説明

配線基板

【課題】 厚膜抵抗体層の抵抗値を所望の値に維持でき、信頼性を向上することができる配線基板を提供する。
【解決手段】 絶縁基体2と、絶縁基体2の上面に配置された、印加電圧に応じて面方向に伸縮する板状の圧電体4と、圧電体4の上面に積層された、酸化物導電体,ホウ化物導電体またはケイ化物導電体からなる抵抗体粒子がガラス中または樹脂中に分散されてなる厚膜抵抗体層3と、絶縁基体2の上面に形成された、圧電体4および厚膜抵抗体層3にそれぞれ電気的に接続されている複数の配線導体5,6とを備えている配線基板1である。圧電体4を面方向に伸縮させて厚膜抵抗体層3を伸縮させることによって、厚膜抵抗体層3の抵抗値を所望の値に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁基体の上面に厚膜抵抗体層が設けられた配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図8に断面図で示すように、絶縁基体12と、絶縁基体12の上面に設けられた厚膜抵抗体層13と厚膜抵抗体層13を電気的に接続する電極14および配線導体15とを備えた配線基板11が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
厚膜抵抗体層13は、絶縁基体11の上面に平板状に形成することができるので、絶縁基体11の上面にチップ抵抗を設ける場合と比較して、配線基板11の低背化を実現できる。このため、厚膜抵抗体層13が設けられた配線基板11は、例えば、近年小型化が益々要求されている携帯電話や車載部品等の情報処理装置に用いられる。
【0004】
このような厚膜抵抗体層13は、例えば、スクリーン印刷による抵抗体ペーストの塗布、乾燥、そして焼成といった工程を経ることによって、配線基板11の上面に形成される。このような工程を経ることによって配線基板11の上面に形成された厚膜抵抗体層13は、塗布および焼成時のばらつきが生じることによって、所望の抵抗値が得られ難いという問題があった。このような問題を解決するために、従来では、抵抗体ペーストの焼成後に例えばレーザを用いて厚膜抵抗体層13に切り込み溝を形成して抵抗値を調整する、いわゆるトリミングが行なわれていた(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−287173号公報
【特許文献2】特開2009−16592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のトリミングが行なわれた後において、厚膜抵抗体層13が設けられた配線基板11が実際に使用されていくうちに、厚膜抵抗体層13に形成された切り込み溝からクラックが生じることがあった。すなわち、厚膜抵抗体層13の抵抗値をトリミングによって調整して所望の抵抗値とした場合であっても、配線基板11が実際に使用されていくうちに生じた厚膜抵抗体層13のクラックによって、厚膜抵抗体層13の抵抗値が上昇することがある。すると、厚膜抵抗体層13の抵抗値が所望の抵抗値(調整した抵抗値)から上昇するので、配線基板11の信頼性が低下することになる。なお、この課題は、配線基板11の使用温度が変化することによって、厚膜抵抗体層13の抵抗値が所望の抵抗値から変動した場合も同様であり、やはり配線基板11の信頼性が低下することとなる。
【0007】
本発明は上記のような従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、厚膜抵抗体層について所望の抵抗値を維持することができ、それによって信頼性を向上することができる配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の配線基板は、絶縁基体と、該絶縁基体の上面に配置された、印加電圧に応じて面方向に伸縮する板状の圧電体と、該圧電体の上面に積層された、酸化物導電体,ホウ化物導電体またはケイ化物導電体からなる抵抗体粒子がガラス中または樹脂中に分散されてなる厚膜抵抗体層と、前記絶縁基体の上面に形成された、前記圧電体および前記厚膜抵抗体層にそれぞれ電気的に接続されている複数の配線導体とを備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の配線基板は、上記構成において、前記厚膜抵抗体層が前記圧電体の上面の全面に積層されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の配線基板は、上記構成において、前記絶縁基体の上面に前記圧電体の厚みと同等の深さの凹部が設けられており、該凹部に前記圧電体が収容されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の配線基板は、上記構成において、前記圧電体は、圧電基板の内部に、一対の櫛歯状電極が電極指を前記面方向に交互に並べて配置して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の配線基板によれば、絶縁基体と、この絶縁基体の上面に配置された、印加電圧に応じて面方向に伸縮する板状の圧電体と、この圧電体の上面に積層された、酸化物導電体,ホウ化物導電体またはケイ化物導電体からなる抵抗体粒子がガラス中または樹脂中に分散されてなる厚膜抵抗体層と、絶縁基体の上面に形成された、圧電体および厚膜抵抗体層にそれぞれ電気的に接続されている複数の配線導体とを備えていることから、厚膜抵抗体層にクラックが発生したり使用温度が変化したりしても、印加電圧に応じて面方向に伸縮する板状の圧電体によって厚膜抵抗体層を面方向に伸縮させることができ、それによって抵抗値を調整することができるので、厚膜抵抗体層の抵抗値の上昇を抑えることが可能となり、厚膜抵抗体層について所望の抵抗値を維持することができ、それによって配線基板の信頼性を向上することができる。
【0013】
また、本発明の配線基板によれば、厚膜抵抗体層が圧電体の上面の全面に積層されているときには、圧電体の伸縮量を最も効果的に厚膜抵抗体層に伝えることができるので、厚膜抵抗体層の抵抗値の変動を圧電体によって好適に所望の値に補正することができる。
【0014】
また、本発明の配線基板によれば、絶縁基体の上面に圧電体の厚みと同等の深さの凹部が設けられており、この凹部に圧電体が収容されているときには、圧電体の厚み分について低背化が可能であるとともに、圧電体に電圧を印加するための電極を絶縁基体の内部に配設できるため、絶縁基体の上面の配線設計の自由度が向上する。
【0015】
また、本発明の配線基板によれば、圧電体が、圧電基板の内部に、一対の櫛歯状電極が電極指を面方向に交互に並べて配置して形成されているときには、印加電圧による圧電体の面方向の伸縮の変位量を大きくして厚膜抵抗体層の抵抗値の調整を効率よく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す平面図である。
【図2】図1の切断線A−A’に沿って切断したA−A’線断面図である。
【図3】図1の切断線B−B’に沿って切断したB−B’線断面図である。
【図4】本発明の配線基板の実施の形態の一例における圧電体の一例を示す平面図である。
【図5】本発明の配線基板の実施の形態の他の例を示す平面図である。
【図6】図5の切断線A−A’に沿って切断したA−A’線断面図である。
【図7】図5の切断線B−B’に沿って切断したB−B’線断面図である。
【図8】従来の配線基板の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の配線基板の実施の形態の例について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
ただし、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本発明の配線基板の実施の形態の例における構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本発明の配線基板は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0019】
図1は本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す平面図である。また、図2は図1中に示した切断線A−A’に沿って切断したA−A’線断面図であり、図3は図1中に示した切断線B−B’に沿って切断したB−B’線断面図である。図1〜図3に示すように、本例の配線基板1は、絶縁基体2、厚膜抵抗体層3、圧電体4、配線基板1に配設された電極5および配線導体6を備えている。なお、図1は平面図であるが、各構成部材を見分けやすくするために、一部に断面図と同様のハッチングを施している。
【0020】
図1〜図3に示す例の配線基板1は、絶縁基体2と、この絶縁基体2の上面に配置された、印加電圧に応じて面方向に伸縮する板状の圧電体4と、この圧電体4の上面に積層された、酸化物導電体,ホウ化物導電体またはケイ化物導電体からなる抵抗体粒子がガラス中または樹脂中に分散されてなる厚膜抵抗体層3と、絶縁基体2の上面に形成された、圧電体4および厚膜抵抗体層3にそれぞれ電気的に接続されている複数の電極5a〜5dおよび配線導体6a〜6dとを備えている。
【0021】
絶縁基体2は、通常の配線基板に使用される絶縁基板と同様の絶縁性の良好な部材を用いればよく、ここでは特に限定されない。例えば、絶縁基体2は、セラミック材料,ガラス材料あるいは樹脂材料等からなる。ここで、セラミック材料としては、例えば、酸化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,炭化珪素質焼結体,窒化アルミニウム質焼結体,窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックス等を用いることができる。また、ガラス材料としては、例えば、ホウケイ酸ガラスまたは石英ガラス等を用いることができる。また、樹脂材料としては、例えばガラスエポキシまたはテトラフルオロエチレン等を用いることができる。絶縁基体2は、通常は基板形状で用いられる。
【0022】
厚膜抵抗体層3は、圧電体4の上面に積層されて設けられている。また、厚膜抵抗体層3は、絶縁基体2および圧電体4の上面に形成された第1電極5aおよび第2電極5bと接続されている。第1電極5aは、厚膜抵抗体層3に対して電圧を印加するための役割を担う部材である。このため、第1電極5aは、図1および図2に示すように、絶縁基体2に埋設された、電気回路を構成する第1配線導体6aと接続されている。また、第2電極5bは、GND(グランド)に接地されている。このため、第2電極5bは、図1および図2に示すように、絶縁基体2に埋設された、同じく電気回路を構成する第2配線導体6bと接続されている。
【0023】
厚膜抵抗体層3は、例えば、スクリーン印刷による抵抗体ペーストの塗布、抵抗体ペーストの乾燥、そして抵抗体ペーストの焼成といった工程を経ることによって、圧電体4の上面に形成される。この抵抗体ペーストには、RuO等の抵抗体粒子、圧電体4へ付着させるための固結剤、印刷を容易にするための樹脂またはガラス、ペーストの粘度を維持するための溶剤等が含まれる。すなわち、厚膜抵抗体層3には、RuO等の抵抗体粒子がガラス中または樹脂中に分散されて含まれることになる。
【0024】
ここで、RuOは、酸化物導電体でありながら、おおよそ3×10−7Ω・mという金属に近い抵抗率を示し、熱的にも非常に安定であり、微細な粉末を作製できるといった、抵抗体粒子としての多くの利点を有している。なお、厚膜抵抗体層3を構成する抵抗体粒子としては、酸化物導電体であるRuOの他にも、ホウ化物導電体である六ホウ化ランタン等、またはケイ化物導電体であるケイ化モリブデン等であってもよい。すなわち、厚膜抵抗体層3を構成する抵抗体粒子は、粒子間の接触状態や粒子間の距離を変化させることによって厚膜抵抗体層3の抵抗値を変化させることができる酸化物導電体,ホウ化物導電体またはケイ化物導電体であればよい。
【0025】
また、厚膜抵抗体層3には、抵抗値の調整のために必要に応じて切り込み溝3aが形成されている。切り込み溝3aは、厚膜抵抗体層3の抵抗値が所望の抵抗値となるように、レーザ等で厚膜抵抗体層3に形成された溝である。本例においては、切り込み溝3aを形成することによって厚膜抵抗体層3の抵抗値を所望の抵抗値に調整することを「トリミング」という。
【0026】
圧電体4は、絶縁基体2の上面に設けられており、印加電圧に応じて面方向に伸縮する板状の部材であり、その上面に積層された厚膜抵抗体層3を面方向に伸縮させるための役割を担う部材である。本例においては、圧電体4の上面に厚膜抵抗体層3の一部または全面が形成されるようにして、絶縁基体2の上面に設けられている。
【0027】
また、圧電体4は、絶縁基体2の上面に形成された第3電極5cおよび第4電極5dと接続されている。第3電極5cは、圧電体4に対して面方向に伸縮させるための電圧を印加するための役割を担う部材である。このため、第3電極5cは、図1および図3に示すように、絶縁基体2に埋設された、印加電圧を供給する第3配線導体6cと接続されている。また、第4電極5dは、同じく圧電体4に対して面方向に伸縮させるための電圧を印加するための役割を担う部材であり、GNDに接地されている。このため、第4電極5dは、図1および図3に示すように、絶縁基体2に埋設された、GNDに接地されている第4配線導体6dと接続されている。そして、第3電極5cと第4電極5dとの間に所望の直流電圧を印加することで、印加電圧に応じて圧電体4を所望の量だけ伸縮させることができる。
【0028】
本例の配線基板1によれば、厚膜抵抗体層3にクラックが生じて抵抗値が上昇したり、あるいは配線基板1の使用温度が変化することによって厚膜抵抗体層3の抵抗値が所望の値から変動したりしたときに、印加電圧を調整して圧電体4を所望の量だけ伸縮させることにより、厚膜抵抗体層3を所望の量だけ伸縮させることができる。それによって、厚膜抵抗体層3が所望の量だけ伸縮すると、これに伴い、厚膜抵抗体層3に含まれる抵抗体粒子間の距離を変動させることができる。厚膜抵抗体層3に含まれる抵抗体粒子間の距離を近付けることで厚膜抵抗体層3の抵抗値は低下し、他方、抵抗体粒子間の距離を遠ざけることで厚膜抵抗体層3の抵抗値は上昇する。この作用により、クラックの発生や使用温度の変化により変動した厚膜抵抗体層3の抵抗値を所望の値に補正することができる。
【0029】
ここで、厚膜抵抗体層3を圧電体4の上面の全面に積層することで、圧電体4に対して電圧を印加したときに発生する圧電体4の伸縮による変位量を最も効率よく厚膜抵抗体層3に伝えて厚膜抵抗体層3を伸縮させることができる。これによれば、厚膜抵抗体層3の抵抗値の変動を好適に所望の値に効率よく補正することができるので、好ましい。
【0030】
次に、図4は、図1〜図3に示す例における圧電体4の一例での、圧電体4に内設された電極の平面方向の構成の例を示す断面図である。なお、図4においても、各構成部材を見分けやすくするために、断面図と同様のハッチングを施している。
【0031】
圧電体4は、図4に示す例のように、圧電基板4aの内部に、圧電体4に電圧を印加するための第3電極5cと第4電極5dとに、それぞれ第1電極指5eと第2電極指5fとを設けて交互に並べて配設して、第1櫛歯状電極5gと第2櫛歯状電極5hとを形成されているものであることが好ましい。このように、圧電基板4aの内部に一対の櫛歯状電極(第1櫛歯状電極5gおよび第2櫛歯状電極5h)が電極指(第1電極指5eおよび第2電極指5f)を面方向に並べて配置して形成されているものとすることによって、第1電極指5eと第2電極指5fとに電圧を印加することで第1電極指5eと第2電極指5fとに挟まれた圧電基板4aが伸縮することができる。圧電体4の内部に配設される電極構造はこのような櫛歯状の電極構造にすることが好ましく、このようにすれば、各々の第1電極指5eおよび第2電極指5fを電気的に並列にすることができ、電圧を印加したときの各電極指対の伸縮量を重畳することができるので、圧電体4の内部に第1電極指5eおよび第2電極指5fを配設しない場合に比べて、圧電体4に一定の電圧を印加したときの伸縮の変位量を大きくすることができる。
【0032】
次に、上記の構成の配線基板1の動作について説明する。
【0033】
まず、第1導体配線6aおよび第2導体配線6bから第1電極5aおよび第2電極5bを介して、厚膜抵抗体層3に電圧を印加する。また、第3導体配線6cおよび第4導体配線6dから第3電極5cおよび第4電極5dを介して、圧電体4に電圧を印加する。本例においては、圧電体4に印加する電圧は正(プラス)の直流電圧である。具体的には、圧電体4が分極している方向と逆方向に正の直流電圧を印加することで、圧電体4は収縮する。例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体4を用いて、第1電極指5eと第2電極指5fとの距離を0.05mmとし、第3電極5cと第4電極5dとの間に圧電体4の分極方向と逆方向に30Vの電圧を印加した場合には、圧電体4は面方向におおよそ0.003%収縮する。
【0034】
ここで、圧電体4が分極している方向とは、圧電体4に存在する原子が所定の位置からずれて配置(分極)された場合における、そのずれて配置された方向をいう。なお、圧電体4に印加される直流電圧が高ければ高いほど、圧電体4における収縮の変位量は大きくなる。そして、面方向に収縮した圧電体4によって、その上面に積層された厚膜抵抗体層3も同時に面方向に収縮する。具体的には、圧電体4が面方向に0.003%収縮した場合には、圧電体4上に設置された厚膜抵抗体層3もこれに伴い面方向に0.003%収縮することとなる。
【0035】
そして、厚膜抵抗体層3が面方向に収縮することにより、厚膜抵抗体層3が含むRuO等の抵抗体粒子間の距離が小さくなることによって、厚膜抵抗体層3の抵抗値が低下する。
【0036】
具体的には、1MΩの抵抗値を示す厚膜抵抗体層3中に含まれる抵抗体粒子であるRuOの体積比率は約8%である。このときのRuO粒子間の距離は約7.1μmである。この厚膜抵抗体層3を圧電体4によって面方向に0.003%収縮させたときには、RuO粒子間の距離はおおよそ0.028μm収縮し、これによって抵抗値を1.4%変動(低下)させることができる。したがって、厚膜抵抗体層3の使用条件下において厚膜抵抗体層3にクラックが発生したり、使用温度が変動して厚膜抵抗体層3の抵抗値が変動したりした場合でも、通常ではその抵抗値の変動範囲は0.5%程度であることから、圧電体4の伸縮によって厚膜抵抗体層3の抵抗値変動を十分に補正することができる。
【0037】
また、100kΩの抵抗値を示す厚膜抵抗体層3を用いた場合は、厚膜抵抗体層3中に含まれる抵抗体粒子であるRuO粒子の体積比率は約10%である。このときのRuO粒子間の距離は約5.7μmである。この厚膜抵抗体層3を圧電体4によって面方向に0.003%収縮させたときには、RuO粒子間の距離はおおよそ0.024μm収縮し、これによって抵抗値を1.3%変動(低下)させることができる。したがって、1MΩの抵抗値を示す厚膜抵抗体層3の場合と同様に、圧電体4の収縮によって厚膜抵抗体層3の抵抗値変動を十分に補正することができる。
【0038】
以上のように、本例の配線基板1によれば、配線基板1が実際に使用されていくうちに、厚膜抵抗体層3の切り込み溝3aに生じたクラックによって、あるいは配線基板1の使用温度が変化することによって、厚膜抵抗体層3の抵抗値が上昇した場合であっても、圧電体4に電圧を印加して圧電体4を収縮させて厚膜抵抗体層3を収縮させることにより、厚膜抵抗体層3の抵抗値を低下させることができる。この結果、信頼性が向上する配線基板1を実現できる。また逆に、厚膜抵抗体層3の抵抗値が低下した場合であっても、圧電体4に電圧を印加して圧電体4を伸長させて厚膜抵抗体層3を伸長させることにより、厚膜抵抗体層3の抵抗値を上昇させることができる。したがって、圧電体4に電圧を印加することによって、厚膜抵抗体層3の抵抗値を所望の値に調整して抵抗値を維持することができ、それによって配線基板1の信頼性を向上することができる。
【0039】
なお、上述した実施の形態の例は本発明の実施の形態の具体例の一つを示すものであり、これに限らず種々の変更が可能である。つまり、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれるものである。以下、いくつかの主な変更例を示す。
【0040】
(変更例1)
図1〜図3に示す例においては、圧電体4が絶縁基体2の上面に設けられている例について説明したが、例えば、図5に図1と同じく平面図で、また図6に図5の切断線A−A’に沿って切断したA−A’線断面図で、また図7に図5の切断線B−B’に沿って切断したB−B’線断面図で示すように、絶縁基体2の上面に圧電体4の厚みと同等の深さの凹部2aを設け、この凹部2aに圧電体4が収容されるようにしてもよい。この場合によれば、圧電体4が絶縁基体2の上面に設けられている場合と比較して、圧電体4の厚み分だけ低背化が可能であるとともに、圧電体4に電圧を印加する第3電極5cおよび第4電極5dを絶縁基体2の内部に配設できるため、絶縁基体2の上面における配線設計の自由度が向上するという利点がある。
【0041】
(変更例2)
また、図1〜図3に示す例においては、厚膜抵抗体層3に切り込み溝3aが形成されている例について説明したが、これに限定されない。すなわち、厚膜抵抗体層3に切り込み溝3aは形成されていなくてもよい。つまり、切り込み溝3aを形成しなくても厚膜抵抗体層3について所望の抵抗値が得られた場合に、配線基板1の使用温度が変化することによって厚膜抵抗体層3の抵抗値が所望の抵抗値から変動した場合であっても、本発明を適用することによって、厚膜抵抗体層3の抵抗値を調整して、所望の抵抗値を維持することができる。
【0042】
以上のように、本発明の配線基板は、厚膜抵抗体層について所望の抵抗値を維持することができ、それによって信頼性を向上することができる配線基板として有用である。
【符号の説明】
【0043】
1・・・配線基板
2・・・絶縁基体
2a・・・凹部
3・・・厚膜抵抗体層
3a・・・切り込み溝
4・・・圧電体
5・・・電極
5a・・・第1電極(電極)
5b・・・第2電極(電極)
5c・・・第3電極(電極)
5d・・・第4電極(電極)
5e・・・第1電極指
5f・・・第2電極指
5g・・・第1櫛歯状電極
5h・・・第2櫛歯状電極
6・・・配線導体
6a・・・第1配線導体(配線導体)
6b・・・第2配線導体(配線導体)
6c・・・第3配線導体(配線導体)
6d・・・第4配線導体(配線導体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基体と、該絶縁基体の上面に配置された、印加電圧に応じて面方向に伸縮する板状の圧電体と、該圧電体の上面に積層された、酸化物導電体,ホウ化物導電体またはケイ化物導電体からなる抵抗体粒子がガラス中または樹脂中に分散されてなる厚膜抵抗体層と、前記絶縁基体の上面に形成された、前記圧電体および前記厚膜抵抗体層にそれぞれ電気的に接続されている複数の配線導体とを備えていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記厚膜抵抗体層が前記圧電体の上面の全面に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記絶縁基体の上面に前記圧電体の厚みと同等の深さの凹部が設けられており、該凹部に前記圧電体が収容されていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記圧電体は、圧電基板の内部に、一対の櫛歯状電極が電極指を前記面方向に交互に並べて配置して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−71359(P2011−71359A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221741(P2009−221741)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】