説明

酒燗冷装置

【課題】 酒を継続的に適温で飲用することができる酒燗冷装置を提供すること。
【解決手段】 保温カップ20内には温水または冷水が投入されており、盃10内の酒は温水から伝熱器40を通して熱が伝達されることに基いて昇温し、伝熱器40を通して冷水に熱が伝達されることに基いて降温する。この構成の場合、飲用者が酒を1杯の盃10毎に加熱または冷却することができるので、酒を継続的に適温で飲用することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒を加熱および冷却することが可能な酒燗冷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記酒燗冷装置には、徳利を水槽内に投入し、水槽内の水を電気的ヒータによって加熱することに基いて徳利内の酒を温度上昇させる構成のものがある。
【特許文献1】特開2003−019070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来構成の場合、酒を徳利単位でしか加熱することができないので、酒を徳利から盃に移して飲用することを繰返すうちに徳利内の酒が冷えてしまう不便さがある。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、酒を継続的に適温で飲用することができる酒燗冷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の酒燗冷装置は1)容器〜2)伝熱器を備えたところに特徴を有するものであり、1)容器〜2)伝熱器の詳細は次の通りである。
1)容器は熱交換源が投入されるものである。この熱交換源は盃内の酒を加熱する熱源および盃内の酒を冷却する冷却源を総称する用語であり、非常温度の気体や液体や固体等の非電気的手段およびヒータ等の電気的手段の双方を含む。
2)伝熱器は容器内の熱交換源から容器外の盃に熱を伝達したり、盃内の酒から容器内の熱交換源に熱を伝達するものであり、盃内の酒は容器内の熱交換源から熱が伝達されることに基いて昇温し、容器内の熱交換源に熱を伝達することに基いて降温する。この伝熱器は盃台を有している。この盃台とは盃を容器の外部で伝熱器に着脱可能に接続するための接続器を称しており、酒の飲用者は盃を盃台にセットし、盃内に酒を移す程度で適温に昇温または降温することができる。即ち、請求項1に係る発明は酒の飲用者が自ら酒を昇温または降温しながら飲用することを可能とするものであり、酒の昇温または降温を盃単位で手軽に実行可能としたところに特徴を有する。
請求項2記載の酒燗冷装置は盃台の具体構成を言及したものであり、11)ヘッド部と12)ベース部と13)盃挿入部とを備えたところに特徴を有する。
11)ヘッド部は盃に直接的に接触するものであり、盃および熱交換源はヘッド部を通して熱の授受を行う。
12)ベース部はヘッド部を保持する台として機能するものである。
13)盃挿入部はヘッド部とベース部との間に設けられた空間部を称するものであり、盃は脚部が盃挿入部内に着脱可能に挿入されることに基いて盃台に対して着脱可能にされている。
請求項3記載の酒燗冷装置は盃の温度分布を改善するものであり、盃台のヘッド部を盃の伝熱部に接触させるところに特徴を有する。この伝熱部は盃の底部に配置されたものであり、盃のうち残りの部分に比べて厚肉な部分を称する。この伝熱部は盃台のヘッド部を介して直接的に加熱または冷却されるものであり、盃内の酒を加熱または冷却するときには盃の底部が残りの部分に比べて高温傾向または低温傾向になる。
請求項4記載の酒燗冷装置は容器として保温容器を用いたものであり、保温容器とは外部からエネルギーが印加されることなく熱交換源の温度変動を抑制する断熱機能が添付された容器を称する。
【発明の効果】
【0006】
酒の飲用者が盃台上の盃内に酒を移すと、盃内の酒と熱交換源との間で熱の授受が行われることに基いて盃内の酒が昇温または降温する。このため、飲用者が酒を盃単位で適温に自ら加熱または冷却することができるので、酒を継続的に適温で飲用することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
【実施例1】
【0008】
酒燗冷装置は、図1に示すように、盃10と保温カップ20とカップカバー30と伝熱器40を有している。保温カップ20は熱交換源に相当する温水または冷水が投入されるものであり、投入水を貯留する貯水容器としての機能に加え、貯留水を外部に対して熱的に遮断することに基いて貯留水の温度変動を抑える断熱機能を有している。この保温カップ20の上面は保温カップ20内に温水または冷水を投入する目的で開放されており、カップカバー30は保温カップ20の投入口を覆う蓋として機能する。
【0009】
伝熱器40は保温カップ20内の貯留水と盃10内の酒とを熱的に接続する接続器に相当するものであり、保温カップ20内の温水の熱を盃10に伝達することに基いて盃10内の酒を加熱し、盃10内の酒の熱を保温カップ20内の冷水に伝達することに基いて盃10内の酒を冷却する。即ち、酒は一杯の盃単位で加熱および冷却されるものであり、盃10は水濡れすることなく間接的に加熱および冷却される。以下、盃10〜伝熱器40の詳細構成について説明する。
1.盃10の説明
盃10は錫を材料に形成されたものであり、図2に示すように、受皿部11および脚部12を有している。受皿部11は酒を受ける円形皿状をなすものであり、受皿部11の底部には伝熱部13が形成されている。この伝熱部13は受皿部11のうち残りの部分に比べて厚肉なものであり、伝熱部13の下面は水平面状に形成されている。脚部12は盃10を机上に載置するためのものであり、伝熱部13を囲う円筒状をなしている。
2.保温カップ20の説明
保温カップ20は容器および保温容器に相当するものであり、底面が閉鎖された円筒状をなしている。この保温カップ20はステンレス製の内槽21とステンレス製の外槽22とを接合することから構成されたものであり、内槽21と外槽22との間には空間状の真空層23が形成されている。この真空層23は内槽21と外槽22との間を真空引きしてなるものであり、保温カップ20内の貯留水を外部に対して熱的に遮断する断熱層として機能する。
3.カップカバー30の説明
カップカバー30は合成樹脂を材料に成形された円形状をなすものであり、カップカバー30の下面には径小な円環状のプラグ31が一体形成されている。このプラグ31は保温カップ20の内周面に着脱可能に嵌合されるものであり、カップカバー30はプラグ31の外周面が保温カップ20の内周面に接触することに基いて保温カップ20に対して同心状に位置決めされる。
【0010】
カップカバー30の中央部には円形状の開口部32が形成されている。この開口部32はカップカバー30およびプラグ31を厚さ方向に貫通するものであり、カップカバー30には開口部32の外周部に位置して円環状の座部33が形成されている。この座部33はカップカバー30の上面に比べて低所に配置されたものであり、カップカバー30の上面に対して平行な水平面状をなしている。
4.伝熱器40の説明
伝熱器40はアルミニウムを材料に形成されたものであり、盃台41を有している。この盃台41はベース部42とヘッド部43を有するものであり、ベース部42はカップカバー30の開口部32内に着脱可能に挿入されている。このベース部42は底面が閉鎖された円筒状をなすものであり、カップカバー30の開口部32はベース部42によって塞がれている。このベース部42の上端部には円環状のフランジ部44が一体形成されている。このフランジ部44はカップカバー30の座部33によって支持されたものであり、ベース部42は座部33がフランジ部44を支持する支持力で開口部32内に保持され、フランジ部44の上面は保持状態でカップカバー30の上面と同一の水平面上に配置されている。
【0011】
ヘッド部43はベース部42内に配置されたものである。このヘッド部43はベース部42と同心の円柱状をなすものであり、ヘッド部43の上面はカップカバー30の上面およびフランジ部44の上面と同一の水平面上に配置されている。このヘッド部43の外周面とベース部42の内周面との間には盃挿入部45が形成されている。この盃挿入部45は盃10の脚部12が着脱可能に挿入される円環状の空間部を称するものであり、盃10の脚部12が盃挿入部45内に挿入された状態では盃10のうち伝熱部13の下面がヘッド部43の上面に接触し、脚部12の内周面および外周面がヘッド部43の外周面およびベース部42の内周面に接触する。
【0012】
盃台41のベース部42にはロッド部46が一体形成されている。このロッド部46は保温カップ20内の貯留水中に浸漬されるものであり、ベース部42およびヘッド部43の双方と同心な円柱状をなしている。このロッド部46は保温カップ20内の温水の熱をヘッド部43から盃10の脚部12および伝熱部13に伝達し、盃10内の酒の熱を脚部12および伝熱部13から保温カップ20内の冷水に伝達するものであり、伝熱器本体として機能する。
【0013】
次に酒燗冷装置の使用方法について説明する。
酒を温めて飲用するときには保温カップ20内に温水を投入し、カップカバー30のプラグ31を保温カップ20の内周面に嵌合する。次に伝熱器40のロッド部46をカップカバー30の開口部32を通して保温カップ20内に挿入し、伝熱器40のベース部42をカップカバー30の開口部32内に嵌合する。この状態で伝熱器40の盃挿入部45内に盃10の脚部12を挿入し、盃10の受皿部11内に酒を注ぐ。すると、保温カップ20内の温水から伝熱器40のヘッド部43を通して盃10の脚部12および伝熱部13に熱が伝達され、盃10内の酒が温水からの熱で温められるので、盃10を伝熱器40の盃挿入部45内から抜取る。
酒を冷やして飲用するときには保温カップ20内に氷水等の冷水を投入し、上述の手順で盃10の受皿部11内に酒を注ぐ。すると、盃10内の酒から伝熱器のヘッド部43およびロッド部46を通して保温カップ20内の氷水に熱が伝達され、盃10内の酒が冷やされるので、盃10を伝熱器40の盃挿入部45内から抜取る。
【0014】
上記実施例1によれば次の効果を奏する。
酒の飲用者が盃台41上の盃10内に酒を移すと、盃10と温水との間または盃10と冷水との間で熱の授受が行われることに基いて盃10内の酒が昇温または降温する。このため、飲用者が酒を1杯の盃10毎に加熱または冷却することができるので、酒を継続的に適温で飲用することが可能になる。
盃10の脚部12を盃台41の盃挿入部45内に挿入すると、盃10の脚部12が盃台41のベース部42およびヘッド部43の双方によって係止される。このため、盃10の盃台41に対する装着状態が安定するので、飲用者の手が保温カップ20等に当ったときの衝撃で盃10が盃台41から落下することが防止される。
盃台41のヘッド部43を盃10の底部の伝熱部13に接触させた。このため、盃10受皿部11の底部が外周部に比べて高温化または低温化されるので、飲用者が受皿部11の外周部を掴むときに熱い感触または冷たい感触を受け難くなる。
保温カップ20内に温水または冷水を投入した。このため、温水または冷水の温度変動が抑制されるので、酒を適温で飲用することが可能な使用時間が長くなる。
【0015】
上記実施例1においては、保温カップ20内に冷水を投入する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば冷水に換えてドライアイスを投入しても良い。
上記実施例1においては、保温カップ20内に温水を投入する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば常温水を投入しても良い。この構成の場合、保温カップ20に電気的ヒータを装着し、保温カップ20内の常温水を電気的ヒータによって加熱すると良い。
上記実施例1においては、伝熱器40のロッド部46を円柱状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えばロッド部46の内部をハニカム状に形成したり、ロッド部46の外周面を歯車状に形成したり、ロッド部46の外周面にシボ加工を施しても良い。この構成の場合、保温カップ20内の温水または冷水とロッド部46との接触面積が増えるので、盃10内の酒の加熱効率および冷却効率が高まる。
上記実施例1においては、伝熱器40をアルミニウムから形成したが、これに限定されるものではなく、要は錫等の熱伝導性が良好な金属から形成すれば良い。
上記実施例1においては、盃10を錫から形成したが、これに限定されるものではなく、要はアルミニウム等の熱伝導性が良好な金属から形成すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1を示す図(酒燗冷装置の全体を盃・保温カップ・カップカバー・伝熱器の分解状態で示す斜視図)
【図2】酒燗冷装置の全体を盃・保温カップ・カップカバー・伝熱器を組立状態で示す断面図
【符号の説明】
【0017】
10は盃、12は脚部、13は伝熱部、20は保温カップ(容器,保温容器)、40は伝熱器、41は盃台、42はベース部、43はヘッド部、45は盃挿入部を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換源が投入される容器と、
前記容器内の熱交換源と前記容器外の盃との間で熱の授受を行うことに基いて盃内の酒を昇温または降温させる伝熱器とを備え、
前記伝熱器には、前記盃が着脱可能に装着される盃台が設けられていることを特徴とする酒燗冷装置。
【請求項2】
前記盃台は、
前記盃に直接的に接触する伝熱用のヘッド部と、
前記ヘッド部を保持するベース部と、
前記ヘッド部と前記ベース部との間に設けられ、前記盃の脚部が着脱可能に挿入される空間状の盃挿入部と
を備えていることを特徴とする請求項1記載の酒燗冷装置。
【請求項3】
前記盃には、残りの部分に比べて厚肉な伝熱部が底部に位置して設けられ、
前記盃台のヘッド部は、前記伝熱部に直接的に接触することを特徴とする請求項2記載の酒燗冷装置。
【請求項4】
前記容器は、外部からエネルギーが印加されることなく前記熱交換源の温度変動を抑制する保温容器であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酒燗冷装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−136612(P2006−136612A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330385(P2004−330385)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(397006368)清水醸造株式会社 (1)
【Fターム(参考)】