転駆動される。そして、この搬送機構4は、給紙ローラ12により、記録用紙Pを図1の上方からインクジェットヘッド3へ搬送するとともに、排紙ローラ13により、インクジェットヘッド3によって画像や文字等が記録された記録用紙Pを図1の下方へ排出する。
【0030】
次に、インクジェットヘッド3について説明する。図2はインクジェットヘッドの平面図、図3は図2のA部拡大平面図、図4は図3のIV−IV線断面図、図5は図3のV-V線断面図である。尚、図2、図3においては、図面をわかりやすくするために、インクジェットヘッド3の上面を覆うように配置されるフレキシブルプリント配線基板48を仮想線で示している。インクジェットヘッド3は、ノズル30や圧力室24を含むインク流路が形成された流路ユニット6と、圧力室24内のインクに圧力を付与する圧電アクチュエータ8とを備えている。また、図2〜図5に示されるように、圧電アクチュエータ8の上面には、フレキシブルプリント配線基板(FPC)48が接合される。
【0031】
図4、図5に示すように、流路ユニット6は、4枚のプレートが積層された構造を有し、その内部にインク流路が形成されている。流路ユニット6の下面(図2の紙面向こう側の面)には複数のノズル30が形成されている。図2に示すように、これら複数のノズル30は、それぞれ搬送方向に延在し、且つ、走査方向に並ぶ、4列のノズル列31(31k,31y,31c,31m)を構成している。これら4列のノズル列31(31k,31y,31c,31m)にそれぞれ属するノズル30からは、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のインクがそれぞれ噴射される。また、流路ユニット6には、複数のノズル30にそれぞれ連通する複数の圧力室24が形成され、4列のノズル列31に対応して、複数の圧力室24も4列に配列されている。さらに、流路ユニット6には、それぞれ搬送方向に延在し、4列の圧力室列に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のインクを供給する4本のマニホールド27が形成されている。尚、4本のマニホールド27は、流路ユニット6の上面に形成された4つのインク供給口28に接続されている。
【0032】
そして、図4に示すように、流路ユニット6内において、インク供給口28に連なるマニホールド27が圧力室24に連通し、さらに、圧力室24はノズル30に連通している。つまり、流路ユニット6には、マニホールド27から圧力室24を経てノズル30に至る個別インク流路29が複数形成されている。
【0033】
次に、圧電アクチュエータ8について説明する。図2〜図5に示すように、圧電アクチュエータ8は、複数の圧力室24を覆うように流路ユニット6の上面に積層された2枚の圧電層40,41と、上側の圧電層41の上面に配置された複数の個別電極42と、2枚の圧電層40,41の間に配置された共通電極44とを備えている。
【0034】
2枚の圧電層40,41は、共に、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電材料からなり、矩形の同一平面形状をそれぞれ有する。積層された2枚の圧電層40,41は、複数の圧力室24を覆った状態で流路ユニット6の上面に接合されている。尚、上側の圧電層41は、個別電極42と共通電極44との間に所定の分極電圧が印加されることによって、2種類の電極42,44に挟まれた圧電層部分(以下、活性部41aともいう)が厚み方向に分極されている。
【0035】
圧電層41の上面の、複数の圧力室24と対向する領域には、複数の個別電極42がそれぞれ配置されている。図2、図3に示すように、各々の個別電極42は圧力室24よりも一回り小さい略楕円形の平面形状を有し、圧力室24の中央部と対向している。また、複数の個別電極42は、複数のノズル30にそれぞれ連通する複数の圧力室24と同様に、4列に配列されている。複数の個別電極42の端部からは、複数の接続端子45(個別電極接続端子)が、楕円状の個別電極42の長手方向にそれぞれ引き出されている。
【0036】
図4、図5に示すように、複数の接続端子45には、導電性接着剤からなるバンプ52がそれぞれ配置され、各接続端子45は、バンプ52を介して、圧電アクチュエータ8の上面を覆うように配置されるFPC48の第1接続電極部57と接続される。尚、導電性接着剤は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に、多数の導電性粒子(例えば、銀(Ag)粒子)が分散されたものであり、加圧加熱によって硬化しつつ導電性を発現し、2つの接続対象を機械的に接合するとともに、両者を電気的に導通させるものである。また、後でも述べるが、複数の個別電極42のそれぞれには、FPC48に実装された駆動IC63(図5参照)から駆動パルス信号が供給される。
【0037】
2枚の圧電層40,41の間に配置された共通電極44は、上側の圧電層41の下面(下側の圧電層40の上面)のほぼ全域にわたって形成されており、複数の個別電極42と圧電層41を挟んで対向している。
【0038】
図2に示すように、圧電層41の上面(圧電アクチュエータ8の上面)の、走査方向における両端部(縁部)には、縁に沿って搬送方向に延びる2つの表面電極46(共通電極接続端子)がそれぞれ形成されている。図4に示すように、表面電極46が形成された領域において、圧電層41には貫通孔41bが形成されており、この貫通孔41b内に充填された導電性材料によって、表面電極46と、2枚の圧電層40,41の間に配置された共通電極44とが導通している。さらに、各表面電極46には、その長手方向に沿って適当間隔を空けて複数のバンプ53が配置され、表面電極46は、バンプ53を介して、図4に示すようにFPC48の第2接続電極部59と接続される。尚、複数の共通電極44用のバンプ53は、個別電極42用のバンプ52よりも大きなサイズのバンプであり、個別電極42用のバンプ52と同様に導電性接着剤で形成されている。また、共通電極44は、FPC48を介して図示しない制御基板のグランド線と接続され、常にグランド電位に保持される。
【0039】
図2に示すように、矩形平面形状を有する圧電層41の上面の、四隅の位置には、個部電極42用のバンプ52や共通電極44用のバンプ53と同様に、導電性接着剤からなる4つの補強用バンプ54が配置され、これら4つの補強用バンプ54もFPC48と接合される。ここで、補強用バンプ54は、圧電アクチュエータ8とFPC48との間で電極間の導通をとるためのものではなく、両者の機械的接合の目的のみで設けられており、それ故、共通電極44と導通する表面電極46に隣接しているものの、表面電極46上には配置されていない。尚、補強用バンプ54は、圧電層41の上面に直接設けられてもよいが、この補強用バンプ54の圧電アクチュエータ8の上面に対する密着性を良好にするため、個別電極42や表面電極46から孤立して形成されたダミー電極(圧電アクチュエータ8への信号伝達に何ら寄与しない電極)を介して補強用バンプ54が配置されてもよい。このように、個別電極42用のバンプ52や共通電極44用のバンプ53に加えて、4つの補強用バンプ54が設けられることで、圧電アクチュエータ8とFPC48の接合が補強され、FPC48の剥離が確実に防止される。尚、補強効果を高めるために、補強用バンプ54は、図2や図3に示される、個別電極42用のバンプ52や共通電極44用のバンプ53と比べて、かなりサイズの大きいものとなっている。
【0040】
次に、FPC48について説明する。図2〜図5に示すように、FPC48は、一部が圧電アクチュエータ8の上面と対向するように配置された状態で圧電アクチュエータ8に接合されるとともに、この圧電アクチュエータ8からノズル30の配列方向の一方(図2の下方)から水平に引き出され、さらに、図5のように曲げられて上方へ引き出されている。
【0041】
図6は、圧電アクチュエータ8との接続面56側から見たFPC48の平面図である。図4〜図6に示すように、FPC48は、ポリイミド等の絶縁性材料で形成された可撓性の基板55と、圧電アクチュエータ8の上面と対面する、基板55の接続面56に設けられた複数の第1接続電極部57、及び、これら複数の第1接続電極部57にそれぞれ導通する複数の第1配線58と、同じく基板55の前記接続面56に設けられた第2接続電極部59、及び、この第2接続電極部59と導通する第2配線60とを有する。
【0042】
複数の第1接続電極部57は、圧電アクチュエータ8の複数の個別電極42(接続端子45)とバンプ52(図3〜図5参照)を介してそれぞれ接続されるものであり、図6に示すように、基板55の接続面56の中央部において、圧電アクチュエータ8側の複数の接続端子45(図2、図3参照)に対応して、4列に配列されている。そして、複数の第1接続電極部57に接続された複数の第1配線58が、複数の第1接続電極部57の間の領域を縫って、基板55の基端側(図6の下側)に引き出されている。尚、図6では、図面の簡単のため、一部の第1配線58のみを図示し、大部分の第1配線58の図示は省略している。
【0043】
第2接続電極部59は、圧電アクチュエータ8の共通電極44(表面電極46)とバンプ53(図2〜図4参照)を介して接続されるものであり、圧電アクチュエータ8の上面の2つの縁部に形成された2つの表面電極46に対応して、基板55の接続面56の2つの縁部55aにおいて、基板55の縁61に沿って間隔を空けて複数並べて配置されている。より詳細には、基板55の2つの縁部55aにおいて、第1配線58よりもかなり配線幅が広い2つの第2配線60が基板55の縁61に沿ってその基端側(図6の下側)に引き出されており、第2配線60のうちの、圧電アクチュエータ8との接続面56に配置される先端部分60a(本願発明の幅広部に相当する)に、バンプ53と接触する第2接続電極部59が基板55の縁に沿って適当間隔を空けて複数設けられている。尚、圧電アクチュエータ8の表面電極46とFPC48との電気的導通を取るだけであれば、第2接続電極部59は1つでもよいのであるが、本実施形態では両者の導通状態を確実なものとするとともに、共通電極44までの電気抵抗を低下させるために、FPC48に複数の第2接続電極部59が設けられ、それぞれがバンプ53を介して圧電アクチュエータ8の表面電極46と接続される。
【0044】
また、図2に示すように、第2配線60の先端部分には、第2接続電極部59だけでなく、上述した補強用バンプ54によって圧電アクチュエータ8と接続される第3接続電極部62も設けられている。図6に示すように、第3接続電極部62は、基板55の、ほぼ矩形状を有する接続面56の四隅にそれぞれ配置されている。
【0045】
図5、図6に示すように、FPC48の基板55の前記接続面56の同一面上には、駆動IC63が実装されている。駆動IC63の入力側は、基板55の基端部に形成された複数の入力端子64と接続されており、駆動IC63には、プリンタ1の制御基板(図示省略)から複数の入力端子64を介して種々の制御信号が入力される。また、駆動IC63の出力側には、圧電アクチュエータ8の複数の個別電極42にそれぞれ対応する、上述の複数の第1配線58が接続されている。そして、駆動IC63は、プリンタ1の制御基板(図示省略)から入力された制御信号に基づいて、圧電アクチュエータ8を駆動するようになっている。具体的には、駆動IC63は、複数の個別電極42に対して選択的に所定のパルス波形を有する駆動信号を供給し、個別電極42の電位を、グランド電位と、前記パルス波形のパルス高さに相当する所定の駆動電位との間で切り換える。これにより、図5、図6に示される、個別電極42と共通電極44の間の、分極された圧電層部分(活性部41a)に厚み方向の電界を作用させて活性部41aに圧電変形を生じさせる。
【0046】
上記の圧電アクチュエータ8の駆動についてより詳細に説明する。ある個別電極42に対して駆動IC63から駆動信号が供給され、個別電極42に駆動電位が付与されたときには、この駆動電位が付与された個別電極42とグランド電位に保持されている共通電極44との間に電位差が生じ、両電極42,44に挟まれた圧電層41の活性部41aに厚み方向の電界が作用する。この電界の方向は圧電層41の分極方向と平行であるから、活性部41aが厚み方向と直交する面方向に収縮する。一方、下側の圧電層40には電界が作用せず、且つ、流路ユニット6の上面に固定された状態であるため、上側の圧電層41が面方向に収縮するのに伴って、下側の圧電層40の圧力室24を覆う部分が圧力室24側に凸となるように変形する(ユニモルフ変形)。このとき、圧力室24内の容積が減少するために圧力室24内のインク圧力が上昇し、この圧力室24に連通するノズル30からインクが噴射される。
【0047】
また、図6に示すように、基板55の接続面56には、第1配線58及び第2配線60の保護、及び、短絡防止等のために、第1接続電極部57、第2接続電極部59、及び、第3接続電極部62が配置された領域を除いて、ほぼ全面的に液状の絶縁材料(ソルダーレジスト)が塗布されることによって、絶縁層65が形成されている。即ち、複数の第1配線58と第2配線60の大部分が絶縁層65によって被覆される一方で、第1接続電極部57、第2接続電極部59、及び、第3接続電極部62は絶縁層65から露出している。
【0048】
尚、共通電極44は多数の個別電極42と対向し、これら多数の個別電極42との間で、活性部41aを駆動する(圧電変形させる)ものであり、多くの活性部41aを同時に駆動したときには大きな駆動電流が共通電極44を流れることになる。このとき、共通電極44の電気抵抗が高いと、個別電極42の電位変化(グランド電位−駆動電位)が遅れる、あるいは、本来一定電位(グランド電位)に保持されるべき共通電極44の電位が瞬間的に大きく変動するなどして、圧力室24内のインク圧力変動、ひいては、ノズル30の液滴噴射特性に影響が出る。そのため、共通電極44、及び、それに連なる配線等の電気抵抗はできるだけ低くなっていることが好ましい。それ故、図6に示すように、共通電極44用の第2接続電極部59に接続される第2配線60は、個別電極42用の第1配線58と比べると、配線幅が非常に太くなっている。
【0049】
但し、このように配線幅の広い(面積の大きい)第2配線60が、基板55の接続面56の中央部に配置されていると、多数の第1配線58の引き回しに制約が生じる。先に述べたように、第2配線60(先端部分60a)が基板55の縁部55aに配置されているのは、上記問題も考慮し、幅の広い第2配線60が、第1配線58の引き回しの邪魔にならないようにするためでもある。
【0050】
ところが、先に図10を挙げて説明したように、基板55の縁部55aにおいては、基板55の中央部と比べて、絶縁層65を均一な厚みで形成(塗布)することが困難であり、絶縁層65に厚みが大きい部分が生じる虞がある。その場合、バンプ53を形成する導電性接着剤が硬化時に収縮したときの、バンプ53周辺における基板55の変形が阻害され、バンプ53に大きな外力が作用して破断する虞がある。そこで、本実施形態では、縁部55aの絶縁層65の厚みが大きくなるのを抑制する工夫がなされている。
【0051】
図7(a)は図6のC部拡大図、(b)は(a)のB−B線断面図である。但し、図7(a)では、図6においてハッチングで示されている、第2配線60を覆う絶縁層65の図示は省略されている。また、図8は、バンプ53によって接続される圧電アクチュエータ8と基板55の、縁部を拡大した図である。図6、図7に示すように、共通電極44用の複数の第2接続電極部59、及び、接続補強用の第3接続電極部62が設けられる第2配線60の先端部分60a(幅広部)には、前記接続電極部59,62と基板55の縁61との間の位置において、第2配線60を形成する導電性材料が局部的に存在しない穴部60bが形成されている。また、この穴部60bは、基板55の縁61に沿って延在する長穴形状となっている。
【0052】
そして、基板55に第2配線60を形成した後に、液状の絶縁材料を塗布して絶縁層65を形成したときに、図8に示すように、基板55の縁部55aに付着した余剰の絶縁材料が穴部60bに逃される。そのため、穴部60bがない場合(図8に二点鎖線で示す)と比べて、第2接続電極部59(第3接続電極部62)よりも外側(縁側)において、絶縁層65の厚みが大きくなることが抑制される。また、導電性材料からなり、配線幅の大きい第2配線60(先端部分60a)そのものの存在が縁部55aにおける基板55の変形を阻害する一因にもなるが、この第2配線60に穴部60bが形成されることで、基板55の変形阻害が緩和される。
【0053】
また、基板55の、バンプ53,54に近い部分ほど絶縁層65によって変形が阻害されず、バンプ53,54の硬化収縮時に大きく変形できることが好ましい。そこで、図7に示すように、穴部60bの、その幅方向において第2接続電極部59及び第3接続電極部62に隣接する部分が縁側に大きく膨らんでおり、それ以外の部分(接続電極部59,62と隣接しない部分)の幅と比べて大きくなっている。これにより、縁部55aの余剰の絶縁材料を確実に逃がすことができ、バンプ53,54が硬化収縮する際の、基板55のバンプ53,54の周辺部分の変形阻害を効果的に抑制できる。
【0054】
さらに、導電性接着剤のバンプのサイズが大きいほど、硬化収縮時における収縮量も大きく、その分、基板55がかなり大きく変形できることが要求される。そこで、穴部60bのうち、第2接続電極部59のバンプ53と比べて、サイズの大きいバンプ54と接続される第3接続電極部62と幅方向に隣接する部分の幅は、第2接続電極部59と隣接する部分の幅よりも大きくなっている。
【0055】
また、図7、図8に示すように、基板55の、第2配線60の先端部分60aが形成された領域には、穴部60bの、第2接続電極部59及び第3接続電極部62とは隣接しない、幅の狭い部分を挟むように、2つの貫通孔66が形成されている。そして、これら2つの貫通孔66にそれぞれ導電性材料が充填されるとともに、基板55の穴部60bと反対側には、平面視で穴部60bを跨ぐように、2つの貫通孔66内の導電性材料を導通させる導電性のブリッジ部67が形成されている。尚、ブリッジ部67の数は特に限定されるものではないが、例えば、基板55の縁61に沿って間隔を空けて並ぶ、複数の第2接続電極部59及び第3接続電極部62の間に1個ずつ設けられてもよい。
【0056】
このように、基板55の、穴部60bと反対側に、穴部60bを跨ぐようにブリッジ部67が設けられることで、第2配線60の先端部分60aに穴部60bが設けられて面積が減少することによる、第2配線60の電気抵抗の増加を抑制することができる。さらに、導電性材料が充填された貫通孔66や、導電性材料からなるブリッジ部67が、バンプ53,54で接合される接続電極部59,62とは隣接しない位置に設けられることで、これら導電性材料の存在に起因する、バンプ53,54の硬化収縮時における、基板55のバンプ53,54の周辺部分の変形阻害が抑えられる。
【0057】
次に、上述したFPC48を製造する工程について説明する。
まず、基板55の、圧電アクチュエータ8との接続面56に、図6に示される、複数の第1接続電極部57、及び、これら複数の第1接続電極部57にそれぞれ導通する複数の第1配線58を形成する(第1パターン形成工程)。
【0058】
また、同じく基板55の接続面56に、図6に示される、第2接続電極部59、及び、第2接続電極部59に導通する第2配線60を形成する(第2パターン形成工程)。この第2パターン形成工程においては、第2配線60の先端部分60a(幅広部)を基板55の縁部55aに形成し、さらに、この第2配線60の先端部分60aに複数の第2接続電極部59を配置する。また、その際に、第2配線60の先端部分60aには、補強用バンプ54と接続される第3接続電極部62も形成しておく。さらに、第2配線60の先端部分60aの領域内であって、第2接続電極部59と基板55の縁61との間の位置に、導電性材料が局部的に存在しない穴部60bを、基板55の縁61に沿って延びる長穴形状に形成する。ここで、図6、図7に示されるように、穴部60bを、その幅方向において第2接続電極部59、及び、第3接続電極部62と隣接する部分が、それ以外の部分よりも幅が大きくなるように形成する。
【0059】
尚、上述した第1パターン形成工程と第2パターン形成工程は、スクリーン印刷法等を採用して同時に行うことができる。
【0060】
一方、基板55の、第2配線60の先端部分60aが形成された領域に、前記穴部60bを挟むように2つの貫通孔66を形成する。そして、これら2つの貫通孔66にそれぞれ導電性材料を充填するとともに、基板55の接続面56とは反対側において、2つの貫通孔66を導通させる導電性のブリッジ部67を形成する。尚、貫通孔66の形成を、上述した第2パターン形成工程よりも前に行っておき、第2パターン形成工程において、スクリーン印刷等によって第2接続電極部59や第2配線60を形成する際に、同時に、貫通孔66内に導電性材料を充填するようにしてもよい。また、ブリッジ部67の形成は、基板55の接続面56と反対側の面に導電性材料を印刷等によって付着させることによって行うことができる。
【0061】
上記第1パターン形成工程及び第2パターン形成工程の後に、基板55の接続面56に、前記第1接続電極部57、第2接続電極部59、及び、第3接続電極部62をそれぞれ露出させる開口を備えたマスク(図示省略)を配置した上で、前記接続面56に液状の絶縁材料(ソルダーレジスト)を塗布する。これにより、複数の第1配線58と第2配線60を絶縁層65で被覆しつつ、接続電極部57,59,62を絶縁層65からそれぞれ露出させる(被覆工程)。
【0062】
このとき、絶縁層65の厚み管理が難しい基板55の縁部55aにおいて、余剰の絶縁材料が生じても、この余剰分は第2配線60の先端部分60aに形成された穴部60bに逃がされるため、基板55の縁部55aにおける絶縁層65の厚みが大きくなるのが抑制される。特に、第2接続電極部59や第3接続電極部62に隣接する部分では、穴部60bの幅が大きくなっていることから、余剰の絶縁材料が確実に逃され、バンプ53,54の周辺の基板55が大きく変形できるようになる。
【0063】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0064】
1]前記実施形態では、第2配線に形成される穴部60bが、基板55の縁61に沿って延びる長穴形状となっていたが、第2接続電極部59や第3接続電極部62と隣接する部分にのみ穴部60bが設けられてもよい。
【0065】
2]前記実施形態では、第2接続電極部59よりも大きなバンプ54と接続される、第3接続電極部62は、圧電アクチュエータ8の駆動に寄与する電極とは導通しないものであったが、駆動に寄与する電極と接続されるものであってもよい。例えば、第3接続電極部62が、第2接続電極部59と同様に、共通電極44に導通した表面電極46とバンプ54で接続されるものであってもよい。
【0066】
3]前記実施形態の図7(b)では、第2配線60の穴部60bを跨ぐように設けられているブリッジ部67が、基板55の、第2配線60や穴部60bが形成される接続面56と反対側の面上に設けられているが、図9のように、基板55の接続面56と反対側の部分にブリッジ部67が埋め込まれていてもよい。
【0067】
4]前記実施形態において、第2配線60の穴部60bを跨ぐように設けられているブリッジ部67が省略されてもよい。ブリッジ部67は、穴部60bが存在することによる第2配線60の電気抵抗の増加を抑えるものであることから、ブリッジ部67が省かれると第2配線60の電気抵抗が幾分増加するというデメリットがある。しかしながら、一方で、ブリッジ部67及び貫通孔66内の導電性材料が、基板55の、バンプ53,54の周辺部分に存在しなくなることで、これらの導電性材料による基板55の変形阻害がなくなるというメリットもある。また、貫通孔66やブリッジ部67を形成する工程を省略できるため、製造コストの点で有利である。
【0068】
5]本発明の配線部材は、圧電アクチュエータに接続されるものには限られず、複数の個別電極に対して共通に設けられる共通電極を有するものであれば、圧電式以外のアクチュエータに使用される配線部材にも、本発明を適用可能である。
【0069】
また、本発明は、インクジェットヘッド用のアクチュエータに接続されるものにも限られず、インクジェットヘッド以外の装置に用いられるアクチュエータに対しても本発明の配線部材を適用できる。
【符号の説明】
【0070】
8 圧電アクチュエータ
42 個部電極
44 共通電極
45 接続端子
46 表面電極
48 フレキシブルプリント配線基板
52,53,54 バンプ
55 基板
55a 縁部
56 接続面
57 第1接続電極部
58 第1配線
59 第2接続電極部
60 第2配線
60a 先端部分(幅広部)
60b 穴部
62 第3接続電極部
65 絶縁層
66 貫通孔
67 ブリッジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別電極と共通電極を備えたアクチュエータの一表面に配置された、前記複数の個別電極にそれぞれ対応する複数の個別電極用接続端子、及び、前記共通電極に対応する共通電極用接続端子と接続される配線基板であって、
前記アクチュエータの一表面と対向するように配置される、絶縁性材料からなる可撓性の基板と、
前記基板の前記アクチュエータの一表面と対面する接続面に設けられ、前記アクチュエータの前記複数の個別電極用接続端子と導電性接着剤からなるバンプによってそれぞれ接続される複数の第1接続電極部、及び、これら複数の第1接続電極部にそれぞれ導通する複数の第1配線と、
同じく前記基板の前記接続面に設けられ、前記アクチュエータの前記共通電極用接続端子と導電性接着剤からなるバンプによって接続される第2接続電極部、及び、この第2接続電極部と導通する第2配線と、を有し、
前記共通電極に対応する前記第2配線は、前記個別電極に対応する前記第1配線よりも幅が広い幅広部を有し、前記第2接続電極部は前記幅広部に設けられ、さらに、前記幅広部と前記第2接続電極部は前記基板の縁部に配置されており、
前記複数の第1配線と前記第2配線は前記接続面を覆う絶縁層によって被覆される一方で、前記複数の第1接続電極部と前記第2接続電極部は前記絶縁層から露出しており、
前記幅広部の領域内であって、前記第2接続電極部と前記基板の縁との間の位置に、前記幅広部を形成する導電性材料が局部的に存在しない穴部が形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記穴部は、前記基板の縁に沿って延在する長穴形状を有し、
前記穴部のうちの、その幅方向において前記第2接続電極部に隣接する部分の幅は、それ以外の部分の幅と比べて大きいことを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記幅広部には、前記第2接続電極部と比べて、サイズの大きいバンプによって前記アクチュエータの一表面と接続される、第3接続電極部が設けられ、
前記穴部は、前記第3接続電極部と前記基板の縁との間の位置にも形成されており、
前記穴部の、その幅方向において前記第3接続電極部に隣接する部分の幅は、前記第2接続電極部に隣接する部分の幅と比べて大きいことを特徴とする請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記第3接続電極部とバンプによって接続される前記アクチュエータ側の部分は、前記共通電極と導通していない部分であることを特徴とする請求項3に記載の配線基板。
【請求項5】
前記基板の前記幅広部が形成された領域には、前記穴部を挟むように2つの貫通孔が形成され、
前記2つの貫通孔に導電性材料が充填されるとともに、前記基板の前記穴部と反対側において、前記穴部を跨ぐように前記2つの貫通孔内の導電性材料を導通させる導電性のブリッジ部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の配線基板。
【請求項6】
前記穴部は前記基板の縁に沿って延在する長穴形状を有し、
前記ブリッジ部は、前記穴部の、その幅方向において前記第2接続電極部と隣接しない部分を、前記幅方向に跨ぐように設けられていることを特徴とする請求項5に記載の配線基板。
【請求項7】
複数の個別電極と共通電極を備えたアクチュエータの一表面に配置された、前記複数の個別電極にそれぞれ対応する複数の個別電極用接続端子、及び、前記共通電極に対応する共通電極用接続端子と接続される、配線基板の製造方法であって、
絶縁性材料からなる可撓性の基板の、前記アクチュエータの一表面と対面する接続面に、前記アクチュエータの前記複数の個別電極用接続端子と導電性接着剤からなるバンプによってそれぞれ接続される複数の第1接続電極部、及び、これら複数の第1接続電極部にそれぞれ導通する複数の第1配線とを形成する第1パターン形成工程と、
前記基板の前記接続面に、前記アクチュエータの前記共通電極用接続端子と導電性接着剤からなるバンプによって接続される第2接続電極部、及び、この第2接続電極部と導通する第2配線とを形成する第2パターン形成工程と、
前記第1パターン形成工程及び前記第2パターン形成工程の後に、前記接続面に絶縁材料を塗布することにより、前記複数の第1配線と前記第2配線を絶縁層で被覆しつつ、前記複数の第1接続電極部と前記第2接続電極部を前記絶縁層から露出させる被覆工程を備え、
前記第2パターン形成工程において、前記第2配線を、前記第1配線よりも幅が広い幅広部を有するように形成するとともに、前記第2接続電極部を前記幅広部に設け、さらに、前記幅広部と前記第2接続電極部を前記基板の縁部に配置し、
さらに、前記幅広部の領域内であって、前記第2接続電極部と前記基板の縁との間の位置に、前記幅広部を形成する導電性材料が局部的に存在しない穴部を形成することを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−156185(P2012−156185A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11902(P2011−11902)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】