説明

酸−酸緩衝系を含有する無水組成物

【課題】本発明は、膣の健全なpHを維持して膣の臭気を制御する無水組成物と方法とに関する。そのような組成物は、膣領域に施用して、膣のpHを低下させ、そのようなpHを一定期間に渡って維持するのに役立たせることができる。
【解決手段】酸−酸緩衝系を含有する組成物であって、前記組成物が無水物である、組成物。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、pHが、正常な健全な範囲3.8〜4.5を超えて上昇している膣の容態を処置するための組成物と方法とに関する。該組成物は、pHを上昇させる容態を処置するかもしくは改善するために、または、この上昇したpHにしばしば起因する臭気の存在を処置するために有用である場合がある。加えて、この組成物は更に、健全な膣環境を維持するために使用することができる。
【0002】
〔発明の背景〕
正常な膣のpHは、3.8から4.5に及ぶ。このpHでは、ラクトバシラス菌(lactobacilli)を包含する、健康な膣に生息する微生物叢(microbial flora)が繁殖する。更に、このpHでは、日和見細菌の成長(opportunistic bacterial growth)と膣壁への付着とが抑制される。ラクトバシラス菌が果たす一つの重要な作用は、膣の正常な微生物叢を調節することである。ラクトバシラス菌は、酸のpHを維持する乳酸を産生することと、カタラーゼ陰性菌(catalase-negative bacteria)を抑制する過酸化水素を産生することとの両方によって、この調節を成し遂げる。
【0003】
月経と、性交と、月経閉止で生じるようなエストロゲンの欠乏とを包含するある種の活性および状態は、膣のpHを上昇させることがある。上昇したpHは、細菌性膣症(bacterial vaginosis)の鑑別診断(differential diagnosis)の一部でもある。
【0004】
細菌性膣症を患っている女性では、通性ラクトバシラス菌(facultative lactobacilli)の罹患率が7倍減少し、また、それに対応して、他の諸細菌であってそれらの一部が病原となることがある該細菌の個体数は増加する。細菌性膣症の徴候のある女性では、ガーデネレラ・バギナリス(Gardenerella vaginalis)、モビルンカス(Mobiluncus)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)およびバクテロイデス(Bacteroides)が100〜1000倍増加する。膣症の最も一般的な症状は、かゆみ、黄色の分泌物(yellow discharge)、および過敏状態(irritation)の他に、臭気、とりわけ、アミン臭気である。細菌性膣症における特徴的なアミン臭気は、細菌性膣症を患っている女性の膣液における、嫌気性細菌の代謝による生成物によって作り出される。pHの上昇によって、アミンがタンパク質付着から揮発し、臭気が産生される。
【0005】
したがって、人は、膣のpHの増大が観察される場合はいつも、膣の「健全な(healthy)」pHを回復させることが望ましいことがある。このpH回復は、微生物叢の健全な淘汰(healthy selection)の維持を助けるか、または促進するように思えるだけでなく、該pH回復は、病原となる細菌の成長によって生じることのある臭気を制御するのに役立つことがある。
【0006】
米国特許第6,017,521号明細書[ロビンソン(Robinson)等]には、膣に投与して膣のpHを低下させることのできる水性組成物の中に水膨潤性の水不溶性カルボン酸ポリマーを用いることが記述されている。カルボポル(carbopols)およびカルボマー(carbomers)のようなカルボン酸ポリマーは、高分子の架橋されたアクリル酸ベースポリマーである。カルボポルは、医薬品用途および化粧品用途におけるゲル化剤および増粘剤として広く用いられてきた。これらのカルボポルポリマーの1%水性分散系のpHは一般に、約2.5〜約3の間である。これらのアクリル酸ポリマーの分子は、構造が高度にぐるぐる巻きとなっており(coiled)、そのため、それらポリマーの溶解度と増粘可能性(thickening capability)とが制限されている。ロビンソン等の米国特許明細書に記述されているポリマー、ポリカルボフィル(polycarbophils)は、水不溶性および水膨潤性となる傾向がある。その分子が、水に分散する時、水和してわずかにほどけ、粘度が増大する。該ポリマーのできるだけ高い性能を達成するためには、その分子を完全にほどくことが望ましい。該分子がほどけるにつれて、それの溶解度は増大する。一般に、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのような適切な塩基で、該ポリマーを中和することは、これらポリマーの分子をほどくために用いられる一つの方法であり、該ポリマーが存在する前記組成物を瞬時的に濃厚化する高速反応である。カルボポルポリマーは、中和することなく使用することができるものの、中和によって溶解性は促進される。
【0007】
しかし、ロビンソン等は、ポリマーが相対的に塩基性の環境にさらされたとき、ポリマーが中和されるのを可能にする無水組成物を提供していない。
【0008】
膣に単独で使用され施用される、酢酸、ソルビン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、等の有機酸は、そのpHを低下させるが、低pHを維持しない。なぜなら、それら有機酸は、低い緩衝容量(low buffering capacity)を有するからである。
【0009】
したがって、膣内のpHを低下させ、かつ、より低いpHを維持する無水組成物は望ましい。
【0010】
〔発明の概要〕
本発明は、「酸‐酸緩衝系(acid-acid buffer system)」を含有する無水組成物であって、それらの緩衝容量が生体外で高いことに起因して、膣を酸性pHに調整し維持するように意図されている該無水組成物に関する。膣が調整されるpHは、約2.5〜約5の間、より好ましくは4.7未満である。本発明の「酸‐酸緩衝系」は、酸性ポリマーと有機酸との両方を含有する。意外にも、無水配合物でのそのような酸性ポリマーと有機酸との組合せは、驚くほど高い緩衝容量を有する組成物を生じさせる。本明細書および特許請求の範囲で用いる用語「無水の(anhydrous)」は、水を約20重量%未満で、より好ましくは水を約10重量%未満で、最も好ましくは水を約5重量%未満で含有する組成物を意味する。
【0011】
本発明によると、本発明の組成物は、膣の水分および内壁(lining)と接触して、該組成物の諸成分が溶解し、約2.5〜約5の間の酸性pHを生じさせるものと思われる。結果として得られる酸‐酸ベース緩衝系は非常に大きい緩衝容量を有しており、該緩衝系は、希釈または他の変化によるpHの変化に耐えて、該緩衝系が膣円蓋(vaginal vault)に滞留する時間に渡って膣環境に影響を与えるものと思われる。この高い緩衝容量の緩衝系は、生体外で(in vitro)、該緩衝系の容積の24倍までのpH7の緩衝液を受け入れ、pHを依然として約5未満に維持することが観察された。このことによって、膣は、健全な膣の微生物叢(flora)を維持し、膣症を引き起こす微生物を減少させ、結果的に、膣の臭気を除去するか、または減少することが潜在的に可能となる筈である。
【0012】
本発明の組成物は、水溶性アクリル酸ポリマーを、それらポリマーの、中和されていない酸性状態で、単独で、または、αヒドロキシ酸等の有機酸(より特定的には、乳酸、酢酸、酒石酸、等)と組み合わさって、適切な濃度で含有し、高い緩衝容量を有する緩衝剤を提供するのが好ましい。このことによって、全体的により低いpHを提供するだけでなく、いずれの従来技術に見られる緩衝容量よりも遥かに高い緩衝容量をも有するユニークな酸‐酸緩衝剤が生み出される。
【0013】
イオン性官能基(例えば、カルボン酸および/またはアミン基を包含する)と、緩衝容量とを有する水溶性ポリマーは、本発明に係るポリマー緩衝剤としても使用することができる。好ましくは、アクリル酸基を有する水溶性ポリマーは、本発明の組成物において使用することができる。
【0014】
そのような水溶性アクリル酸ポリマーは、それらの中和されていない状態で、それらポリマーが、細菌性膣症を患っている女性の、より高い膣のpHと接触する時、中和されて、ほどかれ、そうされることによって、高粘度の生体付着性(bioadhesive)ゲルを作り出す。
【0015】
〔発明の詳細な記述〕
<発明の組成物>
本発明の組成物は、水溶性ポリアクリル酸ポリマーを、1種以上の有機酸と組み合さって含有している無水緩衝系に関する。本発明の組成物は、水溶性ポリアクリル酸ポリマーが単独でユニークな濃度で使用されて、高い緩衝容量を有する低pH緩衝液を作り出すことのできる無水緩衝系にも関する。これらのポリマーは、好ましくは少なくとも約2重量%、更に好ましくは少なくとも約3重量%の量で存在することが望ましい。
【0016】
本発明の方法は、膣のpHを低下させて維持するために、本発明の組成物を使用することに関する。これらの組成物は、膣中の酸性pHを調整して維持し、そうすることによって、細菌性膣症および膣臭気を引き起こす微生物の成長の抑制および制御が支持されるものと思われる。
【0017】
これらの組成物に関して開示した水溶性ポリアクリル酸ポリマーは、以前に知られており使用されてきたが、これらの用途は、増粘剤(consistency enhancing agents)としての水性組成物における使用に限定されてきた。同様に、これらの組成物において使用される有機酸は、酸性化剤またはpH調整剤として使用されてきた。また、我々の知る限りにおいて、これらの組成物は、無水組成物中では利用されてこなかった。
【0018】
本発明の緩衝性組成物(buffering compositions)は、膣用途として設計されている。本発明の水溶性ポリアクリル酸ポリマーは、中和されていない無水状態では、ほどかれていない状態であり、かつ、それらポリマーの生体付着可能性(bioadhesive potential)を最大容量で保持している。これらのポリマーが、膣症を患っている患者の膣の比較的より高いpHにさらされる場合、これらのポリマーは、ほどかれて、生体付着性となり、このようにして、
膣上皮に付着し、作用期間を長くし、そうすることによって、健全な膣の低いpHが長期間維持される。該ポリアクリル酸ポリマーは、水和せず、本発明の無水組成物を増粘させるので、それらポリマーは、水を含む用途(aqueous use)と比べて、実質的により高い濃度で使用することができる。これらのポリマーが、本発明の無水組成物に、実質的により高い濃度で提供される場合、これらのポリマーは、意外にも、高い粘度と生体付着力とを達成するものと思われる。
【0019】
本発明の組成物は、アリルショ糖(allyl sucrose)またはアリルペンタエリスリトール(allylpentaerythritol)と架橋されているポリアクリル酸ポリマーを含有することが好ましい。該ポリアクリル酸ポリマーは、アリルショ糖またはアリルペンタエリスリトールによって水溶性となる。そのようなポリマーの例は、オハイオ州クリーブランド(Cleveland)のノベオン(NOVEON),B.F.グッドリッチ・ケミカル社(NOVEON, B.F. Goodrich Chemical Corp.)から入手できるカルボポル(Carbopol)(登録商標)ポリマーである。これらのポリマーの水性分散系は、ポリマー濃度によって決まるが、約2.8〜3.2のpH範囲を有する。本発明の無水組成物において、該ポリアクリル酸ポリマーは、それらが膣の水分と接触するとき、単独で、または、有機酸と組み合さって、酸緩衝剤として作用する。本発明において最も好ましく使用される該ポリアクリル酸ポリマーの例は、「カルボポル(Carbopol)(登録商標)」なる商品名で販売されているものであり、カルボポル(Carbopol)(登録商標)974、カルボポル(Carbopol)(登録商標)934およびカルボポル(Carbopol)(登録商標)980を包含する。これらは全て、オハイオ州クリーブランドのノベオン,B.F.グッドリッチ・ケミカル社によって販売されている。該ポリアクリル酸ポリマーは、本発明の組成物の中に、該組成物の少なくとも約2重量%、より好ましくは少なくとも約3重量%の量で存在するのが好ましい。
【0020】
<緩衝容量>
当業者に知られている伝統的な標準緩衝剤は一般に、組成物内におけるあるpHを維持するために、塩基と組み合さった酸を含有する。このようにして開発された緩衝剤は一般に、pHの変化に耐え、かつ、該緩衝剤の当初のpHを維持する。これらの緩衝剤がpHの変化に耐えうる程度は、それら緩衝剤の「緩衝容量(buffering capacity)」と称される。本発明に係る無水酸−酸緩衝剤(anhydrous acid-acid buffers)は、それら緩衝剤が、既知の伝統的緩衝系に比べて実質的に大きい緩衝容量を有するという点において、意外にも、当業者に知られている標準緩衝剤と異なる。
【0021】
緩衝剤の緩衝容量を決定する伝統的方法は、1規定の水酸化ナトリウム溶液を用いて該緩衝剤を滴定することであり、試験試料5g当りのNaOHのmgが計算される。本発明の酸性組成物は、通常のヒト用途において、水酸化ナトリウムとの相互作用を受けないので、我々は、前記方法を部分修正し、模擬化されたヒト容態に基づいて緩衝容量を決定した。1N水酸化ナトリウム溶液に代えて、標準pH7緩衝液を滴定に使用した。被検物質の試料10gのpHを測定し、次いで、この試料に、pH7緩衝液を5mlの増加量で、連続的に混合しながら添加し、同時に、結果として生じたpHの変化を監視した。pHが約7に到達した時、滴定を中断した。
【0022】
<本発明に係る緩衝系>
本発明の組成物は、当該技術分野にはカルボポル(Carbopol)(登録商標)として知られている水溶性アクリル酸ポリマーを、単独で、または、当該技術分野に知られている有機酸(αヒドロキシ酸、より好ましくは、安息香酸、アルギン酸、ソルビン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エデト酸、グルコノデルタラクトン、酢酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、アスコルビン酸、酒石酸、等)と組み合さって、含有する酸−酸緩衝系に関する。本発明の組成物は、有機酸を、該組成物の少なくとも約2重量%、より好ましくは少なくとも約3重量%の量で含有するのが好ましい。
【0023】
本発明に係る典型的な緩衝系は、例として表1にまとめる。これらの緩衝系におけるポリアクリル酸ポリマーおよび有機酸の濃度は、所望のpHと緩衝容量とを配送するために、注文で特製することができる。所望のpHと緩衝容量とは、本明細書に開示される前記組成物における他の成分と、成分の組合せとによって決まる。
【0024】
【表1】

【0025】
本発明に係る無水緩衝剤は、それら自体の重量の何倍もの緩衝液(pH7)を受け入れることができ、しかも、その重量の24倍の緩衝液(pH7)を添加した後でさえ、好ましくは5未満であるように測定されることがある。図1に示されるように、対応する量の緩衝液(pH7)を添加した後の、レフレッシュ(RepHresh)膣ゲル(RepHreshは登録商標)のpHは、6.32であり、これは、1.70pH単位の差異である(図1、緩衝液C)。
【0026】
本発明の組成物は、膣用途および膣使用として意図されている。本発明の好ましい組成物は、膣用途に適した、無水ゲル、膜、膣坐剤または膣挿入物(vaginal inserts)、軟膏、ゼラチンカプセル(gelatin capsules)、ポリマー坐剤(polymeric suppositories)、膣洗浄剤、および他の投薬形態として製造することができる。
【0027】
本発明の組成物は、本発明に係る緩衝系と併せて追加成分を含有することができる。これらの成分の相対量は、意図される投薬形態または用途の、所望の性質と粘度とによって変わることがある。これらの成分には、多価アルコール等のポリオールが包含される。多価アルコールは、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール145およびポリエチレングリコール400を包含するが、それらに限定されない。本発明の緩衝性組成物は、意図されている投薬形態または用途の所望の性質および粘度によって変わる相対量に従って、ポリオールをも含有することができる。本発明の組成物は、少なくとも1種のポリオールを含有するのが好ましい。ポリオールは多価アルコールであるのが好ましく、少なくとも2種類の多価アルコールであるのがより好ましい。ポリエチレングリコール(以下、PEG)エーテルも使用することができる。それらポリエチレングリコールエーテルには、プロピレングリコールのポリエチレングリコールエーテル、ステアリン酸プロピレングリコール(propylene glycol stearate)、オレイン酸プロピレングリコール(propylene glycol oleate)およびヤシ油脂肪酸プロピレングリコール(propylene glycol cocoate)、等が包含される。そのようなポリエチレングリコールエーテルの特定的な例には、PEG−25ステアリン酸プロピレングリコール、PEG−55オレイン酸プロピレングリコール、等が包含される。本発明の組成物の多価アルコールの少なくとも1種は、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサレングリコール(hexalene glycol)、もしくは、様々な分子量のポリエチレングリコール、等、および/または、それらの組合せからなる群から選ばれるポリアルキレングリコールまたは他のものであるのが好ましい。本発明の組成物は、ポリエチレングリコールを含有するのがより好ましく、ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール400またはポリエチレングリコール300から選ばれるのが最も好ましい。様々な分子量のポリプロピレングリコールも使用することができる。ペグ化(PEGylation)反応によって得られるペプチド誘導体またはタンパク質誘導体のようなペグ化化合物(PEGylated compounds)も使用することができる。加えて、(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−(ポリエチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール−ラン−プロピレングリコール)[poly(ethylene glycol-ran-propylene glycol)]、等の、ポリエチレングリコールのブロック共重合体を使用することができる。これらのポリオールは、本発明の組成物において、溶媒、湿潤剤またはキャリヤとして有用である場合がある。
【0028】
前記組成物は、皮膚軟化薬および造影剤(enhancing agents)として作用する、ステアリルアルコール、セチルアルコールのような脂肪族アルコールを更に含有することができる。該組成物は、坐薬ベースとして、硬化植物油を更に含有することができる。該組成物は、増粘剤および造影剤として、セルロースポリマーを更に含有することができる。該セルロースポリマーは、ヒドロキシアルキルセルロースを包含するが、それに限定されない。該ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロプロピルメチルセルロースを包含するが、それらに限定されない。
【0029】
本発明の組成物には、酸化防止剤、キレート化剤、防腐剤、オイル(oils)、ワックス、界面活性剤、増粘剤、溶媒、保湿剤、可溶化剤、生体付着剤(bioadhesives)/粘膜付着剤(mucoadhesives)、等の他の成分が存在することがある。そのような成分の相対量は、該組成物の所望の性質と粘度とによって変わることがある。該組成物には、クリーム(creams)、軟膏、ろう質坐剤(waxy suppositories)、ゼラチンカプセル、無水ポリマー坐剤、等が包含される。本発明による無水緩衝系は、定期的に膣の中に施用して、膣のpHを維持することができる。それら緩衝系は、例えば、膣内を抗真菌剤または抗菌剤で処理する前、処理している間、または処理した後、それら抗真菌剤または抗菌剤への添加物として利用することもできる。それら緩衝系は、同一組成物中の抗真菌アゾールと併用投与することができるか、または、2つの異なる組成物もしくは別個の組成物として、ただし、一緒にもしくは実質的に同時に投与することができる。例えば、それら緩衝系は、抗真菌アゾール化合物(antifungal azole compound)を含有する組成物に直接組み入れることができる。この場合、該緩衝系と該アゾール化合物とは、施用の間、患者に同時に投与されるのが好ましい。それら緩衝系は、膣用坐剤(例えば、ろう質ベースもしくは脂肪酸ベースの抗真菌性膣用坐剤または抗菌性膣用坐剤)の外面、または、抗真菌薬を含有するゼラチンカプセル坐剤の外面に被覆することができる。それら緩衝系は、抗真菌性または抗菌性のゼラチンカプセルのゼラチン壁の中に組み入れることもできる。
【0030】
代替的に、前記の各々の抗真菌性または抗菌性の組成物と緩衝性組成物とは、逐次的に、かつ、ある時間間隔で別々に投与することができる。例えば、膣内用途のための組成物は、いかなる抗真菌アゾールをも含有せず、前記緩衝系のみを含有することができる。そのような緩衝性組成物は、膣内に抗真菌性または抗菌性の組成物が存在する時、膣の中に投与することができる。膣内へのまたは経口による先の抗真菌処置または抗菌処置に由来する、膣内に既に存在する活性な抗真菌性化合物または抗菌性化合物と、該緩衝系とが、意図された治療効果を高めるように作用して、細菌性膣症の発生を処置するかまたは防止するものと思われる。膣の組織および流体の中の該活性化合物は、膣内に投与された後、通常、数日間持続するので、該緩衝系は、活性成分を投与した後、好ましくは1時間未満〜約10日目で、より好ましくは約8時間〜約7日目で、最も好ましくは約12時間〜約5日目で投与することができる。
【0031】
本発明の組成物は、下記の諸実施例によって例示されるが、それら実施例に限定されるように見なされるべきではない。
【0032】
〔実施例1〜10〕
本発明の、実施例1、実施例2、実施例5、実施例7、実施例9および実施例10の組成物は、次のようにして製造することができる。先ず、カルボポルと酸とを混合し、プロピレングリコールとグリセリンとを混合する。次いで、ポリアクリル酸ポリマーと、有機酸と、(もし存在すれば)脂肪酸とを、同一容器に入れた前記混合物に添加する。次いで、その混合物を約35℃〜約45℃に加熱して該混合物を均質にする。次いで、該混合物を冷却する。
【0033】
本発明の、実施例3、実施例4、実施例6および実施例8の組成物(無水坐剤)は、次のようにして製造することができる。ポリエチレングリコールおよび/または硬化植物油のような坐剤ベースを、約60℃で加熱することによって溶融する。酸性ポリアクリル酸ポリマーおよび有機酸を、混合しながら添加する。混合は、30分間、または、その混合物が均質になるまで続ける。該混合物は、冷却して約40℃〜約45℃の温度に維持し、坐剤に形成する。好ましくは、それら組成物はまた、有機酸を該ポリアクリル酸ポリマーに添加し、その配合物を混合しながら、約35℃〜約50℃まで加熱することによっても製造することができる。次いで、この混合物に他の諸成分を添加し、配合物が均質になるまで、配合物全体を撹拌する。坐剤は、冷却して乾燥させる。
【0034】
<実施例1(無水ゲル)>
成分 %w/w
ポリエチレングリコール1000 89.30
カルボポル974P 4.00
乳酸 2.00
ステアリルアルコール 4.70
合計 100.00
【0035】
<実施例2(無水ゲル)>
成分 %w/w
ポリエチレングリコール400 63.00
カルボポル974P 5.00
乳酸 3.00
ステアリルアルコール 4.00
合計 100.00
【0036】
<実施例3(無水坐剤)>
成分 %w/w
ポリエチレングリコール1000 96.00
カルボポル974P 3.00
乳酸 1.00
合計 100.00
【0037】
<実施例4(無水坐剤)>
成分 %w/w
ポリエチレングリコール1000 47.00
カルボポル974P 4.00
乳酸 2.00
硬化植物油 47.00
合計 100.00
【0038】
<実施例5(無水ゲル)>
成分 %w/w
ポリエチレングリコール400 23.00
プロピレングリコール 69.00
カルボポル974P 2.00
乳酸 3.00
ステアリルアルコール 3.00
合計 100.00
【0039】
<実施例6(無水坐剤)>
成分 %w/w
ポリエチレングリコール1000 83.00
ポリエチレングリコール400 10.00
カルボポル974P 4.00
乳酸 3.00
合計 100.00
【0040】
<実施例7(無水ゲル)>
成分 %w/w
ポリエチレングリコール400 21.00
プロピレングリコール 66.00
カルボポル974P 5.00
乳酸 5.00
ステアリルアルコール 3.00
合計 100.00
【0041】
<実施例8(無水坐剤)>
成分 %w/w
ポリエチレングリコール1000 80.00
ポリエチレングリコール400 10.00
カルボポル974P 5.00
乳酸 5.00
合計 100.00
【0042】
<実施例9(無水ゲル)>
成分 %w/w
ポリエチレングリコール1000 79.60
ポリエチレングリコール400 10.00
カルボポル974P 5.00
乳酸 5.00
ヒドロキシプロピルセルロース 0.40
合計 100.00
【0043】
<実施例10(無水ゲル)>
成分 %w/w
ポリエチレングリコール1000 78.75
ポリエチレングリコール400 10.00
カルボポル974P 5.00
乳酸 5.00
ヒドロキシプロピルセルロース 1.25
合計 100.00
【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
〔実施例11: pHおよび緩衝容量〕
本発明の組成物CのpHおよび緩衝容量と、ニュージャージー州リビングストンのコロンビア・ラボラトリーズ社(Columbia Laboratories, Inc.)からの市販の製品である、レフレッシュ膣ゲル(Vaginal Gel)のpHおよび緩衝容量とを表2にまとめ、図1にグラフで例示する。表3に示されるデータによって例示されるように、pH7の緩衝液120mlを添加した後、本発明の組成物の緩衝剤のpHは、pH5未満、正確には4.92になり、一方、レフレッシュ膣ゲルのpHは、pH6より高く(6.32)なっている。
【0047】
本発明の代表的な組成物のpHおよび緩衝容量は、図2および図3に例示する。これらの図は、本発明の2種類の無水ゲル[実施例1(無水ゲル)および実施例2(無水ゲル)]と、本発明の2種類の膣用坐剤[実施例3(坐剤)および実施例4(坐剤)]とに対する典型的な緩衝容量のプロットである。このデータは更に表2にまとめる。pH7の緩衝液を前記製品の試料10gに、5mlの増分(increments)で添加し、次いで、結果として得られた組合せのpHを決定した。pHのデータは、レフレッシュ膣ゲルと比べて、pH7の緩衝液を連続的に添加している間中、遥かに低いpHが、本発明の組成物によって、安定して維持されていることを例示する。意外にも、本発明の組成物は、遥かに低いpHと、遥かに高い緩衝容量とを有している。実際のヒト用途において、本発明の組成物は、膣の健全なpHを維持することができるものと期待される。
【0048】
〔実施例12: 細菌性膣症および時間・殺傷試験〕
<抗菌活性に関する生体外試験>
細菌性膣症を引き起こす微生物、即ち、ガーデネレラ(Gardnerella)、モビルンカス(Mobilincus)およびペプトストレプ(Peptostrep)に対する、本発明の組成物の抗菌活性について試験を行うために、時間−殺傷(Time-Kill)の研究を行った。細菌性膣感染症(bacterial vaginal infections)(BV)を引き起こすものとして知られている一群の膣嫌気性菌(vaginal anaerobes)と、ラクトバシラス菌の菌株(strains)とを用い、これらの試験微生物を抑制し殺傷するのに必要な接触時間の長さを決定した。表3に、この試験の結果をまとめる。それらの結果により、本発明の組成物1および組成物4は、細菌性膣感染症を引き起こす細菌を0時間またはほとんど瞬時にして殺傷することが分かる。
【0049】
これらの結果により、本発明のゲルおよび坐剤は、細菌性膣感染症、即ちBVを処置するのに有用であることが分かる。それらのゲルおよび坐剤は、膣症を処置することによって、膣の臭気を最小限に抑えるか、または取り除くことができる。
【0050】
【表4】

【0051】
〔実施例13: 膣のpHと感知される膣臭気との制御を確認するための臨床研究〕
本発明の組成物が、ヒト被検者における膣のpHと感知される膣の臭気とを制御することができるか否か、または膣のpHと感知される膣の臭気とに影響を及ぼすか否かを確認するために、臨床研究を行った。該研究を完成させた125人の女性に、表5に示される生成物の1種を提供し、膣に施用した。組成物Aは、同時係属特許出願シリアル番号11/224,189号明細書(本明細書と同時に出願された、代理人整理番号PPC833CIP2)に開示される水性ゲルであり;組成物Bは、上記実施例1に示される無水ゲルであり;組成物Cは、上記実施例6に示される無水坐剤であり;組成物Dは、米国特許第6,017,521号明細書に記述され、ニュージャージー州リビングストンのコロンビア・ラボラトリーズ社から市販されているレフレッシュ膣ゲルの試料である。
【0052】
被検者の膣のpHについて、ベースライン時(at baseline)、ならびに被検物質を施用した後、約1時間、6時間、24時間、48時間、72時間および96時間で、pH表示棒(pH indicator stick)とpH電極プローブとを用いた膣の検査を行うことによって、試験を行った。前記女性等には更に、彼女等自身により感知される膣臭気のレベルを評価するように頼んだ。以下の表6および表7に、この試験の結果を示す。表6は、本発明の組成物Bおよび組成物Cが、膣のpHの評点(score)に関し、ベースラインと比べて有意な減少を達成したことを示している。表7は、本発明の組成物Bおよび組成物Cを使用することによって、自己感知臭気が、ベースラインと比べて有意に減少したことを示している。
【0053】
上記に開示される臨床研究より先に、同一製剤を使用し、かなり小さいグループで、もう一つの予備臨床研究を行った。それら製剤を使用することによって、膣のpHは瞬時に低下し、かつ、被検者の自己感知による膣臭気は減少した。図4に、経時的に測定されたpHのプロットを示す。
【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
〔実施の態様〕
(1)酸−酸緩衝系を含有する組成物において、
前記組成物が無水物である、組成物。
(2)実施態様1記載の組成物において、
前記酸−酸緩衝系が、水溶性の酸性ポリマーおよび、有機酸を含有する、組成物。
(3)実施態様2記載の組成物において、
前記酸性ポリマーがポリアクリル酸ポリマーである、組成物。
(4)実施態様3記載の組成物において、
前記ポリアクリル酸ポリマーが、アリルショ糖(allyl sucrose)またはアリルペンタエリスリトール(allylpentaerythritol)と架橋されている、組成物。
(5)実施態様4記載の組成物において、
前記ポリアクリル酸ポリマーがカルボマー(carbomer)である、組成物。
(6)実施態様2記載の組成物において、
前記有機酸がαヒドロキシ酸である、組成物。
(7)実施態様2記載の組成物において、
前記有機酸が、安息香酸、アルギン酸、ソルビン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エデト酸、グルコノデルタラクトン(gluconodeltalactone)、酢酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、アスコルビン酸および酒石酸から成る群から選ばれている、組成物。
(8)実施態様1記載の組成物において、
プロピレングリコールを更に含有する、組成物。
(9)実施態様1記載の組成物において、
ポリエチレングリコールを更に含有する、組成物。
(10)実施態様2記載の組成物において、
ポリエチレングリコールを更に含有する、組成物。
(11)実施態様2記載の組成物において、
プロピレングリコールを更に含有する、組成物。
(12)実施態様1記載の組成物において、
前記組成物は、膣坐薬の形態である、組成物。
(13)実施態様12記載の組成物において、
前記組成物は、硬化植物油を更に含有する、組成物。
(14)膣のpHを低下させる方法において、
実施態様1記載の組成物を、人の膣に投与することを含む、方法。
(15)膣のpHを低下させる方法において、
実施態様2記載の組成物を、人の膣に投与することを含む、方法。
(16)自己感知される膣臭気を減少させる方法において、
実施態様1記載の組成物を、人の膣に投与することを含む、方法。
(17)自己感知される膣臭気を減少させる方法において、
実施態様2記載の組成物を、人の膣に投与することを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】無水ベース(組成物A)に入っている4%カルボポル974Pと、無水ベース(組成物B)に入っている3%乳酸溶液と、レフレッシュ膣ゲルを有する無水ベースに入っている4%カルボポルと、レフレッシュ膣ゲルを有する無水ベースに入っている3%乳酸溶液との緩衝容量を比較するグラフである。
【図2】本発明の実施例1および実施例2の組成物の緩衝容量を、レフレッシュ膣ゲルと比較するグラフである。
【図3】本発明の実施例3および実施例4の組成物の緩衝容量を、レフレッシュ膣ゲルと比較するグラフである。
【図4】本発明の組成物と、同時係属特許出願シリアル番号11/224,189号明細書(本明細書と同時に出願された代理人整理番号PPC833CIP2)に開示される組成物と、レフレッシュ膣ゲルとの施用の、生体内の(in vivo)pHに及ぼす影響を比較するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸−酸緩衝系を含有する組成物において、
前記組成物が無水物である、組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、
前記酸−酸緩衝系が、水溶性の酸性ポリマーおよび有機酸を含有する、組成物。
【請求項3】
請求項2記載の組成物において、
前記酸性ポリマーがポリアクリル酸ポリマーである、組成物。
【請求項4】
請求項3記載の組成物において、
前記ポリアクリル酸ポリマーが、アリルショ糖(allyl sucrose)またはアリルペンタエリスリトール(allylpentaerythritol)と架橋されている、組成物。
【請求項5】
請求項4記載の組成物において、
前記ポリアクリル酸ポリマーがカルボマー(carbomer)である、組成物。
【請求項6】
請求項2記載の組成物において、
前記有機酸がαヒドロキシ酸である、組成物。
【請求項7】
請求項2記載の組成物において、
前記有機酸が、安息香酸、アルギン酸、ソルビン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エデト酸、グルコノデルタラクトン(gluconodeltalactone)、酢酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、アスコルビン酸および酒石酸から成る群から選ばれている、組成物。
【請求項8】
請求項1記載の組成物において、
プロピレングリコールを更に含有する、組成物。
【請求項9】
請求項1記載の組成物において、
ポリエチレングリコールを更に含有する、組成物。
【請求項10】
請求項2記載の組成物において、
ポリエチレングリコールを更に含有する、組成物。
【請求項11】
請求項2記載の組成物において、
プロピレングリコールを更に含有する、組成物。
【請求項12】
請求項1記載の組成物において、
前記組成物は、膣坐薬の形態である、組成物。
【請求項13】
請求項12記載の組成物において、
前記組成物は、硬化植物油を更に含有する、組成物。
【請求項14】
膣のpHを低下させる方法において、
請求項1記載の組成物を、人の膣に投与することを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−77150(P2007−77150A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−245623(P2006−245623)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(591252839)マクニール−ピーピーシー・インコーポレイテッド (69)
【氏名又は名称原語表記】MCNEIL−PPC,INCORPORATED
【Fターム(参考)】