説明

酸化マグネシウム焼結体及びその製造方法

【課題】成膜時にスプラッシュ発生の抑制が可能であり、成膜装置の供給口での詰まりが発生しにくい酸化マグネシウム焼結体、及び、これを用いたPDPの保護膜用蒸着材、並びに、前記焼結体の製造方法を提供する。
【解決手段】酸化マグネシウムと、マグネシウム以外の周期表第2A族元素の酸化物3〜50質量%と、必要によりアルミニウム、イットリウム、セリウム、ジルコニウム、スカンジウム、及びクロムからなる群より選ばれる一種類又は二種類以上の元素を1000ppm以下を含む酸化マグネシウム焼結体であって、その形状が、円板状、楕円板状、多角形板状若しくは半月板状であるか、又は、立方体若しくは直方体の頂点に丸みを持たせた形状である酸化マグネシウム焼結体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)における保護膜を形成可能な蒸着材として好適な酸化マグネシウム焼結体、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PDPは2枚のガラス基板の間隙に密閉された微小な放電空間を多数設けた表示デバイスである。たとえば、マトリックス表示方式のPDPでは、多数の電極が格子状に配列され、各電極の交差部の放電セルを選択的に発光させて画像を表示する。代表的な面放電型のAC型PDPでは、前面板の表示電極は誘電体層で被覆され、さらに誘電体層上に保護膜が形成されている。保護膜は、誘電体層が直接放電にさらされることで誘電体層表面が変化して放電開始電圧が上昇するのを防止する役割を有しており、イオン衝撃のスパッタリングによって変化しないという特性を示す層である。
【0003】
現在、PDP用の保護膜は、酸化マグネシウム等の焼結体をターゲット材とする電子ビーム蒸着法により誘電体層上に形成されることが一般的である。しかし、PDPを更に省電力化するために放電開始電圧を更に下げることが要求され、PDP用の保護膜としても、低い放電開始電圧を有し、二次電子放出係数が高く、スパッタリングに強い材料が求められている。
【0004】
このような観点から、保護膜を構成する材料として、高純度の酸化マグネシウムからなる蒸着材が提案されている(特許文献1〜3を参照)。これら保護膜材料は、放電開始電圧が比較的低く、耐スパッタ性が良好であるため好ましい。
【0005】
特許文献1では、酸化マグネシウム純度が99.0%以上、相対密度が90.0%以上、外形体積が35〜1500mmである酸化マグネシウム蒸着材が記載されている。
【0006】
特許文献2では、表面粗さRaが1.0μm〜10μm、実表面積が200mm〜1200mm、外形体積が30mm〜1500mm、比表面積が20cm/g〜100cm/g、酸化マグネシウム純度が99.0%以上、相対密度が90.0%以上である酸化マグネシウム蒸着材が記載されている。
【0007】
特許文献3では、酸化マグネシウム純度が99.0%以上、相対密度が90.0%以上、外形体積が35mm〜1500mmである酸化マグネシウム蒸着材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−43955号公報
【特許文献2】特開2004−43956号公報
【特許文献3】特開2008−274442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
酸化マグネシウム蒸着材が立方体又は直方体の形状を呈するものであると、その八個の隅に位置する鋭角な突起部では蒸着材同士が点接触となるため蒸着の際に照射される電子ビームによる熱が拡散しにくく、局所的に急速加熱されるため、スプラッシュ(突沸)が発生しやすい。スプラッシュの発生頻度が高い場合には膜表面への蒸着材の付着が起こるためPDPの表示不良が発生するという問題があった。
【0010】
また、酸化カルシウムを含む酸化マグネシウム蒸着材では、高純度の酸化マグネシウムからなる蒸着材と比較して、焼結体表面の円滑性に劣り、摩擦が生じやすく、流れ性が低下していることから、成膜装置に蒸着材を供給する際、発生する摩擦やブリッジ等により、供給口が蒸着材によって詰まりやすいという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、酸化マグネシウム焼結体を蒸着材として用いて成膜する際にスプラッシュ発生の抑制が可能であるとともに、成膜装置に蒸着材を供給する際に供給口のつまりが発生しにくい酸化マグネシウム焼結体、及び、これを用いたPDPの保護膜用蒸着材、並びに、前記焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者が検討したところ、酸化マグネシウム焼結体の組成を、酸化マグネシウムと、マグネシウム以外の周期表第2A族元素の酸化物とを特定量含むように調整し、かつ焼結体の形状を、円板状、楕円板状、多角形板状若しくは半月板状、又は、立方体若しくは直方体の頂点に丸みを持たせた形状とすることで、当該酸化マグネシウム焼結体を蒸着材として用いて成膜する際にスプラッシュ発生の抑制が可能であり、蒸着材破片の付着によるPDPの表示不良を防止することができる。さらに、成膜装置に蒸着材を供給する際に供給口のつまりが発生しにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、酸化マグネシウムと、マグネシウム以外の周期表第2A族元素の酸化物3〜50質量%と含む酸化マグネシウム焼結体であって、その形状が、円板状、楕円板状、多角形板状若しくは半月板状であるか、又は、立方体若しくは直方体の頂点に丸みを持たせた形状であることを特徴とする酸化マグネシウム焼結体に関する。
【0014】
また本発明は、当該酸化マグネシウム焼結体からなる、プラズマディスプレイパネルの保護膜用蒸着材にも関する。
【0015】
さらに本発明は、前記酸化マグネシウム焼結体を製造する方法であって、マグネシウム含有化合物粉末、マグネシウム以外の周期表第2A族元素含有化合物粉末、及び、バインダーを混合して混合物を調製する工程、前記混合物を造粒し、乾燥して造粒粉末を得る工程、前記造粒粉末を型内で成形して成形体を形成する工程、並びに、前記成形体を焼結する工程を含む、酸化マグネシウム焼結体の製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の酸化マグネシウム焼結体によれば、形状が円板状、楕円板状、多角形板状若しくは半月板状、又は、立方体若しくは直方体の八個の頂点に丸みを持たせた形状であるので、通常の立方体や直方体と比較して鋭角な突起部が少なく、蒸着の際に照射された電子ビームによる局所加熱が回避されるため、スプラッシュの発生を抑制することができる。さらに、これらの形状のために、成膜装置に蒸着材を供給する際に供給口のつまりを発生しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】円板状を呈している本発明の酸化マグネシウム焼結体を示す斜視透視図
【図2】通常の直方体状の酸化マグネシウム焼結体(比較例)を示す斜視透視図
【図3】直方体の頂点に丸みを持たせた形状を呈している本発明の酸化マグネシウム焼結体を示す斜視透視図
【図4】焼結体の流れ性を確認するための装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の酸化マグネシウム焼結体は、構成成分として酸化マグネシウムを主体とし、さらに、マグネシウム以外の周期表第2A族元素の酸化物を含有する。焼結体とは、粉末の集合体を、融点よりも低い温度で加熱することで、粉体の固相拡散、ネック部の成長、結晶粒界の移動などによって粉末同士が連結して製造された緻密な成形体のことをいう。
【0019】
マグネシウム以外の周期表第2A族元素としては、カルシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム、及び、ラジウムが挙げられる。これらを1種類のみ使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、バンドギャップが小さく、放電開始電圧を低下させる効果が高いため、カルシウムが好ましい。
【0020】
本発明の酸化マグネシウム焼結体におけるマグネシウム以外の周期表第2A族元素の酸化物の含量は3〜50質量%である。3質量%未満であると、低電圧効果が不十分であり、50質量%を超えると、焼結体強度が急激に低くなりスプラッシュが発生しやすくなり、成膜装置の供給口の詰まりも起こりやすくなる。好ましくは5〜35質量%であり、より好ましくは9〜25質量%である。
【0021】
また、本発明の酸化マグネシウム焼結体に焼結助剤として前記酸化マグネシウムにアルミニウム、イットリウム、セリウム、ジルコニウム、スカンジウム、及びクロムからなる群より選ばれる一種類又は二種類以上の元素を1000ppm以下添加することができる。焼結助剤を添加することにより焼結体表面の円滑性が改善されるが、多量に添加するとPDP用保護膜としての特性を劣化させてしまうため、好ましくは500ppm以下であり、より好ましくは300ppm以下である。
【0022】
本発明の酸化マグネシウム焼結体の形状は、円板状、楕円板状、多角形板状若しくは半月板状であるか、又は、立方体若しくは直方体の頂点に丸みを持たせた形状である。これにより、通常の立方体や直方体と比較して鋭角な突起部が少なくなり、蒸着の際に照射された電子ビームが特定箇所に集中しにくくなる。その結果、スプラッシュの発生を抑制することができる。さらに、酸化カルシウムを含む酸化マグネシウム焼結体であるために表面の円滑性に劣り摩擦が生じやすいものの、円板状、楕円板状、多角形板状若しくは半月板状であるか、又は、立方体若しくは直方体の頂点に丸みを持った形状であるために、流れ性が改善され、成膜装置に蒸着材を供給する際に供給口の詰まりを発生しにくくすることができる。
【0023】
図1は、円板状を呈している本発明の酸化マグネシウム焼結体を示す斜視透視図である。円板状とは、図1に示すように、円形の板状のものをいう。また、楕円板状とは、前記円板状において底面を構成する面が楕円であるものをいい、多角形板状とは、前記円板状において底面を構成する面が多角形であるものをいい、半月板状とは、前記円板状において底面を構成する面が半円(円を直径で2等分した一方のもの)であるものをいう。
【0024】
図2は、通常の直方体状の酸化マグネシウム焼結体(比較例)を示す斜視透視図であり、図3は、直方体の頂点に丸みを持たせた形状を呈している本発明の酸化マグネシウム焼結体を示す斜視透視図である。直方体の頂点に丸みを持たせた形状とは、図3に示すように、全体としては直方体の形状を保持しているものの、直方体の8つの頂点が削りとられて丸みを帯びている形状をいう。
【0025】
次に本発明の酸化マグネシウム焼結体を製造する方法を説明する。
【0026】
本発明の酸化マグネシウム焼結体は、マグネシウム含有化合物粉末、マグネシウム以外の周期表第2A族元素含有化合物粉末、及び、バインダーを混合して混合物を調製する工程、前記混合物を造粒し、乾燥して造粒粉末を得る工程、前記造粒粉末を型内で成形して成形体を形成する工程、並びに、前記成形体を焼結する工程を経ることにより製造することができる。アルミニウム、イットリウム、セリウム、ジルコニウム、スカンジウム、及びクロムからなる群より選ばれる一種類又は二種類以上の元素をも含む焼結体を製造する場合には、混合物調製工程で、アルミニウム、イットリウム、セリウム、ジルコニウム、スカンジウム、及びクロムからなる群より選ばれる一種類又は二種類以上の元素含有化合物をさらに混合すればよい。ここで、マグネシウム含有化合物としては、例えば、マグネシウムの酸化物、炭酸化物、水酸化物が挙げられる。マグネシウム以外の周期表第2A族元素含有化合物としては、例えば、マグネシウム以外の周期表第2A族元素の酸化物、炭酸化物、水酸化物が挙げられる。アルミニウム、イットリウム、セリウム、ジルコニウム、スカンジウム、及びクロムからなる群より選ばれる一種類又は二種類以上の元素含有化合物としては、例えば、アルミニウム、イットリウム、セリウム、ジルコニウム、スカンジウム、及びクロムからなる群より選ばれる一種類又は二種類以上の元素の酸化物、炭酸化物、水酸化物が挙げられる。
【0027】
具体的には、まず、高純度(例えば99.9%以上の純度)のマグネシウムの酸化物粉末、炭酸化物粉末又は水酸化物粉末等の化合物からなる原料粉末のD50粒子径を0.1〜10μm程度、好ましくは0.2〜2μm程度に調節する。
【0028】
別途、高純度(例えば99%以上の純度、好ましくは99.9%以上の純度)の、マグネシウム以外の周期表第2A族元素の酸化物粉末、炭酸化物粉末又は水酸化物粉末等の化合物粉末のD50粒子径を、好ましくは1〜20μm程度に調節する。
【0029】
これら粉末を所定の重量比で混合し、さらに樹脂バインダー溶液を適当量添加して、十分に混合後、造粒する。造粒には、転動造粒法やスプレー造粒法等が利用できる。得られた造粒体を乾燥後、所定の金型に投入して、円板状、楕円板状、多角形板状若しくは半月板状、又は、立方体若しくは直方体の頂点に丸みを持たせた形状に成形する。成形には例えば1軸プレス装置などを使用することができる。金型圧力は、得られる成形体の相対密度を調整するために、例えば、0.01〜600MPaに設定することが好ましい。
【0030】
次に、得られた成形体を焼成することによって、本発明の酸化マグネシウム焼結体を得る。この焼成は、焼成温度:1300〜1800℃、焼成時間:0.5〜20時間にそれぞれ設定することが好ましい。焼成には、電気炉、ガス炉等が利用できる。
【0031】
前記樹脂バインダーとしては、特に限定されず、例えばCMC(カルボキシメチルセルロース)、PVA(ポリビニルアルコール)、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等からなるバインダーを使用することができる。その使用量としては、酸化物換算した粉末量の合計100重量部に対して、固形分で1〜10重量部程度である。バインダー濃度は5%〜50%程度にすることが好ましい。
【0032】
本発明の酸化マグネシウム焼結体は、プラズマディスプレイパネルの保護膜を電子ビーム蒸着法やイオンプレーティング法、スパッタリング法等の真空蒸着法で成膜する際に成膜原料として使用する蒸着材として好適に利用することができる。本発明の酸化マグネシウム焼結体を利用すると、蒸着時のエネルギー効率が良好でありながら、スプラッシュも発生しにくく、不良の発生を抑え膜性能に優れた保護膜を形成することができる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
酸化マグネシウム粉末(純度99.9%、D50粒子径(体積基準のメディアン径)0.5μm)90gに、炭酸カルシウム粉末(純度99.99%、D50粒子径 8.63μm)を、焼結体中の酸化カルシウム含有量が10重量%となる量を添加した。次に、有機溶剤を、酸化マグネシウムと炭酸カルシウムの混合粉末に対して100〜200重量%添加した。得られた混合物を、ナイロンボールを入れた樹脂性ポットに入れ、8時間粉砕・混合した。
【0035】
粉砕・混合後、上記樹脂製ポットに、有機溶剤で30%に希釈したアクリル系バインダ溶液を、酸化マグネシウムと炭酸カルシウムの混合粉末に対して固形分換算で2〜10重量%添加し、30分間混合しスラリーを作製した。
【0036】
作製したスラリーをスプレードライヤーにて噴霧乾燥させ造粒体を作製し、この造粒体を所定の金型に入れ、一軸プレス機にて圧力400MPaで成形した。
【0037】
成形後、ガス炉にて大気雰囲気中、300℃×1時間の条件で脱脂工程を行った後、1600℃で8時間保持して焼成工程を行い、径6.0mm×厚み2.5mmの円板状の焼結体を得た。
【0038】
以上により得られた酸化カルシウムを含む酸化マグネシウム焼結体を蒸着材としてハース内に10kg充填した後、電子ビーム蒸着装置を使用して出力18kV、900mAで15分間、基板上に蒸着を行った。この成膜時にビューポートより目視でスプラッシュの発生状態を観察し、さらに、成膜後に薄膜表面を観察し、下記評価基準に基づいて3段階で評価した。
◎:スプラッシュ、膜表面への蒸着材破片の付着ともに観測されず。
○:スプラッシュは観測されたが、膜表面への蒸着材破片の付着は観測されず。
×:スプラッシュを多数観測し、膜表面への蒸着材破片の付着を確認。
【0039】
また、成膜装置への焼結体の流れ性を確認する為に、角度35°で傾斜させたステンレス製の板の上にステンレス製の棒を2本を図4のように設置し、棒の間に蒸着材投入して、下記評価基準に基づいて3段階で評価した。
○:蒸着材の供給がスムーズであり、ブリッジ(供給パイプ内で2つ以上の蒸着材同士が押し合うことで塊を形成したもの)が発生しない。
△:蒸着材の供給はスムーズだが、ブリッジが発生した。
×:蒸着材の供給がスムーズではなく、ブリッジも発生した。
【0040】
(最大静止摩擦力の測定方法)
焼結体の摩擦力を確認するため、角度を変化させえるステンレス製の溝に蒸着材を投入し、滑り始める角度θから、焼結体にかかる力を最大静止摩擦力:Fとして下記の計算式より算出した。
【0041】
F(×10-3N)=μ・m・g・cosθ
μ:静摩擦係数(μ=tanθとして算出)
m:焼結体重量
g:重力加速度
(酸化カルシウム濃度の測定法)
焼結体中の酸化カルシウムの濃度は、試料を酸に溶解した後、ICP発光分析装置(Agilent社製:4500)を使用して測定した。
【0042】
(実施例2)
焼結体中の酸化カルシウムの含有量を3重量%とし、焼結体の形状を径8.0mm×厚み3.0mmの円板状に変更した以外は、実施例1と同様に酸化マグネシウム焼結体を製造し、評価を行った。
【0043】
(実施例3)
炭酸カルシウムを水酸化カルシウムに変更し、焼結体中の酸化カルシウムの含有量を15重量%とし、焼結体の形状を径10mm×厚み3.5mmの円板状に変更した以外は、実施例1と同様に酸化マグネシウム焼結体を製造し、評価を行った。
【0044】
(実施例4)
焼結体中の酸化カルシウムの含有量を25重量%とした以外は、実施例1と同様に酸化マグネシウム焼結体を製造し、評価を行った。
【0045】
(実施例5)
炭酸カルシウムを水酸化カルシウムに変更し、焼結体中の酸化カルシウムの含有量を35重量%とし、焼結体の形状を径8mm×厚み3.0mmの円板状に変更した以外は、実施例1と同様に酸化マグネシウム焼結体を製造し、評価を行った。
【0046】
(実施例6)
焼結体中の酸化カルシウムの含有量を45重量%とし、焼結体の形状を径10mm×厚み3.5mmの円板状に変更した以外は、実施例1と同様に酸化マグネシウム焼結体を製造し、評価を行った。
【0047】
(実施例7)
焼結体の形状を4mm×4mm×2.5mmの頂点なし直方体にした以外は、実施例1と同様に酸化マグネシウム焼結体を製造し、評価を行った。
【0048】
(実施例8)
炭酸カルシウムを水酸化カルシウムに変更し、焼結体中の酸化カルシウムの含有量を25重量%とし、焼結体の形状を8mm×8mm×3.5mmの頂点なし直方体にした以外は、実施例1と同様に酸化マグネシウム焼結体を製造し、評価を行った。
【0049】
(実施例9)
焼結体中の酸化カルシウムの含有量を45重量%とし、焼結体の形状を8mm×4mm×3.5mmの頂点なし直方体にした以外は、実施例1と同様に酸化マグネシウム焼結体を製造し、評価を行った。
【0050】
(比較例1)
焼結体の形状を4mm×4mm×2.5mmの頂点あり直方体(通常の直方体)にした以外は、実施例1と同様に酸化マグネシウム焼結体を製造し、評価を行った。
【0051】
(比較例2)
焼結体の形状を8mm×4mm×3.5mmの頂点あり直方体にした以外は、実施例1と同様に酸化マグネシウム焼結体を製造し、評価を行った。
【0052】
(比較例3)
焼結体中の酸化カルシウムの含有量を20重量%とし、焼結体の形状を8mm×8mm×3.5mmの頂点あり直方体にした以外は、実施例1と同様に酸化マグネシウム焼結体を製造し、評価を行った。
【0053】
(比較例4)
焼結体中の酸化カルシウムの含有量を20重量%とし、焼結体の形状を10mm×5mm×3.5mmの頂点あり直方体にした以外は、実施例1と同様に酸化マグネシウム焼結体を製造し、評価を行った。
【0054】
以上により得られた結果を表1に示す。
【0055】
【表1】


表1より、実施例1〜9の酸化マグネシウム焼結体は成膜時のスプラッシュ発生が抑止されており、かつ成膜装置の供給時での流れ性が良好であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化マグネシウムと、マグネシウム以外の周期表第2A族元素の酸化物3〜50質量%とを含む酸化マグネシウム焼結体であって、その形状が、円板状、楕円板状、多角形板状若しくは半月板状であるか、又は、立方体若しくは直方体の頂点に丸みを持たせた形状であることを特徴とする酸化マグネシウム焼結体。
【請求項2】
前記マグネシウム以外の周期表第2A族元素が、カルシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム、及び、ラジウムからなる群より選ばれる一種類又は二種類以上である、請求項1に記載の酸化マグネシウム焼結体。
【請求項3】
前記マグネシウム以外の周期表第2A族元素が、カルシウムである、請求項2記載の酸化マグネシウム焼結体。
【請求項4】
さらに、アルミニウム、イットリウム、セリウム、ジルコニウム、スカンジウム、及びクロムからなる群より選ばれる一種類又は二種類以上の元素を1000ppm以下含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム焼結体。
【請求項5】
前記焼結体の相対密度が80%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム焼結体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム焼結体からなる、プラズマディスプレイパネルの保護膜用蒸着材。
【請求項7】
請求項1〜3及び5のいずれかに記載の酸化マグネシウム焼結体を製造する方法であって、
マグネシウム含有化合物粉末、マグネシウム以外の周期表第2A族元素含有化合物粉末、及び、バインダーを混合して混合物を調製する工程、
前記混合物を造粒し、乾燥して造粒粉末を得る工程、
前記造粒粉末を型内で成形して成形体を形成する工程、並びに、
前記成形体を焼結する工程を含む、酸化マグネシウム焼結体の製造方法。
【請求項8】
請求項4〜5のいずれかに記載の酸化マグネシウム焼結体を製造する方法であって、
マグネシウム含有化合物粉末、マグネシウム以外の周期表第2A族元素含有化合物粉末、アルミニウム、イットリウム、セリウム、ジルコニウム、スカンジウム、及びクロムからなる群より選ばれる一種類又は二種類以上の元素含有化合物粉末及び、バインダーを混合して混合物を調製する工程、
前記混合物を造粒し、乾燥して造粒粉末を得る工程、
前記造粒粉末を型内で成形して成形体を形成する工程、並びに、
前記成形体を焼結する工程を含む、酸化マグネシウム焼結体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−241123(P2011−241123A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116160(P2010−116160)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000108764)タテホ化学工業株式会社 (50)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】