説明

配線板、半導体装置、半導体モジュール及びディスプレイ装置

【課題】面積をより効率的に利用して、一部を実装部品に重ねることができる配線板を提供する。
【解決手段】配線板4は、開口5が形成された金属基材フィルム1と、金属基材フィルム1の第1主面1aに積層された接着剤層2と、接着剤層2に積層された導電パターン3Aとを有する。金属基材フィルム1は、平面視において開口5側を凹側とする凹状に延びて導電パターン3Aの第1の外部接続端子3Cを囲む第1のスリット6が形成されており、第1の外部接続端子3Cを折り返さずに、第1のスリット6の外側部分を、金属基材フィルム1の第2主面1bを内側にして折り返して開口5に対向させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する配線板、当該配線板を有する半導体装置、当該半導体装置を有する半導体モジュール、並びに、当該半導体モジュールを有するディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性を有する配線板に半導体チップを実装した半導体装置が知られている。特許文献1の図7〜図10では、配線板に、平面視において突出する部分を設け、その突出した部分に金属膜を設けるとともに、その突出した部分を折り返して半導体チップの配置位置に重ねることにより、放熱性やシールド性を向上させる技術が開示されている。また、特許文献1の図10では、そのような突出した部分が設けられた配線板を長尺状のテープキャリアから切り出す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−16626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、折り返される部分が長く突出している。その結果、配線板が大型化している。換言すれば、半導体チップに対向する面積等に比較して配線板が大型化している。また、配線板は、突出形状が生じることにより、長尺のテープを長手方向において分割した形状(矩形)から乖離した形状となり、テープキャリアは、切り捨てられる部分が多くなる。このように、特許文献1の技術は、配線板を効率的に利用しているとは言えない。
【0005】
本発明の目的は、配線板の面積をより効率的に利用して、配線板の一部を実装部品に重ねることができる配線板、半導体装置、半導体モジュール及びディスプレイ装置を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点の配線板は、開口が形成された金属基材フィルムと、前記金属基材フィルムの一方主面に積層された絶縁層と、前記絶縁層に積層された積層部と、前記積層部から前記開口内へ延びるインナーリードとを有する導体層と、を有し、前記金属基材フィルムは、平面視において前記開口側を凹側とする凹状に延びて前記積層部の少なくとも一部を囲むスリットが形成されており、前記積層部の前記一部を折り返さずに、前記スリットの外側部分を、前記金属基材フィルムの他方主面を内側にして折り返して前記開口に対向させることが可能である。
【0007】
好適には、前記金属基材フィルムの折り返された部分は、前記開口に対向するとともに、前記金属基材フィルムの他の部分に対向する。
【0008】
好適には、前記導体層は、前記金属基材フィルムの折り返された部分において設けられた、基準電位が付与される熱伝導部パターンを有する。
【0009】
好適には、前記導体層は、前記金属基材フィルムの折り返された部分に対向する領域において設けられた、基準電位が付与されるグランドパターンを有する。
【0010】
好適には、前記積層部は、前記インナーリードから前記開口とは反対側に延びる配線と、その配線の端部に形成された端子とを有し、前記スリットは、前記端子を囲む形状に形成されている。
【0011】
本発明の第2の観点の配線板は、フィルム状の基材と、前記基材に直接的又は間接的に積層された積層部と、当該積層部に接続され、電子部品が実装される実装部とを有する導体層と、を有し、前記基材は、平面視において前記実装部側を凹側とする凹状に延びて前記積層部の少なくとも一部を囲むスリットが形成されており、前記積層部の前記一部を折り返さずに、前記スリットの外側部分を折り返し、前記実装部に対向させることが可能である。
【0012】
本発明の半導体装置は、開口が形成された金属基材フィルムと、前記金属基材フィルムの一方主面に積層された絶縁層と、前記絶縁層に積層された積層部と、前記積層部から前記開口内へ延びるインナーリードとを有する導体層と、前記インナーリードの前記金属基材フィルム側の面に実装された半導体チップと、を有し、前記金属基材フィルムは、平面視において前記開口側を凹側とする凹状に延びて前記積層部の少なくとも一部を囲むスリットが形成されており、前記積層部の前記一部を折り返さずに、前記スリットの外側部分を、前記金属基材フィルムの他方主面を内側にして折り返して前記半導体チップに対向させることが可能である。
【0013】
本発明の半導体モジュールは、開口が形成された金属基材フィルムと、前記金属基材フィルムの一方主面に積層された絶縁層と、前記絶縁層に積層された積層部と、前記積層部から前記開口内へ延びるインナーリードとを有する導体層と、前記インナーリードの前記金属基材フィルム側の面に実装された半導体チップと、前記金属基材フィルムを折り返した状態に保持する固定部材と、を有し、前記金属基材フィルムは、平面視において前記半導体チップ側を凹側とする凹状に延びて前記積層部の少なくとも一部を囲むスリットが形成されており、前記固定部材は、前記積層部の前記一部を折り返さずに、前記スリットの外側部分を、前記金属基材フィルムの他方主面を内側にして折り返して前記半導体チップに直接的又は間接的に当接する状態に前記金属基材フィルムを保持している。
【0014】
好適には、前記金属基材フィルムが固定されるフレームを更に有し、前記固定部材は、前記金属基材フィルムの折り返された部分を前記金属基材フィルムの他の部分に直接的又は間接的に当接する状態に保持し、前記導体層は、前記金属基材フィルムの折り返された部分が当接する領域において設けられた、基準電位が付与されるグランドパターンを有し、前記グランドパターンは、前記フレームに当接している。
【0015】
本発明のディスプレイ装置は、ディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネルに接続される半導体装置と、を有し、前記半導体装置は、開口が形成された金属基材フィルムと、前記金属基材フィルムの一方主面に積層された絶縁層と、前記絶縁層に積層された積層部と、前記積層部から前記開口内へ延びるインナーリードとを有する導体層と、前記インナーリードの前記金属基材フィルム側の面に実装された半導体チップと、を有し、前記金属基材フィルムは、平面視において前記開口側を凹側とする凹状に延びて前記積層部の少なくとも一部を囲むスリットが形成されており、前記積層部の前記一部が折り返されずに、前記スリットの外側部分が前記金属基材フィルムの他方主面を内側にして折り返されて前記半導体チップに直接的又は間接的に当接されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配線板の面積をより効率的に利用して、配線板の一部を実装部品に重ねることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は、この発明の実施形態に係る半導体装置の平面図、(B)はその断面図である。
【図2】図1の半導体装置の裏面側からの斜視図である。
【図3】図1の半導体装置を用いた半導体モジュールの構成及びディスプレイ装置の構成を示す部品分解斜視図である。
【図4】図1の半導体装置の取り付け後の図3のIV−IV線における断面図である。
【図5】図1の半導体装置の取り付け後の図3のV−V線における断面図である。
【図6】図1の半導体装置の製造に用いられるテープキャリアの平面図である。
【図7】本発明の変形例に係る半導体モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<半導体装置>
図1(A)は、本発明の実施形態に係る半導体装置を示す平面図であり、図1(B)は、図1(A)のIb−Ib矢視断面を示す断面図である。
【0019】
半導体装置13は、配線板4と、配線板4に実装された半導体チップ10と、半導体チップ10を封止する封止樹脂14とを有している。
【0020】
図1(B)に示すように、配線板4では、銅またはアルミなどの熱伝導率の高い金属を用いた金属基材フィルム1の表面(第1主面1a)に、一般的なエポキシ系の接着剤層2が設けられている。この接着剤層2には、例えば、一般的な東レ(株)製の商品名「TAB用接着剤#8200」を用いる。またより放熱効率をよくするために、比較的熱伝導率の高い東レ(株)製の商品名「TSAシリーズ」を用いるとより好ましい。
【0021】
この接着剤層2の表面には、導電率及び熱伝導率の高い銅を用いて、導体層3が形成されている。導体層3は、半導体チップ10に対する信号の入出力を行うための導電パターン3Aを含んでいる。導電パターン3Aは、インナーリード3B、配線3J、第1の外部接続端子3C及び第2の外部接続端子3Dを有している。また、導体層3は、図1(A)の平面図に示す、基準電位が付与される、グランドパターン3E、第1のグランド配線3F、第2のグランド配線3G、熱伝導部パターン3Hを含んでいる。導体層3には防錆や他の部品との接続に適した錫などのめっきが施されている。そして、導体層3には、防錆、防湿、防塵などの目的でソルダーレジスト8が被せられている。
【0022】
金属基材フィルム1の外形は、概ね矩形に形成されている。接着剤層2は、金属基材フィルム1の全面に亘って設けられている。金属基材フィルム1及び接着剤層2には、開口5が形成されている。開口5は、例えば、金属基材フィルム1の概ね中央に形成されている。
【0023】
導電パターン3Aは、概ねライン状のパターンであり、一端がインナーリード3B、他端が第1の外部接続端子3C又は第2の外部接続端子3D、中間部分が配線3Jとなっている。配線3J、第1の外部接続端子3C及び第2の外部接続端子3Dは、接着剤層2を介して金属基材フィルム1に積層されている。インナーリード3Bは、開口5内に突出している。配線3Jは、ソルダーレジスト8により覆われ、インナーリード3B、第1の外部接続端子3C又は第2の外部接続端子3Dは、ソルダーレジスト8から露出している。
【0024】
導電パターン3Aは、開口5(インナーリード3B)側からその外周側へ延びている。第1の外部接続端子3Cを含む導電パターン3Aと、第2の外部接続端子3Dを含む導電パターン3Aとは、開口5を挟んで互いに逆側に配置されるとともに、互いに逆方向に延びている。
【0025】
複数の第2の外部接続端子3Dは、金属基材フィルム1の、導電パターン3Aの延びる方向に交差する一辺(図1(A)の紙面左側一辺)に沿って配列されており、概ねその1辺全体に亘って配置されている。複数の第1の外部接続端子3Cは、導電パターン3Aの延びる方向に交差する一辺に平行に配列されている。ただし、複数の第1の外部接続端子3Cは、導電パターン3Aの延びる方向に直交する方向(図1(A)の紙面上下方向)において、金属基材フィルム1の全体に亘って配置されてはおらず、その配置範囲は、複数の第2の外部接続端子3Dの配置範囲よりも狭い。第1の外部接続端子3Cの数は、第2の外部接続端子3Dの数よりも少ない。
【0026】
グランドパターン3Eは、開口5に対して、導電パターン3Aの延びる方向の側方となる方向の両側に設けられている。グランドパターン3Eは、台形などの適宜な多角形に形成されており、比較的広い面積で形成されている。第1のグランド配線3Fは、グランドパターン3Eから開口5側へ延び、その先端には、開口5内に突出するインナーリード3Bが接続されている。
【0027】
金属基材フィルム1及び接着剤層2には、平面視において凹状に延びる第1のスリット6が形成されている。第1のスリット6は、開口5側を凹側とし、第1の外部接続端子3Cが設けられた第1の外部接続端子形成領域24を取り囲んでいる。第1のスリット6は、配線3Jの両側側方において配線3Jの延びる方向に延びる2辺と、2辺を結ぶ1辺とを有し、矩形の3辺のような形状に形成されている。
【0028】
配線板4は、第1のスリット6の外側部分のうち、配線3Jの延びる方向側(紙面右側)となる部分に、熱伝導部位12が形成されている。熱伝導部位12には、熱伝導部パターン3Hが設けられている。また、配線板4は、第1のスリット6の外側部分のうち、配線3Jの側方となる部分に、第1の折り曲げ部位23が形成されている。第1の折り曲げ部位23には、第2のグランド配線3Gが設けられている。
【0029】
熱伝導部位12及び熱伝導部パターン3Hは、配線3Jの延びる方向に直交する方向(図1(A)の紙面上下方向)を長手方向とする長尺状に形成されている。その長さは、配線板4の、半導体チップ10や第2の外部接続端子3Dが設けられる部分(第1の折り曲げ部位23を挟んで反対側の部分)の、配線3Jの延びる方向に直交する方向における長さと同等である。
【0030】
第1の折り曲げ部位23及び第2のグランド配線3Gは、配線板4の半導体チップ10が設けられる側の部分と、熱伝導部位12とを結ぶ方向を長手方向とする長尺状に形成されている。配線板4(金属基材フィルム1及び接着剤層2)の外縁は、上述のように、概ね矩形に形成されている。ただし、配線板4の外縁は、第1の折り曲げ部位23において、切り欠き部が形成されている。これにより、第1の折り曲げ部位23は、より細く形成されている。切り欠き部の形状は、例えば矩形である。
【0031】
配線板4には、複数のネジ用貫通穴15が設けられている。複数のネジ用貫通穴15は、開口5に対して、配線3Jの延びる方向の側方となる側に設けられ、グランドパターン3Eを貫通している。また、複数のネジ用貫通穴15は、熱伝導部位12の長手方向両側に設けられ、熱伝導部パターン3Hを貫通している。
【0032】
配線板4には、第2の外部接続端子3Dが形成された第2の外部接続端子形成領域25と、第2の外部接続端子3Dに接続された配線3Jが形成された第2の折り曲げ部位28とが形成されている。第2の折り曲げ部位28には、軟質樹脂7Aを充填した第2のスリット7が所定の位置に設けられている。軟質樹脂7Aには、例えば、宇部興産(株)製の商品名「ユピコートFS−100L」を用いる。
【0033】
前記、軟質樹脂7Aを充填した第2のスリット7は、図3及び図5に示すように折り曲げに用いるもので、前記金属基材フィルム1、接着剤層2、導体層3、ソルダーレジスト8のそれぞれの相対的な厚さの関係により、折り曲げが容易に行える場合は、前記軟質樹脂7Aを充填した第2のスリット7を設けなくてもよい。
【0034】
半導体チップ10は、金バンプ11を介して、インナーリード3Bに実装されている。より具体的には、半導体チップ10は、開口5に配置され、インナーリード3Bの金属基材フィルム1側の面に実装されている。半導体チップ10は金属基材フィルム1よりも厚く、その天面は金属基材フィルム1から突出している。
【0035】
封止樹脂14は、防錆、防湿、防塵、固定などの目的で設けられており、例えば、エポキシ樹脂により形成されている。封止樹脂14は、開口5を塞ぎ、インナーリード3Bの金属基材フィルム1側の面、金バンプ11、及び、半導体チップ10の側面を覆っている。また、封止樹脂14は、インナーリード3Bのソルダーレジスト8側の面を覆っている。
【0036】
<半導体モジュール及びディスプレイ装置>
次に、半導体装置13を組み付けて半導体モジュール及びディスプレイ装置を形成する方法について説明する。
【0037】
図2は、金属基材フィルム1の裏面(第2主面1b)側を上にした状態の半導体装置13を示す斜視図である。図3は、金属基材フィルム1の裏面側を上にして半導体装置13を組み付けた半導体モジュール26及びディスプレイ装置27を示す分解図である。
【0038】
ディスプレイ装置27は、ディスプレイパネル16と、半導体モジュール26とを有している。半導体モジュール26は、ディスプレイパネル16に固定されたフレーム18と、フレーム18に固定された半導体装置13とを有している。
【0039】
ディスプレイパネル16は、例えば、液晶ディスプレイのパネル、有機ELディスプレイのパネル、又は、プラズマディスプレイのパネルであり、特に図示しないが、ガラス基板などの透光性の基板と、当該基板に配列された複数の画素電極などを有している。フレーム18は、例えば、アルミニウムなどの金属により形成されている。フレーム18は、ディスプレイパネル16の外周部に沿う長尺状に形成されており、ディスプレイパネル16を構成する透光性の基板の表示側の面又はその背面に対してネジや接着剤などにより固定されている。フレーム18は、ディスプレイパネル16とは反対側に突出する台座部18aを有し、台座部18aには雌ねじ穴19Aが形成されている。
【0040】
半導体装置13を組み付けるときには、第1のスリット6の両端を通って、金属基材フィルム1を横切る直線L(図2)と、それと平行で第1のスリット6の形成範囲内の直線M(図2)との間の折り曲げ範囲a(図2、第1の折り曲げ部位23)で、金属基材フィルム1を内側として折り返す(図3の矢印D)。このとき、第1の外部接続端子形成領域24などの第1のスリット6の内側部分は折り曲げられない。そして、開口5の側方に設けられているネジ用貫通穴15と、熱伝導部位12に設けられているネジ用貫通穴15とを一致させる。
【0041】
次に、金属などにより形成されたネジ19をネジ用貫通穴15に通してフレーム18の雌ねじ穴19Aに締め付ける。このネジ19を締め付けることによって、熱伝導部位12を構成する金属基材フィルム1の第2主面1bを、対面する半導体チップ10の天面に直接または間接的に当接させ、また、金属基材フィルム1の他の部分(開口5の隣接部分)の第2主面1bに当接させる。そしてまた、グランドパターン3E(図1(A)参照)をフレーム18の台座部18aに当接させる。
【0042】
図4は、半導体装置13をフレーム18に取り付けた後の、図3のIV−IV線矢視断面図である。
【0043】
金属基材フィルム1の厚さ、半導体チップ10及び金バンプ11の厚さの関係によっては、熱伝導部位12が湾曲した状態になるので、金属基材フィルム1と半導体チップ10の天面の間には部分的に隙間ができる。この隙間は熱伝導率の低い空気が介在するので、伝熱効率が悪くなる原因になる。そこで、その隙間には、空気よりも熱伝導率の高い熱伝導グリス17を介在させることが好ましい。また、封止樹脂14とフレーム18の間には、封止樹脂14の塗布厚さのバラツキを考慮した隙間がある。そのため、この隙間には空気より熱伝導率の高い、熱伝導グリス17を介在させることが好ましい。前記熱伝導グリスに17には、例えば、信越化学工業(株)製の商品名「JAP004J−2」を用いる。
【0044】
また、熱伝導部位12を構成する金属基材フィルム1と他の部位の金属基材フィルム1の当接面及びグランドパターン3Eとフレーム18の当接面には、それぞれの部材の表面粗さにより微細な隙間が存在する。そこで、図示しないが、熱伝導グリス17を塗布して当接することがより好ましい。
【0045】
図5は、半導体装置13をディスプレイパネル16に電気的に接続した後の、図3のV−V線矢視断面図である。
【0046】
半導体装置13をディスプレイパネル16に電気的に接続するときには、まず、図3において矢印Eにより示すように、軟質樹脂7Aを充填した第2のスリット7の箇所で、金属基材フィルム1の第1主面1a側(図3の紙面下側)を内側として、第2の折り曲げ部位28を折り曲げる。これにより、図5に示すように、第2の外部接続端子形成領域25は、ディスプレイパネル16(又はディスプレイパネル16に含まれる基板)の、ネジ19により配線板4が固定された側とは反対側の面に対向する。そして、異方性導電フィルム(図示せず)を介して、第2の外部接続端子3Dをディスプレイパネル16に接続する。
【0047】
この第2の外部接続端子3Dとディスプレイパネル16との接続において、図示しないが半導体モジュール26とディスプレイパネル16の配置と構造が異なり、軟質樹脂7Aを充填した第2のスリット7の箇所で折り曲げる必要がない方法がある。その場合は、軟質樹脂7Aを充填した第2のスリット7を設けなくてもよい。また、前記金属基材フィルム1、接着剤層2、導体層3、ソルダーレジスト8のそれぞれの相対的な厚さの関係により、折り曲げが容易に行える場合は、前記軟質樹脂7Aを充填した第2のスリット7を設けなくてもよい。
【0048】
そして、第1の外部接続端子形成領域24に形成された第1の外部接続端子3Cを別の配線板(図示せず)に接続する。なお、この別の配線板には、例えば、ディスプレイパネル16を制御するための制御ICが設けられ、半導体チップ10は、その制御ICからの電気信号に基づいてディスプレイパネル16を駆動するドライバとして機能する。
【0049】
このようにして、半導体装置13を組み付けて半導体モジュール26を形成し、複数の半導体モジュール26をディスプレイパネル16に接続して組み付けてディスプレイ装置27が形成される。
【0050】
図6は、半導体装置13の製造に用いられるテープキャリア29を示す平面図である。
【0051】
テープキャリア29は、長尺状に形成されており、側部には複数のスプロケットホール22が長手方向に沿って配列されている。テープキャリア29は、分割前の複数の配線板4がテープキャリア29の長手方向に複数配列されている。配線板4は、折り返し方向をテープキャリア29の短手方向(長手方向でもよい)として配列されている。半導体装置13の製造においては、複数のスプロケットホール22を利用して長手方向に搬送されるテープキャリア29に対して半導体チップ10の実装などが行われ、その後、複数の配線板4が分割される。
【0052】
以下に、材料の熱伝導率の一例を示す。
銅:390W/m・K程度、アルミニウム:236W/m・K程度、接着剤層2(エポキシ樹脂、#8200):0.19W/m・K程度、接着剤層2(エポキシ樹脂、TSAシリーズ):3W/m・K程度、金:317W/m・K程度、封止樹脂(エポキシ樹脂):0.19W/m・K程度、熱伝導グリス:6W/m・K程度、空気:0.03W/m・K程度である。
【0053】
以下に、寸法の一例を示す。
金属基材フィルム1:25〜150μ、接着剤層2:8〜19μm(例えば12μm)、配線板4の一辺の長さ:20mm〜70mmである。
【0054】
次に、本発明の半導体モジュール26の放熱に係わる第1の伝熱経路と放熱について、図4を用いて説明する。
熱伝導に関しては、θを熱抵抗、Lを経路長、λを熱伝導率、Aを伝熱面積とすると、
θ=L/λ・A
の式が成り立つ。もちろん、熱抵抗θが小さいほど熱が伝わりやすくなり、発熱体の温度を下げることができる。
【0055】
半導体チップ10の熱は、半導体チップ10の天面から直接または熱伝導グリス17を介して熱伝導部位12を構成する金属基材フィルム1に伝熱する。ここで、熱伝導グリス17を用いた場合と用いなかった場合について比較する。空気の熱伝導率は0.03W/m・K程度であり、熱伝導グリス17の熱伝導率は6W/m・K程度である。よって、隙間の部分に関しては、熱伝導グリス17を用いることによって、熱伝導の計算式から熱抵抗θを1/200程度に小さくすることができる。
【0056】
そして、前記金属基材フィルム1に伝熱した熱は、前記金属基材フィルム1に熱伝導率の高い銅を用いているので、効率よく全面に拡散する。また、この金属基材フィルム1に拡散した熱の一部は、その先に接続する接着剤層2に伝熱し、更にその先の熱伝導部パターン3Hに伝熱して空気中に放熱する。
【0057】
接着剤層2の熱伝導率は0.19W/m・K程度であるが、その厚さ(経路長L)が12μm程度と薄く、また、その伝熱面積Aがある程度確保されているので、熱抵抗θは小さくなり放熱に寄与することができる。
【0058】
次に、前記熱伝導経路とは異なる、第2の伝熱経路と放熱について図4を用いて説明する。熱伝導部位12を構成する金属基材フィルム1に伝熱し拡散した熱は、この金属基材フィルム1に当接している他の部位の金属基材フィルム1に伝熱して紙面貫通方向を含む全面に拡散し空気中に放熱される。この他の部位の金属基材フィルム1は熱伝導率の高い銅で形成されているので効率よく熱拡散し、また面積が広いので効率よく空気中に放熱することができる。
【0059】
次に、前記熱伝導経路とは異なる、第3の伝熱経路と放熱について図4を用いて説明する。熱伝導部位12を構成する金属基材フィルム1に伝熱し拡散した熱は、この金属基材フィルム1に当接している他の部位の金属基材フィルム1に伝熱し、その先に接続する接着剤層2に伝熱し、更にその先のグランドパターン3E(図1(A)参照)に伝熱する。
【0060】
そして、更にその先に接続する熱伝導率の高いアルミニウムで形成されたフレーム18に伝熱して拡散し空気中に放熱される。この第3の伝熱経路には、熱伝導率が3W/m・K程度の接着剤層2が介在するが、その厚さが12μm程度と薄く、またグランドパターン3Eの面積はある程度広くすることができるので、熱抵抗θを小さくして放熱に寄与することができる。
【0061】
次に、前記熱伝導経路とは異なる、第4の伝熱経路と放熱について図4を用いて説明する。半導体チップ10に拡散した熱は、熱伝導率の高い金で形成された金バンプ11に伝熱し、その先の熱伝導率の高い銅で形成したインナーリード3Bと第1のグランド配線3F及びグランドパターン3Eの順に伝熱され(図1(A)参照)、その先に接続するフレーム18に伝熱して拡散し空気中に効率よく放熱される。この第4の伝熱経路の構成部材は、全て熱伝導率が高いので、効率よく伝熱し放熱することができる。
【0062】
また、グランドパターン3Eに伝熱した熱の一部は、その先に接続する第2のグランド配線3Gに伝熱し(図1(A)参照)、更にその先の熱伝導部パターン3Hに伝熱して空気中に放熱され、また更にその先に接続するネジ19を経由してフレーム18に伝熱し放熱される。
【0063】
ところで、グランドパターン3Eは、第1のグランド配線3Fを経由してインナーリードで半導体チップ10に接続され、他方ではフレーム18に接続しているので、インナーリードを半導体チップ10のグランド端子と接続する。この接続によってアースの機能を持たせることができる。
【0064】
また、グランドパターン3Eには、第2のグランド配線3Gが接続され、更にその先には熱伝導部パターン3Hが接続している。そして、この熱伝導部パターン3Hは、ネジ19を介してフレーム18に接続しているので、グランド配線の一部を成している。そして、熱伝導部パターン3Hは、半導体チップ10の天面側を覆うように形成されているので、半導体チップ10から発生する電磁ノイズを吸収し遮蔽する効果がある。
【0065】
また、金属基材フィルム1と導電パターン3Aは、マイクロストリップ構造を呈しているので、電磁ノイズを吸収し遮蔽する効果がある。また、半導体チップ10と導電パターン3Aは、熱伝導部パターン3H、金属基材フィルム1及びフレーム18によって、挟み込まれているので、更に電磁ノイズを吸収し遮蔽する効果がある。
【0066】
(変形例)
図4に示す熱伝導部位12の湾曲を防ぐ方法について説明する。図7に示すように、熱伝導部位12を構成する金属基材フィルム1と他の部位の金属基材フィルム1との間に、熱伝導率の高い銅などの金属を用いた金属スペーサ20を挿入する。この金属スペーサ20の厚さを調整することにより、熱伝導部位12の湾曲を防ぐことができる。
【0067】
このように熱伝導部位12の湾曲を防ぐことによって、熱伝導部位12の金属基材フィルム1と半導体チップ10の天面の間に出来る隙間を小さくすることができる。そのため、その隙間に介在する熱伝導グリス17の厚さが薄くなり、熱抵抗を小さくすることができるので、更に伝熱効率をよくして放熱効率を高めることができる。
【0068】
また、金属スペーサ20は、その面積を大きくして当接面積を大きくし、伝熱しやすくすることが好ましい。そしてまた、この金属スペーサ20の両面の表面粗さと、上下に当接する金属基材フィルム1の表面粗さによって、微細な隙間ができるので、この当接面にも熱伝導グリス17を塗布して組み付けることがより好ましい。
【0069】
なお、以上の実施形態において、金属基材フィルム1は本発明の基材の一例であり、第1主面1aは本発明の一方主面の一例であり、第2主面1bは本発明の他方主面の一例であり、接着剤層2は本発明の絶縁層の一例であり、導体層3のインナーリード3B以外の部分は本発明の積層部の一例であり、第1の外部接続端子3Cは本発明の端子の一例であり、半導体チップ10は本発明の電子部品の一例であり、インナーリード3Bは本発明の実装部の一例であり、ネジ19は本発明の固定部材の一例である。
【0070】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0071】
本願発明の配線板は、半導体チップ以外の適宜な電子部品が実装されてよい。また、半導体装置は、ディスプレイに利用されるものに限定されず、種々の用途に利用されてよい。
【0072】
スリットは、矩形の3辺を構成する形状に限定されない。例えば、半円状に形成されていてもよい。また、スリットは、矩形の3辺を構成する形状である場合に、角部が面取りされてもよい。
【0073】
スリットは、端子を囲むように形成されるものに限定されない。例えば、スリットは、屈曲する配線の屈曲部のみを囲むものであってもよいし、グランドパターンのみを囲むものであってもよい。換言すれば、導体層のパターン、及び、導体層のパターンとスリットとの相対関係は適宜に設定されてよい。
【0074】
電子部品(半導体チップ)は、導体層のいずれの面に対して実装されてもよい。例えば、実施形態において、半導体チップ10が金属基材フィルム1とは反対側に実装されていても、金属基材フィルム1が半導体チップ10を覆うことによるシールドの効果などが期待できる。
【0075】
金属基材フィルムを折り返した状態に保持する固定部材は、ネジに限定されない。また、金属基材フィルムを折り返した状態に保持する固定部材は、金属基材フィルムをフレームなどに固定する機能を兼ね備えるものに限定されない。例えば、接着剤により金属基材フィルムが折り返された状態に保持され、さらに、他の接着剤若しくはネジにより金属基材フィルムがフレームに固定されてもよい。
【0076】
本発明の第2の観点の配線板においては、基材は、金属により形成されていなくてもよい。例えば、基材は、絶縁性の樹脂により形成されていてもよい。この場合であっても、折り返されて電子部品(半導体チップ)に対向する領域において、基材に積層された金属層が設けられていれば、半導体チップの熱の熱伝導性の向上若しくは半導体チップのシールドの効果が期待できる。なお、この場合において、金属層は、基材の導体層が設けられる面に積層されていてもよいし、その背面に積層されていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 金属基材フィルム
1a 第1主面
1b 第2主面
2 接着剤層
3 導体層
3A 導電パターン
3B インナーリード
3C 第1の外部接続端子
3D 第2の外部接続端子
3E グランドパターン
3F 第1のグランド配線
3G 第2のグランド配線
3H 熱伝導部パターン
3J 配線
4 配線板
5 開口
6 第1のスリット
7 第2のスリット
7A 軟質樹脂
8 ソルダーレジスト
10 半導体チップ
11 金バンプ
12 熱伝導部位
13 半導体装置
14 封止樹脂
15 ネジ用貫通穴
16 ディスプレイパネル
17 熱伝導グリス
18 フレーム
18a 台座部
19 ネジ
19A 雌ねじ穴
20 金属スペーサ
22 スプロケットホール
23 第1の折り曲げ部位
24 第1の外部接続端子形成領域
25 第2の外部接続端子形成領域
26 半導体モジュール
27 ディスプレイ装置
28 第2の折り曲げ部位
a 折り曲げ範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が形成された金属基材フィルムと、
前記金属基材フィルムの一方主面に積層された絶縁層と、
前記絶縁層に積層された積層部と、前記積層部から前記開口内へ延びるインナーリードとを有する導体層と、
を有し、
前記金属基材フィルムは、平面視において前記開口側を凹側とする凹状に延びて前記積層部の少なくとも一部を囲むスリットが形成されており、前記積層部の前記一部を折り返さずに、前記スリットの外側部分を、前記金属基材フィルムの他方主面を内側にして折り返して前記開口に対向させることが可能である
配線板。
【請求項2】
前記金属基材フィルムの折り返された部分は、前記開口に対向するとともに、前記金属基材フィルムの他の部分に対向する
請求項1に記載の配線板。
【請求項3】
前記導体層は、前記金属基材フィルムの折り返された部分において設けられた、基準電位が付与される熱伝導部パターンを有する
請求項1又は2に記載の配線板。
【請求項4】
前記導体層は、前記金属基材フィルムの折り返された部分に対向する領域において設けられた、基準電位が付与されるグランドパターンを有する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線板。
【請求項5】
前記積層部は、前記インナーリードから前記開口とは反対側に延びる配線と、その配線の端部に形成された端子とを有し、
前記スリットは、前記端子を囲む形状に形成されている
請求項1〜4のいずれか1項に記載の配線板。
【請求項6】
フィルム状の基材と、
前記基材に直接的又は間接的に積層された積層部と、当該積層部に接続され、電子部品が実装される実装部とを有する導体層と、
を有し、
前記基材は、平面視において前記実装部側を凹側とする凹状に延びて前記積層部の少なくとも一部を囲むスリットが形成されており、前記積層部の前記一部を折り返さずに、前記スリットの外側部分を折り返し、前記実装部に対向させることが可能である
配線板。
【請求項7】
開口が形成された金属基材フィルムと、
前記金属基材フィルムの一方主面に積層された絶縁層と、
前記絶縁層に積層された積層部と、前記積層部から前記開口内へ延びるインナーリードとを有する導体層と、
前記インナーリードの前記金属基材フィルム側の面に実装された半導体チップと、
を有し、
前記金属基材フィルムは、平面視において前記開口側を凹側とする凹状に延びて前記積層部の少なくとも一部を囲むスリットが形成されており、前記積層部の前記一部を折り返さずに、前記スリットの外側部分を、前記金属基材フィルムの他方主面を内側にして折り返して前記半導体チップに対向させることが可能である
半導体装置。
【請求項8】
開口が形成された金属基材フィルムと、
前記金属基材フィルムの一方主面に積層された絶縁層と、
前記絶縁層に積層された積層部と、前記積層部から前記開口内へ延びるインナーリードとを有する導体層と、
前記インナーリードの前記金属基材フィルム側の面に実装された半導体チップと、
前記金属基材フィルムを折り返した状態に保持する固定部材と、
を有し、
前記金属基材フィルムは、平面視において前記半導体チップ側を凹側とする凹状に延びて前記積層部の少なくとも一部を囲むスリットが形成されており、
前記固定部材は、前記積層部の前記一部を折り返さずに、前記スリットの外側部分を、前記金属基材フィルムの他方主面を内側にして折り返して前記半導体チップに直接的又は間接的に当接する状態に前記金属基材フィルムを保持している
半導体モジュール。
【請求項9】
前記金属基材フィルムが固定されるフレームを更に有し、
前記固定部材は、前記金属基材フィルムの折り返された部分を前記金属基材フィルムの他の部分に直接的又は間接的に当接する状態に保持し、
前記導体層は、前記金属基材フィルムの折り返された部分が当接する領域において設けられた、基準電位が付与されるグランドパターンを有し、
前記グランドパターンは、前記フレームに当接している
請求項8に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
ディスプレイパネルと、
前記ディスプレイパネルに接続される半導体装置と、
を有し、
前記半導体装置は、
開口が形成された金属基材フィルムと、
前記金属基材フィルムの一方主面に積層された絶縁層と、
前記絶縁層に積層された積層部と、前記積層部から前記開口内へ延びるインナーリードとを有する導体層と、
前記インナーリードの前記金属基材フィルム側の面に実装された半導体チップと、
を有し、
前記金属基材フィルムは、平面視において前記開口側を凹側とする凹状に延びて前記積層部の少なくとも一部を囲むスリットが形成されており、前記積層部の前記一部が折り返されずに、前記スリットの外側部分が前記金属基材フィルムの他方主面を内側にして折り返されて前記半導体チップに直接的又は間接的に当接されている
ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−169951(P2011−169951A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31164(P2010−31164)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(391022186)新藤電子工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】