説明

酸化セリウム組成物、それを用いた研磨材及び基板の研磨方法

【課題】結晶性が高い酸化セリウム及びそれを用いた高速研磨でありながら研磨傷の低減が達成できる研磨材、基板の研磨方法を提供する。
【解決手段】セリウムより大きなイオン半径を持つ元素を一種類以上含有してなる酸化セリウムであり、好ましくはイットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)及びツリウム(Tm)からなる群より選択される元素の一種類以上を含有してなる前記酸化セリウム、及び前記の酸化セリウムを含有してなる研磨材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化セリウム組成物、それを用いた研磨材及び基板の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体素子の高密度・高精細化が進み、デザインルールは0.1ミクロン前後になっている。このような厳しい微細化の要求に対して開発されている技術として、CMP(化学機械研磨)がある。この技術は、半導体装置の製造工程において、露光を施す層を完全に平坦化し、露光技術の負担を軽減し、歩留まりを安定させることができる。例えば、層間絶縁膜の平坦化、トレンチ分離時の埋め込み絶縁膜の平坦化、また銅配線等の平坦化処理の際に必須となる技術である。この技術は例えば特許文献1に開示されている。
集積回路内の素子分離形成技術においてデザインルール0.5ミクロン以上の世代ではLOCOS(シリコン局所酸化)が用いられてきたが、加工寸法の更なる微細化に伴い、素子分離幅の小さいシャロー・トレンチ分離技術が採用されている。シャロー・トレンチ分離では基板上に埋め込んだ余分な酸化珪素膜を除去するためにCMPが必須な技術となる。
金属配線形成技術においても、加工寸法の微細化に伴い要求される電気特性を満たすためにCuやCuAl合金が採用されつつある。CuやCuAl合金の配線技術としては、ダマシンやデュアルダマシン等の埋め込み配線技術が検討されており、基板上に埋め込んだ余分な金属を取り除くためにCMPが必須となる。ダマシン法については、例えば特許文献2に開示されている。
【特許文献1】米国特許第4944836号明細書
【特許文献2】特開平2−278822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、半導体素子の製造工程において、プラズマ−CVD、低圧−CVD、スパッタ、電気メッキ等の方法で形成される酸化珪素等の絶縁膜、キャパシタ強誘電体膜、配線用金属や金属合金等の平坦化および埋め込み層を形成するためのCMP研磨材としてフュームドシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ系砥粒を使用している。デザインルールの縮小に伴い、層間絶縁膜、シャロー・トレンチ分離用絶縁膜、金属埋め込み層に導入される研磨傷による半導体チップ不良がクローズアップされてきている。研磨傷は、配線ショートの原因となり、半導体チップの歩留まり低下に繋がる。傷の要因となる砥粒性状として、砥粒の硬度、大きさが挙げられる。砥粒の硬度を低下させるかあるいは大きさを小さくすれば傷の発生は抑制されるが、研磨速度は低下し平坦化に要する時間が延びてしまう。
【0004】
シャロー・トレンチ分離埋め込み絶縁膜や金属埋め込み層表面は、研磨材砥粒の粒子径が大きくかつ硬度が高いと傷が入りやすい。また、粒子径が小さくても、ダイヤモンドのように硬度の高いものは傷が入りやすい。一般に、研磨速度は粒子径が大きく、硬度が高いほど速い。本発明者らは粒子の大きさ、硬度のほかに粒子の結晶性すなわち、転位等の欠陥の多少(欠陥少:結晶性高い、欠陥多:結晶性低い)も研磨速度に関係していると考えた。具体的には、粒子を小さくしても、結晶性を高くすれば研磨速度低下を抑制できると考えた。そして、高結晶性微粒子の開発を進めた。結晶性を上げるには製造時の熱処理温度を高くする必要がある。しかしながら、熱処理温度を上げると結晶が大きくなってしまう。本発明は結晶サイズが小さく高結晶性の微粒子の製造方法を検討した結果なされたものである。
【0005】
本発明は、シャロー・トレンチ分離形成、金属埋め込み配線形成等のCMP技術において、酸化珪素膜、金属埋め込み膜等へ研磨傷を発生させずに短時間でCMPが実施できる研磨材に有用な酸化セリウム、それを用いた研磨材及び基板の研磨方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(1)四価のセリウムイオン半径より大きなイオン半径を持つ元素を一種類以上含有してなる酸化セリウム組成物に関する。
また、本発明は、(2)イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)及びツリウム(Tm)からなる群より選択される元素の一種類以上を含有してなる酸化セリウム組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、(3)四価のセリウムイオン半径より大きなイオン半径を持つ元素が、希土類元素である上記(1)に記載の酸化セリウム組成物に関する。
また、本発明は、(4)四価のセリウムイオン半径より大きなイオン半径を持つ元素が、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)である上記(1)に記載の酸化セリウム組成物に関する。
また、本発明は、(5)四価のセリウムイオン半径より大きなイオン半径を持つ元素の含有量が、セリウム元素に対して0.001〜50mol%である上記(1)、(3)又は(4)のいずれかに記載の酸化セリウム組成物に関する。
また、本発明は、(6)イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)及びツリウム(Tm)からなる群より選択される元素の含有量がセリウム元素に対して0.001〜50mol%である上記(2)または(4)に記載の酸化セリウム組成物に関する。
また、本発明は、(7)原料が、硝酸塩、硫酸塩、硝酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、酢酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、塩化物、アセチルアセトナート塩、アルコキシド及び水酸化物からなる群より選択される一種類以上である上記(1)〜上記(6)のいずれかに記載の酸化セリウム組成物に関する。
また、本発明は、(8)上記(1)〜上記(7)のいずれかに記載の酸化セリウム組成物を含有してなる研磨材に関する。
また、本発明は、(9)被研磨膜を形成した基板を研磨定盤の研磨布に押しあて加圧し、上記(8)に記載の研磨材を被研磨膜と研磨布との間に供給しながら、基板と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨膜を研磨する基板の研磨方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の酸化セリウム組成物は、結晶サイズが小さく結晶性が高い。これを研磨材に適用し基板の研磨に用いることにより、高速研磨でありながら研磨傷の低減が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の酸化セリウム組成物には二つの側面がある。第一の側面は、酸化セリウムに四価のセリウムイオン半径より大きなイオン半径を持つ元素(以下、含有元素ともいう。)を一種類以上含有することである。含有元素は、希土類元素であることが好ましい。第二の側面は、酸化セリウムにイットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)及びツリウム(Tm)からなる群より選択される元素の一種類以上を含有することである。含有元素は前記群を構成する元素であることが好ましい。
【0010】
四価のセリウムイオン半径よりもイオン半径の大きな元素としては、Y、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm等の希土類元素が挙げられる。これら含有元素の原子は酸化セリウムのセリウム原子と置換したり、酸化セリウムの格子間に入ったりしていると思われる。含有元素は1種類に限定されるものではなく2種類以上含有しても良い。
【0011】
含有元素の含有量は酸化セリウムのCe原子に対して含有元素の原子0.001〜50mol%が好ましく、0.01〜40mol%がさらに好ましく、0.1〜30mol%が特に好ましい。含有量が0.001mol%未満では結晶成長抑制効果が小さくなる傾向が、50%を超えると単相が得られない傾向がある。
また、これら以外の元素についても本発明の効果が発現する程度であれば含有してもよい。
【0012】
これら酸化セリウム組成物を作製するための原料としては、セリウム及び含有元素の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、硝酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、塩化物、アセチルアセトナート塩、アルコキシド及び水酸化物等が挙げられる。またこれらの塩の水和物でも良い。使用する原料の種類は1種類に限定されるものではなく、2種類以上を組み合わせても良い。セリウム塩及び含有元素塩の塩基成分はそれぞれ別であってもよい。
【0013】
セリウム及び含有元素を含む原料を直接熱処理し酸化物としても良いが、原料が固体の場合、均質性の観点からセリウム及び含有元素を含む原料を水等の溶液に溶解させ、この原料溶液にアルカリ溶液を滴下あるいはアルカリ溶液に原料溶液を滴下し水酸化物を生成させた後、水酸化物を熱処理して酸化セリウム組成物を得る方が好ましい。アルカリの種類は特に制限されるものではなく、アンモニア、水酸化ナトリウム、コリンすなわち2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド等、一般的なアルカリが用いられる。さらに、噴霧熱分解のように原料溶液を微細液滴化し直接熱処理するのが好ましい。この場合水酸化物の懸濁液あるいは原料溶液と水酸化物の懸濁液の混合液を微細液滴化し熱処理しても良い。
いずれの場合も熱処理温度は200〜1600℃が好ましく、300〜1400℃がより好ましく、さらに400〜1200℃がより好ましい。1600℃を超えると結晶成長が促進され結晶サイズが大きくなってしまう傾向があり、200℃未満では結晶性が悪い場合がある。
【0014】
得られた酸化セリウム組成物の粒子は、必要に応じて粉砕すると好ましい。酸化セリウム組成物をスラリー状の研磨材として水に分散させる場合は、分散剤を添加することが好ましい。分散剤として、アンモニア、酢酸、硝酸、アクリル酸系ポリマー、ポリビニルアルコール等の水溶性有機高分子類、ラウリル硫酸アンモニウムおよびポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム等の水溶性陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテルおよびポリエチレングリコールモノステアレート等の水溶性非イオン性界面活性剤、並びにモノエタノールアミン類等が挙げられる。
【0015】
これらの微粒子を水中に分散させる方法としては、通常の攪拌機による分散処理の他に、例えば、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル等を用いることができる。スラリー状の研磨材中の粒子は、粒子径の中央値(D50)が50nm〜500nm、また、最大粒子径が200nm〜3000nmであるのが好ましい。本発明では、粒子径中央値および最大粒子径は、レーザー回折法で測定し、例えばマルバーンインスツルメンツ社製粒度分布測定装置マスターサイザー2000を用いて測定できる。
【0016】
本発明の研磨材は、上記スラリーをそのままシリカ膜が形成された基板の研磨材として使用することができる。他に、アクリル酸エステル誘導体等の分散助剤、染料、顔料等の着色剤や、pH調整剤、水以外の溶媒などの、一般に研磨材に添加される添加剤を、研磨材の作用効果を損なわない範囲で添加しても良い。
【0017】
本発明の研磨材は、例えば、酸化セリウム組成物粒子、分散剤、添加剤及び水から構成される一液式研磨剤として調製することができ、また、酸化セリウム組成物粒子、分散剤及び水からなる酸化セリウムスラリーと、添加剤及び水からなる添加液とを分けた二液式研磨材として調製することもできる。どちらの場合も、安定した特性を得ることができる。
【0018】
本発明の基板の研磨方法は、前記本発明の研磨材を用いて基板を研磨することを特徴とする。基板として、例えば、半導体基板すなわち回路素子と配線パターンが形成された段階の半導体基板、回路素子が形成された段階の半導体基板等の半導体基板上に酸化珪素膜及び窒化珪素膜が形成された基板が使用できる。このような半導体基板上に形成された酸化珪素膜層を上記研磨方法によって、酸化珪素膜層表面の凹凸を解消し、半導体基板全面に渡って平滑な面とすることができる。また、シャロー・トレンチ分離に使用するためには、研磨時に傷発生が少ないことが好ましい。以下、このような半導体基板を例に挙げて説明する。
【0019】
ここで、研磨する装置としては、例えば、半導体基板を保持するホルダーと、研磨布(パッド)を貼り付け可能で、回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある研磨定盤とを有する一般的な研磨装置が使用できる。研磨布としては、例えば、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。また、研磨布には研磨材が溜まる様な溝加工を施すことが好ましい。
研磨条件には制限はないが、定盤の回転速度は半導体ウェハが飛び出さない様に100rpm以下の低回転が好ましい。被研磨膜を有する半導体基板の研磨布への押しつけ圧力が100〜1000gf/cmであることが好ましく、研磨速度のウェハ面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、200〜500gf/cmであることがより好ましい。研磨している間、研磨布には研磨材をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨布の表面が常に研磨材で覆われていることが好ましい。
研磨終了後の半導体基板は、流水中で良く洗浄後、スピンドライヤ等を用いて半導体基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【0020】
このようにして、Si基板上にシャロー・トレンチ分離を形成したあと、酸化珪素絶縁膜層及びその上にアルミニウム配線を形成し、その上に形成した酸化珪素膜を平坦化する。この平坦化された酸化珪素膜層の上に、第2層目のアルミニウム配線を形成し、その配線間および配線上に再度上記方法により酸化珪素膜を形成後、本発明の研磨材、研磨方法によって、絶縁膜表面の凹凸を解消し、半導体基板全面に渡って平滑な面とする。この工程を所定数繰り返すことにより、所望の層数の半導体を製造する。
【0021】
本発明の研磨材および研磨方法が適用される無機絶縁膜の作製方法として、例えば、定圧CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。定圧CVD法による酸化珪素絶縁膜形成は、Si源としてモノシラン:SiH、酸素源として酸素:Oを用いる。このSiH−O系酸化反応を400℃程度以下の低温で行わせることにより得られる。高温リフローによる表面平坦化を図るためにリン:Pをドープするときには、SiH−O−PH系反応ガスを用いることが好ましい。プラズマCVD法は、通常の熱平衡下では高温を必要とする化学反応が低温でできる利点を有する。プラズマ発生法には、容量結合型と誘導結合型の2つが挙げられる。反応ガスとしては、Si源としてSiH、酸素源としてNOを用いたSiH−NO系ガスとテトラエトキシシラン(TEOS)をSi源に用いたTEOS−O系ガス(TEOS−プラズマCVD法)が挙げられる。基板温度は250℃〜400℃、反応圧力は67〜400Paの範囲が好ましい。このように、本発明の酸化珪素絶縁膜にはリン、ホウ素等の元素がド−プされていても良い。同様に、低圧CVD法による窒化珪素膜形成は、Si源としてジクロルシラン:SiHCl、窒素源としてアンモニア:NHを用いる。このSiHCl−NH系酸化反応を900℃の高温で行わせることにより得られる。プラズマCVD法は、Si源としてSiH、窒素源としてNHを用いたSiH−NH系ガスが挙げられる。基板温度は300〜400℃が好ましい。
【0022】
本発明の研磨材および研磨方法は、半導体基板に形成されたSiO絶縁膜だけでなく、所定の配線を有する配線板に形成されたSiO絶縁膜、ガラス、窒化ケイ素等の無機絶縁膜、フォトマスク・レンズ・プリズムなどの光学ガラス、ITO等の無機導電膜、ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路、光ファイバ−の端面、シンチレ−タ等の光学用単結晶、固体レ−ザ単結晶、青色レ−ザ用LEDサファイア基板、SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶、磁気ディスク用ガラス基板、磁気ヘッド等を研磨するために使用できる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
0.1mol/kg硝酸セリウムアンモニウム水溶液9kgと0.1mol/kg硝酸ランタン水溶液1kgを混合し、この混合溶液に10重量%アンモニア水を滴下し粒子を生成させた。次に遠心処理による固液分離で沈殿物を回収した。さらに沈殿物を空気中で800℃、2時間処理しランタン含有酸化セリウム組成物を得た。得られた組成物粉末をビーズミルで粉砕し、粉砕粉100重量部に対して1重量部のポリアクリル酸アンモニウム(分子量Mw=10000)、1000重量部の純水を混合し、超音波分散機で分散した。次に沈降分級し、上澄みを採取して粒子径(中央値:D50)0.15μmの研磨材を作製した。この研磨材を用いて直径200mmの酸化珪素膜付のシリコンウエハを研磨したところ酸化珪素膜が1分間で580nm研磨された。研磨後の表面に傷は認められなかった。
【0024】
(実施例2)
硝酸ランタンの替わりに硝酸イットリウムを使用した以外は実施例1と同様にしてイットリウム含有酸化セリウム組成物を作製した。実施例1と同様にして研磨材を作製し、研磨評価したところ、酸化珪素膜が1分間で610nm研磨された。研磨後の表面に傷は認められなかった。
【0025】
(比較例)
0.1mol/kg硝酸セリウムアンモニウム水溶液10kgに10重量%アンモニア水を滴下し粒子を生成させた。次に遠心処理による固液分離で沈殿物を回収した。さらに沈殿物を空気中で800℃、2時間処理し酸化セリウムを得た。実施例1と同様にして研磨材を作製し、研磨評価したところ、酸化珪素膜が1分間で400nm研磨された。研磨後の表面に傷は認められなかった。
【0026】
実施例は比較例と比較して、酸化珪素膜等の被研磨面を短時間で傷を発生させることなく研磨することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四価のセリウムイオン半径より大きなイオン半径を持つ元素を一種類以上含有してなる酸化セリウム組成物。
【請求項2】
イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)及びツリウム(Tm)からなる群より選択される元素の一種類以上を含有してなる酸化セリウム組成物。
【請求項3】
四価のセリウムイオン半径より大きなイオン半径を持つ元素が、希土類元素である請求項1に記載の酸化セリウム組成物。
【請求項4】
四価のセリウムイオン半径より大きなイオン半径を持つ元素が、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)である請求項1に記載の酸化セリウム組成物。
【請求項5】
四価のセリウムイオン半径より大きなイオン半径を持つ元素の含有量が、セリウム元素に対して0.001〜50mol%である請求項1、3又は4のいずれかに記載の酸化セリウム組成物。
【請求項6】
イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)及びツリウム(Tm)からなる群より選択される元素の含有量がセリウム元素に対して0.001〜50mol%である請求項2又は4に記載の酸化セリウム組成物。
【請求項7】
原料が、硝酸塩、硫酸塩、硝酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、酢酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、塩化物、アセチルアセトナート塩、アルコキシド及び水酸化物からなる群より選択される一種類以上である請求項1〜請求項6のいずれかに記載の酸化セリウム組成物。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の酸化セリウム組成物を含有してなる研磨材。
【請求項9】
被研磨膜を形成した基板を研磨定盤の研磨布に押しあて加圧し、請求項8に記載の研磨材を被研磨膜と研磨布との間に供給しながら、基板と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨膜を研磨する基板の研磨方法。


【公開番号】特開2007−31261(P2007−31261A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76669(P2006−76669)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】