説明

配線基板

【課題】耐マイグレーション性に優れた配線基板を提供する。
【解決手段】平板状の絶縁基材11と、その一面11aに配される第一回路12および第二回路13と、少なくとも第一回路12を覆うように配される絶縁部材15とから構成され、第二回路13の端部13aが第一回路12の端部12aの上に重なる接合部14を備える配線基板10において、第二回路13は、導電性微粒子を含み、第一回路12よりも耐マイグレーション性が優れるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐マイグレーション性に優れた配線基板に関し、特に、狭ピッチのコネクタ部を有する、リジッドあるいはフレキシブルな配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、銀ペーストなどの導電性ペーストを印刷することにより回路を形成したメンブレン配線板が提案されている。
このメンブレン配線板の銀からなる回路は、高湿度下では、マイグレーションを起こし易いという問題があった。
【0003】
このイオンマイグレーションは、回路の表面を樹脂などにより被覆するオーバーコートを設けることによって防止することができる。
図7は、従来の0.5mmピッチのコネクタ部が設けられた配線基板を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D線に沿う断面図である。
この配線基板100は、絶縁基材101と、その一面101aに配される回路102と、回路102のコネクタ部103を覆う保護膜104と、回路102のコネクタ部103を除く部分を覆うオーバーコート105とから概略構成されている。
この配線基板100のように、回路102のコネクタ部103では、電子部品などと電気的に接続するために、オーバーコート105を除去して、コネクタ部103を露出しなければならない。しかしながら、コネクタ部103を露出したままでは、コネクタ部103にマイグレーションが生じるとい問題があった。そこで、これまでは、コネクタ部103に導電性カーボンインクペーストを印刷することにより塗布して、保護膜104を設け、マイグレーションを防止していた(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】唐沢範之、石井崇裕、川上裕之、羽賀荘一、大山昌紀、今井隆之、腰原優智、「0.5mmピッチ仕様耐マイグレーションコネクタ回路」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、0.3mmピッチ以下の狭ピッチのコネクタ部に、印刷によりカーボンペーストを塗布して、コネクタ部にマイグレーションを防止するための保護膜を設けることは、印刷精度の点から困難であった。
図8は、従来の0.3mmピッチのコネクタ部が設けられた配線基板を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線に沿う断面図である。
この配線基板110は、絶縁基材111と、その一面111aに配される回路112と、回路112のコネクタ部113を被覆する保護膜114と、回路112のコネクタ部113を除く部分を覆うオーバーコート115とから概略構成されている。
この配線基板110のように、0.3mmピッチ以下の狭ピッチのコネクタ部113に、印刷によりカーボンペーストを塗布すると、それぞれのコネクタ部113を被覆するカーボンペーストが重なってしまい、結果として、保護膜114は全てのコネクタ部113を一括して被覆してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、耐マイグレーション性に優れた配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る配線基板は、平板状の絶縁基材と、その一面に配される第一回路および第二回路と、少なくとも前記第一回路を覆うように配される絶縁部材とから構成され、前記第二回路の端部が前記第一回路の端部の上に重なる接合部を備える配線基板であって、前記第二回路は、導電性微粒子を含み、前記第一回路よりも耐マイグレーション性が優れることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る配線基板は、請求項1において、前記導電性微粒子が、最表面が金を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に係る配線基板は、請求項1において、前記第二回路が、バインダを含む材料からなることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に係る配線基板は、請求項1において、前記接合部に5Vの直流電圧を印加した際に、短絡時間が400秒以上、かつ、短絡時における抵抗値が10Ω以上であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に係る配線基板は、請求項1において、前記第二回路の少なくとも一部が露呈していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配線基板によれば、平板状の絶縁基材と、その一面に配される第一回路および第二回路と、少なくとも前記第一回路を覆うように配される絶縁部材とから構成され、前記第二回路の端部が前記第一回路の端部の上に重なる接合部を備える配線基板であって、前記第二回路は、導電性微粒子を含み、前記第一回路よりも耐マイグレーション性が優れるので、配線基板全体としての耐マイグレーション性が向上する。また、第一回路が全て絶縁部材で覆われているので、第一回路にマイグレーションが発生するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施した配線基板について詳細に説明する。
【0013】
(1)第一の実施形態
図1は、本発明に係る配線基板の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。図2は、図1の破線で囲んだ領域Bを拡大した図である。
この実施形態の配線基板10は、平板状の絶縁基材11と、その一面11aに配される第一回路12および第二回路13と、第二回路13の一方の端部13aが第一回路12の一方の端部12aの上に重なる接合部14と、第一回路12の全部および第二回路13における接合部14の近傍を覆うように配される絶縁部材15とから概略構成されている。
また、第二回路13の他方の端部13b側には、第二の回路13を覆うように絶縁部材15が配されておらず、第二回路13の他方の端部13bが露呈している。
さらに、接合部14において、第一回路12の端部12aの幅(端部12aの沿在する方向と垂直な方向の長さ)は、第二回路13の端部13aの幅(端部13aの沿在する方向と垂直な方向の長さ)よりも大きくなっている。
【0014】
この配線基板10では、図2(a)に示すように、第二回路13が導電性微粒子16を含む導電性ペーストなどの導電材17からなり、第二回路13は第一回路12よりも耐マイグレーション性が優れている。
導電性微粒子16は、金属微粒子18の最表面が金を含むめっき層19からなるものである。
【0015】
この導電性微粒子16を構成する金属微粒子18の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、鱗片状などである。
また、金属微粒子18の粒子径は、0.5μm以上、20μm以下であることが好ましく、1μm以上、5μm以下であることがより好ましい。
金属微粒子18粒子径が上記の範囲内であれば、粒子を樹脂内に均一に分散させやすく、印刷した際に良好な導電回路が形成される。
【0016】
金属微粒子18の材質としては、特に限定されないが、例えば、金(Au)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、銀(Ag)、アルミナ(Al)、あるいは、これらの合金などが挙げられる。
【0017】
導電性微粒子16を構成する金を含むめっき層19の厚みは、10nm以上、100nm以下であることが好ましく、20nm以上、50nm以下であることがより好ましい。
めっき層19の厚みが上記の範囲内であれば、めっきされた金を通電しやすい。すなわち、めっき層19の厚みを厚くし過ぎると、金の軟らかさが効いてきて粒子同士の接触抵抗が大きくなってしまいよくない。
【0018】
このめっき層19は、全てが金で構成されている必要はなく、金を10重量%以上含んでいれば、第二回路13が目的とする耐マイグレーション性を示すようになる。
また、めっき層19は、一層からなるものに限定されず、図2(b)に示すように、第一のめっき層19Aと第二のめっき層19Bの二層からなるものであってもよい。
【0019】
また、導電材17は、バインダ20を含むことが好ましい。このバインダ20としては、フェノール樹脂、フェノールエポキシ混合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
このバインダ20により、第二回路13の第一回路12に対する密着性が向上する。
【0020】
導電材17がバインダ20を含む場合、導電材17におけるバインダ20の含有量は、10重量%以上、30重量%以下であることが好ましく、12重量%以上、20重量%以下であることがより好ましい。
導電材17におけるバインダ20の含有量が、10重量%未満では、第二回路13の第一回路12に対する密着性の向上がみられない。一方、導電材17におけるバインダ20の含有量が、20重量%を超えると、導電性微粒子16同士が接触しにくくなり、導電材17の体積抵抗が上昇してしまう。
【0021】
さらに、導電材17を、絶縁基材11と第一回路12の上に印刷により塗布し、第二回路13を形成する際、導電材17の粘度が100dPaS以上、500dPaS以下であることが好ましく、200dPaS以上、400dPaS以下であることがより好ましい。
導電材17を、絶縁基材11と第一回路12の上に印刷により塗布する際、その粘度が100dPaS未満では、第二回路13を印刷により、0.3mmピッチ以下の狭ピッチに形成することができない。一方、導電材17を、絶縁基材11と第一回路12の上に印刷により塗布する際、その粘度が500dPaSを超えると、印刷整版からペーストが出にくくなり、断線などの原因となる。
【0022】
このような導電性微粒子16の中でも、金属微粒子18が球状のニッケル(Ni)からなり、めっき層19が金からなる、金めっきニッケル球状微粒子が好ましい。
【0023】
また、配線基板10では、接合部14に5Vの直流電圧を印加した際に、短絡時間が400秒以上、かつ、短絡時における抵抗値が10Ω以上である。短絡時間が400秒未満、あるいは、短絡時における抵抗値が10Ω未満では、配線回路10の耐マイグレーション性が不十分であり、実用できない。
【0024】
絶縁基材11は、可撓性のフィルム状シート部材などが用いられ、このようなフィルム状シート部材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチックからなるものが挙げられる。
【0025】
第一回路12は、所定のパターン形状をなし、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、カーボン(C)などの群から選択される1種または2種以上からなる微粒子21を含む導電性ペーストなどの導電材22を用いて形成されてなるものである。
第一回路12を、このような導電材22を用いて形成する場合、例えば、スクリーン印刷などの印刷法により絶縁基材11の一面11a上に、導電材22を印刷した後、加熱などの固化手段により形成することができる。この第一回路12の形成は、上記印刷法に限らず、オフセット印刷や平凹版印刷などによって行うこともできる。
なお、導電材22は、上記のバインダ20と同様なバインダを含んでいてもよい。
【0026】
絶縁部材15は、通常、熱硬化性の樹脂からなる絶縁ペーストを用いて形成されてなるものである。これらの通常の熱硬化性の樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などが用いられる。
【0027】
次に、この実施形態の配線基板10の製造方法について説明する。
先ず、絶縁基材11の一面11aに、スクリーン印刷法などの印刷法や塗布法などにより、所定の回路形状をなすように、微粒子21を含む導電材22を膜状に形成した後、この導電材22に熱処理を施すなどして、第一回路12を形成する。
次いで、絶縁基材11の一面11aおよび第一回路12の端部12a上に、スクリーン印刷法などの印刷法や塗布法などにより、所定の回路形状をなすように、導電性微粒子16を含む導電材17を膜状に形成した後、この導電材17に熱処理を施すなどして、第二回路13を形成する。
次いで、第一回路12の全部、接合部14および第二回路13における接合部14の近傍を覆うように熱硬化性絶縁ペーストを配し、これらを感光して絶縁部材15を形成し、配線基板10を得る。
【0028】
この実施形態の配線基板10は、第二回路13は、導電性微粒子16を含む導電材17からなり、第二回路13は第一回路12よりも耐マイグレーション性が優れているので、配線基板10全体としての耐マイグレーション性が向上する。
また、配線基板10では、第一回路12が全て絶縁部材15で覆われているので、第一回路12にマイグレーションが発生するのを防止することができる。
さらに、接合部14において、第一回路12の端部12aの幅は、第二回路13の端部13aの幅よりも大きくなっているから、接合部14において、第一回路12と第二回路13の密着性に優れ、印刷による回路の形成時に多少のずれが生じても、回路が断線することがない。
【0029】
(2)第二の実施形態
図3は、本発明に係る配線基板の第二の実施形態を示す概略平面図である。
図3において、図1に示した配線基板10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態の配線基板30が、上述の配線基板10と異なる点は、第二回路13の一方の端部13aが第一回路12の一方の端部12aの上に重なる接合部31において、第二回路13の端部13aの幅(端部13aの沿在する方向と垂直な方向の長さ)は、第一回路12の端部12aの幅(端部12aの沿在する方向と垂直な方向の長さ)よりも大きくなっている点である。
このように、第二回路13の端部13aの幅を、第一回路12の端部12aの幅よりも大きくしても、配線基板30は、配線基板10と同様の耐マイグレーション性を示す。
【0030】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0031】
(実験例1)
図1に示す構造の配線基板10を作製した。
この実験例1では、第二回路13を、金めっきニッケル球状微粒子を含む導電材を用いて形成した。
(実験例2)
図5に示す構造の配線基板50を作製した。
この配線基板50が配線基板10と異なる点は、第二回路13の一方の端部13aが第一回路12の一方の端部12aの上に重なる接合部51が、絶縁部材15に覆われていない点である。
この実験例2では、第二回路13を、金めっきニッケル球状微粒子を含む導電材を用いて形成した。
【0032】
(実験例3)
図4に示す構造の配線基板40を作製した。
この配線基板40が、上述の配線基板10と異なる点は、第二回路13の一方の端部13aが第一回路12の一方の端部12aの上に重なる接合部41において、第一回路12の端部12aの幅(端部12aの沿在する方向と垂直な方向の長さ)と、第二回路13の端部13aの幅(端部13aの沿在する方向と垂直な方向の長さ)とが等しい点である。
この実験例3では、第二回路13を、金めっきニッケル球状微粒子を含む導電材を用いて形成した。
(実験例4)
図3に示す構造の配線基板30を作製した。
この実験例4では、第二回路13を、金めっきニッケル球状微粒子を含む導電材を用いて形成した。
【0033】
(実験例5)
図6に示す構造の配線基板60を作製した。
図6は、配線基板60を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
この配線基板60が配線基板10と異なる点は、第二回路13の一方の端部13aと第一回路12の一方の端部12aが重なる接合部61において、第一回路12の一方の端部12aが第二回路13の一方の端部13aの上に重なっている点である。
この実験例5では、第二回路13を、金めっきニッケル球状微粒子を含む導電材を用いて形成した。
(実験例6)
図1に示す構造の配線基板10を作製した。
この実験例6では、第二回路13を、金めっきが施されたニッケル−リンの球状微粒子(金めっきニッケル−リン球状微粒子)を含む導電材を用いて形成した。
【0034】
(実験例7)
図1に示す構造の配線基板10を作製した。
この実験例7では、第二回路13を、ニッケルめっきと、金めっきが順に施されたアルミナの鱗片状微粒子(金めっきニッケルめっきアルミナ鱗片状微粒子)を含む導電材を用いて形成した(図2参照。図2において、第一のめっき層19Aがニッケルめっきからなり、第二のめっき層19Bが金めっきからなる。)。
(実験例8)
図1に示す構造の配線基板10を作製した。
この実験例8では、第二回路13を、ニッケルめっきと、金めっきが順に施された銅の球状微粒子(金めっきニッケルめっき銅球状微粒子)を含む導電材を用いて形成した。
【0035】
(実験例9)
図1に示す構造の配線基板10を作製した。
この実験例9では、第二回路13を、銅の球状微粒子(銅球状微粒子)を含む導電材を用いて形成した。
(実験例10)
図1に示す構造の配線基板10を作製した。
この実験例10では、第二回路13を、スズ−ビスマス合金(Sn42−Bi58)の球状微粒子(スズ−ビスマス合金球状微粒子)を含む導電材を用いて形成した。
【0036】
(実験例11)
図1に示す構造の配線基板10を作製した。
この実験例11では、第二回路13を、銀の鱗片状微粒子(銀鱗片微粒子)を含む導電材を用いて形成した。
(実験例12)
図1に示す構造の配線基板10を作製した。
この実験例12では、第二回路13を、銀鱗片微粒子と金めっきニッケル球状微粒子の混合物を含む導電材を用いて形成した。
【0037】
(実験例13)
図1に示す構造の配線基板10を作製した。
この実験例13では、第二回路13を、銀の微粒子を含む導電材を用いて所定形状の回路を形成した後、この回路の上にカーボンペーストを印刷により塗布して形成した。
(実験例14)
図1に示す構造の配線基板10を作製した。
この実験例14では、第二回路13を、銀−パラジウム合金(Ag70−Pd30)の鱗片状微粒子(銀−パラジウム合金鱗片状微粒子)を含む導電材を用いて形成した。
【0038】
(回路抵抗値のばらつきの評価)
実験例1〜14で得られた配線基板について、第二回路13の抵抗値を測定し、そのばらつきを評価した。
第二回路13の抵抗値の測定方法は、熱硬化性絶縁ペースト15を印刷せずに図1に示す○印の間の抵抗値を測定した。
結果を表1に示す。
【0039】
(回路印刷成功率の評価)
実験例1〜14において、印刷により第二回路13を形成して、配線基板を100回作製し、所定の回路形状の第二回路13を形成することができる回数を調べた。
結果を表1に示す。
【0040】
(耐マイグレーション性の評価)
実験例1〜14で得られた配線基板について、第二回路13の一方の端部13aが第一回路12の一方の端部12aの上に重なる接合部14に、5Vの直流電圧を印加し、短絡時間および短絡時における抵抗値を測定した。
結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の結果から、実験例1および実験例6〜10と、実験例11とを比較すると、接合部14をなす第二回路13を、金めっきニッケル球状微粒子を含む導電材を用いて形成することにより、耐マイグレーション性が向上することが確認された。
【0043】
実験例1と実験例12とを比較すると、接合部をなす第二回路13を、金めっきニッケル球状微粒子を含む導電材のみを用いて形成することにより、耐マイグレーション性が向上することが確認された。例えば、実験例12のように、接合部14をなす第二回路13を、銀鱗片微粒子と金めっきニッケル球状微粒子の混合物を含む導電材を用いて形成すると、耐マイグレーション性に劣ることが確認された。また、実験例14のように、接合部14をなす第二回路13を、銀−パラジウム合金鱗片状微粒子を含む導電材を用いて形成すると、銀鱗片微粒子を含む導電材を用いて形成した場合と同様に、耐マイグレーション性に劣ることが確認された。
【0044】
実験例1と実験例2とを比較すると、第一回路12が全て絶縁部材15で覆われていないと、ウォータードロップ試験後、第一回路12にマイグレーションが発生することが確認された。このことから、耐マイグレーション性を付与するためには、第一回路12を全て絶縁部材15で覆う必要があることが分かった。
【0045】
実験例1と実験例3とを比較すると、接合部14をなす第一回路12と第二回路13の幅を等しくすると、配線基板全体の回路抵抗値のばらつきが大きくなることが確認された。これは、接合部14における印刷ずれ、接続抵抗の上昇に起因するものであると考えられる。このことから、接合部14において第一回路12と第二回路13のいずれか一方の幅を他方よりも大きくする必要があることが分かった。
なお、実験例1では、第一回路12の幅を、第二回路13の幅よりも大きくし、実験例4では、第二回路13の幅を、第一回路12の幅よりも大きくすることにより、配線基板全体の回路抵抗値のばらつきが小さくなり、接合部14において、第一回路12と第二回路13の密着性に優れることが分かった。
【0046】
実験例1と実験例5とを比較すると、接合部14において、第一回路12を第二回路13の上に重ねると、回路抵抗値が大きく上昇することが確認された。これは、図6に(*)で示す部分が断線し易くなったためであることが確認されている。なお、図6に(*)で示す部分の断線を防止するように第一回路12を印刷すると、隣接する第一回路12同士がつながってしまう。
【0047】
実験例1および実験例6〜10と、実験例13とを比較すると、実験例1および実験例6〜10では、印刷により、0.3mmピッチにて第一回路12と第二回路13を形成することができることを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る配線基板の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図2】図1の破線で囲んだ領域Bを拡大した図である。
【図3】本発明に係る配線基板の第二の実施形態を示す概略平面図である。
【図4】配線基板の実験例を示す概略平面図である。
【図5】配線基板の実験例を示す概略平面図である。
【図6】配線基板の実験例を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
【図7】従来の0.5mmピッチのコネクタ部が設けられた配線基板を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D線に沿う断面図である。
【図8】従来の0.3mmピッチのコネクタ部が設けられた配線基板を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10,30,40・・・配線基板、11・・・絶縁基材、12・・・第一回路、13・・・第二回路、14,31,41・・・接合部、15・・・絶縁部材、16・・・導電性微粒子、17・・・導電材、18・・・金属微粒子、19・・・めっき層、20・・・バインダ、21・・・微粒子、22・・・導電材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の絶縁基材と、その一面に配される第一回路および第二回路と、少なくとも前記第一回路を覆うように配される絶縁部材とから構成され、前記第二回路の端部が前記第一回路の端部の上に重なる接合部を備える配線基板であって、
前記第二回路は、導電性微粒子を含み、前記第一回路よりも耐マイグレーション性が優れることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記導電性微粒子は、最表面が金を含むことを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第二回路は、バインダを含む材料からなることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記接合部に5Vの直流電圧を印加した際に、短絡時間が400秒以上、かつ、短絡時における抵抗値が10Ω以上であることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第二回路の少なくとも一部が露呈していることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−98508(P2008−98508A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280311(P2006−280311)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】