説明

重合性混合物

本発明の対象は、A)モノマーまたはオリゴマー(A)、その際、モノマーまたはオリゴマー(A)のそれぞれは、(メタ)アクリレートエステル基、エポキシ基およびビニルエーテル基から選択される重合性官能基を少なくとも2つ有する、B)液晶質のモノマーまたはオリゴマー(B)、その際、モノマーまたはオリゴマー(B)のそれぞれは、芳香族二環構造を有するメソゲン基を少なくとも1つ、ならびに(メタ)アクリレートエステル基、エポキシ基およびビニルエーテル基から選択される重合性官能基を正確に1つ有する、C)芳香族二環構造を有するメソゲン基を少なくとも1つ有し、かつ、モノマーまたはオリゴマー(A)および(B)の重合性官能基と反応することができる基を有していないモノマー(C)を、重合性混合物に対して1〜50質量%未満
を含有する重合性混合物(P)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合性混合物および該混合物から製造することができる光学的異方性のポリマーに関する。
【0002】
低分子のネマチックもしくはスメクチック化合物は、薄い層中で液晶相の温度範囲において良好に配向させることができ、かつこの場合、光学的異方性を有し、これによって制御された影響を偏光に対して与えることができる。この効果は技術的にはたとえば、分子の配向を電界の印加により切り替えることによって個々のピクセルの明るさが変化する液晶表示(LCD)に利用されている。数μmの膜厚の場合、高い屈折率異方性Δnを有する化合物を適切に選択することによって、可視光の波長の大きさで光学的なリタデーションを生じることができる。しかし低分子液晶化合物からなるこの膜の光学的異方性は、分子の熱的な移動および制限された液晶相領域によって極めて限定された温度範囲において安定しているにすぎない。従って、温度変化の際にも維持される、定義された光学的異方性を有する持続的な層を得るためには、化学反応により架橋してポリマーフィルムを生じる重合性の基を有する液晶化合物を使用する。特にこの目的のために、たとえばWO96/25470に記載されているような重合性のネマチックおよびスメクチックモノマーおよびオリゴマーから製造される液晶質の側鎖ポリマーが有利であることが判明している。多くの適用にとって光学的異方性Δnの高さは重要である。純粋なリターダ機能の場合には全ての光学的なリタデーションΔn・dは材料パラメータΔnによる以外に、層の厚さdによっても調整することができる一方で、これはたとえばコレステリックな反射バンドの幅Δλに関してはもはや不可能である。というのも、これはΔλ/λ=Δn/nにより直接、複屈折Δnに依存しているからである(その際、λ=コレステリックな反射バンドの平均波長、n=材料の平均屈折率)。材料のΔnはたしかにメソゲンの化学的な基を適切に選択することによって一定の範囲で変更することができるが、しかしこの選択は経済的な観点では著しく限定されている。特に高いΔnを有する化合物、たとえばトランは複雑な合成を必要とし、かつコストが高すぎるため、大量の材料を必要とする適用にとってはあまり適切ではない。
【0003】
液晶層の光学的異方性は可視光の周波数範囲における個々の分子の分極率により、ならびに全ての分子の集合の、温度に依存した秩序パラメーターにより決定される(W. Maier, A, Saupe, Z. Naturforsch., Teil A 14, 882(1959);同書15, 287 (1960))。液晶層の重合の際に光学的異方性の変化が生じうる。重合の前および後のメソゲンの化学構造にはほとんど違いがないので、光学的な分極率も両方の場合において類似していることを出発点とすることができる。光学的異方性の変更に関して主に秩序パラメータが重要である。従って重合の際に秩序パラメータが低減することを回避するために、光学的異方性のポリマーフィルムを製造するための従来公知の液晶混合物では、多くの場合、重合性の基がアルキルスペーサにより分子のメソゲンな主鎖から分離する化合物が使用される。
【0004】
特に適切な液晶はWO96/25470に記載された混合物であり、これはちょうど1つの重合性の基を有する液晶のモノマーまたはオリゴマーを含有しており、かつ架橋密度の向上のため、ひいてはフィルムの安定性のためにさらに付加的な、少なくとも2つの重合性の基を有する成分を含有している。重合性の基は一般にメソゲンではなく、かつ液晶相の秩序を妨げる。従ってこのような混合物中では、目標とするものができる限り高い光学的異方性を有するポリマーフィルムである場合、重合性の基を1つだけ有する液晶化合物が、重合性の基を2つ有する化合物よりも有利である。
【0005】
ポリマーフィルムに関してはさらに、配向しているが、しかしまだ重合していない液晶混合物の光学的異方性が重合反応の後にもなお維持されていることが保証されなくてはならない。しかしWO96/25470により製造した、以前の研究に対して重合性の基を2つ有する液晶モノマーを含有するポリマーフィルム(D.J. Broer, G.N. Mol, Makromol. Chem. 192, 59(1991))は、しばしば同一の材料からなる、重合反応前の配向層よりもわずかな光学的異方性を有することが確認された。
【0006】
従来技術では、非重合性の液晶成分を含有する重合性の液晶混合物が公知であるが、しかしこれは重合の後に均質なポリマーフィルムを生じない。特にこのフィルムは、高いΔnが必要とされる適用にとって適切でないか、または限定的に適切であるにすぎない。EP451905Aには、重合性の成分と、低分子の液晶材料との混合物から製造される異方性ゲルが記載されている。このゲルの特徴は低分子の液晶材料がポリマーの網状構造の周囲に連続相を形成することである。このポリマー安定化された液晶ゲル中で、低分子の液晶成分はまだ移動可能であり、かつ外力、たとえば電界の作用によって切り替えることができる。しかしこれは熱的および機械的安定性を有しておらず、従って安定した光学的異方性のポリマーフィルムとしては適切ではない。
【0007】
US6,181,395B1には、広帯域の円偏光子として使用されるフィルムが記載されている。重合性のコレステリック材料中の非重合性の液晶成分の分離により、組成の非線形の勾配がフィルム表面に対して垂直に生じる。つまり該フィルムは均質ではない。該フィルムの機械的安定性および光学的異方性については言及されていない。記載された特殊な例以外に、US6,181,395B1に記載されている、コレステリックな反射バンドの非線形のピッチを変更する効果を達成するために、LC材料をどのように選択しなくてはならないかの一般的な指示は記載されていない。ここから生じる、コレステリックな反射バンドの著しい拡大は、複屈折Δnにより理論的に設定される値Δλ/λ=Δn/nに依存しないで達成される。実施例において使用されるLC混合物は、ポリマー割合中に芳香族二環構造を有しておらず、従ってポリマーフィルム中で、この発明の意味での高い光学的異方性を保証するために適切ではない。
【0008】
できる限りわずかな合成コストで高い光学的異方性Δnを有する安定したポリマーフィルムを製造することができる重合性混合物を提供することが本発明の課題である。
【0009】
本発明の対象は、
A)モノマーまたはオリゴマー(A)、その際、モノマーまたはオリゴマー(A)のそれぞれは、(メタ)アクリレートエステル基、エポキシ基およびビニルエーテル基から選択される重合性官能基を少なくとも2つ有する、
B)液晶質のモノマーまたはオリゴマー(B)、その際、モノマーまたはオリゴマー(B)のそれぞれは、芳香族二環構造を有するメソゲン基を少なくとも1つ、ならびに(メタ)アクリレートエステル基、エポキシ基およびビニルエーテル基から選択される重合性官能基を正確に1つ有する、
C)芳香族二環構造を有するメソゲン基を少なくとも1つ有し、かつ、モノマーまたはオリゴマー(A)および(B)の重合性官能基と反応することができる基を有していないモノマー(C)を、重合性混合物に対して1〜50質量%未満
を含有する重合性混合物(P)である。
【0010】
意外なことに混合物(P)の重合により製造されるポリマー、特に該ポリマーからなるポリマーフィルム(F)は、液晶のモノマーまたはオリゴマーが類似の、しかしそれぞれ重合性の官能基を少なくとも1つ有するメソゲン基を有するか、あるいは液晶モノマーまたはオリゴマーが芳香族二環構造を有していない、文献において公知の組成からなるフィルムよりも50%まで高い光学的異方性を有することが判明した。光学的異方性ΔnはネマチックなLCポリマーに関しては有利には0.18より大きく、かつコレステリックなLCポリマーに関しては有利には0.16より大きく、かつ0℃〜80℃の温度変化において有利には10%より少なく変化する。
【0011】
意外なことに、非重合性の液晶成分(C)をすでにわずかに添加することにより、このLC混合物から製造されるポリマーフィルム(F)の光学的異方性を著しく向上することができることが判明した。このことは特に、この成分(C)のメソゲン基が、重合性の混合物成分と類似の化学構造ひいては類似の光学的分極率を有する場合にも該当する。その際、混合物(P)は有利には均質な相を形成する。この均質な相の秩序は有利にはネマチック、コレステリックまたはスメクチックである。完成したポリマーフィルム(F)中で、非重合性の液晶成分は有利には独自の連続的な相ではなく、有利には網状構造中に均一に分散しており、ポリマーフィルム(F)の均質性および機械的安定性は保証される。従って混合物中での非重合性の液晶モノマー(C)の割合は50%未満である。本発明の意味での非重合性の基は、その反応不活性によりたとえば(メタ)アクリレートエステル基、エポキシ基またはビニルエーテル基との混合物中で共重合の際に、一緒に反応しないか、またはわずかに反応するにすぎないアリル基のような官能性の基であってもよい。有利には重合性混合物(P)中のモノマー(C)は(メタ)アクリレートエステル基、エポキシ基、ビニルエーテル基、チオール基または重合もしくは共重合の際に一緒に反応するその他の基を有していない。
【0012】
これに対して、(メタ)アクリレートエステル基、エポキシ基およびビニルエーテル基と反応するため、群(C)のモノマーとして適切ではないその他の液晶化合物、たとえばWO96/25470に記載されているチオール化合物が存在する。WO96/25470ではこれらの液晶チオール化合物がラジカル重合を停止するため、ひいてはポリマー鎖の長さを調節するために使用されている。
【0013】
本発明の意味でのメソゲン基とは、分子中で液晶の特性を生じることができる化学的な基をよぶ。原則として文献中で公知の全てのメソゲン基が成分(A)、(B)および(C)のために適切である。定期的に更新される公知のメソゲン基のコレクションは、V. Vill et al.からデータバンクとしてLiqCrystの名称で刊行されている(LCI Publisher GmbH(Eichenstr. 3, D-20259 Hamburg)から入手可能)。有利には工業的な規模で合成により容易に得られ、かつポリマーフィルム(F)として適用するために十分な安定性を長い期間にわたって保証する化合物が得られるメソゲン基を使用する。このための例は、フェニル誘導体、ビフェニル誘導体、シアノビフェニル誘導体、ナフチル誘導体およびシアノナフチル誘導体をベースとするカルボン酸エステルおよびアルコールのような化学的構造要素ならびにこれらの基からなる組合せである。
【0014】
本発明の意味での芳香族二環構造は、単結合により直接結合している2つの単環式芳香族基であるか、または二環の芳香族基である。有利な芳香族二環構造はそれぞれ単結合により結合した、1,4−フェニレン、2,5−ピリジニレンおよび2,5−ピレニレンから選択される2つの単環式の基および芳香族の二環2,6−ナフチリデン、2,7−ナフチリデンおよび1,4−ナフチリデンであり、その際、これらの芳香族二環構造は置換されていてもよい。
【0015】
有利には該モノマーまたはオリゴマー(A)はメソゲン基を少なくとも1つ、および(メタ)アクリレートエステル、エポキシおよびビニルエーテルから選択される重合性の官能基を少なくとも2つ有する。
【0016】
有利なオリゴマー(A)および(B)はポリマー主鎖およびメソゲンな側基を有する。
【0017】
特に有利なオリゴマー(A)および(B)は、少なくとも2つの一般式(1)
[MRSiOq/2] (1)
[式中、相互に無関係にそのつどp=1およびq=2であるか、またはp=2およびq=1であり、
は、同一もしくは異なったC〜C10−炭化水素基、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基およびn−デシル基またはフェニルを表し、
Mは一般式(2)
−X−(A−X−R−A (2)
の同一もしくは異なったメソゲンな側基を表し、その際、
は、式(CHの基を表し、該式中、nは2〜10の値のうちの正数を表し、その際、相互に隣接していない1つもしくは複数のメチレン単位は酸素原子またはジメチルシリル基により置換されていてもよく、
は、化学結合または式(CHの基を表し、該式中、mは1〜13の値のうちの正数であり、その際、相互に隣接していない1つもしくは複数のメチレン単位は酸素原子またはジメチルシリル基により置換されていてもよく、
は、化学結合であるか、または基−O−、−COO−および−OCO−の二価の基から選択され、
は、化学結合および基−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CONH−、−HONC−、−C≡C−、−CH=CH−、−N=N(O)−および−N(O)=N−の二価の基の群から相互に無関係に選択される同一もしくは異なった結合基を表し、
は、相互に無関係に1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、2,5−ピリジニレン、2,5−ピレニレン、2,5−ピリミジニレン、5,2−ピリミジニレン、2,5−ジオキサニレン、5,2−ジオキサニレンの群からの二価の基から選択される同一もしくは異なった単環式の基、および芳香族の二環2,6−ナフチリデン、2,7−ナフチリデンおよび1,4−ナフチリデンを表し、その際、これらの基は置換されていてもよく、
は水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、シアノ基、アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルエチレンオキシ基、エポキシ基、ビニルエーテル基、コレスタン基、コレステリル基、ドリステリル基、ジアンヒドロヘキシット基、タルトレート基、フェニル基、シクロヘキサン基および1〜10個の炭素原子を有するアルケニル基の群から選択される末端基を表し、その際、1つもしくは複数の、相互に隣接していないメチレン単位は酸素原子またはジメチルシリル基により置換されていてもよく、かつ
aは2、3または4の値であってよい]の同一もしくは異なった単位を有するオリゴマーである。
【0018】
一般式(1)の単位からなる、特に有利なケイ素含有のオリゴマーは、シクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、テトラメチルジシロキサンおよび4〜20個の有利なケイ素原子数を有し、かつ末端基として有利にトリメチルシリル基を有する置換された線状のポリメチルシロキサンである。
【0019】
基Rとして特に有利であるのはメチル基である。
【0020】
オリゴマー(A)および(B)の特に有利なメソゲンの側基は一般式(3)
【0021】
【化1】

[式中、
は、酸素原子または1〜11個の炭素原子を有するオキシアルキレンオキシ基であり、該基中で1つもしくは複数の、隣接していないか、または酸素により隣接しているメチレン単位は酸素原子により置換されていてもよく、かつ
は、水素原子またはメチル基を表す]の基である。
【0022】
特に有利なモノマー(A)は一般式(4)
−X−R−(A−X−A−R−X−R (4)
[式中、R、X、X、AおよびAは一般式(2)に関して記載したものを表し、かつ
は、アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルエチレンオキシ基、エポキシ基およびビニルエーテル基の群の同一もしくは異なった基から選択され、かつ
bは1、2または3の値であってよい]の化合物である。
【0023】
特に有利なモノマー(B)は、一般式(5)
−X−R−(A−X−A (5)
[式中、R、X、X、A、Aおよびaは一般式(2)に関して記載したものを表し、かつ
はアクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルエチレンオキシ基、エポキシ基およびビニルエーテル基の群から、および1〜10個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基の群から選択され、該基中で1つもしくは複数の、相互に隣接していないメチレン単位は酸素原子またはジメチルシリル基により置換されていてもよい]の化合物である。
【0024】
有利には重合性混合物(P)は少なくとも5質量%、特に少なくとも10質量%および最大で95質量%、特に最大で80質量%のモノマーまたはオリゴマー(A)を含有する。
【0025】
有利には重合性混合物(P)は少なくとも5質量%、特に少なくとも10質量%および最大で95質量%、特に最大で80質量%の液晶モノマーまたはオリゴマー(B)を含有する。
【0026】
特に有利な液晶モノマー(C)は一般式(6)
−X−(A−X−A (6)
[式中、R、X、X、Aおよびaは一般式(1)および(2)に関して記載したものを表し、かつ
はカルボキシル基または1〜10個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基を表し、該基中で1つもしくは複数の、相互に隣接していないメチレン単位は酸素原子またはジメチルシリル基により置換されていてもよく、かつ
は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、シアノ基、コレスタン基、コレステリル基、ドリステリル基、ジアンヒドロヘキシット基、タルトレート基、フェニル、シクロヘキサン基および1〜10個の炭素原子を有するアルケニル基の群から選択され、該基中で1つもしくは複数の、相互に隣接していないメチレン単位は酸素原子またはジメチルシリル基により置換されていてもよい]の化合物である。
【0027】
有利には重合性混合物(P)は少なくとも5質量%、特に少なくとも10質量%、および最大で40質量%、特に最大で35質量%のモノマー(C)を含有する。
【0028】
重合性混合物(P)は場合により、重合性の官能性基を有するか、もしくは有していないキラルな成分(D)を含有していてもよい。特に有利なキラルな成分(D)は一般式(7):
−R11−A−(X−A−X−R10−K−R12−X−(A−X−A−R13−A (7)
[式中、
は、ジアンヒドロヘキシット誘導体およびタルトレート基の群から、および特にジアンヒドロソルビットまたはジアンヒドロマンニットから選択され、
10、R11、R12およびR13は相互に無関係にRと同じものを表し、
およびXは、相互に無関係にXと同じものを表し、
およびXは、相互に無関係にXと同じものを表し、
およびAは相互に無関係にAと同じものを表し、
およびAは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、シアノ基、アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルエチレンオキシ基、エポキシ、ビニルエーテル、フェニル基、シクロヘキサン基および1〜10個の炭素原子を有するアルケニル基の群から選択される同一もしくは異なった基を表し、その際、1つもしくは複数の、相互に隣接していないメチレン単位は酸素原子またはジメチルシリル基により置換されていてもよく、かつ
b、cは相互に無関係に0、1または2の値であってよい]の化合物である。
【0029】
コレステリック混合物中で、重合性混合物(P)は、キラルな成分のHTP(らせんねじり力)および所望の反射波長に依存して有利に少なくとも0.1質量%および最大で50質量%、特に最大で20質量%のキラルな成分”(D)”を含有している。
【0030】
成分(A)、(B)、(C)および(D)はそのつど1つの化合物であるか、または化合物の混合物であってもよい。
【0031】
重合性混合物(P)は場合により、開始剤、防止剤、促進剤、着色剤、カップリング剤および表面活性物質の群から選択される別の添加剤(E)を、液晶相の形成を妨げない質量割合で含有していてもよい。
【0032】
有利には重合性混合物(P)は少なくとも0.01質量%および最大で10質量%、特に最大で5質量%の添加剤(E)を含有する。
【0033】
液晶モノマーおよびオリゴマーの製造は、文献中に記載されている。光学的異方性ポリマー(F)および特に光学的異方性ポリマーフィルム(F)を重合性混合物(P)から製造するための、種々の連続的または不連続的な方法は同様に原則として公知である。その際、重合性混合物(P)を支持体上に施与し、配向させ、かつ引き続き化学反応、特に重合により固定する。有利には重合性混合物(P)の液晶相の温度範囲で配向させる。
【0034】
支持体表面上の重合性混合物(P)の施与は、溶液として、または溶剤不含の溶融液として、混合物のガラス転移温度より高い温度で、たとえばスピンコーティングにより、ナイフまたはローラーにより実施することができる。施与のために溶剤を使用する場合、溶剤をその後の乾燥工程で除去しなくてはならない。支持体上の乾燥したLC層の厚さはそのつどの適用の要求に依存する。ポリマーフィルム(F)をたとえばリターダ板として使用すべき場合、必要とされる厚さは、配向されたLC層の、要求される光学的リタデーションおよび光学的異方性からの商である。重合性混合物(P)がキラルな成分を含有するコレステリックなLCポリマーの場合、層厚さはコレステリックならせんのピッチの数ひいては反射バンドの形状を決定する。有利には乾燥したポリマーフィルム(F)の厚さは0.5μm〜500μm、特に有利には1μm〜50μmである。コレステリックなポリマーフィルム(F)の場合、層厚さは特に有利にはコレステリックならせんのピッチの三倍以上である。
【0035】
ポリマーフィルム(F)は、支持体上で片側が開放された層として調製することができるか、または第二の支持体により覆うことができる。溶融液の塗布における、および溶液からの、片側が開放されたポリマーフィルム(F)の調製は、たとえばEP358208AおよびEP617111Aに記載されている。2つの支持体の間でLCポリマーフィルムを連続的および不連続的に製造するための種々の方法が、たとえばEP601483AおよびEP631157Aに記載されている。支持体の湿潤または開放された表面におけるメソゲンの配向を改善するために、重合性混合物(P)はたとえばEP617111Aに記載されているように、たとえばレベリングの改善のために塗料の製造から公知であるように、わずかな質量割合で、添加剤(E)として表面活性物質を含有していてもよい。特に適切な表面活性物質はたとえばWacker-Chemie GmbHから塗料添加剤として市販されているオリゴシロキサンである。オリゴシロキサンはオリゴマーとして、自体液晶の特性を有していてもよい。ポリマーフィルム(F)が架橋後に支持体上に残留すべき場合、支持体上での付着は、同様に従来技術である、重合性混合物(P)中の適切なカップリング剤による支持体表面の状態に依存する。支持体上でのポリマーフィルム(F)の付着の改善は、支持体の適切な前処理、たとえばコロナ処理により達成することもできる。自体液晶の特性を有していない添加剤(E)は、液晶相の形成を妨げないような少量で添加することができるのみである。重合性混合物(P)中のメソゲンの配向は、たとえば材料を第二の支持体の塗布の際に、または施与の際に材料を剪断することにより、またはたとえば塗布の後に、メソゲンと相応して選択された支持体表面との相互作用により、または電界もしくは磁界により行う。これは有利にはそのつどの重合性混合物(P)のガラス転移温度もしくは融点より高い温度から澄明点(Klaerbeginn)の下までの温度範囲で生じる。容易な技術的方法を可能にするために、重合性混合物(P)の組成は有利には、光学的な配向温度が20℃〜150℃であるように調節する。
【0036】
メソゲンの配向を支持体表面との相互作用により行うべき場合、配向作用を改善するために適切な配向層を、公知の、文献に記載された被覆法、印刷法または浸漬法により支持体または支持体表面上に施与することができる。配向層または支持体は付加的な処理、たとえばラビング、配向を促進する表面構造により得られる。配向方向の、場所に依存する変化はたとえば公知の方法により配向層の構造化のためにμmからmmの範囲で、マスクにより偏光したUV光を用いた照射により可能である。液晶相のメソゲンと、その界面との間の勾配を達成するための適切な方法は同様に文献に記載されており、これはたとえば偏光したUV光による照射または傾斜した角度での無機材料の蒸着である。重合性混合物(P)から製造されるポリマーフィルム(F)が、製造後に支持体上に残留する場合、支持体として有利には、光学素子を製造するために公知である材料が適切である。特に有利であるのは、光を反射し、そのつどの適用に関連する波長領域で透明であるか、または半透明である支持体、たとえば多数の有機もしくは無機支持体、または金属支持体である。この制限は、ポリマーフィルム(F)を製造後に支持体から剥離する場合に該当する。この場合、表面上でわずかな付着を媒介するのみの支持体が特に有利である。支持体は平坦であっても、または湾曲していてもよい。特に有利には、ポリマーフィルム(F)の製造、加工および適用の温度で機械的に安定している支持体を使用する。とりわけ有利であるのは、ガラス板または石英板、ポリマーフィルム、たとえばポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンナフタレートまたはポリイミドおよび研磨した金属表面である。必要な場合には該支持体が付加的な配向補助手段、たとえばポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコールまたは酸化ケイ素からなる層を有していてもよい。
【0037】
配向を行った後で、重合性混合物(P)を重合するか、または共重合する。その際、(メタ)アクリレートエステル、エポキシおよびビニルエーテルからなる群から選択される重合性の官能基を有する混合成分を三次元に架橋させる。この架橋は有利には、過酸化物により、UV光により、または高エネルギーの電磁線により、または熱により発生する遊離基により行う。しかしまた、直接ケイ素に結合した水素原子を有する架橋剤を用いて白金金属触媒による触媒反応下で行うか、またはカチオンもしくはアニオンにより行うこともできる。特に有利であるのは、EP358208Aに記載されている、UV光による架橋である。得られるポリマーフィルムは支持体と一緒に積層体の形で、片側が開放されたフィルムとして、または支持体を除去した後で自由なフィルムとして使用することができる。
【0038】
得られる光学的異方性ポリマーフィルム(F)の有利な適用形は光学的異方性の小板であり、これを以下の本文ではLC小板ともよぶ。これらの光学的異方性の小板はポリマーフィルム(F)を粉砕することにより製造することができる。EP601483Aには、重合したコレステリックなフィルムを支持体から剥離し、かつ引き続き得られた粗塊を粉砕することにより、着色光を反射する、キラルな相を有する液晶構造の顔料を製造することができる方法が記載されている。その後、該顔料を適切なバインダー系に混合し、かつ支持体上に施与することができる。DE19619460Aには、可視光に関して負の屈折率異方性を有する小板を類似の方法により製造し、かつ使用することができる方法が記載されている。同様にポリマーフィルム(F)を光学的異方性の小板に粉砕し、かつ引き続きバインダー中で支持体上に施与することができる。
【0039】
高い光学的異方性を有するポリマーフィルム(F)はたとえば、文献に記載されているように、液晶表示の特性を改善するための光学的なリターダフィルムとして適用することができる。支持体および配向層の選択ならびに重合性混合物(P)の組成に依存して、配向の異なった形状を得ることができ、これを液晶表示、たとえばTNまたはSTNディスプレイ中で有利に使用することができる。ポリマーフィルム(F)中のメソゲンの可能な配向の例は、全てのメソゲンの均質かつ平坦な配向、1つの表面から対向面への配向が連続的に平坦からホメオトロピックへと連続的に変化するハイブリッド配向、全てのメソゲンの完全にホメオトロピックな配向またはメソゲンがたとえばキラルな物質によるドーピングにより、もしくは相互に回転した配向層により、TNもしくはSTNセルと同様に配向している、面法線を中心としてねじれた平坦な配向である。
【0040】
光学的異方性のポリマーフィルム(F)を製造するための上記のプロセスをわずかに変更することによって、別の適用を実現することができる。たとえば重合性の官能基および重合もしくは共重合の際に一緒に反応しないモノマーを含有する混合成分に加えて、メソゲンに沿って配向する、異方性の吸収挙動を有する二色性の着色分子を含有する重合性混合物(P)を使用する場合、吸収偏光フィルターを製造することができる。その際、ポリマーフィルム(F)は、その高い秩序パラメータによって、光の両方の偏光状態の間での改善されたコントラスト挙動を可能にすることによって優れている。屈折率の局所的な変更に起因するデジタルもしくはアナログの光学的なメモリ媒体は、メソゲン基の配向を架橋前に局所的に変更することによって製造することができる。このことはたとえば、個々の照射工程の間に外部から作用する配向力またはポリマーフィルム(F)の温度を変更する場合、あるいはたとえばレーザーによるポリマーフィルム(F)の局所的な加熱により、またはたとえばUV誘導される異性化によるHTP含有のキラル物質(D)の局所的な変更により、UV線に対して透過性でないマスクによる局所的なUV架橋によって達成することができる。もう1つの可能性は、たとえばサブピクセルを生じるためにLCDの製造の際に適用されるような、配向層の構造化である。ポリマーフィルム(F)はここでは特に適切である。というのも、これらの光学的なメモリ媒体にとって高い光学的異方性は、書き込まれた情報単位の間のコントラストを改善するために有利だからである。
【0041】
重合性混合物(P)が、キラルなネマチック相を誘導する付加的な成分(キラル物質)を含有する場合、ポリマーフィルム(F)は偏光および波長選択的な光学フィルターまたは相応するLC小板を製造するためにも使用することができる。キラル物質はネマチック物質において、右巻きもしくは左巻きのらせん構造を生じ、これは同一のヘリシティを有する円偏光を反射する。反射バンドの中心波長を以下では反射波長λとよぶが、これは屈折率nに比例し、かつキラル物質の濃度が上昇すると共に低減する、らせん構造のピッチに比例する。さらに反射波長は観察角度に依存する。バンドΔλ/λの相対的な幅はポリマーフィルム(F)の相対的な光学的異方性Δn/nにより与えられる。文献から公知の多くの場合ではΔλは反射波長の5%〜15%である。文献から、重合性混合物(P)のために適切な、数多くのキラル物質が公知である。左らせんの材料のためにはしばしば、キラリティ以外に良好なメソゲン特性ももたらすコレステリン化合物が用いられる(たとえばMakromol. Chem. 179, 829-832 (1978)を参照のこと)。たとえばUS A 4,996,330およびEP626386Aから公知の酒石酸イミド誘導体も適切である。コレステ−8(14)−エン−3−オール(ドリステロール)もしくはその誘導体を基礎とする適切な右らせんのステロイド系は、EP664826Aに記載されている。EP739403AおよびEP749466Aから、架橋性モノマーのヘキシット誘導体またはモノマーのヘキシット誘導体とその他の液晶化合物との混合物が公知であり、これらはモノマーのドーパントとしてコレステリックな網状構造を製造するために使用される。US5,827,449には、液晶のオルガノシロキサンおよびジアンヒドロヘキシット誘導体を左もしくは右らせんのキラルな添加剤として含有する液晶混合物が記載されている。その際、ジアンヒドロソルビド、ジアンヒドロマンニットおよびジアンヒドロイジットの群からの化合物が特に適切である。キラルな添加剤を含有する、このようなコレステリックな重合性混合物(P)から上記の方法によりポリマーフィルム(F)およびLC小板を製造することができる。高い光学的異方性を有するポリマーフィルム(F)の利点は、反射バンドの比較的大きな幅であり、これは反射の強化につながる。コレステリックなバンドの反射波長が可視光の波長領域にあるようにキラル物質の濃度を選択すると、このポリマーフィルム(F)およびLC小板は装飾的な適用のために著しく適切である。というのも、観察角度に依存する色の印象および金属光沢に基づいて特別な色彩効果が生じるからである。有価印刷物および標章保護における適用の場合、これらの色彩効果および反射光の偏光に基づいてさらに、許可されない複製に対する良好な保護が達成される。光学における適用のための別の例はフィルター(EP302619A)および光学的に結像する、波長および偏光選択的な、可視光ないし近紫外線までのための素子である(EP631157A)。これらの光学素子の可能な適用形は、たとえばビームスプリッタ、鏡およびレンズである。キラル物質の濃度が低い場合、ポリマーフィルム(F)は、円偏光を赤外線領域(IR)で反射するコレステリックなフィルターを製造するために特に適切である。湾曲した支持体を使用することにより特に、IR領域で光学的に結像する、波長および偏光選択的な素子の製造が可能になる。多くの適用にとって特に有利であるのは、可視光領域で透明かつ無色であるIR反射ポリマーフィルム(F)およびLC小板である。このために下側の帯域端の波長は有利には750nmを上回る。このIR層の適用はたとえば機械で読み取り可能な、人間の目で見ることができない銘刻または標識、たとえば有価印刷物上の安全標識または標章保護においてである。この適用の場合、特に反射したIR線の円偏光は有利である。というのも、これは再現することが困難な安全性の標識だからである。IR反射性ポリマーフィルム(F)およびLC小板のもう1つの適用は、熱線に対する無色および透明な保護層、たとえば建物または車両のための熱保護用ガラスである。この適用の場合、できる限り全ての熱線を反射することが重要であるので、ここでは有利には、左巻きおよび右巻きのらせんの偏光を反射する、コレステリックならせんの、反対方向の回転を有する2つの相を組み合わせる。この適用のために特に有利には、その反射バンドがフィルムの製造の際にたとえばらせん構造の可変なピッチを生じるための、以下に言及する措置により付加的に拡大した、IRでの反射波長を有するコレステリックなポリマーフィルム(F)を使用する。偏光を用いて作動する光学装置、たとえば液晶表示では、コレステリックなポリマーフィルムは有利には無色の、もしくは白色の光のための円偏光素子として使用することができる。その際、高い光学的異方性を有するポリマーフィルム(F)は特に適切である。というのも、該フィルムはより大きなバンド幅により、より多くの偏光を反射するからである。US5,235,443Aには、コレステリックな液晶からなる層を、円偏光された光の選択的な反射の利用によりプロジェクタの光効率の向上のために適用することができることが示されている。光の両方の偏光状態を相互に相対的に波長の四分の一だけ遅延させる複屈折媒体(λ/4−フィルム)と組み合わせることにより、直線的な偏光の発生もまた可能である。このようなλ/4−フィルムは同様にポリマーフィルム(F)により、キラルな成分(D)を用いずに実現することができる。光学的な特性を広いスペクトル範囲にわたって調節することを可能にする、複数のコレステリックなフィルムをさらに組み合わせることは、たとえばR. Maurer et al.において表題"Polarizing Color Filters made from Cholesteric LC Silicones"(SID International Symposium Digest of Technical papers、第21巻、Las Vegas、1990年、第110〜113頁に記載されている。実施例ではここで特に、異なったピッチを有する複数の層を組み合わせることにより250nmを上回るバンド幅を有し、光の全ての可視スペクトル範囲をカバーする偏光子を製造している。このような組合せは白色光のための反射的な直線偏光子として使用することができる。
【0042】
R. Dreherの理論的な考察であるSolid State Communications、第12巻、第519(1973)、同様にS. Mazkedian, S. Melone, F. Rustichelli, J. Physique Colloq. 36, C1-283(1974)およびL. E. Hajdo, A. C. Eringen, J Opt. Soc. Am. 36, 1017(1976)は、そのピッチが直線的にフィルムの層厚さにわたって変化するらせんの層構造は、同様に円偏光を広いバンド領域において反射する能力を有することを示している。このようなピッチ勾配を生じるための、ポリマーフィルム(F)のためにも適切な、特別な方法は、たとえばEP606940A、EP875525AまたはEP885945Aに記載されている。重合性の混合物(P)はこの場合、比較的高い光学的異方性によりすでに最初から反射帯域の比較的広い幅を有しており、かつ非重合性の成分によりポリマーの網状構造の、よりわずかな厚さを形成し、このことにより上記の方法によってバンドの付加的な拡大がさらに支援されるという利点を有する。EP606939Aには、LCDにおける光の強化のために、このようなコレステリックなフィルムを、偏光解消散乱フィルムと組み合わせて使用することができる方法が記載されている。コレステリックなバンドの形状をLCDまたはその他の光学装置における技術的な要求に適合させるために、それぞれが拡大した反射バンドを有していてもよい複数のLCポリマーフィルムを組み合わせることが有利な場合がある。
【0043】
コレステリックな液晶は重合していない状態で熱変色性である、つまりコレステリックな相の範囲での温度変化の際に、らせんの分子構造のピッチ、ひいては反射波長が変化する。US4,637,896およびR. Maurer et al.の"Cholesteric Reflectors with a Color Pattern"、SID International Symposium Digest of Technical Papers、第25巻、San Jose、6月14〜16日、1994年、第399〜402頁には、フィルムの個々の範囲を異なった温度でマスクにより連続的に化学線により照射することによって、LCポリマーフィルムの平面な、カラー構造化を達成するためにこの効果を利用することができる方法が記載されている。液晶相の温度範囲の広さが十分であれば、この方法で赤色、緑色および青色のピクセルを有するカラーフィルターおよび偏光フィルターを製造することができ、これらをたとえばLCD−カラーフィルターとして使用することができる。高い光学的異方性を有するポリマーフィルム(F)はこの適用のために特に好適である。というのも、このことにより幅100nmまでの反射バンドを実現することができるからである。バンド幅のこの範囲はLCD中で個々のカラーピクセルの最大の明るさおよび色の飽和度のために有利である。逆向きのヘリシティの白色光のための円偏光子との組合せにおいて、このような構造化されたカラーフィルターはさらに、LCDまたは偏光を用いて作動するその他の光学装置の明るさをさらに向上するために役立つ。ポリマーフィルム(F)の前記の適用のいくつかにおいては、連続したフィルムの代わりにLC小板を有する層を使用することも可能である。特別な光学的効果はこの方法で実質的によりわずかなコストで適用することができる。というのも、適用者が、配向および架橋工程を必要とする、ポリマーフィルム(F)の高価な製造を自分で実施する代わりに、通常の印刷および被覆技術を使用することができるからである。
【0044】
このためにたとえばEP601483AまたはEP685749Aに記載されているように、ポリマーフィルム(F)からなるLC小板を適切なバインダー系に混合することができる。バインダー系の要求される特性、特に光学的特性は、LC小板の意図する適用に依存する。キラルな添加剤を含有するLC小板の偏光および波長選択的な反射を利用する適用の場合、有利には少なくとも反射波長の範囲で光学的に透明であるバインダーを使用する。光学的異方性を可視光領域で利用する適用のためには、全ての可視光領域で無色および透明であるバインダーが有利である。光学素子のためには有利には、その平均屈折率が硬化後にLC小板の平均的な屈折率に類似しているバインダー系を使用する。LC小板を含有する連続的な層の製造のために、有利には硬化性のバインダー系が適切である。あるいはまた、特殊な適用のためには非硬化性のバインダー、たとえば油およびペーストを使用することができる。特に有利であるのは、LC小板の物理的特性を変化させないか、または定義されたように変化させるのみのバインダー系である。適切なバインダー系はたとえば重合性樹脂(UP樹脂、シリコーン樹脂、エポキシド樹脂)、分散液、溶剤を含有する塗料または水性塗料または全ての透明なプラスチック、たとえばポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートである。これらの等方性バインダー以外に、液晶系、たとえば液晶ポリマーまたは重合性液晶樹脂、ならびに重合性LCシリコーンをバインダーとして使用することもできる。特定の光学的特性を有する層またはフィルムを製造するために、ポリマーフィルム(F)からなるLC小板を液状のバインダーに撹拌導入する。小板の配向は、液晶質の着色顔料を含有するコーティング(たとえばEP601483A)の場合のように、顔料−バインダー混合物の薄膜を支持体上に施与する際に、または混合物の押し出しの際に、層の表面に対して平行に行われる。そのつどの適用の要求およびバインダーの特性に依存して、フィルムを硬化後に支持体から剥離することができる。ポリマーフィルム(F)からなるLC小板の適用は、ポリマーフィルム(F)の場合と同様に、紫外線から赤外線の範囲までの電磁波の位相リタデーションまたは偏光および波長選択的な反射であってよい。LC小板の使用のための1例は、湾曲した支持体上の、光学的に結像する、波長および偏光選択的な素子の製造である(EP685749A)。装飾的な目的のためには、コレステリックなバンドの反射波長が可視光の波長領域にあるように、キラル物質の濃度を選択する場合に、ポリマーフィルム(F)からなるLC小板が特に適切である。有価印刷物および標章保護における適用の場合、観察角度に依存する色の印象および反射光の偏光は付加的な安全性の指標である。左巻きおよび右巻きのらせん構造を有するLC小板を同時に使用する場合、三次元的な印刷を製造することができる(US5,599,412)。たとえば紙幣、有価印刷物の偽造に対する保護のための安全性の標識を製造するために、または標章保護において、ポリマーフィルム(F)からなるLC小板を特に有利に使用することができる。というのも、これらは多くの場合、比較的わずかなコストでこれらの適用の際にすでに存在する印刷工程またはその他の被覆工程に組み込むことができるからである。キラル物質の濃度が低い場合に得られるIR反射性のLC小板は、このような適用のために可視光の範囲で透明および無色である。反射帯域の下側の帯域端の波長はこの場合、有利には750nmを上回る。このようなLC小板は人間の目で見ることができない標識を製造するために適切であり、これはIR検出器を有する装置のIR領域におけるその良好な反射により記録することができる。この場合、反射波長以外に、反射光線の円偏光もまた付加的な安全性の特徴として検出することができる。ポリマーフィルム(F)からなるCLC小板はこの適用のために有利にはIR透過性のバインダー中で標識すべき支持体上に施与される。
【0045】
ポリマー(F)は様々な光学的適用、たとえば電磁線のための波長選択的な光学素子、電磁線のための位相リタデーションを有する光学素子および電磁線のための偏光選択的な光学素子のための使用に適切であり、これらは液晶表示装置中で使用することもできる。
【0046】
近紫外線から赤外線の範囲の電磁線のための波長選択的な光学素子はで、光学的異方性のポリマーフィルム(F)または該フィルムからなる小板を使用して製造することができ、その際、重合性の混合物(P)は少なくとも1つのキラルな成分または少なくとも1つの着色剤を含有する。電磁線のための位相リタデーションを有する光学素子および電磁線のための偏光選択的な光学素子は、光学的異方性のポリマーフィルム(F)または該フィルムからなる小板を使用して製造することができる。
【0047】
光学的異方性のポリマーフィルム(F)または該フィルムからなる小板または光学的異方性のポリマーフィルム(F)を使用して製造された少なくとも1つの光学素子を有する液晶表示装置を製造することができる。特にこれは2つの電極の間に配置された液晶材料、場合により別の光学的な部材、たとえば光源、鏡、偏光子、リターダ、カラーフィルターおよび光学的なリタデーションを生じるための少なくとも1つのフィルムまたは偏光を生じるか、もしくは偏光の収率を向上するための少なくとも1つのフィルムまたは着色光を選択するための少なくとも1つのフィルムを有する液晶装置であり、その際、これらのリタデーションフィルムまたは偏光フィルムまたはカラーフィルターは光学的異方性のポリマー(F)を使用して製造される。
【0048】
実施例:
これらの実施例において、その他の指示がない場合には、全ての量およびパーセンテージの記載は質量に対するものである。実施例中で使用される混合成分およびこれらの合成は従来技術から公知である。具体的には次のとおりに製造し、かつ使用した:
M.1:重合性の基を2つ有する化合物ヒドロキノン−ビス−(4−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート)(EP261712A)を、EP1059282Aからの方法により製造した。ネマチック相の温度範囲は93℃〜162℃である。
【0049】
【化2】

【0050】
M.2:重合性の基を1つ有する液晶化合物を、M. Portugall et al., Macromol. Chem. 183 (1982) 2311に記載されているように製造した。
【0051】
M.2.1:133℃〜171℃のネマチック相を有する4−アクリロイル安息香酸−4′−ビフェニルエステル(104℃まで過冷却可能)
【0052】
【化3】

【0053】
M.2.2:66℃〜93℃の、過冷却可能なネマチック相を有する、US4,293,435、例1.2.4による4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−4″−ビフェニルエステル(104℃まで過冷却可能)
【0054】
【化4】

【0055】
M.2.3:122℃〜219℃のネマチック相を有する4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−(4″−シアノビフェニル)−エステル(90℃まで過冷却可能)
【0056】
【化5】

【0057】
M.2.4:111℃〜130℃のネマチック層を有する4−(アクリロイルオキシブトキシ)安息香酸−(6−シアノナフト−2−イル)−エステル(25℃まで過冷却可能)
【0058】
【化6】

【0059】
M.3:M.1およびM.2からの化合物と重合する基を有していないメソゲンな化合物を、EP60335Aに記載されている方法により製造した。
【0060】
M.3.1:139℃〜142℃のネマチック相を有する4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステル(129℃まで過冷却可能)
【0061】
【化7】

【0062】
M.3.2:105℃から260℃を超えるネマチック相を有するEP446912Aによる4−アリルオキシ安息香酸−(4′−シアノビフェニル)エステル(80℃まで過冷却可能)
【0063】
【化8】

【0064】
M.3.3:121℃〜270℃を超えるネマチック相を有する4−ブトキシ安息香酸−(4′−シアノビフェニル)エステル(101℃まで過冷却可能)
【0065】
【化9】

【0066】
M.3.4:145℃〜188℃のネマチック相を有する4−アリルオキシ安息香酸−(6−シアノナフト−2−イル)−エステル(132℃まで過冷却可能)
【0067】
【化10】

【0068】
M.3.5:88℃で融点を有する4−アリルオキシ安息香酸−4′−メトキシフェニルエステル(82℃までの融点の過冷却可能なネマチック相)
【0069】
【化11】

【0070】
M.4:EP1046692A1による重合性のキラル物質2,5−ビス−[4−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ベンゾエート]−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール
【0071】
【化12】

【0072】
例1:
例1に関する試験の範囲で特に時間分解測定を実施し、その際、重合の間の光学的異方性の低下を直接追跡することができた。
【0073】
a)化合物ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)1.45g(30%)、化合物4−アクリロイル安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.2.1)0.97g(20%)、化合物4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.3.1)2.37g(49%)、光開始剤2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1(Ciba Spezialitaetenchemie GmbH、LampertsheimからIrgacure (R)として入手可能)50mg(1%)および安定剤2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)10mg(0.2%)を溶融液として、均質な混合物が存在するまで120℃で撹拌した(混合物1a)。2枚のガラス板にポリビニルアルコールからなる配向層をそれぞれ施与し、該層をビロード布(Samttuch)で一方向にラビングした。ネマチックなLC混合物1a 5mgを120℃で1枚のガラス板上の配向層上に施与し、かつラビング方向が逆向きとなり、かつ平行であるように第二の板で覆った。ガラス製のスペースホルダーを使用して板に均一な圧力をかけることによって、配向層の間に厚さ約10μmのフィルムが残留するように該混合物を分散させた。該フィルムを120℃で数分間、完全に透明になるまで熱処理した。
【0074】
このフィルムの光学的異方性を633nmの光波長でSenarmont法を用いて測定した。測定装置はHe−Ne−レーザーおよびビーム方向で偏光子としてのグラン・トムソンプリズム、顕微鏡−加熱テーブル中で120℃の温度に維持される試験体、λ/4−小板、検光子としての、光線軸を中心として回転することができる、もう1つのグラン・トムソンプリズムおよびフォトダイオードからなる。最大限可能な感度を達成するために、試験体に対する検光子の角度は、レーザービームによる配置の透過が最小限になるように調節する。レーザー光線は回転するダイヤフラム(Lochblende)により時間を定めた。透過は、ロックイン・増幅器に接続されているフォトダイオードの流により電子工学的に記録される。このようにして光学的異方性における変化を時間的に追跡することができる。
【0075】
架橋していないフィルムの光学的なリタデーションとして2200nmが測定され、これは後から測定した10.6μmのフィルム厚さの場合、Δn=0.208の光学的異方性に相応する。次いで該試料を測定しながらUVA光(たとえば20mW/cm)で照射した。数秒以内にダイオード流は2.1nAから2.5nAへとわずかに増大し、かつその後は一定していた。相応するΔnの変化は1%よりも小さく、ひいては約3%の光学的異方性の絶対値に関する測定誤差よりも小さい。測定点における架橋したフィルムの正確な厚さを引き続き薄層における干渉に基づいてUV−VISスペクトロメータ(Perkin-ElmerのLamda 19)中で測定した。LCポリマー混合物1aの第二の、完全に架橋した試験体の光学的異方性Δnはさらに、同様に633nmの波長を有するHe−Ne−レーザーを有するプリズム結合器(Metricon Model 2010)を用いて直接測定した。このために、UV照射後にガラス板の一枚をLC層から剥離した。測定値Δn=0.212は測定誤差の範囲内でSenarmont法からの値と一致する。
【0076】
b)本発明によらない
ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)3g(60%)、4−アクリロイル安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.2.1)2g(40%)、光開始剤Irgacure (R) 907 50mg(1%)および安定剤BHT10mg(0.2%)を溶融液として、均質な混合物が存在するまで120℃で撹拌した(混合物1b)。2枚のガラス板にポリビニルアルコールからなる配向層をそれぞれ施与し、該層をビロード布を用いて一方向でラビングした。ネマチックなLC混合物1b 5mgを120℃でガラス板の1枚の配向層上に施与し、かつラビング方向が逆向きになり、かつ平行であるように第二のガラス板で覆った。配向層の間に厚さ約10μmのフィルムが残留するまで、板に均一な圧力をかけることによって混合物を分散させた。該フィルムが完全に透明になるまで、120℃で数分間、熱処理した。
【0077】
光学的なリタデーションを例a)におけるように、Senarmont法を用いて測定した。架橋していないフィルムに関しては2130nmが測定され、これは後から測定した10.9μmのフィルム厚さの場合、Δn=0.195の光学的異方性に相応する。次いで試験体を例a)におけるように、測定しながらUVA光で照射した(図1の開始点は約3秒)。数秒以内に、ダイオード流は著しく上昇し、かつその後は一定していた。試験体の光学的リタデーションは最後にΔn=0.149で1620nmであった。この測定値を後からΔnの直接的な測定によりプリズム結合器中で検証した。測定点における架橋したフィルムの厚さは薄層における干渉に基づいてUV−VISスペクトロメータ中で測定した。図1中でダイオード流から誘導される光学的異方性Δnを時間の関数としてプロットし、かつ例1a)に関して相応する曲線を用いて比較した。1a)に関する曲線がほぼ一定している一方、1b)では24%のΔnの低下が観察される。
【0078】
c)本発明によらない
化合物ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)1.45g(30%)、化合物4−アクリロイル安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.2.1)0.97g(20%)、化合物4−アリルオキシ安息香酸−4′−メトキシフェニルエステル(M.3.5)2.37g(49%)、光開始剤Irgacure (R) 907 50mg(1%)および安定剤BHT10mg(0.2%)を溶融液として、均質な混合物が存在するまで120℃で撹拌した(混合物1d)。2枚のガラス板にポリビニルアルコールからなる配向層をそれぞれ施与し、該層をビロード布を用いて一方向でラビングした。ネマチックなLC混合物1c 5mgから例a)におけるように、2枚のガラス板の間にラビングされたポリビニルアルコールからなる配向したフィルムを製造した。該フィルムが完全に透明になるまで、90℃で数分間、熱処理した。光学的なリタデーションをSenarmont法を用いて測定した。架橋していないフィルムに関しては1890nmが測定され、これは後から測定した10.9μmのフィルム厚さの場合、Δn=0.173の光学的異方性に相応する。次いで試験体を例a)におけるように、測定しながらUVA光で照射した。数秒以内に、ダイオード流は著しく上昇し、かつその後は一定していた。試験体の光学的リタデーションは最後にΔn=0.163で1780nmであった。Δnに関するこの測定値をさらにプリズム結合器中で検証した。
【0079】
d)ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)2.1g(42%)、4−アクリロイル安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.2.1)1.4g(28%)、4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.3.1)1.5g(30%)、光開始剤Irgacure (R) 907 50mgおよび安定剤BHT10mgを溶融液として、均質な混合物が存在するまで120℃で撹拌した(混合物1c)。例1a)におけるように、この試験体をガラス板の間で配向させ、かつ架橋させた。ガラス板を除去した後に、633nmで光学的異方性Δnをプリズム結合器(Metricon Model 2010)により直接測定した。その結果のΔn=0.183は架橋したLCポリマー混合物1b)の値を23%上回っていた。
【0080】
d)製造されたLCポリマーフィルムの機械的特性を、ナノインデンター装置を用いて試験した(Micro MaterialsのNanoTest 600)。このために(1−x)・ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)60%、(1−x)・4−アクリロイル安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.2.1)40%、(x・100%)4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.3.1)およびそのつど光開始剤Irgacure (R) 907 1%および安定剤BHT0.2%からなる一連の混合物を製造した。混合物を溶融液として120℃で均質に撹拌し、かつその小さい試験体を例1a)におけるように、ガラス板の間で配向させ、かつUVランプによる照射によって架橋させた。引き続きガラス板の1枚を剥離した。開放されたポリマーフィルムの硬度をベルコビッチのダイヤモンドチップを用いて測定し、該チップは測定の際に、厚さ約11μmのフィルム中に約1μm押し込まれた。第1表には室温での硬度Hが非重合性成分4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステルの質量割合xの関数として記載されている。硬度は、約30%の4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステル割合まで、ほぼ一定している。さらにポリマーフィルムの硬度および機械的安定性は著しく低下し、このことは構造の変化を示唆している。偏光顕微鏡中で、フィルムの材料組成は室温で4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステル50%以上が不均一であることが観察された。というのも、重合していない成分の割合が結晶化し始めるからである。従ってポリマーフィルム(F)に関してこの特殊なLC混合物の場合、30%から最大で40%の4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステルの割合が有利である。
【0081】
【表1】

【0082】
例2
ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)2.1g(42%)、4−アクリロイル安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.2.1)1.4g(28%)、4−ブトキシ安息香酸−(4′−シアノビフェニル)エステル(M.3.3)1.5g(30%)、光開始剤Irgacure (R) 819(Ciba Spezialitaetenchemie GmbH、Lampertsheim)50mgおよび安定剤BHT10mgを溶融液として、均質な混合物が存在するまで120℃で撹拌した(混合物2)。このネマチックなLC混合物5mgを例1a)におけるように、配向層を備えた2枚のガラス板の間に施与し、かつ厚さ約10μmのフィルムが残留するまで分散させた。フィルムが完全に透明になるまで120℃で数分間熱処理し、かつ次いでUVA光(約100mW/cm)を用いて架橋させた。ガラス板の1枚を除去した後に633nmで光学的異方性Δnをプリズム結合器(Metricon Model 2010)を用いて直接測定した。その結果のΔn=0.196は架橋したLCポリマー混合物1b)の値を32%上回っていた。
【0083】
例3
ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)1.5g(30%)、4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−4″−ビフェニルエステル(M.2.2)1.75g(35%)、4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.3.1)1.75g(35%)、光開始剤Irgacure (R) 907 50mgおよび安定剤BHT10mgを溶融液として、均質な混合物が存在するまで120℃で撹拌した(混合物3)。このネマチックなLC混合物5mgを例1a)におけるように、配向層を備えた2枚のガラス板の間に施与し、かつ厚さ約10μmのフィルムが残留するまで分散させた。該フィルムが完全に透明になるまで90℃で数分間熱処理した。633nmでの光学的リタデーションを、前記のように、Senarmont法を用いて測定した。架橋していないフィルムに関して2190nmが測定され、これは後からUV−VISスペクトロメータ中で測定した10.9μmのフィルム厚さでΔn=0.201の光学的異方性に相応する。UVA光による照射の間に光学的異方性はΔn=0.193の最終値までわずかに低下した。
【0084】
例4
a)ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)685mg(30%)、4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−4″−ビフェニルエステル(M.2.2)804mg(35%)、4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.3.1)806mg(35%)、光開始剤Irgacure (R) 819(Ciba Spezialitaetenchemie GmbH、Lampertsheim)23mgおよび安定剤BHT6mgを溶融液として、均質な混合物が存在するまで140℃で撹拌した(混合物4a)。このネマチックなLC混合物5mgを例1a)におけるように、配向層を備えた2枚のガラス板の間に施与し、かつ厚さ約10μmのフィルムが残留するまで分散させた。該フィルムが完全に透明になるまで90゜で数分間熱処理し、かつ次いでUVA光(約100mW/cm)を用いて架橋させた。ガラス板の一枚を剥離した後、LCポリマーフィルムの光学的異方性をプリズム結合器(Metricon Model 2010)により測定し、633nmでΔn=0.211の結果が得られた。
【0085】
b)(本発明によらない)比較のために同じ方法でヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)1.056g(50%)、4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−4″−ビフェニルエステル(M.2.2)1.058g(50%)、光開始剤Irgacure (R) 819 22mgおよび安定剤BHT4mgからポリマーフィルムを製造した。633nmでプリズム結合器を用いて測定し、90℃で配向させ、かつ架橋させた試験体の光学的異方性はΔn=0.171であった。
【0086】
例5
a)ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)740mg(30%)、4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−(4″−シアノビフェニル)−エステル(M.2.3)868mg(35%)、4−アリルオキシ安息香酸−(4′−シアノビフェニル)エステル(M.3.2)865mg(35%)、光開始剤Irgacure (R) 819 25mgおよび安定剤BHT4mgを溶融液として、均質な混合物が存在するまで150℃で撹拌した(混合物5a)。このネマチックなLC混合物5mgを例1a)におけるように、配向層を備えた2枚のガラス板の間に施与し、かつ厚さ約10μmのフィルムが残留するまで分散させた。該フィルムが完全に透明になるまで150℃で数分間熱処理し、かつ次いでUVA光(約100mW/cm)を用いて架橋させた。ガラス板の一枚を剥離した後に、LCポリマーフィルムの光学的異方性をプリズム結合器(Metricon Model 2010)により測定し、633nmでΔn=0.248の結果が得られた。
【0087】
b)(本発明によらない)比較のために同じ方法で、ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)740mg(74%)、4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−(4″−シアノビフェニル)−エステル(M.2.3)248mg(25%)、光開始剤Irgacure (R) 819 10mgおよび安定剤BHT3mgからポリマーフィルムを製造した。633nmでプリズム結合器を用いて測定した、145℃で配向させ、かつ架橋させた試験体の光学的異方性はΔn=0.177であった。
【0088】
例6
a)ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)660mg(30%)、4−(アクリロイルオキシブトキシ)安息香酸−(6−シアノナフト−2−イル)−エステル(M.2.4)770mg(35%)、4−アリルオキシ安息香酸−(6−シアノナフト−2−イル)−エステル(M.3.4)771mg(35%)、光開始剤Irgacure (R) 819 23mgおよび安定剤BHT5mgを溶融液として、均質な混合物が存在するまで140℃で撹拌した(混合物6a)。このネマチックなLC混合物5mgを例1a)に記載されているように、配向層を備えた2枚のガラス板の間に施与し、かつ厚さ約10μmのフィルムが残留するまで分散させた。該フィルムが完全に透明になるまで130℃で数分間、熱処理し、かつ次いでUVA光(約100mW/cm)を用いて架橋させた。ガラス板の一枚を剥離した後、LCポリマーフィルムの光学的異方性をプリズム結合器(Metricon Model 2010)を用いて測定し、633nmでΔn=0.225の結果が得られた。
【0089】
b)(本発明によらない)比較のために同じ方法で、ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)1.01g(50%)、4−アクリロイルオキシブトキシ)安息香酸−(6−シアノナフト−2−イル)エステル(M.2.4)1.02g(50%)、光開始剤Irgacure (R) 819 21mgおよび安定剤BHT5mgからポリマーフィルムを製造した。633nmでプリズム結合器を用いて測定した、110℃で配向させ、かつ架橋させた試験体の光学的異方性はΔn=0.178であった。
【0090】
例7
ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)626mg(31%)、4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−4″−ビフェニルエステル(M.2.2)606mg(30%)、4−ブトキシ安息香酸−(4′−シアノビフェニル)エステル(M.3.3)607mg(30%)、2,5−ビス−[4−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ベンゾエート]−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール162mg(8%)、光開始剤Irgacure (R) 819 21mgおよび安定剤BHT 4mgを溶融液として、均質な混合物が存在するまで100℃で撹拌した(混合物7a)。このコレステリックなLC混合物5mgを例1a)におけるように、配向層を備えた2枚のガラス板の間に施与し、かつ厚さ約10μmのフィルムが残留するまで分散させた。該フィルムが完全に透明になるまで100℃で数分間熱処理し、かつ次いでUVA光(約100mW/cm)により架橋させた。昼光で垂直に観察すると、該フィルムは青色を有していた。ガラス板の一枚を剥離した後、LCポリマーフィルムの光学的異方性をプリズム結合器により測定した。W. U. Mueller and H. Stegemeyerの、Berichte der Bunsen-Gesellshaft 77/1、第20頁(1973年)によるこの測定の評価は、コレステリック構造における個々のネマチック層の異方性に関して633nmでΔn=0.191であった。
【0091】
例8
a)ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)1.72g(31.5%)、4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−4″−ビフェニルエステル(M.2.2)2.45g(45%)、4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.3.1)0.74g(13.5%)、2,5−ビス−[4−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ベンゾエート]−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール420mg(7.8%)、光開始剤Irgacure (R) 819 110mg、安定剤BHT 12mgおよびシリコーンオイルAF98/300(Wacker Chemie GmbH、Muenchenで入手可能)5mgを、テトラヒドロフラン(THF)14.7gおよびトルエン1.6gからなる溶剤混合物中に溶解させた(混合物8a)。この溶液をスピンコーティングによりポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)上に施与し、かつ乾燥させ、厚さ約5μmのフィルムが残留した。該フィルムが完全に透明になるまで90℃で10分間、熱処理し、かつ次いでUVA光(約100mW/cm)により架橋させた。昼光で垂直に観察すると、該フィルムは青色を有していた。UV−VISスペクトロメータ(Perkin-ElmerのLamda 19)中での透過の測定により、475nmで50nmの半値幅を有するほぼボックス形のバンドが生じた。プリズム結合器によるLCポリマーフィルムの光学的異方性の測定および例7におけるような評価は、コレステリック構造中の個々のネマチック層の異方性に関して、633nmでΔn=0.161を生じた。
【0092】
b)例a)におけるように、テトラヒドロフラン(THF)14.7gおよびトルエン1.6gからなる溶剤混合物中、ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)1.74g(31.8%)、4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−4″−ビフェニルエステル(M.2.2)2.51g(45.5%)、4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.3.1)0.745g(13.6%)、2,5−ビス−[4−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ベンゾエート]−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール375mg(6.8%)、光開始剤Irgacure (R) 819 112mg、安定剤BHT11mgおよびシリコーンオイルAF98/300 5mgの溶液からポリマーフィルムを製造した(混合物8b)。垂直に観察した場合、該フィルムは543nmで60nmの半値幅を有する緑色の光を反射した。コレステリック構造中の個々のネマチック層の光学的異方性の測定は633nmでΔn=0.163であった。
【0093】
c)例a)におけるように、テトラヒドロフラン(THF)14.3gおよびトルエン1.5gからなる溶剤混合物中、ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)1.71g(32.1%)、4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−4″−ビフェニルエステル(M.2.2)2.44g(45.9%)、4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.3.1)0.748g(13.8%)、2,5−ビス−[4−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ベンゾエート]−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール325mg(5.9%)、光開始剤Irgacure (R) 819 108mg、安定剤BHT11mgおよびシリコーンオイルAF98/300 5mgの溶液からポリマーフィルムを製造した(混合物8c)。垂直に観察した場合、該フィルムは610nmで70nmの半値幅を有する黄色の光を反射した。コレステリック構造中の個々のネマチック層の光学的異方性の測定は633nmでΔn=0.168を生じた。
【0094】
d)例a)におけるように、テトラヒドロフラン(THF)14.6gおよびトルエン1.6gからなる溶剤混合物中、ヒドロキノン−ビス−(4−アクリロイルブトキシ)−ベンゾエート(M.1)1.72g(32.4%)、4−(4′−アクリロイルブトキシ)−安息香酸−4″−ビフェニルエステル(M.2.2)2.46g(46.3%)、4−アリルオキシ安息香酸−4′−ビフェニルエステル(M.3.1)0.738g(13.9%)、2,5−ビス−[4−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ベンゾエート]−1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール278mg(5.2%)、光開始剤Irgacure (R) 819 107mg、安定剤BHT12mgおよびシリコーンオイルAF98/300 5mgの溶液からポリマーフィルムを製造した(混合物8d)。垂直に観察した場合、該フィルムは720nmで90nmの半値幅を有する黄色の光を反射した。コレステリック構造中の個々のネマチック層の光学的異方性の測定は633nmでΔn=0.172を生じた。
【0095】
e)例8a)からのポリマーフィルム上に混合物8b)をスピンコーティングにより施与し、かつ乾燥させ、厚さ約5μmの第二のフィルムが残留した。該フィルムが透明になるまで90℃で10分間、熱処理し、かつUVA光(約100mW/cm)により架橋させた。次いで混合物8c)をスピンコーティングにより施与し、かつ乾燥させ、厚さ約5μmの第三のフィルムが残留した。該フィルムが透明になるまで90℃で10分間、熱処理し、かつ次いでUVA光(約100mW/cm)により架橋させた。引き続き混合物8d)をスピンコーティングにより施与し、かつ乾燥させて、厚さ5μmの第四のフィルムが残留した。該フィルムが透明になるまで90℃で10分間、熱処理し、かつ次いでUVA光(約100mW/cm)により架橋させた。UV−VISスペクトロメータ中での4つの層からなるこのポリマーフィルムの透過の測定によれば、450nm〜770nmのほぼボックス形のバンドが生じた。該フィルムを透過する光は左旋円偏光していた。透過を評価するために、LCDディスプレイ用の市販のバックライト上へ、LCポリマーフィルム、λ/4−特性を有するリタデーションフィルムおよび直線偏光子をλ/4−フィルムの軸に対して45゜の配向で設置し、かつLCポリマーフィルムを有していない直線偏光子を有するLCDバックライトからなる配置と比較した。垂直の観察方向でLCポリマーフィルムを有する配置の明るさはLCポリマーフィルムを有していないものよりも35%明るいことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】光学的異方性Δnと時間の関係を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)モノマーまたはオリゴマー(A)、その際、モノマーまたはオリゴマー(A)のそれぞれは、(メタ)アクリレートエステル基、エポキシ基およびビニルエーテル基から選択される重合性官能基を少なくとも2つ有する、
B)液晶質のモノマーまたはオリゴマー(B)、その際、モノマーまたはオリゴマー(B)のそれぞれは、芳香族二環構造を有するメソゲン基を少なくとも1つ、ならびに(メタ)アクリレートエステル基、エポキシ基およびビニルエーテル基から選択される重合性官能基を正確に1つ有する、
C)芳香族二環構造を有するメソゲン基を少なくとも1つ有し、かつ、モノマーまたはオリゴマー(A)および(B)の重合性官能基と反応することができる基を有していないモノマー(C)を重合性混合物に対して1〜50質量%未満
を含有する重合性混合物(P)。
【請求項2】
芳香族二環構造が、非置換の、もしくは置換された基1,4−フェニレン、2,5−ピリジニレンおよび2,5−ピレニレンから選択され、それぞれ単結合により結合された2つの単環式の基および非置換の、もしくは置換された基2,6−ナフチリデン、2,7−ナフチリデンおよび1,4−ナフチリデンから選択される芳香族二重環から選択される、請求項1記載の混合物。
【請求項3】
メソゲン基が、フェニル誘導体、ビフェニル誘導体、シアノビフェニル誘導体、ナフチル誘導体およびシアノナフチル誘導体をベースとするカルボン酸エステルおよびアルコールならびにこれらの基からなる組合せを有する、請求項1または2記載の混合物。
【請求項4】
モノマーまたはオリゴマー(A)が、メソゲン基を少なくとも1つ、および(メタ)アクリレートエステル、エポキシおよびビニルエーテルから選択される重合性官能基を少なくとも2つ有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項5】
モノマーまたはオリゴマー(A)を5〜95質量%含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項6】
液晶質のモノマーまたはオリゴマー(B)を5〜95質量%含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項7】
請求項1から6に記載された重合性混合物(P)から製造される、光学的異方性ポリマー(F)。
【請求項8】
光学的異方性Δnが0.18より大きい、請求項7記載のネマチックポリマー(F)。
【請求項9】
光学的異方性Δnが0.16より大きい、請求項7記載のコレステリックポリマー(F)。
【請求項10】
請求項1から6に記載された重合性混合物(P)を支持体上に施与し、配向させ、かつ引き続き重合により固定する、請求項7記載の光学的異方性ポリマー(F)の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−505810(P2006−505810A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548821(P2004−548821)
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012083
【国際公開番号】WO2004/041966
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(390009003)コンゾルテイウム フユール エレクトロケミツシエ インヅストリー ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (17)
【氏名又は名称原語表記】Consortium fuer elektochemische Industrie GmbH
【住所又は居所原語表記】Zielstattstrasse 20,D−81379 Munchen,F.R.Germany
【Fターム(参考)】