説明

酸化ビスマスガラスおよびそれを製造するプロセス

【課題】応用分野に応じた必要条件が改善されている酸化ビスマスを含むガラス、およびガラスを製造する適切なプロセスを開示すること。
【解決手段】本発明は、ビスマス酸化物およびゲルマニウム酸化物の添加物を含み、BおよびSiOの含有量が0.1モル%より多く、かつ5モル%未満であるガラスに関する。本発明は、また、前記ガラスの製造に適する方法に関する。本発明のガラスは特に希土類をドープしたときに、光学活性なガラスとして使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ゲルマニウムを含む酸化ビスマスガラス、この種のガラスを製造するプロセス、この種のガラスの使用方法、および本発明による前記ガラスを含むガラスファイバ(繊維)に関する。
【背景技術】
【0002】
光増幅装置は現今の光情報技術、特にWDM技術(WDM:波長分割多重技術)の中での重要な要素のうちの1つと見なされている。これまでは、コアガラスとして、先行技術中で光学活性化イオンドープ石英ガラスが、光増幅器に使用されてきた。SiOベースのErドープ増幅器は、1.5μm付近の波長領域内で非常に近接した複数の異なるチャンネルを同時に増幅することができる。しかしながら、SiOガラス中のEr3+の発光帯域幅が狭いため、これらのErドープ増幅器は、伝送能力に対する要求が高度化するのに対してこれを満たすのには適さなくなった。
【0003】
したがって、SiOガラスよりも著しく広い帯域幅で希土類イオンの発光が可能なガラスの要求が増加している。この点では、重金属酸化物ガラスまたは重金属酸化物含有ガラス等の重元素を含むガラス(「HMOガラス」)が好ましい。これらの重金属酸化物ガラスは、原子間結合力が弱いので、原子間電場が強くなり、したがって基底状態から励起状態へのシュタルク分裂が大きいため、希土類イオン類の発光がより広くなる。酸化テルル、酸化ビスマスおよび酸化アンチモン系のガラスは、この種のガラスの例である。
【0004】
しかしながら、この種の重金属酸化物ガラスは、特にSiOガラスと比較して、いくつかの欠点を有し、これらの欠点は、先行技術ではいまだに克服されていない。
本質的に、この種のガラスは、原子間結合力が弱く、機械的性質としての安定性がSiOファイバよりも低い。しかしながら、良好な機械的安定性は、特に、長期間にわたる信頼性の点で広帯域ファイバ増幅器を製造するうえで、とりわけ重要である。好適な増幅器ケーシング内に設置できるようにするために、これらのガラスから延伸して得たファイバは約5cmから10cmの直径で破壊せずに巻き取られることが必要とされる。さらに、巻き取られた状態で、このガラスファイバはまた、長期安定性を保持しなければならない。
【0005】
さらに、重金属酸化物含有ガラスはSiOより相当に融点および軟化点が低い。このため、たとえばサーマルアーク溶接(スプライシングとして知られている)によりSiOファイバを重金属酸化物含有ファイバに接続するのは困難である。したがって、この重金属酸化物ガラスとSiOガラスとの間の軟化点の差をできるだけ小さくすることが望ましい。
【0006】
また、重金属酸化物含有ガラスの中には、著しい結晶化の傾向を示すものがあり、これは、もちろん光増幅器の製造およびその他の用途にこの種のガラスを使用するにあたって不利となる。希土類イオン類でドープした重金属酸化物含有ガラスは、ファイバまたは導波路基板等の、それぞれ光学活性なガラスおよびガラス製品として応用するために、ならびに電気通信分野の広帯域増幅器媒体として応用するために、可能であればそれぞれの応用分野に応じて以下の重要な必要条件を満たさなければならない。
− 1550nm近傍のC伝送帯域の範囲のみならず、特にこの範囲内における希土類イオンの広く平坦な吸収帯および発光帯を有すること。
− 発光状態、またはレーザー準位それぞれに十分な寿命があること。
− できるだけ高い熱耐久性、すなわち高軟化点を有すること。
− できるだけ小さな結晶化傾向を示すこと。
− 高い機械的安定性を有すること。
− 標準的な溶融プロセスを使用する場合の良好な溶融性が実現できること。
− 良好なファイバ延伸性が発揮できること。
【0007】
下記特許文献1によれば、ある種の酸化ビスマス含有ガラスはすでに知られており、これは以下のものを有するマトリクスガラスである。
20モル%〜80モル%のBi
5モル%〜75モル%のBi+SiO
0.1モル%〜35モル%のGa+WO+TeO
10モル%以下のAl
30モル%以下のGeO
30モル%以下のTiO
30モル%以下のSnO
ただし、このガラスはCeOを全く含まないものとし、0.1重量%〜10重量%のエルビウムがガラスマトリックス中で組み込まれるものとする。しかしながら、タングステン酸化物および酸化テルルを添加することは好ましくない。酸化テルルを添加すると、Bi3+が元素のBiに還元される可能性が高まり、したがってガラスの黒色化の危険性が生じる。タングステン酸化物を重金属酸化物含有ガラスに添加すると、結晶化に対するガラスの不安定性が増し、元素のWの析出を招くことがある。対照的に、TiOを添加すると、結晶化傾向が大幅に増加することがある。
【0008】
下記特許文献2によれば、0.01重量%〜10重量%のエルビウムでドープされているガラスマトリックスを含む光学活性なガラスが知られており、このガラスマトリックスは、以下のものを含む。
20モル%〜80モル%のBi
0モル%〜74.8モル%のB
0モル%〜79.99モル%のSiO
0.01モル%〜10モル%のCeO
0モル%〜50モル%のLiO、
0モル%〜50モル%のTiO
0モル%〜50モル%のZrO
0モル%〜50モル%のSnO
0モル%〜30モル%のWO
0モル%〜30モル%のTeO
0モル%〜30モル%のGa
0モル%〜10モル%のAl
【0009】
またこの点では、タングステン酸化物を添加すると、不利であると考えられる。また、TiOおよびZrOを添加すると結晶化傾向が増大する。
さらに下記特許文献3によれば、0.001重量%〜10重量%のTm(ツリウム)でドープされているマトリクスガラスを有するある光増幅ガラスが知られている。このマトリクスガラスは、15モル%〜80モル%のBiおよび少なくともSiO、BまたはGeOを含む。このマトリクスガラスがGeOを含む場合、それは単独でBiを含むが、SiOやBは含まない。
【特許文献1】国際公開第01/55041号明細書
【特許文献2】国際公開第00/23392号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1180835号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のガラスは光増幅への応用に関して基本的に好適かもしれないが、これらの達成すべき特性はさらに改善できる。また、知られているガラスで使用されるTiOおよびZrOを追加すると、結晶化傾向が増大し基本的に不利となる。
したがって、本発明の目的は、前述の要求による必要条件が改善されている酸化ビスマスを含むガラスを開示することであり、これによって、先行技術中で少なくともある程度まで生じる不都合を回避することができ、その結果、それぞれ光増幅器への応用またはレーザーへの応用に特に適するようになる。また、本発明はこの種のガラスを製造する適切なプロセスを開示するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、下記成分を含む酸化ビスマスガラスによって達成される(酸化物基準のモル%)。すなわち、
Bi 10〜18
GeO ≧1
+SiO ≧0.1かつ<5
他の酸化物 18.9〜88.9
驚くべきことに、酸化ビスマスを含有し、かつ酸化ゲルマニウムを含有するこのガラスは、特に、BおよびSiOの総含有量が5モル%未満、かつ0.1モル%超である場合に良好な光学特性を備えた特に良好なガラス品質を示すことがわかった。変態温度Tは十分に高くまた、結晶化温度Tは、変態温度から十分な間隔を有するものとする。ガラス溶融物から最初に冷却され冷間成長したあとに、このガラスがさらに処理を経る場合、これは好都合である。結晶化温度Tが変態温度Tよりも高いほど、再加熱時にガラスが使用不能になる結晶化を起こす危険性が低くなる。
【0012】
また驚くべきことに、酸化ゲルマニウムを添加することによって酸化ビスマスを含むガラスの耐熱性は全体的に改良される。ここに、ガラスの耐熱性が向上、または改善されるということは、耐熱性が低い、または悪いガラスに必要とされる温度より、特定の粘度のガラスを得るのに必要とされる温度が高いことを意味する。たとえば、酸化ゲルマニウムを含まないベースガラスと比較したとき、耐熱性がよりよいガラスの変態温度Tおよび/または軟化点EWが向上する。所定量の酸化ホウ素またはシリコン酸化物をそれぞれ添加すると、ガラスの機械的特性が改良できるのみならず、特にガラスの分光学上の特性、特に増幅の帯域幅および増幅の平坦性も改良できる。他方では、Bを過剰に添加すると、含水量が増加する影響およびフォノンエネルギーの影響によって発光寿命が減少する。発光寿命が長いことは、広帯域の増幅のための必要なインバージョン(反転)を得るのに望ましい。本発明によれば、ホウ酸含有量は、このように、広帯域および均質増幅と十分に長い発光寿命との間で特に高度なトレードオフの関係になる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の酸化ビスマスガラスは下記成分(酸化物基準のモル%)を含む。すなわち、
≧1
Bi 10〜0
GeO 10〜60
希土類 0〜15
M’O 0〜30
M’’O 0〜20
La 0〜15
Ga 0〜40
Gd 0〜10
Al 0〜20
CeO 0〜10
ZnO 0〜30
他の酸化物 残部。
ここにおいて、M’は、Li、Na、K、Rbおよび/またはCsの少なくとも1つであり、M’’は、Be、Mg、Ca、Srおよび/またはBaの少なくとも1つである。
【0014】
当該技術の中で知られていることであるが、光学活性なガラスを得るには希土類を添加することが必要である。このとき、0.005モル%〜15モル%の希土類(酸化物基準)を添加することが好ましいが、ツリウムは好ましくない。特に、0.01モル%〜8モル%のEuおよび/またはErを添加することが好ましい。
しかしながら、このガラスを単にガラスファイバ用クラッドガラスとして使用する場合には、希土類を添加していないガラスを使用することが適当である。
【0015】
を使用するに際しては、光学特性を改良するという点に関して、特に、約3モル%〜4.95モル%の間の添加量が好適であることがわかっている。
GaおよびLaを添加すると、ガラスの生成が容易になり、かつ結晶化を打ち消すのに好適であることが見いだされている。
タングステン酸化物を添加することは、帯域幅および増幅の均質性を改善するのに基本的に適切であるが、結晶化傾向が増大する可能性が高まる。
【0016】
NaOおよびLiOのような古典的なネットワーク改変成分をそれぞれ添加すると、ガラスの形成が改良される可能性があることが知られている。また、ネットワーク改変成分すなわちNaOおよび/またはLiOを約0.5モル%〜15モル%の間の範囲で添加すると、ある範囲内で光学特性が部分的に改良できる。NaOを添加すると、増幅エネルギーが低くなるが、通常は帯域幅は悪影響を受けない。
【0017】
ガラスが平坦性を有する導光路および平坦性を有する光増幅器等の平坦な特性を有する用途に使用するような場合、アルカリ性酸化物、特にNaOを添加することはイオン変換法を使用する場合、特に好適である。
LiOの添加によって、帯域幅は、スペクトルの低いエネルギー範囲(Lバンド)で特に改善される場合がある。またNaOの添加と比較した場合、ガラス形成領域が広くなる。
【0018】
Laの添加の場合、最大8モル%まで、特に最大5モル%まで添加するとガラス生成が特に改良できる。この場合、Laは、ErまたはEuと置き換えてもよい。
増幅作用の最大値は、Laを添加することによってより高いエネルギーへ変動するが、帯域幅は多少減少する。
【0019】
一般にAlを添加すると、光学特性に影響を及ぼさないが、5モル%より多い量を添加した場合、ガラスの安定性が損なわれるので少量の添加が好ましい。
ZnOおよびBaO(またはそれぞれBeO、MgO、CaOおよびSrO)を添加すると、ガラスの安定性の向上に好適であることが見いだされている。
このため、約1モル%〜15モル%、特に約2モル%〜12モル%のZnOを添加することが好ましい。特に、ガラスの安定性に関しては、約10モル%までのZnOが好適な効果を有することがわかっている。BaO(または、それぞれBeO、MgO、CaO、SrO)を約10モル%まで、特に約5モル%まで添加すると、ガラスの安定性が向上することが見いだされている。
【0020】
また、GaおよびGdを、それぞれ40モル%、および10モル%まで添加すると、ガラス生成に好適であることがわかっている。
可能であれば、本発明によるガラスは、FまたはCl等のハロゲン化物を10モル%まで、特に約5モル%まで含んでいてもよい。
本発明によるガラスを、増幅ファイバの光学活性なコアのまわりのクラッド等のいわゆる受動素子として使用する場合、このガラスは光学活性な希土類を含まないことが好ましい。しかしながら、特定の実施形態においては、基本的な増幅ファイバのクラッド等の受動素子は光学活性な希土類を少量含むことも好ましい。本発明によるガラスを希土類でドープすると、特に、光増幅器およびレーザー用の光学活性なガラスとして適するようになる。好ましくは、このドーパントとしては、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Ybおよび/またはLuから選択される酸化物が挙げられる。特に、元素Er、Pr、Ndおよび/またはDyの酸化物が好ましく、ErまたはEuの酸化物が最も好ましい。希土類でガラスをドーピングすると光学活性が得られ、レーザー等の適切なポンピング源で励起すれば、本発明によるガラスは誘導放出が可能となる。
【0021】
本発明によるガラスはまた酸化セリウムを含んでもよい。本発明によるガラスは、最大1モル%の範囲内で少量のCeOを含むか、またはセリウムを含まないことが好ましい。
融解条件がガラス品質、特にビスマスの酸化状態に対しても重要な影響を与えることが見いだされている。元素のビスマスが微細な黒い析出物の形態で析出すると光学特性、特にガラスの透明度を損なう。さらに、Biが生じると、標準的なるつぼ材料、特にプラチナとの間に合金が生じる可能性が起こる。このプロセスが起こると、るつぼの腐食を促進し、合金粒子ができ、これによって、たとえばファイバ引上法等においてファイバ特性が阻害されて望ましくない結果を招く。ビスマスを高い酸化状態で安定させるために、酸化セリウムを添加することが基本的な解決法である。しかしながら、特に、高濃度で酸化セリウムを添加すると、やや黄色のオレンジ色に発色する可能性がある。また、酸化セリウムの添加によって、このガラスの紫外端は1550nmで、Er3+輝線の範囲へずれる。
【0022】
本発明によれば、ガラスが酸化性条件の下で融解している場合に、ビスマスの酸化状態を確実に安定させることができることが知られており、この条件は、たとえばこのガラスの溶融物へ酸素をバブリングすることにより達成できる。しかしながら、酸化セリウムを安定化に使用する場合、1000℃超の融解温度でのみビスマスの酸化状態の安定化が達成できるが、1000℃未満では不安定化効果が出てくる。
【実施例】
【0023】
実施例のガラス組成物はすべて、微量汚染物質に関して最適化されていない純粋な原料からプラチナルツボで融解した。約1.5時間後、液状のガラスを予熱した黒鉛型へ注ぎ、15K/hの冷却速度で冷却炉中でTから室温まで冷却した。
使用したガラス組成物およびそのガラスの特性を表1ないし表15に要約した。
また、部分的に、本発明によらないガラスを、比較のために示した。
【0024】
さらなる特性を図1ないし図3で説明する。
希土類でドープすることによるガラスの光学活性を図1に示す。図1は、Er3+のエネルギー項図を示している。ポンピング放射で励起すると、上部のレーザー準位13/2は、間接的に(980nm、11/2経由で)、または直接的に(1480nm)占有される。入射信号フォトンによって、励起Er3+イオンが誘導放出を引き起こす。たとえば、その信号の波長のフォトンを放出して電子は基底状態15/2に緩和する。上位からより低位のレーザー準位までの多重項分裂(シュタルク準位)の度合いに依存して、Er3+は、より狭いまたはより広い1550nm帯域内で発光する。さらに、この分裂は、ガラスマトリックス内のEr3+イオンの局所的な環境に依存する。
【0025】
表1に、本発明による2つのガラス1および2のガラス組成物を、本発明によらない試験用ガラスVG−1およびVG−2と比較して示す。それぞれの特性を表2に要約した。ガラス1および2はそれぞれ比較的良好なガラス安定性を有していたが、ガラスVG−1およびVG−2の2者(SiOまたはBを添加していない)は、安定性が悪く、部分的に結晶を有していた。ホウ酸(B)を5モル%まで添加すると、ガラス安定性を向上させる際に特に有効と分かった。Bの添加によって、増幅帯域幅また増幅作用の平坦性をも向上することができる。ここで、ホウ素は、すべての種類のBiガラス中の磁気転移(MT)のピーク値の位置に影響を及ぼし、平坦性等の増幅帯域幅への重要な影響を有する。
【0026】
しかしながら、含水量によっては、Bは発光寿命τに有害な作用を有することがある。
このようにして、本発明によるガラスによって、十分なホウ酸の添加量と広い平面性を有する増幅との間のバランス、およびより少量のホウ酸の添加量と十分な放出寿命との間のバランスが見いだされた。
【0027】
Erドープした酸化ビスマスを含むガラス中の酸化ゲルマニウムが、吸収の最大強度の位置および/または1550nm付近のエルビウムの発光帯に対して重大な影響があり、そのために、C帯域中の増幅の平坦性に積極的な影響を及ぼす。
表3に、本発明によるさらなる一連のガラスの組成をまとめたが、表1(ガラス3は別として)のガラスと比較すると、さらなるガラス安定性の向上が見られる。
【0028】
ガラス3は、ガラス安定性に対するWOの有害作用を示している。融解条件に依存するものの、タングステン酸化物を添加すると、Wが析出して、ガラス安定性はこれによって大きく損なわれる。また、その結果、結晶化の傾向が加速される。したがって、光学特性(帯域幅の改善)に基本的によい影響を有するタングステン酸化物は有害性を増すことになる。
【0029】
表3のガラスのそれぞれの特性を表4にまとめた。ここで、HVはビッカース硬度を表し、Bは曲げ強度、KICは破壊靭性(臨界圧力強度因子)を表している。弾性率(Y値)はビッカース硬度(できるだけ高くあるべきである)から導く。
表5および表6に、本発明による他の一連のガラス(ガリウム酸化物を含有しない)を示す。
【0030】
ガラス10は、5モル%のNaO画分を有しており、これによってこのガラスのイオン交換特性が向上する。良好なイオン交換能力があるガラスは、特に、平坦性を有する増幅器等の平坦性を必要とする用途に適している。
しかしながら、概して、酸化ゲルマニウムのみならずガリウム酸化物を含む酸化ビスマスを含むガラスで、よりよい光学特性が達成できた。
【0031】
この一連のガラスおよびその特性を表7および表8にまとめた。
図2は、C帯域領域で、これらのガラスの、nm表示の波長において標準化した増幅作用を示したものである。
ガラス16では、Erによるドーピングを増すと増幅作用が向上する。
酸化セリウムを少量添加すると、増幅作用の帯域幅、平坦性および寿命に改善が見られる(ガラス16を参照)。
【0032】
ガラス12で、発光強度の中で最も著しい改善が磁気転移(MT)の低エネルギー側に見られ、このものはC帯域で良好な増幅作用を有している。さらに高度にErドーピングしただけのガラス14および16でも、C帯域部分(C帯域:1530nm〜1562nm)で同じように高い増幅作用を示している。
本発明によるさらなる一連のガラスおよびにその特性を表9および表10にまとめた。
【0033】
表9および表10によるガラスは、平坦性を必要とする用途のために特に開発されたガラスである。特にイオン導電性を向上させるために、酸化ナトリウムをある程度まで添加してもよく、または、酸化リチウムを酸化ナトリウムで置き換えてもよいが、そうすると、多少結晶化傾向が増すため、ガラス品質がある程度低下する。
酸化リチウムを犠牲にして、酸化ゲルマニウムおよび酸化ビスマスの含有量を同時にある程度まで高めつつ酸化セリウムを添加すると、ガラス品質および光学特性(ガラス20)が向上する。
【0034】
さらなるガラスおよびその特性を表11および表12にまとめた。
表13に、一連のガラスのガラス組成および特性を示すが、これらはイオン交換によって平坦性を有する広帯域の増幅用ガラスとして特に適切である。これらのガラスはすべて優れたガラス品質を有している。
この好適な光学ガラス特性を図2および図3に見ることができる。
【0035】
ガラスの融解中に硝酸ナトリウムの形ではなく、炭酸ナトリウムの形で酸化ナトリウムを使用するのが有利であることがわかった。
また、酸化雰囲気での溶解条件をとることによってビスマスが元素のビスマスへ還元されるのを回避するために、ガラス溶融物中へ酸素をバブリングすることが有利であることがわかった。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
【表6】

【0042】
【表7】

【0043】
【表8】

【0044】
【表9】

【0045】
【表10】

【0046】
【表11】

【0047】
【表12】

【0048】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】Er3+の項図である。
【図2】C帯域のガラス32、33、35および36の吸収および発光のスペクトル(nm表示の波長に対する標準化した強度)の図である。
【図3】C帯域のガラス33、34および36の増幅の計算結果である(nm表示の波長に対する標準化した増幅作用)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ビスマスガラスであって、酸化物含有量基準のモル%で、
Bi 10〜80
GeO ≧1
+SiO ≧0.1かつ<5
他の酸化物 18.9〜88.9
を含む酸化ビスマスガラス。
【請求項2】
酸化物含有量基準の、
≧1
Bi 10〜60
GeO 10〜60
希土類 0〜15
M’O 0〜30
M’’O 0〜20
La 0〜15
Ga 0〜40
Gd 0〜10
Al 0〜20
CeO 0〜10
ZnO 0〜30
他の酸化物 残部
を含む請求項1に記載の酸化ビスマスガラスであって、
M’が、Li、Na、K、Rbおよび/またはCsの少なくとも1つであり、M’’がBe、Mg、Ca、Srおよび/またはBaの少なくとも1つである酸化ビスマスガラス。
【請求項3】
酸化物含有量基準で、0.005モル%〜15モル%の希土類を含み、好ましくはツリウムを含まない請求項1または2に記載の酸化ビスマスガラス。
【請求項4】
少なくとも0.01モル%〜8モル%のErおよび/またはEuを含む請求項3に記載の酸化ビスマスガラス。
【請求項5】
少なくとも1モル%のBおよび/またはSiO、好ましくは少なくとも2モル%のBを含む請求項1ないし4のいずれかに記載の酸化ビスマスガラス。
【請求項6】
少なくとも0.1モル%、好ましくは0.5モル%〜8モル%のLaを含む請求項の1ないし5のいずれかに記載の酸化ビスマスガラス。
【請求項7】
少なくとも1モル%のZnOおよび/またはBaOを含む請求項1ないし6のいずれかに記載の酸化ビスマスガラス。
【請求項8】
1モル%〜15モル%、特に好ましくは2モル%〜12モル%のZnOを含む請求項1ないし7のいずれかに記載の酸化ビスマスガラス。
【請求項9】
1モル%〜8モル%、好ましくは2モル%〜6モル%のBaOを含む請求項7または8に記載の酸化ビスマスガラス。
【請求項10】
15モル%〜50モル%、好ましくは20モル%〜45モル%のGeOを含む請求項1ないし9のいずれかに記載の酸化ビスマスガラス。
【請求項11】
15モル%〜50モル%、好ましくは20モル%〜45モル%のBiを含む請求項1ないし10のいずれかに記載の酸化ビスマスガラス。
【請求項12】
0.1モル%〜30モル%、好ましくは0.5モル%〜15モル%のNaOおよび/またはLiOを含む請求項1ないし11のいずれかに記載の酸化ビスマスガラス。
【請求項13】
1モル%〜20モル%、好ましくは3モル%〜15モル%のGaを含む請求項1ないし12のいずれかに記載の酸化ビスマスガラス。
【請求項14】
0.01モル%〜10モル%のCeO、好ましくは0.1モル%〜2.0モル%のCeOを含む請求項1ないし13のいずれかに記載の酸化ビスマスガラス。
【請求項15】
酸化性条件の下で融解される請求項1ないし14のいずれかに記載のガラスを製造するプロセス。
【請求項16】
前記酸化性条件が、前記ガラス溶融物へ酸素をバブリングすることによって形成される請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
酸化セリウムを添加する際に1000℃超の温度で融解している請求項1ないし14のいずれかに記載の、好ましくは請求項15または16に記載のガラスを製造するプロセス。
【請求項18】
請求項1ないし14のいずれかに記載のガラスを光増幅器用の光学活性ガラスとして使用すること。
【請求項19】
前記光増幅器が、平坦性を有する増幅器である請求項18に記載のガラスの使用。
【請求項20】
請求項1ないし14のいずれかに記載のガラスをレーザー用の光学活性ガラスとして使用すること。
【請求項21】
請求項1ないし14のいずれかに記載のガラスを非線形の光学ガラスとして使用すること。
【請求項22】
1つのコア、および前記コアを取り巻く少なくとも1つのクラッドを有するガラスファイバであって、少なくとも前記コアまたは前記クラッドが請求項1ないし14のいずれかに記載のガラスを有するガラスファイバ。
【請求項23】
前記コアが、請求項2ないし14のいずれかに記載の光学活性なガラスを有する請求項22に記載のガラスファイバ。
【請求項24】
プラスチックで作られているクラッドを含む請求項22または23に記載のガラスファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−518325(P2006−518325A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501581(P2006−501581)
【出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000530
【国際公開番号】WO2004/074197
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】