説明

酸化膜形成方法、酸化膜、部品および電子機器

【課題】酸化膜を簡便に形成し得る酸化膜形成方法、この酸化膜形成方法により形成された酸化膜、この酸化膜を備える部品および電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の酸化膜形成方法は、無機物で構成される表層12(基材)の表面に、無機物の酸化物を主材料として構成される酸化膜3を形成する方法であり、被処理部材1(表層12)の表面にアルコールを含有する処理液を供給して、この処理液の液状被膜2を形成し、液状被膜2中において、無機物とアルコールとの反応を経て、無機物の酸化物を生成させるとともに、液状被膜2中に残存する処理液を除去して酸化膜3を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化膜形成方法、酸化膜、部品および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属(金属部材)表面に、該金属の酸化膜を形成する方法としては、陽極酸化法が広く用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
ところで、陽極酸化法では、クロム酸、シュウ酸、硫酸等の酸溶液を満たした酸性浴中に、金属を浸漬した状態で、金属に電圧を印加することが行われる。
このため、陽極酸化法を行う場合には、電源や配線が必要となり、その操作が煩雑であり、また消費電力が大きくコスト高となる問題や、酸溶液の処理にも費用が嵩むという問題がある。
また、互いに連続(連結)していない複数のパターンに酸化膜を形成する場合、パターニングされた各パターンに、それぞれ電圧を印加するための配線を接続して陽極酸化法を行うか、または、連続したパターンを形成し、陽極酸化法を行った後、各パターンにパターニングすることが必要であり、その操作が極めて煩雑である。
【0003】
一方、半導体表面、主にシリコン表面に酸化膜を形成する方法としては、Dry O酸化、Wet O酸化、スチーム酸化等の各種熱酸化法が広く用いられている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、これらの方法は、いずれも600℃以上の高温下で処理が行われるため、消費エネルギーが大きいという問題や、樹脂基板等の低融点の材料で構成された基板に適用できないという問題等がある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−68957号公報
【特許文献2】特開2001−152391号公報
【特許文献3】特開平5−226326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、酸化膜を簡便に形成し得る酸化膜形成方法、この酸化膜形成方法により形成された酸化膜、この酸化膜を備える部品および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の酸化膜形成方法は、無機物で構成される基材の表面に、前記無機物の酸化物を主材料として構成される酸化膜を形成する酸化膜形成方法であって、
前記基材の表面にアルコールを含有する処理液を供給して、該処理液の液状被膜を形成し、
前記液状被膜中において、前記無機物と前記アルコールとの反応を経て、前記無機物の酸化物を生成させるとともに、前記液状被膜中に残存する前記処理液を除去して前記酸化膜を得ることを特徴とする。
これにより、酸化膜を簡便に形成し得る。
【0007】
本発明の酸化膜形成方法では、前記処理液は、前記基材を加熱した状態で供給されることが好ましい。
これにより、アルコールと無機物との反応をより円滑かつ確実に行うことができ、酸化膜の形成時間の短縮を図ることができる。
本発明の酸化膜形成方法では、前記処理液は、液体状またはガス状で供給されることが好ましい。
これにより、液状被膜を容易かつ確実に形成することができる。
【0008】
本発明の酸化膜形成方法では、前記アルコールは、一価アルコール、二価アルコールおよび三価アルコールのうちの少なくとも1種であることが好ましい。
これらのアルコールは、無機物との反応性が比較的高い化合物である。
本発明の酸化膜形成方法では、前記アルコールは、その炭素数が1〜6であることが好ましい。
これらのアルコールは、無機物との反応性が特に高い化合物である。
【0009】
本発明の酸化膜形成方法では、前記アルコールは、その分子中の水酸基以外に含まれる水素原子の少なくとも一部をフッ素原子に置換したものであることが好ましい。
フルオロアルコールは、無機物との反応性が極めて高い化合物である。
本発明の酸化膜形成方法では、前記処理液中の前記アルコールの濃度は、95重量%以上であることが好ましい。
これにより、効率よく酸化物を生成させることができる。
【0010】
本発明の酸化膜形成方法では、前記処理液の前記基材の表面への供給に先立って、前記基材の表面に、形成すべき前記酸化膜の形状に対応した開口部を有するマスクを形成することが好ましい。
これにより、所定形状の酸化膜を形成することができる。すなわち、酸化膜のパターニングが可能となる。
【0011】
本発明の酸化膜形成方法では、前記マスクは、レジスト材料を主材料として構成されるレジスト層であることが好ましい。
これにより、大掛かりな設備を必要とせず、微細なパターン(形状)のマスクを容易かつ確実に形成することができる。
本発明の酸化膜形成方法では、前記マスクを形成した後、前記基材の表面に表面処理を施すことが好ましい。
表面処理として、基材の表面に存在する自然酸化膜を除去する処理、自然酸化膜を変質・劣化させる処理、および、自然酸化膜をハロゲン化する処理のうちの少なくとも1つを選択することにより、基材の表面がアルコールと反応しやすい状態となり、無機物とアルコールとをより確実に反応させることができるようになる。
【0012】
本発明の酸化膜形成方法では、前記処理液の前記基材の表面への供給に先立って、前記基材の表面に表面処理を施すことが好ましい。
表面処理として、基材の表面に存在する自然酸化膜を除去する処理、自然酸化膜を変質・劣化させる処理、および、自然酸化膜をハロゲン化する処理のうちの少なくとも1つを選択することにより、基材の表面がアルコールと反応しやすい状態となり、無機物とアルコールとをより確実に反応させることができるようになる。
【0013】
本発明の酸化膜形成方法では、前記液状被膜中に残存する前記処理液の除去は、常温または前記基材を加熱した状態で行われることが好ましい。
常温あるいは加熱により膜質(膜の緻密さ、不純物濃度)、プロセスタイム等を適宜コントロールできる。また、加熱しつつ行うことにより、液状被膜の乾燥をより効率よく行うことができ、酸化膜の形成時間の短縮に寄与する。また、液状被膜中に存在する中間体を酸化物にまで変化させることができ、得られる酸化膜中の不純物の濃度をより低減させることができる。
【0014】
本発明の酸化膜形成方法では、前記無機物は、金属および半導体の少なくとも一方を含むものであることが好ましい。
本発明によれば、無機物の種類を選ばず、その酸化物を容易かつ確実に生成させることができる。
本発明の酸化膜形成方法では、前記酸化膜に対して、少なくとも1回、後処理を行ってもよい。
【0015】
本発明の酸化膜形成方法では、前記後処理は、封孔処理および着色処理の少なくとも一方であることが好ましい。
酸化膜に対して封孔処理を施すことにより、酸化膜の耐性(特に、耐薬品性)を向上させることができ、また、酸化膜に対して着色処理を施すことにより、例えば、基材が装飾品等の審美性が要求される部品の一部または全部である場合には、その審美性を向上させることができる。
【0016】
本発明の酸化膜は、本発明の酸化膜形成方法により形成されたことを特徴とする。
これにより、簡便に酸化膜が得られる。
本発明の部品は、本発明の酸化膜を備えることを特徴とする。
本発明の部品は、例えば、薄膜ダイオード(TFD)、弾性表面波素子(SAWデバイス)等の各種電子デバイス、自動車等の部品、建築部材、電気機器用の筐体(例えばデジタルカメラの筐体)、文具などのケース等の成形用素材等に好適に適用される。
特に、本発明の部品を、自動車等の部品、建築部材、電気機器用の筐体(例えばデジタルカメラの筐体)、文具などのケース等の成形用素材等に適用する場合には、酸化膜に対して後処理を施すのが好ましい。
【0017】
本発明の部品では、当該部品は、電子デバイスであることが好ましい。
本発明の酸化膜形成方法によれば、処理液と基材との接触部に選択的に酸化膜を形成することができるため、処理液を微細な領域に供給することにより、微細なパターンの酸化膜を形成することができる。したがって、本発明の酸化膜形成方法は、特に、各種電子デバイスが備える酸化膜を形成する場合への適用に適している。すなわち、本発明の部品は、電子デバイスへの適用が特に好適である。
本発明の電子機器では、本発明の部品を備えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の酸化膜形成方法、酸化膜、部品および電子機器の好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の酸化膜形成方法は、基材を構成する無機物とアルコールとの反応を経て、前記無機物の酸化物(以下、単に「酸化物」と言う。)を生成させ、生成した酸化物を主材料として構成される酸化膜を形成する方法である。
【0019】
<第1実施形態>
まず、本発明の酸化膜形成方法の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の酸化膜形成方法の第1実施形態を説明するための図である。
第1実施形態の酸化膜形成方法は、[1A]被処理部材準備工程と、[2A]表面処理工程と、[3A]液状被膜形成工程と、[4A]酸化物生成工程と、[5A]乾燥工程と、[6A]後処理工程とを有している。
以下、各工程について説明する。
【0020】
[1A]被処理部材準備工程
まず、酸化膜3を形成すべき被処理部材1を準備(用意)する。
図1(a)に示す被処理部材1は、基板11と、基板11の表面に形成された表層(被覆層)12とを有している。この表層12は、無機物で構成されている。すなわち、本実施形態では、表層12が基材を構成する。
【0021】
基板11の構成材料としては、例えば、石英ガラス、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、シリコン、水晶等が挙げられる。
表層12を構成する無機物としては、例えば、Al、Ta、Ti、Mn、Sb、Fe、Cu、W、Mo、Y、Pb、Sc、Nb、または、これらのうちの少なくとも1種を含む合金のような各種金属、Si、Ge等の単体半導体、または、これらのうちの少なくとも1種と、Ga、In、Al、As、Sb、Zn、Se、Pb、P、Nのうちの少なくとも1種とを含む化合物半導体のような各種半導体が好適である。本発明によれば、無機物の種類を選ばず、その酸化物を容易かつ確実に生成させることができる。
【0022】
また、表層12を形成する方法としては、例えば、電解めっき法、浸漬めっき法、無電解めっき法等の液相成長法(湿式めっき法)、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法、熱CVD法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、MOCVD法等の化学的気相成長法(CVD法)、シート材の接合等が挙げられる。
なお、被処理部材1としては、図1の構成のものに限定されず、その全体が前述した無機物で構成されるものであってもよい。この場合、被処理部材1全体が基材を構成する。
【0023】
[2A]表面処理工程(前処理工程)
次に、被処理部材1(表層12)の表面に表面処理を施す。
この表面処理の方法としては、例えば、A:被処理部材1の表面をアルカリ溶液や酸溶液を接触させる方法、B:被処理部材1の表面に酸性ガスを接触させる方法、C:被処理部材1の表面に水分を付与する方法、D:被処理部材1の表面にプラズマを接触させる方法等が挙げられる。
【0024】
A:被処理部材1の表面にアルカリ溶液や酸溶液を接触させる方法
これは、例えば、図1(b)に示すように、アルカリ溶液や酸溶液中に被処理部材1を浸漬する方法等により好適に行われる。
用いるアルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が挙げられ、一方、用いる酸溶液としては、例えば、塩化水素(HCl)水溶液(塩酸)、硫酸(HSO)水溶液、フッ化水素(HF)水溶液(フッ化水素酸)等が挙げられる。
【0025】
また、アルカリ溶液中のアルカリの濃度は、1〜20重量%程度であるのが好ましく、酸溶液中の酸濃度は、1〜50重量%程度であるのが好ましい。
また、各溶液の温度は、それぞれ、15〜35℃程度であるのが好ましく、各溶液中への被処理部材1の浸漬時間は、5〜120秒間程度であるのが好ましい。
なお、この場合、浸漬終了後、被処理部材1には、例えば、所定時間(例えば1〜10分間程度)の水洗が行われ、その後、自然に、または、不活性ガス(例えば窒素等)を吹付けること等により乾燥が行われる。
かかる方法によれば、被処理部材1(表層12)の表面に形成された自然酸化膜を除去することができる。
【0026】
B:被処理部材1の表面に酸性ガスを接触させる方法
これは、例えば、前述した酸溶液の蒸気や、塩化水素ガス雰囲気、フッ化水素ガス雰囲気に被処理部材1を曝す方法等により好適に行われる。
かかる方法によれば、被処理部材1(表層12)の表面に形成された自然酸化膜へダメージを与えたり(自然酸化膜を変質・劣化させたり)、自然酸化膜をハロゲン化(塩化やフッ化)したり等することができる。
【0027】
C:被処理部材1の表面に水分を付与する方法
これは、例えば、純水中に被処理部材1を浸漬したり、水蒸気雰囲気に被処理部材1を曝す方法等により好適に行われる。なお、この後、被処理部材1に不活性ガスを吹付けることにより乾燥してもよい。
かかる方法によれば、被処理部材1(表層12)の表面に形成された自然酸化膜とアルコールの反応性を向上させることができる。
【0028】
D:被処理部材1の表面にプラズマを接触させる方法
これは、例えば、被処理部材1の表面に大気圧下でプラズマを照射する方法等により好適に行われる。
導入ガスとしては、ヘリウム等の不活性ガスを含むガスが好適であり、例えば、純ヘリウム、ヘリウムと酸素との混合ガス、ヘリウムと酸素とフッ化炭素との混合ガス等が挙げられる。
【0029】
導入ガスの流量は、純ヘリウムを用いる場合、ヘリウム:1〜30L/min程度であるのが好ましく、ヘリウムと酸素との混合ガスを用いる場合、ヘリウム:1〜30L/min程度、酸素:10〜500sccm程度であるのが好ましく、ヘリウムと酸素とフッ化炭素との混合ガスを用いる場合、ヘリウム:1〜30L/min程度、酸素:10〜500sccm程度、フッ化炭素:10〜500sccm程度とするのが好ましい。
【0030】
また、高周波出力(RFパワー)は、100〜1000W程度であるのが好ましく、電極と被処理部材1との離間距離(ギャップ)は、0.1〜3mm程度であるのが好ましい。
さらに、電極と被処理部材1とを相対的に移動させる場合、その移動速度(搬送速度)は、0.1〜10mm/秒程度とするのが好ましい。
かかる方法によれば、被処理部材1(表層12)の表面に形成された自然酸化膜へダメージを与えること(自然酸化膜を変質・劣化させること)ができる。
【0031】
なお、以上のような表面処理は、A〜Dの任意の2以上の方法を組み合わせて用いるようにしてもよい。
以上のような表面処理を施すこと、すなわち、被処理部材1の表面に存在する自然酸化膜を除去する処理、自然酸化膜を変質・劣化させる処理、および、自然酸化膜をハロゲン化する処理のうちの少なくとも1つを行うことにより、被処理部材1の表面がアルコールと反応しやすい状態となり、無機物とアルコールとをより確実に反応させることができるようになる。
【0032】
なお、本工程[2A]は、必要に応じて省略することができる。
例えば、本実施形態の被処理部材1、すなわち、基板11の表面に表層12が形成された構成の被処理部材1の場合、基板11の表面に表層12を形成した後、速やかに、次工程[3A]に移行したり、表層12を形成した後、次工程[3A]に移行するまで、不活性ガス(例えば窒素等)雰囲気中で、被処理部材1を保存したり等することにより、本工程[2A]を省略することができる。
【0033】
[3A]液状被膜形成工程
次に、被処理部材1(表層12)の表面にアルコールを含有する処理液を供給して、この処理液の液状被膜2を形成する。
被処理部材1の表面に処理液を供給する方法としては、図1(c)に示すように、液体状の処理液を被処理部材1の表面に滴下(塗布)する方法の他、例えば、処理液の蒸気(ガス状の処理液)に被処理部材1を曝す方法等が挙げられる。かかる方法によれば、液状被膜2を容易かつ確実に形成することができる。
【0034】
アルコールとしては、単価アルコール(一価アルコール)および多価アルコールを単独または組み合わせ用いることができるが、特に、一価アルコール、二価アルコールおよび三価アルコールのうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。これらのアルコールは、無機物との反応性が比較的高い化合物である。
また、アルコールは、水酸基等の数によっても若干異なるが、その炭素数が1〜6であるのが好ましく、1〜4であるのがより好ましい。これらのアルコールは、無機物との反応性が特に高い化合物である。
【0035】
このようなアルコールの具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールのような一価アルコール、エチレングリコールのような二価アルコール、グリセリンのような三価アルコール等が挙げられる。
さらに、アルコールは、例えば、トリフルオロエタノールのように、その分子中の水酸基以外に含まれる水素原子の少なくとも一部をフッ素原子に置換したもの(フルオロアルコール)が好ましい。フルオロアルコールは、無機物との反応性が極めて高い化合物である。
【0036】
また、処理液中のアルコールの濃度(含有率)は、95重量%以上であるのが好ましく、99重量%以上であるのがより好ましい。処理液中のアルコール濃度が低過ぎると、アルコールの種類や温度等によっては、次工程[4A]において、効率よく酸化物を生成させることが困難となるおそれがある。
また、処理液の供給は、室温(常温)で行うようにしてもよいが、被処理部材1(表層12)を加熱しつつ行うのが好ましい。これにより、次工程[4A]におけるアルコールと無機物との反応をより円滑かつ確実に行うことができ、酸化膜3の形成時間の短縮を図ることができる。
被処理部材1を加熱する方法としては、ヒータによる加熱、赤外線の照射等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
[4A]酸化物生成工程
次に、液状被膜2中において、無機物とアルコールとの反応を経て、前記無機物の酸化物を生成させる。
液状被膜2中では、例えば、次のような反応により、無機物の酸化物が生成する。
ここで、一価アルコール(R−OH)との反応により、無機物であるAlから、この無機物の酸化物であるAlが生成する過程(反応経路)の一例を示す。なお、反応経路は、これに限定されるものではない。
2Al+6R−OH → 2Al(O−R)+3H ・・・ (1)
2Al(O−R)+6H → 2Al(OH)+6R−H ・・・ (2)
2Al(OH) → Al・HO+2HO ・・・ (3)
【0038】
本工程[4A]は、室温(常温)で行うようにしてもいよく、アルコールの種類等によっては、例えば被処理部材1を加熱しつつ行うようにしてもよい。
なお、本実施形態では、本工程[4A]は、処理液が蒸発(気化)するのを防止しつつ行うのが好ましい。
また、本工程[4A]を持続する時間(無機物とアルコールとを反応させる時間)は、無機物の種類、アルコールの種類、得たい酸化膜の膜質および膜厚、前記工程[2A]の処理条件等によっても若干異なり、特に限定されないが、1分〜100時間程度であるのが好ましく、10分〜20時間程度であるのがより好ましい。前記時間が短過ぎると、十分な膜厚の酸化膜が得られないおそれがあり、一方、前記時間を前記上限値を超えて長くしても、それ以上の効果の増大が期待できない。
【0039】
なお、本工程[4A]に、次工程[5A]を兼ねさせることもできる。すなわち、例えば被処理部材1の加熱温度、雰囲気圧力等を適宜設定することにより、液状被膜2中において、無機物の酸化物を生成させるとともに、徐々に、液状被膜2の乾燥(液状被膜2中に残存する処理液の除去)を行うように調整することができる。
また、本工程[4A]と前記工程[3A]とは、必ずしも明確に分離できなくてもよい。すなわち、前記工程[3A]において酸化物の生成が始まっていてもよい。これは、前記工程[3A]の処理条件を適宜設定することにより調整が可能である。
【0040】
[5A]乾燥工程(処理液除去工程)
次に、液状被膜2を乾燥させる。これにより、液状被膜2中に残存する処理液(主に未反応のアルコール)を除去することにより、図1(d)に示すように、酸化物を固化させて、酸化物を主材料とする酸化膜3が得られる。
この液状被膜2の乾燥は、常温(室温)または被処理部材1(表層12)を加熱しつつ行うようにするのが好ましい。常温あるいは加熱により膜質(膜の緻密さ、不純物濃度)、プロセスタイム等を適宜コントロールできる。また、加熱しつつ行うことにより、液状被膜2の乾燥をより効率よく行うことができ、酸化膜3の形成時間の短縮に寄与する。また、液状被膜2中に存在する中間体(上記の例では、Al(O−R)、Al(OH))を酸化物にまで変化させることができ、得られる酸化膜3中の不純物の濃度をより低減させることができる。
【0041】
なお、液状被膜2の乾燥は、例えば、不活性ガス等を吹付ける方法、雰囲気を減圧状態とする方法等を併用するようにしてもよい。
また、得られる酸化膜3の厚さは、例えば、前記工程[3A]における被処理部材1の加熱温度、供給する処理液の量、処理液中のアルコール濃度、前記工程[4A]を持続する時間等を適宜設定することにより調整することができる。
【0042】
[6A]後処理工程
次に、酸化膜3に対して、少なくとも1回後処理を施す。
なお、本工程[6A]は、酸化膜3が形成された被処理部材1(本発明の部品)が、主に電気機器用の筐体、建築部材、文具などのケース等の成形用素材として使用される部品(部材)である場合に適用される。
この後処理としては、例えば、酸化膜3に形成される孔を塞ぐ封孔処理や、酸化膜3に対して着色を施す着色処理、酸化膜3を研磨する研磨処理等が挙げられ、これらを単独または組み合わせて行うことができるが、これらの中でも、特に、封孔処理および着色処理の少なくとも一方を施すのが好ましい。
【0043】
酸化膜3に対して封孔処理を施すことにより、酸化膜3の耐性(特に、耐薬品性)を向上させることができ、また、酸化膜3に対して着色処理を施すことにより、本発明の部品が、例えば装飾品等の審美性が要求される部品(部材)である場合には、その審美性を向上させることができる。
封孔処理としては、例えば、熱湯封孔処理、蒸気封孔処理、金属塩封孔処理等が挙げられる。一方、着色処理としては、例えば、電解着色、電解発色、自然発色等による方法が挙げられる。
【0044】
<第2実施形態>
次に、本発明の酸化膜形成方法の第2実施形態について説明する。
図2は、本発明の酸化膜形成方法の第2実施形態を説明するための図である。
以下、第2実施形態の酸化膜形成方法について、前記第1実施形態の酸化膜形成方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0045】
第2実施形態の酸化膜形成方法は、液状被膜形成工程(第1の工程)に先立って、マスク形成工程を有し、それ以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、第2実施形態の酸化膜形成方法は、[1B]被処理部材準備工程と、[2B]マスク形成工程と、[3B]表面処理工程と、[4B]液状被膜形成工程と、[5B]酸化物生成工程と、[6B]乾燥工程と、[7B]マスク除去工程と、[8B]後処理工程とを有している。
【0046】
[1B]被処理部材準備工程(図2(a)参照)
前記[1A]と同様の工程を行う。
[2B]マスク形成工程(図2(b)参照)
次に、被処理部材1の表面に、形成すべき酸化膜3の形状に対応した開口部400を有するマスク4を形成する。これにより、所定形状の酸化膜3を形成することができる。すなわち、酸化膜3のパターニングが可能となる。
【0047】
マスク4は、例えば、フォトリソグラフィー法、電解めっき法、浸漬めっき法、無電解めっき法等の液相成長法(湿式めっき法)、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法、熱CVD法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、MOCVD法等の化学的気相成長法(CVD法)等により形成することができる。
これらの中でも、マスク4の形成には、フォトリソグラフィー法を用いるのが好ましい。すなわち、マスク4は、レジスト材料を主材料として構成されるレジスト層であるのが好ましい。フォトリソグラフィー法によれば、大掛かりな設備を必要とせず、微細なパターン(形状)のマスク4を容易かつ確実に形成することができる。
【0048】
この場合、マスク4は、被処理部材1(表層12)の表面にレジスト材料を供給(塗布)した後、露光・現像することにより形成することができる。
用いるレジスト材料は、光照射部分が硬化するネガタイプ、光照射部分が溶解するポジタイプのいずれであってもよい。
ネガタイプのレジスト材料としては、例えば、ポリケイ皮酸ビニル、ポリビニルアジドベンザジル、アクリルアミド、ポリイミド、ノボラック樹脂を主成分とするもの(例えば、酸発生剤や架橋剤を含有するノボラック樹脂のような化学増幅型樹脂)等が挙げられ、一方、ポジタイプのレジスト材料としては、例えば、o−キノンジアジドノボラック樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
【0049】
また、照射する光としては、例えば、紫外線(g線、i線)、電子線等が挙げられる。
レジスト材料の供給方法としては、特に限定されず、例えば、ディップコート法、スピンコート法、スリットコート法、キャップコート法、ディスペンサー法、スプレーコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、LSMCD法等の各種塗布法を用いるのが好適である。
【0050】
なお、ネガ型のレジスト材料を各種印刷法により、形成すべきマスク4に対応する形状となるように、被処理部材1の表面に選択的に供給することにより、現像工程を省略することができる。
また、レジスト材料を主材料として構成されるマスク4の場合、必要に応じて、マスク4に対して硬化処理を施して、マスク4の少なくとも表面を硬化させるようにするのが好ましい。
【0051】
マスク4の表面を硬化させることにより、マスク4の耐熱性や耐薬品性を向上させることができ、以降の工程において、マスク4が変質・劣化するのを好適に防止することができる。その結果、所望の形状の酸化膜3を寸法精度よく形成することができる。
この硬化処理の方法としては、例えば、ヒータによる加熱、紫外線の照射、赤外線の照射、電子線の照射、超音波の付与、高周波の付与等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
[3B]表面処理工程(図2(c)参照)
前記[2A]と同様の工程を行う。
また、必要に応じて、被処理部材1の表面処理は、前記工程[2B]の前に行うようにしてもよく、前記工程[2B]の前後の双方において行うようにしてもよい。
[4B]液状被膜形成工程(図2(d)参照)
前記[3A]と同様の工程を行う。
【0053】
[5B]酸化物生成工程
前記[4A]と同様の工程を行う。
[6B]乾燥工程(図2(e)参照)
前記[5A]と同様の工程を行う。
[7B]マスク除去工程(図2(f)参照)
次に、マスク4を被処理部材1から除去する。これにより、所定形状の酸化膜3が得られる。
マスク4の除去は、マスク4の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、酸素プラズマやオゾンによる大気圧下または減圧下でのアッシング、紫外線の照射、Ne−Heレーザー、Arレーザー、COレーザー、ルビーレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、ガラスレーザー、YVOレーザー、エキシマレーザー等の各種レーザーの照射、マスク4を溶解または分解し得る溶剤との接触(例えば浸漬)等により行うことができる。 例えば、レジスト材料を主材料として構成されるマスク4の場合、マスク4の除去は、大気圧下(または真空中)における酸素プラズマ処理(アッシング処理)、レジスト剥離液による剥離処理、有機溶剤(例えば濃硫酸等)やオゾン水による分解処理等が好適である。
【0054】
[8B]後処理工程
前記[6A]と同様の工程を行う。
以上説明したように、本発明の酸化膜形成方法によれば、処理液と被処理部材1との接触部に選択的に酸化膜3を形成することができる。このため、酸化膜3を形成すべき、パターンが不連続である場合でも、陽極酸化法の場合のように、各パターンに接続する配線が不要であり、目的とする酸化膜3の形成が容易である。
また、本発明の酸化膜形成方法によれば、各工程において、被処理部材1を高温に曝すことがないので、処理し得る被処理部材1の選択の幅が広がる。
【0055】
以上説明したような本発明の酸化膜形成方法は、例えば、薄膜ダイオード(TFD)、弾性表面波素子(SAWデバイス)等の各種電子デバイス、自動車等の部品、建築部材、電気機器用の筐体(例えばデジタルカメラの筐体)、文具などのケース等の成形用素材等が備える酸化膜の形成に適用することができる。すなわち、本発明の部品は、これらのものへ適用するのが好適である。
【0056】
また、前述したように、本発明の酸化膜形成方法によれば、処理液と被処理部材1との接触部に選択的に酸化膜3を形成することができるため、処理液を微細な領域に供給することにより、微細なパターンの酸化膜3を形成することができる。したがって、本発明の酸化膜形成方法は、前述したような部品の中でも、特に、各種電子デバイスが備える酸化膜3を形成する場合への適用に適している。
【0057】
以下、本発明の酸化膜3を備える電子デバイス(本発明の部品)について、弾性表面波素子(SAWデバイス)を一例に説明する。
図3は、弾性表面波素子の実施形態を示す平面図、図4は、図3に示す弾性表面波素子の縦断面図である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0058】
図3および図4に示す弾性表面波素子10は、トランスバーサル型構造の弾性表面波素子であり、少なくとも表面付近に圧電性を有する基板20と、基板20上に設けられた入力用のIDT30および出力用のIDT40と、各IDT30、40の上面に設けられた絶縁保護膜50とを有している。
基板20は、基部21上に、下地層22および圧電体層23が順次積層されて構成されている。
【0059】
基部21の構成材料としては、例えば、Si、GaSi、SiGe、GaAs、STC、InPのような各種半導体材料、各種ガラス材料、各種セラミックス材料、ポリイミド、ポリカーボネートのような各種樹脂材料等が挙げられる。
基部21の平均厚さは、特に限定されないが、0.05〜1mm程度であるのが好ましく、0.1〜0.8mm程度であるのがより好ましい。
【0060】
また、基部21は、単層で構成されたもののみならず、複数の層の積層体で構成されたものでもよく、この場合、各層は、前述したような材料を任意に組み合わせて用いることができる。
下地層22は、圧電体層23において励振される弾性表面波の特性(条件)を設定(規定)する機能を有するものである。この特性としては、例えば、発振周波数、振幅、伝搬速度等が挙げられる。
【0061】
下地層22を設け、その構成材料を適宜設定することにより、弾性表面波の特性を所望のものに設定することが可能となる。
この下地層22の構成材料としては、例えば、ダイヤモンド、シリコン、サファイヤ、ガラス、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウムのうちの少なくとも1種を主とするものが好ましく、特に、ダイヤモンド、サファイヤ、タンタル酸リチウム、ニオブ酸カリウムのうちの少なくとも1種を主とするものが好適である。これにより、無線LANや光通信などの高速通信分野への適用を目的として要求される弾性表面波の高周波化に寄与することができる。
【0062】
下地層22の平均厚さは、特に限定されないが、1〜20μm程度であるのが好ましく、3〜10μm程度であるのがより好ましく、3〜5μm程度であるのがさらに好ましい。
また、下地層22は、単層で構成されたもののみならず、目的とする弾性表面波の特性に応じて、複数の層の積層体で構成することもできる。なお、下地層22は、必要に応じて設けられるものであり、省略することもできる。
【0063】
圧電体層23は、弾性表面波の伝搬媒体として機能するものである。
この圧電体層23の構成材料としては、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウムのうちの少なくとも1種を主とするものが好ましい。このような材料で圧電体層23を構成することにより、高周波であり、かつ温度特性に優れた弾性表面波素子10が得られる。
また、圧電体層23の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、0.01〜5μm程度であるのが好ましく、0.1〜2μm程度であるのがより好ましい。
なお、基板20には、多層構成のものに代えて、単層構成の基板を使用することもできる。
【0064】
IDT(入力側電極)30は、圧電体層23に電圧を印加して、圧電体層23に弾性表面波を励振させる機能を有するものであり、一方、IDT(出力側電極)40は、圧電体層23を伝搬する弾性表面波を検出し、弾性表面波を電気信号に変換して外部に出力する機能を有するものである。
したがって、IDT30に駆動電圧が入力されると、圧電体層23において弾性表面波が励振され、フィルタリング機能による特定の周波数帯域の電気信号が、IDT40から出力される。
【0065】
各IDT30、40は、それぞれ、電極指31、41を有する櫛歯形状をなす一対の櫛歯電極で構成されており、櫛歯電極の電極指31、41の幅、間隔、厚さ等を調整することにより、弾性表面波の発振周波数の特性を所望のものに設定することができる。
各IDT(基材)30、40の構成材料としては、それぞれ、例えば、Al、Cu、W、Mo、Ti、Au、Y、Pb、Scまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
絶縁保護膜50は、IDT30、40表面に異物が付着するのを防止し、異物を介した電極指31、41間のショートを防ぐものである。
この絶縁保護膜50は、IDT(櫛歯電極)30、40の上面に、これらとほぼ等しい形状かつほぼ等しい面積となるよう形成されている。本実施形態では、絶縁保護膜50が、本発明の酸化膜3で構成される。
【0067】
このような構成により、弾性表面波が伝搬する経路上で、絶縁保護膜50から基板20への材質変化が無くなり、この経路上での材質変化は、実質的に電極指31、41から基板20への変化のみとなる。したがって、材質変化に起因した弾性表面波の反射およびこの反射によるエネルギー損失が抑えられ、高い入出力効率が得られるようになる。
また、絶縁保護膜50の平均厚さは、特に限定されないが、10〜1000nm程度であるのが好ましく、30〜300nm程度であるのがより好ましい。絶縁保護膜50の厚さを前記範囲とすることにより、質量の増大に伴う弾性表面波の発信周波数の低下を防止または抑制しつつ、十分な絶縁性が発揮される。
以上のような弾性表面波素子10は、次のようにして製造することができる。
【0068】
図5は、図3および図4に示す弾性表面波素子の製造方法を説明するための図(断面図)である。
まず、図5(a)および図5(b)に示すように、基部21上に、例えば真空蒸着法等により、下地層22および圧電体層23を順次形成する。
次に、図5(c)に示すように、圧電体層23上に、例えば真空蒸着法等により、導電性材料層70を形成する。
【0069】
次に、図5(d)に示すように、導電性材料層70上に、IDT30、40に対応する形状のマスク90を形成する。
次に、このマスク90を用いて、導電性材料層70にエッチングを施した後、マスク90を除去することにより、図5(e)に示すようなIDT30、40を得る。
次に、図5(f)に示すように、IDT30、40上に、本発明の酸化膜形成方法により、選択的に絶縁保護膜50を形成する。
以上のような工程を経て、弾性表面波素子10が製造される。
【0070】
なお、絶縁保護膜50は、導電性材料層70上に、本発明の酸化膜形成方法により絶縁性材料層を形成し、この積層体をマスクを用いてエッチングすることにより、IDT30、40と一括して形成するようにしてもよい。
このような弾性表面波素子(本発明の部品)10は、各種の電子機器に適用することができ、得られる電子機器は、信頼性の高いものとなる。
【0071】
以下、弾性表面波素子10を備える電子機器について、図6〜図8に示す実施形態に基づき、詳細に説明する。
図6は、弾性表面波素子を備える電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、アンテナ1101やキーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このようなパーソナルコンピュータ1100には、フィルター、共振器、基準クロック等として機能する弾性表面波素子10が内蔵されている。
また、このようなパーソナルコンピュータ1100において、本体部1104に本発明の部品を適用することもできる。
【0072】
図7は、弾性表面波素子を備える電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、アンテナ1201、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206を備え、操作ボタン1202と受話口1204との間には、表示部が配置されている。
このような携帯電話機1200には、フィルター、共振器等として機能する弾性表面波素子10が内蔵されている。
また、このような携帯電話機1200において、本体部に本発明の部品を適用することもできる。
【0073】
図8は、弾性表面波素子を備える電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0074】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部は、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリ1308に転送・格納される。
【0075】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示されるように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、メモリ1308に格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
このようなディジタルスチルカメラ1300には、フィルター、共振器等として機能する弾性表面波素子10が内蔵されている。
【0076】
また、このようなディジタルスチルカメラ1300において、ケース(ボディー)1302に本発明の部品を適用することもできる。
なお、本発明の弾性表面波素子を備える電子機器は、図6のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図7の携帯電話機、図8のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンタ)、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ等に適用することができる。
以上、本発明の酸化膜形成方法、酸化膜、部品および電子機器について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の酸化膜形成方法では、任意の目的の工程を1つ以上追加することもできる。
【実施例】
【0077】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.膜の形成
(実施例1)
<1> まず、ガラス基板の表面に、真空蒸着法により、平均厚さ200nmのAl膜(基材)を形成して、被処理部材を用意した。
【0078】
<2> 次に、この被処理部材を、5重量%のNaOH水溶液(温度:22℃)中に、20秒間浸漬した後、5分間の水洗を行い、その後、窒素を吹付けて乾燥した。
<3> 次に、被処理部材(Al膜)の表面に、室温で、99.5重量%のエタノールを含有する処理液を、Al膜全面に濡れ広がるように滴下して液状被膜を形成した。
<4> 次に、液状被膜を形成した被処理部材を、室温に20時間放置し、被処理部材の表面に膜を形成した。
【0079】
(実施例2)
前記工程<3>および工程<4>を、次のようにして行った以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例2では、被処理部材(Al膜)の表面に、被処理部材をヒータにより300℃に加熱しつつ、99.5重量%のエタノールを含有する処理液を、Al膜全面に濡れ広がるように滴下して液状被膜を形成した。なお、この処理液の滴下は、20秒間隔で10分間繰り返して行った。
次に、液状被膜を形成した被処理部材を、室温に10時間放置した。
【0080】
(実施例3)
前記工程<3>および工程<4>を、次のようにして行った以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例3では、被処理部材(Al膜)の表面に、被処理部材をヒータにより300℃に加熱しつつ、99重量%のトリフルオロエタノールを含有する処理液を、Al膜全面に濡れ広がるように滴下して液状被膜を形成した。なお、この処理液の滴下は、20秒間隔で10分間繰り返して行った。
次に、液状被膜を形成した被処理部材を、室温に5時間放置した。
【0081】
(実施例4)
前記工程<3>および工程<4>を、次のようにして行った以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例4では、被処理部材(Al膜)の表面に、被処理部材をヒータにより300℃に加熱しつつ、99重量%のエチレングリコールを含有する処理液を、Al膜全面に濡れ広がるように滴下して液状被膜を形成した。なお、この処理液の滴下は、30秒間隔で20分間繰り返して行った。
次に、液状被膜を形成した被処理部材を、室温に40時間放置した。
(実施例5)
液状被膜を形成した被処理部材を、100℃に加熱しつつ20時間放置した以外は、前記実施例4と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
【0082】
(実施例6)
前記工程<3>および工程<4>を、次のようにして行った以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例5では、被処理部材(Al膜)の表面に、被処理部材をヒータにより300℃に加熱しつつ、99重量%のグリセリンを含有する処理液を、Al膜全面に濡れ広がるように滴下して液状被膜を形成した。なお、この処理液の滴下は、30秒間隔で20分間繰り返して行った。
次に、液状被膜を形成した被処理部材を、室温に40時間放置した。
(実施例7)
液状被膜を形成した被処理部材を、150℃に加熱しつつ20時間放置した以外は、前記実施例6と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
【0083】
(実施例8)
前記工程<3>および工程<4>を、次のようにして行った以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例8では、被処理部材(Al膜)の表面に、被処理部材をヒータにより300℃に加熱しつつ、49.5重量%のエチレングリコールおよび49.5重量%のエタノールを含有する処理液を、Al膜全面に濡れ広がるように滴下して液状被膜を形成した。なお、この処理液の滴下は、30秒間隔で20分間繰り返して行った。
次に、液状被膜を形成した被処理部材を、室温に20時間放置した。
【0084】
(実施例9)
前記工程<2>を省略した以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例9では、前記工程<1>の直後に、前記工程<3>を行った。
(実施例10)
前記工程<2>を省略した以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例10では、前記工程<1>の後に、純窒素雰囲気中に、被処理部材を保存しておき、その後、前記工程<3>を行った。
【0085】
(実施例11)
前記工程<2>を、次のようにして行った以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例11では、被処理部材を、36重量%のHCl水溶液(温度:22℃)中に、30秒間浸漬した後、5分間の水洗を行い、その後、窒素を吹付けて乾燥した。
【0086】
(実施例12)
前記工程<2>を、次のようにして行った以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例12では、被処理部材を、2.4重量%のHF水溶液(温度:22℃)中に、10秒間浸漬した後、5分間の水洗を行い、その後、窒素を吹付けて乾燥した。
【0087】
(実施例13)
前記工程<2>を、次のようにして行った以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例13では、被処理部材を、36重量%のHCl水溶液(温度:22℃)の蒸気に、5分間曝した後、50℃のホットプレート上で5分間乾燥した。
【0088】
(実施例14)
前記工程<2>を、次のようにして行った以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例14では、被処理部材を、50重量%のHF水溶液(温度:22℃)の蒸気に、20秒間曝した後、50℃のホットプレート上で5分間乾燥した。
【0089】
(実施例15)
前記工程<2>を、次のようにして行った以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例15では、被処理部材を、5分間水洗した後、窒素を吹付けて乾燥した。
【0090】
(実施例16)
前記工程<2>を、次のようにして行った以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例16では、被処理部材を、水(温度:60℃)の蒸気に、15分間曝した。
【0091】
(実施例17)
前記工程<2>を、次のようにして行った以外は、前記実施例1と同様にして、被処理部材の表面に膜を形成した。
すなわち、実施例17では、被処理部材の表面に大気圧下でプラズマ処理を施した。
なお、プラズマ処理の条件は、ヘリウム流量:10L/min、高周波出力:500W、電極と被処理部材との距離:1mm、被処理部材の搬送速度:1mm/秒で行った。
【0092】
2.膜の化学組成分析
各実施例で作製された膜に対して、それぞれ、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)を用いて、化学組成分析を行った。その結果、いずれの膜においても、Al元素とO元素とが検出され、いずれの膜もAl酸化物による酸化膜であることが確認された。
【0093】
なお、Al膜に代えて、Ta膜、Ti膜、Mn膜、Sb膜、Fe膜、Cu膜、W膜、Mo膜、Sc膜、Al−Cu合金膜、Si膜、Ge膜、Ga−Si化合物半導体膜を形成して、被処理部材を作製した。そして、各被処理部材の表面に、前記実施例1〜17と同様にして膜を形成した。得られた膜に対して、それぞれ、前記と同様にして化学組成分析を行ったところ、前記と同様に、形成された膜は、いずれも、各金属または半導体に対応する酸化物による酸化膜であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の酸化膜形成方法の第1実施形態を説明するための図である。
【図2】本発明の酸化膜形成方法の第2実施形態を説明するための図である。
【図3】弾性表面波素子の実施形態を示す平面図である。
【図4】図3に示す弾性表面波素子の縦断面図である。
【図5】図3および図4に示す弾性表面波素子の製造方法を説明するための図(断面図)である。
【図6】本発明の弾性表面波素子を備える電子機器(ノート型パーソナルコンピュータ)である。
【図7】本発明の弾性表面波素子を備える電子機器(携帯電話機)である。
【図8】本発明の弾性表面波素子を備える電子機器(ディジタルスチルカメラ)である。
【符号の説明】
【0095】
1‥‥被処理部材 11‥‥基板 12‥‥表層 2‥‥液状被膜 3‥‥酸化膜 4‥‥マスク 400‥‥開口部 10‥‥弾性表面波素子 20‥‥基板 21‥‥基部 22‥‥下地層 23‥‥圧電体層 30‥‥IDT(入力側電極) 31‥‥電極指 40‥‥IDT(出力側電極) 41‥‥電極指 50‥‥絶縁保護膜 70‥‥導電性材料層 90‥‥マスク 1100‥‥パーソナルコンピュータ 1101‥‥アンテナ 1102‥‥キーボード 1104‥‥本体部 1106‥‥表示ユニット 1200‥‥携帯電話機 1201‥‥アンテナ 1202‥‥操作ボタン 1204‥‥受話口 1206‥‥送話口 1300‥‥ディジタルスチルカメラ 1302‥‥ケース(ボディー) 1304‥‥受光ユニット 1306‥‥シャッタボタン 1308‥‥メモリ 1312‥‥ビデオ信号出力端子 1314‥‥データ通信用の入出力端子 1430‥‥テレビモニタ 1440‥‥パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機物で構成される基材の表面に、前記無機物の酸化物を主材料として構成される酸化膜を形成する酸化膜形成方法であって、
前記基材の表面にアルコールを含有する処理液を供給して、該処理液の液状被膜を形成し、
前記液状被膜中において、前記無機物と前記アルコールとの反応を経て、前記無機物の酸化物を生成させるとともに、前記液状被膜中に残存する前記処理液を除去して前記酸化膜を得ることを特徴とする酸化膜形成方法。
【請求項2】
前記処理液は、前記基材を加熱した状態で供給される請求項1に記載の酸化膜形成方法。
【請求項3】
前記アルコールは、一価アルコール、二価アルコールおよび三価アルコールのうちの少なくとも1種である請求項1または2に記載の酸化膜形成方法。
【請求項4】
前記アルコールは、その炭素数が1〜6である請求項1ないし3のいずれかに記載の酸化膜形成方法。
【請求項5】
前記アルコールは、その分子中の水酸基以外に含まれる水素原子の少なくとも一部をフッ素原子に置換したものである請求項1ないし4のいずれかに記載の酸化膜形成方法。
【請求項6】
前記処理液中の前記アルコールの濃度は、95重量%以上である請求項1ないし5のいずれかに記載の酸化膜形成方法。
【請求項7】
前記処理液の前記基材の表面への供給に先立って、前記基材の表面に、形成すべき前記酸化膜の形状に対応した開口部を有するマスクを形成する請求項1ないし6のいずれかに記載の酸化膜形成方法。
【請求項8】
前記マスクは、レジスト材料を主材料として構成されるレジスト層である請求項7に記載の酸化膜形成方法。
【請求項9】
前記マスクを形成した後、前記基材の表面に表面処理を施す請求項7または8に記載の酸化膜形成方法。
【請求項10】
前記処理液の前記基材の表面への供給に先立って、前記基材の表面に表面処理を施す請求項1ないし9のいずれかに記載の酸化膜形成方法。
【請求項11】
前記液状被膜中に残存する前記処理液の除去は、常温または前記基材を加熱した状態で行われる請求項1ないし10のいずれかに記載の酸化膜形成方法。
【請求項12】
前記無機物は、金属および半導体の少なくとも一方を含むものである請求項1ないし11のいずれかに記載の酸化膜形成方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の酸化膜形成方法により形成されたことを特徴とする酸化膜。
【請求項14】
請求項13に記載の酸化膜を備えることを特徴とする部品。
【請求項15】
当該部品は、電子デバイスである請求項14に記載の部品。
【請求項16】
請求項14または15に記載の部品を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−63392(P2006−63392A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247407(P2004−247407)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】