説明

配線基板の製造方法

【課題】完全にビアホールにめっき金属を埋め込むことができ、ボイドの発生がなく、均一な膜厚を有するプリント配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】配線パターンを形成する複数の導電層が絶縁層を挟んで積層され、上記導体層間がビアフィルによって導通可能に接続された配線基板の製造方法において、絶縁層に形成されたビアホール14の底部に露出した配線パターンの表面に無電解めっき液を接触させ、ビアホール14底部からビアホール14開口部へとめっき金属皮膜を積層し、ビアフィル17を形成するビアフィル17形成工程と、ビアフィル17が形成された基板10上に配線パターンとなる無電解めっき金属皮膜20を形成する、配線パターン形成工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関するものであり、特に、プリント基板や半導体パッケージにおける多層配線基板等の配線基板をビルドアップ法によって形成する際におけるビアホールの埋め込みを行う配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス産業の飛躍的発展に伴い、プリント配線基板も、高密度化、高性能化の要求が高まり需要が大きく拡大している。中でも、多層プリント配線基板(PCBs:Printed Circuit Boards)の製造技術については、高密度化のための様々な取り組みがなされている。
【0003】
特に、PCBsの製造プロセスにおいて、銅を配線材料として用い、層間接続にビアホールを用いたビルドアップ法が現在注目を集めている。
【0004】
ビルドアップ法とは、導電層と絶縁層を交互に積層し、ビアによって層間接続を行うPCBsの製造方法である。このビアによって、配線の高密度化の目的でビアの上に上層のビアを積み重ねるためにビア内部に電気めっきを用いて金属で充填し、導電層間の層間接続を行う方法である。
【0005】
現在、この電気めっきを用いたビルドアップ法として、セミアディティブ法とフルアディティブ法が多用されている。
【0006】
図3にセミアディティブ法よって形成された配線基板の断面図を示す。このセミアディティブ法は、ビアホール47の形成された基材に触媒を付与した後、電解めっきの通電用下地として無電解めっき皮膜44を形成し、配線パターンとなる部位を露出させるめっきレジスト45をマスクにして、電気めっきにより、ビアホール47の埋め込みと配線パターンとなる電解めっき皮膜46の形成を行う方法である。
【0007】
また、図4にはフルアディティブ法によって形成された配線基板の断面図を示す。このフルアディティブ法は、ビアホール54の形成された基材に触媒を付与した後、めっきレジスト55により配線パターンとなる部位を露出させ、無電解銅めっきのみにより、無電解めっき皮膜56からなる回路の形成を行う方法である。
【0008】
【特許文献1】阿部真二,藤波知之,青野隆之,本間英夫 「微小ビアホールへの無電解銅めっきの均一析出性」表面技術協会 Vol48 No4 p433−p438(1997)
【特許文献2】特公平4−3676号公報
【特許文献3】特開平5−335713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、図3に示すように、セミアディティブ法では、電解めっき時における電気の流れ方に起因する回路の膜厚のばらつきが生じ、形成された金属回路が粗くなってしまうため、常に電流分布の調整を考慮した電気めっき処理を行わなければならなくなる。また、電気めっき後に、通電用に電気めっきの下地として形成していた無電解めっきを、エッチングにより取り除く必要があり、このエッチング処理によって、必要な回路部分の断線が生じ易くなる。この問題は、細線化が進むにつれてますます顕在化する。
【0010】
一方、フルアディティブ法は、無電解めっきのみにより回路を形成する方法であることから、確かに、電気めっきの際に重視される電流分布を考慮する必要性がなく、セミアディティブ法における電気の流れ方に起因する回路の厚さに差異が生じることがなくなり、均一な膜厚分布を有する配線基板を形成することが可能となり、さらにエッチングによる回路の断線の問題もない。しかし、図4に示すように、フルアディティブ法では、配線基板のめっき膜厚分布が均一となるが、ビアホール54内のめっき皮膜56aも含めためっき膜厚全体が均一となるため、ビアホール54を完全に埋め込むことができず、ビアホール54に窪み57が生じてしまい、上層のビアを積み重ねることができない。ビアホール54を完全に埋め込むことが可能な無電解めっきも報告されているが、埋め込むことができるビアホールはサブミクロン(例えば、直径0.5μm)以下であり、半導電ウエハに限られてしまい、ビアホールの直径が数μm〜100μm程度のプリント配線基板に対しては、ビアホールを埋め込むことができない。
【0011】
フルアディティブ法でも、めっき厚みを厚くすればビアホール54を埋め込むことが可能な場合もあるが、現行のプリント配線基板に要求される数μmから十数μmの厚みでは到底ビアホール埋め込むことはできず、そのように膜厚を厚くすることによって、皮膜の膜厚にばらつきが出るという問題が生じてくる。
【0012】
さらに、このフルアディティブ法では、触媒を付与した基板上に無電解めっきによって皮膜を形成させることより、触媒が付与されたビアホール内壁からもめっき皮膜の成長が起こり、ビアホールの開口部付近において、成長しためっき皮膜が重なり合って、ビアホール54開口部付近でボイドが発生し、導通不良や断線の原因となり、接続信頼性を低下させるという問題もある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ボイドの発生がなく、ビアホールを完全にめっき金属で埋め込むことができ、さらに均一な膜厚分布を有する配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る配線基板の製造方法は、上記課題を解決するために、配線パターンを形成する複数の導電層が絶縁層を挟んで積層され、上記導体層間がビアフィルによって導通可能に接続された配線基板の製造方法において、上記絶縁層に形成されたビアホールの底部に露出した配線パターンの表面に無電解めっき液を接触させ、上記ビアホール底部から上記ビアホール開口部へとめっき金属皮膜を積層し、上記ビアフィルを形成するビアフィル形成工程と、上記ビアフィルが形成された基板上に配線パターンとなる無電解めっき金属皮膜を形成する配線パターン形成工程とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る配線基板の製造方法によれば、無電解めっきによってビアホール内にめっき金属を充填させていくビアフィル形成工程を有しているので、ボイドの発生がなく、完全にめっきによって充填されたビアフィルを形成することができ、また、その後無電解めっきのみによって回路を形成していくので、膜厚が均一な配線基板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本実施形態に係る配線基板の製造方法は、配線パターンを形成する複数の導電層が絶縁層を挟んで積層され、上記導体層間がビアフィルによって導通可能に接続された配線基板の製造方法において、絶縁層に形成されたビアホールの底部に露出した配線パターンの表面に無電解めっき液を接触させ、ビアホール底部からビアホール開口部へとめっき金属皮膜を積層して、ビアフィルを形成し、ビアフィルが形成された基板上に配線パターンとなる無電解めっき金属皮膜を析出して、配線のパターンを形成する。
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照にしながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る製造方法よって形成された配線基板の断面図の一例である。この図で示すように、配線基板は、第1の絶縁層1Sと、第1の導電層2Sと、第2の絶縁層3Sと、第2の導電層8Sとからなり、各層が交互に積層されて構成されている。そして、第1の絶縁層1Sは、ベースとなる内層樹脂1から構成され、第1の導電層2Sは、配線パターンを形成する内層金属回路(金属ランド)2と、配線基板の配線パターンを形成する導体層間を絶縁する絶縁樹脂3と、内層金属回路(金属ランド)2の露出表面であって無電解めっきの開始点となる活性化領域4とから構成されている。また、第2の絶縁層3Sは、導体層間を絶縁する絶縁樹脂層3と、ビアホール5内にめっき金属が埋め込まれたビアフィル6とから構成され、そして第2の導電層8Sは、基板上に配線パターンとなる部位を露出させるめっきレジスト7と、無電解めっきによって形成された配線パターンを形成する無電解めっき金属皮膜8とから構成されている。
【0019】
内層樹脂1は、電気的絶縁性を有する樹脂からなり、配線パターンとなる内層金属回路(金属ランド)2がその表面に貼着した構造となっており、第1の絶縁層1Sを構成している。この内層金属回路(金属ランド)2を貼着させた内層樹脂1が、プリント配線基板のベース基板となる。なお、この内層樹脂1を底面(ベース)とし、片面だけに層を積層して、多層配線基板を形成してもよいが、内層樹脂1の両面から、絶縁層及び導電層をさらに積層していき、多層配線基板を形成するようにしてもよい。この内層樹脂1に使用される樹脂は、特に限定されるものではなく周知のものを用いることができ、後述する絶縁樹脂3の樹脂と同様に種々のものを使用することができる。
【0020】
内層金属回路(金属ランド)2は、多層配線基板の内層配線パターンを形成する金属層であって第1の導電層2Sを構成し、ベース層の内層樹脂1に貼着あるいはめっきにて形成されている。この内層金属回路(金属ランド)2に用いられる金属層としては、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン等の金属箔、あるいはこれらの合金箔、例えばアルミニウム青銅、リン青銅、黄青銅等の銅合金や、ステンレス、アンバー、ニッケル合金、スズ合金等を、単層あるいは複数層に積層したものが使用可能であるが、めっき密着性、導電率、コストの観点からは銅又は銅合金を使用することが好ましい。
【0021】
絶縁樹脂3は、多層配線基板の配線パターンを形成する導電層に挟まれて位置し、第1の絶縁層及び第2の絶縁層3Sを構成して導体層間を絶縁する。この絶縁樹脂3は、特に限定されるものではなく周知のものを使用することができる。例えば、エポキシ樹脂(EP樹脂)や、熱硬化性樹脂フィルムであるポリイミド樹脂(PI樹脂)、ビスマレイミド―トリアジン樹脂(BT樹脂)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂)等や、さらに熱可塑性樹脂フィルムである液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ポリエーテルサルホン(PES樹脂)等、種々の樹脂を用いることができる。あるいは、連続多孔質PTFE等の三次元網目状フッ素系樹脂基材にEP樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂−樹脂複合材料からなる板材等を使用してもよい。さらに可撓性フィルム等を用いてもよい。この中でも、特に好ましい樹脂としては、無電解めっき処理時に、めっき液に有害な溶出物がなく、界面剥離を起こさないなど、工程に対する耐性を有すると共に、硬化を行い回路形成後、回路面及び上下面の層と十分な密着性を有し、冷熱サイクルなどの試験で剥離やクラックなどを発生しない材料であることが肝要である。
【0022】
活性化領域4は、内層金属回路2のビアホール5形成によって露出した表面領域である。この活性化領域4が、ビアフィル6形成のための無電解めっき析出の開始点となり、ビアホール5の底部である活性化領域4から、ビアホール5の開口部に向かって積層されるようにしてめっき金属が埋め込まれていく。本実施形態に係る製造方法では、ビアホール5のめっき埋め込み、すなわちビアフィル6形成にあたって、底部及び内壁も含めたビアホール5の全体には触媒が付与されず、このビアホール5の底部の活性化領域4のみが活性化処理されて、無電解めっきによって充填されていく。なお、このビアホール5の底部とは、内層金属回路2が露出した部位をいう。
【0023】
この活性化領域4に対する活性化処理方法は、酸性の溶液と基板を接触させて行う。酸性溶液としては、硫酸、硝酸、塩酸等の酸性溶液を用いることができるが、銅箔を内層金属回路2として用いる場合には、過硫酸塩、または硫酸と過酸化水素水を含む混合溶液のような酸化性の高い溶液を用いることが好ましい。さらに、10%程度の硫酸を使用して酸化物の残渣を除く工程を加えることもできる。なお、活性化処理は、ホルマリン等の還元剤及びポリエーテル含有化合物等の界面活性剤を含有させた処理液を用いて行ってもよい。
【0024】
ビアフィル6は、第2の絶縁層3Sに形成されたビアホール5にめっき金属皮膜を積層して形成され、内層の樹脂層に埋め込まれている配線パターンを形成する内層金属回路2と、後述するめっき金属皮膜によって形成される配線パターンとを導通するための導体間接続材料である。このビアフィル6は、上述のように、ビアホール5に触媒を付与せずに、すなわち無電解めっき液のみによって、ビアホール5の底部の活性化領域4を開始点として、ビアホール5の底部から開口部に向かって、無電解めっき金属皮膜が積層するように埋め込まれることによって形成されている。このビアフィル6形成のための無電解めっきとしては、電気伝導度及びめっき密着性の観点から無電解銅めっきを採用することが好ましいが、これに限られるものではない。例えば、めっき液中での樹脂の安定性が高く、操作性に優れた無電解ニッケルめっきを使用して形成することもできる。このように、ビアフィル6は、触媒を付与することなく、ビアホール5底部の活性化領域4のみを酸処理等して活性化させることによって、めっき金属がビアホール5の底部から開口部へ向かって積層するように充填して形成されていくことから、ビアホール5の壁面も含めた全体に触媒を付与して形成されたビアフィルと比べて、ビアフィル上部に、めっき金属の重なりに基づく膨らみが発生せず、導通不良の原因となるボイドも発生しない。この点に関しては後で詳述する。
【0025】
めっきレジスト7は、第2の導電層8Sにおいて、配線パターンを形成する無電解めっき金属皮膜8の間に存在し、配線パターンとなる部位を露出させるレジストである。このめっきレジスト7は、ビアフィル6の形成後、無電解めっき処理の前に、めっき金属を析出させない部分をマスクするためのマスキング剤として形成されたものである。このめっきレジスト7は、回路形成後には、ソルダーレジストとして機能し、はんだ付けが不要な部分にはんだが付かないように機能している。このめっきレジスト7は、特に限定されるものではなく、周知のものを使用することができる。
【0026】
無電解めっき金属皮膜8は、ビアフィル6の形成後、めっきレジスト7がパターンされた基板上に、無電解めっきによって形成された金属皮膜である。この無電解めっき金属皮膜8は、第2の導電層8Sにおいて、めっきレジスト7が形成された部位以外の部位に析出されためっき金属からなっており、配線パターンを形成している。この無電解めっき皮膜8は、電解めっきに伴う電流分布の相違に基づくめっき膜厚のばらつきがなく、均一な膜厚を有した金属皮膜によって形成されており、導通不良のない接続信頼性を向上した回路を形成している。
【0027】
以下では、図2を参照にして、配線基板の製造方法の各工程を説明する。図2(a)〜(e)は、本実施形態に係る配線基板の製造工程を概略的に説明した図である。なお、各図においては、一方の面しか図示されていないが、両側の面に対して処理を行う場合を除く趣旨のものではない。また、以下では、第1の導電層2Sとなる内層金属回路2に、めっき密着性の優れた銅箔を用いて内層銅回路(銅ランド)とし、無電解銅めっきにより、銅回路を形成する実施形態について具体的に説明する。なお、金属として銅に限られるものではなく、金やニッケル等種々の金属を用いて実施できることは上述の通りである。
【0028】
樹脂層形成工程
まず、本実施形態の多層プリント配線基板の層をなす各樹脂層の形成工程について説明する。図2(a)〜(e)に示すように、本実施形態の配線基板10は、樹脂基材をコア材として備えており、銅箔を金属層として内部に形成している。具体的には、ベースとなる内層樹脂の表面に、数μm〜25μmの厚さを有する銅箔を重ねて、配線パターンを形成する銅ランド13を貼着した銅張積層板11を形成し、この銅張積層板11の上に、導電層間を絶縁する樹脂基材12を重ね合わせて、加温、加圧等したり、または接着材等を使用することによって固着させ、樹脂層を形成する。絶縁層を形成する樹脂基材12としては、エポキシ樹脂や、樹脂フィルムであるポリイミド樹脂(PI樹脂)、ビスマレイミド―トリアジン樹脂(BT樹脂)、液晶ポリマー(LCP)、PEEK樹脂、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、アラミド樹脂等や、さらには可撓性フィルム等を基材として用いることができる。なお、上記の銅張積層板11は、銅箔をベースとなる内層樹脂にめっきすることによって形成することもできる。
【0029】
ビアホール形成及びめっき前処理
次に、配線パターンである銅ランド13を内層し、樹脂基材12を積層して形成された配線基板10に対し、図2(a)に示すように、樹脂基材12にビアホール14を形成する。このビアホール14は、配線パターンとして基板の内層に設けられた銅ランド13を露出させるように形成され、この銅ランド13に導通接続させるための金属めっきを充填するために形成される有底のビアホールである。ビアホール14の大きさは、アスペクト比、直径の大きさ、深さのそれぞれに関して特定の範囲に限られるものではないが、本実施形態に係る配線基板の製造方法では、比較的大きな直径を有するビアホールにも対応でき、例えば、従来法では完全にめっき金属を充填させることができなかった、直径1μm〜100μmの大きさのビアホールに対して、特に有利な効果を発揮するものである。本実施形態に係る製造方法によれば、まず無電解めっきによって、ビアホール14に銅めっきを積層するように埋め込むビアフィル17形成工程を有しているので、直径1μm〜100μm程の大きな直径を有するビアホール14であっても、完全に銅めっきを埋め込むことができ、導通不良や断線を起こすことのない配線基板10を形成することができる。
【0030】
このビアホール14は、レーザ15を用いて形成することができる。レーザ15の種類としては、炭酸ガスレーザやYAGレーザを用いることができる。また気体レーザであるアルゴンレーザやヘリウム―ネオンレーザ、固体レーザであるサファイアレーザ、その他にエキシマレーザ、色素レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等を用いてもよい。これらのレーザは、形成するビアホールの大きさによって変更させることが望ましく、例えば、微細孔を形成する場合には、400nm以下の短波長レーザであるYAG第3高調波、第4高調波並びにエキシマレーザを用いることが好ましい。なお、レーザではなく、ドリルを用いてビアホールを形成してもよい。
【0031】
レーザ15によって、基板10上にビアホール14を形成させると、次に、デスミア処理を行う。このデスミア処理は、ビアホール14の形成時に発生したスミアや残留樹脂を除去する目的で行われる。デスミア処理溶液としては、例えば過マンガン酸カリウム、水酸化ナトリウム、イオン交換水からなるアルカリ性過マンガン酸塩の混合液等、周知の処理液を用い、50〜80℃の温度条件で10〜20分間、基板10をデスミア処理溶液中に浸漬させて行う。このように、ビアホール14形成時に発生したスミアや残留樹脂を除去することによって、ビアホール14内に充填させた銅めっきと銅ランド13との導通不良や接続性の悪化、さらには断線等を防ぐことができる。なお、このデスミア処理は、プラズマやエキシマレーザを用いた物理的なデスミア処理であってもよい。
【0032】
また、ビアホール14の形成によって、ビアホール14内部に空気溜が生じた場合には、適宜脱気処理を行うようにしてもよい。この脱気処理は、その後の工程において、空気溜の存在によって生じるビアホール14内への薬液の浸透阻害を防止する目的で行われる。
【0033】
デスミア溶液等を基板表面から水洗した後は、この基板10に中和処理及び脱脂処理を施して、ビアホール14底部の銅ランド13の表面、すなわち活性化領域16をクリーニングする。具体的に、中和処理は、中和溶液中に、例えば45℃で5分間、基板10を浸漬し、銅ランド13表面を中和させる。この中和溶液としては、硫酸、硫酸ヒドロキシルアミン、活性剤、有機酸及びイオン交換水を含有させた中和溶液等を用いることができる。脱脂処理は、中和溶液に浸漬させた基板10を水洗した後、脱脂溶液中に、例えば65℃で5分間、基板10を浸漬し、銅ランド13表面の油脂等を脱脂する。脱脂溶液としては、酸性溶液を用いても、アルカリ性溶液を用いてもよい。これらの中和処理、脱脂処理の工程によって、露出した銅ランド13表面の活性化領域16を清浄にする。
【0034】
そして次に、ビアホール14底部の露出した配線パターンを形成する銅ランド13表面の活性化領域16を活性化させる。活性化処理は、硫酸や塩酸の10%溶液からなる酸性溶液等を用いて、酸性の溶液中に基板10を5〜10秒間浸漬させて行う。酸性溶液としては、硫酸や塩酸の10%溶液等を用いて行うことができるが、本実施形態においては、金属として銅を用い、銅ランドを導体層として内層させているため、過硫酸塩又は硫酸及び過酸化水素水の混合溶液等を用いて処理することが好ましい。このように酸性溶液に浸漬(酸処理)させることによって、銅ランド13表面の活性化領域16に残ったアルカリを中和し、薄い酸化膜を溶解し、また、酸化膜を取り除いた活性化領域16をエッチング(ソフトエッチング)することができ、後工程において形成される銅めっき皮膜の密着性を向上させ、活性化領域16を活性化した状態にする。そして、この活性化したビアホール14底部の活性化領域16が、その後の無電解銅めっきの埋め込み開始点となる。なお、ビアホール14の底部とは、例えば基板の下面からレーザ等によって穴あけがされ、銅ランド13が上方に位置しても、ビアホール14における銅ランド13の露出した部位をいうものとする。
【0035】
以上の工程が、無電解めっきの前処理工程であるが、以上説明した前処理に限られるものではなく、適宜異なる前処理方法を採用することができ、また採用する金属の種類によって、処理時間や薬液の濃度等を変更させてもよいことは言うまでもない。
【0036】
ビアフィルの形成
次に、図2(b)に示すように、前処理が施された銅ランド13表面の活性化領域16を開始点として銅めっきをビアホール14内に埋め込み、ビアフィル17を形成させる。ここで、ビアフィルとは、めっき金属が充填されて、その内部がめっき金属によって埋め込まれた状態のビアホールをいうものとする。
【0037】
ビアフィル17の形成は、基板10を無電解銅めっき液に浸漬させることによって、ビアホール14に銅めっきを充填させていく。その際、ビアホール14には触媒を付与することなく、すなわち無電解銅めっき液のみによって、銅めっきを充填させ、ビアフィル17を形成していく。具体的には、活性化した銅ランド13表面の活性化領域16を開始点として、銅めっきをビアホール14の底部から開口部に向かって積層させるように充填させ、完全に埋め込み、ビアフィル17を形成させる。なお、このビアホール14内への銅めっきの埋め込みは、活性化した活性化領域16に無電解銅めっき液をスプレー等することによって、ビアホール14底部の活性化領域16とめっき液を接触させ、ビアホール14の底部から開口部へ向かってめっき金属を積層するように埋め込みが行われるようにしてもよい。
【0038】
本実施形態に係る配線基板の製造方法におけるビアフィル17の形成方法によれば、底部及び内壁を含んだビアホール14全体に、触媒を付与しないで、無電解めっき液のみを接触させているので、活性化された銅ランド13表面の活性化領域16からだけめっき皮膜が成長するようになる。このことによって、従来法にあった様な、触媒が付与されたビアホール内壁からのめっき皮膜の成長を無くすことができ、ビアホールの開口部付近でのめっき同士の重なり合いに起因するボイドの発生を抑えることができる。そしてその結果、ボイドの発生に基づく導通不良や断線等を無くし、接続信頼性を向上させることができる。
【0039】
また、このように、まず第1段階として、触媒を付与していない基板10に対し、無電解銅めっきにより、底部の活性化したビアホール14内に銅めっきを接触させて、ビアフィル17を形成するようにしているので、ビアホール14内に完全にめっき液が埋め込まれたビアフィル17を形成することができる。
【0040】
無電解銅めっきに用いる銅めっき液としては、例えば、錯化剤としてEDTAを用いためっき液を用いることができる。この銅めっき液の組成の一例としては、少なくとも硫酸銅(10g/L)、EDTA(30g/L)を含有し、水酸化ナトリウムによってpH12.5に調整されている無電解銅めっき液を使用することができる。また、錯化剤としてロッシェル塩を用いた無電解銅めっき液を使用してもよい。そして、この無電解銅めっき液中に基板10を、例えば60〜80℃の温度条件で30〜600分間浸漬し、ビアホール14底部から開口部に向かって積層するように順に銅を析出させて銅めっきを埋め込み、ビアフィル17を形成させていく。なお、この無電解銅めっきを行うに際しては、液の攪拌を十分に行って、ビアホール14内にイオン供給が十分に行われるようにするとよい。攪拌方法としては空気攪拌やポンプ循環等による方法がある。また、長時間めっきを実施する場合には、めっき浴中に硫酸ナトリウムが蓄積し、めっきの異常析出の原因になる場合があるため、適宜強制的にめっき液の一部を汲み出すようにするとよい。
【0041】
なお、上述したように、無電解めっきとして、無電解ニッケルめっきを用いて行ってもよい。ニッケルめっき液の組成としては、例えば、少なくとも硫酸ニッケル(20g/L)、次亜リン酸ナトリウム(15g/L)、クエン酸塩(30g/L)を含有し、pH8〜9に調整されためっき液を用いることができる。
【0042】
また、ビアフィル17形成工程においては、無電解銅めっきがビアホール14以外の部位にも析出してしまうことがあるため、ビアフィル17の形成後、必要に応じて各種の銅析出物除去処理を行うようにしてもよい。具体的には、上述したデスミア処理や、基板10の一方又は両面から50〜70kg/cmの高圧水を吹き付けて、めっき残渣である銅を除去する高圧水洗処理や、あるいはブラッシや振動などを行う機械研磨や過酸化水素水と硫酸の混合溶液、過硫酸塩アンモニウム等を用いて行う化学研磨といった研磨処理等の処理を行うことによって、めっき残渣である銅を除去することができる。
【0043】
さらに、後工程で形成される無電解銅めっき皮膜と配線基板10表面との密着性を向上させる目的から、ビアフィル17の形成後、基板10の表面を荒らす粗化処理を次に説明していく処理の前に行ってもよい。この粗化処理としては、一般的に知られている粗化方法を利用して行うことができる。
【0044】
触媒付与、及び無電解銅めっきによる回路の形成
次に、図2(c)に示すように、ビアフィル17が形成された配線基板10に触媒18を付与し、ビアフィル17及び絶縁層である樹脂基材12上に、配線パターンを形成する無電解銅めっき皮膜20を析出形成させる。
【0045】
まず、触媒付与工程に用いられる触媒18は、2価のパラジウムイオン(Pd2+)を含有した触媒液を用いて行うことが好ましい。この触媒液としては、例えば、塩化パラジウム(PdCl・2HO)、塩化第一スズ(SnCl・2HO)、塩酸(HCl)を含有する混合溶液を用いることができる。触媒液濃度の一例としては、Pd濃度が100〜300mg/L、Sn濃度が10〜20g/L、HCl濃度が150〜250mL/Lの各濃度組成をもつ触媒18を用いることができる。そして、この触媒液中に基板10を、例えば温度30〜40℃の条件で、1〜3分間浸漬させて、まずPd−Snコロイドを基板10の表面に吸着させる。そして次に常温条件下で、50〜100mL/Lの硫酸又は塩酸からなるアクセレータ(促進剤)に浸漬し、触媒の活性化を行う。この活性化処理によって、錯化合物のスズが除去され、パラジウム吸着粒子となり、最終的にパラジウム触媒として、その後の無電解銅めっきによる銅の析出を促進させるようにする。なお、水酸化ナトリウムやアンモニア溶液をアクセレータとして用いてもよい。また、この触媒18付与に際しては、コンディショナー液やプレディップ液を用いて絶縁層である樹脂基材12と銅めっき皮膜の密着性を強固にする前処理を施してもよく、触媒18の基板10の表面への馴染みを良くする前処理を施すようにしてもよい。なお、触媒液は、上記のものに限られるものではなく、Cuを含有した触媒液を用いて行ってもよい。また、スズを含有しない酸性コロイドタイプ又はアルカリイオンタイプの触媒液を用いることもできる。
【0046】
次に、このようにして配線基板10に触媒18を付与した後、図2(d)に示すように配線パターンとなる部位を露出させるめっきレジスト19を形成する。つまり、次の工程で配線パターンを形成する無電解銅めっきを析出させる箇所以外をマスキングするレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、めっき処理後には除去せずに、ソルダーレジスト機能するようにしてもよい。
【0047】
めっきレジスト19を形成した後、10%硫酸及びレデューサーを用いて、基板表面に付着している触媒のパラジウム吸着粒子を還元して活性化させ、基板10上における無電解銅めっきの析出を向上させる。
【0048】
そして、図2(e)に示すように、レジストパターンが形成された配線基板10上に配線パターンとなる無電解銅めっき皮膜20を形成し、銅からなる配線回路を形成する。無電解銅めっきに用いる銅めっき液としては、例えば、錯化剤としてEDTAを用いためっき液を用いることができる。この銅めっき液の組成としては、例えば、硫酸銅(10g/L)、EDTA(30g/L)を含有し、水酸化ナトリウムによってpH12.5に調整されている銅めっき液を使用することができる。そして、この無電解銅めっき液中に配線基板10を、例えば60〜80℃の温度で約20〜300分間浸漬し、無電解銅めっき皮膜20によって回路を形成する。なお、めっき液として、錯化剤にロッシェル塩を用いた無電解銅めっき液を用いてもよく、この錯化剤の選択は、析出させる銅めっき皮膜の厚さに応じて行うようにするとよい。
【0049】
なお、この無電解銅めっき処理においても、上述したビアフィル17形成における無電解銅めっき処理と同様に、空気攪拌やポンプ循環等によって、めっき液の攪拌を十分に行って、基板10の表面にイオン供給が十分に行われるようにする。また、長時間めっきを実施する場合には、めっき浴中に硫酸ナトリウムが蓄積し、めっきの異常析出を回避するために、適宜強制的にめっき液の一部を汲み出すようにする。
【0050】
なお、本実施形態においては、触媒18付与後、配線パターンとなる部位を露出させるめっきレジスト19を形成し、そこに無電解銅めっきを析出させるめっき方法について説明したが、これに限られるものではなく、例えば、インクジェット方式で直接、触媒又はシード粒子(金や銅などの金属)を塗布してパターンを形成し、そこに無電解銅めっきを析出させるようにしてもよい。また、レジストを用いて、シードパターン以外をマスクすることもできる。
【0051】
本実施形態の回路形成法によれば、無電解銅めっきによるビアフィル17の形成後、無電解銅めっきのみにより、配線基板上に回路を形成するので、従来のように、電気めっきにより回路を形成したときに生じる、銅回路表面の粗密等によるめっき皮膜の厚み(回路の高さ)のばらつきを防ぐことができ、膜厚分布が均一な回路を形成することができる。
【0052】
また、本実施形態の回路形成法によれば、電気めっきでの回路形成では必要となっていた無電解めっき皮膜からなる通電用下地をエッチングにより除去する必要がなくなり、エッチングによる断線を防止することができ、接続信頼性を向上させることが可能となる。
【0053】
以上の各工程を説明したが、各工程を経て形成された図2(e)に示す配線基板10は、図1に示した配線基板に対応しており、絶縁層を構成しベース基板となる銅張積層板11と、導電層を構成し配線パターンを形成する銅ランド13と、導体層間を絶縁する樹脂基材12と、ビアフィル17形成において銅めっきの積層の開始点となる活性化領域16と、ビアホール14に銅めっきが埋め込まれ、配線パターンを形成する導電層間を導通可能に接続するビアフィル17と、導電層である銅めっき層21の一部を構成し、配線パターンとなる部位を露出させるめっきレジスト19と、無電解銅めっきによって銅が析出した配線パターンを形成する無電解銅めっき皮膜20とによって構成されている。
【0054】
本実施形態に係る配線基板の製造方法は、以上のように、無電解めっきによってビアフィル17を形成する工程と、無電解めっきによってビアフィル17が形成された基板10にめっき金属の回路を形成する工程との、主に2段階の工程から構成されているので、導通接続のためのビアホール14に完全にめっきを充填させることができ、ボイドの発生がなく接続信頼性の向上した配線基板であって、導通不良や断線を防止した均一な膜厚を有する配線基板を製造することが可能となる。
【0055】
そして、このようにボイドの発生がなく、均一な膜厚を有する配線基板は、高速信号を流すプリント配線基板の製造に極めて有利となり、さらに配線基板の高密度化の要求、複雑化の流れに対応した技術を提供するものである。
【0056】
なお、必要に応じて以上の工程を繰り返すことによって、所望とする数の層を有するビルドアップ多層プリント配線基板を形成させることができる。
【実施例1】
【0057】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0058】
実施例1
絶縁層と導電層からなるビルドアップ基板に、YAGレーザを用いてビアホールを形成し、ビアホール内の空気溜を除去した後、露出した内層銅ランドの表面を活性化するために、酸処理を行った。具体的には、35〜44℃の条件で、酸性クリーナー(上村工業(株)製スルカップMSC)と硫酸系エッチングの添加剤(上村工業(株)製スルカップMSE)を加えて、10%硫酸に約10秒の短時間浸漬し、内層銅ランドを活性化した。
【0059】
銅ランドが活性化された基板を水洗した後、フルアディティブ無電解銅めっき液(上村工業(株)製SP-2)中に、基板を60〜80℃で約600分間浸漬させて、無電解銅めっきを行った。
【0060】
絶縁樹脂基材と銅めっき皮膜との密着性を強固にするために、クリーナー(上村工業(株)製スルカップACL-009)で基板表面を処理した後、まずPd−Sn触媒の吸着を助けるために、プレディップ液(上村工業(株)製スルカプPED-104)に3〜4分間浸漬して、そしてPd−Sn触媒(上村工業(株)製スルカップAT-105)を付与し、この付与した触媒を活性化させるために、アクセレータ(上村工業(株)製スルカップAL-106)に5〜10分間浸漬させた。
【0061】
次に、触媒を付与した基板上に、配線パターンとなる部位を露出させるめっきレジストパターンを形成した。
【0062】
そして、レジストを形成した基板に、酸性クリーナー(上村工業(株)製スルカップMSC及び上村工業(株)製スルカップMSE)、10%硫酸及びレデューサー(上村工業(株)製アルカップレデューサーMAB)を用いてPd触媒を活性化した。
【0063】
その後、フルアディティブ無電解銅めっき液(上村工業(株)製スルカップSP-2)を用いて、レジストパターンを形成し、活性化させた基板に無電解銅めっきのみで回路を形成した。
【0064】
比較例1
比較例1は、実施例1とは異なり、ビアホールを含めた基板上に触媒を付与し、通電用下地となる無電解めっき皮膜を形成し、レジストパターンを形成した後、ビアホールの埋め込みを含めて、電気銅めっきによって回路形成した。
【0065】
すなわち、絶縁層と導電層からなるビルドアップ基板に、YAGレーザによってビアホールを形成させた後、クリーナー(上村工業(株)製スルカップACL-009)で基板表面を処理し、プレディップ液(上村工業(株)製スルカプPED-104)に3〜4分間浸漬して、Pd−Sn触媒(上村工業(株)製スルカップAT-105)を付与した。その後、アクセレータ(上村工業(株)製スルカップAL-106)に5〜10分間浸漬させて、触媒付与プロセスを行った。
【0066】
次に、その触媒が付与された基板を、ロッセル塩を錯化剤としたセアディティブ無電解銅めっき液(上村工業(株)製スルカップPEA)中に30分間浸漬して、電解めっきの通電用下地となる無電解銅めっき皮膜を形成した。
【0067】
そして、この無電解めっき皮膜上に、めっきレジストパターンを形成し、その基板をビアフィル用電気銅めっき液(上村工業(株)製スルカップEVF)に浸漬して電気めっきを行い、回路形成を行った。
【0068】
なお、レジストが形成された部位における無電解銅めっき皮膜はエッチングによって、除去した。
【0069】
比較例2
比較例2は、実施例1とは異なり、ビアホールを含めた基板上に触媒を付与した後、無電解銅めっき液を用いて、ビアホールを含めた基板表面に、無電解銅めっき皮膜からなる回路を形成した。
【0070】
すなわち、絶縁層と導電層からなるビルドアップ基板に、同様にYAGレーザによってビアホールを形成し、クリーナー(上村工業(株)製スルカップACL-009)で基板表面を処理した後、プレディップ液(上村工業(株)製スルカプPED-104)に3〜4分間浸漬して、Pd−Sn触媒(上村工業(株)製スルカップAT-105)を付与し、その後アクセレータ(上村工業(株)製スルカップAL-106)に5〜10分間浸漬させて、触媒付与プロセスを行った。
【0071】
次に、その触媒が付与された基板上に配線パターンとなるめっきレジストパターンを形成した後、酸性クリーナー(上村工業(株)製スルカップMSC及び上村工業(株)製スルカップMSE)、10%硫酸及びレデューサー(上村工業(株)製アルカップレデューサーMAB)を用いてPd触媒を活性化させた。
【0072】
そして、触媒が活性化された基板上にフルアディティブ無電解銅めっき液(上村工業(株)製スルカップSP-2)を用いて、無電解銅めっきのみで回路を形成した。
【0073】
上記実施例1と比較例1及び2で得られた各配線基板に対し、膜厚測定、ビアホールの埋め込み状況、ボイドの発生状況のそれぞれについて調べた。なお、膜厚測定は、蛍光X線微小膜厚計(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いて測定し、ビアホールの埋め込み状況及びボイドの発生状況については、クロスセクションにてビアホール断面を観察して調べた。
【0074】
【表1】

表1において、『ボイドの有無』の調査に関し、表中の「○」は、ボイドの発生がないことを示す。また、『ビアホールの埋め込み』の調査に関し、表中の「○」は、めっきが完全にビアホール内に埋め込まれたことを示す。
【0075】
表1の結果からも分かるように、本実施形態に係る製造方法を適用した実施例1によって形成された配線基板では、均一なめっき膜厚を有する回路が形成された。また、ビアホールは完全に銅めっきによって埋め込まれており、ボイドの発生は全くなかった。
【0076】
これに対し、比較例1で示されるように、従来の方法で形成した配線基板においては、ビアホールにめっきを完全に埋め込むことはできたものの、めっき膜厚が不均一となり、断線等の影響の原因となるボイドが発生した。さらに比較例2で示される従来の方法で形成した配線基板においては、めっき膜厚の均一性は保持できたものの、完全にビアホールにめっきが埋め込まれず、ボイドの発生も観察された。
【0077】
この結果から、本実施形態に係る配線基板の製造方法は、従来の製造方法とは異なり、ビアホール内に完全にめっき金属を埋め込みことができ、ボイドの発生もなく、均一な膜厚を有する配線基板を形成できることが明らかとなった。
【0078】
なお、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0079】
また、本発明は、上記の実施形態に係る配線基板の製造方法、ビルドアップ工法による高密度多層配線基板の製造にのみ適用されるものではなく、例えば、ウエハレベルCSP(Chip SizエポキシackageまたはChip Scalエポキシackage)、あるいはTCP(Tape Carrier Package)等における多層配線層の製造工程にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本実施形態に係る製造方法よって形成された配線基板の断面図の一例である。
【図2】本実施形態に係る製造工程を概略的に説明した図である。
【図3】従来の製造方法によって形成された配線基板の断面図である。
【図4】従来の他の製造方法によって形成された配線基板の断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 内層樹脂、1S 第1の絶縁層、2 内層金属回路(金属ランド)、2S 第1の導電層、3 絶縁樹脂、3S 第2の絶縁層、4 活性化領域、5 ビアホール、6 ビアフィル、7 めっきレジスト、8 無電解めっき金属皮膜、8S 第2の導電層
10 (配線)基板、11 銅張積層板、12 樹脂基材、13 銅ランド、14 ビアホール、15 レーザ光、16 活性化領域、17 ビアフィル、18 触媒、19 めっきレジスト(レジストパターン)、20 無電解銅めっき皮膜、21 銅めっき層
41 内層、42 絶縁層、43 内層金属回路、44 無電解めっき層、45 めっきレジスト、46 電解めっき皮膜、47 ビアホール
51 内層、52 絶縁層、53 内層金属回路、54 ビアホール、55 めっきレジスト、56 無電解めっき皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンを形成する複数の導電層が絶縁層を挟んで積層され、上記導体層間がビアフィルによって導通可能に接続された配線基板の製造方法において、
上記絶縁層に形成されたビアホールの底部に露出した配線パターンの表面に無電解めっき液を接触させ、上記ビアホール底部から上記ビアホール開口部へとめっき金属皮膜を積層し、上記ビアフィルを形成するビアフィル形成工程と、
上記ビアフィルが形成された基板上に配線パターンとなる無電解めっき金属皮膜を形成する、配線パターン形成工程と
を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
上記めっき金属が、銅であることを特徴とする請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
上記ビアフィル形成工程では、触媒を付与しないでめっき金属を積層させることを特徴とする請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
上記ビアホールの直径が1〜100μmであることを特徴とする請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
配線パターンを形成する複数の導電層が絶縁層を挟んで積層され、上記導体層間がビアフィルによって導通可能に接続された配線基板において、
上記ビアフィルは、上記絶縁層に形成されたビアホールの底部に露出した配線パターンの表面に無電解めっき液を接触させ、上記ビアホール底部から上記ビアホール開口部へとめっき金属皮膜を積層して形成したものであることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−10276(P2009−10276A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172133(P2007−172133)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】