説明

酸化ビスマス系光ファイバ製造方法

【課題】 強度低下の要因となる傷、異物、結晶などをプリフォームの表面から除去することができる酸化ビスマス系光ファイバ製造方法を提供する。
【解決手段】 プリフォームを線引きして酸化ビスマス系光ファイバを製造する方法であって、プリフォームを超音波を印加しながら硝酸水溶液によりエッチングし、当該エッチングされたプリフォームを線引きして酸化ビスマス系光ファイバを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化ビスマス系光ファイバの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信に一般に用いられている石英系ガラスからなる光ファイバ(以下、石英系光ファイバという。)は、VAD(Vapor phase Axial Deposition)法、OVD(Outside Vapor phase Deposition)法あるいはMCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法等の方法を用いて所望のコア・クラッド比となるプリフォームを作製した後、当該プリフォームを所定の外径に延伸し、延伸されたプリフォームを線引き装置により線引きして製造されている。
【0003】
この際、線引きされるプリフォームの表面に傷や異物の付着があると、線引きされた光ファイバに欠点として残留し、この欠点に生じる応力集中により光ファイバの機械的強度が著しく低下し、歩留まりおよび品質の低下を引き起こす。また、線引き中に欠点部分で破断を起こした場合、再び線引きを開始するまでに相当の時間および作業量を要するため光ファイバの生産性が著しく低下する。そこで、石英系光ファイバの製造においては、上記の問題を解決する為に、プリフォームに火炎研磨や、酸もしくはアルカリ等の腐食性溶液を用いたエッチング洗浄による化学的研磨を施し、プリフォームの表面の傷や異物を除去するようにしている。
【0004】
ところで、近年の通信容量の増大(ブロードバンド化)のニーズに対して、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)光通信方式の実用化が始まっている。このWDM光通信方式は、波長の異なる光信号を同時にファイバ中を伝送させる方式であり、多重化されたチャンネルの数だけ伝送容量を増加させることができる。そして、さらなる伝送容量の増加のために、多重化が実用化されているCバンド(1530〜1560nm)の波長域に加え、Lバンド(1570〜1600nm)やSバンド(1530nm以下)の波長域への広帯域化が検討されている。
【0005】
そして、WDM光通信方式の広帯域化に伴い、光ファイバ中を伝送される光信号の減衰を補償するための光ファイバアンプにも広帯域化が求められている。光ファイバアンプとしては、エルビウム(Er)イオンをドープした光ファイバ(EDF:Erbium Doped Fiber)に、レーザーによる励起光と減衰した光信号とを同時に入れ、励起光のエネルギを利用したErイオンの誘導増幅作用により光信号を増幅するものが一般的に用いられている。この光ファイバアンプの光ファイバには、従来、石英系光ファイバが用いられているが、石英系光ファイバに比べてより広帯域にわたって大きな増幅率を得られる、酸化物系多成分ガラスである酸化ビスマス系ガラスからなる光ファイバ(以下、酸化ビスマス系光ファイバという。)が注目されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
酸化ビスマス系光ファイバの製造においては、酸化ビスマス系ガラスの融液からプリフォームを作製すること以外は基本的に上記した石英系光ファイバと同様の工程を適用することが可能であり、やはり、線引きされるプリフォームの表面の平滑性、清浄性が重要となる。石英系光ファイバの製造においてはVAD法などによる気相反応でプリフォームを形成しているのに対し、酸化ビスマス系光ファイバの製造においてはガラス融液を金型に流し込んでプリフォームを形成するので、例えば、ガラス融液の金型との界面(即ち、プリフォームの表面)に結晶が発生し易く、また、金型材料等の異物が付着し易く、これらの結晶や異物を通常の洗浄で完全に除去することは不可能であり、物理的もしくは化学的研磨を伴ったプリフォームの表面の洗浄が不可欠である。
【0007】
しかし、酸化ビスマス系ガラスは一般的に再加熱工程において結晶化が起こり易く、石英系光ファイバの製造工程で一般的に行なわれている火炎研磨を適用することは困難である。また、研磨剤を用いた研削研磨も、表面に微小傷が残ることや、表面に残留した研磨剤の除去が困難である等の課題が残る。適用可能な従来の研磨方法としては、酸もしくはアルカリ等の腐食性溶液を用いたエッチング洗浄による化学的研磨方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
特許文献2に開示された化学的研磨方法は、30〜80質量%のPbOと10〜50質量%のSiOとを少なくとも含む、酸化物系多成分ガラスである鉛ガラスからなるプリフォームの化学的研磨方法であって、図3に示すように、研磨装置100において、容器101の中に腐食性溶液である酸液102を入れ、この酸液102中に被処理ガラス体103を浸漬してモータ104で回転させる。また、容器101の下に設けてあるマグネチックスターラー105によって回転子106を回転させる。これにより、酸液102を被処理ガラス体103に動的に接触させるようにしてエッチングしている。酸液102としては、具体的には、フッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO)との混酸の水溶液であって、HF/HNOの質量比が0.08/1〜15/1とされ且つ、該混酸の濃度が0.01〜4.0質量%とされたものが用いられている。
【特許文献1】特開2003−183049号公報
【特許文献2】特開平7−215736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、酸化ビスマス系ガラスからなるプリフォームの線引き前のエッチング技術は知られておらず、鉛ガラスからなるプリフォームの線引き前のエッチング技術として知られている上記特許文献2に開示された化学的研磨方法を酸化ビスマス系ガラスからなるプリフォームの線引き前のエッチングに適用しようとすると、次のような問題の発生が懸念される。
(問題1)腐食性溶液がFを含むものであるとプリフォームの表面に再析出物が付着しやすい。
(問題2)再析出物がプリフォームの表面に付着することを防止するために、特許文献2に開示されている化学的研磨方法と同様に、プリフォームを遥動・回転させて、もしくは腐食性溶液を攪拌して、プリフォームの表面に腐食性溶液を動的に接触させる(即ち、プリフォームの表面に接触する腐食性溶液を流動させる)構成とした場合に、装置の機構が複雑になる。
【0010】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、強度低下の要因となる傷、異物、結晶などをプリフォームの表面から除去することができる酸化ビスマス系光ファイバ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、硝酸水溶液を用いて超音波を印加しながらエッチングを行うと上記(問題1)および(問題2)を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
本発明に係る酸化ビスマス系光ファイバ製造方法は、プリフォームを線引きして酸化ビスマス系光ファイバを製造する方法であって、プリフォームを超音波を印加しながら硝酸水溶液によりエッチングし、当該エッチングされたプリフォームを線引きして酸化ビスマス系光ファイバを製造することを特徴としている。
【0013】
上記のように構成された酸化ビスマス系光ファイバ製造方法においては、プリフォームを硝酸水溶液により超音波を印加しながらエッチングしている。酸化ビスマス系ガラスの骨格を成す網の目構造は硝酸イオンによって切断され易く、硝酸イオンを含む硝酸水溶液を用いることにより、濃度や時間によるエッチング量の管理を容易とすることができると共に、水溶液に一度溶解した成分が再析出しにくくなる。そして、超音波印加によるキャビテーション効果と振動の加速度による効果とで、水溶液に一度溶解した成分が再析出してプリフォームの表面に付着・成長することを抑制することができ、装置の機構を複雑にすることなく再析出物の付着防止に高い効果を発揮する。これにより、酸化ビスマス系ガラスからなるプリフォームの表面から傷、異物、結晶などを除去することができ、当該プリフォームから線引きされた光ファイバの機械的強度を向上させることができる。
【0014】
そして、本発明に係る酸化ビスマス系光ファイバ製造方法においては、前記硝酸水溶液の硝酸濃度が0.5質量%以上であることが好ましい。
【0015】
そして、本発明に係る酸化ビスマス系光ファイバ製造方法においては、前記超音波の周波数が20kHz〜1MHzである超音波を印加することが好ましい。
【0016】
そして、本発明に係る酸化ビスマス系光ファイバ製造方法においては、酸化ビスマス系光ファイバがBiを典型的に30〜70モル%含有するガラスからなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、酸化ビスマス系光ファイバの製造において、エッチングに用いる腐食性溶液に一度溶解した成分が再析出してプリフォームの表面に付着するという従来技術で懸念された問題を解消でき、これにより強度低下の要因となる傷、異物、結晶などをプリフォームの表面から除去して高強度な酸化ビスマス系光ファイバを安定に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る酸化ビスマス系光ファイバの製造方法の一実施形態を詳細に説明する。
尚、本明細書において酸化ビスマス系ガラスとは、モル%表示で典型的に、Bi:30〜70%、SiO+B:15〜40%、Al+Ga:1〜25%、ZnO:0〜10%、In:0〜20%、La:0〜5%、CeO:0〜0.5%の組成を有するガラスであり、コアとなるガラスにはErが添加される。ここで、例えばZnOが0〜10%であるとは、ZnOは必須ではないが10%まで含有してもよい、の意である。
【0019】
本発明に係る酸化ビスマス系光ファイバの製造方法に用いられるプリフォームは、例えば、円柱状のコア用ガラスロッドを、当該コア用ガラスロッドより僅かに大きな内径を有する中空円筒状のクラッド用ガラス管に挿入し、これらを加熱して一体化させながら延伸することによりコア・クラッド構造を備えて作製される。
【0020】
上記のコア用ガラスロッドは、酸化ビスマス系ガラス材料を溶融・攪拌し、適宜な時間清澄した後に徐冷して固化させ、得られた固体を所望の寸法(例えば、直径3mm)に成形した後に表面を洗浄して作製される。尚、このコア用ガラスロッドの洗浄についても、本発明に係る酸化ビスマス系光ファイバの製造方法における後述の硝酸水溶液を用いたエッチングを適用しても良い。
【0021】
上記のクラッド用ガラス管は、所謂「ローテイショナルキャスティング法」(D.C.Tran et al。Electron.Lett.,Vol18,1982,PP657−658.参照。)を用いて遠心力を利用して作製することができる。即ち、適宜な温度で予熱された中空円筒状の鋳型を回転成形機へ載せ、溶融した酸化ビスマス系ガラス材料を前記鋳型へ流し込み、横向き状態で回転(典型的には3000rpm)させ、所望の寸法(例えば、内径4mm、長さ150mm)の有底の中空円筒状に作製される。尚、ローテイショナルキャスティング法により作製されたガラス管の内周面はファイアポリッシュ面であることが特長として知られており、このように作製されたクラッド用ガラス管は極めて高い平滑度の内周面を有するものとなっている。
【0022】
そして、本発明に係る酸化ビスマス系光ファイバの製造方法においては、硝酸水溶液を用いてプリフォームの表面をエッチングする。以下、プリフォームの表面処理の一例について説明する。
【0023】
プリフォームの表面処理は、有機溶剤を用いてプリフォームの表面を洗浄する工程(ステップ1)と、有機溶剤により洗浄されたプリフォームを乾燥させる工程(ステップ2)と、乾燥したプリフォームの表面を硝酸水溶液を用いてエッチングする工程(ステップ3)と、硝酸水溶液によりエッチングされたプリフォームの表面を純水を用いて洗浄する工程(ステップ4)と、純水により洗浄されたプリフォームの表面を有機溶剤を用いて洗浄する工程(ステップ5)と、有機溶剤により洗浄されたプリフォームを乾燥させる工程(ステップ6)と、を経て行われる。
【0024】
上記ステップ1の工程における有機溶剤を用いたプリフォームの表面の洗浄は、プリフォームの表面に付着した有機物を除去することを目的として行われる。また、上記ステップ5の工程における有機溶剤を用いたプリフォームの表面の洗浄は、プリフォームを構成している酸化ビスマス系ガラスの耐水性が高くないので、プリフォームの表面に付着している水(純水)を有機溶剤と置換して除去することを目的として行われる。尚、有機溶剤としては、メタノール,エタノール,アセトン,プロパノール,イソプロピルアルコール(IPA)等を例示することができるが、水との親和性やコストなどを考慮してイソプロピルアルコールを用いることが好ましい。
【0025】
そして、上記ステップ3の工程における硝酸水溶液を用いたプリフォームの表面のエッチングは、通常、硝酸濃度が0.5質量%以上の硝酸水溶液を用い、周波数20KHz〜1MHzの超音波を印加しながら行われる。例えば、超音波洗浄器を用い、洗浄槽内もしくは洗浄槽に置かれた容器内に硝酸水溶液を満たし、洗浄槽の壁面もしくは前記容器の壁面とプリフォームの表面との間に隙間を置くようにプリフォームの軸方向の両端部を支持する治具を用いてプリフォームを硝酸水溶液中に静置して行われる。尚、洗浄槽もしくは前記容器は硝酸に対して高い耐蝕性を有する、例えば石英ガラス製とされる。また、硝酸の濃度は、本発明に係る酸化ビスマス系光ファイバ製造方法を適用されるプリフォームの組成によって適切に選ばれるが、典型的には20質量%以下である。
【0026】
印加する超音波の周波数はエッチング速度によって変更することが望ましい。エッチング速度は、ガラスの組成とエッチングに使用する硝酸水溶液との組み合わせによって異なるが、エッチング速度が0.1μm/min以下となるようなエッチング速度の低い条件(即ち、ガラスの組成と硝酸水溶液との組み合わせ)においては、キャビテーション効果の高い20KHz〜200KHzの周波数の超音波を印加することが好ましい。一方、エッチング速度が1μm/min以上となるようなエッチング速度の高い条件においては、エッチング量の管理を容易とするために、キャビテーション効果に代わって腐食性溶液の高速振動の加速度による効果が支配的となる1MHz付近の高周波数の超音波を印加することが好ましい。尚、溶液に超音波を印加すると、周波数に応じた定在波が溶液中に生じ、この定在波の波長λに関してλ/2の整数倍毎に洗浄効果の高い箇所が発生するので、複数の周波数を高速に切り替えることが好ましく、これによりさらに均質なエッチングを行うことができる。
【0027】
また、上記ステップ1、ステップ4、およびステップ5の工程においても超音波を印加するようにして、各工程における洗浄効果を高めるようにしてもよい。尚、上記ステップ1〜6の工程は、プリフォームの両端部を支持している前記治具ごと移動させて順次行われる。
【0028】
そして、上述の表面処理を施されたプリフォームを線引きして酸化ビスマス系光ファイバを作製する。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の酸化ビスマス系光ファイバの製造方法によれば、酸化ビスマス系ガラスからなるプリフォームを硝酸水溶液によりエッチングしており、プリフォームの表面から傷、異物、結晶などを確実に除去することができる。これにより、当該プリフォームから線引きされた光ファイバの機械的強度を向上させることができる。そして、この光ファイバを使用した光増幅器などの信頼性を向上させることができるので、光通信システムのコストダウン、高性能化が図れるという利点がある。
【0030】
尚、本発明の酸化ビスマス系光ファイバの製造方法は、上述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。例えば、上述した表面処理を施されたプリフォームを再度加熱延伸し、当該加熱延伸されたプリフォームに再度上述の表面処理を施して線引きする場合もある。
【実施例】
【0031】
以下、上述した本発明に係る酸化ビスマス系光ファイバの製造方法に基づき作製した酸化ビスマス系光ファイバについて説明する。
【0032】
(実施例1)
実施例1において、プリフォーム形状のガラス(本例において以下、プリフォームという。)を形成する酸化ビスマス系ガラスとしては、モル%表示で、Bi:43%、SiO:34%、Al+Ga:21%、La:1%、CeO:1%未満の組成のものを使用した。
【0033】
ガラス母材を、研削加工後、酸化セリウムを用いて鏡面研磨して直径15mm、長さ150mmとし、IPA超音波洗浄(5分)⇒自然乾燥⇒硝酸水溶液(10質量%濃度)超音波エッチング洗浄(3分)⇒純水超音波洗浄(3分)⇒IPA超音波洗浄(3分)⇒自然乾燥の手順で上述した表面処理を施し、直径が5mmになるよう加熱延伸した。尚、超音波洗浄器としては28kHz/31kHz高速切り替え型(110W)のものを使用した。プリフォーム表面には再析出物が認められなかった。
【0034】
次に、表面処理を施された直径5mmのプリフォームを長さ180mmに切り出し、切り出されたプリフォームに、IPA超音波洗浄(5分)⇒自然乾燥⇒硝酸水溶液(10質量%濃度)超音波エッチング洗浄(13分)⇒純水超音波洗浄(3分)⇒IPA超音波洗浄(3分)⇒自然乾燥の手順で再度表面処理を施した。プリフォームの表面には再析出物が認められなかった。
【0035】
以上の手順で作製したプリフォームを、SUS製クランプ治具を用いて線引き装置に取り付け、線引きし、その表面にUV硬化樹脂をコートして酸化ビスマス系光ファイバとした。この光ファイバの強度を測定した所、最高1.8GPaの高強度を達成した。
【0036】
比較例1として、実施例1と同様の手順において硝酸水溶液(10質量%濃度)エッチングを施す際に超音波を印加せずに作製したプリフォームから線引きした酸化ビスマス系光ファイバを用意した。実施例1の酸化ビスマス系光ファイバ、および、比較例1の酸化ビスマス系光ファイバの引張試験の結果を図1に示す。尚、図1は引張試験の結果をワイブルプロットの形にまとめたグラフである。このグラフにおいて、引張強度を示す折れ線が図1中右側に位置するほど光ファイバの引張強度が高いことを意味し、また、横軸に対して折れ線の傾きが垂直に近いほど光ファイバの引張強度が光ファイバの長さ方向にわたって均質であることを意味する。
【0037】
図1より、実施例1の酸化ビスマス系光ファイバは、比較例1のものよりも、光ファイバの長さ方向にわたって均質且つ高強度であることがわかる。
【0038】
(実施例2)
実施例2において、プリフォームのクラッドを形成する酸化ビスマス系ガラスとしては、モル%表示で、Bi:43%、SiO:34%、Al+Ga:21%、La:1%、CeO+CoO:1%未満の組成のものを使用した。
【0039】
上述したように中空円筒状のクラッド用ガラス管内に円柱状のコア用ガラスロッドを挿入し、これらを加熱して一体化させながら延伸して、直径5mmのプリフォームを作製した。そして、IPA超音波洗浄(5分)⇒自然乾燥⇒硝酸水溶液(10質量%濃度)超音波エッチング(7分)⇒純水超音波洗浄(3分)⇒IPA超音波洗浄(3分)⇒自然乾燥の手順で上述した表面処理を施し、直径が5mmになるよう加熱延伸した。尚、超音波洗浄器としては28kHz/31kHz高速切り替え型(110W)のものを使用した。プリフォーム表面には再析出物が認められなかった。
【0040】
以上の手順で作製したプリフォームを、SUS製クランプ治具を用いて線引き装置に取り付け、線引きし、その表面にUV硬化樹脂をコートして酸化ビスマス系光ファイバとした。この光ファイバの強度を測定した所、最高1.6GPaの高強度を達成した。
【0041】
比較例2として、実施例2と同様の手順において硝酸水溶液(10質量%濃度)エッチングを施す際に超音波を印加せずに作製したプリフォームから線引きした酸化ビスマス系光ファイバを用意した。実施例2の酸化ビスマス系光ファイバおよび比較例2酸化ビスマス系光ファイバの引張試験の結果を図2に示す。尚、図2は引張試験の結果をワイブルプロットの形にまとめたグラフである。このグラフにおいて、引張強度を示す折れ線が図2中右側に位置するほど光ファイバの引張強度が高いことを意味し、また、横軸に対して折れ線の傾きが垂直に近いほど光ファイバの引張強度が光ファイバの長さ方向にわたって均質であることを意味する。
【0042】
図2より、実施例2の酸化ビスマス系光ファイバは、比較例2のものよりも、光ファイバの長さ方向にわたって均質且つ高強度であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る酸化ビスマス系光ファイバの製造方法により作製された酸化ビスマス系ガラス光ファイバの引張試験の結果と比較例の結果を示すグラフ図である。
【図2】本発明に係る酸化ビスマス系光ファイバの製造方法により作製された酸化ビスマス系ガラス光ファイバの引張試験の結果と比較例の結果を示すグラフ図である。
【図3】従来のプリフォームの化学的研磨方法を実施する装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0044】
100 従来の研磨装置
101 容器
102 酸液
103 被処理ガラス体
104 モータ
105 マグネチックスターラー
106 回転子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームを線引きして酸化ビスマス系光ファイバを製造する方法であって、プリフォームを超音波を印加しながら硝酸水溶液によりエッチングし、当該エッチングされたプリフォームを線引きすることを特徴とする酸化ビスマス系光ファイバ製造方法。
【請求項2】
前記硝酸水溶液の硝酸濃度が0.5質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の酸化ビスマス系光ファイバ製造方法。
【請求項3】
前記超音波の周波数が20kHz〜1MHzであることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化ビスマス系光ファイバ製造方法。
【請求項4】
酸化ビスマス系光ファイバがBiを30〜70モル%含有するガラスからなることを特徴とする請求項1、2または3に記載の酸化ビスマス系光ファイバ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−143557(P2006−143557A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339009(P2004−339009)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】