説明

配線基板の製造方法及びその実装構造体の製造方法

【課題】本発明は、電気的信頼性を向上させる要求に応え配線基板の製造方法及びその実装構造体の製造方法を提供するものである。
【解決手段】本発明の一形態にかかる配線基板の製造方法は、直流電解めっき法を用いて下地層13上に形成された第1層15aと、反転電解めっき法を用いて第1層15a上に形成された第2層15bと、直流電解めっき法を用いて第2層15b上に形成された最外層をなす第3層15cと、を有する、平面視で互いに離間した複数の電解めっき層14を下地層13上に形成する工程と、平面視で電解めっき層14同士の間に配された下地層13の一部をエッチングする工程と、第3層15c上に絶縁層10を形成する工程と、貫通孔Pの底面に第3層15cの一部を露出させるために、絶縁層10に貫通孔Pを形成する工程と、貫通孔Pの内壁面上および前記底面上にスパッタ層16を形成する工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器(たとえば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ機器及びその周辺機器)等に使用される配線基板の製造方法及びその実装構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器における実装構造体としては、配線基板に電子部品を実装したものが使用されている。
【0003】
特許文献1には、セミアディティブ法により、パッドを形成する工程と、該パッド上に絶縁層を形成する工程と、該絶縁層に開口部を形成するとともに該開口部に前記パッドの上面を露出させる工程と、スパッタリング法により、前記開口部を構成する前記絶縁層の面および前記パッドの上面に密着層を形成する工程と、を備えた配線基板の製造方法が記載されている。
【0004】
ところで、パッドをセミアディティブ法で形成すると、下地層をエッチングする際に用いるエッチング液によって、パッド上面を構成する金属の結晶粒界がエッチングされやすいため、該結晶粒界に凹部が形成されやすい。この場合、スパッタリング法によりパッド上面に密着層を形成する際に、ターゲットからパッド上面に向かって飛散した粒子が結晶粒界の凹部内に到達しにくいため、該凹部の内壁が密着層で被覆されにくい。このため、パッドと密着層との間に剥離が生じやすくなるため、パッドと貫通導体との間に断線が生じやすくなり、ひいては配線基板の電気的信頼性が低下しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−188324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電気的信頼性を向上させる要求に応え配線基板の製造方法及びその実装構造体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態にかかる配線基板の製造方法は、直流電解めっき法を用いて下地層上に形成された第1層と、反転電解めっき法を用いて前記第1層上に形成された第2層と、直流電解めっき法を用いて前記第2層上に形成された最外層をなす第3層と、を有する、平面視で互いに離間した複数の電解めっき層を前記下地層上に形成する工程と、平面視で前記電解めっき層同士の間に配された前記下地層の一部をエッチングする工程と、前記第3層上に絶縁層を形成する工程と、貫通孔の底面に前記第3層の一部を露出させるために、前記絶縁層に前記貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔の内壁面上および前記底面上に前記スパッタ層を形成する工程と、を備えている。
【0008】
本発明の一形態にかかる実装構造体の製造方法は、上述した配線基板の製造方法により得られた配線基板に電子部品を電気的に接続する工程を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一形態にかかる配線基板の製造方法および実装構造体の製造方法によれば、第
3層によって、貫通孔の底面に露出した導電層の一主面における平坦性を高めることができるため、貫通孔の底面をスパッタ層でより均一に被覆することができる。その結果、導電層とスパッタ層との接着強度を高めることができるため、導電層と貫通導体との間の断線を低減し、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態にかかる実装構造体を厚み方向に切断した断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示した実装構造体のR1部分を拡大して示した断面図である。
【図2】図2は、図1(b)に示した実装構造体のR2部分を拡大して示した断面図である。
【図3】図3(a)、図3(b)、図3(c)及び図3(d)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【図4】図4(a)、図4(b)及び図4(c)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する、図3(c)のR3部分に相当する部分を拡大して示した断面図である。
【図5】図5(a)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程における直流電解めっき法のタイミングチャートであり、図5(b)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程における反転電解めっき法のタイミングチャートである。
【図6】図6(a)及び図6(b)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【図7】図7(a)及び図7(b)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する、図6(b)のR4部分に相当する部分を拡大して示した断面図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法を用いた実装構造体の製造方法を例に、図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1(a)に示した実装構造体1は、本実施形態に係る実装構造体の製造方法を用いて作製されたものであり、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置又はその周辺機器などの電子機器に使用されるものである。この実装構造体1は、電子部品2と、電子部品2がバンプ3を介してフリップチップ実装された配線基板4と、を含んでいる。
【0013】
電子部品2は、例えばIC又はLSI等の半導体素子であり、母材が、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウム又は炭化珪素等の半導体材料によって形成されている。電子部品2の厚みは、例えば0.1mm以上1mm以下に設定されている。また、電子部品2の各方向への熱膨張率は、例えば3ppm/℃以上5ppm/℃以下に設定されている。なお、電子部品2の熱膨張率は、市販のTMA装置を用いてJISK7197−1991に準じた測定方法により測定される。以下、各部材の熱膨張率は、電子部品2と同様に測定される。
【0014】
バンプ3は、例えば鉛、錫、銀、金、銅、亜鉛、ビスマス、インジウム又はアルミニウム等を含む半田等の導電材料によって形成されている。
【0015】
配線基板4は、コア基板5とコア基板5の上下に形成された一対の配線層6とを含んでいる。
【0016】
コア基板5は、配線基板4の強度を高めるものであり、厚み方向に沿ったスルーホールTが形成された基体7と、スルーホールT内に形成された筒状のスルーホール導体8と、該スルーホール導体8によって取り囲まれた領域に形成された柱状の絶縁体9と、を含んでいる。
【0017】
基体7は、コア基板5の主要部をなして剛性を高めるものであり、樹脂部と、樹脂部により被覆された基材と、該樹脂部により被覆された無機絶縁フィラーと、を含んでいる。基体7の厚みは、例えば0.1mm以上1mm以下に設定されている。基体7の平面方向への熱膨張率は、例えば5ppm/℃以上30ppm/℃以下に設定され、基体7の厚み方向への熱膨張率は、例えば15ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定されている。なお、基体7は、基材を含まなくても構わないし、無機絶縁フィラーを含まなくても構わない。
【0018】
基体7の樹脂部は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂又はポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂によって形成されている。なお、樹脂部は、例えばフッ素樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂又はポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂によって形成しても構わない。
【0019】
基体7の基材としては、繊維により構成された織布若しくは不織布、又は繊維を一方向に配列したものを使用することができる。また、基材を構成する繊維としては、例えばガラス繊維、樹脂繊維、炭素繊維又は金属繊維等を使用することができる。
【0020】
基体7の無機絶縁フィラーは、基体7を高剛性及び低熱膨張にするものであり、例えば酸化ケイ素等の無機絶縁材料によって形成された複数の粒子からなる。
【0021】
スルーホール導体8は、コア基板5の上下の配線層6を電気的に接続するものであり、スルーホールTの内壁上にて、後述する第1導電層11aと同様の構成を有する。
【0022】
絶縁体9は、後述する貫通導体12を支持するものであり、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂又はビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料によって形成されている。
【0023】
一方、コア基板5の上下には、上述した如く、一対の配線層6が形成されている。配線層6は、厚み方向に沿った貫通孔Pが形成された絶縁層10と、基体7上又は絶縁層10上に形成された導電層11と、貫通孔P内に形成されて導電層11に接続した貫通導体12と、を含んでいる。
【0024】
絶縁層10は、導電層11同士の短絡を防ぐ絶縁部材として機能するものであり、第1樹脂層10aと、該第1樹脂層10aよりもコア基板5側に配された第2樹脂層10bと、を含んでいる。絶縁層10の厚みは、例えば5μm以上40μm以下に設定されている。
【0025】
第1樹脂層10aは、絶縁層10の剛性を高めるとともに平面方向における熱膨張率を低減するものであり、樹脂部と該樹脂部に被覆された無機絶縁フィラーとを含んでいる。第1樹脂層10aの厚みは、例えば2μm上20μm以下に設定されている。また、第1樹脂層10aの平面方向への熱膨張率は、例えば0ppm/℃以上30ppm/℃以下に設定され、第1樹脂層10aの厚み方向への熱膨張率は、例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定されている。なお、第1樹脂層10aは、無機絶縁フィラーを含ま
なくても構わない。
【0026】
第1樹脂層10aの樹脂部は、例えばポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂によって形成されている。このような熱可塑性樹脂を用いることにより、第1樹脂層10aを高剛性及び低熱膨張率にすることができる。また、第1樹脂層10aに含まれた樹脂部は、各樹脂分子鎖の長手方向が同一方向である構造を有するフィルム状であることが望ましい。その結果、平面方向への熱膨張率を小さくすることができる。
【0027】
第1樹脂層10aの無機絶縁フィラーは、第1樹脂層10aを高剛性及び低熱膨張にするものであり、例えば、上述した基体7の無機絶縁フィラーと同様の材料によって形成されている。
【0028】
第2樹脂層10bは、厚み方向に隣接した第1樹脂層10a同士、又は基体7と第1樹脂層10aとを接着するとともに、導電層11の側面及び一主面に接着して導電層11を固定するものであり、樹脂部と該樹脂部に被覆された無機絶縁フィラーとを含んでいる。第2樹脂層10bの厚みは、例えば2μm以上20μm以下に設定されている。また、第2樹脂層10bの各方向への熱膨張率は、例えば10ppm/℃以上40ppm/℃以下に設定されている。なお、第2樹脂層10bは、無機絶縁フィラーを含まなくても構わない。
【0029】
第2樹脂層10bの樹脂部は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、又はアミド樹脂等の熱硬化性樹脂によって形成されている。このような熱硬化性樹脂を用いることにより、厚み方向に隣接した第1樹脂層10a同士、又は基体7と第1樹脂層10aとを強固に接着することができる。
【0030】
第2樹脂層10bの無機絶縁フィラーは、第2樹脂層10bを高剛性及び低熱膨張にするものであり、例えば、上述した基体7の無機絶縁フィラーと同様の材料によって形成された複数の粒子からなる。
【0031】
導電層11は、接地用配線、電力供給用配線又は信号用配線として機能するものであり、側面及び一主面が第2樹脂層10bに接着するとともに他主面が基体7又は第1樹脂層10aに接着している。また、導電層11は、一主面及び他主面の一部が貫通導体12に接続されている。この導電層11は、基体7上に形成された第1導電層11aと、第1樹脂層10a上に形成された第2導電層11bと、を含んでいる。
【0032】
第1導電層11aは、図1(b)に示すように、無電解めっき法を用いて基体7上に形成された無電解めっき層13と、電解めっき法を用いて無電解めっき層13上に形成された電解めっき層14と、を含んでいる。第1導電層11aの厚みは、例えば8.5μm以上10.5μm以下に設定されている。また、第1導電層11aの一主面S1(第2樹脂層10bに接着した一主面)の算術平均粗さ(Ra)は、例えば0.1μm以上0.5μm以下に設定され、第1導電層11aの他主面S2(基体7に接着した他主面)の算術平均粗さは、例えば0.5μm以上2μm以下に設定されている。なお、算術平均粗さは、ISO4287:1997に準ずる。
【0033】
また、第1導電層11aの一主面S1の算術平均粗さ(Ra)は、第1導電層11aの他主面S2の算術平均粗さよりも小さいことが望ましい。その結果、第1導電層11aの一主面S1の算術平均粗さを小さくすることによって、後述するように第1導電層11aとスパッタ層16との接着強度を高めつつ、第1導電層11aの他主面S2の算術平均粗さを小さくすることによって、アンカー効果を高めて第1導電層11aと基体7との接着強度を高めることができる。
【0034】
第1導電層11aの無電解めっき層13は、基体7と電解めっき層14との間に介されており、電解めっき層14の下地層として機能するものである。無電解めっき層13は、例えば銅によって形成されている。なお、無電解めっき層13は、銅の他にリン、パラジウム又は錫等を含有していても構わない。無電解めっき層13の厚みは、例えば0.3μm以上0.5μm以下に設定されている。
【0035】
第1導電層11aの電解めっき層14は、第1導電層11aの主要部をなすものであり、高導電率の材料である銅により形成されている。電解めっき層14は、直流電解めっき法を用いて無電解めっき層13上に形成された第1層15aと、反転電解めっき法を用いて第1層15a上に形成された第2層15bと、直流電解めっき法を用いて第2層15b上に形成された最外層をなす第3層15cと、を含んでいる。電解めっき層14の厚みは、例えば7.5μm以上13μm以下に設定されている。なお、電解めっき層14において、第1層15a、第2層15b及び第3層15cは、電解めっき層14を厚み方向に沿って切断した断面を走査イオン顕微鏡によって結晶状態を観察することによって、区別することができる。
【0036】
電解めっき層14の第1層15aは、無電解めっき層13と第2層15bとの間に介されている。この第1層15aは、第2層15bと比較して、下地層の表面に対して緻密に析出するため、無電解めっき層13との接着強度が高い。また、第1層及び第2層15bは、後述するように、連続的に電解めっき法で形成されるため、接着強度が高い。それ故、第1層15aによって、無電解めっき層13と第2層15bとの接着強度を高めることができるため、無電解めっき層13と電解めっき層14との剥離を低減し、ひいては導電層11の断線を低減することができる。第1層15aの厚みは、例えば0.8μm以上1.2μm以下に設定されている。
【0037】
電解めっき層14の第2層15bは、電解めっき層14の主要部をなすものである。この第2層15bは、直流電解めっき層と比較して、後述するように、均一の厚みで形成しやすい。それ故、第2層15bによって、導電層11の厚みをより均一にすることができ、ひいては導電層11の厚みのばらつきに起因した導電層11の断線を低減することができる。第2層15bの厚みは、例えば5.5μm以上6.5μm以下に設定されている。
【0038】
電解めっき層14の第3層15cは、第1導電層11aの一主面S2を構成し、貫通導体12が接続される部材である。この第3層15cは、第2層15bと比較して、結晶粒径が大きく、結晶粒界が少ないことから、展延性が高いため、クラックが生じにくい。それ故、導電層11の一主面に応力が印加された場合に、第3層15cによって、導電層11のクラックを低減し、ひいては導電層11の断線を低減することができる。第3層15cの厚みは、例えば1.5μm以上2.5μm以下に設定されている。
【0039】
第2導電層11bは、スパッタリング法を用いて第1樹脂層10a上に形成されたスパッタ層16と、電解めっき法を用いてスパッタ層16上に形成された電解めっき層14と、を含んでいる。第2導電層11bの厚みは、例えば4.5μm以上6.5μm以下に設定されている。また、第2導電層11bの一主面S3(第2樹脂層10bに接着した一主面)の算術平均粗さは、例えば0.1μm以上2μm以下に設定され、第2導電層11bの他主面S4(第1樹脂層10aに接着した他主面)の算術平均粗さは、例えば0.01μm以上1μm以下に設定されている。
【0040】
第2導電層11bのスパッタ層16は、第1樹脂層10aと電解めっき層14との間に介されており、電解めっき層14の下地層として機能するものである。このように下地層をスパッタ層16とすることによって、下地層を無電解めっき層13とした場合と比較し
て、第1樹脂層10aを粗化することなく、第1樹脂層10aとの接着強度が高い下地層を形成することができる。それ故、第1樹脂層10aを粗化しないことによって、配線層6にて第2導電層11bを微細化することができる。このスパッタ層16は、図2に示すように、スパッタリング法を用いて第1樹脂層10a上に形成された第1スパッタ層16aと、スパッタリング法を用いて第1スパッタ層16a上に形成された第2スパッタ層16bと、を含んでいる。また、スパッタ層16の厚みは、例えば0.55μm以上0.6μm以下に設定されている。
【0041】
第1スパッタ層16aは、第1樹脂層10aに接着するものであり、例えばニッケルクロム合金又はチタン等の導電材料によって形成されている。このような導電材料によって第1スパッタ層16aが形成されていることから、第1スパッタ層16aと熱可塑性樹脂からなる第1樹脂層10aとの接着強度は高い。それ故、第1スパッタ層16aによって、第1樹脂層10aとスパッタ層16との接着強度を高めることができる。なお、第1スパッタ層16aの厚みは、例えば0.07μm以上0.08μm以下に設定されている。
【0042】
第2スパッタ層16bは、第1スパッタ層16aと電解めっき層14との間に介されており、銅によって形成されている。このように電解めっき層14と同一材料である銅によって第2スパッタ層16bが形成されていることから、第2スパッタ層16bと電解めっき層14との接着強度を高い。また、第1スパッタ層16a及び第2スパッタ層16bは、後述するようにスパッタ法によって連続的に形成されているため、接着強度が高い。したがって、第2スパッタ層16bによって、スパッタ層16と電解めっき層14との接着強度を高めることができる。なお、第2スパッタ層16bの厚みは、例えば0.48μm以上0.52μm以下に設定されている。
【0043】
第2導電層11bの電解めっき層14は、上述した第1導電層14aの電解めっき層14と同様に、第1層15a、第2層15b及び第3層15cを含んでいる。
【0044】
第2導電層11bにおける第2層15bの厚みは、第1導電層11aにおける第2層15bの厚みよりも小さい。その結果、第1導電層11aにおける第2層15bの厚みを大きくすることによって、第1導電層11aと同時に形成するスルーホール導体8の厚みを大きくして信頼性を高めつつ、第2導電層11bにおける第2層15bの厚みを大きくすることによって、第2導電層11bの厚みを小さくして配線部6にて配線密度を高めることができる。第2導電層11bにおける第2層15bの厚みは、例えば1.5μm以上2.5μm以下に設定されており、第1導電層11aにおける第2層15bの厚みの例えば30%以上40%以下に設定されている。
【0045】
第2導電層11bの電解めっき層14の他の構成は、第2導電層11bの電解めっき層14の構成と同様である。
【0046】
貫通導体12は、厚み方向に離間した導電層11同士を接続するものであり、コア基板5に向って幅狭となるテーパー状に形成されており、貫通孔Pの底面にて、導電層11と接続されている。この貫通導体12は、貫通孔Pの内壁上及び底面上に形成されたスパッタ層16と、該スパッタ層16層上に形成された電解めっき層14と、を含んでいる。貫通導体12のスパッタ層16及び電解めっき層14は、第2導電層11bのスパッタ層16及び電解めっき層14と同様の構成を有する。
【0047】
ところで、配線基板に熱が印加された場合、熱応力が導電層11と貫通導体12との接続箇所に印加されやすい。
【0048】
一方、本実施形態の配線基板3においては、貫通導体12は、導電層11の第3層15
c上に接続されている。その結果、第3層15cは、上述したように、展延性が高いため、熱応力が導電層11と貫通導体12との接続箇所に印加された場合に、該熱応力に起因した導電層11のクラックを低減することができる。したがって、導電層11の断線を低減し、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板を得ることができる。
【0049】
第3層15cの厚みは、第1層15aの厚みよりも大きいことが望ましい。その結果、第3層15cの厚みを大きくすることによって、導電層11の上面の強度をより高めることができるため、熱応力に起因した導電層11のクラックを低減することができ、ひいては導電層11の断線を低減することができる。また、第1層15aの厚みを小さくすることによって、直流電解めっき層に起因した導電層11の厚みのばらつきを低減し、ひいては導電層11の断線を低減することができる。なお、第3層15cの厚みは、第1層15aの厚みの例えば1.5倍以上2.5倍以下に設定されている。
【0050】
また、第1層15a及び第3層15cの厚みは、第2層15bの厚みよりも小さいことが望ましい。その結果、導電層11における第2層15bの占める割合(体積%)を高めることができるため、導電層11の厚みのばらつきを低減し、ひいては導電層11の断線を低減することができる。なお、第1導電層11において、第1層15aの厚みは、第2層15bの厚みの例えば10%以上20%以下に設定されており、第3層15cの厚みは、第2層15bの厚みの例えば35%以上45%以下に設定されている。また、第2導電層11において、第1層15aの厚みは、第2層15bの厚みの例えば45%以上55%以下に設定されており、第3層15cの厚みは、第2層15bの厚みの例えば75%以上125%以下に設定されている。
【0051】
かくして、上述した実装構造体1は、配線基板4を介して供給される電源や信号に基づいて電子部品2を駆動若しくは制御することにより、所望の機能を発揮する。
【0052】
次に、上述した実装構造体1の製造方法を、図3から図7に基づいて説明する。
【0053】
(1)図3(a)及び図3(b)に示すように、基体7を形成し、該基体7にスルーホールTを形成する。具体的には、例えば、以下のように行う。
【0054】
まず、未硬化の熱硬化性樹脂を含む樹脂シートを複数積層し、該積層体を加熱加圧して、熱硬化性樹脂を硬化させることにより、基体7を作製する。なお、未硬化は、ISO472:1999に準ずるA−ステージ又はB−ステージの状態である。次に、例えば、ドリル加工やレーザー加工等により、基体7を厚み方向に貫通したスルーホールTを形成する。
【0055】
(2)図3(c)に示すように、スルーホールT内にスルーホール導体8を形成するとともに、基体7上に第1導電層11aを形成した後、図3(d)に示すように、スルーホール導体8の内部に樹脂材料を充填して絶縁体9を形成する。スルーホール導体8及び第1導電層11aは、具体的には、例えば以下のように形成する。
【0056】
まず、図4(a)に示すように、無電解めっき法を用いて、基体7の両主面及びスルーホールTの内壁に銅を被着させることによって、無電解めっき層13を形成する。次に、図4(b)に示すように、基体7の両主面にて、下地層である無電解めっき層13上に部分的に電解めっき層14を形成する。次に、図4(c)にて、過酸化水素水及び硫酸水溶液の混合液、又は、塩酸、硝酸及び塩化鉄水溶液の混合液等のエッチング液を用いて、電解めっき層14から露出した無電解めっき層13の一部を厚み方向に沿ってエッチングすることによって、第1導電層11a及びスルーホール導体8を形成することができる。
【0057】
以下、本実施形態の電解めっき層14の形成方法について、詳細に説明する。
【0058】
まず、直流の電流を用いた直流電解めっき法によって、無電解めっき層13上に部分的に銅を被着させて、第1層15aを形成する。次に、電流の流れる方向を交互に反転された反転電解めっき法(PR法:periodic reverse electroplating)によって、第1層1
5a上に銅を被着させて、第2層15bを形成する。次に、直流電解めっき法によって、第2層15b上に銅を被着させて、第3層15cを形成する。
【0059】
直流電解めっき法においては、図5(a)に示すように、下地層がカソードとなる方向D1に略一定の電流を流している。それ故、第1層15a及び第3層15cは、銅の結晶が連続的に成長するため、銅の結晶が断続的に成長する第2層15bと比較して、結晶が大きく成長することから、結晶粒界の形成領域が少ない。したがって、第1層15a及び第3層15cは、第2層15bと比較して、応力が印加された際に、結晶粒界に起因したクラックが低減するため、クラックが生じにくい。なお、直流電解めっき法において、電流密度は、例えば0.5A/dm以上2A/dm以下に設定されている。また、第1層15aを形成する際に電流を流す時間(以下、t1という)は、例えば2分以上10分以下に設定されている。また、第3層15cを形成する際に電流を流す時間(以下、t2という)は、例えば6分以上27分以下に設定されている。また、t1は、t2よりも長く設定されており、t2の例えば2倍以上5倍以下に設定されている。
【0060】
また、反転電解めっき法においては、図5(b)に示すように、直流の電流の流れる方向を周期的に交互に反転させている。具体的には、まず、下地層がカソードとなる方向D1に電流を流すことによって、めっき液の銅イオンを還元して銅を下地層に被着させる。次に、電流の流れる方向を反転させて、下地層がアノードとなる方向D2に電流を流すことによって、下地層の銅を酸化させて銅イオンを下地層からめっき液に溶出させる。次に、この電流の方向の反転を周期的に交互に行う。この際、下地層がカソードである際の電流密度とパルス幅との積の値を、下地層がアノードである際の電流密度とパルス幅との積の値よりも大きくすることによって、銅の被着量が銅イオンの溶出量よりも大きくなるため、第2層15bを形成することができる。
【0061】
ここで、下地層をアノードとする際の電流密度を、下地層をカソードとする際の電流密度より高くするとともに、下地層をアノードとある際のパルス幅を、下地層をカソードとする際のパルス幅より短くする。これにより、下地層がアノードである際に、銅の厚みが大きい部位における銅イオンの溶出を高めることができる。それ故、下地層がカソードである際にスルーホールの開口部等にて電流密度が高くなって下地層に被着した銅の厚みにばらつきが生じたとしても、下地層をアノードである際に、銅の厚みが大きい部位にて銅イオンを多く溶出させることによって、下地層に被着した銅の厚みのばらつきを低減することができる。したがって、第2層15bは、第1層15a及び第3層15cと比較して、厚みが均一となるように形成することができる。
【0062】
反転電解めっき法において、下地層がアノードである際の電流密度は、例えば1A/d
以上5A/dm以下に設定され、下地層がカソードである際の電流密度は、例えば
0.5A/dm以上2A/dm以下に設定される。また、反転電解めっき法において、下地層がアノードである際のパルス幅は、例えば0.5ms以上3ms以下に設定され、下地層がカソードである際のパルス幅は、例えば10ms以上30ms以下に設定される。
【0063】
以上のようにして、第1層15aと第2層15bと第3層15cとからなり、第3層15cが露出した一主面を有する電解めっき層14を形成することができる。このように形成した電解めっき層14は、第1層15aによって、下地層である無電解めっき層13と
の接着強度を高め、第2層15bによって、厚みをより均一なものとして平坦性を高め、第3層15cによって、露出した一主面の結晶粒界の形成領域を低減することができる。
【0064】
ところで、エッチング液を用いて、電解めっき層14から露出した無電解めっき層13の一部を厚み方向に沿ってエッチングする際に、電解めっき層14の露出した一主面は、エッチング液に浸漬される。その結果、エッチング液が結晶粒界を他の領域よりも多くエッチングするため、結晶粒界には凹部が形成されやすい。
【0065】
一方、本実施形態の配線基板4の製造方法においては、上述したように、第3層15cによって、電解めっき層14の露出した一主面の結晶粒界の形成領域を低減しているため、エッチング液による凹部を低減することができ、ひいては露出した一主面の凹部が低減された平坦性の高い第1導電層11aを形成することができる。
【0066】
(3)図6(a)及び図6(b)に示すように、第1導電層11a上に絶縁層10を形成し、該絶縁層10に貫通孔Pを形成する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0067】
まず、未硬化の熱硬化性樹脂を含む第2樹脂層10bを介して、フィルム状の第1樹脂層10aを第1導電層11aの第3層15c上に配置した後、コア基板7、第2樹脂層10b及び第1樹脂層10aを加熱加圧して第2樹脂層10bの熱硬化性樹脂を硬化させることにより、第1導電層11aの第3層15c上に絶縁層10を形成する。次に、例えばYAGレーザー装置又は炭酸ガスレーザー装置により、絶縁層10に貫通孔Pを形成し、貫通孔Pの底面に第1導電層11aの第3層15cを露出させる。この露出した第3層15cは、図7(a)に示すように、貫通孔Pの底面に露出した第1導電層11aの一主面をなす。
【0068】
(4)図7(b)に示すように、スパッタリング装置を用いて、第1樹脂層10a上と貫通孔Pの内壁上及び底面上とに第1スパッタ層16a、第2スパッタ層16bを順次被着させて、スパッタ層16を形成する。
【0069】
ここで、本実施形態の配線基板4の製造方法においては、貫通孔Pの底面に露出した第1導電層11aの一主面は、(2)の工程にて、エッチング液による凹部が低減されている。その結果、貫通孔Pの底面に露出した第1導電層11aの一主面において、より多くの領域をスパッタ層16によって被覆することができるため、第1導電層11aとスパッタ層16との接着強度を高め、第1導電層11aとビア導体12との断線を低減し、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板4を得ることができる。
【0070】
(5)図8(a)に示すように、下地層であるスパッタ層16上に部分的に電解めっき層14を形成し、電解めっき層14の間に露出したスパッタ層16の一部を厚み方向に沿ってエッチングすることによって、貫通孔P内に貫通導体12を形成するとともに第1樹脂層10a上に第2導電層11bを形成する。具体的には、(2)の工程と同様に行うことができる。
【0071】
(6)図8(b)に示すように、上述した(3)乃至(5)の工程を繰り返すことにより、配線層6を形成し、配線基板4を作製することができる。
【0072】
(7)配線基板4にバンプ3を介して電子部品2をフリップチップ実装することにより、図1に示す実装構造体1を作製することができる。
【0073】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組み合わせ等が可能である。
【0074】
例えば、上述した本発明の実施形態においては、3層の絶縁層により配線層を形成したが、絶縁層は1層、2層又は4層以上であっても構わない。
【0075】
また、上述した実施形態においては、第1樹脂層及び第2樹脂層の双方を有する絶縁層を用いたが、絶縁層は、第2樹脂層のみによって形成されていても構わないし、他の樹脂層によって形成されていても構わない。
【0076】
また、上述した実施形態においては、第1導電層及び第2導電層の双方に第3層を形成したが、第1導電層又は第2導電層のいずれか一方のみに第3層を形成しても構わない。
【0077】
また、上述した実施形態においては、貫通導体が電解めっき層によって充填されていたが、貫通導体は電解めっき層によって充填されていなくてもよく、該電解めっき層が被膜状に形成されていても構わない。
【0078】
また、上述した実施形態においては、電解めっき層の下地層として無電解めっき層及びスパッタ層を用いたが、下地層は、電解めっき層の下地として機能するものであればよく、例えばスパッタリング法以外の蒸着法等により形成しても構わない。
【0079】
また、上述した実施形態においては、スパッタ層が第1スパッタ層及び第2スパッタ層の双方を有していたが、スパッタ層は第1スパッタ層又は第2スパッタ層のいずれか一方のみを有していても構わない。
【符号の説明】
【0080】
1 実装構造体
2 電子部品
3 配線基板
4 バンプ
5 コア基板
6 配線層
7 基体
8 スルーホール導体
9 絶縁体
10 絶縁層
10a 第1樹脂層
10b 第2樹脂層
11 導電層
11a 第1導電層
11b 第2導電層
12 貫通導体
13 無電解めっき層
14 電解めっき層
15a 第1層
15b 第2層
15c 第3層
16 スパッタ層
16a 第1スパッタ層
16b 第2スパッタ層
T スルーホール
P 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電解めっき法を用いて下地層上に形成された第1層と、反転電解めっき法を用いて前記第1層上に形成された第2層と、直流電解めっき法を用いて前記第2層上に形成された最外層をなす第3層と、を有する、平面視で互いに離間した複数の電解めっき層を前記下地層上に形成する工程と、
平面視で前記電解めっき層同士の間に配された前記下地層の一部をエッチングする工程と、
前記第3層上に絶縁層を形成する工程と、
貫通孔の底面に前記第3層の一部を露出させるために、前記絶縁層に前記貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔の内壁面上および前記底面上に前記スパッタ層を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板の製造方法において、
前記第3層の厚みは、前記第1層の厚みよりも大きいことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板の製造方法において、
前記第2層の厚みは、前記第1層および前記第3層の厚みよりも大きいことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の配線基板の製造方法において、
前記第1層、前記第2層および前記第3層は、銅を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の配線基板の製造方法により得られた配線基板に電子部品を電気的に接続する工程を備えることを特徴とする実装構造体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−74687(P2012−74687A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187760(P2011−187760)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】