説明

酸素分離ガスタービン複合システム

【課題】原料空気の加熱に別の昇温手段を用いることによる酸素分離効率の低下を回避してエネルギー効率の向上を図る酸素分離ガスタービン複合システムを提供する。
【解決手段】酸化物イオン透過性酸化物からなる分離膜を用いて酸素を分離する酸素分離装置1とガスタービン9とが複合化される。ガスタービン9の圧縮部10で生成した高圧空気の一部あるいは全量が熱交換によって加熱され、分離膜によって高純度の酸素が分離される。酸素分離後の酸素貧化空気が補助加熱手段を用いて昇温された後、高圧空気の加熱とガスタービン9の駆動に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物イオン透過性酸化物からなる分離膜を使って、空気から高純度の酸素を分離する酸素分離装置とガスタービンとの複合化により、酸素と電力を併産する酸素分離ガスタービン複合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物イオン透過性酸化物を使った酸素分離技術は、酸素分圧の異なる2種類のガスを隔離することにより、酸素分圧の高い側から低い側へ酸化物イオンの形で酸素が酸化物中を透過する現象に基づいている。酸化物イオン透過性酸化物の中でも、電子伝導性を併せ持つ混合伝導性酸化物の場合には、酸化物イオンの移動に伴う電荷のバランスを電子の移動で補償するため、外部回路なしで酸素の透過が持続するという特徴がある。
【0003】
酸素分離の際の駆動力となる酸素分圧の違いは、例えば酸素含有混合ガス(空気など)を圧縮することにより酸素分圧を常圧以上にするか、分離側を減圧にすることによって実現される。また、酸素分離速度は絶対温度に比例し、かつ分離膜材料の酸化物イオン伝導率自体も温度上昇とともに増大するため、高温ほど酸素分離速度を大きくすることができる。但し、高温領域では使用される金属材料が限定されるため、通常、700℃〜950℃といった温度域が選択される。
【0004】
酸化物イオン透過性酸化物を使った酸素分離技術の特徴として、一つは高純度の酸素分離が上げられる。酸素分離の効率を上げるために分離膜の厚さは極限まで薄くされる。ガス分子が通り抜けられる欠陥のない薄膜が形成できれば、原理的には酸素しか透過できないためである。また、他の特徴として、安価な酸素製造の可能性が上げられる。これは、原料空気の高温・高圧化に要するエネルギーを排ガスからのエネルギー回収で補うことによって、単位体積当たり必要となる電力(電力原単位)を既存の酸素製造設備である酸素PSA(Pressure Swing Adsorption)や深冷分離より低くできるとの試算結果に基づいている。
【0005】
これら2つの特徴があるものの未だに実用化が実現されていない理由の一つとして、エネルギー効率が期待されているレベルに達していないことによる。
【0006】
エネルギー効率を向上させるための一つの方法として、原料空気の昇温に排ガスとの熱交換を利用する方法が挙げられる。しかしながら、通常の熱交換器では、伝熱面積を大きくして熱交換効率を上げるため、多くのフィンを具備した多管式熱交換器となっており、極めて高価であるという問題があった。また、熱伝達媒体が金属であるため、熱交換によって得られる温度はせいぜい500℃程度までであり、酸素分離に必要な700℃以上に昇温させるためには、別に昇温手段を講じる必要があった。
【0007】
これに対し、セラミック製のハニカムやボールなどを媒体とし、蓄熱・放熱作用を利用した蓄熱式熱交換器が知られている。例えば特許文献1では、高温型燃料電池の空気または燃料ガスの加熱に、発電部から出た排出ガスとの熱交換に蓄熱式熱交換器を使うことで経済性向上が図れることを開示している。また、特許文献2では、石炭ガス化炉の生成ガス等の高温ガスが保有する熱量を、系内にて有効利用するために蓄熱式熱交換器を用いるシステムを開示しており、実施例として酸化物燃料電池(SOFC)への適用について述べられている。
【0008】
燃料電池の場合、発電に発熱反応を伴うため、排出ガス温度は原料ガス温度より高温となっている。従って、燃料電池の分野では蓄熱式熱交換器を用いることにより、別の昇温手段を講じる必要は必ずしもない。一方、酸素分離の場合には燃料電池のような発熱反応はなく、逆に系外への放熱があるため、排出ガス(酸素貧化空気)は常に原料ガス(空気)より低温となっている。従って、蓄熱式熱交換器を用いてもなお原料ガスの加熱は不十分であり、不足する分を別の手段で補う必要があった。従来は、酸素分離装置をシンプルな構成とするため、排出ガスの熱回収と原料ガスの加熱を別々にすることが一般的であった。
【0009】
原料空気の別の昇温手段としては、最も簡便な方法として電気的に加熱する方法の他に原料空気に燃料を混合させ、燃焼させる方法が知られている。しかしながら、電気的に加熱する方法では経済的なメリットは十分に享受できず、また、原料空気の燃焼による方法では、以下に述べる理由から必ずしも有効な方法とはなっていない。
【0010】
すなわち、酸素分離の場合は酸化物燃料電池や膜型反応器とは異なり、原料空気の燃焼による酸素濃度低下が顕著に現われるからである。酸化物燃料電池や膜型反応器の分野では、酸素供給源として原料空気が使われ、酸化物イオン透過性酸化物を挟んで反対側に水素や炭化水素ガスなどの燃料が供給される。酸化物イオンの移動の駆動力は、両面の酸素分圧比の対数に比例することから、極端に酸素分圧の低い状態となっている燃料側表面の状態で酸化物イオンの移動速度がほぼ決定され、原料空気側の酸素分圧の状況はほとんど反映されないと言ってよい。これに対し、酸素分離の場合では、常圧の酸素を得る場合には透過側の酸素分圧は0.1MPaで一定であり、原料空気側の酸素分圧の状況を顕著に反映することになる。
【0011】
分かり易く説明するために、原料空気の燃焼による昇温方法によって、原料空気中の酸素濃度が21%から16%に低下した場合を想定する。酸化物燃料電池や膜型反応器の場合、燃料側表面の酸素分圧を1.0×10-10MPaと仮定すると、
1 − [Ln(0.016/10-10) / Ln(0.021/10-10)] = 0.014
となり、酸素濃度低下の結果、1.4%の移動速度低下にしかならない。一方、酸素分離の場合、原料空気の圧力を1.0MPaとすると、
1 − [Ln(0.16/0.1) / Ln(0.21/0.1)] = 0.36
となり、実に36%の低下となる。
【0012】
このように酸化物燃料電池や膜型反応器の分野では有効ではあるが、原料空気に燃料を混合させ燃焼させる昇温方法は、酸素分離の場合では分離効率の大幅な低下を招くという問題があった。
【0013】
また、酸素分離によって排出される酸素貧化空気の持つ高温・高圧のエネルギーを回収する方法として、ガスタービンを接続する方法が知られている。例えば本発明者らが以前に出願した特許文献3及び特許文献4にあるように、ガスタービンの圧縮部で発生した高圧空気を酸素分離部へいったん分岐し、酸素分離部から排出される酸素貧化空気をタービン部へ戻す方法である。酸素分離によってタービン駆動用のガス流体が減少し、発電量が低下するが、低下した発電量は酸素分離に要した電力量と見なせるため、酸素と電力の併産システムとして勘案すると、トータルでエネルギー効率が改善する。
【0014】
しかしながら、酸素分離に必要な温度域ではガスタービン駆動温度よりも低温であるため、タービン部に戻された酸素貧化空気は、ガスタービン内部で燃焼過程を経て膨張タービンを駆動する。つまりタービン駆動に必要な高温・高圧空気は原料空気の加熱に使われておらず、酸素分離に必要な温度まで原料空気を加熱するために、やはり別に昇温手段を講じる必要があった。
【0015】
なお、酸素分離と類似した酸化物燃料電池の分野では、例えば特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9及び特許文献10などにガスタービンによる高温・高圧排ガスからのエネルギー回収方法が開示されている。これらは、上述したように原料ガス温度より排ガス温度の方が高いために、必ずしも別に昇温手段を講じる必要はない。仮に別の昇温手段として原料空気の燃焼による加熱方法を適用しても、上述したように燃料電池では大きな影響は生じない。すなわち燃料電池の分野で開示されている技術は、燃料電池特有の技術とは言え、これらの技術をそのまま酸素分離に適用することはできなかった。
【0016】
【特許文献1】特開平7−135014号公報
【特許文献2】特開平11−223482号公報
【特許文献3】特開2005−281027号公報
【特許文献4】特開2005−282397号公報
【特許文献5】特開平3−286150号公報
【特許文献6】特開平8−45523号公報
【特許文献7】特開平10−297901号公報
【特許文献8】特開2003−254004号公報
【特許文献9】特開2005−1993号公報
【特許文献10】特開2006−100223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上述した現状の課題を鑑み、エネルギー効率に優れた酸素分離装置に関連したシステムの開発を目指した結果なされたものである。すなわち、高温プロセスである酸化物イオン伝導性酸化物を使った酸素分離技術にガスタービンを接続するシステムを見直し、原料空気の加熱に別の昇温手段を用いることによる酸素分離効率の低下を回避してエネルギー効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の課題を解決するための本発明の要旨は、次の通りである。
(1)酸化物イオン透過性酸化物からなる分離膜を用いて酸素を分離する酸素分離装置とガスタービンとが複合化されたシステムであって、前記ガスタービンの圧縮部で生成した高圧空気の一部あるいは全量が熱交換によって加熱され、前記分離膜によって高純度の酸素が分離されるとともに、酸素分離後の酸素貧化空気が補助加熱手段を用いて昇温された後、前記高圧空気の加熱と前記ガスタービンの駆動に用いられるようにしたことを特徴とする酸素分離ガスタービン複合システム。
【0019】
(2)前記補助加熱手段は、前記酸素貧化空気に燃料を混合し、酸化触媒による燃焼熱を利用する加熱手段であることを特徴とする(1)の酸素分離ガスタービン複合システム。
(3)前記酸素貧化空気の熱交換で前記高圧空気を加熱する手段として、蓄熱式熱交換器を含むことを特徴とする(1)または(2)の酸素分離ガスタービン複合システム。
(4)前記熱交換により加熱された前記高圧空気の温度が、700℃以上950℃以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの酸素分離ガスタービン複合システム。
(5)前記ガスタービンの排出口に排熱回収ボイラを接続し、スチームタービンを駆動することによって、前記ガスタービンと前記スチームタービンとにより複合発電を行うことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの酸素分離ガスタービン複合システム。
(6)酸素分離側に減圧手段を有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの酸素分離ガスタービン複合システム。
(7)前記酸化物イオン透過性酸化物が実質的に立方晶ペロブスカイト酸化物であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの酸素分離ガスタービン複合システム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、酸素貧化空気の持つ高温・高圧のエネルギーが有効に活用されるため、高圧空気中の酸素濃度の低下が少なくて済み、高い酸素透過速度や電力原単位の削減が実現される。これにより固体電解質酸化物を使った酸素分離の特徴である高純度酸素製造に加え、従来、机上での可能性の指摘に留まっていた安価酸素製造が実際に可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に、本発明の好ましい具体例として、酸素分離装置とガスタービンが複合化されたシステムを示す。これは、ガスタービンの圧縮部で生成した高圧空気の一部あるいは全量が熱交換によって加熱され、酸素分離管によって高純度の酸素が分離される。分離後の酸素貧化空気は補助加熱手段を用いて更に昇温された後、高圧空気の加熱とタービン駆動に用いられる酸素分離ガスタービン複合システムである。以下、図1に従って本システムの詳細を述べる。
【0022】
分離装置本体1の中に、複数本の酸素分離管4が空間2と空間3を隔離するように置かれる。酸素分離管4は、多孔質支持管の上に極薄膜が形成された構造をとっており、多孔質支持管部分で空間2と空間3の間に発生する圧力差を保持するための強度を持たせ、薄膜部分で実際の酸素分離を行なうようになっている。多孔質支持管と薄膜のそれぞれの厚さは、次のような観点をもとに適宜選択される。多孔質支持管は保持すべき圧力差を勘案して一定以上の厚さが必要となるが、一方、あまり厚くなると通気抵抗が発生し、酸素透過速度が低下する。一般的には、0.5mm以上10mm以下の範囲で選択される。薄膜は、酸素透過速度を増大させる上で薄いほど有利となるが、あまり薄くなると欠陥部を通してガスが抜けやすくなるため、分離酸素の純度の低下を招く。一般的には、1μm以上1mm以下の範囲で選択される。
【0023】
酸素分離管4は、空間2と空間3を隔離するように複数本が分離装置本体1に置かれるため、分離管本体によるガスのリーク回避は勿論、分離管を保持する箇所(図示せず)においても完全なガスシールが施される。空間2と空間3は、常に空間2の酸素分圧が空間3の酸素分圧より高くなるようになっており、酸素は空間2から空間3に透過する。例えば、空間2/空間3=高圧空気/常圧酸素、あるいは高圧空気/減圧酸素といった組み合わせとなる。ここでは、高圧空気から常圧酸素を分離する場合について説明する。
【0024】
原料空気6は、ガスタービン9の圧縮部10に取り込まれ、断熱圧縮相当分だけ昇温された高圧空気は熱交換器6に入って更に昇温される。分離装置本体1において酸素分離が行なわれ、分離酸素は酸素排出口5から回収される。酸素貧化空気は、燃料7と混合後、燃焼器8によって更に昇温され、熱交換器6を経由してガスタービンの膨張タービン部11へ戻される。
【0025】
燃焼器8は、通常の火炎を発するバーナー方式のものでも構わないが、酸素濃度の低下した酸素貧化空気を使って安定して燃焼を持続させる対策をとらないと火炎が消失し、システムとして成立しない可能性もある。酸素貧化空気の安定燃焼を簡便に実現する手段として、燃料の酸化を促進する触媒を使った触媒燃焼器が好適に用いられる。これは、火炎を発生することなく触媒表面での酸化熱によって昇温するものであり、酸化熱によって触媒能発現に必要な温度に保たれるため、持続的な燃焼が可能である。また、触媒付近に設置した温度計をモニターして燃料の供給量を自動制御するので、安定した温度制御が行なわれる。
【0026】
次に、より望ましい実施の形態として、酸素貧化空気の熱交換で高圧空気を加熱する手段として蓄熱式熱交換器を用いた例を図2に示し、これに従って本複合システムの説明を行なう。
ガスタービンの圧縮部10で発生した高圧空気は、開閉バルブ15Aを通って蓄熱式熱交換器16Aに入る。前段で蓄熱された媒体から熱を受けとり、酸素分離可能な温度まで昇温された後、分離装置本体1の空間2に導入される。酸素は酸素排出口5から回収される。酸素貧化空気は、開閉バルブ18Bを通って供給される燃料7と混合され加熱器8Bによって加熱された後、蓄熱式熱交換器16Bの媒体を昇温させながら自身は冷却され、開閉バルブ17Bを通って、ガスタービンの膨張タービン部11へ戻される。
【0027】
蓄熱式熱交換器16Bの媒体が十分に昇温(蓄熱)した段階で、開閉バルブ15A、15B、17A、17Bを操作し、流路パターンを切り換える。流路パターンを切り換えと同時に、開閉バルブ18Bを閉じ、18Aを開けることで、加熱器8Aを稼動させ、蓄熱式熱交換器16Aの蓄熱媒体を加熱する。
【0028】
蓄熱式熱交換器16Aあるいは16Bによって高圧空気を700℃以上950℃以下という酸素分離可能な温度にまで昇温することができると、酸素分離前に補助加熱手段を用いる必要はなく、原料空気中の酸素濃度の低下を回避することができるので、複合システムとしては更に望ましい。但し、700℃未満の温度であっても、昇温のために消費される酸素量は少なくて済むため、若干の補助加熱手段を併用しても本発明を逸脱するものではない。
次に、ガスタービンとスチームタービンの複合発電としたシステムについて説明する。図3は、図1のシステムにスチームタービンを追加した例であり、以下、図3をもとに説明するが、図2にスチームタービンを追加することも可能である。
【0029】
ガスタービンから排出される排ガス13は、例えば、300℃〜500℃といった中温域の熱を有しているため、この排熱を利用して排熱回収ボイラ19においてスチームを生成し、スチームタービン20を駆動する。この結果、ガスタービンとスチームタービンの複合発電が行なえ、エネルギー効率を更に高めることができる。
【0030】
なお、酸素分離装置に組み合わされるガスタービンは、酸素分離装置の規模によって適宜選択される。より小規模の場合には、マイクロガスタービンを用いてもよい。
【0031】
上述した酸素分離ガスタービン複合システムにおいて、分離酸素側を減圧して分離することもできる。なお、このために酸素分離側(空間3)に接続された適宜の減圧手段を備える。減圧に要するエネルギーの回収が困難であるものの、酸素透過のための駆動力が増大するため、より少ない酸素分離管で目的とする酸素を分離することができる。また、小規模システムでマイクロガスタービンを用いる場合には、圧縮部から発生する原料空気の圧力が不足する場合があるので、このような場合では、特に分離酸素側を減圧にするメリットが大きくなる。いずれにしても、分離側を減圧するかどうかは、トータルの酸素製造コストを勘案しながら決めればよい。
【0032】
酸素分離ガスタービン複合システムで用いられる酸化物イオン透過性酸化物としては、酸化ビスマス系、セリア系、ジルコニア系、ペロブスカイト型酸化物、パイロクロア型酸化物など、850℃で10-2Scm-1以上の酸化物イオン伝導率を有する酸化物が好適に用いられる。中でも、酸化物イオン伝導率が高い、実質的に立方晶ペロブスカイト酸化物が最も好適に用いられる。ここで、実質的にとは、近似的には立方晶となるペロブスカイト酸化物でも、実際には結晶構造が若干歪んだ構造となっていることから、厳密に立方晶ペロブスカイト酸化物に限定するものではないことを示している。
【実施例】
【0033】
図1に示した酸素分離ガスタービン複合システムと、図4に示した従来のガスタービン併設システム(比較例)を使い、それぞれの場合の酸素製造電力原単位を比較した。酸素分離装置は850℃にて、酸素分離を行った。結果を図5に示す。図5は、横軸に酸素製造速度、縦軸に発電量をとってプロットしたものであり、いずれも酸素製造量の増大に伴い発電量の低下が認められたが、この傾きから計算される酸素製造電力原単位は、従来システムでは、電力原単位0.28kW時/m3-酸素、本発明によるシステムでは、同0.22 kW時/m3-酸素であることがわかった。これにより、本発明によって、21%の電力が削減できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の好ましい酸素分離ガスタービン複合システムの具体例であって、酸素貧化空気を加熱して高圧空気の加熱とタービン駆動を行なう酸素分離ガスタービン複合システムを示す図である。
【図2】図1で示した複合システムの別の好ましい具体例であって、熱交換に蓄熱式熱交換器を用いた酸素分離ガスタービン複合システムを示す図である。
【図3】図1で示した複合システムの更に別の好ましい具体例であって、ガスタービンから排出される排ガスを使って、ガスタービンとスチームタービンの複合発電を行なう酸素分離ガスタービン複合システムを示す図である。
【図4】酸素製造電力原単位を比較するために用いた従来の代表的ガスタービン併設システムを示す図である。
【図5】本発明による複合システムと従来システムとの酸素製造量と発電量の関係を示した図である。
【符号の説明】
【0035】
1 酸素分離装置本体
2 酸素分離管外面と酸素分離装置本体の間の空間
3 酸素分離管内面と酸素分離装置本体の間の空間
4 酸素分離管
5 分離酸素排出口
6 熱交換器
7 燃料
8 燃焼器
8A 燃焼器A
8B 燃焼器B
9 ガスタービン
10 圧縮部
11 膨張タービン部
12 原料空気
13 排ガス
15A 開閉バルブA(原料空気用)
15B 開閉バルブB(原料空気用)
16A 蓄熱式熱交換器A
16B 蓄熱式熱交換器B
17A 開閉バルブA(酸素貧化空気用)
17B 開閉バルブB(酸素貧化空気用)
18A 燃料バルブA
18B 燃料バルブB
19 排熱回収ボイラ
20 スチームタービン
21 第1燃焼器
22 第2燃焼器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物イオン透過性酸化物からなる分離膜を用いて酸素を分離する酸素分離装置とガスタービンとが複合化されたシステムであって、
前記ガスタービンの圧縮部で生成した高圧空気の一部あるいは全量が熱交換によって加熱され、前記分離膜によって高純度の酸素が分離されるとともに、酸素分離後の酸素貧化空気が補助加熱手段を用いて昇温された後、前記高圧空気の加熱と前記ガスタービンの駆動に用いられるようにしたことを特徴とする酸素分離ガスタービン複合システム。
【請求項2】
前記補助加熱手段は、前記酸素貧化空気に燃料を混合し、酸化触媒による燃焼熱を利用する加熱手段であることを特徴とする請求項1に記載の酸素分離ガスタービン複合システム。
【請求項3】
前記酸素貧化空気の熱交換で前記高圧空気を加熱する手段として、蓄熱式熱交換器を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の酸素分離ガスタービン複合システム。
【請求項4】
前記熱交換により加熱された前記高圧空気の温度が、700℃以上950℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素分離ガスタービン複合システム。
【請求項5】
前記ガスタービンの排出口に排熱回収ボイラを接続し、スチームタービンを駆動することによって、前記ガスタービンと前記スチームタービンとにより複合発電を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸素分離ガスタービン複合システム。
【請求項6】
酸素分離側に減圧手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸素分離ガスタービン複合システム。
【請求項7】
前記酸化物イオン透過性酸化物が実質的に立方晶ペロブスカイト酸化物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸素分離ガスタービン複合システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−111419(P2008−111419A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296589(P2006−296589)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素安全利用等基盤技術開発 水素インフラに関する研究開発 膜式分離酸素利用オートサーマル改質水素製造技術の開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】