説明

酵母マイクロカプセルの調製方法

【課題】非凍結乾燥の生菌全細胞において共生の(probiotic)酵母をマイクロカプセルの形態で調製する方法を開示する。
【解決手段】a)酵母細胞をその培養液から遠心分離または精密ろ過するステップと、
b)酵母細胞を水で洗浄し、滅菌水で再懸濁するステップと、
c)場合により、b)で得られた懸濁液に、ベントナイト、カオリン、シリカ、ミクロセルロース、レシチンナトリウム塩、および/または天然もしくは水素化(hydrogenated)植物油または動物油を添加するステップと、
d)c)で得られた混合物を、含水量が0.5と5%の間になるまで20℃と40℃の間の温度で低圧で乾燥するステップと、
e)賦形剤をこの乾燥物質に添加し、この混合物を直接圧縮成形するステップと、
f)e)で得られた錠剤を粒状化するステップと、
g)f)で得られた顆粒を溶融ワックスで被覆するステップと
を含む方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非凍結乾燥の生菌全細胞における酵母の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
小袋(sachet)および/またはカプセルに入れた凍結乾燥酵母を下痢の治療に利用することはよく認められており(Biocodexが出願したUS4643897および5665352、ならびにS.A.G.A.L.が出願したUS5639496)、同様に、低温殺菌および乾燥させ、散剤、カプセル、丸剤または錠剤の形態でセレンおよび/またはゲルマニウムおよび/またはクロムおよび/または化学療法薬と共に共生の(probiotic)製剤に供することがよく知られている(Viva America Marketing社が出願したUS6140107、6159466、6197295および6368643)。
【0003】
凍結乾燥は、酵母細胞に対して、その完全性を変化させるショックを与える。
【0004】
非常に低い温度(冷凍)および高真空は、細胞壁に損傷を与え、その結果、細胞の完全性に損傷を与え得る。またタンパク質および細胞酵素に損傷を与え、細胞の損傷および高い死滅率を招き得る。
【0005】
さらに、凍結乾燥物の再水和により死滅率が上昇し、使用される液体および温度によっては、細胞がさらに損傷を与えられ、弱化し、胃腸通過時の死滅率が高まり、生存率が下がる。
【特許文献1】US4643897明細書
【特許文献2】US5665352明細書
【特許文献3】US5639496明細書
【特許文献4】US6140107明細書
【特許文献5】US6159466明細書
【特許文献6】US6197295明細書
【特許文献7】US6368643明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の凍結乾燥に伴う不利な点を排除し、凍結乾燥のショックを受けない完全な酵母細胞を得ることを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による方法は、制御された温度および低真空における乾燥とその後のマイクロカプセル化を含み、調製液の含水量を経時的に変化させず、その結果、老化の進行、細胞劣化および汚染を遅らせ、胃酸に対する耐性がさらに増し、調製における経時的な安定性が増す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
既定の発酵技術により調製された酵母バイオマスを、遠心分離または精密ろ過で集め、予めろ過滅菌したわき水(spring water)で1回または2回洗浄し、滅菌水で再懸濁して、3〜6×1010CFU/g乾燥重に相当する、乾燥重20と30g/lの間の細胞濃度にした。こうして得られたクリームをそのまま乾燥することができ、または安定性を上昇させるために、ベントナイト、カオリン、シリカ、ミクロセルロースまたはレシチンナトリウム塩、ならびに/あるいは水素化(hydrogenated)ココナッツ油および/またはタラ肝油などの様々な油と混合することができる。
【0009】
内部の水収支に影響を与えず、細胞が完全であり、かつ完全に生存能力を有する(viable)ままであるように、20℃と40℃の間、さらに正確には25℃と35℃の間の温度で、真空下で乾燥プロセスを行わなければならない。経時的な安定性を維持するために、この乾燥物質の含水量は、0.1と5%の間、さらに正確には1と3%の間でなければならない。乾燥バイオマスを細かく砕き、得られた粉末を、マンニトール、ラクトース、サッカロース、マルトース、微結晶性セルロース、シリカ、ベントナイト、カオリン、レシチンナトリウム塩、ベヘン酸グリセロールなどの薬剤で汎用される賦形剤と適切に混合する。
【0010】
この混合物を打錠機(KILIAN)で圧縮成形し、直径15〜30mm、またはさらに正確には20〜25mmであって、平均硬度20〜40Kp、好ましくは25〜30Kpの錠剤を作製する。その後、メッシュ径100〜3000ミクロン、好ましくは400〜1500ミクロンのスクリーン付の振動造粒機(VIANI)を用いて、この錠剤を粒状化する。
【0011】
選び出した顆粒を、循環スクリューミキサー(SAGA)を用いて溶融ワックス(水素化(hydrogenated)植物性脂肪)で被覆し、常温で冷やし、平均3(±5%)×109CFU/g乾燥重を含む500〜1600ミクロンのマイクロカプセルを作製した。
【0012】
顆粒をカプセル化するための本発明のワックスは、好ましくは25℃と65℃の間の融点、4〜12のHLB(親水性親油性バランス)を有し、さらに正確には30℃と50℃の間の融点、5と10の間のHLB(親水性親油性バランス)を有する。有利には、モノ−、ジ−およびトリグリセリド(例えば、BIOGAPRESS VEGETAL 8M 297 A.TO GATTEFOSSE)、植物性の飽和脂肪酸のC8〜C18鎖よりなる半合成グリセリド(例えば、SUPPOCIRE AM,CM,DM−GATTEFOSSE’、OSIS 60/70/80 EULI)、植物性のモノステアレート(例えばGELEOL:モノステアリン酸グリセロール40〜55 GATTEFOSSE’)などの水素化(hydrogenated)油、脂肪酸のモノ−、ジ−およびトリグリセリドの混合物、ポリエチレングリコールのモノ−およびジエステル(例えば、CELLUCIRE 44/14およびCELLUCIRE 50/13 GATTEFOSSE’)、水素化(hydrogenated)パーム油(例えば、水素化(hydrogenated)植物性脂肪スプレー58〜60 I.G.O.R.)として定義される化合物などの群の中から、前記ワックスを選択する。
【実施例】
【0013】
実施例1
サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)DBVPG6763を、28℃の培養槽(Infors AG、Techfors、スイス)においてPim Van Hoekの培地で好気培養する。約18時間後、このバイオマス(乾燥重20〜22g/l)を遠心分離で集め、ろ過滅菌した水で2回洗浄し、滅菌水で再懸濁して4〜6×1010CFU/g乾燥重に相当する、乾燥重の約20%の濃度にする。ベントナイト5%w/vをこのクリームに添加する。こうして得られたクリームは、約25%w/vの濃度であり、約3〜5×1010CFU/g乾燥重を有するであろう。ベントナイトを添加したクリームを、5mbarの真空下の32℃(±2℃)で乾燥させ、細かい粉末に砕き、以下のマイクロカプセル化用の顆粒に添加する。
【0014】
重量%
・ サッカロミセスセレビシエDBVPG6763粉末 10
・ マンニトール 50
・ 微結晶性セルロース 10
・ コロイド状二酸化ケイ素 2
・ ステアリン酸マグネシウム 3
・ ベヘン酸グリセロール888 5
・ 水素化(hydrogenated)植物性脂肪(Biogapress Vegetal 8M297、GATTEFOSSE) 20

この粉末を、水素化(hydrogenated)植物性脂肪を除いたすべての成分と適切に混合する。この混合物を用いて、20〜25mm径の錠剤を作製し、その後、振動造粒機で粒状化し、300〜1500ミクロンの顆粒を作製する。この顆粒を、循環スクリューミキサーを用いて溶融植物性脂肪で被覆し、常温で冷やし、3.0(±5%)×109CFU/gを含む500〜1600ミクロンのマイクロカプセルを作製する。
【0015】
実施例2
実施例1において、マイクロカプセル化用の処方が以下の組成である。
【0016】
重量%
・ サッカロミセスセレビシエDBVPG6763粉末 10
・ ラクトース 45
・ 微結晶性セルロース 15
・ エアフロートタルク(Airfloat talc) 7
・ ステアリン酸マグネシウム 3
・ 水素化(hydrogenated)植物性脂肪 20

このマイクロカプセルは、2.9(±5%)×109CFU/gの含有量を有する。
【0017】
実施例3
実施例1において、酵母がサッカロミセスセレビシエGN/2220−NCYC2958である。

このマイクロカプセルは、3.1(±5%)×109CFU/gの含有量を有する。
【0018】
実施例4
実施例1において、酵母がPichia angusta GN/2219−NCYC2957である。

このマイクロカプセルは、2.6(±5%)×109CFU/gの含有量を有する。
【0019】
実施例5
実施例1において、マンニトール濃度が47%であり、ベントナイト3%を添加する。

このマイクロカプセルは、3.0(±5%)×109CFU/gの含有量を有する。
【0020】
実施例6
実施例2において、ラクトース濃度が43%であり、ベントナイト2%を添加する。

このマイクロカプセルは、2.9(±5%)×109CFU/gの含有量を有する。
【0021】
実施例7
実施例1において、マンニトール濃度が44%であり、第二リン酸カルシウム6%を添加する。

このマイクロカプセルは、3.1(±5%)×109CFU/gの含有量を有する。
【0022】
実施例8
実施例2において、ラクトース濃度が39%であり、第二リン酸カルシウム6%を添加する。

このマイクロカプセルは、3.0(±5%)×109CFU/gの含有量を有する。
【0023】
実施例9
実施例1に記載する方法に従い、水素化(hydrogenated)植物性脂肪を被覆する前に、サッカロミセスDBVPG6763の顆粒を、10〜15%のタラ肝油で湿らせる。3.2(±5%)×109CFU/gを含むマイクロカプセルが得られる。
【0024】
実施例10
実施例1に記載する通りに乾燥し、粉砕した細胞全体をタラ肝油(5−105)で湿らせ、実施例1および2に記載するようにマイクロカプセル化する。3.1(±5%)×109CFU/gを含むマイクロカプセルが得られる。
【0025】
実施例11
実施例1、2、5、6、7、8および9に記載される手順で、サッカロミセスセレビシエDBVPG6907クリームを得る。2.9〜3.4(±5%)×109CFU/gを含むマイクロカプセルが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非凍結乾燥の生菌全細胞において共生の(probiotic)酵母をマイクロカプセルの形態で調製する方法であって、
a)酵母細胞をその培養液から遠心分離または精密ろ過するステップと、
b)酵母細胞を水で洗浄し、滅菌水で再懸濁するステップと、
c)場合により、b)で得られた懸濁液に、ベントナイト、カオリン、シリカ、ミクロセルロース、レシチンナトリウム塩、および/または天然もしくは水素化(hydrogenated)植物油または動物油を添加するステップと、
d)c)で得られた混合物を、含水量が0.5と5%の間になるまで20℃と40℃の間の温度で低圧で乾燥するステップと、
e)賦形剤を前記乾燥物質に添加し、前記混合物を直接圧縮成形するステップと、
f)e)で得られた錠剤を粒状化するステップと、
g)f)で得られた顆粒を溶融ワックスで被覆するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記b)段階の細胞を滅菌水中に懸濁させて、3〜6×1010CFU/g乾燥重に相当する、乾燥重20と30g/lの間の細胞濃度にする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵母がサッカロミセス属である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記酵母がサッカロミセスセレビシエである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記c)段階の乾燥ステップを25℃と35℃の間で行う、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ベントナイトをc)段階で添加する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記圧縮成形賦形剤を、マンニトール、ラクトース、サッカロース、マルトース、微結晶性セルロース、シリカ、ベントナイト、カオリン、レシチンナトリウム塩およびベヘン酸グリセロールから選択する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記錠剤が直径15〜30mm、好ましくは20〜25mmであって、平均硬度20〜40Kp、好ましくは25〜30Kpである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記錠剤を、メッシュ径100〜3000ミクロン、好ましくは400〜1500ミクロンのスクリーン付の振動造粒機で粒状化する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記錠剤から得られる顆粒を、スクリューミキサーにより溶融ワックスで被覆し、500〜1600ミクロンのマイクロカプセルを作製する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ワックスが25℃と65℃の間の融点、4〜12のHLB(親水性親油性バランス)を有し、好ましくは30℃と50℃の間の融点、5と10の間のHLBを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ワックスを、水素化(hydrogenated)油、モノ−、ジ−およびトリグリセリド、植物性の飽和脂肪酸C8〜C18の半合成グリセリド、植物性のモノステアレート、ポリエチレングリコールのモノ−およびジエステル、ならびに水素化(hydrogenated)パーム油から選択する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から11に記載の方法から得られる酵母マイクロカプセル。
【請求項14】
請求項13に記載のマイクロカプセルを含む共生の(probiotic)製剤組成物。

【公開番号】特開2006−223306(P2006−223306A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38801(P2006−38801)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(506054660)ニョシス ソシエタ ペル アチオニ (3)
【氏名又は名称原語表記】GNOSIS S.P.A.
【Fターム(参考)】