説明

酸化スズセラミックスパッタリングターゲットおよびその製造方法

本発明は、酸化スズを主要構成要素として有し、1種類が酸化アンチモンである少なくとも2種類の別の酸化物0.5から15wt%を有するセラミック体を含むスパッタリングターゲットを記述する。ターゲットは、理論密度(TD)の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の密度を有し、50Ω・cm未満の電気抵抗率を有する。ターゲットは、平面または回転構造を有し、スパッタリング面積が少なくとも10cm、好ましくは少なくとも20cmである。このスパッタリングターゲットを製造するプロセスであって、酸化スズと少なくとも2種類の別の酸化物とを含むスラリーを用意するステップ、スラリーから未焼成体を成形し、未焼成体を乾燥させるステップ、未焼成体を1050から1250℃の温度で焼成し、それによって予備成形ターゲットを得るステップ、および予備成形ターゲットを粉砕してその最終寸法にするステップを含むプロセスも記述する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化スズ系セラミックスパッタリングターゲットのセラミック組成物、および酸化スズを含む焼結体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスパッタリングターゲットは、LCD、タッチパネル、エレクトロクロミック装置などの光電子用途の透明導電性酸化物(TCO)薄膜の製造、ならびに光起電力用途の薄膜に使用される。焼結導電性酸化スズ系セラミックス(またはこれらのセラミックスに基づくフィルム)は、高密度および低電気抵抗率(または高導電率)が必要である、熱電素子、電極、加熱素子および他の製品の調製に使用することもできる。
【0003】
半導体酸化スズセラミックスに基づくTCO薄膜の形成および適用は、適用条件によっては高価なインジウム系セラミックスを使用することができない現行の酸化インジウム系セラミックスパッタリングターゲットの製造コストのゆえに、十分な利点を有し得る。酸化スズ薄膜(および酸化スズセラミックス)を考えると、純粋な酸化スズは、高導電性材料ではなく、したがって導電率を高めるドーパントが必要である。最も有効なドーパントの一つとして、酸化アンチモンが酸化スズに使用される。というのは、酸化アンチモンは、セラミックスおよびフィルムの導電率をかなり増加させるからである。
【0004】
通常、光電子およびエネルギー変換用途の透明導電性薄膜コーティングは、スパッタリング技術、例えば、パルスレーザー蒸着、高周波スパッタリングおよび直流(DC)スパッタリングを使用して生成され、スパッタリングターゲットは、TCOフィルム源である。特に、DCマグネトロンスパッタリング技術は、最も再現性があり経済的である実行可能なプロセスである。DCマグネトロンスパッタリングプロセスを適用可能にするために、スパッタリングターゲットは、数十Ω・cm、場合によっては50〜80Ω・cm未満のやや低い電気抵抗率を有することができる。工業スパッタリング装置およびプロセスは、平面および回転構造(rotary configuration)のやや大きいサイズのスパッタリングターゲットを使用する。このスパッタリングターゲットは、例えば面積が10〜20cmを超える円盤、タイル状または別の形状、および例えば直径10cmを超える中空円柱からなることができ、ターゲットのセラミック体の厚さは少なくとも4mmである。
【0005】
透明導電性SnO−Sb薄膜は、Sn:Sb金属組成物を使用した反応性スパッタリングプロセスによって、またはSnO:Sbセラミックスパッタリングターゲットを使用して、スパッタリングによって得ることができる。反応性スパッタリングプロセスは、余り安定ではなく、高品質で再現性のあるTCOフィルムを得られないことが長年知られている。したがって、セラミック酸化物ターゲットの使用は、産業上の利用により好ましい。以前発表された実験室条件でセラミックターゲットを用いたスパッタリング試験結果は、RFマグネトロンスパッタリングプロセスを使用して得られた。というのは、このターゲットが高密度および高導電率ではなかったからである。DCマグネトロンスパッタリングプロセスを実現し、高品質TCOフィルムを得るために、セラミックスパッタリングターゲットは、高密度および低電気抵抗率、ならびに幾つかの他の性質(例えば、かなり高い熱伝導率)を有することができる。これらの性質はセラミックスパッタリングターゲットをスパッタリングに適したものとし、フィルム処理中のターゲットのクラッキングを最小限にする。特に、スパッタリングターゲットの密度は、例えば理論密度(TD)の90%以上、例えばTDの95%以上とすることができる。高密度のスパッタリングターゲットは、スパッタリング中のアークを抑制し、薄い膜均一性および厚さを与え、長時間の操作スパッタリングサイクルを保証する。その上、高密度セラミックスほど、通常は導電率が高い。しかし、一般に、SnOおよびSnO−Sbセラミックスの密度は余り高くなく、TDのわずか約60%以下である。このことは、焼結プロセス中の蒸発−凝縮、すなわち1200〜1250℃を超える温度におけるSnOの部分的分解およびSnOの揮発によって説明される。
【0006】
加熱プレス、加熱静水圧プレスまたは放電プラズマ焼結プロセスは、一般に、セラミック高密度化を促進することができる。しかし、酸化スズ系セラミックスに関しては、これらの方法は、酸化スズの揮発のために高密度化しない。出発粉末を徹底的に混合しても、不均一な高密度化が起こり得る。これらの方法は高価でもあり、十分な整備を必要とし、得られるターゲットサイズの点で重大な制限がある。
【0007】
SnO−Sbに基づき、焼結体を高密度にする技術を使用した、セラミック組成物を有することが望ましい。その低電気抵抗率はそれらをDCマグネトロンスパッタリングに適したものにするので、TCO薄膜用途に許容されるフィルム特性、例えば、膜抵抗率および透過率を与える。高密度および許容される電気的性質を得るのに可能な経路の一つは、焼結助剤の添加を使用することである。焼結助剤は、焼成中に液相を形成するので、焼結中に圧縮セラミック体の粒子引力を高め、これらのセラミック体中の細孔を満たす。SnOおよびSnO−Sbセラミック体、特にスパッタリングターゲットの密度を増加させる添加剤として様々な酸化物が試験された。
【0008】
例えば、特許文献1では、ある量のZnO、SiOおよびAlの添加がSnOおよびSnO−Sbセラミックスパッタリングターゲットの焼結性を改善すると言われている。しかし、後者は30wt%のSbを含む。これらのセラミックスは、約1500℃の焼成温度で空気雰囲気中でしかTDの90%を超える密度を有さない。この温度では、通常、SnOの部分的分解および揮発が起こり、したがって、セラミック均一性が余り高くなく、すなわちセラミックス表面はバルクや中間部に比べてSnOが少ない。この場合、セラミックス表面は中間部よりも軟質であると認められることがある。結果として、スパッタリングプロセスおよびフィルム形成は、余り安定ではなく一貫していない。
【0009】
ガラス溶融電気炉における電極製造のためのCuO、ZnO、Sbの添加剤を含む酸化スズ系セラミック組成物も特許文献2に提案されている。しかし、やや高密度の焼結体が少なくとも1400℃の焼成温度で空気雰囲気を使用してしか得られず、したがって、セラミック均一性は、SnOの部分的分解および揮発のために余り高くなく(すなわち、セラミックス表面は中間部に比べてSnOが少ない)、提案された(その上、不適合な形状を有する)電極はTCO薄膜スパッタリング目的に不向きである。
【0010】
特許文献3に開示されたように、Sbドーパントを含むSnOの低温高密度化は、組成物が十分な量のガラス質のガラスフリットを含む場合に得られた。使用されたガラスフリットは、酸化物SiO+B+BaO+Alの組合せを含む。しかし、かかる組成物は、伝導率が低く、多量の絶縁ガラス相が存在するために、スパッタリングターゲット用途には不向きである。TCOフィルムの製造に関しては、その結果、得られるフィルムの透過率および伝導率が低下するであろう。
【0011】
セラミックスの良好な焼結性を与える一組成物は、非特許文献1に開示されたように、SnO−Sb−CuO系に基づく。しかし、著者は、記載の技術を使用して、このセラミックスから小さい棒(断面数mmおよび長さ約40〜50mm)しか作製していない。さらに、このセラミックおよび技術は、スパッタリングターゲット製造用には設計されていない。というのは、それがより高い要件を有するからである。1200℃で十分な密度が得られると言われているが、これらのセラミックスの微細構造は均一でなく、小さいSnO粒(数ミクロン)と特により大きいSnO粒(15〜30μmから40〜50μmまで)が存在した。さらに、第二粒界相およびある程度の粒間空隙率が存在し、クラスターが出現する。第二相は、錫酸銅(SnO−CuO)、錫酸アンチモン(SnO−Sb)、アンチモン酸銅(Sb−CuO)などの化合物に基づく結晶相かもしれない。これらは、XRDおよび顕微鏡分析によって検出することができる。セラミックスのかかる不均一構造は、実際的な経験から知られるように、欠陥のない再現性のある高品質透明薄膜を得るのには不向きである。
【0012】
特許文献4では、SnO系スパッタリングターゲットは、10ppmを超え1wt%未満のSbと合計20wt%以下のTaおよび/またはNbとを含み、残りがSnOと不可避的不純物からなる、焼結体から形成される。
【0013】
TCOスパッタリングターゲット用途のセラミック組成物、特にSnO−Sb系組成物に関しては、これらのセラミックスは、フィルム透明度に悪影響を及ぼす光吸収を最小化するために高純度である必要がある。これはセラミック組成物中の遷移金属酸化物の存在に関係するので、スパッタリングターゲット用セラミック組成物には制限がある。
【0014】
工業上の必要性のゆえに、酸化スズ系セラミックスパッタリングターゲットは、高密度のセラミックス、低電気抵抗率および他の諸性質をもたらす組成物および技術を有することができ、工業用DCマグネトロンスパッタリングプロセスに適している。ターゲットは、やや大きいサイズを有することができ、例えば、例えば100〜300cm以上の面積の矩形、四角または円形、および厚さが例えば少なくとも4mmの研磨(切削)体であり(すなわち、粉砕前のセラミック体の厚さが少なくとも5.5〜6mmであり得る。)、金属支持体に結合するのに良好な平坦度を有することができる。金属支持管に結合した中空円柱状セラミック体からなる回転ターゲットも工業的に必要である。現在、(例えば、TDの90%を超える、場合によってはTDの95%を超える)高密度、低電気抵抗率(例えば、50Ω・cm未満)を有し、DCスパッタリングプロセスに適した、大寸法のSnOまたはSnO−Sb系組成物のスパッタリングターゲットはない。さらに、スパッタリング中の熱応力を緩和し、したがって低電気抵抗率および高透過率の薄膜が得られる、やや高い熱伝導率が有用である。フィルム均一性およびフィルム特性を改善するために、セラミックスパッタリングターゲットは、粒径の点で均一な微細構造を有し、主要相中に均一に分布した最小量の(更には、欠如した)第二相(上記結晶性錫塩など)を有することができる。
【0015】
本発明は、この段落に記載のように、工業的に必要とされるセラミックターゲット組成物を提供することを目的にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,026,672号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0016223号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0162381号明細書
【特許文献4】国際公開第2009/060901号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】D.Nisiro et al.J.Mater.Sci.,38,2003,2727−2742
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の態様から見て、本発明は、酸化スズを主要構成要素として有し、1種類が酸化アンチモンである少なくとも2種類の別の酸化物0.5から15wt%を有し、少なくとも1種類の別の酸化物がCuO、CoO、Bi、ZnO、Al、TiO、MnO、In、Ga、GeO、SiOおよびPからなる群から選択される、または少なくとも1種類の別の酸化物がZnOとNbの両方である、セラミック体を含むスパッタリングターゲットであって、前記ターゲットが理論密度(TD)の少なくとも90%の密度、一部の実施形態においては少なくとも95%の密度、および50Ω・cm未満の電気抵抗率を有し、前記ターゲットが、スパッタリング面積が少なくとも10cmである、一部の実施形態においては少なくとも20cmである、平面または回転構造を有する、スパッタリングターゲットを提供することができる。一実施形態においては、スパッタリング面積が少なくとも100cmの円盤またはタイルが提供される。回転構造は、直径が少なくとも10cmである中空円柱からなることができる。前記例示構造は、厚さが少なくとも4mmであるターゲットのセラミック体を有することができる。一実施形態においては、スパッタリングターゲットの熱伝導率は300℃で10〜20W/m−Kの範囲である。別の一実施形態においては、バルクのセラミック体の電気抵抗率(その比体積電気抵抗率)は10Ω・cm未満である(室温で測定)。1Ω・cm未満、更には0.2Ω・cm未満または0.1Ω・cm未満の電気抵抗率の値を得ることもできる。
【0019】
別の一実施形態においては、上述したように、ターゲットは、粒子からなる均一微細構造を有し、その60から90%は粒径5から25μmであり、65から75%は粒径7から15μmであり、10%未満の第二相が存在する。
【0020】
一実施形態においては、このターゲットは、酸化スズに加えて、少なくとも3種類の別の酸化物0.5から15wt%を含むことができ、そのうちの1種類は酸化アンチモンであり、2種類の別の酸化物は以下の群のいずれか一つである。
【0021】
−CuOおよびCoO、
−CuO、ZnOおよびAl
−CuO、ZnOおよびNb
−CuOおよびGa
−CuOおよびBi
【0022】
別の一実施形態においては、スパッタリングターゲットは、酸化スズおよび酸化アンチモンに加えて、上記少なくとも2種類の別の酸化物の群1.5から5wt%を含むことができる。
【0023】
かかる組成物は、酸化スズ95.5から97wt%、酸化アンチモン1から2.5wt%、およびCuO0.5から2wt%からなることができ、酸化スズ、酸化アンチモンおよびCuOの合計が100%である。この組成物の代替として、更なる実施形態は、(酸化スズ、酸化アンチモンおよびCuOに加えて)以下からなることができる。
【0024】
−CoO0.05から1wt%、酸化スズ、酸化アンチモン、CuOおよびCoOの合計が100%である、または
−ZnO0.1から1wt%およびAl0.001から0.003wt%、酸化スズ、酸化アンチモン、CuO、ZnOおよびAlの合計が100%である、または
−ZnO0.1から1wt%およびNb0.05から0.5wt%、酸化スズ、酸化アンチモン、CuO、ZnOおよびNbの合計が100%である、または
−Bi0.05から1wt%、酸化スズ、酸化アンチモン、CuOおよびBiの合計が100%である、または
−Ga0.05から1wt%、酸化スズ、酸化アンチモン、CuOおよびGaの合計が100%である。
【0025】
第2の態様から見て、本発明は、透明導電性コーティングを製造するための上記スパッタリングターゲットの使用を提供することができる。
【0026】
第3の態様から見て、本発明は、
−酸化スズと前記少なくとも2種類の別の酸化物とを含むスラリーを用意するステップ、
−前記スラリーから未焼成体を成形するステップ、
−前記未焼成体を加熱し、1050から1250℃の温度で焼成し、それによって予備成形ターゲットを得るステップ、および
−前記予備成形ターゲットを粉砕してその最終寸法にするステップ
を含む、上記スパッタリングターゲットを製造するプロセスを提供することができる。
【0027】
一実施形態においては、未焼成体は、焼成前に乾燥させることができる。
【0028】
別の一実施形態においては、スラリーを用意するステップは、
−ある量の酸化スズおよび前記少なくとも2種類の別の酸化物を用意するステップであって、前記量の比が前記セラミックスパッタリングターゲットの組成に対応するステップ、
−前記酸化スズの少なくとも一部と前記少なくとも2種類の別の酸化物の少なくとも一部とを含む中間体スラリーを用意するステップ、
−前記中間体スラリーを乾燥させてドライケーキを得るステップ、
−前記ケーキを粉砕して中間体粉末を得るステップ、
−前記中間体粉末を温度700から950℃で焼成するステップ、
−前記焼成された中間体粉末を解凝集するステップ、
−前記解凝集された粉末を前記量の酸化スズと前記少なくとも2種類の別の酸化物の残部と混合し、前記混合物を使用してスラリーを形成するステップ
を含むことができる。
【0029】
ターゲットが上述したようにCuOを含む場合、中間体スラリーは、前記量の前記酸化スズの一部とCuOの量のすべてからなることができる。
【0030】
更に別の一実施形態においては、スラリー中の酸化スズおよび少なくとも2種類の別の酸化物の平均粒径は0.5μm未満、一実施形態においては0.4μm未満である。下記のように、スラリーを作製する前に、またはスラリー形成中に所望の粒径を得る前に、この粒径を有する原材料を用意することができる。別の一実施形態においては、前記スラリー中の酸化スズおよび少なくとも2種類の別の酸化物の比表面積は少なくとも5.5m/gである。
【0031】
一例示プロセスにおいては、2種類以上のドーパントを用いた酸化スズ系セラミックスの製造は、すべての必要な成分を直接混合/粉砕することによって、またはすべてのCuOとすべてまたは一部の量のSnOを混合/粉砕することによって、調製することができるスラリー中での出発セラミック成分のコロイド調製、調製したスラリーの乾燥、それを粉末に移すこと、700〜950℃の範囲の粉末の焼成、それの解凝集、および得られたSnO−CuO化合物およびすべての残留成分からの最終スラリー調製を含み、調製したスラリーの平均粒径は0.4μm以下、比表面積は5.5m/g以上である。ターゲットの成形は、必要なターゲット形状に応じて、キャスティング、(一軸または静水圧)プレス、押し出し、射出成形などの利用可能な成形方法によって実施することができる。1050から1250℃の範囲の温度によるこれらの形状の焼成は、セラミックターゲット成分の最終密度がTDの少なくとも95%という結果になり、セラミック成分は、10cmを超える面積の平面および回転構造を有し、セラミック体の厚さが少なくとも4mmである。
【0032】
一実施形態においては、未焼成体の焼成は、炉内で1050から1250℃の温度で2から7時間の焼成(均熱とも呼ばれる)期間実施される。別の一実施形態においては、前記炉内で、焼成温度まで加熱中、および前記均熱期間の第1の部分中に、酸素流が存在し、そして、前記均熱期間の第2の部分中に、例えば窒素からなる還元ガス流が存在する。更に別の一実施形態においては、前記酸素と前記還元ガスの両方の前記流れが未焼成体1kg当たり0.25から2.5l/分である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
スパッタリングターゲット用例示酸化スズ系セラミックスは、2種類以上のドーパントを含み、そのうちの1種類は酸化アンチモンであり、これは導電率を増加させ、別の構成要素は、焼結性を促進し、導電率をさほど低下させず、増加(または電気抵抗率を減少)さえしない。主成分としての酸化スズSnOの含有量は、例えば85%を超える。ドーパントとしては、Sbに加えて、CuO、CoO、ZnO、Al、Nb、TiO、MnO、In、Ga、GeO、SiO、P、Bi、ZrO、Y、Sc、NiOなどの1種類以上の酸化物が挙げられる。ドーパントの全含有量は、(TDの90%を超える)高密度化、低電気抵抗率および高熱伝導率を与えるために、例えば0.5〜15wt%である。さらに、ドーパントの全含有量は、酸化アンチモンに加えて、一実施形態においては、例えばTDの95%を超える値に、密度をさらに改善し、DCスパッタリングプロセスに適切である電気的および熱的性質を有する目的で、1.5から5wt%である。Sbの含有量は、一実施形態においては、許容される電気的性質(すなわち、導電率)を得る目的で、1〜2.5wt%である。例示ドーパントの一つは、Sbのほかに、酸化銅(CuO)であるが、CoO、ZnO、Nb、TiO、Al、Biなどの別の例示ドーパントをCuOと併用することができる。これらの例示酸化物の組合せは、セラミックスの低焼成温度(1250℃未満)を与え、したがって焼成中のSnOの蒸発を防止または最小限にし、したがって高いセラミック焼結性、高密度化、および安定な諸性質を確保する。
【0034】
セラミックスの例示調製としては、ボールミル、磨砕機、別の装置が含まれる混合/粉砕媒体(例えば、セラミックまたはポリマー)などの種々の装置を使用したウェットコロイド処理が挙げられ、SnO、Sb、別のドーパントなどの出発成分ならびに水および分散剤を混合し、粉砕する。すべての固体成分(粉末)を液体媒体に添加し、一緒に粉砕することができ、または固体成分(粉末)の一部をまず添加し、一定時間粉砕することができ、次いで別の成分を添加する。
【0035】
調製した(スリップまたは懸濁液とも呼ばれる)スラリーの一例は、平均粒径が0.5μm以下であり、比表面積が少なくとも4.5m/gである。一実施形態においては、平均粒径は0.4μm以下であり、比表面積は少なくとも5.5m/gである。これは、類似した値の平均粒径および比表面積を有する酸化物原料を使用することによって、さらに、スラリー中の成分の高レベルの均質化を保証する強力な粉砕プロセスによって、実施される。スラリー中の固体の上記諸性質、特に粒径分布および比表面積、ならびにスラリー中の成分の高レベルの分散および均一性は、高レベルのセラミック高密度化および微細構造の均一性を与え、したがって第二相の形成を最小限にし、その後、セラミックスを低電気抵抗率化することができる。スリップがより粗い粒子、例えば、0.4μmを超える平均粒径および/または4.5m/g未満の比表面積を有する場合、セラミックスの焼結性は、粒子の圧縮不足のために不十分となり得る。
【0036】
成分の混合/粉砕は、すべての必要な成分を液相(分散剤を含む水)と一緒に混合/粉砕装置に添加して実施することができる。調製したスラリーの諸性質を測定し、次いでそれをセラミック体の成形に使用する。一実施形態においては、成分の混合/粉砕は、必要なSnO量のすべてまたはほんの一部と一緒にCuOのすべて(および幾つかの別のドーパント)を含む中間体スラリーの調製、調製した懸濁液の乾燥、乾燥ケーキを粉砕して粉末を得ることまたは噴霧乾燥プロセスもしくは別の技術を使用すること、この粉末を炉内で700から950℃の温度で焼成すること、焼成粉末の解凝集および次いでそれを最終スラリー調製に使用することによって実施することができる。その場合、この調製したSnO−CuO系化合物(いわゆる「グロッグ」)と一緒に別の成分を最終スラリー処理用混合/粉砕装置に添加する。最後に調製したスラリーの諸性質を再度測定し、次いでそれを未焼成体の成形に使用する。
【0037】
酸化スズ系セラミックスパッタリングターゲットの未焼成体の成形は、必要な形状に応じたすべての利用可能な方法、利用可能な装置を使用し、さらに必要な量に応じて、実施することができる。プラスターまたはポリマー鋳型へのスリップキャスティング、(一軸または静水圧)プレス、圧力ろ過、押し出し、テープ成形、射出成形、および他の方法を利用することができる。成形方法に応じて、特別な結合剤システムを利用することができる。セラミックターゲット成分は、平面または回転構造、例えば、円盤、タイル、または楕円、中空円柱などの他の形状とすることができる。
【0038】
酸化スズ系スパッタリングターゲットの未焼成体は、例えば、炉内で1050〜1250℃の温度範囲で、一部の実施形態においては特別なガス流焼成条件を使用して、焼成される。焼成温度が1050℃未満の場合、焼結は完結せず、得られる密度は低い。焼成温度が1250℃を超えると、酸化スズは、その部分的分解によって蒸発し始める。その結果、スパッタリングターゲットは粗い表面を有する。一方、本発明によって提供されるターゲットは、良好で、輝いており、なめらかな表面を有する。さらに、焼成温度が1250℃を超えると、錫酸銅、錫酸アンチモンなどの過剰量の「第二」相が生成し、セラミックスの電気抵抗率が増加することがある。焼成に使用される均熱時間は、例えば、2から7時間である。均熱時間が短いほど密度は低くなり得る。7時間を超える均熱時間は、電気抵抗率の増加および余分な粒成長を促進するおそれがある。焼成は、例えば、酸素流下で実施され、酸素レベルは0.25から2.5l/分/kg焼結性生成物に設定される。酸素流の使用は、特に温度約1150から1250℃における、酸化スズの部分的分解を抑制する。酸素レベルが0.25l/分/kg生成物未満の場合、密度が低下し得るが、(例えば、2.5l/分/kg生成物を超える)高過ぎる酸素レベルの使用は、更なる高密度化を促進せず、セラミックスの電気抵抗率も同じレベルのままであり、またはごくわずか高くなる。
【0039】
焼成中、特に均熱の第2の部分においておよび冷却中に還元ガス状態を導入すると、導電率を高める結晶性格子欠陥の発生のために、セラミックスの電気抵抗率のかなりの低下が促進される。還元ガス、特に窒素が均熱の初期に導入されると、得られる密度は不十分であるが、このガスが均熱後に導入されると、結晶格子欠陥の不足のために電気抵抗率はやや高い。窒素含有量は、0.25〜2.5l/分/kg生成物の範囲とすることができる。この流量が0.25l/分/kg生成物未満であると、得られる抵抗率はまだ高いが、窒素流が2.5l/分/kg生成物を超えて増加しても、電気抵抗率はそれ以上低下しない。窒素ガスの導入は、その流量が好ましい範囲にある場合、セラミックスの密度に影響を及ぼさない。
【0040】
所望の密度が得られたときには、焼成された酸化スズ系セラミックスパッタリングターゲットを研磨して、低粗度ならびに支持材料との結合およびスパッタリングに適切な表面品質が得られる。セラミックターゲット成分は、上述したように、平面または回転構造を有することができる。ターゲット成分の面積は、10cmより大きくすることができ、例えば、直径100〜200mm以上の円盤、各辺が100〜200mm以上のタイル(または楕円などの別の形状)、直径100〜150mm以上の中空円柱とすることができ、厚さは4〜10mm以上である。
【0041】
提案した組成物および技術的特徴は、例えば、密度がTDの少なくとも90%の、さらにはTDの95%を超える、酸化スズ系セラミックスパッタリングターゲットの形成を可能にする。セラミックスは低電気抵抗率を有することができ、(室温で)10Ω・cm未満の値でさえあり、DCマグネトロンスパッタリングに極めて適切である。セラミックスは、スパッタリングプロセスに大いに許容される(300℃で測定して)10〜20W/m−Kの範囲の熱伝導率も有することができる。チャンバー中の材料から熱を良好に放出することができるので、セラミックターゲットの熱応力を最小限にする。さらに、提案した組成物および技術は、均一な微細構造をもたらすことができる。すなわちこの微細構造は、大部分が5から25μm(少なくとも60から90%)のサイズを有する小さいスズ石(酸化スズ)粒からなり、粒の大多数(約65〜75%)は7〜15μmのサイズを有し、40〜50μm、さらにはそれ以上の大きい細長い粒は存在しない。特定の粒径を有する粒の粒径および含有量は、近似的に決定することができるにすぎないと認識されるが、微視的試験によって微細構造の全般的な均一性を評価することはできる。例示ターゲットの場合、(とりわけ)錫酸銅、錫酸アンチモンなどの第二結晶相の存在は、XRDや微視的分析によって検出されず、またはその時々の存在はわずかであり得る(5〜10%未満)。
【0042】
研磨されたスパッタリングターゲットは、支持材料(プレートまたは管)に結合され、公知の確立された薄膜調製条件下でスパッタリングされる。これらの条件は、スパッタリング装置設計、ターゲット設計、および幾つかの他の特徴に依存する。本発明によるターゲットを使用して得られるTCOフィルムの品質(形態、フィルム抵抗率および透明度)は、工業要件に従って許容される。セラミックスパッタリングターゲットは、高レベルのフィルム透明度を得るために遷移金属酸化物量を最小限にしなければならないが、驚くべきことに、少量の遷移金属酸化物を含む提案したセラミックスは、高いセラミック均一性、高密度、およびスズ石結晶相中に均一に分布する少量のガラス相のゆえに、極めて透明な薄膜を与える。TCOフィルムの諸性質は、スパッタリングおよびフィルム処理条件(例えば、スパッタリング粉末、ガス圧力、酸素/アルゴンレベル、基質温度、アニーリングなど)に依存し、これらの条件を最適化することによって高レベルのフィルム性質が得られる。スパッタリングプロセスおよび条件は、特に限定しなくてもよいが、特に、フィルム透明度は、厚さ100〜150nmのフィルムでは可視域で最高85〜90%、さらにはそれ以上であり、これは光電子および太陽電池用途には極めて良好である。
【0043】
本発明の様々な実施形態を以下の実施例によって記述する。しかし、本発明は、記述した例示的実施形態に限定されず、これらの実施例は単なる説明のためにすぎない。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
酸化スズセラミックスパッタリングターゲットを以下の組成に基づいて製造する。
【0045】
SnO 96wt%
Sb 2wt%
CuO 2wt%
すべて粉末状の出発成分を磨砕機で水とある量の分散剤(アミノアルコールおよびアンモニアポリアクリラート)と一緒に混合し、粉砕した。得られたスリップは、平均粒径が0.37μmであり、比表面積が6.5m/gである。有機結合剤(ポリアクリル乳濁液)を添加し、スリップ均質化後、平坦なターゲットをプラスター鋳型にスリップキャスティングして成形する。90℃で乾燥後、キャスト体を電気炉でジルコニア耐火セッターを使用して焼成する。焼成は、室温から650℃まで加熱速度25℃/時、次いで950から1050℃まで加熱速度50℃/時、次いで1050から1200℃まで加熱速度25℃/時で、最終温度において酸素流1l/分/kg生成物を使用して2.5時間均熱して実施される。酸素流条件下で2.5時間の均熱後、酸素流を1l/分/kg生成物の流量の窒素に切り換え、均熱をさらに2.5時間続け、次いで80℃/時の速度で3時間空気中で冷却し、その後、冷却自体を継続し、炉の動力を遮断する。得られた平坦なセラミック体の密度は理論密度TDの99%である。
【0046】
焼結されたセラミックスは、均一な微結晶構造を有し、スズ石を主要な結晶相とし、他の結晶相(第二相)はXRDで検出されない。セラミックスの粒径は、約85%が5〜25μmの範囲であり、粒の大多数(約70%)はサイズが7〜15μmである。タイルをダイアモンド砥石工具を使用して、寸法200×100×8mmに研磨する。セラミックスの電気抵抗率は室温で測定して2Ω・cmであり、熱伝導率は300℃で測定して14W/m−Kである。電気的性質と熱的性質の両方は、DCマグネトロンスパッタリングに十分適切である。得られた薄膜は、光電子用途に許容される電気抵抗率および透過率を有する。
【0047】
(実施例2)
酸化スズセラミックスパッタリングターゲットを実施例1と同じ組成に基づいて製造する。すべての必要なCuOおよび5wt%〜95wt%の比で取られたSnO粉末の一部を磨砕機で水および分散剤と一緒に混合し、粉砕して、平均粒径0.35μmおよび比表面積6.7m/gにする。次いで、調製した(中間体)スラリーを乾燥させ、乾燥ケーキを崩壊させ、粉末を電気炉内で加熱速度100℃/時で温度900℃で1時間均熱して焼成する。得られた化合物を崩壊させ、他の成分(例えば、SnOおよびSb)と一緒に水および分散剤を使用して磨砕機での最終スリップ調製に使用する。スリップの平均粒径は0.38μmであり、スリップの比表面積は6.5m/gであり、スリップを水切りし、一時的な結合剤を添加し、プラスター鋳型にスリップキャスティングしてタイルを作製する。ガス流パラメータ以外は実施例1と同じ条件を使用して乾燥および焼成を実施する。酸素および窒素流は、1.5l/分/kg生成物である。得られた平坦なセラミック体の密度はTDの98.5%である。焼結されたセラミックスは均一な微結晶構造を有し、スズ石を主要な結晶相とし、他の相は存在しない。セラミックスの粒径は、約90%が5〜25μmの範囲であり、粒の大多数(75%)はサイズが7〜15μmである。タイルをダイアモンド砥石工具を使用して、寸法200×100×8mmに研磨する。セラミックスの電気抵抗率は室温で測定して3Ω・cmであり、熱伝導率は300℃で測定して13W/m−Kである。電気的性質と熱的性質の両方は、DCマグネトロンスパッタリングに十分適切である。得られた薄膜は、光電子用途に許容される電気抵抗率および透過率を有する。
【0048】
(実施例3)
酸化スズセラミックスパッタリングターゲットを以下の組成に基づいて製造する。
【0049】
SnO 96wt%
Sb 2wt%
CuO 1.5wt%
CoO 0.5wt%
出発成分を磨砕機で水およびある量の分散剤と一緒に混合し、粉砕する。スリップは、平均粒径が0.39μmであり、比表面積が6.2m/gである。ある量の結合成分(ポリアクリル乳濁液とポリエチレングリコールの組合せ)および潤滑成分(オイルと溶媒、例えばケロシンとの組合せ)を使用したプレス粉末調製にスリップを使用する。80MPaの特定の圧力を使用した一軸プレスによって平坦なタイルを作製する。タイルの焼成を、焼成温度および均熱時間以外は実施例1と同じ条件下で実施する。焼成温度は1220℃であり、均熱時間は酸素中で3時間および窒素中で3時間である。窒素条件の冷却を2時間実施し、次いで冷却を空気中で継続する。得られた平坦なセラミック体の密度はTDの98.5%である。焼結されたセラミックスは均一な微結晶構造を有し、スズ石を主要な結晶相とする。セラミックスの粒径は、約88%が5〜25μmの範囲であり、粒の大多数(70%)はサイズが7〜15μmである。タイルをダイアモンド砥石工具を使用して、寸法200×100×10mmに研磨する。セラミックスの電気抵抗率は室温で測定して4.5Ω・cmであり、熱伝導率は300℃で測定して11W/m−Kである。電気的性質と熱的性質の両方は、DCマグネトロンスパッタリングに十分適切である。得られた薄膜は、光電子用途に許容される電気抵抗率および透過率を有する。
【0050】
(実施例4)
酸化スズセラミックスパッタリングターゲットを以下の組成に基づいて製造する。
【0051】
SnO 95.5wt%
Sb 2wt%
CuO 1.5wt%
ZnO 0.6wt%
Nb 0.4wt%
出発成分をボールミルで水およびある量の分散剤と一緒に混合し、粉砕する。スリップは、平均粒径が0.36μmであり、比表面積が7.0m/gである。ある量の結合および潤滑成分を使用したプレス粉末調製にスリップを使用する。500MPaの特定の圧力を使用した冷静水圧プレスによって中空円柱体および平坦な棒を作製する。セラミック体の焼成は、1200℃の焼成温度を除いて実施例3と同じ条件を使用して実施され、均熱時間は酸素中で3時間および窒素中で3時間(実施例3と同じ)である。得られたセラミック体の密度はTDの97.5%である。焼結されたセラミックスは均一な微結晶構造を有し、スズ石を主要な結晶相とし、XRD分析で見ることができるように、第二相は存在しない。セラミックスの粒径は、大部分(78%)が5〜25μmの範囲であり、粒の大多数(66%)はサイズが7〜15μmである。円柱は、ダイアモンド砥石工具を使用して、寸法147mmOD(外径)×134mmID(内径)×150mm長さに研磨され、タイルは、やはりダイアモンド砥石工具を使用して、寸法200×150×10mmに研磨される。セラミックス(試料は便宜上タイルから切削される)の電気抵抗率は室温で測定して7Ω・cmであり、熱伝導率は300℃で測定して12W/m−Kである。電気的性質と熱的性質の両方は、DCマグネトロンスパッタリングに十分適切である。得られた薄膜は、光電子用途に許容される電気抵抗率および透過率を有する。
【0052】
(実施例5)
酸化スズセラミックスパッタリングターゲットを実施例2と同じ組成および処理に基づいて、CuOとSnO粉末の比4wt%〜96wt%のみを使用して製造する。調製した(中間体)スラリーの平均粒径および比表面積は、それぞれ0.32μmおよび6.8m/gである。実施例2と同じ方法によって得られた粉末を、実施例2と同じ手順を使用して焼成するが、この焼成を800℃で実施する。結果として生ずる処理は、焼成均熱条件を除いて実施例2に従う。酸素中での均熱を2時間実施するが、窒素中(1l/分/kg粉末)での均熱を1.75時間実施し、次いで窒素を空気に切り換え、冷却を処理する。得られたセラミック体(タイル)の密度はTDの99%である。焼結されたセラミックスは均一な微結晶構造を有し、スズ石を主要な結晶相とし、他の相は存在しない(XRD分析によって検出されない)。セラミックスの粒径は、約88%が5〜25μmの範囲であり、粒の大多数(75%)はサイズが7〜15μmである。セラミックスの電気抵抗率は室温で測定して0.05Ω・cmであり、熱伝導率は300℃で測定して15W/m−Kである。電気的性質と熱的性質の両方は、DCマグネトロンスパッタリングに十分適切である。得られた薄膜は、光電子用途に許容される電気抵抗率および透過率を有する。
【0053】
(実施例6)
酸化スズセラミックスパッタリングターゲットを以下の組成に基づいて製造する。
【0054】
SnO 96wt%
Sb 2wt%
CuO 1.5wt%
Bi 0.5wt%
出発成分を実施例1に記載したように混合し、粉砕し、CuOとBiのみを前記液体成分中で20分間まず混合し、粉砕し、次いでその他の固体成分を添加する。得られたスリップは、平均粒径が0.35μmであり、比表面積が6.9m/gである。有機結合剤(ポリアクリル乳濁液)を添加し、スリップ均質化後、平坦なターゲットをプラスター鋳型にスリップキャスティングして成形する。次いで、処理(乾燥および焼成)を実施例5のように実施する。得られたセラミック体の密度はTDの99.3%である。焼結されたセラミックスは均一な微結晶構造を有し、スズ石を主要な結晶相とし、XRD分析で見ることができるように、第二相は存在しない。セラミックスの粒径は、大部分(80%)が5〜25μmの範囲であり、粒の大多数(70%)はサイズが7〜15μmである。平坦なタイルをダイアモンド砥石工具を使用して、寸法200×100×8mmに研磨する。セラミックス(試料は便宜上タイルから切削される)の電気抵抗率は室温で測定して0.035Ω・cmであり、熱伝導率は300℃で測定して15W/m−Kである。電気的性質と熱的性質の両方は、DCマグネトロンスパッタリングに十分適切である。得られた薄膜は、光電子用途に許容される電気抵抗率および透過率を有する。
【0055】
(実施例7)
酸化スズセラミックスパッタリングターゲットを実施例6と同じ組成および処理に基づいて製造し、ターゲットの成形のみ圧力ろ過によって実施し、スラリーをポリマー膜を通して脱水する。得られたセラミックターゲット(研磨後の直径150mmおよび厚さ7mmの円盤)の密度はTDの99.2%であり、電気抵抗率は室温で測定して0.04Ω・cmであり、熱伝導率は300℃で測定して14W/m−Kである。電気的性質と熱的性質の両方は、DCマグネトロンスパッタリングに十分適切である。得られた薄膜は、光電子用途に許容される電気抵抗率および透過率を有する。
【0056】
(比較例1)
酸化スズセラミックスパッタリングターゲットを実施例1と同じ組成に基づいて製造する。出発成分を同じ手順を使用して混合し、粉砕し、スリップのみが平均粒径0.48μmおよび比表面積4.0m/gである。成形および焼成プロセスも実施例1と同様に実施する(焼成温度は1175℃である)。しかし、焼成密度はTDのわずか88%にすぎない。セラミックスの電気抵抗率は65Ω・cmである。セラミックスの熱伝導率は6W/m−Kであり、この値は、スパッタリング中の適切な温度移動には不十分であるおそれがあり、ターゲット中にクラックが発生する可能性がある。
【0057】
(比較例2)
酸化スズセラミックスパッタリングターゲットを実施例1と同じ組成に基づいて製造する。出発成分を同じ手順を使用して混合し、粉砕し、スリップ平均粒径0.38μmおよび比表面積6.5m/gを得る。成形および焼成プロセスも実施例1と同様に実施するが、窒素流を導入しない(完全な焼成はわずかな酸化条件で実施される)。焼成密度はTDの99.5%である。しかし、セラミックスの電気抵抗率は150〜200Ω・cmであり、DCマグネトロンスパッタリングにはやや高い。
【0058】
(比較例3)
酸化スズセラミックスパッタリングターゲットを実施例3と同じ組成に基づいて製造する。出発成分を同じ手順を使用して混合し、粉砕し、成形プロセスおよびパラメータも実施例3と同じである。焼成プロセスを1300℃で実施するが、ガス条件は実施例3と同じであった。しかし、焼成密度はTDのわずか85%にすぎず、得られた生成物は変形し、小さいクラックを有する。セラミックスは、余り均一な微細構造を有さず、20から40μmのサイズの大きく細長い粒が容認できないほど存在する(約25〜35%)。セラミックスの電気抵抗率は1350〜1500Ω・cmであり、これは高過ぎてDCマグネトロンスパッタリングに不向きである。
【0059】
本発明の特定の実施形態および/または詳細を示し、記述して、本発明の原理の適用を説明したが、本発明は、特許請求の範囲および項においてより十分に記述されるように、または(任意およびすべての等価物を含めて)当業者に別の状況では公知のように、かかる原理から逸脱することなく実施することができると理解される。
【0060】
本発明は、あるいは、以下の項によって記述することができる。
【0061】
1.セラミック体を含むスパッタリングターゲットであって、前記セラミック体が、酸化スズと少なくとも2種類の別の酸化物0.5から15wt%とを含み、前記少なくとも2種類の別の酸化物の一つが酸化アンチモンであり、前記少なくとも2種類の別の酸化物の残りがCuO、CoO、Bi、ZnO、Al、TiO、MnO、In、Ga、GeO、SiO、P、Nbおよびその組合せからなる群から選択され、または前記少なくとも2種類の別の酸化物の残りがZnOおよびNbであり、前記ターゲットが理論密度(TD)の少なくとも90%の密度および50Ω・cm未満の電気抵抗率を有し、前記ターゲットが、スパッタリング面積が少なくとも10cmである平面または回転構造を有する、スパッタリングターゲット。
【0062】
2.前記ターゲットが理論密度(TD)の少なくとも95%の密度を有する、項1に記載のスパッタリングターゲット。
【0063】
3.前記ターゲットが少なくとも20cmのスパッタリング面積を有する、項1または2に記載のスパッタリングターゲット。
【0064】
4.前記ターゲットが、スパッタリング面積が少なくとも100cmである平面または回転構造を有する、項1から3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【0065】
5.前記ターゲットが、直径が少なくとも10cmである中空円柱からなる回転構造を有する、項1から4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【0066】
6.前記ターゲットの前記セラミック体が少なくとも4mmの厚さである、項1から5のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【0067】
7.前記ターゲットの熱伝導率が300℃で10から20W/m−Kの範囲である、項1から6のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【0068】
8.前記ターゲットが10Ω・cm未満の電気抵抗率を有する、項1から7のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【0069】
9.前記ターゲットが0.2Ω・cm未満の電気抵抗率を有する、項1から8のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【0070】
10.前記ターゲットが、粒子からなる均一微細構造を有し、その60から90%が粒径5から25μmであり、65から75%が粒径7から15μmであり、前記微細構造が10%未満の第二相からなる、項1から9のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【0071】
11.前記ターゲットが、酸化スズに加えて、少なくとも3種類の別の酸化物0.5から15wt%を含み、そのうちの1種類が酸化アンチモンであり、少なくとも2種類の別の酸化物が以下からなる群から選択される、項1から10のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット:
−CuOおよびCoO、
−CuO、ZnOおよびAl
−CuO、ZnOおよびNb
−CuOおよびGa、ならびに
−CuOおよびBi
【0072】
12.前記セラミック体が、前記少なくとも2種類の別の酸化物1.5から5wt%を含む、項1に記載のスパッタリングターゲット。
【0073】
13.前記セラミック体が、酸化スズ95.5から97wt%、酸化アンチモン1から2.5wt%、およびCuO0.5から2wt%を含み、酸化スズ、酸化アンチモンおよびCuOの合計が100%である、項12に記載のスパッタリングターゲット。
【0074】
14.前記セラミック体が、酸化スズ95.5から97wt%、酸化アンチモン1から2.5wt%、CuO0.5から2wt%およびCoO0.05から1wt%を含み、酸化スズ、酸化アンチモン、CuOおよびCoOの合計が100%である、項12に記載のスパッタリングターゲット。
【0075】
15.前記セラミック体が、酸化スズ95.5から97wt%、酸化アンチモン1から2.5wt%、CuO0.5から2wt%、ZnO0.1から1wt%、およびAl0.001から0.003wt%を含み、酸化スズ、酸化アンチモン、CuO、ZnOおよびAlの合計が100%である、項12に記載のスパッタリングターゲット。
【0076】
16.前記セラミック体が、酸化スズ95.5から97wt%、酸化アンチモン1から2.5wt%、CuO0.5から2wt%、ZnO0.1から1wt%、およびNb0.05から0.5wt%を含み、酸化スズ、酸化アンチモン、CuO、ZnOおよびNbの合計が100%である、項12に記載のスパッタリングターゲット。
【0077】
17.前記セラミック体が、酸化スズ95.5から97wt%、酸化アンチモン1から2.5wt%、CuO0.5から2wt%、およびGa0.05から1wt%を含み、酸化スズ、酸化アンチモン、CuOおよびGaの合計が100%である、項12に記載のスパッタリングターゲット。
【0078】
18.前記セラミック体が、酸化スズ95.5から97wt%、酸化アンチモン1から2.5wt%、CuO0.5から2wt%、およびBi0.05から1wt%を含み、酸化スズ、酸化アンチモン、CuOおよびBiの合計が100%である、項12に記載のスパッタリングターゲット。
【0079】
19.セラミック体を含むスパッタリングターゲットを製造するプロセスであって、前記セラミック体が、酸化スズと少なくとも2種類の別の酸化物0.5から15wt%とを含み、前記少なくとも2種類の別の酸化物の一つが酸化アンチモンであり、前記少なくとも2種類の別の酸化物の残りがCuO、CoO、Bi、ZnO、Al、TiO、MnO、In、Ga、GeO、SiO、P、Nbおよびその組合せからなる群から選択され、または前記少なくとも2種類の別の酸化物の残りがZnOおよびNbであり、前記ターゲットが理論密度(TD)の少なくとも90%の密度および50Ω・cm未満の電気抵抗率を有し、前記ターゲットが、スパッタリング面積が少なくとも10cmである平面または回転構造を有し、前記プロセスが、
−酸化スズと前記少なくとも2種類の別の酸化物とを含むスラリーを用意するステップ、
−前記スラリーから未焼成体を成形するステップ、
−前記未焼成体を加熱し、1050から1250℃の温度で焼成し、それによって予備成形ターゲットを得るステップ、および
−前記予備成形ターゲットを粉砕してその最終寸法にするステップ
を含む、プロセス。
【0080】
20.前記ターゲットが所与の組成を有し、スラリーを用意する前記ステップが、
−ある量の酸化スズおよび前記少なくとも2種類の別の酸化物を用意するステップであって、前記量の比が前記セラミックスパッタリングターゲットの組成に対応するステップ、
−前記酸化スズの少なくとも一部と前記少なくとも2種類の別の酸化物の少なくとも一部とを含む中間体スラリーを用意するステップ、
−前記中間体スラリーを乾燥させてドライケーキを得るステップ、
−前記ケーキを粉砕して中間体粉末を得るステップ、
−前記中間体粉末を温度700から950℃で焼成するステップ、
−前記焼成された中間体粉末を解凝集するステップ、
−前記解凝集された粉末を前記量の酸化スズと前記少なくとも2種類の別の酸化物の残部と混合して、混合物を得るステップ、
−酸化スズと前記少なくとも2種類の別の酸化物とを含む前記スラリーを形成するステップ
を含む、項19に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【0081】
21.前記ターゲットが、酸化スズ95.5から97wt%、酸化アンチモン1から2.5wt%、およびCuO0.5から2wt%を含み、前記中間体スラリーが前記量の前記酸化スズの一部およびCuOの量のすべてからなる、項20に記載のセラミックスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【0082】
22.前記スラリー中の前記酸化スズおよび前記少なくとも2種類の別の酸化物の平均粒径が0.5μm未満である、項19から21のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【0083】
23.前記スラリー中の前記酸化スズおよび前記少なくとも2種類の別の酸化物の比表面積が少なくとも5.5m/gである、項19から21のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【0084】
24.前記未焼成体を1050から1250℃の温度で焼成する前記ステップが炉内で2から7時間の均熱期間中に実施される、項19から23のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【0085】
25.前記炉内で、前記焼成温度まで加熱中、、前記均熱期間の第1の部分中に、酸素流が存在し、そして、前記均熱期間の第2の部分中に還元ガス流が存在する、項24に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【0086】
26.前記酸素と前記還元ガスの両方の前記流れが前記未焼成体1kg当たり0.25から2.5l/分である、項25に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【0087】
27.前記スラリー中の前記酸化スズおよび前記少なくとも2種類の別の酸化物の平均粒径が0.4μm未満である、項22に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【0088】
28.前記還元ガスが窒素である、項25に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化スズを主要構成要素として含み、少なくとも2種類の別の酸化物0.5から15wt%を含み、そのうちの1種類が酸化アンチモンであり、少なくとも1種類の別の酸化物がCuO、CoO、Bi、ZnO、Al、TiO、MnO、In、Ga、GeO、SiOおよびPからなる群から選択される、または前記少なくとも1種類の別の酸化物がZnOおよびNbである、セラミック体を含むスパッタリングターゲットであって、前記ターゲットが理論密度(TD)の少なくとも90%の密度および50Ω・cm未満の電気抵抗率を有し、前記ターゲットが、スパッタリング面積が少なくとも10cmである平面または回転構造を有する、スパッタリングターゲット。
【請求項2】
前記ターゲットが理論密度(TD)の少なくとも95%の密度を有する、請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記ターゲットが少なくとも20cmのスパッタリング面積を有する、請求項1または2に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項4】
前記ターゲットが、スパッタリング面積が少なくとも100cmである平面または回転構造を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項5】
前記ターゲットが、直径が少なくとも10cmである中空円柱からなる回転構造を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項6】
前記ターゲットの前記セラミック体が少なくとも4mmの厚さである、請求項1から5のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項7】
前記ターゲットの熱伝導率が300℃で10から20W/m−Kの範囲である、請求項1から6のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項8】
前記ターゲットが10Ω・cm未満の電気抵抗率を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項9】
前記ターゲットが0.2Ω・cm未満の電気抵抗率を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項10】
前記ターゲットが、粒子からなる均一微細構造を有し、その60から90%が粒径5から25μmであり、65から75%が粒径7から15μmであり、そして前記微細構造が10%未満の第二相からなる、請求項1から9のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項11】
前記ターゲットが、酸化スズに加えて、少なくとも3種類の別の酸化物0.5から15wt%を含み、そのうちの1種類が酸化アンチモンであり、少なくとも2種類の別の酸化物が以下の群のいずれか一つである、請求項1から10のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット:
−CuOおよびCoO、
−CuO、ZnOおよびAl
−CuO、ZnOおよびNb
−CuOおよびGa
−CuOおよびBi
【請求項12】
前記ターゲットが、酸化スズおよび酸化アンチモンに加えて、前記少なくとも2種類の別の酸化物の前記群の1.5から5wt%を含む、請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項13】
酸化スズ95.5から97wt%、酸化アンチモン1から2.5wt%、およびCuO0.5から2wt%からなり、酸化スズ、酸化アンチモンおよびCuOの合計が100%である、請求項12に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項14】
更にCoO0.05から1wt%からなり、酸化スズ、酸化アンチモン、CuOおよびCoOの合計が100%である、請求項13に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項15】
更にZnO0.1から1wt%およびAl0.001から0.003wt%からなり、酸化スズ、酸化アンチモン、CuO、ZnOおよびAlの合計が100%である、請求項13に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項16】
更にZnO0.1から1wt%およびNb0.05から0.5wt%からなり、酸化スズ、酸化アンチモン、CuO、ZnOおよびNbの合計が100%である、請求項13に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項17】
更にGa0.05から1wt%からなり、酸化スズ、酸化アンチモン、CuOおよびGaの合計が100%である、請求項13に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項18】
更にBi0.05から1wt%からなり、酸化スズ、酸化アンチモン、CuOおよびBiの合計が100%である、請求項13に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項19】
透明導電性コーティングを製造するための請求項1から18のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットの使用。
【請求項20】
請求項1から18のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセスであって、
−酸化スズと前記少なくとも2種類の別の酸化物とを含むスラリーを用意するステップ、
−前記スラリーから未焼成体を成形するステップ、
−前記未焼成体を加熱し、1050から1250℃の温度で焼成し、それによって予備成形ターゲットを得るステップ、および
−前記予備成形ターゲットを粉砕してその最終寸法にするステップ
を含む、プロセス。
【請求項21】
前記ターゲットが所与の組成を有し、スラリーを用意する前記ステップが、
−ある量の酸化スズおよび前記少なくとも2種類の別の酸化物を用意するステップであって、前記量の比が前記セラミックスパッタリングターゲットの組成に対応するステップ、
−前記酸化スズの少なくとも一部と前記少なくとも2種類の別の酸化物の少なくとも一部とを含む中間体スラリーを用意するステップ、
−前記中間体スラリーを乾燥させてドライケーキを得るステップ、
−前記ケーキを粉砕して中間体粉末を得るステップ、
−前記中間体粉末を温度700から950℃で焼成するステップ、
−前記焼成された中間体粉末を解凝集するステップ、
−前記解凝集された粉末を前記量の酸化スズと前記少なくとも2種類の別の酸化物の残部と混合し、前記混合物を使用してスラリーを形成するステップ
を含む、請求項20に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【請求項22】
前記ターゲットが請求項13から18のいずれか一項に記載の組成を有し、前記中間体スラリーが、前記量の前記酸化スズの一部とCuOの量のすべてとからなる、請求項21に記載のセラミックスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【請求項23】
前記スラリー中の前記酸化スズおよび前記少なくとも2種類の別の酸化物の平均粒径が0.5μm未満、好ましくは0.4μm未満である、請求項20から22のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【請求項24】
前記スラリー中の前記酸化スズおよび前記少なくとも2種類の別の酸化物の比表面積が少なくとも5.5m/gである、請求項20から22のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【請求項25】
前記未焼成体を1050から1250℃の温度で焼成する前記ステップが炉内で2から7時間の均熱期間中に実施される、請求項20から24のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【請求項26】
前記炉内で、前記焼成温度まで加熱中、前記均熱期間の第1の部分中に、酸素流が存在し、そして、前記均熱期間の第2の部分中に、好ましくは窒素からなる還元ガス流が存在する、請求項25に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。
【請求項27】
前記酸素と前記還元ガスの両方の前記流れが前記未焼成体1kg当たり0.25から2.5l/分である、請求項26に記載のスパッタリングターゲットを製造するプロセス。

【公表番号】特表2013−507526(P2013−507526A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533503(P2012−533503)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005757
【国際公開番号】WO2011/044985
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512098393)
【Fターム(参考)】