説明

重力補償機構及びそれを用いる鉛直方向位置決め装置

【課題】ナノメートルのオーダの精密度が要求される鉛直方向超精密位置決め装置に対応し得る重力補償機構を提供する。
【解決手段】重力補償機構は真空シリンダ作動器10と、真空ポンプ14とを具備する。真空シリンダ作動器は、真空ポンプ14と連通させられた真空シリンダ10Aと、この真空シリンダの一端面側に設けられた非接触シールリング10Bと、この非接触シールリングに挿通させられたピストン10Cとから成り、ピストンに鉛直方向下向きに及ぼされる荷重が真空ポンプの作動により補償させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重力補償機構及びその重力補償機構を用いる鉛直方向位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、精密工作機械、半導体製造設備及び各種測定器等では、鉛直方向の位置決めにナノメートルのオーダの超精密度が要求され、これに伴ない超精密の鉛直方向位置決め装置の開発が望まれている。
【0003】
従来、鉛直方向位置決め装置には制御対象物の位置決めを容易に行い得るように重力補償機構が用いられる。このような重力補償機構の代表的な従来例としては、カウンタウエイト方式、定張力ばね方式、電磁アクチュエータ方式、空気圧シリンダ方式等が挙げられる。しかしながら、これら従来の重力補償機構については、ナノメートルのオーダの超精密度が要求される超精密の鉛直方向位置決め装置には以下に述べる理由のために利用することはできない。
【0004】
先ず、カウンタウエイト方式の重力補償機構では、制御対象物と実質的に同じ荷重を持つカウンタウエイトが互いにベルト或いはワイヤで互いに連結され、このベルト或いはワイヤはプーリに掛けられ、制御対象物とカウンタウエイトとは互いにバランスさせられる。しかしながら、このようなカウンタウエイト方式の重力補償機構にあっては、プーリの回転軸に摩擦が発生し、このような摩擦の発生の伴なう重力補償機構をナノメートルのオーダの鉛直方向位置決めに利用することはできない。また、カウンタウエイト方式では、可動部の質量が倍増するだけでなくカウンタウエイトの可動スペースを用意しなければならず、重力補償機構が大型化するという問題もある。
【0005】
定張力ばね方式の重力補償機構は、制御対象物を定張力ばねで吊下する構成となる。しかしながら、このような構成では、制御対象物が振動を受け易く、また定張力ばねが経時的に疲労するために、定張力ばね方式の重力補償機構もナノメートルのオーダの鉛直方向位置決めに利用することはできない。
【0006】
電磁アクチュエータ方式の重力補償機構は、制御対象物を電磁アクチュエータの作動ロッドで押し上げる構成となる。しかしながら、電磁アクチュエータの作動にはシステムの熱変形の原因となる大量の発熱が伴なうので、電磁アクチュエータ方式の重力補償機構もナノメートルのオーダの鉛直方向位置決めに利用することはできない。
【0007】
空気圧シリンダ方式の重力補償機構は空気圧シリンダのピストンで制御対象物を押し上げる構成となる。しかしながら、後述するように制御対象物が変位させられたとき、空気圧シリンダの出力変動が大きく、空気圧シリンダ方式の重力補償機構もナノメートルのオーダの鉛直方向位置決めに利用することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、ナノメートルのオーダの精密度が要求される超精密の鉛直方向位置決め装置に対応し得る重力補償機構を提供すると共にそのような重力補償機構を用いる鉛直方向位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の局面による重力補償機構は真空シリンダ作動器及び真空ポンプとを具備する。真空シリンダ作動器は、真空ポンプと連通させられた真空シリンダと、この真空シリンダの一端面側に設けられた非接触シールリングと、この非接触シールリングに挿通させられたピストンとから成り、ピストンに鉛直方向下向きに及ぼされる荷重が真空ポンプの作動により補償させられる。即ち、真空ポンプの作動によって真空シリンダ内には低圧状態となり、これによりピストンがそこに及ぼされる鉛直方向下向きの荷重を補償すべく真空シリンダ内に引き込まれることになる。
【0010】
このような重力補償機構において、非接触シールリングのシール隙間及びシール長については、ピストンに鉛直方向下向きに及ぼされる荷重に応じて設定される。この場合、好ましくは、真空ポンプの作動により真空シリンダ内のゲージ圧力が少なくとも-80kPaG以下となるように、非接触シールリングのシール隙間及びシール長の設定が行われる。
【0011】
本発明の第2の局面による鉛直方向位置決め装置は、以上で述べたような重力補償機構を用いるものであって、ピストンを鉛直方向に沿って移動させるための駆動モータと、ピストンの鉛直方向に沿う移動距離を測定する移動距離測定センサとを具備するものである。
【0012】
本発明の第2の局面による鉛直方向位置決め装置において、駆動モータはボイスコイルモータ及びリニアモータのうちのいずれかであってよい。また、移動距離測定センサについては、好ましくは、非接触式高分解センサとして構成される。
【0013】
また、本発明の第3の局面による鉛直方向位置決め装置は、一対の真空シリンダ作動器と、真空ポンプとを具備する。この場合、真空シリンダ作動器の各々は、真空ポンプと連通させられた真空シリンダと、この真空シリンダの一端面側に設けられた非接触シールリングと、この非接触シールリングに挿通させられたピストンとから成り、ピストンの双方に鉛直方向下向きに及ぼされる荷重が真空ポンプの作動により補償させられる。本発明の第3の局面による鉛直方向位置決め装置は、更に、一対の真空シリンダ作動器間の中央にピストンの双方を鉛直方向に沿って移動させるための駆動モータと、ピストンの鉛直方向に沿う移動距離を測定する移動距離測定センサとを具備する。一対のピストンには制御対象物が吊下され、移動距離測定センサにより駆動モータを制御することにより制御対象物の位置決めが行われる。
【0014】
本発明の第3の局面による鉛直方向位置決め装置は、更に、制御対象物を支持するためにピストンの双方から吊下され、かつ前記駆動モータによって接続された支持体と、この支持体の鉛直方向の移動をガイドするための一対の無接触ガイド手段とを具備し得る。このような無接触ガイド手段が用いられると、摩擦熱の発生が極力抑えられ、これにより制御対象物の鉛直方向の位置決め精度に与える摩擦熱の影響が排除されることになる。
【0015】
本発明の第3の局面による鉛直方向位置決め装置においては、好ましくは、一対の真空シリンダ作動器が駆動モータの駆動方向に対して対称に配置され、同様に一対の無接触ガイド手段も駆動モータの駆動方向に対して対称に配置される。このような対称構造により、例えば、温度変化に伴なう構成部品の寸法変化により制御対称物の鉛直方向の位置決め精度に与える影響を最小に抑えることが可能となる。
【0016】
本発明の第3の局面による鉛直方向位置決め装置においては、一対の無接触ガイド手段の各々については、ガイドレールと、このガイドレールに沿って移動させられかつ支持体に連結されたガイドブロックとから構成することができる。このような場合には、好ましくは、鉛直方向位置決め装置は、更に、移動距離測定センサ及び一対のガイドレールを支持する第1の支持構造体と、一対の真空シリンダ作動器及び駆動モータを支持し、かつ第1の支持構造体と独立した第2の支持構造体とを具備する。このような構成によれば、駆動モータの作動時に発生する振動が移動距離測定センサに及ぶことが阻止されるので、かかる振動の減衰を待つことなく移動距離測定センサによる測定を速やかに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、図1を参照して、本発明による重力補償機構の一実施形態について説明する。なお、図1は本発明による重力補償機構の原理構成を示す模式図である。
【0018】
本発明による重力補償機構は真空シリンダ方式を採用するものであって、真空シリンダ作動器10及びガイドコラム11を具備する。真空シリンダ作動器10は、ガイドコラム11の上端側に適宜固着された真空シリンダ10Aと、この真空シリンダ10Aの下面側に設けられた非接触シールリング10Bと、この非接触シールリング10Bを通して真空シリンダ10Aに挿通させられたピストン10Cとから成る。ピストン10Cの外端には制御対象物12が適宜固着され、この制御対象物12からはガイド片12Aが突出させられ、ガイド片12Aは、ガイドコラム11に形成されたに鉛直ガイド溝11Aに非接触状態で係合させられる。即ち、鉛直ガイド溝12の内側壁面にはコンプレッサに連通させられた多数の圧縮空気噴出孔(図示されない)が形成され、これにより鉛直ガイド溝11A内でのガイド片12Aの非接触状態が保証される。
【0019】
真空シリンダ10Aは導管13を介して真空ポンプ14に連通させられ、導管13には圧力レギュレータ15が設けられ、これにより真空シリンダ10A内には制御対象物12の荷重を補償するようになった所定の真空状態即ち低圧状態が作り出される。即ち、ピストン10Cはその荷重と制御対象物12の荷重とを相殺する吸引力で真空シリンダ10Aにより引き込まれ、制御対象物12はフローティング状態で保持されることになる。
【0020】
非接触シールリング10Bとピストン10Cとの間のシール隙間は数十μm程度とされ、制御対象物12をフローティング状態に維持するために真空ポンプ14は連続的に作動させられ、このとき真空シリンダ10Aはゲージ圧力-80ないし-100kPaGの低圧状態とされる。なお、単位kPaGはゲージ圧力を示す。
【0021】
以上のような真空シリンダ方式の重力補償機構によれば、制御対象物12がその位置決めのために適当な駆動手段例えばボイスコイルモータ、リニアモータ等で変位させられたとしても、以下に詳細に述べるように、真空シリンダ作動器10の出力変動については実質的にゼロとすることが可能であり、これにより制御対象物12をナノメートルのオーダの超高精度で位置決めすることができる。
【0022】
先ず、本発明の一層の理解のために、本発明による重力補償機構の比較例として、図2を参照して、従来の空気圧シリンダ方式の重力補償機構について説明する。なお、図2は従来の空気圧シリンダ方式の重力補償機構を示す模式図である。
【0023】
空気圧シリンダ方式の重力補償機構は空気圧シリンダ作動器20及びガイドコラム21を具備し、空気圧シリンダ作動器20及びガイドコラム21は互いに隣接して設けられる。空気圧シリンダ作動器20は、適当な支持台上に設置された空気圧シリンダ20Aと、この空気圧シリンダ20Aの上面側に設けられた非接触シールリング20Bと、この非接触シールリング20Bを通して空気圧シリンダ20Aに挿通させられたピストン20Cとから成る。ピストン20Cの外端には制御対象物22が適宜固着され、この制御対象物22からはガイド片22Aが突出させられ、ガイド片22Aは、ガイドコラム21に形成されたに鉛直ガイド溝21Aに非接触状態で係合させられる。即ち、図1に示した場合と同様に、鉛直ガイド溝22の内側壁面にはコンプレッサに連通させられた多数の圧縮空気噴出孔(図示されない)が形成され、これにより鉛直ガイド溝21A内でのガイド片22Aの非接触状態が保証される。
【0024】
空気圧シリンダ20Aは導管23を介してコンプレッサ24に連通させられ、導管23には圧力レギュレータ25が設けられ、これにより空気圧シリンダ20A内には制御対象物22の荷重を補償するようになった所定の高圧状態が作り出される。即ち、ピストン20Cはその荷重と制御対象物22の荷重とを相殺する押圧力で空気圧シリンダ20Aから押し出され、制御対象物22はフローティング状態で保持されることになる。
【0025】
なお、非接触シールリング20Bとピストン20Cとの間のシール隙間は数十μm程度とされ、制御対象物22をフローティング状態に維持するためにコンプレッサ24は連続的に作動させられる。
【0026】
以上のような空気圧シリンダ方式の重力補償機構おいては、制御対象物22がその位置決めのために適当な駆動手段例えばボイスコイルモータ、リニアモータ等で変位させられた場合、空気圧シリンダ作動器20の出力変動については大きなものとなり、このため制御対象物22をナノメートルのオーダの超高精度で位置決めするために空気圧シリンダ方式の重力補償機構を利用することはできない。
【0027】
図1に示す重力補償機構で真空シリンダ10A内の容積がピストン10Cの移動によって変化させられた際にピストン10Cが受ける出力(ゲージ圧力)変動については、図2に示す重力補償機構で空気圧シリンダ20A内の容積がピストン20Cの移動によって変化させられた際にピストン20Cが受ける出力ゲージ圧力)変動よりも大幅に小さいことは容易に予想し得るが、しかし双方の出力(ゲージ圧力)変動が定量的にどの程度相違するについて明らかではない。
【0028】
そこで、本発明者により、図1の本発明に係る真空シリンダ方式の重力補償機構及び図2の従来の空気圧シリンダ方式の重力補償機構について図3の(a)及び図3の(b)に示すように擬似的にモデル化し、シリンダの低圧状態下及び高圧状態下での容積変動時に受けるピストンの出力変動が数値的に計算された。なお、図3の(a)及び図3の(b)の擬似的モデルでは、ピストンはシリンダ内をシールされた状態で移動させられ、ピストンの移動に伴なうシリンダ内の圧力(ゲージ圧力)/容積変化はポリトロープ変化を受けることになる。
【0029】
なお、ポリトロープ変化は以下の式で表される。
PV=一定
ここで、Pはシリンダ内のゲージ圧力、Vはシリンダ内の容積変化、nは定数である。
【0030】
詳述すると、図3の(a)の擬似モデルにおいて、ピストン10Cが下限位置に置かれ、かつシリンダ10A内のゲージ圧力が-95kPaG(絶対圧力6.3kPaに相当)の低圧状態である初期条件下で、ピストン10Cが下限位置からシリンダ10Aの容積を50%減少させるまで移動させられたとすると、シリンダ10A内のゲージ圧力は-95kPaGから-85kPaG(絶対圧力17kPaに相当)まで上昇し、このときピストン10Cの出力変動、即ちシリンダ10A内のゲージ圧変動ついては約11%[(95-85)/95×100%]となる。
【0031】
一方、図3の(b)の擬似モデルにおいて、ピストン20Cが上限位置に置かれ、かつシリンダ20A内のゲージ圧力が95kPaG(絶対圧力196kPaに相当)の高圧状態である初期条件下で、ピストン20Cが上限位置からシリンダ20Aの容積を50%減少させるまで移動させられると、シリンダ20A内のゲージ圧力は95kPaGから418kPaG(519kPa)まで上昇し、このときピストン20Cの出力変動については340%[(418-95)/95×100%]となる。
【0032】
以上の計算結果で示されるように、図3の(b)に比較して図3の(a)の場合に、ピストン10Cの移動によるシリンダ10Aの容積変動に伴なうピストン10Cの出力(ゲージ圧力)変動は大幅に小さいことが分かる。なお、図1に示す重力補償機構では、実際には、ピストン10Cは非接触シールリング10Bを通して真空シリンダ10Aに挿通させられるので、真空シリンダ10Aの容積変動に伴なうピストン10Cの出力(ゲージ圧力)変動は更に小さなものとなる。
【0033】
図1に示す重力補償機構において、重力補償力、即ち制御対象物12をフローティング状態で保持するための力は非接触シールリング10Bの設計によって決まる。これについて以下に説明する。
【0034】
先ず、図4を参照すると、図1の非接触シールリング10B及びピストン10Cが斜視図として示され、同図において、参照符号aは非接触シールリング10Bのシール隙間を示し、参照符号Lは非接触シールリング10Bのシール長を示す。
【0035】
重力補償力は、真空シリンダ10A(図1参照)内で得られる低圧状態に依存し、この低圧状態は非接触シールリング10Bとピストン10Cとの間のシール隙間aから流入する空気量によって決まる。即ち、空気流入量は小さければ小さい程、大きな重力補償力が得られる。従って、シール隙間aが小さくかつシール長Lが大きければ、重力補償力は大きくなる。
【0036】
図5の(a)のグラフは、シール隙間aと重力補償力との関係の解析結果を示し、また図5の(b)のグラフは、シール長Lと重力補償力との関係の解析結果を示す。これらグラフに示すように、シール隙間aが小さくかつシール長Lが大きくなれば、大きな重力補償力が得られる。
【0037】
従って、図1の重力補償機構を設計する際には、制御対象物12の荷重に応じて、非接触シールリング10Bの設計パラメータ(a、L)を図5(a)及び図5(b)のグラフに基づいて適宜決めることができる。
【0038】
図6を参照すると、本発明による重力補償機構を持つ鉛直方向位置決め装置と等価な構成を持つ実験装置が示され、この実験装置を用いて本発明による鉛直方向位置決め装置の評価実験が行われた。
【0039】
図6の実験装置は真空シリンダ作動器30を具備し、この真空シリンダ作動器30は、適当な基台B上に設置された真空シリンダ30Aと、この真空シリンダ30Aの一方の端面側に設けられた非接触シールリング30Bと、この非接触シールリング30Bを通して真空シリンダ30Aに挿通させられたピストン30Cとから成る。ピストン30Cの直径は25mmであり、そのストローク長については30mmである。また、非接触シールリング30Bのシール隙間は20μmであり、そのシール長は19mmである。なお、参照符号31は真空シリンダ30A内の圧力を測定するための圧力センサである。
【0040】
真空シリンダ30Aの他方の端面は導管32を介して真空ポンプ33に連通させられ、導管32には圧力レギュレータ34が設けられる。
【0041】
ピストン30Cの外端には制御対象物としてブロック片35が接続される。なお、図6には図示されないが、基台Bの一部領域、即ちブッロク片35が配置されれる領域には多数の圧縮空気噴出孔が形成され、これによりブロック片35は空気層によってフローティング状態に維持される。
【0042】
ブロック片35を駆動するために、ボイスコイルモータ36がブロック片35に対してピストン30C側とは反対側に設けられる。ボイスコイルモータ36は基台B上に固定された永久磁石36Aと、この永久磁石36A内に収容された電磁コイル36Bと、この電磁コイル36Bとブロック片35とを連結する連結ロッド36Cとから成る。なお、ボイスコイルモータ36の最大推力は50Nである。
【0043】
ブロック片35の移動量を測定するために、ボイスコイルモータ36に隣接して非接触式高分解センサ例えばレーザ干渉計37が設けられ、このレーザ干渉計37は、基台B上に設けられた支持台38上に設置される。一方、ブロック片35上にはレーザ干渉計37から射出されたレーザ光LBをレーザ干渉計37に反射し返すミラー39が設置される。なお、レーザ干渉計37の分解能は0.3nmである。
【0044】
図6の実験装置においては、真空シリンダ作動器30及びブッロク片35は互いに水平面上に配置されているので、ブッロク片35の重力が真空シリンダ作動器30のピストン30Cに作用することはない。真空ポンプ33の作動時、ブロック片35は真空シリンダ作動器30側に所定の吸引力で吸引されるが、その吸引力を補償するようにボイスコイルモータ36を作動させることにより、ピストン30C及びブッロク片35を図6に示すような初期位置に維持することが可能であり、このとき実験装置は鉛直方向位置決め装置と等価なものとなる。
【0045】
先ず、図6の実験装置において、真空シリンダ30A内の圧力変動実験が次のような条件下で行われた。即ち、ブロック片35が初期位置に維持された状態で、真空シリンダ30A内のゲージ圧力が-20kPaGの定常圧力とになるように、真空ポンプ33及びボイスコイルモータ36が駆動させられ、次いでピストン30Cが20mmだけ真空シリンダ30A内に押し込まれるようにボイスコイルモータ36の駆動が制御された。このとき真空シリンダ30A内のゲージ圧力が圧力センサ31によって測定された。なお、ピストン30Aの移動距離、即ちブロック片35の移動距離についてはレーザ干渉計37によって測定された。
【0046】
測定結果を図7の(a)のタイミング図に示す。同図に示すように、ピストン30Cが真空シリンダ30A内に押し込まれた際、真空シリンダ30内のゲージ圧力は5kPaG程度上昇して、定常圧力-20kPaGに直ちに戻ることが分かる。つまり、測定結果の圧力変動は5kPaG程度である。図7の(a)のタイミング図にはシミュレーションに基づく解析結果も示され、解析結果の圧力変動は4kPaG程度であり、測定結果と解析結果とはほぼ一致することが分かる。
【0047】
次いで、図6の実験装置において、真空シリンダ30A内の圧力変動実験が別の条件下で行われた。即ち、この圧力変動実験は、ブロック片35が初期位置に維持された状態で、真空シリンダ30A内のゲージ圧力が-80kPaGの定常圧力とになるように真空ポンプ33及びボイスコイルモータ36が駆動された点を除けば、上述の圧力変動実験(図7の(a))と同じ条件下で行われた。
【0048】
シリンダ内定常圧力が-80kPaGである場合の測定結果を図7の(b)のタイミング図に示す。同図に示すように、ピストン30Cが真空シリンダ30A内に押し込まれた際、真空シリンダ30内のゲージ圧力は2kPaG程度上昇して、定常圧力-80kPaGに直ちに戻ることが分かる。つまり、測定結果の圧力変動は2kPaG程度である。図7の(b)のタイミング図にはシミュレーションに基づく解析結果も示され、解析結果の圧力変動は3kPaG程度であり、測定結果と解析結果とはほぼ一致することが分かる。
【0049】
以上の測定結果及び解析結果から、真空シリンダ30A内の圧力変動の測定結果に代えて、シミュレーションに基づく解析結果により真空シリンダ30A内の圧力変動を予測し得るということが分かる。
【0050】
従って、図6の実験装置において、定常ゲージ圧力を変数として、圧力変動をシミュレーションに基づく解析結果により求める。即ち、真空シリンダ30内の定常ゲージ圧力として-20kPaG、-50kPaG、-80kPaG及び-90kPaGをそれぞれ設定し、かつそれぞれの定常ゲージ圧力の設定下でピストン30Cが初期位置(図6参照)から20mmだけ真空シリンダ30A内に押し込まれた後に真空シリンダ30Aから再び初期位置にまで引き抜かれるようにボイスコイルモータ36の駆動が制御されるものとされ、このとき真空シリンダ30内の圧力変動をシミュレーションにより求めた。
【0051】
ピストン30Cが真空シリンダ30A内に押し込まれた際の圧力変動のシミュレーションの解析結果を図8の(a)のタイミング図に示し、ピストン30Cが真空シリンダ30Aから引き抜かれた際の圧力変動のシミュレーションの解析結果を図8の(b)のタイミング図に示す。
【0052】
図8(a)及び図8(b)のタイミング図に示されるように、真空シリンダ30内の定常圧力が-80kPaG以下の場合にはピストン30Cの押込み時でもピストン30Cの引抜き時でも真空シリンダ30内の圧力変動は±2kPaG以下となる。即ち、ピストン30Cの押込み時及び引抜き時において、ピストン30Cの出力変動は実質的に排除され、このためナノメートルのオーダでのブロック片35の位置決めが可能となる。
【0053】
図9を参照すると、精密工作機械が斜視図として示され、この精密工作機械には、図1に示すような重力補償機構を用いる鉛直方向位置決め装置が組み込まれる。
【0054】
図9に示すように、精密工作機械は互いに独立した前方支持構造体40及び後方支持構造体41を具備し、前方支持構造体40は一対のブロック基台40A上に張り渡されたビーム40Bとして構成され、同様に後方支持構造体41も一対のブロック基台41A上に張り渡されたビーム41Bとして構成される。双方のビーム40B及び41Bは所定間隔で互いに平行に延在させられる。なお、図9では、ビーム40Bは図示の便宜のためにその中央部を切り欠いて示されている。
【0055】
精密工作機械は、また、双方のビーム40B及び41Bの中央の下方に設置された水平方向位置決め装置42を具備する。水平方向位置決め装置42は、XYZ直角座標系のX軸及びY軸に沿って位置決め可能なX−Yテーブル42Aと、このX−Yテーブル42Aを駆動するための駆動機構42Bと、X−Yテーブル42A上に設置された加工物搭載台42Cとから成る。なお、加工物搭載台42C上には適当な被加工物Wが搭載される。
【0056】
精密工作機械は、更に、ビーム40Bの内側壁面即ちビーム41Bと向かい合う内側壁面に固定されたH形状支持板43と、このH形状支持板43によって支持された非接触式高分解センサ例えばレーザ干渉計44と、H形状支持板43によって支持された一対のガイドレール45とを具備する。詳述すると、H形状支持板43の上方側には矩形取付板43Aが張り渡され、この矩形取付板43Aの中央部にレーザ干渉計44が取り付けられる。なお、レーザ干渉計44の分解能は0.6nmである。
【0057】
一方、H形状支持板43の左右側辺の後方壁面からはそれらの上端及び下端付近で支持片43Bが固着され、該左右側辺のそれぞれの上端及び下端付近の支持片43Bにはガイドレール45が支持される。なお、図9では、H形状支持板43の左右側辺の下端付近の支持片(43B)についてはH形状支持板43に隠れて見ることはできない。
【0058】
精密工作機械は、更に、双方のビーム40B及び41B間に設けられた鉛直方向位置決め装置46を具備する。鉛直方向位置決め装置46は支持ブラケット47によってビーム41Bに固定支持された一対の真空シリンダ作動器460と、この一対の真空シリンダ作動器460間に設けられたボイスコイルモータ461と、一対のガイドレール45のそれぞれに非接触状態で係合させられる一対のガイドブロック462とから成る。なお、図9では、左側のガイドブロック462の一部だけが見えて、右側のガイドブロック(462)についてはH形状支持板43に隠れて見ることはできない。
【0059】
図10を参照すると、図9の精密工作機械から抜き出した鉛直方向位置決め装置46が一部断面詳細斜視図として示される。
【0060】
図10に示すように、各真空シリンダ作動器460は、支持ブラケット47(図9参照)に固着された真空シリンダ460Aと、この真空シリンダ460Aの下面側に設けられた非接触シールリング460Bと、この非接触シールリング460Bを通して真空シリンダ20Bに挿通させられたピストン460Cとから成る。各ピストン460Cの下端は、その該当ガイドブロック462の上端から突出した取付片462Aに固着される。
【0061】
なお、非接触シールリング460Bのシール隙間は20μmであり、そのシール長は19mmである。また、ピストン460Cの直径は40mmであり、その長さは145mmであり、そのストロークは100mmとされた。
【0062】
なお、図10には図示されないが、ガイドレール45の全周囲にはコンプレッサに連通させられた多数の圧縮空気噴出孔が適宜形成され、これによりガイドレール45に対するガイドブロック462の非接触状態が保証される。
【0063】
ボイスコイルモータ461は、一対の真空シリンダ460A間に固着されかつコ形状横断面を持つた永久磁石461Aと、この永久磁石461A内に配置された電磁コイル461Bとから成る。電磁コイル461Bはそこに流す電流方向に応じて上下動するように駆動される。
【0064】
ボイスコイルモータ461の電磁コイル461Bの下端には逆T形状の支持体463が接続され、その下端側頭部は一対のガイドブロック462の側壁に固着される。即ち、一対のガイドブロック462及び支持体463は一対のピストン460Cから吊下された構成となる。逆T形状の支持体463の下端側頭部の中央正面にはレーザ干渉計44(図9参照)と整列するように配置されたミラー464が取り付けられ、このミラー464はレーザ干渉計44から射出させられたレーザ光を該レーザ干渉計44に向かって反射し、これによりミラー464とレーザ干渉計44との間の距離、即ち電磁コイル461Bの上下動の永久磁石461Aの移動距離が計測される。
【0065】
再び図9に戻って説明すると、ボイスコイルモータ461の電磁コイル461Bの安定した上下動を保証するために、一対のガイドレール461Cがコ形状横断面の永久磁石461Aの開口縁に沿って設けられ、この一対のガイドレール461C間には、T形状横断面を持つガイド部材461Dが挿通させられて電磁コイル46に接続される。一対のガイドレール461Cの互いに向かい合う壁面にはコンプレッサに連通させられた多数の圧縮空気噴出孔(図示されない)が形成され、これによりガイド部材461Dは一対のガイドレール461Dに対して非接触状態で係合させられる。
【0066】
また、図9に示すように、逆T形状の支持体463の下端側頭部の中央からは工具ホルダ465が吊下させられ、この工具ホルダ465には制御対象物として適当な工具Tが保持される。
【0067】
図9及び図10には図示されないが、以上に述べた精密工作機械においては、一対の真空シリンダ460Aは圧力レギュレータを介して真空ポンプに連通させられる。なお、真空ポンプの排気速度は4m2/hであり、また各真空シリンダ460内の定常圧力は-80kPaGとされた。
【0068】
図9及び図10の精密工作機械においては、一対の真空シリンダ作動器460は重力補償機構を構成し、この重力補償機構により、一対のピストン460C、電磁コイル461B、ガイド部材461D、一対のガイドブロック462、一対の取付片462A、支持体463、ミラー464、工具ホルダ465及び工具Tから成る可動部の荷重が補償されてフローティング状態とされる。このようなフローティング状態下でボイスコイルモータ461を駆動することにより、工具Tの鉛直方向の位置決めをナノメートルのオーダで行うことが可能となる。なお、上述の可動部の荷重は16kgである。
【0069】
図9及び図10の精密工作機械の重要な特徴事項として、その全体構造がボイスコイルモータ461の駆動軸線に対して対称とされている点が挙げられる。このような対称構造により、例えば、温度変化に伴なう構成部品の寸法変化により工具Tの鉛直方向の位置決め精度に与える影響を最小に抑えることが可能となる。
【0070】
また、図9及び図10の精密工作機械の別の重要な特徴事項として、ガイド部材461D及びガイドブロック462が圧縮空気を用いて非接触状態でガイドされる点も挙げられる。即ち、ガイド部材461D及びガイドブロック462が非接触状態でガイドされることから、摩擦熱の発生が抑えられ、これにより工具Tの鉛直方向の位置決め精度に与える摩擦熱の影響が排除されることになる。
【0071】
また、図9及び図10の精密工作機械の更に別の重要な特徴事項として、レーザ干渉計44及び一対のガイドレール45がH形状支持板43によって前方支持構造体40側に支持されるのに対して、一対の真空シリンダ作動器460及びボイスコイルモータ461が支持ブラケット47によって後方支持構造体41側に支持される点も挙げられる。このような構成によれば、ボイスコイルモータ461の作動時に発生する振動がレーザ干渉計44に及ぶことが阻止されるので、かかる振動の減衰を待つことなくレーザ干渉計44による測定を速やかに行うことができる。
【0072】
図9及び図10の精密工作機械においては、工具Tを位置決めするための駆動モータとして、ボイスコイルモータ461が使用されるが、その他の駆動モータとして、例えばリニアモータを利用することができる。
【0073】
図9及び図10の精密工作機械おいて、工具Tを鉛直方向の所定の停止位置から2nmずつ上方に移動させた後に元の停止位置まで2nmずつ下方に移動させる実験が実際に行われ、この実験結果を図11(a)及び図11(b)のグラフに示す。
【0074】
図11の(a)のタイミング図が鉛直方向の所定の停止位置に置かれているかれている際にレーザ干渉計44から得られる測定値を示す。図11(a)のタイミング図に示すように、レーザ干渉計44からの測定値はほぼ±1.5nmの範囲内で変化していることが分かる。このことは、図9及び図10の精密工作機械において、工具Tに対する停止性能が±1.5nmであることを示している。なお、図11の(a)のタイミング図において、工具位置0nmに引かれた実線は工具Tが本来停止されるべき停止位置を示している。
【0075】
図11の(b)のタイミング図は、工具Tを上述の所定の停止位置から2nmずつ上方に移動させた後に元の停止位置まで2nmずつ下方に移動させた際にレーザ干渉計44から得られる測定値を示す。図11の(b)のタイミング図において、階段状の実線は工具Tが本来辿るべき移動軌跡を示しいる。図11の(b)のタイミング図に示すように、工具Tが2nmの位置決め分解能で位置決めできることが分かる。
【0076】
なお、図9及び図10では、本発明による鉛直方向位置決め装置を精密工作機械に適用した例が示されているが、本発明による鉛直方向位置決め装置は精密工作機械だけでなく半導体製造設備及び各種測定器等にも適用できる。
【0077】
上述した実施形態では、非接触式高分解センサとしてレーザ干渉計44が用いられているが、その他のセンサ例えばリニアエンコーダを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明による真空シリンダ方式の重力補償機構の一実施形態を示す模式図である。
【図2】従来の空気圧シリンダ方式の重力補償機構を示す模式図である。
【図3】(a)は、図1の重力補償機構の擬似的モデルにおいて、低圧状態下のシリンダ内がピストンの移動により圧力/容積変化を受けた際のピストンの出力(ゲージ圧力)変動を説明する説明図であり、(b)は、図2の重力補償機構の擬似的モデルにおいて、高圧状態下のシリンダ内がピストンの移動により圧力/容積変化を受けた際のピストンの出力(ゲージ圧力)変動を説明する説明図である。
【図4】図1の非接触シールリング及びピストンを示す斜視図であって、非接触シールリングのシール隙間及びシール長を説明する説明図である。
【図5】(a)は、図1の重力補償機構の非接触シールリングのシール隙間と重力補償力との関係を示すグラフであり、(b)は、図1の重力補償機構の非接触シールリングのシール長と重力補償力との関係を示すグラフである。
【図6】本発明による重力補償機構を持つ鉛直方向位置決め装置と等価な構成を持つ実験装置を示す概略図である。
【図7】(a)は、図6の実験装置で行われた1つの真空シリンダ圧力変動実験の測定結果及びシミュレーションの解析結果を示すタイミング図であり、(b)は、図6の実験装置で行われた別の真空シリンダ圧力変動実験の測定結果及びシミュレーションの解析結果を示すタイミング図である。
【図8】(a)は、図6の実験装置で行われた更に別の真空シリンダ圧力変動のシミュレーションの解析結果を示すタイミング図であり、(b)は、図6の実験装置で行われた更に別の真空シリンダ圧力変動のシミュレーションの解析結果を示すタイミング図である。
【図9】本発明による重力補償機構を用いる鉛直方向位置決め装置を組み込んだ精密工作機械の斜視図である。
【図10】図9の精密工作機械から抜き出した鉛直方向位置決め装置の一部断面詳細斜視図である。
【図11】(a)は、図10の精密工作機械で工具が鉛直方向の所定の停止位置に置かれている際にレーザ干渉計から得られる測定値を示すタイミング図であり、(b)は、図10の精密工作機械で工具を所定の停止位置から2nmずつ上方に移動させた後に元の停止位置まで2nmずつ下方に移動させた際にレーザ干渉計から得られる測定値を示すタイミング図である。
【符号の説明】
【0079】
10:真空シリンダ作動器
11:ガイドコラム
11A:鉛直ガイド溝
10A:真空シリンダ
10B:非接触シールリング
10C:ピストン
12:制御対象物
12A:ガイド片
20:空気圧シリンダ作動器
20A:空気圧シリンダ
20B:非接触シールリング
20C:ピストン
21:ガイドコラム
21A:鉛直ガイド溝
22:制御対象物
22A:ガイド片
a:シール隙間
L:シール長
30:真空シリンダ作動器
30A:真空シリンダ
30B:非接触シールリング
30C:ピストン
31:圧力センサ
32:導管
33:真空ポンプ
34:圧力レギュレータ
35:ブロック片
36:ボイスコイルモータ
36A:永久磁石
36B:電磁コイル
37:レーザ干渉計
38:支持台
39:ミラー
LB:レーザ光
40:前方支持構造体
40A:ブロック基台
40B:ビーム
41:後方支持構造体
41A:ブロック基台
41B:ビーム
42:水平方向位置決め装置
42A:X−Yテーブル
42B:駆動機構
42C:加工物搭載台
W:被加工物
43:H形状支持板
43A:矩形取付板
43B:支持片
44:レーザ干渉計
45:ガイドレール
46:鉛直方向位置決め装置
460:真空シリンダ作動器
460A:真空シリンダ
460B:非接触シールリング
460C:ピストン
461:ボイスコイルモータ
461A:永久磁石
461B:電磁コイル
461C:ガイドレール
461D:ガイド部材
462:ガイドブロック
462A:取付片
463:支持体
464:ミラー
465:工具ホルダ
47:支持ブラケット
T:工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空シリンダ作動器(10)と、真空ポンプ(14)とを具備する重力補償機構であって、
前記真空シリンダ作動器が、前記真空ポンプ(14)と連通させられた真空シリンダ(10A)と、この真空シリンダの一端面側に設けられた非接触シールリング(10B)と、この非接触シールリングに挿通させられたピストン(10C)とから成り、前記ピストンに鉛直方向下向きに及ぼされる荷重が前記真空ポンプの作動により補償させられる重力補償機構。
【請求項2】
請求項1に記載の重力補償機構において、前記非接触シールリング(10B)のシール隙間及びシール長が前記ピストンに鉛直方向下向きに及ぼされる荷重に応じて設定される重力補償機構。
【請求項3】
請求項2に記載の重力補償機構において、前記真空ポンプ(14)の作動により前記真空シリンダ(10A)内の圧力が少なくとも-80kPaG以下となるように前記非接触シールリング(10B)のシール隙間及びシール長の設定が行われる重力補償機構。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の重力補償機構を用いる鉛直方向位置決め装置であって、
前記ピストンを鉛直方向に沿って移動させるための駆動モータと、
前記ピストンの鉛直方向に沿う移動距離を測定する移動距離測定センサとを具備する鉛直方向位置決め装置。
【請求項5】
請求項4に記載の鉛直方向位置決め装置において、前記駆動モータがボイスコイルモータ及びリニアモータのうちのいずれか一方から成る鉛直方向位置決め装置。
【請求項6】
請求項4に記載の鉛直方向位置決め装置において、前記移動距離測定センサが非接触式高分解センサから成る鉛直方向位置決め装置。
【請求項7】
一対の真空シリンダ作動器(460)と、真空ポンプとを具備する鉛直方向位置決め装置であって、
前記真空シリンダ作動器の各々が、前記真空ポンプと連通させられた真空シリンダ(460A)と、この真空シリンダの一端面側に設けられた非接触シールリング(460B)と、この非接触シールリングに挿通させられたピストン(460C)とから成り、前記ピストンの双方に鉛直方向下向きに及ぼされる荷重が前記真空ポンプの作動により補償させられる鉛直方向位置決め装置において、
更に、前記一対の真空シリンダ作動器間の中央に前記ピストンの双方を鉛直方向に沿って移動させるための駆動モータ(461)と、
前記ピストンの鉛直方向に沿う移動距離を測定する移動距離測定センサ(44)とを具備する鉛直方向位置決め装置。
【請求項8】
請求項7に記載の鉛直方向位置決め装置において、
更に、制御対象物(T)を支持するために前記ピストン(460C)の双方から吊下され、かつ前記駆動モータによって接続された支持体(463)と、
前記支持体の鉛直方向の移動をガイドするための一対の無接触ガイド手段(45、462)とを具備する鉛直方向位置決め装置。
【請求項9】
請求項8に記載の鉛直方向位置決め装置において、前記一対の真空シリンダ作動器(460)が前記駆動モータ(461)の駆動方向に対して対称に配置され、かつ前記一対の無接触ガイド手段(45、462)も前記駆動モータ(461)の駆動方向に対して対称に配置される鉛直方向位置決め装置。
【請求項10】
請求項7に記載の鉛直方向位置決め装置において、前記一対の無接触ガイド手段の各々がガイドレール(45)と、このガイドレールに沿って移動させられかつ前記支持体(463)に連結された前記ガイドブロック(462)とから成る鉛直方向位置決め装置。
【請求項11】
請求項10に記載の鉛直方向位置決め装置において、
更に、前記移動距離測定センサ(44)及び前記一対のガイドレール(45)を支持する第1の支持構造体(40)と、
前記一対の真空シリンダ作動器(460)及び前記駆動モータ(461)を支持し、かつ前記第1の支持構造体と独立した第2の支持構造体(42)とを具備する鉛直方向位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−31075(P2009−31075A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194124(P2007−194124)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】