説明

酸素及び/又は水分に敏感な電子デバイスをカプセル封じするための多層膜

本発明は、水分及び/又は酸素に敏感な電子デバイス又は光電子デバイスをカプセル封じすることが可能な多層バリア膜を参照し、このバリア膜は、水分及び/又は酸素と相互作用することが可能な反応性ナノ粒子を含む少なくとも1つのナノ構造化層を備え、反応性ナノ粒子は、ポリマー結合剤内に分布しており、少なくとも1つの紫外光中和層が、紫外光を吸収することが可能な材料を含み、それによりバリア膜を紫外線が透過するのを制限する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[001]本願は、2008年4月9日出願の米国特許仮出願第61/043,534号の優先権の利益を主張し、その内容は、あらゆる目的でその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
[発明の分野]
[002]本発明は、一般にカプセル封じ技術に関し、より詳細には、酸素及び/又は水分に敏感な電子デバイスをカプセル封じするための多層膜に関する。
【0003】
[発明の背景]
[003]近年、プラスチックエレクトロニクスの重要性が、ますます多くの領域、特に小型ディスプレイ画面を含む広範な消費者向けハンドヘルド型電子デバイスに使用されるディスプレイ応用分野で高まっている。全ポリマーエレクトロニクスデバイスを実現するという目標が、広範な電子デバイス内の実用的な回路に必要とされる電子特性を有するプラスチック−その低コストな加工、柔軟性、及び靱性で知られている−を提供する動機を、世界中の研究グループに与えている。
【0004】
[004]有機ルミネセント電子デバイス(OLED)が、有機薄膜に依拠して光を発生する、フラットパネルディスプレイ用の有望な技術になるほど成長したプラスチック電子デバイスの一例である。OLED内の能動層は、電流が通過したとき光を発する蛍光性有機材料である。蛍光性有機材料は、エレクトロルミネセント(EL)素子としても知られており、透明なアノード層と透明なカソード層との間に配置される。蛍光性有機材料は、水分及び酸素に対して反応性である、したがって時間の経過につれて水分及び酸素との反応によりEL素子を劣化させる有機分子を含むことが知られている。
【0005】
[005]有機EL素子を劣化から保護するために、有機EL素子は、一般に、水分及び酸素から密封するカプセル封じ内に封入される。取扱いに対して弾力があり(resilient)、水分及び酸素バリアをもたらすのに効果的である様々なタイプのカプセル封じ構造を提供しようと試みられている。欧州特許出願公開第0776147A1号に記載されているものなど、従来のタイプのカプセル封じは、低い気体透過特性を有する2枚の基板間で画定された外被(enclosure)内に水分及び酸素に敏感な構成部品を配置することを含む。これらの2枚の基板は、接着剤によって共に保持され、水分及び酸素を吸収するように、乾燥剤が外被内に配置される。場合によっては、窒素など不活性ガスを外被内に密封することができる。
【0006】
[006]カプセル封じ技術における現在の取組みは、OLEDが形成されるベース基板の気体透過性を下げることに集中している。たとえば、米国特許出願公開第20030203210号(Vitex Systems,Inc.)は、支持基板上に配置された交互のポリマー及び金属酸化物無機層を備える基板について記載している。これらの金属酸化物無機層は、気体に対して低い透過性を示すことが判明しており、交互層構造で使用されたとき、低い気体透過率が達成された。しかし、無機金属酸化物層は、ピンホールや割れなど表面欠陥が作製中に層内に形成される点で、固有の構造問題を有する。これらの表面欠陥は、水や酸素が入る通路をもたらし、それによりカプセル封じの気体透過特性を損なう。さらに、金属酸化物層は、機械的な曲げ応力が加えられたとき、さらなる構造欠陥を引き起こす傾向がある。
【0007】
[007]米国特許第6,465,953号(General Electric Company)は、水分ゲッタ粒子(moisture getter particles)が充填されている透明ポリマー基板について記載している。この基板は、BaO及びMgOなど水分ゲッタ粒子を、ポリカーボネートなど熱硬化性ポリマーに加えることによって形成される。このプラスチック基板は、基板のバリア特性を改善するために、SiO又はSiを含む追加の無機膜で被覆される。
【0008】
[008]ベース基板に対する改良以外には、カプセル封じのバス(bas)バリア特性を改善する代替手法はほとんど調査されていない。30,000時間を超えるデバイス寿命を達成するために、カプセル封じ技術における現在の取組みは、依然として、10−5g/cm/日以下の低い水蒸気透過率を達成することができるバリア基板を設計することに集中している。
【0009】
[009]本発明の目的は、既存の任意のカプセル封じ設計と共に使用することができる、水分及び酸素に敏感な電子デバイスをカプセル封じすることが可能な可撓性多層バリア膜を提供することである。
【0010】
[発明の概要]
[010]一態様では、水分及び/又は酸素に敏感な電子デバイスをカプセル封じすることが可能な可撓性多層バリア膜が提供される。この多層膜は、水分及び/又は酸素と相互作用することが可能な反応性ナノ粒子が分布する少なくとも1つのポリマー層を備え、このポリマー層は、外部硬化要因が加えられることによって重合する少なくとも1つの重合可能なモノマーから導出される。また、この多層膜は、紫外光を吸収することが可能な材料を含む紫外光中和層を備え、それによりカプセル封じ(encapsulated)しようとする電子デバイスを紫外光に対する暴露から遮蔽する。
【0011】
[011]1つ又は複数のナノ構造化(又はナノ粒子)層を形成するように反応性ナノ粒子がポリマー結合剤内に分布する「多層バリア膜」(本明細書では「バリア膜」とも称する)が、水分及び酸素に敏感なデバイスをカプセル封じするのに極めて有効であることを、本発明者らは見出した。これらの多層バリア膜はまた、既存のバリア材料の気体バリア特性を改善するのに有用である。水分ゲッタ粒子がバリア基板内で使用されているが、水分ゲッタ粒子は、これまでコーティング又は被膜として使用されていない。従来のバリア基板は、金属又は金属酸化物バリア層を使用して低い気体透過性を達成することができる。しかし、金属及び金属酸化物層は、水分及び酸素を透過することによる酸化のため徐々に不透明になり、それによりバリア基板の透明性を損なうことが判明している。そのような問題を回避するために、金属又は金属酸化物バリア層をバリア基板内で完全に置き換えようと試みられている。金属又は金属酸化物膜の使用を回避し、その代わりに反応性ナノ粒子を含有するナノ構造化層を使用することにより、本発明は、使用するにつれてバリア基板が劣化する問題を克服する。この点に関して、ナノ構造化層を無機層バリア基板の代替品として使用する手法は、ナノ粒子を保持するためのポリマー結合剤が紫外光など硬化要因が加えられることによって硬化するので、今まであきらめられてきた。そのようなデバイスの有機エレクトロルミネセント(EL)層は紫外光放射に極めて敏感であるため、硬化過程は、有機EL層を損傷する可能性が高い。従来のバリア基板では、金属又は金属酸化物無機層によって紫外光がデバイスに到達することができないため、そのような問題は発生しない。これらの無機層がないとき、EL層は、必然的に紫外光放射にさらされる。この問題は、本発明において、ナノ構造化層の水分及び酸素捕集能力を、紫外光中和層の紫外光遮蔽能力と組み合わせ、従来のバリア基板内に見出される無機の金属及び金属酸化物層が省かれた純粋に「有機」のバリア膜をもたらすことによって、克服される。
【0012】
[012]本願の文脈では、「ナノ構造化層」は、全体的に、ナノスケール粒子が分布する層を指す。この層は、純粋なポリマー、ポリマー溶液、及びポリマー複合体などナノスケール粒子を保持するための任意の好適な種類の結合剤を含むことができる。「反応性ナノ粒子」という用語は、化学反応(たとえば、加水分解又は酸化)を用いて、又は物理的若しくは物理化学的相互作用(たとえば、毛管現象、吸着、親水性引力、又はナノ粒子と水/酸素の間の任意の他の非共有相互作用)によって水分及び/又は酸素と相互作用し、カプセル封じを透過する気体から水分及び酸素を除去し、したがって水分及び酸素が電子構成部品に到達するのを防止することが可能なナノ粒子を指す。
【0013】
[013]反応性ナノ粒子は、水及び/又は酸素に対して反応性である金属を含む、又はそれらからなることができ、すなわち、2〜14族(IUPAC)からの金属を含めて、反応性系列内で水素の上方にある金属を使用することができる。いくつかの好ましい金属は、2、4、10、12、13、及び14族からの金属を含む。たとえば、これらの金属は、Al、Mg、Ba、及びCaから選択することができる。Ti、Zn、Sn、Ni、及びFeを含めて、反応性遷移金属をも使用することができる。
【0014】
[014]金属の他に、反応性ナノ粒子はまた、TiO、Al、ZrO、ZnO、BaO、SrO、CaO及びMgO、VO、CrO、MoO、並びにLiMnを含めて、水分及び/又は酸素と相互作用することが可能ないくつかの金属酸化物を含む、又はそれらからなることができる。いくつかの実施形態では、金属酸化物は、すず酸カドミウム(CdSnO)、インジウム酸カドミウム(CdIn)、すず酸亜鉛(ZnSnO及びZnSnO)、及び酸化インジウム亜鉛(ZnIn)からなる群から選択される透明導電金属酸化物を含むことができる。
【0015】
[015]物質の反応性は、その物質の粒径に依存する可能性があることが当業者には明らかである(J.Phys.Chem.Solids 66(2005年)546〜550参照)。たとえば、Al及びTiOは、ナノ粒子の形態で水分に対して反応性であるが、ナノ粒子に一般に関連する数ナノメートルから数百ナノメートルのナノスケール寸法を超えるマイクロスケール又はミリメートルスケールのバリア膜など、ナノスケールを数桁超える(連続)バルク相では非反応性であるか、又は非常に小さい程度で反応性であるにすぎない。したがって、Al及びTiOを例示的な例として使用すれば、Al及びTiOナノ粒子は水分に対して反応性であるとみなされ、一方Al及びTiOバルク層(バリア基板内で使用されるものなど)は、水分及び酸素に対して反応性ではない。一般に反応性の金属又は金属酸化物ナノ粒子、たとえば、Al、TiO、又はZnOナノ粒子は、反応性を保存するために、好適なコロイド分散系内に存在することができ、任意の従来の、Nanophase Technologies Corporationのナノアーク(NanoArc)(登録商標)法など、又は知的所有権のある方法によって合成することができる。
【0016】
[016]一実施形態では、ナノ構造化層内の反応性ナノ粒子は、カーボンナノチューブ、ナノリボン、ナノファイバ、及びナノスケール寸法を有する任意の規則的又は不規則な形状の炭素粒子など、炭素ナノ粒子を含む、又はそれらからなる。カーボンナノチューブについては、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブを使用することができる。本発明者らによって実施された研究では、カーボンナノチューブ(CNT)が乾燥剤として働くことができることが見出された。カーボンナノチューブは、毛管現象を介して、低表面張力液、特に表面張力が約200Nm−1を超えない液体によって濡らすことができる(Nature、801頁、Vol.412、2001年)。原則として、これは、毛管吸引によって水の分子を開端カーボンナノチューブに引き込むことができることを意味することになる。水の分子はカーボンナノチューブ内で擬似1次元構造を形成することができ、したがって少量の酸素及び水の分子を吸収及び保持するのを助けることが示唆されている。
【0017】
[017]不活性ナノ粒子はナノ構造化層に含まれてもよく、反応性ナノ粒子と共に存在していてもよい。本明細書では、「不活性ナノ粒子」は、水分及び/又は酸素と全く相互作用しない、或いは反応性ナノ粒子に比べて小さい程度で反応するナノ粒子を指す。そのようなナノ粒子は、酸素及び/又は水分の透過を妨げるようにナノ構造化層内に含めることができる。不活性粒子の例は、米国特許第5,916,685号に記載されているナノクレイを含む。そのようなナノ粒子は、バリア層内の欠陥を塞ぐように働き、それにより、透過が発生する経路を遮り、又は少なくとも欠陥断面積を減少させ、したがって水蒸気又は酸素が欠陥を通って拡散する透過通路をはるかに遠回りにし、したがってバリア層が突破される前に透過時間が長くなり、それによりバリア特性を改善する。
【0018】
[018]また、不活性ナノ粒子用の他の好適な材料は、銅、白金、金、及び銀など非反応性金属、シリカ、ウォラストナイト、ムライト、モンモリロナイトなど鉱物又は粘土、希土類元素、ケイ酸塩ガラス、フッ化ケイ酸塩ガラス、フルオロボロシリケートガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、カルシウムケイ酸塩ガラス、カルシウムアルミニウムケイ酸塩ガラス、カルシウムアルミニウムフッ化ケイ酸塩ガラス、炭化チタン、炭化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、炭化ケイ素、又は窒化ケイ素、金属硫化物、並びにそれらの混合物又は組合せを含むことができる。ナノクレイ粒子など不活性ナノ粒子だけを有するナノ構造化層を含むカプセル封じバリア膜は、本発明に属さない。
【0019】
[019]理論に縛られることを望むことなしに、本発明者らは、様々なタイプのナノ粒子の組合せを使用することによって強いバリア特性を達成することができると考えている。したがって、ナノ構造化層は、少なくとも2つのタイプのナノ粒子を含むことができる。様々なタイプのナノ粒子の吸収/反応特性を研究することによって、単一のタイプの材料で可能であるものより強いバリア効果を達成するように互いに補うナノ粒子の組合せを選択することが可能である。たとえば、様々なタイプ反応性ナノ粒子をポリマー層内で使用することができ、又は反応性ナノ粒子と不活性ナノ粒子の組合せを使用することができる。
【0020】
[020]上記によれば、ナノ構造化層は、カーボンナノチューブと金属及び/又は金属酸化物ナノ粒子との組合せを含むことができる。例示的な一実施形態は、TiO/Alなど金属酸化物ナノ粒子、並びにカーボンナノチューブを共に含めることを対象とする。適宜通常の実験を使用して、そのようなナノ粒子の任意の組合せを使用し最適化することができる。例示的な一実施形態では、存在する金属酸化物ナノ粒子の量が、カーボンナノチューブの量の(重量で)500〜15000倍である。低い原子量を有する金属の酸化物については、より低い比率を使用することができる。たとえば、TiOナノ粒子をカーボンナノチューブと組み合わせて使用することができ、カーボンナノチューブのTiOに対する重量比は、それだけには限らないが約1:10〜約1:5である。
【0021】
[021]ナノ構造化層内のナノ粒子の濃度は、カプセル封じにおけるバリア特性の所望のレベルに従って変えることができる。理論的には、バリア層の水及び/又は酸素捕集能力を高めるために、ナノ構造化層内で高濃度のナノ粒子を使用することが有利である。しかし、ディスプレイ応用例の文脈では、粒子濃度の上限が、バリア膜の光学的要件によって課される。たとえば、上閾値濃度を超えると、ナノ粒子の表面エネルギーが減少するようにクラスタ化することによりナノ粒子が露出表面を減少させようとする傾向のため、ナノ粒子アグロメレーションが発生することが知られている(J.Phys.Chem.B、2003年、Vol.107、13563〜13566参照)。アグロメレーションは、バリア膜を通して光散乱を引き起こすナノ粒子の大きなクラスタの形成をもたらし、したがって望ましくないものである。水分ゲッタリング能力と光学品質との均衡を達成するために、使用されるナノ粒子の濃度をそれに応じて調整することが可能である。一実施形態では、ナノ構造化層を形成するためにモノマー溶液に加えられるナノ粒子の量は、ポリマー結合剤内に存在するモノマーの重量比の体積で約0.0000001%、約0.0001%、約0,001%、約0.01%、約0.1%、又は約1.0%から約10、20、30、40若しくは50%の範囲内にある。他の実施形態では、ナノ構造化層を形成するためにモノマー溶液に加えられるナノ粒子の量は、ポリマー結合剤内に存在するモノマーの重量に対する体積で約10%、約20%、約30%、又は約40%までである。カーボンナノチューブの場合には、それらもまた、存在するモノマーの約0.01重量%から約10重量%、約20重量%、約30重量%、約40重量%、又は約50重量%の量で使用することができる。例示的な一実施形態では、カーボンナノチューブは、存在するモノマーの重量に対する体積で約0.01%〜約10%の量で加えられる。
【0022】
[022]多層膜を通る光散乱を防止するために、個々のナノ粒子のサイズを、デバイスによって放たれる光の固有波長より小さくなるように設計することもできる。固有波長は、光スペクトルのピーク強度が生じる波長と定義される。バリア膜が、有機発光ダイオード(OLED)、透明有機発光ダイオード(TOLED)、又はシースルーディスプレイ用に設計されるとき、ゲッタ粒子のサイズは、固有波長の、好ましくは1/2未満、また好ましくは1/5未満であり、これらは200nm未満、好ましくは100nm未満の粒径に対応する。しかし、他のタイプの応用例の場合、たとえば液晶ディスプレイ、偏光子、ネガフィルム(film negative)では、意図的な光の散乱を達成するために、より大きな粒子が望ましいことがある。
【0023】
[023]ナノ粒子は、1つの均一な形状で存在しても、2つ以上の形状で形成されてもよい。多層バリア膜内のナノ粒子の充填密度をカスタマイズし、電子構成部品の効果的な分離を達成するために、様々な形状及びサイズのナノ粒子を使用することが有利となり得る。たとえば、反応性ナノ粒子と、バリア層を透過する水蒸気/酸素との効率的な相互作用をもたらすために、ナノ粒子は、水蒸気及び酸素と接触することができる表面積を最大にする好適な形状を有することができる。これは、ナノ粒子を、大きな表面積対体積比、又は表面積対重量比を有するように設計することができることを意味する。一例では、ナノ粒子は、約1m/g〜約50又は100又は200m/gの表面積対重量比を有する。この要件は、上述のように2つ、3つ、又はそれ以上の異なる形状など、様々な形状を有するナノ粒子を使用することによって達成することができる。ナノ粒子が帯びることができる可能な形状は、球形、棒状、楕円形、又は任意の不規則な形状を含む。棒状のナノ粒子の場合には、それだけには限らないが、約10nm〜50nmの直径、50〜400nmの長さ、5より大きい縦横比を有することができる。
【0024】
[024]ナノ構造化層は、水分及び酸素反応性ナノ粒子が分布するポリマー結合剤を含む。ポリマー結合剤は、少なくとも1つの重合可能基を有する任意の好適な重合可能な化合物(前駆体)から得ることができる。この目的に適した重合可能な化合物の例は、それだけには限らないが、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエポキサイド、パリレン、ポリシロキサン、ポリウレタン、及びエポキシ、又は任意の他のポリマーを含み、それらの対応するモノマー化合物から誘導されたものとすることができる。2つの連続するナノ構造化層間の接着が望ましい場合、又はバリア膜を基板上に接着することが望ましい場合、良好な接着品質を有するポリマーを選択することができる。ナノ構造化層は、従来のポリマー被覆技法によって形成することができ、バリアは、モノマー溶液、たとえば少なくとも1つの重合可能基を有する不飽和有機化合物と混合された、ナノ粒子を含有する分散系を用いて形成することができる。ナノ粒子が分布する結合剤を含むポリマー層の厚さは、約2nm〜およそ数マイクロメートルの範囲内にあることができる。
【0025】
[025]例示的な一実施形態では、水分及び/又は酸素と相互作用することが可能なナノ粒子を含有するナノ構造化層が、紫外(UV)光硬化性モノマーから誘導される。UV硬化性モノマーを使用する利点は、硬化時間がほぼ瞬間的であり、得られるナノ構造化層が優れた耐薬品性を有することである。UV光硬化性モノマーの例は、二官能価モノマー又は三官能価モノマーなど、多官能価モノマーを含む。そのような多官能価モノマーの好適な例は、限定することなしに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート及びネオペンチルグリコールジアクリレートなどのアルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメチロールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートなどのエーテル変性モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、及びペンタエリトリトールテトラクリレートなど、より高い官能価のモノマーなど、並びにそのような多官能価モノマーの組合せを含む。UV硬化性モノマーに加えて、標準的なハロゲン光硬化ユニットにさらすことによって重合させることができる他のタイプのモノマーをも使用することができる。たとえば、400nm以上の波長の青色超輝度発光ダイオードからの光にさらすことによって硬化させることができるポリマーをも使用することができる。
【0026】
[026]UV硬化性モノマーについては、ナノ構造化層の硬化を加速するために、モノマーを含有する前駆体混合物に光開始剤を含ませることができる。好適な光開始剤の例は、限定することなしに、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾインエーテル;メチルベンゾイン、エチルベンゾインなどのアルキルベンゾイン;ベンジルジメチルケタールを含むベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾールダイマー、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾールダイマー、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾールダイマー、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾールダイマー、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾールダイマー、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾールダイマー、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾールダイマーなどを含む2,4,5−トリアリールイミダゾールダイマー;9−フェニルアクリジン及び1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンなどアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン;トリメチルベンゾフェノン、イソプロピルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−クロロ及び2−エチル−チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパノン、オリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−アセトフェノン、及び2−エチルヒドロキノンなど芳香族ケトン;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド、並びにそれらの組合せを含む。
【0027】
[027]紫外(UV)光中和層は、UV光をろ波することが可能な材料の層を含む。そのような材料は、無機材料並びに有機材料、たとえば酸化チタン及び酸化亜鉛ナノ粒子を含む保護コーティング、並びにUV光線を吸収することができる化合物を含むことができる。例示的なUVフィルタ材料は、それだけには限らないが、二酸化ハフニウム(HfO)、酸化マグネシウム(MgO)、又は酸化バリウム(BaO)など酸化物を含み、これらのすべてが低屈折酸化物光学膜を提供することができる。二酸化チタン(TiO)、酸化タンタル(Ta)、シリコン酸化物(SiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化インジウムすず(ITO)、及び酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子をも使用することができる。酸化インジウムすず(ITO)及び酸化亜鉛(ZnO)は、高屈折酸化物光学膜を提供する材料の例である。これらの述べられている金属酸化物はすべて、UV光中和層(エポキシ接着剤層など)内に組み入れることができ、入射UVを吸収、反射、及び散乱するように働き、それによりUVが電子構成部品に達するのを防止する。UVろ波材料として使用されるさらに好適な材料は、フッ化マグネシウム(MgF)又はフッ化バリウム(BaF)など無機ハライドを含む。いくつかの実施形態では、二酸化ハフニウム(ハフニア)を多層で二酸化ケイ素と組み合わせ、硬質の、傷付かない、高密度、粘着性のコーティングを得ることができる。さらに、カーボンナノチューブなど有機材料をUV吸収材料として使用することも可能である。
【0028】
[028]別法として、又は追加として、入射UVを吸収し、エネルギーの2次形態で放射する化学コーティングをも、物理コーティングの代わりに、又はそれと共に使用することができる。一実施形態では、UV中和層は、UV光吸収材料の層を含む。例は、4−メチルベンジリデンカンファー及びベンゾトリアゾールを含む。使用することができる別の化合物は2−エチルヘキシルメトキシシンナメートであり、これは、入射UVを使用し、化合物のシス−トランス光異性化をもたらす。
【0029】
[029]例示的な一実施形態では、UV中和層は、米国特許第4,260,768号に開示されているものなど、共重合可能なベンゾトリアゾール化合物を含む。たとえばアクリロイル及びメタアクリロイル基を含む側鎖が一因となって、そのような化合物において不飽和二重結合が使用可能であることにより、そのような化合物は、UV中和層を形成するために使用される上述のモノマーと共重合することができ、それによりUV保護の追加の層を付加することが有利である。
【0030】
[030]いくつかの実施形態では、光学膜を設け、電子構成部品によって放たれる光の品質を改善する、又は電子構成部品の動作を改善することができる。これらの光学膜は、偏光膜、視野拡大膜、位相コントラスト膜、反射防止膜、光反射膜などを含む。たとえば、ポリビニルアルコール(PVOH)膜を偏光層として含むことができる。位相コントラスト膜は、より明瞭なコントラストを確立することができるように、偏光板によって偏光された光に位相コントラストを与えることによって液晶層内で生成される偏光内の位相差を補償するために含めることができる。位相コントラスト膜は、たとえば単軸配向のポリカーボネート(PC)膜を使用して作り出すことができる。
【0031】
[031]本明細書で述べられているバリア膜のいくつかの例示的な実施形態では、ナノ構造化層が、水分及び/又は酸素と相互作用/反応することが可能なナノ粒子として、酸化アルミニウム、酸化チタン、又は酸化アルミニウムと酸化チタンの混合物を含む。いくつかの他の例示的な実施形態では、ナノ構造化層内のナノ粒子材料が、(酸化アルミニウム及び/又は酸化チタンと共に)アルミニウム、CaO、MgO、又は他の好適なナノ粒子を含む。また、多層バリア膜のUVろ波効率を最大にするために、ナノ構造化層内に酸化亜鉛を(単独で、又は上述の材料との混合で)含めることが可能である。(別個の)UV光中和層は、あらゆるこれらの例示的な実施形態において、UV光ろ波材料として酸化亜鉛を含むことができる。酸化亜鉛は、任意の好適な形態で、たとえばナノドット又はナノロッドとして存在することができる(実施例参照)。例示的な一例では(やはり実施例セクション参照)、ナノ構造化膜は、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、又はそれらの混合物を含み、UV光中和層は、酸化亜鉛ナノ粒子材料を含む。
【0032】
[032]カプセル封じバリア膜が良好な機械的強度を有することを必要とするいくつかの応用例については、本発明の多層バリア膜を支持するために基板を設けることができる。この基板は可撓性でも剛性でもよい。基板は、いくつかの例示的な例を挙げると、ポリアセテート、ポリプロピレン、ポリイミド、セロハン、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン)、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリエチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(4−メチル−2−ペンチン)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリジメチルフェニレン酸化物、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ナイロン、ニトロセルロース、セルロース、ガラス、酸化インジウムすず、ナノクレイ、シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ビスシクロペンタジエニル鉄、又はポリホスファゼンなど、任意の好適な様々な材料を含むことができる。ベース基板は、外部環境に面するように配置することも、カプセル封じされた環境に面することもできる。食品包装では、基板は、食品と接触する内部表面に面することができ、一方、カプセル封じバリア膜は、大気条件と接触する外部表面を形成する。
【0033】
[033]多層バリア膜を機械的損傷から保護するために、多層バリア膜は、末端保護層で覆う、又は上張りすることができる。末端層は、良好な機械的強度を有する任意の材料を含むことができ、耐引掻性である。一実施形態では、末端層は、LiF及び/又はMgF粒子が分布しているアクリル膜を含む。
【0034】
[034]OLED応用例では、多層バリア膜は、OLEDデバイスの能動構成部品を分離するために、カプセル封じの任意の部分を覆って積層することができる。一実施形態では、カプセル封じバリア膜を使用し、エレクトロルミネセント構成部品の反応性層を支持するためのベース基板を形成する。リム封止構造では、カプセル封じバリア膜を使用し、エレクトロルミネセント構成部品の反応性層を覆って配置される剛性カバーを形成することができる。この剛性カバーは、接着剤層を用いてベース基板に取り付けることができ、接着剤層は、反応性構成部品の周りで外被を形成するために、少なくとも実質的にカバー基板の縁に沿って配置される。反応性構成部品を容れた外被内に酸素/水分が側方拡散するのを最小限に抑えるために、カバー層又は接着剤層の幅は、カプセル封じバリア膜の厚さより大きくすることができる。
【0035】
[035]カプセル封じを水分及び/又は酸素が透過するのをさらに低減し、カプセル封じされた電子デバイスに追加の機械的保護を与えるために、さらなるカプセル封じ構造をバリア膜の上に配置することができる。たとえば、カバー基板をバリア膜上に配置することができる。カバー基板は、小さな衝撃力に耐える、したがってバリア膜及び/又は電子構成部品に対する物理的損傷を低減することができる硬質又は可撓性の、しかし耐引掻性の材料から選択することもできる。使用することができる材料の例は、ポリエチレン(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート、ガラス、酸化インジウムすず、及び透明プラスチックを含む。カバーは、接着剤の層を介して多層薄膜カプセル封じ構造をバリア膜上に取り付け、それにより電子構成部品を基板に対してサンドイッチすることができる。
【0036】
[036]他の実施形態では、バリア膜を使用し、エレクトロルミネセント構成部品をベース基板に対して封止する可撓性のカプセル封じ層を形成する。この場合には、そのようなカプセル封じ層は、「近位」カプセル封じを形成するように、エレクトロルミネセント構成部品の表面の周りを包むことができる。したがって、カプセル封じ層の形状は、反応性構成部品の形状と共形になり、カプセル封じしようとするエレクトロルミネセント構成部品とカプセル封じ層との間に間隙を残さない。
【0037】
[037]一実施形態では、バリア膜は、ナノ構造化層が最内殻層を形成し、電子構成部品及び/又はセンサに直接接触することなしに電子構成部品及び/又はセンサに隣接して配置される一方、低い水分及び/又は酸素透過性を有するバリア基板が最外殻層を形成し、紫外光をろ波することが可能な材料が、バリア基板とナノ構造化層との間に配置される中間層を形成するように構成される。
【0038】
[038]電子構成部品及び気体透過センサを支持するベース基板は、任意の耐久材料を含むことができ、耐久材料は、任意選択で、バリア基板として働く単一又は複数の透明金属酸化物層で被覆される。多層酸化物層は、通常、有機及び無機の薄いバリア膜の多層からなる。アクリルなど有機コーティングを、2つのバリア酸化物基板間のサンドイッチ層として使用することができる。この高バリア基板を、以下、バリアスタックと称することがある。これらの基板は、有機発光デバイス/ダイオード(OLED)応用例向けに、高バリア性の透明金属酸化物被覆ポリマー膜製とすることができる。バリアスタック基板は、透明又は不透明とすることができ、任意の好ましい寸法に切ることができる。
【0039】
[039]電子構成部品及びセンサを支持する基板は、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリテルスルホン(polythersulfone)、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン、及びポリアクリレートなど有機ポリマーを含めて、ポリマー材料を含むことができる。また、シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ビスシクロペンタジエニル鉄、ポリジクロロホスファゼン、及びそれらの誘導体など、無機ポリマーを含むこともできる。
【0040】
[040]バリア膜はまた、食品及び飲料用の包装など、任意の既存のバリア基板を覆って積層し、それらの既存のバリア特性を改善することもできる。
【0041】
[041]当技術分野で知られているバリア基板は、無機材料又は有機材料を含むことができる。特に好適な無機材料は、金属(たとえば、アルミニウム、鉄、すず)、金属酸化物(たとえば、Al、MgO、TiO)、セラミック酸化物、無機ポリマー、有機ポリマー、並びにそれらの混合物及び組合せを含む。それぞれの無機ポリマーの例は、有機−無機ポリマー、金属キレート配位ポリマー、及び完全に窒素をベースとする無機ポリマーを含む。特定の例は、たとえば、ガラス、シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ビスシクロペンタジエニル鉄、ポリジクロロホスファゼン、及びそれらの誘導体である。好適な有機材料は、アクリルをベースとするポリマー、ポリイミド、エポキシ樹脂、架橋ポリエチレンなどポリアルキレン誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、及びポリエーテルスルホンなど、有機ポリマーを含む。好適なレベルの透過性及び安定性を有する特に好適な有機ポリマーは、PET、ポリカーボネート、及びポリエーテルスルホンを含む。
【0042】
[042]好ましい一実施形態では、多層バリア膜を使用し、水分及び/又は酸素に敏感な反応性層を含むエレクトロルミネセント電子構成部品をカプセル封じし、エレクトロルミネセント構成部品は、カプセル封じ内でカプセル封じされる。したがって、本発明は、水分及び/又は酸素にさらすことにより損傷するおそれがある任意の物品をカプセル封じするために使用される剛性及び可撓性どちらのカプセル封じ構造にも適用可能である。
【0043】
[043]この説明全体にわたってOLEDのカプセル封じが参照される可能性があるが、本発明は、電子構成部品を含めて、任意のカプセル封じされた物体又はデバイスに適用可能であることを理解されたい。電子構成部品のいくつかの例は、受動及び能動有機発光デバイス(OLED)、電荷結合デバイス(CCD)、微小電子機械センサ(MEMS)、薄膜トランジスタ(TFT)、及びそれだけには限らないが、Cu(InGa)Se太陽電池、色素増感太陽電池(DSSC)、CdS/CdTe太陽電池、銅インジウムセレニド太陽電池(CIS)、及び銅インジウム/ガリウムジセレニド太陽電池(CIGS)を含めて、薄膜太陽電池に基づく有機又は無機光起電力デバイスを含む。
【0044】
[044]本発明のバリア膜を含むことができる太陽電池など光起電力デバイスとの関係では、現在の市場は、低コスト、低重量、及び可撓性基板上で製造し、太陽発電機能を壁、屋根、さらには窓に埋め込むことができることという薄膜太陽光発電(CIGS、CdTe、DSSC技術を含めたTFPV)の固有の利点によって突き動かされつつある。結晶シリコンを使用する、より従来の太陽光発電(PV)とは異なり、TFPVは、低光量条件下で動作する能力をも有する。対照的に、TFPVは、可撓性バリア基板及び可撓性カプセル封じ方法を使用する単純な印刷又は他のロール・ツー・ロール(R2R)機械を使用して製造することができる。現在使用されているカプセル封じ方法は、十分なバリア特性をもたらさず、したがって可撓性PVの寿命は、2〜3年の寿命にすぎないと推定されている。たとえば、現在のDSSC光起電力デバイスは、酸素及び水分に対して極めて敏感である。これらのデバイスの酸化インジウムすず、電解質、及び増感色素は、水蒸気及び酸素に敏感である。そのようなデバイスのためのバリア膜及びカプセル封じパッケージによって提供されることを必要とする予想バリア特性は、周囲条件で10−5g/m/日である。
【0045】
[045]そのような色素太陽電池(たとえば、DSSC)は、再生光電気化学プロセスの機構に基づいている。能動層は、透明導電基板上に堆積された極めて多孔質なナノ結晶質二酸化チタン(nc−TiO)からなる。nc−TiO表面上の増感色素の単分子層が入射光を吸収する。このデバイスは、薄い白金触媒を含む対電極によって完成する。これらの2つの電極は、ヨウ化物/トリイオダイド酸化還元対を含有する電解質を確実に閉じ込めるように密封される。
【0046】
[046]太陽光から電気へのエネルギー変換効率10%のためのブレークスルーは、網状の相互接続されたナノ粒子からなる極めて多孔質なTiO層である。TiO粒子の直径は、調製方法に応じて10nmと30nmの間である。平坦な表面に比べて、総面積が1000倍を超える。増感剤の単層の吸着、及び適切な電解質の使用により、広範な可視スペクトルにわたって1(unity)に近い量子収量で光が電気に変換されることになる。電荷分離は、色素の励起された電子が半導体内に注入されたとき、非常に短時間で生じる。対電極の表面は、トリイオダイド還元のための過電圧を低減するために、最小限の量の白金触媒で改質される。
【0047】
[047]したがって、他の態様では、本発明は、光起電力デバイスを水分及び/酸素から保護するための、本発明による2枚の多層バリア膜間にサンドイッチされたカプセル封じ型の光起電力デバイスを対象とする。「サンドイッチされた」という用語の意味については、図14を参照して述べることができる。
【0048】
[048]本発明の文脈における「サンドイッチされた」は、酸素に敏感な電子デバイス又は光電子デバイスが2つの反対側の多層バリア膜間に堅く挿入されていることを意味する。図14を参照すると、光起電力デバイス221は、前記光起電力デバイス221の上部及び下部にある層203、202の間に挿入されている。本発明の一態様では、サンドイッチされたデバイスが、デバイスの横側部(図14に示されている右側及び左側)を露出したままとし、一方、上側及び下側が、図14に示されているように2つの層間にサンドイッチされていることをも意味する。
【0049】
[049]このカプセル封じされた光起電力デバイス内の多層膜は、一方の側で光起電力デバイスに取り付けられ、反対側で紫外光中和層に取り付けられたナノ構造化層を含む(これらの側も上側及び下側と称することがある)。多層膜に取り付けられていない光起電力デバイスの横側部は、裏打ち構造に取り付けられる。この裏打ち構造は、ナノ構造化層、又はナノ構造化層及び接着剤層を含む、又はそれらからなる。一実施形態では、裏打ち構造は、2枚の接着剤層間にサンドイッチされたナノ構造化層を含む。また、裏打ち構造は、光起電力デバイスがサンドイッチされている2枚の多層膜を接続する。一例では、複数の光起電力デバイスが光起電力デバイスパネル内で組み合わされ、パネル内の光起電力デバイスは、裏打ち構造によって互いに分離される(たとえば、図14参照)。
【0050】
[050]本発明の他の態様によれば、本発明の第1の実施形態による一体型の気体透過センサを有するカプセル封じされたデバイスを作製するためのシステムが提供される。このシステムは、真空チャンバを備え、保持用ジグが真空チャンバ内に配置される。真空環境を使用し、気体透過センサの作製を実施する。第1の材料源を真空環境内に設け、試料ベース基板上で気体透過センサを形成することができ、同様に第2の材料源を真空環境内に設け、センサ及び電子構成部品を覆ってカプセル封じを形成することができる。或いは、電子構成部品の作製又はカプセル封じプロセスは、真空チャンバの外で別個のステージで実施することができる。
【0051】
[051]一実施形態では、真空チャンバは、インライン製造工程を実施するために、複数の直列で接続されたサブチャンバを備える。製造工程の各段階を実施するために必要とされる異なる機器によって課される空間制約により、別個のサブチャンバを設けてもよい。たとえば、第1の材料源及び第2の材料源がそれぞれ個々のサブチャンバに接続することができる。
【0052】
[052]真空又は不活性雰囲気下で、あるチャンバから別のチャンバへのベース基板の移送を容易にするために、ロードロックシステムを使用することができる。従来のロードロックを、主真空チャンバに取り付けられたゲートバルブに取り付けることができる。次いで、基板を、大型の入口ドアを介してロードロックチャンバ内の移送ステージ上に、容易に定位置に移動させることができる。ロードロックが所望の真空レベルに排気され、ゲートバルブが開かれた後で、基板は、磁気キャリッジを介して、ロードロックの主シャフトに沿ってプロセスチャンバ内に移送される。これは、主チャンバ内の真空を破ることなしに繰り返し基板をロード及びアンロードすることを可能にする。真空チャンバが複数の直列で接続されたサブチャンバを備える場合、ロードロックは、各個々のサブチャンバを介して移動可能な、伸長可能なシャフトを備えることができる。
【0053】
[053]真空密封用途のための超高真空をもたらすことができるメカニカルブースタ、ロータリ、ターボ、クライオポンプステーションを含めて、高真空ポンプ用装備を真空チャンバに接続することができる。さらに、真空チャンバ内の真空を監視するために、圧力計、ガスライン、圧力トランスデューサ、及び隔離弁を含めることができる。
【0054】
[054]カプセル封じされたデバイスを形成するために基板保持用テーブルを受け取るための保持用ジグがさらに設けられる。基板保持用テーブル(プラットフォーム)は、保持用ジグに取り付けることができ、好ましくは、最大100℃以上の熱をもたらすための加熱ユニットと、必要とされる温度を維持するための温度コントローラとを含むことができる。加熱プロセスを使用し、カバー基板とデバイスを真空貼合せしている間に接着剤を溶解することができる。
【0055】
[055]リニアモーションドライブを使用し、保持用ジグ上の試料に通常の力を加え、また、リニアモーションドライブを使用し、カバー基板を接着剤上に圧接することができる。リニアモーションドライブは、空気圧アクチュエータによって、又は外部モータを用いて、カプセル封じのための40〜80psiの圧力範囲をもたらすために、約5lb〜100lb又は100lbを超える軸方向加重で操作することができる。
【0056】
[056]一実施形態では、このシステムは、リニアモーションドライブと保持用ジグを位置合わせするための手段をさらに備える。リニアモーションドライブと保持用ジグの位置合わせは、支持用フレーム及びリニアボールガイドに沿って方向付けることができる。支持用ジグは、真空チャンバのロードロックを介して接着剤をジグ上に載せることができるように設計される。同様に、デバイス又は基板は、2次密封プロセスのためにロードロックを介して基板ホルダに移送することができる。
【0057】
[057]表面前処理を実施するために、任意の従来のRFプラズマ洗浄源を設けることができる。その一つの例は、酸素源として空気を使用するXEI Scientific,Inc.のエバクトロン(Evactron)(登録商標)プラズマ源である。エバクトロン(登録商標)プラズマ源は、任意の表面から油及び化学物質を除去するために酸素ラジカルを生成する。プラズマ源は、真空チャンバに外部取付けするように適合されてもよい。
【0058】
[058]このシステムに組み込むことができる他の特徴は、保持用テーブルを位置決めするためのx、y、z軸コントローラを有する基板保持用テーブル、並びにプラズマ源のRF電力を制御するための無線周波数電力コントローラを含む。カプセル封じに使用される任意のUV硬化性接着剤を硬化させるために、UV源をシステムに含めることができる。それぞれの強度約85mW/cm及び約22mW/cmを有する約365nm及び約300nmの波長を使用し、接着剤を硬化させることができる。
【0059】
[059]本発明のこれらの態様は、以下の説明、図面、及び非限定的な例に鑑みて、より完全に理解されるであろう。
【0060】
[060]次に、例示的な実施形態について、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ述べる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態によるカプセル封じされたOLEDの図である。
【図2A】多層バリア膜の層構造の一実施形態の図である。
【図2B】接着剤層及び覆われたガラスが組み込まれた、多層バリア膜の層構造の他の実施形態の図である。
【図3】本発明の一実施形態による多層バリア膜の下で、リム封止パネル内にカプセル封じされたOLEDの図である。
【図3A】本発明の一実施形態による多層バリア膜によって画定されたチャンバ内に位置するOLEDの図である。
【図4】近位封止パネル内にカプセル封じされたOLEDの図であり、OLEDは、本発明の一実施形態による多層バリア膜の下で覆われている。
【図5】本発明の一実施形態による多層バリア膜によってカプセル封じされたOLEDを含むOLEDパネルの簡易概略図である。
【図6】本発明の一実施形態による多層バリア膜間にサンドイッチされたOLED層を含むRGBカラーディスプレイOLEDパネルの簡易概略図である。
【図7】多層バリア膜を有するOLEDをカプセル封じするためのプロセス模式図である。
【図8】層構造の断面図に基づく、プロセス模式図によるOLEDのカプセル封じの図である。
【図9A】電子デバイスをカプセル封じするのに必要とされるプロセス機器の単純なセットの図である。
【図9B】電子デバイスのバッチ作製及びカプセル封じ用の装置の図である。
【図10A】本発明の多層バリア膜の紫外光中和層内で使用することができる酸化亜鉛ナノロッド(図10B及び図10C)を、熟成を介して生成するための開始材料として使用することができる酸化亜鉛ナノドット(図10A)の図である。
【図10B】本発明の多層バリア膜の紫外光中和層内で使用することができる酸化亜鉛ナノロッド(図10B及び図10C)を、熟成を介して生成するための開始材料として使用することができる酸化亜鉛ナノドット(図10A)の図である。
【図10C】本発明の多層バリア膜の紫外光中和層内で使用することができる酸化亜鉛ナノロッド(図10B及び図10C)を、熟成を介して生成するための開始材料として使用することができる酸化亜鉛ナノドット(図10A)の図である。
【図11】酸化亜鉛ナノロッドの成長前(黒い曲線)の酸化亜鉛ナノ粒子のシード層だけを有するUV中和層、及び酸化亜鉛ナノロッドの成長後(灰色の曲線)のUV中和層と、水分及び/又は酸素と相互作用することが可能な反応性ナノ粒子として酸化アルミニウムナノ粒子を含むナノ構造化層とを含む本発明のバリア膜の透過率の図である。
【図12A】本発明の一実施形態による多層バリア膜でカプセル封じされたOLEDの製造の図である。
【図12B】本発明の一実施形態による多層バリア膜でカプセル封じされたOLEDの製造の図である。
【図12C】本発明の一実施形態による多層バリア膜でカプセル封じされたOLEDの製造の図である。
【図12D】本発明の一実施形態による多層バリア膜でカプセル封じされたOLEDの製造の図である。
【図12E】本発明の一実施形態による多層バリア膜でカプセル封じされたOLEDの製造の図であり、バリア膜の硬化前のカプセル封じされたOLEDの図である。
【図12F】本発明の一実施形態による多層バリア膜でカプセル封じされたOLEDの製造の図であり、バリア膜の硬化後のカプセル封じされたOLEDの図である。
【図13A】本発明によるカプセル封じされたOLEDを用いて実施された、曲げ試験の図である。
【図13B】本発明によるカプセル封じされたOLEDを用いて実施された、実験セットアップの写真である。
【図13C】本発明によるカプセル封じされたOLEDを用いて実施された、カプセル封じされたOLEDの性能試験の結果である。
【図14】本発明の多層バリア膜を備える光起電力デバイスの一実施例の図である。
【図15】本発明の多層バリア膜を備える光起電力デバイスの他の実施例の図である。
【0062】
[詳細な説明]
[077]図1は、本発明の一実施形態によるカプセル封じされたデバイス100の簡易概略図を示す。カプセル封じされたデバイス100は、水分及び/又は酸素を吸収することが可能なナノ粒子を含有するナノ構造化層121と中和層122とを含む多層バリア膜120によって覆われたOLED110を備える。ナノ構造化層は、中和層上に注がれるナノ粒子分散系から形成することができる。硬化要因にさらすことにより、その後でモノマーが重合する。硬化要因がOLEDに到達するのを防止するために、中和層は、ナノ構造化層よりOLEDに近づけて配置され、その結果、ナノ構造化層は、OLEDに損傷を与えることなしに硬化される。矢印114は、ナノ粒子を含有するナノ構造化層を貫通し、それによりモノマーを重合し、ナノ構造化層を形成する硬化要因を示す。しかし、硬化要因は中和層によって吸収され、OLEDに到達することができない。
【0063】
[078]図2Aは、本発明による多層バリア膜の一実施形態の拡大図を示す。多層バリア膜120は、分散されたナノ粒子を含有する明確なナノ構造化層121を含む。ナノ構造化層121には、硬化要因を吸収する中和層122が隣接する。現在、隣接する層として示されているが、ナノ構造化層121と中和層122は、どちらの層の機能も備えていない介在層によって互いに離隔されてもよい。図2Bは、光学層123によって中和層122から離隔されているナノ構造化層121を多層バリア膜120が含む代替の層構成を示す。この多層バリア膜はOLED110上に配置され、中和層がOLED110の最も近くに配置されている。OLED110を保護するように働くガラス基板140を貼り付けるために、接着剤層130が多層バリア膜120上に配置される。
【0064】
[079]図3は、カプセル封じされたデバイス300を示しており、OLED110が、多層バリア膜120によって覆われ、ベース基板150と、リム封止接着剤130と、カバー基板140とを備えるリム封止構造内に入れられる剛性の標準的なガラス・ツー・ガラスOLEDパネルを示す。多層バリア膜120は、中和層122と光学層123との間にサンドイッチされたナノ構造化層121を含む。OLED110は、多層バリア膜120を介して、透明なカバー基板140に向かって光を放つ。OLED110を多層バリア膜120で覆うことによって、カプセル封じされたデバイス300の構造構成部品のいずれかを透過する水分及び/又は酸素が、ナノ構造化層121内に存在する反応性ナノ粒子によって、OLEDに到達することができない。この実施形態は、接着剤130をデバイス300の縁部だけに配置することにより接着剤の使用が最小限に抑えられるため、大型のOLEDパネルに適している。
【0065】
[080]図3Aは、図3に示されているカプセル封じされたデバイス300と同様の一実施形態を示す。図3に示されている実施形態とは対照的に、このOLEDは、チャンバ188内に位置する、すなわちOLEDが多層バリア膜と直接接触しない。また、多層バリア膜は、UV中和層122とナノ構造化層121との間に光学層を含まない。しかし、図3Aに示されている実施形態にもなお光学層を含めることができることに留意されたい。
【0066】
[081]図4は、カプセル封じされたデバイス400を示しており、OLED110が、多層バリア膜120によって覆われ、ベース基板150と、OLED110上に近位で配置される接着剤130と、接着剤130に貼り付けられたカバー基板140とを備える近位封止構造内に入れられる可撓性の薄膜OLEDディスプレイを示す。この多層バリア膜は、ナノ構造化層121と、下にある中和層122とを含む。OLED110からの光の透過を向上させるために、光学層160が追加される。この実施形態では、多層バリア膜120が接着剤130と完全に接触し、それにより、層間剥離を最小限に抑えるようにカバー基板がより強く接着されることを可能にする。
【0067】
[082]図5は、欧州特許出願公開第0776147A1号に示されているものなど、実際のOLEDパネルの状況で、本発明による多層バリア膜の一実施形態を示す概略図である。カプセル封じされたOLED100を有するOLEDパネル500は、ITO基板119上に形成されたOLED110を含み、ITO基板119は、ガラスカバーパネル140に接着される。OLED110は、内部中和層と、水分及び/又は酸素に対して反応性であるナノ粒子を含む外部ナノ構造化層とを含む多層バリア膜120が加えられることによって水分から保護される。OLED110は、OLED110を覆ってカバーを取り付けることによって外部環境から密封され、接着剤はカバーの縁部に付着され、リム封止構造を確立する。反対側には、カプセル封じされたOLEDが、リム封止接着剤130を介してITO基板に取り付けられたガラス封止ケース128内にさらに入れられる。OLED110からの光(矢印129によって示す)は、矢印129の方向で放たれる。
【0068】
[083]図6は、赤、緑、青(RGB)カラーOLEDピクセルの状況における本発明の他の実装を示す概略図である。カプセル封じされたOLEDピクセル構造600は、透明アノード119と金属カソード111との間にサンドイッチされた有機層を含む。有機層は、正孔輸送層及び正孔注入層117と、原色を発光することが可能な発光層(emissive layer)115と、電子輸送層113とを含む。適切な電圧170が有機層に印加されたとき、その電圧により電荷が生じ、次いでそれらの電荷は、発光層115内で組み合わされ、光141を放たせる。多層バリア膜120A、120Bは、それぞれ金属カソード111上に、また透明アノード119上に位置する。多層バリア膜120Aの上部にはベース基板150が設けられ、一方、多層バリア膜120Bは、透明ガラスカバー基板など、カバー基板140によって終端される。
【0069】
[084]本発明によるカプセル封じバリア膜の作製の一般的な模式図が図7に示されている。従来のポリカーボネート又はPET基板が、OLEDを形成するために用意される。この基板を最初にプラズマ処理し、基板の表面上に存在する汚染物質を除去する。プラズマ処理の後で、電子デバイスが基板上に形成される。OLEDデバイスの場合には、OLEDの有機EL層の作製を、真空条件下で実施することができる。
【0070】
[085]その後で、多層バリア膜が、OLEDデバイスを覆って形成される。多層バリア膜を形成することは、(スピンコーティングによって、又は原子堆積によってなど、中和層を形成すること、次いで、中和層を覆って、ポリマー内に分布する水分及び酸素反応性ナノ粒子を含むナノ構造化層を(直接又は間接的に)形成することを含む。その後で硬化が実施され、その後で、中和層とナノ構造化層とを含む多層バリア膜が形成される。次いで、接着剤層並びにカバー基板など、2次カプセル封じ構造を形成し、デバイスをさらにカプセル封じする。
【0071】
[086]他の実施形態では、多層バリア膜を使用し、DSSC太陽電池など、光起電力デバイスをカプセル封じする。光起電力デバイスのカプセル封じに本発明の多層バリア膜を使用することを示す例示的な実施形態が、図14及び図15に示されている。図14でわかるように、多層膜は、DSSC太陽電池など光起電力デバイス221を覆って、太陽電池の下部並びに上部に積層される。先に述べた実施形態とは対照的に、図14及び図15に示されている太陽電池素子221上に積層された第1の層は、ナノ構造化層203であり、UV中和層ではない。図14及び図15に示されている実施形態では、ナノ構造化層203の後にUV光中和層202が続く。したがって、これらの2つの層の両構成は、本発明のカプセル封じバリア膜に好適であり、これは、UV中和層を「第1の層」又はカプセル封じすべきデバイスに接触する層とすることができ、それに続いて、その上にナノ構造化層が「第2の層」として配置されること、或いは、ナノ構造化層を、接触する第1の層とすることができ、その上にUV中和層が第2の層として配置されることを意味することに留意されたい。
【0072】
[087]図14に示されている実施形態内の多層膜203、202には、図14に示されているように、バリア基板201及び別の多層膜、又はUV光中和層200だけを積層することができる。しかし、図15に示されているように、さらなるUV光中和層を追加することなしに、多層膜203、202にバリア基板201だけを積層することも可能である。しかし、多層膜203、202の上部のそのような追加の層は、図14に示されているように、層の組合せ380など、任意選択のものである。他の実施形態では、そのような追加の層は、カプセル封じされた光起電力デバイスの片側だけに位置することができる。
【0073】
[088]図14はまた、ナノ構造化層203の別の潜在的な機能を示しており、図14に示されている実施形態では、層214、216、220で、又は層216だけで構成された裏打ち構造として使用される。図14に示されている実施形態では、この裏打ち構造は、接着剤214、220を介してナノ構造化層203に取り付け/接続される。他の実施形態では、ナノ構造化層だけで構成された裏打ち構造は、ナノ構造化層216を介してナノ構造化層203に取り付け/接続される。
【0074】
[089]接着剤は、たとえば、エチレンビニルアセテート樹脂、エポキシ樹脂、ポリスルフィド、シリコーン、及びポリウレタンとすることができる。裏打ち構造のナノ構造化層内のナノスケール粒子の吸着能力により、ナノ構造化層216は、太陽電池を酸素及び水分から保護するだけでなく、電解質が太陽電池から漏れた場合にクッションをもたらす。1つの太陽電池が漏れている場合でも、裏打ち構造が電解質を吸い取り、隣接する太陽電池を保護することになる。一方、裏打ち構造は、ナノ構造化層203に対する接続部を形成する。裏打ち構造をナノ構造化層203と接続するために、接着剤214、220を使用することができる。他の実施形態では、ナノ構造化層203とナノ構造化層216の間に薄膜として位置する接着剤層を使用することも可能である。したがって、接着剤層は、ナノ構造化層216をナノ構造化層203と接続するナノ構造化層216の両端部に位置することになる。
【0075】
[090]図15は、光起電力デバイスが色素増感太陽電池(DSSC)である他の実施形態を示す。そのような構造の基本的なセットアップは、図14と同じである。唯一の違いは、図15に示されている裏打ち構造がナノ構造化層だけで構成されていることである。図15のDSSC221は、チタン箔440と、色素を含む酸化チタン層と、電解質420と、酸化インジウムすず(ITO)層とを含む。DSSCの動作原理及び製造については、上記でさらに深くすでに述べており、また、Sommeling,P.M.、Spath,M.らの論文(EPSEC−16(European Photovoltaic Solar Energy Conference)、Glasgow、1−5 2000年5月、表題「Flexible Dye−Sensitized Nanocrystalline TIO Solar Cells」)、及びJanne Halmeの修士論文(2002年2月12日の修士論文、表題:Dye−sensitized nanostructured and organic photovoltaic cells:technical review and preliminary tests)、Helsinki University of Technology,Department of Engineering Physics and Mathematics)で参照されている。
【0076】
[091]DSSC太陽電池の左右の側の裏打ち構造は、漏れた場合に電解質420を妨げる、又は阻止し、したがって他の太陽電池を保護する。裏打ち構造の使用は、接着剤ワイヤに比べてリム封止のバリア特性の改善をもたらすことを可能にする。また、接着剤ワイヤに加えて、たとえばエチレンビニルアセテート(EVA)コポリマー及び接着性ヒートシール積層でできた追加の層が付着されることがある。
【0077】
[092]一実施形態では、裏打ち構造は、ナノ構造化層、及び/又は電解質漏れを阻止することができる耐薬品性のモノマー若しくはポリマー若しくはエチレンビニルアセテートコポリマーで構成することができる。ナノ構造化層は、デバイスパッケージ内への水分及び酸素透過を阻止することができる。また、ナノ構造化層は、耐薬品性材料として働くこともでき、電解質漏れを阻止するために使用することができる。一実施形態では、裏打ち構造は、2つの接着剤層間にサンドイッチされたナノ構造化層から製造することができ(図14参照)、一方、他の実施形態では、裏打ち構造は、ナノ構造化層だけから製造される(図15参照)。
【0078】
[093]次に、上述の製造工程、並びに作製後のカプセル封じバリア膜のバリア性能を例示するために、特定の実施例について述べる。
【0079】
実施例1:カプセル封じされたOLEDの作製
1.基板の表面準備
[094]シリコン酸化物で被覆されたソーダ石灰ガラス基板(ディスプレイ品質のガラス)を、50mm×50mm片、またOLED用のベース又はカバーとして使用するための任意の必要とされるサイズに切断した。空気圧式の中空ダイパンチ切断機器又は任意の従来のスリッティング機械を使用し、試料を、指定された又は必要とされる寸法にスライスすることができた。
【0080】
[095]現在のカプセル封じパッケージ内の水蒸気透過は、主に接着剤と基板の界面を介するもの、また接着剤封止を通る拡散とすることができる。プラズマ処理など好適な表面前処理プロセスで、接着問題を解消することができる。それに応じて、イソプロピルアルコール(IPA)でリンスし、窒素でブロー乾燥する。これらのプロセスは、表面上のマクロスケールの吸収された粒子を除去するのに役立つ。アセトン及びメタノール洗浄又はリンスは推奨されない。窒素ブロー乾燥の後で、吸収された水分又は酸素を脱気するために、基板を10−1mbarの圧力を有する真空オーブン内に配置される。真空オーブンは、炭化水素油が真空ポンプから真空オーブンに逆移動するのを防止するようにフォアライントラップを備える。脱気プロセスの直後に、バリア膜がプラズマ処理チャンバ(たとえば、ULVACソルシエット(SOLCIET)クラスタツール)に移送される。RFアルゴンプラズマを使用し、表面汚染物質を除去するために、低エネルギーイオンでバリア膜の表面に衝撃を与える。チャンバ内のベース圧力は、4×10−6mbar未満に維持された。アルゴン流量は、70sccmである。RF電力を、200Wに設定し、最適処理時間通常5〜8分を、表面状態に応じて使用する。
【0081】
2.OLED作製
[096]国際公開第03/047317A1号パンフレットに記載されているOLEDアーキテクチャが、本実施例に採用されている。20Ω/□のシート抵抗を有するITO被覆ガラスを、OLEDデバイス作製用の基板として使用した。湿式化学洗浄を、アセトン及びメタノールを用いて行い、その後に、乾式酸素プラズマ処理を続けた。ポリ(スルホン酸スチレン)ドープのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を正孔輸送層(HTL)として使用した。市販のフェニル置換ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)黄色発光ポリマーを使用した。厚さ65nmのエレクトロルミネセンス層のトリ−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(AlQ3)が2×10−5パスカルの高真空下で、270℃で堆積される小分子ベースのOLED構造を採用した。厚さ5Å(0.5nm)のLiFを、有機エレクトロルミネセンス(EL)パネルとカソードとの間の中間層として650℃で堆積する。アルミニウムカソードを、熱蒸着を使用して、200nmの厚さで堆積した。
【0082】
3.ハフニウム酸化物中和層の堆積
[097]OLEDを伴う基板が真空下で蒸着チャンバに移送され、蒸着チャンバで、ハフニウム酸化物薄膜の層が、D3.8.1,Mat.Res.Soc.Symp.Proc.Vol.765,2003年、Materials Research Societyに記載されている手順に従って、原子層堆積(ALO)によってテトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム(TDMAH)及びオゾン(O)から合成される。当技術分野で知られている他の方法は、電子ビーム蒸着又はスパッタリングを含む。
【0083】
4.多層バリア膜近位カプセル封じ
[098]酸化アルミニウムナノ粒子の分散系を含有する重合可能なアクリル酸の混合物から誘導されたナノ構造化層を、ハフニウム酸化物被覆のOLED上にスピンコートし、アクリル酸モノマーを、UV露光を介して硬化させる。
【0084】
[099]また、HfOのUVフィルタ層及び光学層を、スパッタリング、熱蒸着若しくは電子ビーム蒸着、プラズマ重合、CVD、印刷、スピン、又は、ティップコーティング若しくはディップコーティングを含む任意の従来のコーティングプロセスを含めて、PVD法によって堆積することができる。
【0085】
5.作製機器
[0100]上述の製造工程は、インラインシステム、又はロール・ツー・ロールシステムで実施することができる。インライン作製システム570が、図9Aに示されている。このシステムは、ベース基板を洗浄するステップと、電子構成部品を形成するステップと、気体透過センサを形成するステップと、次いで、デバイスのカプセル封じを実施するステップとを実施するために使用される、直列で接続されたサブチャンバを備え、各ステップは、別個のサブチャンバ内で実施される。たとえば、OLEDの場合には、OLEDアノード、有機EL層、カソードの形成を、それぞれサブチャンバ571、572、573内で実施することができ、気体透過センサは、サブチャンバ574内で実施される。プラズマ洗浄及びカプセル封じは、サブチャンバ575内で実施することができる。最後に、センサと電子構成部品を共に担持するベース基板は、ロードロック578によって、たとえばグローブボックスとすることができるサブチャンバ575内に移送することができる。
【0086】
[0101]例示的な一実施形態では、サブチャンバ575は、図9Bに示されているように、気体透過センサバッチ作製及びカプセル封じを実施するための、研究室スケールのグローブボックス500とすることができる。この例では、真空チャンバ502は、400mm×500mm×650mmの寸法を有し、高真空ポンプステーション504(好ましくは、ロータリ真空ポンプと組み合わされたメカニカルブースタ)に接続され、ベース圧力10−4mbarで維持される。高真空ピラニ(Pirani)真空計506を使用し、真空圧力を監視する。隔離弁508を使用し、真空ポンプシステム504及び真空チャンバ502を分離する。リニアモーションドライブ510を使用し、接着剤パッド512を真空下でOLEDデバイス514上に封止する。リニアモーションドライブ510は、KF25フランジ接続516を介して真空チャンバに取り付けられ、リニアモーションシステムを駆動するように空気圧で操作される。
【0087】
[0102]空気圧式リニアモーションフィードスルーが、40〜80psi(275.79kPa〜551.58kPa)の範囲の適切な圧縮空気圧を加えることによって、リニアモーションのための動作をもたらす。圧縮空気は、空気圧アクチュエータの入口518及び出口520を通ることができる。直線移動は、空気圧アクチュエータ522の上端部に位置する調整ノブを回すことによって短縮又は伸長することができる。調整した後で、ロックナット524が、調整ノブ526を定位置で固定する。直線移動調整は、必要とされる移動距離まで行うことができる。デバイスを密封するために使用される接着剤パッド512を保持するために、適切な接着剤保持用ジグ528がリニアモーションドライブ510に接続される。リニアドライブの軸方向加重は、典型的には20lb(約9.07kg)である。また、保持用ジグ528を使用し、接着剤封止プロセスが行われている間、圧力を加える。一般的に加えられる圧力は40〜80psi(275.79kPa〜551.58kPa)の範囲にあり、必要とされる圧力は、使用される基板/デバイスのタイプに合わせて調整される。圧力は、リム、又は基板の面全体に加えることができる。様々なタイプの保持用ジグを、包装の要件に従って使用することができる。保持用ジグは、高グレード真空互換材料で構築される。溶接ステンレス鋼ベロー及びリニアベアリングシャフト支持体の使用により、信頼性及び滑らかな動作がもたらされる。空気圧式フィードスルーは、コンフラット(conflat)互換Del−Seal CFメタルシールフランジ、又はISO KF Kwik−Flangeエラストマーシールポートマウントなど、業界標準構成部品から選択することができる。
【0088】
[0103]リニアモーションドライブの滑らかな動作、保持用ジグの移動、及び基板との位置合わせは、支持用フレーム530及びリニアボールガイド532によって慎重に制御される。保持用ジグは、真空チャンバのロードロック534を介して接着剤をジグ上に載せることができるように設計される。同様に、デバイス又は基板は、2次密封プロセスのためにロードロックを介して基板ホルダに移送することができる。
【0089】
[0104]真空チャンバ502は、接着剤接合プロセスの前の表面前処理又は洗浄のためにプラズマ源536をさらに備える。無線周波数(RF)電力コントローラ538を使用し、プラズマ源のRF電力を制御する。表面準備は、所望の、且つ再現可能な特性を得るために、受け取られたままの試料又はデバイスに行われる洗浄又は表面改質からなる。ポリマー基板の場合には、バリア膜表面上の表面汚染に多数の通り道があり、また、ポリマーベース基板は、長い貯蔵時間により、また取扱いや周囲条件にさらされることから、水蒸気を吸収しがちである。表面汚染があればそれは、接着剤パッドの接着性に確実に影響を及ぼすことになる。無線周波数(RF)アルゴンプラズマを使用し、表面汚染を除去するために、低エネルギーイオンで基板又は主要な密封デバイスの表面に衝撃を与える。チャンバ内のベース圧力は、4×10−6mbar未満に維持され、圧力モニタ550によって監視される。アルゴン流量は、70sccmである。無線周波数(RF)電力を、200Wに設定し、最適処理時間通常は、表面状態に応じて、通常5〜8分である。アルゴンガスライン551は、プラズマ処理に使用されるアルゴンを導入するために真空チャンバに接続される。窒素ガスライン552は、プラズマ処理プロセスの後でチャンバを換気するために真空チャンバに接続される。
【0090】
[0105]基板加熱テーブル540は、最大100℃とすることができ、温度コントローラを使用し、必要とされる温度を維持する。加熱プロセスにより、デバイスを真空貼合せしている間に接着剤が溶解される。真空密封プロセスの後で、30秒間UV光で露光することによって、接着剤を硬化させることができる。400Wメタルハライド灯UV源542(モデル2000−EC)を使用し、接着剤を硬化させる。それぞれの強度85mW/cm及び22mW/cmを有する356nm及び300nmの波長を使用し、接着剤を硬化させることができる。
【0091】
[0106]作製のシーケンスは、カプセル封じ設計、OLEDアーキテクチャのタイプ、基板に従って柔軟に選択することができ、本明細書に示されているバッチ及びインライン作製システムに使用できるだけでなく、ロール・ツー・ロールプロセスにも適合させることができる。
【0092】
実施例2:カプセル封じ真空移送技法
[0107]以下では、バッチ又はロール・ツー・ロールプロセスを使用して剛性基板又はプラスチック基板上に作製される極めて水分又は酸素に敏感な(最大10−6g/m/日レベルの水透過率)有機デバイスのための、バリア膜の作製、及び後続のデバイスカプセル封じについて例示する。
1.デバイス110−有機発光ダイオード
2.溶媒保護層−高屈折率溶媒保護光学膜(任意選択)
3.中和層−酸化チタン/酸化亜鉛ロッド構造化アクリルポリマー
4.ナノ構造化層−アクリルポリマー内に分散された反応性ナノ粒子(それぞれ酸化チタン又は酸化亜鉛以外)
5.カバー基板−バリアプラスチック基板/ガラス基板
【0093】
[0108]カバー基板がプレーンなプラスチック基板上に作製される場合、層3及び層4を含む本発明の多層バリア膜を有するデバイスが採用されることになる。溶媒保護層(膜)2は、任意選択でデバイスを保護するために第1の層としてのみ使用され、多層バリア構造には含まれない。
【0094】
[0109]ELデバイス(有機エレクトロルミネセント(EL)パネル)上への溶媒保護層の堆積の図12Aは、(UV中和層と、水分及び/又は酸素と相互作用することが可能な反応性ナノ粒子を含有するナノ構造化層を含む)本発明の多層バリア膜でデバイス110をカプセル封じする前にガラス又は剛性基板5上に溶媒保護層2でカプセル封じされたELデバイスを示す。
【0095】
[0110]OLED作製後、溶媒保護層2、すなわち酸化マグネシウムが、第1のステップで熱蒸着法によって有機ELデバイス(有機エレクトロルミネセント(EL)パネル)上に堆積される。この層は、残留溶媒の透過、又は有機発光ダイオードなど有機電子デバイスとの反応を防止するのに役立つ。無機エレクトロルミネセンスデバイス又は無機光起電力(PV)デバイスなど一部の電子デバイスは、この溶媒保護層を必要としない可能性がある。この酸化マグネシウム又はフッ化マグネシウム層2は、バリア特性全体の改善に対して全く、又はあまり著しく貢献しない。溶媒保護層2は、たとえばHfOx、MgO、MgF、BaO、BaF、及びLiF、又は高屈折率光学特性又は低屈折率光学特性を有する任意の好適な光学無機膜とすることができる。上部発光OLED及び光起電力デバイスがカプセル封じされる場合には、高屈折率光学膜を好ましいものとすることができる。
【0096】
[0111]本発明のバリア膜の層の作製は、例示として、プラスチック基板5上への多層カプセル封じ層の作製を使用して、以下のように実施することができる。
【0097】
[0112]図12Bに示されているように、酸化亜鉛ナノロッド/ナノ粒子3を、UV光中和層122内の活性成分として、以下のようにプラスチック又は剛性カバー基板5上に成長させる。
【0098】
B1−カバー剛性又はプラスチック基板5上に堆積された酸化亜鉛ナノロッド3(又は酸化チタン粒子)。
[0113]UV光中和層を作り出す最初のステップでは、ヘキサンジオールジアクリレート又はイソボルニルアクリレート又はトリプロピレングリコールジアクリレート内に分散された酸化亜鉛又は酸化チタンの市販のナノ粒子分散系を使用し、最初に、スピンコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、又は任意のインプリント方法、或いはティップコーティング、ウェブフライト(WebFlight)、スロットダイコーティングなどのロール・ツー・ロール法など、任意の従来の被覆方法によって、剛性基板又は可撓性プラスチック基板上にナノドット(20〜50nm)を堆積することができる。堆積後、溶媒を熱アニールで、数分間、80℃で除去することができる。溶媒熱経路を使用し、基板5を亜鉛アセテート及び水酸化アンモニウム溶液にさらすことによって、酸化亜鉛ナノロッドを成長させる。酸化亜鉛ナノロッド(図10A)は、60℃〜120℃の温度で10分〜60分の時間内にナノロッド形態(図10B及び図10C)に熟成することになる。ナノロッドを核として使用することは、より高い縦横比のナノロッドの制御された成長を可能にする1つの手法である。亜鉛ナノロッド3をプラスチック基板5上に成長させるために使用することができるいくつかの溶媒熱経路及び加水分解プロセスが存在する。ナノドット及びナノ構造の原子間力顕微鏡(AFM)写真が、図10A〜図10Cに示されている。これらのナノロッドは、バリア被覆プラスチック又はガラスのような任意の剛性基板上に堆積することができる。これらのナノロッドは、光を散乱する特性により、UV中和層内において単独で使用することができる。しかし、UVフィルタ特性を改善するために、酸化亜鉛粒子をこの被膜に加えることも可能である。アクリルポリマー内に分散され、酸化亜鉛ナノロッド(「星のような」灰色構造3として示されている)上に堆積された酸化亜鉛ナノ粒子(層122内の小さな黒い矩形4として示されている)を含有するUV中和層の構造が、以下に示されている。
【0099】
B2−酸化亜鉛ナノロッド上に堆積された、酸化亜鉛ナノ粒子が分散されたアクリルポリマー(図12C)。
[0114]酸化亜鉛ナノ粒子をUV光中和層に組み込むために、封止溶液の約100%の被覆重量を有する40mlのUV硬化性アクリレートモノマーを、Nanophase Technologiesのナノドゥール(Nanodur)から入手可能なトリプロピレングリコールジアクリレート内の酸化亜鉛の5mlの分散系(35重量%)に加えた。PGME及びEG(1:1)比の15mlの有機溶媒をこの混合物に加えた。次いで、バリア酸化物層上に堆積する前に、約1時間の間、混合物のソニフィケーション(sonification)を実施した。ナノロッド及びナノ粒子を共に含む被膜のスピンコーティングによる形成を、グローブボックス内の窒素雰囲気内で行った。酸素及び水蒸気含有量が、グローブボックス内で1ppmレベル未満まで低減された。次いで、UVを介してこの層を硬化してから、反応性ナノ粒子を含有する被膜を付着した。或いは、以下で述べるように、反応性ナノ粒子を含有するナノ構造化層を堆積した後でこの層を硬化させることも可能である。
【0100】
[0115]水分及び/酸素と相互作用することが可能な反応性ナノ粒子を含有するナノ構造化層を生成するために、市販のナノ粒子(Nanophase TechnologiesのNanoDur 99.5%酸化アルミニウム粒子)をプラズマで前処理し、2−メトキシエタノール(2MOE)及びエチレングリコール(EG)を1:1の2MOE対EGの比率で分散させたものなど、有機溶媒に加えた。代わりに、プロピレングリコン(glycon)モノメチルエーテル又はエチルアセテート又はメチルイソブチルケトン、メチルエチル、2MOE、或いは溶媒又は湿潤添加剤の任意の混合物をも使用することができる。或いは、たとえば、ヘキサンジオールジアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート内に分散された酸化亜鉛又は酸化チタンなど、市販のナノ粒子分散系をも使用することができる。
【0101】
[0116](たとえば、米国イリノイ州ウッドデールのAddison Clear Waveから入手可能なHC−5607など)市販のUV硬化性アクリレートモノマーなど重合可能基を有する化合物を、ナノ粒子混合物に追加し、封止溶液を形成した。ポリマー被覆重量は、封止溶液全体の5重量%〜70重量%の量とすることができる。たとえば、ポリマー内のナノ粒子の総濃度は、封止溶液の66重量%にあることができ、一方、ポリマー被覆重量は、封止溶液の約34重量%にある。
【0102】
[0117]合成は、不活性ガス環境下で行った。実験一式は、プレーンなポリマー基板上にスピンコートされた、アクリルポリマー溶液内のナノ粒子の様々な混合物を用いて実施した。
【0103】
[0118]反応性酸化アルミニウムナノ粒子が分散されたアクリルポリマーの堆積(ハードコート)。
【0104】
[0119]B3−UVフィルタ及び未硬化の反応性ナノ粒子が分散されたアクリルポリマー6で被覆されたカバー基板(図12D)。
【0105】
[0120]反応性ナノ粒子を堆積する(したがって、UV中和層のそれぞれの被膜を形成する)ために、封止溶液の約1000%の被覆重量を有する40mlのUV硬化性アクリレートモノマーを、BYK Chemicalsから入手可能なトリプロピレングリコールジアクリレート内の酸化アルミニウムの15mlの分散系(35重量%)に加えた。PGME及びEG(1:1)比の15mlの有機溶媒をこの混合物に加えた。次いで、バリア酸化物層上に堆積する前に、約1時間の間、混合物のソニフィケーションを実施した。封止層のスピンコーティングによる形成を、グローブボックス内の窒素雰囲気内で行った。酸素及び水蒸気含有量が、グローブボックス内で1ppmレベル未満まで低減された。
【0106】
[0121]UV光中和層内に亜鉛ナノロッドを、またナノ構造化膜内にアルミニウムナノ粒子を含有したバリア膜のUVフィルタ特性を、UV光中和層内に酸化亜鉛粒子の初期シード層を含有するだけのバリア膜と共にテストすると、亜鉛ナノロッド含有膜のUVフィルタ特性が著しく高いことがわかった(図12E及び図12F)。この状況では、亜鉛ナノロッドが光を効率的に散乱することができ、それにより、UV中和層が、当該デバイス、たとえば有機上部発光デバイスから光を効率的に抽出することができることに留意されたい。
【0107】
真空密封又は積層プロセスによるコーティング転写プロセス
[0122]次いで、UV光中和層及び未硬化のナノ構造化バリア層で被覆されたカバー基板(B3)を、真空密封法によって有機デバイス上に密封し、次いで、UV放射を用いて硬化させた。それにより、図13に示されているように、OLEDなどカプセル封じ電子デバイスが作製される。
【0108】
可撓性OLEDカプセル封じ−本発明のバリア膜でカプセル封じされたOLEDのプロトタイプの作製及び性能試験
[0123]ガラス又はポリカーボネート基板は、透明であり、好ましい寸法に切断することができる。空気圧式の中空ダイパンチ切断機器又は任意の従来のスリッティング機械を使用し、ポリカーボネート基板を指定された、又は必要とされる寸法にスライスすることができる。
【0109】
[0124]実験上のセットアップでは、基板をイソプロピルアルコール(IPA)でリンスし、窒素でブロー乾燥し、表面のマクロスケールの吸着された粒子を除去した。窒素ブロー乾燥の後で、吸収された水分又は酸素を脱気するために、基板を10−1mbar(0.04Pa)の圧力にある真空オーブン内に配置した。脱気プロセスの直後に、基板をプラズマ処理チャンバ(たとえば、ULVACソルシエットクラスタツール)に移送した。RFアルゴンプラズマを使用し、表面汚染物質を除去するために、低エネルギーイオンでバリア膜の表面に衝撃を与えた。チャンバ内のベース圧力は、4×10−6mbar未満に維持された。アルゴン流量は、70sccmであった(sccm=標準温度及び圧力時の立方センチメートル毎分)(0.1Pa*m/秒)。RF電力を、200Wに設定し、最適処理時間通常5〜8分を、表面状態に応じて使用する。ポリ(スルホン酸スチレン)ドープのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を正孔輸送層(HTL)として使用した。商用のフェニル置換ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)黄色発光ポリマーを使用した。厚さ200nmの銀カソードで被覆された厚さ20nmのカルシウム膜を、ULVACクラスタシステム内で2.0×10−6トル(0.0002666Pa)のベース圧力にて、熱蒸着によって堆積した。銀膜は、下にあるカルシウムを保護するために使用した。また、一部のカプセル封じ研究のために、小分子をベースとするOLED構造を作製した。この製造工程では、20Ω/□のシート抵抗を有するITO被覆ガラスを、OLEDデバイス作製用の基板として使用した。75nmのNPBを、高真空2×10−5Pa内で、270℃で堆積した。次いで、厚さ65nmのエレクトロルミネセンス層Alq3を、圧力2×10−5Paの高真空下で、270℃で堆積した。ELとカソードの間の中間層として、LiFを650℃で堆積した。カソード(200nmのアルミニウム)を、熱蒸着技法を使用して堆積した。
【0110】
[0125]その後に、標準的な小分子をベースとする標準OLEDデバイス製造工程が、バリアシリコン酸化物及びITO膜で被覆され、溶媒保護層として250μmを有する酸化マグネシウム薄膜でカプセル封じされた5cm×5cmのプラスチック基板を使用して続いた。
【0111】
[0126]上述の酸化亜鉛ナノ粒子含有ポリマー層を、カバープラスチック基板上に堆積し、UV光中和層内(UVフィルタ)として使用した。さらに、酸化アルミニウムナノ粒子を含有するナノ構造化ポリマー層をUVフィルタ上に堆積した。硬化前に、カバー基板をOLEDデバイス上に真空密封した。
【0112】
[0127]有機発光デバイスの可撓性は、層間剥離ナノ構造層、酸化インジウムすず、並びに活性ポリマー及び正孔及び電子注入層の界面効果によって大きく制限される。
【0113】
[0128]本発明による可撓性カプセル封じOLEDデバイスを、American Society of Testing Materials Standardに従って様々な屈曲サイクルにかけた(曲率半径:30mm、周波数:50Hz、及びディスプレイの厚さ400mm未満)。選択された屈曲試験は、5000、10000、20000、及び30000回サイクルであった。基板は、図13a(また図13Bも参照)に示されているように5cm×5cmであり、図13Aに示されているように屈曲曲率半径Rは37.6mmであり、たわみhは18mmであった。各曲げ試験の前後に、デバイスルミネセンスを電圧に対して測定した。図13Cは、様々な曲げサイクルを用いた、屈曲デバイス性能のルミネセンス対曲げサイクルの特性を示す。ターンオン電圧は、屈曲デバイスに関して、5k曲げサイクルで5Vであり、ルミネセンスは最大100Cd/mに達した。カプセル封じとOLED、ベースとカバー基板の間に界面破壊はなかった。しかし、曲げサイクルが増大し10,000回サイクルを超えると、ルミネセンスが80Cd/mに低下した。しかし、ナノ構造化層及びUVフィルタとのカバー基板の接合は、依然として維持されていた。溶媒保護層とOLEDの間の接合は依然として良好であり、層間剥離は発生していないことが観察された。それに対して、溶媒保護層とOLEDの間の層間剥離は、30,000回の曲げサイクル後に発生した。この結果は、真空密封法により、本発明のバリア膜がOLEDに強く取り付けられることになり、真空密封が、気泡の生成、及び手動の密封法による他の欠陥に関する問題を解決することができることを示す。
【0114】
光起電力デバイスのカプセル封じ
[0129]以下のセクションでは、光起電力デバイスのカプセル封じの一例についてより詳細に述べる。
【0115】
[0130]図14に示されている光起電力デバイスのカプセル封じは、図14に示されているデバイスの底部から開始される。任意選択の、層380の組合せが含まれないとき、最初に、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(4−メチル−2−ペンチン)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)などベース基板(図示せず)を用意し、次いでそれを、UV中和層202と、それに続くナノ構造化層203で被覆する。この多層のバリア特性は、39℃及び相対湿度(RH)90%で、約10−1g/m/日〜約10−6g/m/日となり得る。
【0116】
[0131]UV中和層202及びナノ構造化層203は、少しだけ例を挙げれば、スピンコーティング、スロットダイコーティング、真空蒸着、又はスクリーン印刷など、当技術分野で知られている堆積方法によって基板層上に被覆することができる。これらの層は、当技術分野で知られている熱硬化法又はUV硬化法によって硬化させることができる。また、基板層の保護を得るために基板層の両側をUV中和層202で被覆することも可能である。
【0117】
[0132]UV中和層202及びナノ構造化層203の厚さは、約20nm〜約1μmの間、又は約500nm〜1μmの間の間とすることができる。一般に、UV中和層202及びナノ構造化層203の厚さは、カプセル封じされた光起電力デバイス221の厚さによって決まる。それぞれ光起電力デバイス221と中和層202及びナノ構造化層203の厚さとの比は、約1:2である。たとえば、1μmの厚さを有する光起電力デバイス221なら、UV中和層202及びナノ構造化層203のそれぞれの厚さが2μmとなる。
【0118】
[0133]次いで、UV中和層202及びナノ構造化層203で被覆された基板が、光起電力デバイス221の下部に積層される。光起電力デバイスの他方の側での層構造の調製は、光起電力デバイス221の下部でのものと同じ方法で実施される。
【0119】
[0134]しかし、基板上に被覆された層203及び202間の光起電力デバイス221をカプセル封じする前に、光起電力デバイス221の側で(封止層とも呼ばれる)裏打ち構造が付着される。一実施形態では、裏打ち構造は、ナノ構造化層及び/又は接着剤層からなり、標準的な印刷方法によって付着させることができる(裏打ち構造の形成に関してさらに詳しくは、以下の段落を参照)。裏打ち構造の幅は、約1μm〜約5mmとすることができる。
【0120】
[0135]接着剤層(1つ又は複数)を、スロットダイコーティングプロセスを使用して付着させることができる。
【0121】
[0136]図15は、カプセル封じされた光起電力デバイスが色素増感太陽電池(DSSC)である、図14の構造の特定の実施形態を示す。このDSSCは、酸化インジウムすず層410、電解質層420、酸化チタン+色素層430、及びチタン箔層440からなる。
【0122】
[0137]図15に示されているような多層バリア膜でのDSSCのカプセル封じの場合、DSSCは、多層バリア膜上に直接形成される。最初に、チタン箔440がナノ構造化層203上に積層される。チタン箔の上部には、酸化チタンペーストがスパッタされる。最終的な酸化チタン/色素層430を得るために、ある時間の間、酸化チタンペーストを有機色素の溶液内に進出(emerge)させる。
【0123】
[0138]チタン箔上に酸化チタンペーストをスパッタすることにより、層430内に三日月状の突起が残る。電極の進出及び乾燥の後で、電解質がこの突起内に充填される。電解質層420及び裏打ち構造を形成するナノ構造化層は、たとえば当技術分野で知られている任意の標準的な印刷方法によって同時に作成される。裏打ち構造は、裏打ち構造が位置する点でのみUV光を当てることによって硬化される。
【0124】
[0139]電解質層420及び裏打ち構造の形成の後で、ITO層410が電解質層420の上部に積層される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分及び/又は酸素に敏感な電子デバイス又は光電子デバイスをカプセル封じすることが可能な多層バリア膜であって、
水分及び/又は酸素と相互作用することが可能な反応性ナノ粒子を含む少なくとも1つのナノ構造化層であり、前記反応性ナノ粒子が、ポリマー結合剤内に分布する、ナノ構造化層と、
紫外光を吸収することが可能な材料を含み、それによりバリア膜を紫外線が透過するのを制限する少なくとも1つの紫外光中和層と
を備えるバリア膜。
【請求項2】
前記反応性ナノ粒子が、化学反応によって水分及び/又は酸素と相互作用することが可能である、請求項1に記載のバリア膜。
【請求項3】
前記反応性ナノ粒子が、金属、金属酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択される材料を含む、請求項2に記載のバリア膜。
【請求項4】
前記ナノ粒子が、Al、Ti、Mg、Ba、Ca、及びそれらの混合物からなる群から選択される金属を含む、請求項3に記載のバリア膜。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、TiO、Al、ZrO、ZnO、BaO、SrO、CaO及びMgO、VO、CrO、MoO、並びにLiMn、及びそれらの混合物からなる群から選択される金属酸化物を含む、請求項3又は4に記載のバリア膜。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、すず酸カドミウム(CdSnO)、インジウム酸カドミウム(CdIn)、すず酸亜鉛(ZnSnO及びZnSnO)、及び酸化インジウム亜鉛(ZnIn)、及びそれらの混合物からなる群から選択される透明導電金属酸化物を含む、請求項3〜5のいずれか一項に記載のバリア膜。
【請求項7】
前記反応性ナノ粒子が、吸着によって水分及び/又は酸素と相互作用することが可能である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のバリア膜。
【請求項8】
前記ナノ粒子がカーボンナノチューブを含む、請求項7に記載のバリア膜。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブが多層配座を有する、請求項8に記載のバリア膜。
【請求項10】
前記ナノ構造化層がカーボンナノチューブと金属酸化物ナノ粒子を共に含み、存在する金属酸化物ナノ粒子の量が、存在するカーボンナノチューブの量の500〜15000倍(重量比)である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のバリア膜。
【請求項11】
前記酸素及び/又は水分に敏感な電子デバイスが有機発光デバイスを備えるとき、ナノ粒子の平均サイズが、前記有機発光デバイスによって生成される光の固有波長の2分の1未満である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のバリア膜。
【請求項12】
前記ナノ粒子が棒状であり、前記棒状が、約10nm〜50nmの直径、50〜400nmの長さ、5より大きい縦横比を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のバリア膜。
【請求項13】
前記ナノ粒子が、約200nm未満の長さを有する、請求項12に記載のバリア膜。
【請求項14】
前記ナノ粒子が、約1m/g〜約200m/gの表面積対重量比を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のバリア膜。
【請求項15】
前記多層膜の前記少なくとも1つのナノ構造化層が、水分及び/又は酸素と相互作用することが可能な少なくとも2タイプの反応性ナノ粒子を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のバリア膜。
【請求項16】
前記多層膜が、金属ナノ粒子を含む第1のナノ構造化層と、金属酸化物ナノ粒子を含む第2のナノ構造化層とを備える、請求項15に記載のバリア膜。
【請求項17】
前記多層膜が、前記多層膜内において交互の順序で配置された複数の前記第1及び第2のナノ構造化層を備える、請求項16に記載のバリア膜。
【請求項18】
前記多層膜が、金属ナノ粒子及び金属酸化物ナノ粒子が分布する1つのナノ構造化層を備える、請求項15に記載のバリア膜。
【請求項19】
前記ナノ構造化層内に存在するナノ粒子の量が、前記ナノ構造化層内の前記ポリマー結合剤のモノマーの総重量に関連する体積で約0.0000001%〜約50%である、請求項1〜18のいずれか一項に記載のバリア膜。
【請求項20】
前記ポリマー結合剤が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエポキサイド、パリレン、ポリシロキサン、及びポリウレタンからなる群から選択される材料を含む、請求項19に記載のバリア膜。
【請求項21】
前記紫外光中和層及び/又は前記反応性ナノ粒子が分布する前記ポリマー結合剤が、4−メチルベンジリデンカンファー、イソアミルp−メトキシシンナメート、2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−フェニルトリアジン、及びオキサルアニリドからなる群から選択される、紫外光を吸収することが可能な有機化合物を含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載のバリア膜。
【請求項22】
前記紫外光中和層が、ポリマー層内に分布する金属酸化物ナノ粒子を含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載のバリア膜。
【請求項23】
前記金属酸化物ナノ粒子が、二酸化ハフニウム(HfO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、シリコン酸化物(SiO)、二酸化チタン(TiO)、酸化タンタル(Ta)、酸化セリウム(CeO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項22に記載のバリア膜。
【請求項24】
前記紫外光中和層が、
紫外光を吸収することが可能な有機化合物、及びポリマー層内に分布する金属酸化物ナノ粒子を含む、請求項21又は22に記載のバリア膜。
【請求項25】
前記多層膜が有機バリア層をさらに備える、請求項1〜24のいずれか一項に記載のバリア膜。
【請求項26】
前記バリア層が、パリレン、ポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリアセテート、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン、ポリ(4−メチル−2−ペンチン)、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリジメチルフェニレン酸化物、スチレン−ジビニルベンゼン、フッ化ポリビニリデン(PVDF)から選択される材料を含む、請求項25に記載のバリア膜。
【請求項27】
カプセル封じしようとする前記電子デバイスを支持するための基板をさらに備え、前記バリア膜が前記基板の表面上に形成される、請求項26に記載のバリア膜。
【請求項28】
前記多層バリア膜を保護するための末端層をさらに備える、請求項1〜27のいずれか一項に記載のバリア膜。
【請求項29】
前記末端層が、酸化インジウムすず(ITO)、ガラス、ポリプロピレン、及びポリカーボネートから選択される材料を含む、請求項28に記載のバリア膜。
【請求項30】
前記末端層に、BaF、MgF、及びCaFから選択される材料を含む粒子が分布する、請求項29に記載のバリア膜。
【請求項31】
電子デバイスが配置されているベース基板であって、前記電子デバイスが、前記電子デバイスを水分及び/又は酸素から保護するためにカプセル封じによってカバーされ、前記カプセル封じが、請求項1〜30のいずれか一項に記載のバリア膜を備える、ベース基板、
を備えるカプセル封じされた電子デバイス。
【請求項32】
前記紫外光中和層が前記ナノ構造化層より前記電子デバイスに近接して配置されるように前記バリア膜が配置される、請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
前記ナノ構造化層が前記紫外光中和層より前記電子デバイスに近接して配置されるように前記バリア膜が配置される、請求項31に記載のデバイス。
【請求項34】
前記多層バリア膜上に配置された接着剤層と、前記接着剤層上に配置されたカバー基板とを備える2次カプセル封じをさらに備える、請求項31又は32又は33に記載のデバイス。
【請求項35】
前記カバー基板及び/又は前記ベース基板が、39℃及び相対湿度90%で、約10−1gm−2−1〜約10−6gm−2−1の組合せ水分透過特性を達成するように適合されている、請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
前記2次カプセル封じの前記接着剤層が、低い水分及び/又は酸素透過性を有する接着剤材料を含む、請求項35に記載のデバイス。
【請求項37】
前記接着剤層が、エチレンビニルアセテート樹脂、エポキシ樹脂、ポリスルフィド、シリコーン、及びポリウレタンからなる群から選択される、請求項36に記載のデバイス。
【請求項38】
前記カバー基板が、ガラス、酸化インジウムすず、無機バリア膜で積層されたナノ複合体、及び透明プラスチックからなる群から選択される、請求項37に記載のデバイス。
【請求項39】
前記電子デバイスが、有機発光デバイス(OLED)、電荷結合デバイス(CCD)、微小電子機械センサ(MEMS)、及び薄膜太陽電池に基づく有機又は無機光起電力デバイスからなる群から選択される、請求項1〜38のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項40】
薄膜太陽電池に基づく前記有機又は無機光起電力デバイスが、Cu(InGa)Se太陽電池、色素増感太陽電池(DSSC)、CdS/CdTe太陽電池、銅インジウムセレニド太陽電池(CIS)、及び銅インジウム/ガリウムジセレニド太陽電池(CIGS)からなる群から選択される、請求項39に記載のデバイス。
【請求項41】
複数のカプセル封じされた有機発光デバイス(OLED)を備える有機エレクトロルミネセント(EL)パネルであって、
前記複数のカプセル封じされたOLEDが配置されている基板を備え、各カプセル封じされたOLEDが、
第1の電極層、有機層、及び第2の電極層を含むOLEDが配置されている基板を備え、
前記OLEDが、前記OLEDを水分及び/又は酸素から保護するために請求項1〜30のいずれか一項に記載の多層膜内に封入される、有機エレクトロルミネセント(EL)パネル。
【請求項42】
カプセル封じされた光起電力デバイスであって、
光起電力デバイスを水分及び/又は酸素から保護するために請求項1〜30のいずれか一項に記載の2つの多層バリア膜間にサンドイッチされた光起電力デバイスを備え、
前記多層バリア膜のそれぞれが、一方の側で前記光起電力デバイスに取り付けられ、反対側で紫外光中和層に取り付けられているナノ構造化層を備える、光起電力デバイス。
【請求項43】
裏打ち構造が、前記2つの多層膜間にサンドイッチされていない側で前記光起電力デバイスに取り付けられ、前記裏打ち構造が、請求項1〜30のいずれか一項で参照されているナノ構造化層、又は少なくとも片側で接着剤の層に接続された請求項1〜30のいずれか一項で参照されているナノ構造化層を備える、請求項41に記載のカプセル封じされた光起電力デバイス。
【請求項44】
前記裏打ち構造が、接着剤の2つの層間にサンドイッチされた前記ナノ構造化層を備える、請求項43に記載のカプセル封じされた光起電力デバイス。
【請求項45】
複数の光起電力デバイスが光起電力デバイスパネル内で組み合わされ、前記パネル内に配置された前記光起電力デバイスが、前記裏打ち構造によって互いに分離される、請求項43又は44に記載のカプセル封じされた光起電力デバイス。
【請求項46】
前記光起電力デバイスが、薄膜太陽電池に基づく有機又は無機光起電力デバイスである、請求項42〜45のいずれか一項に記載のカプセル封じされた太陽電池。
【請求項47】
薄膜太陽電池に基づく前記有機又は無機光起電力デバイスが、Cu(InGa)Se太陽電池、色素増感太陽電池(DSSC)、CdS/CdTe太陽電池、銅インジウムセレニド太陽電池(CIS)、及び銅インジウム/ガリウムジセレニド太陽電池(CIGS)からなる群から選択される、請求項46に記載のカプセル封じされた太陽電池。
【請求項48】
カプセル封じされた電子デバイスを作製する方法であって、
真空外被を用意するステップと、
前記真空外被内に、カプセル封じしようとする電子デバイスが配置されているベース基板を配置するステップと、
前記電子デバイス上に請求項1〜30のいずれか一項に記載の多層バリア膜を形成し、それにより前記電子デバイスをカプセル封じするステップと
を含む方法。
【請求項49】
前記多層バリア膜を形成するステップが、
紫外光を吸収することが可能な材料を含む第1の層を前記電子デバイス上に形成するサブステップと、
水分及び/又は酸素と相互作用することが可能な反応性ナノ粒子を、少なくとも1つの重合可能基を有する重合可能な化合物と混合し、ナノ粒子混合物を形成するサブステップと、
前記ナノ粒子混合物を前記第1の層上に付着させるサブステップと、
前記ナノ粒子混合物を紫外光にさらし、それにより第2の層を形成するサブステップと
を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記電子構成部品を覆って第2のカプセル封じを形成するステップであって、
前記多層膜が、カプセル封じパッケージを取り囲むのに十分な量で硬化性接着剤と接触する、ステップと、
前記カプセル封じパッケージに対して封止材料を圧接する前に、カバー基板を前記接着剤上に付着するステップと、
高い温度で前記カバー基板を前記接着剤に接して機械的に圧接するステップと、
前記接着剤を硬化するステップと
をさらに含む、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
前記カプセル封じパッケージに向かって直線的にプレス機を延ばすように適合されたアクチュエータに結合されたプレス機上で、前記接着剤が担持される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記接着剤が約40℃〜約100℃の温度に加熱される、請求項48〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記プレス機が、40psi〜80psi(275.79kPa〜551.58kPa)の圧力を前記封止材料にかける、請求項48〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記接着剤層が形成される前に、前記多層膜の表面がプラズマで処理される、請求項48〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記プラズマが、約70標準立方センチメートル毎分(sccm)の流量で外被に供給されるアルゴンガスから導出されるアルゴンプラズマを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
プラズマ処理が、約5分〜約8分の間実施される、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
前記外被内の真空が約10−4mbarと約10−6mbar(0.1Paと0.001Pa)の間の圧力で維持される、請求項48〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
請求項31〜40のいずれか一項に記載のカプセル封じされた電子デバイスを作製するためのシステムであって、
前記システム内に配置されている真空チャンバと、
カプセル封じしようとする電子デバイスを受け取るための保持用ジグと、
前記真空チャンバに接続されたロードロックであって、前記試料を前記保持用ジグに移送するように適合されている、ロードロックと、
カプセル封じしようとする前記電子デバイスを洗浄するためのプラズマ源と、
請求項1〜30のいずれか一項に記載の多層バリア膜を前記電子デバイス上に形成するように適合された複数の材料源と、
通常の力を前記保持用ジグ上の試料に加えることが可能なリニアモーションドライブと、
前記電子デバイスを加熱するための、前記保持用ジグに結合されたヒータと、
前記多層バリア膜を硬化させるためのUV源と
を備えるシステム。
【請求項59】
前記真空チャンバが、複数の直列で接続されたサブチャンバを備える、請求項58に記載のシステム。
【請求項60】
第1の材料源及び第2の材料源が、それぞれ個々のサブチャンバに接続される、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
前記ロードロックが、前記複数の直列で接続されたサブチャンバを通って移動可能である伸長可能なアームを備える、請求項58〜60のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項62】
前記リニアモーションドライブが、約40psi〜約80psi(275.79kPa〜551.58kPa)の圧力を前記保持用ジグ上にある試料に加えることが可能である、請求項58〜61のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項63】
前記保持用ジグに向かう前記リニアモーションドライブの移動を案内するために前記保持用ジグに対して固定配置されたトラックをさらに備える、請求項58〜62のいずれか一項に記載のシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2011−520216(P2011−520216A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503946(P2011−503946)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/SG2009/000132
【国際公開番号】WO2009/126115
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】