説明

配線検査方法および配線検査装置

【課題】 本発明は、撮影した複数の赤外線画像から欠陥位置特定に適した画像を抽出して、短絡欠陥部の位置を正確に特定することを目的とする。
【解決手段】 本発明の配線検査方法は、基板に形成された配線の短絡欠陥部の有無を検査する配線検査方法であって、配線に電圧を印加して前記短絡欠陥部を発熱させる発熱工程(S3〜S6)と、基板を撮影して複数の時刻毎の赤外線画像を取得する画像取得工程(S2〜S5)と、所定時刻の赤外線画像を用いて発熱領域を認識する発熱領域認識工程(S8)と、発熱領域から短絡欠陥部の位置を特定できるか判定する発熱領域判定工程(S9)と、発熱領域から短絡欠陥部の位置を特定する欠陥位置特定工程(S10)とを含み、発熱領域認識工程はさらに、発熱領域判定工程において短絡欠陥部の位置を特定できないと判定されたとき、所定時刻と異なる別時刻の赤外線画像を用いて、発熱領域を認識することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶表示装置や有機EL表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板、あるいは太陽電池パネル等のように、複数の配線が形成された基板で、配線の短絡欠陥を検出するのに好適な配線検査方法および配線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アクティブマトリクス基板あるいは複数の配線が形成された基板は、液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)表示装置、太陽電池パネル等の種々な製品分野で用いられている。例えば、液晶表示装置は、複数の配線、絵素電極およびスイッチング素子などが形成された一方基板部材であるアクティブマトリクス基板と、対向電極やカラーフィルタが形成された他方基板部材であるカラーフィルタ基板とを有する。液晶表示装置は、前記2枚の基板を間隔をあけて貼合わせ、間隙に液晶材料を注入して液晶層を形成した後に、周辺回路部品を実装して製造する。
【0003】
アクティブマトリクス基板は、その製造工程において、基板上の配線の断線や短絡などの欠陥が生じることがある。当該欠陥は液晶表示装置の表示欠陥の原因となる。液晶表示装置の表示欠陥などの不良を減少させるためには、前述した液晶材料を注入する工程以前に、アクティブマトリクス基板の欠陥を検出してリペアする必要がある。
【0004】
図8は、特許文献1に開示されている配線パターンの検査装置である。特許文献1の検査装置は、基板50上に形成された配線パターン53に通電電極61により通電して、配線パターン53の発熱による赤外線を発生させ、赤外線センサ63でその赤外線画像を撮像し、撮像信号を画像処理して所定の基準画像データと対比することにより、配線パターン53の良否を検査する。例えば、図8のA部では、配線が断線しており電流が流れないため、A部を含む配線53は発熱しない。また、図8のB部では、配線が短絡しており短絡部にも電流が流れるため、配線53以外の部分からも赤外線が発生する。
【0005】
また、図9は、特許文献2に開示されているアクティブマトリクス基板の検査装置である。特許文献2の検査装置は、アクティブマトリクス基板の走査線81〜85と信号線91〜95の交差点で発生する短絡欠陥73を検出するものである。
【0006】
アクティブマトリクス基板の走査線81〜85と信号線91〜95との間は絶縁されており、正常であれば、走査線81〜85と信号線91〜95との間に電圧を印加しても電流は流れない。これに対し、例えば、走査線83と信号線93の間に短絡欠陥73が存在すると、短絡欠陥73を通して走査線83と信号線93との間に電流が流れ、発熱が生じて赤外線を放出する。
【0007】
したがって、走査線81〜85と信号線91〜95との間に電圧を印加し、赤外線画像を撮影して、発熱領域の有無から短絡欠陥の有無を検出して良品を判別したり、短絡欠陥73の位置を検出したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−337454号公報(平成11年12月10日公開)
【特許文献2】特開平6−51011号公報(平成6年2月25日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されている従来の赤外線画像を用いる検査方法では、配線と短絡欠陥部に電流が流れて発熱すると、熱伝導によりその近傍の領域も温度上昇して赤外線を発生する。このため、配線数が比較的少ない場合には発熱領域から短絡欠陥部の位置を特定できるが、高解像度の液晶テレビ等のように、配線数が多く、配線が緻密に形成された基板では、検出された発熱領域中に短絡欠陥部と共に正常な配線や配線交差部等も含まれてしまい、短絡欠陥部が発熱領域中に埋もれてしまうことから、従来の検査では短絡欠陥部の位置を正確に特定できないという問題があった。
【0010】
本発明は、複数の赤外線画像を撮影し、欠陥位置特定に適した画像を抽出して、短絡欠陥部の位置を正確に特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の配線検査方法は、基板に形成された配線の短絡欠陥部の有無を検査する配線検査方法であって、配線に電圧を印加して前記短絡欠陥部を発熱させる発熱工程と、基板を撮影して複数の時刻毎の赤外線画像を取得する画像取得工程と、所定時刻の赤外線画像を用いて発熱領域を認識する発熱領域認識工程と、発熱領域から短絡欠陥部の位置を特定できるか判定する発熱領域判定工程と、発熱領域から短絡欠陥部の位置を特定する欠陥位置特定工程とを含み、発熱領域認識工程はさらに、発熱領域判定工程において短絡欠陥部の位置を特定できないと判定されたとき、所定時刻と異なる別時刻の赤外線画像を用いて、発熱領域を認識することを特徴とする。
【0012】
また、発熱領域判定工程は、発熱領域の大きさを評価する特徴量を算出し、特徴量が所定の範囲内のとき、短絡欠陥部の位置を特定できると判定することを特徴とする。
【0013】
また、特徴量は、発熱領域から算出した面積、または、発熱領域から算出した配線の発熱幅のうちの少なくとも何れかに対応していることを特徴とする。
【0014】
また、発熱領域認識工程は、特徴量が所定の範囲より小さいとき、所定時刻よりも遅い時刻の赤外線画像を用いることを特徴とする。
【0015】
また、発熱領域認識工程は、特徴量が所定の範囲より大きいとき、所定時刻よりも早い時刻の赤外線画像を用いることを特徴とする。
【0016】
また、配線の抵抗値を測定する抵抗測定工程を有し、抵抗値に応じて、赤外線画像の所定時刻および別時刻を変えることを特徴とする。
【0017】
本発明の配線検査装置は、基板に形成された配線の短絡欠陥部の有無を検査する配線検査装置であって、配線に電圧を印加して短絡欠陥部を発熱させる発熱手段と、基板を撮影して複数の時刻毎の赤外線画像を取得する画像取得手段と、所定時刻の赤外線画像を用いて発熱領域を認識する発熱領域認識手段と、発熱領域から短絡欠陥部の位置を特定できるか判定する発熱領域判定手段と、発熱領域から短絡欠陥部の位置を特定する欠陥位置特定手段とを含み、発熱領域認識手段はさらに、発熱領域判定手段において短絡欠陥部の位置を特定できないと判定されたとき、所定時刻と異なる別時刻の赤外線画像を用いて、発熱領域を認識することを特徴とする。
【0018】
また、配線の抵抗値を測定する抵抗測定手段を備え、測定された抵抗値に応じて、赤外線画像の所定時刻および別時刻を変えることを特徴とする。
【0019】
本発明の配線検査プログラムは、上記配線検査方法を動作させる配線検査プログラムであって、コンピュータを上記の各工程として機能させることを特徴とする。
【0020】
本発明のプログラム記録媒体は、コンピュータで読取可能な上記配線検査プログラムが記録されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の赤外線画像を撮影し、欠陥位置特定に適した画像を抽出して、短絡欠陥部の位置を正確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係る配線検査装置を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例に係る配線検査装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の実施例に係る配線検査方法を示す検査フロー図である。
【図4】本発明の実施例に係り、時刻毎の赤外線画像を保存した画像テーブルを示した図である。
【図5】本発明の実施例に係り、時刻毎の赤外線画像を重ね合せて示した図である。
【図6】本発明の実施例に係り、時刻毎の赤外線画像を2値化した画像を示す模式図である。
【図7】本発明の実施例に係り、2値化画像から短絡欠陥位置を特定する説明図である。
【図8】従来技術に係る検査装置を説明するための図である。
【図9】従来技術に係る検査装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1から図7に示す図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一の部分又は相当部分を表すものとする。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の一実施例である配線検査装置1の模式図である。配線検査装置1は、信号供給部2と、赤外線動画撮影部3と、画像処理部4と、中央制御部5から構成されている。検査すべき基板部材14は、載置台15上に載置され、その上に接続部6が載置される。接続部6の底面には、基板部材14の配線の端子部と電気的導通をとる複数のプローブ(接触針)が設けられている。基板部材14は、信号供給部2から接続部6を通して電圧が印加されるとともに、赤外線動画撮影部3により表面の赤外線画像が動画で撮影される。
【0025】
図2は、配線検査装置1の構成を説明するための図である。配線検査装置1は、中央制御部5により、信号供給部2、赤外線動画撮影部3、画像処理部4を制御して、基板部材14の配線に生じた短絡等の欠陥を検出し、その欠陥の位置を特定する。
【0026】
信号供給部2は、接続部6と、接続部6に接続された電圧印加部7と抵抗測定部8とを有している。電圧印加部7は、接続部6を通して基板部材14の配線に一定の電圧を印加する電源である。なお、本実施例では、電圧印加部7という定電圧源を用いた通電方法で説明するが、定電流源を用いた通電方法を採用することで、短絡欠陥部を発熱させるようにしても良い。
【0027】
抵抗測定部8は、接続部6を通して基板部材14の配線の抵抗値を測定する測定器である。信号供給部2は、測定した配線の抵抗値をもとに電圧印加部7の印加電圧を調整するが、同一仕様の基板部材14のように抵抗値が予め予測されている場合は、配線検査装置1に抵抗測定部8を設ける必要はなく、印加電圧を調整しなくてもよい。
【0028】
赤外線動画撮影部3は、赤外画像撮影部9と赤外画像記憶部10とを有している。赤外画像撮影部9は、例えば、赤外線カメラであり、基板部材14の表面から放射される赤外線を捕らえて赤外線画像を形成する。赤外画像撮影部9で撮影された赤外線画像は、たとえばコンピュータに送信され、必要に応じてアナログ/デジタル変換され、赤外画像記憶部10に与えられる。赤外画像記憶部10は、赤外画像撮影部9で時刻毎に撮影された複数の赤外線画像を画像テーブルに保存する記憶装置である。なお、本実施例では、赤外線画像を動画として撮影する場合を説明するが、本発明はそれのみに限定されず、赤外線画像は、動画、または、時系列に撮影された静止画であっても良い。
【0029】
画像処理部4は、発熱領域認識部11と、発熱領域判定部12と、欠陥位置特定部13とを有している。発熱領域認識部11は、所定時刻の赤外線画像から発熱領域を認識し、例えば、赤外線画像を所定の閾値温度で2値化処理することにより背景ノイズを取り除いて発熱領域を認識する。発熱領域判定部12は、発熱領域認識部11で認識した発熱領域が短絡欠陥部の位置を特定する際に最適な範囲内であるか判定する。欠陥位置特定部13は、最適と判定された発熱領域から短絡欠陥部の位置を特定する。
【0030】
図3は、本発明の一実施例に係る配線検査方法を示す検査フロー図である。図3に示すS1からS10のステップの順序で、本発明の検査方法について詳細に説明する。なお、配線検査方法は、プログラム化して記録媒体に記録され、コンピュータで読取可能に保存されている。
【0031】
本実施例に係る検査フローは、複数の赤外線画像を撮影し、短絡欠陥部の位置特定に適した画像を抽出して、短絡欠陥部の位置を正確に特定するものである。
【0032】
ステップS1は、基板部材14の配線に電圧を印加するための準備であり、接続部6のプローブを基板部材14の配線端子に接触させ、配線端子に電圧印加部7を電気的に接続する。
【0033】
ステップS2では、画像撮像部9を用いて、基板部材14表面の赤外線画像の撮影を開始する。赤外線画像は、動画として撮影するか、または、静止画として連続して撮影する。また、ステップS2の開始時点では、電圧印加前であるため、発熱していない状態の赤外線画像も撮影される。
【0034】
ステップS3では、電圧印加部7から接続部6を通して基板部材14の配線間に電圧の印加を開始する。印加電圧は、配線や短絡欠陥部の抵抗値により異なるが、例えば、50VのDC電圧である。
【0035】
ステップS4では、電圧印加の開始から所定時間後に赤外線画像の撮影を終了する。所定時間とは、ステップS3の印加電圧によって、基板部材14の配線間に短絡欠陥部があった場合に十分な発熱が生じる時間であり、例えば、電圧印加の開始から2秒程度経過してから赤外線画像の撮影を終了する。
【0036】
ステップS5では、ステップS2からステップS4の間に撮影された複数の赤外線画像の全てを、一旦、画像テーブル18として画像記憶部10に保存する。ここでステップS2からステップS5までを画像取得工程とする。なお、画像テーブル18は、図4に示すように、例えば、時刻毎に撮影された赤外線画像を、時刻18a(Tn)と赤外線画像18b(IMGn)の対応付けたテーブルとして保存したものである。
【0037】
ステップS6では、配線間への電圧印加を終了する。ここで、ステップS3からステップS6までを発熱工程とする。このステップS6とステップS5は順序が逆であっても構わないし、並行して行ってもよい。なお、赤外線画像のデータ量が多くなって保存に時間がかかる場合は、先に配線間への電圧印加を終了することで、基板部材14にかかる熱的負担を軽減できる効果も期待できる。
【0038】
ステップS7からS10は、画像処理部4における工程であり、複数の赤外線画像から配線検査に適切な赤外線画像を選択し、画像処理を施して欠陥位置の特定を行なうものである。
【0039】
ステップS7では、画像テーブル18から所定時刻の赤外線画像IMGnを選択して、発熱領域認識部11に送る。ここで所定時刻とは、時刻Tnのことであり、時刻Tnは予め初期設定されている。従ってステップS7では、予め初期設定された時刻Tnにおける赤外線画像IMGnが、発熱領域認識部11に送られることになる。時刻Tnの設定方法としては、例えば、配線と欠陥部に電圧を印加してから適度に発熱する平均的な時刻を設定すれば良い。
【0040】
ステップS8は、発熱領域認識部11において、所定時刻の赤外線画像を画像処理して発熱領域を認識する発熱領域認識工程である。最初に、発熱領域以外の背景ノイズを除去するため、所定時刻の赤外線画像から所定温度を閾値として2値化画像を生成する。続いて、コンピュータ等で認識可能となった2値化画像から発熱領域の有無や面積を評価する。なお、最初にステップS7の処理を行う赤外線画像の対象は、初期設定された時刻Tnにおける赤外線画像IMGnである。
【0041】
ここで発熱領域と放射率について補足すると、一般に、赤外線カメラが測定する温度は、被撮像物に係る放射率の影響を受ける。基板上はガラス、クロムやアルミニウムや銅等の配線材料等放射率の異なる物質より形成されている。従って、測定された基板上の基板温度は全面で一様ではなく、発熱領域を高精度に撮像するためには、放射率の影響を除く必要がある。そこで、所定時刻の赤外線画像と電圧印加前の赤外線画像の差分をとった温度変化画像から2値化画像を生成してもよい。
【0042】
ステップS9は、発熱領域判定部12において、ステップS8で認識した発熱領域から短絡欠陥部の位置を特定できるかどうか判定する。このような判定が必要となる理由について、図5と図6を用いて以下で説明する。
【0043】
図5は、電圧印加によって短絡欠陥部20から発熱が生じている基板部材14を、時刻毎に撮影した赤外線画像の一例を示している。基板部材14は、例えば、液晶パネルに用いられるアクティブマトリクス基板であり、X方向に並列された複数の配線Rと、Y方向に並列された配線Lが、絶縁体を介して交差している。各交差箇所には、図示しないスイッチング素子として例えば薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が形成されている。ここでは、X方向のx番目の配線Rxと、Y方向のx番目の配線Lxの交差部に短絡欠陥部20が生じた事例を示している。なお、分かりやすくするために、赤外線画像に配線Rと配線Lを重ね合わせて表示している。
【0044】
また、赤外線画像IMG1〜IMG5は、各発熱領域についてハッチング種別を変えて示したものであり、それぞれ、電圧印加の開始から、0.05秒後、0.1秒後、0.2秒後、0.3秒後、1秒後の時刻T1〜T5に対応している。
【0045】
配線Rx、Lxと短絡欠陥部20に生じる発熱は、ジュールの法則により抵抗と電流の2乗と時間に比例する。配線Rx、Lxと短絡欠陥部20に流れる電流は同じであるため、抵抗の大きい短絡欠陥部20が配線Rx、Lxよりも発熱しやすい。このため、電圧印加の直後は、赤外線画像IMG1のように短絡欠陥部20の近傍から発熱が始まり、抵抗の大きさ順に配線Rx、Lxへと発熱領域が広がっていく。
【0046】
電圧の印加時間が長くなると、配線Rx、Lxの発熱は、熱伝導により配線Rx、Lxの各配線方向や各配線幅方向にも広がっていく。例えば、1秒後の時刻T5の発熱領域中には、赤外線画像IMG5に示すように、短絡欠陥部20と配線Rx、Lx以外に、その近傍の配線等も含まれている。
【0047】
図6は、赤外線画像IMG1〜IMG5のそれぞれから、コンピュータ等で認識可能な2値化画像(a)〜(d)を生成した模式図である。赤外線画像IMG1は、2値化画像(a)のようになり、発熱領域21が短絡欠陥部20の近傍だけに認識され、小さ過ぎるために見落としたりノイズと見誤る可能性がある。また、赤外線画像IMG2も、2値化画像(b)のようになり、配線Rxの発熱領域21がかすれて複数に分割されてしまい、それぞれを短絡欠陥部20と見誤る可能性がある。
【0048】
また、赤外線画像IMG5は、2値化画像(d)のようになり、発熱領域21が短絡欠陥部20と配線Rx、Lxから広がり過ぎて、短絡欠陥部20が発熱領域に埋もれてしまい、短絡欠陥部20の位置を特定することが困難になる。
【0049】
一方、赤外線画像IMG3、IMG4は、2値化画像(c)のようになり、発熱領域21を見落とさず、また、発熱領域中に短絡欠陥部20が埋もれない、適度な大きさで認識されている。
【0050】
このように、どの時刻の赤外線画像を基に発熱領域を認識するかにより、後の短絡欠陥部の位置特定の容易さが大きく変わってくる。
【0051】
しかしながら、望ましい赤外線画像IMG3、IMG4は、電圧印加から0.2秒後、0.3秒後の一瞬の赤外線画像であり、また、短絡欠陥部20や配線の抵抗値等により、赤外線画像IMG3、IMG4のような状態になる時刻も変動する。このため、最初に選択した所定時刻の赤外線画像が必ずしも短絡欠陥部の位置を特定できる最適な赤外線画像とは限らないので、ステップS9による発熱領域判定工程が必要となる。
【0052】
ステップS9では、図6(a)〜(d)に示した2値化画像の発熱領域から短絡欠陥部の位置を特定できるか否かを判定する。例えば、発熱領域の大きさを評価する特徴量を算出し、その特徴量が所定の範囲内に収まるときは、発熱領域から短絡欠陥部の位置を特定できると判定し、ステップS10の欠陥位置特定工程に進める。特徴領域は、例えば、発熱領域の面積や、発熱して広がった配線の発熱幅を用いる。また、図6(c)のような最適な発熱領域から所定の適正範囲を予め定めておく。
【0053】
特徴量が所定の適正範囲から外れて、発熱領域判定部12で短絡欠陥部の位置を特定できないと判定された場合、所定時刻と異なる別の時刻の赤外線画像に変更する。
【0054】
例えば、図6(a)や図6(b)のように、発熱領域の特徴量が適正範囲よりも小さい場合(特徴量<適正範囲の場合)は、所定時刻を後の時刻Tn+1に変更してステップS7に戻す。
【0055】
また、例えば、図6(d)のように、発熱領域の特徴量が適正範囲よりも大きい場合(特徴量>適正範囲の場合)は、所定時刻を前の時刻Tn−1に変更してステップS7に戻す。
【0056】
どの程度の時刻に変更するかは、短絡欠陥部20と配線の抵抗値や抵抗の比率に応じて調整することが望ましい。すなわち、ステップ9からステップ7に戻る際に、時刻を時刻Tnから1だけ変更しているが、1に限らず2以上変更するように調整してもよい。大きく変更することで、ステップ7,8,9の反復処理回数を削減できる効果がある。
【0057】
また、抵抗値に応じて、赤外線画像の所定時刻を変えることが望ましい。抵抗値が大きくなると、電圧印加による基板の発熱量が減少する。すなわち、最適な赤外線画像を撮像する時刻は、遅くなる。従って、抵抗値が大きいほど所定時刻を遅くする。反対に抵抗値が小さいほど所定時刻を早くすることが望ましい。
【0058】
発熱領域の特徴量が適正範囲から外れるとステップS7に戻り、変更された時刻の赤外線画像に選択し直して、ステップS8の発熱領域認識工程と、ステップS9の発熱領域判定工程とを繰り返す。なお、例えば、2回目以降の発熱領域認識工程では、別時刻の最適な赤外線画像が用いられており、2回目の発熱領域の特徴量で、ほぼ、適正範囲内に入ることが多い場合は、2回目にステップS9の処理することを省略してステップS10の欠陥位置特定工程に進めるようにしても良い。
【0059】
ステップS10は、発熱領域から短絡欠陥部20の位置を特定する位置特定工程である。図7は、2値化画像から認識された発熱領域の形状例を示すものであり、図7を用いてステップS10の位置特定工程について説明する。
【0060】
発明者が実験した結果、発熱領域の形状は、配線抵抗値と短絡欠陥部の抵抗値との兼ね合いにより、図7(a)に示すマッチ棒型の発熱形状となったり、図7(b)に示す鉛筆型の発熱形状となったりすることが判明した。このような発熱形状の違いにより、短絡欠陥部20の位置の特定方法は変わる。発熱形状の違いは、図7(c)に示すように、発熱領域の先端から水平幅を計測することでコンピュータ等でも自動的に判断できる。
【0061】
短絡欠陥部20の位置は、2値化画像を用いて、従来の画像処理手法により特定することができる。例えば、マッチ棒型の発熱形状の場合は、先端の円形部分を認識して抽出→重心算出の手順で特定できる。また、鉛筆型の発熱形状の場合も、2値化画像→細線化→細線の先端画素の手順で特定できる。
【0062】
以上の通り、本発明の配線検査方法によれば、配線や短絡欠陥部の状態にかかわらず、複数の赤外線画像から最適な発熱領域を抽出して、短絡欠陥部の位置を容易に特定することができる。したがって、複数の短絡欠陥部が異なる導通状態で存在する場合であっても、一度の配線検査で位置を特定することができる。
【0063】
また一度の配線検査で位置を特定できることから、検査に要する時間を短縮できたり、温度上昇による配線基板等への損傷を低減することも可能である。
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
本発明は、アクティブマトリクス基板あるいは複数の配線が形成された基板における、配線の短絡欠陥を検出するのに好適なものであり、液晶表示装置、有機EL表示装置または太陽電池パネルに限られず、様々な基板の検査に採用され得るものである。
【0065】
また本発明において、信号供給部2、画像処理部4、中央制御部5の処理のうちの一部又は全てを、集積回路(IC(integrated circuit)チップ)上に形成された論理回路によってハードウェア的に実現していてもよいし、CPU(central processing unit)やMPU(microprocessor unit)を用いてソフトウェア的に実現してもよい。
【0066】
そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0067】
記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ類、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM(compact disc read-only memory)/MO(magneto-optical)/MD(Mini Disc、登録商標)/DVD(digital versatile disk)/CD−R(CD Recordable)等の光ディスクを含むディスク類、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード類、マスクROM/EPROM(erasable programmable read-only memory)/EEPROM(electrically erasable and programmable read-only memory)/フラッシュROM等の半導体メモリ類、あるいはPLD(Programmable logic device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路類などを用いることができる。
【0068】
さらには上述した機能を実現するソフトウェアをインターネット、共有サーバーなどへアクセス可能となるようアップロードし、ユーザなどがソフトウェアをダウンロードし、配線検査装置にインストールすることで本発明を実施することも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 配線検査装置
2 信号供給部
3 赤外線動画撮影部
4 画像処理部
5 中央制御部
6 接続部
7 電圧印加部
8 抵抗測定部
9 赤外画像撮影部
10 赤外画像記憶部
11 発熱領域認識部
12 発熱領域判定部
13 欠陥位置特定部
14 基板部材
20 短絡欠陥部
21 発熱領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された配線の短絡欠陥部の有無を検査する配線検査方法であって、
前記配線に電圧を印加して前記短絡欠陥部を発熱させる発熱工程と、
前記基板を撮影して複数の時刻毎の赤外線画像を取得する画像取得工程と、
所定時刻の前記赤外線画像を用いて発熱領域を認識する発熱領域認識工程と、
前記発熱領域から前記短絡欠陥部の位置を特定できるか判定する発熱領域判定工程と、
前記発熱領域から前記短絡欠陥部の位置を特定する欠陥位置特定工程とを含み、
前記発熱領域認識工程はさらに、
前記発熱領域判定工程において、前記短絡欠陥部の位置を特定できないと判定されたとき、前記所定時刻と異なる別時刻の前記赤外線画像を用いて、前記発熱領域を認識することを特徴とする配線検査方法。
【請求項2】
前記発熱領域判定工程は、
前記発熱領域の大きさを評価する特徴量を算出し、
前記特徴量が所定の範囲内のとき、前記短絡欠陥部の位置を特定できると判定することを特徴とする請求項1に記載の配線検査方法。
【請求項3】
前記特徴量は、前記発熱領域から算出した面積、または、前記発熱領域から算出した配線の発熱幅のうちの少なくとも何れかに対応していることを特徴とする請求項2に記載の配線検査方法。
【請求項4】
前記発熱領域認識工程は、前記特徴量が前記所定の範囲より小さいとき、前記所定時刻よりも遅い時刻の赤外線画像を用いることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の配線検査方法。
【請求項5】
前記発熱領域認識工程は、前記特徴量が前記所定の範囲より大きいとき、前記所定時刻よりも早い時刻の赤外線画像を用いることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の配線検査方法。
【請求項6】
前記配線の抵抗値を測定する抵抗測定工程を有し、
前記抵抗値に応じて、前記赤外線画像の所定時刻および別時刻を変えることを特徴とする請求項1に記載の配線検査方法。
【請求項7】
基板に形成された配線の短絡欠陥部の有無を検査する配線検査装置であって、
前記配線に電圧を印加して前記短絡欠陥部を発熱させる発熱手段と、
前記基板を撮影して複数の時刻毎の赤外線画像を取得する画像取得手段と、
所定時刻の前記赤外線画像を用いて発熱領域を認識する発熱領域認識手段と、
前記発熱領域から前記短絡欠陥部の位置を特定できるか判定する発熱領域判定手段と、
前記発熱領域から前記短絡欠陥部の位置を特定する欠陥位置特定手段とを含み、
前記発熱領域認識手段はさらに、
前記発熱領域判定手段において前記短絡欠陥部の位置を特定できないと判定されたとき、前記所定時刻と異なる別時刻の前記赤外線画像を用いて、前記発熱領域を認識することを特徴とする配線検査装置。
【請求項8】
前記配線の抵抗値を測定する抵抗測定手段を備え、
測定された前記抵抗値に応じて、前記赤外線画像の所定時刻および別時刻を変えることを特徴とする請求項7に記載の配線検査装置。
【請求項9】
請求項1に記載の配線検査方法を動作させる配線検査プログラムであって、
コンピュータを上記の各工程として機能させることを特徴とする配線検査プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の配線検査プログラムが記録されたことを特徴とするコンピュータ読取可能なプログラム記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−104770(P2013−104770A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248454(P2011−248454)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】