説明

重合方法

本発明は、フルオロポリマー[ポリマー(F)]を製造するための重合方法に関し、前記方法には重合媒体中で少なくとも1種のフッ素化モノマーを重合させる工程が含まれ、ここで、前記重合媒体は、少なくとも2個の逆方向に回転するインペラを含む撹拌システムにより混合される。意外にも、その重合が、有利なことには、反応器の壁上にファウリングや析出物を形成することなく起きることが観察された。さらに、その重合方法は、有利なことには、組成、圧力もしくは温度の勾配なしで、改良された均質性をもって生じるので、局所的に過熱されるという危険性もなく、均質なポリマー組成物を得ることが可能となる。最後に、本発明の方法から得られるポリマー(F)は、有利には、改良されたモルフォロジー(組織化された構造のパーセント、すなわち、規則的な形の粒子のパーセント)を有していて、そのために、有利なことには良好な自由流動性が得られて、中間体の引延しもしくは研磨工程またはその他のサイズリダクション工程を必要とすることなく、圧縮成形によって加工することが可能となる。本発明のさらなる目的は、フルオロポリマー[ポリマー(F)]および成形方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化モノマーを重合させるための方法に関し、フルオロポリマーに関し、そしてフルオロポリマーを成形するための成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーの重合のための工業的な方法のほとんど全部は、混合された反応容器中の液相中においてフッ素化モノマーを重合させることをベースとしている。そのような重合方法は、一般的には、混合流れ(mixing flow)によって、反応剤を均質な(intimate)接触状態に保つことを必要とする。そのような多相化学反応、特にテトラフルオロエチレン(TFE)の重合においては、反応剤の異なる相(液体/気体/固体)の間における、対流、拡散および物質移動の複雑な現象が含まれる。
【0003】
重合装置の中には、一般的には、好適な混合装置が含まれていて、特に、次のことを可能としている:
1.均質化、すなわち、空間に依存した重合速度となることを避けるための、濃度差および温度差の均等化;
2.液体と熱発生界面との間での伝熱の強化;
3.液体の中への固体の懸濁;
4.水性液体相の中への気体のフッ素化モノマーの分散。
【0004】
混合の効率が低いと、凝離領域が生じ、それによって一般的には、反応の間に生成される副生物が増える。
【0005】
水相中におけるフッ素化モノマーの重合に伴う気体−液体−固体反応の場合、気体相中の反応剤(すなわち、気体のフッ素化モノマー)と、固体相(すなわち、成長しているポリマー鎖)の中の活性部位との間で反応が起こり、液体は、典型的には、特に、反応のエンタルピーを抜き出す役目を果たしていると一般的には理解されている。
【0006】
フッ素化モノマーの重合においては、一般的には低い熱伝導率を特徴とし、気体が固体の多孔の中に拡散することが可能な、固体の凝離ゾーンが存在すると、温度の均質性が乱され、局所的な温度勾配が生じる可能性がある。モノマーまたはポリマーの熱分解を起こさせる可能性があるので、そのようなホットスポットは避けるべきである。TFEの重合において局所的な過熱が起きると、暴走反応を招き、さらにはポリマーの焼結、発火、およびモノマーのTFEの爆燃に至る可能性がある。したがって、安全面の配慮から、特にTFEの場合には、重合熱の均質な除去を達成することが肝要である。
【0007】
一般的には、反応器中における重合媒体の均質性を改良し、固体の付着および凝離ゾーンを避けるためには:
− (固体の沈降を避けるために)フッ素化モノマーの重合方法を、良好なポンプ効率を有する高剪断インペラを使用して実施し;そして、
− (より均質な条件を得るために)十分なバッフル効果を有する(baffled)反応容器を使用する。
【0008】
したがって、特許文献1(デュポン・ドゥ・ヌムール(DUPONT DE NEMOURS)、1966年4月12日)には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)成形粉体を得るための方法が開示されているが、前記方法には、0.0004〜0.002kgm/秒/mLの範囲の動力消費量を有する撹拌装置を使用し、動力対流量係数の比率を少なくとも1.4として、水性媒体中でテトラフルオロエチレン(TFE)を重合させることが含まれている。各種のタイプのインペラが開示されており、例えば、特に、垂直に配置されたフラットパドル、水平方向に対して15度の角度で傾けたフラットブレードを有するスターラー、マリンプロペラ、水平剪断チップを有するブレード付きプロペラなどがあるが、3.4の動力対流量係数の比率を有する、垂直に配列されたフラットブレードパドルスターラーが好ましい。
【0009】
特許文献2(ダイキン工業(DAIKIN KOGYO CO.,LTD)、1969年8月19日)には、ほぼ球状の顆粒状PTFE成形粉体を製造するための方法が開示されているが、前記方法には、激しい撹拌下で水不溶性有機液体の存在下で重合させることが含まれている。その反応装置は、アンカータイプのアジテーターまたはその底部に4枚羽根のプロペラのいずれかを用いた重合容器である。
【0010】
特許文献3(ダイネオン社(DYNEON GMBH)、1998年6月2日)には、PTFEの均質で緻密な球状の粒子を得るためのTFEの懸濁重合が開示されているが、それに使用する反応器には、軸流成分と接線流成分の両方を発生させるスターラー要素が備えられていて、場合によっては、回転可能なバッフルを用いて、スターラー要素の周辺で渦を形成させ、水のデッドゾーンを作らせないようにしている。
【0011】
液体/固体の媒体を混合する場合に生じる最大の問題の1つは、反応容器に沿って、一定の経路で、混合物が定常的な旋回または回転を起こすことであって、そうなると混合物の実際の混ぜ合わせが低下し、プロペラのシャフトの周りにボイドコーン(void cone)または渦が発生する。
【0012】
したがって、前記過度の旋回運動を遮断させるために、固定させたバッフルプレートを使用することも提案されている。
【0013】
それにも関わらず、バッフルにはいくつかの欠陥があり、特に:
・ 粘着性の固形物が存在する場合には、前記固形物が、デッドゾーン、典型的にはバッフルの裏側に付着する;
・ 剪断の影響を受けやすい物質が存在している場合には、局所的に強い撹拌がかかることを避けなければならないが、その理由は、それによって、粒子の凝離(segregation)が進み、その物質を損なうからである;
・ TFEの重合においては、固体のポリマーの付着が制御不能に起きることは、極めて危険であるが、それは、前記固形物が水性媒体によって熱を除去されることなく、気体のTFEと直接反応することが可能となって、その結果として、局所的な過熱によってTFEの爆燃が起きる可能性があるからである。
【0014】
上述のことを考え合わせて、他の化学産業の分野において、多相液体/固体系の混合を改良するための、それに代わる混合装置も過去には提案された。
【0015】
したがって、特許文献4(シンプソン・W.L.(SIMPOSON,W.L.)、1940年7月23日)には、タンクと、同軸的に取り付けられたサイズの異なる2つのプロペラおよび前記プロペラを反対方向に駆動するための手段を有するミキサーとを含む混合装置が開示されている。
【0016】
特許文献5(モンサント・カンパニー(MONSANTO CO.)、1967年7月11日)は、オレフィン、特にエチレンの低圧重合のための改良方法に関するものであるが、そこでは、同軸的な別個のシャフト(1つはトップから、1つはボトムから)に取り付けられ、逆方向に回転する2つのインペラを含む混合システムが使用されていて、高乱流ゾーンを形成させ、付着(plating)を顕著に低下させている。
【0017】
特許文献6(ケム−プラント・ステンレス・リミテッド(CHEM−PLANT STAINLESS LIMITED)、1985年11月20日)には、垂直に伸びた中央のシャフトを有し、前記シャフトの軸の周りを一方向に回転可能なアジテーターとシャフトの軸の周りを逆方向に回転可能なスターラーブレードとを有する、一般的には円筒状のミキサー容器が開示されている。
【0018】
特許文献7((BASF・AG)、2001年6月26日)は、エチレン性不飽和モノマーをエマルション重合させるのに特に適した撹拌システム装置に関連するものであって、前記撹拌システムには、多段の極めてクリアランスの狭い撹拌要素が含まれていて、それによって、接線流成分だけではなく、軸流場も与えられている。
【0019】
ポリマー粒子のモルフォロジーおよび形状係数、さらにはコモノマーの分布が、混合流れの影響を強く受け、粒径分布および粒子形状は、特に、混合エネルギー分布、剪断力、デッドゾーンの存在などの影響を受けるということも理解されよう。
【0020】
特許文献8(アウジモント・S.P.A.(AUSIMONT S.P.A.)、2001年7月17日)には、懸濁重合によって変性PTFEを製造するための方法が開示されているが、前記方法では、改良された加工特性を有する製品を高い生産性で得ることが可能となる。前記重合方法には、TFEならびにペルフルオロアルキルビニルエーテルおよび/またはペルフルオロジオキソールのコモノマーの混合物を、緩衝塩、ならびに重合開始剤としての過硫酸塩および還元剤の存在下に、ペルフルオロ化界面活性剤と共に、15〜30バールの圧力で重合させることが含まれる。特許文献8(アウジモント・S.P.A.(AUSIMONT S.P.A.)、2001年7月17日)においては、コモノマーを重合の間に添加して組入れ比率を一定に保ち、ペルフルオロ化界面活性剤を使用してコモノマーの均質性を改良するならば、標準的な撹拌装置を用いて、ナイブドテープ(knived tape)において(透明な暈(かさ)模様や大理石模様のない)良好な均質性を有する変性PTFE懸濁ポリマー粉末を得ることが可能となる。
【0021】
TFEの懸濁重合の場合には、バッフルが無く、そのために流体の流れに向きができると、一般的には、粒子の成長に方向が生じ、そのため、非対称な形状を有する高度に不均質な粒子となってしまう。そのような非対称な粒子は工業的な使用には適さず、工業用途のための均質な粉末を得るためには、それに続けて、粒子のシージング(seizing)またはさらなる処理が必要となる。
【特許文献1】US特許第3245972B号
【特許文献2】US特許第3462401B号
【特許文献3】US特許第5760148B号
【特許文献4】US特許第2209287B号
【特許文献5】US特許第3330818B号
【特許文献6】GB2158727
【特許文献7】US特許第6252018B号
【特許文献8】US特許第6262209号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、当該技術分野においては、温度と重合媒体の組成における均質性を確保し、デッドゾーンを作らず、均質な乱流強度分布を可能とするような、より効率的な混合システムを含む重合方法が求められている。
【0023】
さらに、機械的なバッフルを使用せず、それによって関連するデッドゾーンの問題を生じないような、低剪断および高剪断条件下において均質な混合状態を得ることを可能とする重合方法もまた求められている。
【0024】
最後に当該技術分野においては、好適なモルフォロジーおよび形状係数を有していて、それによって、さらなるグラインディングやサイズリダクションの後処理を必要とすることなく、工業的な使用(例えば、成形)に適するようにすることが可能であるような、均質で球状の粉末粒子を製造することを可能とする重合方法も求められている。
【0025】
それらすべておよびその他の問題は、本発明の重合方法によって、顕著に解決される。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の第一の目的は、フルオロポリマー[ポリマー(F)]を製造するための重合方法であり、前記方法には重合媒体中で少なくとも1種のフッ素化モノマーを重合させる工程が含まれ、ここで、前記重合媒体は、少なくとも2個の逆方向に回転する(counter−rotating)インペラを含む撹拌システムにより混合される。
【0027】
意外にも、その重合が、有利なことには、反応器壁上にファウリングや析出物を形成することなく起きることが観察された。
【0028】
さらに、その重合方法は、有利なことには、組成、圧力もしくは温度の勾配なしで、改良された均質性をもって起きるので、有利には、局所的に過熱されるという危険性もなく、均質なポリマー組成物を得ることが可能となる。
【0029】
さらに、本発明の方法から得られるポリマー(F)は、有利には、改良されたモルフォロジー(組織化された構造のパーセント、すなわち、規則的な形の粒子のパーセント)を有していて、そのために、有利なことには良好な自由流動性を有するので、中間体の引延し(milling)もしくは研磨(grinding)工程またはその他のサイズリダクション工程や、さらには粒状化もしくは球状化工程と必要とすることなく、圧縮成形(例えば、自動成形;RAM押出成形)によって加工することに適している。
【0030】
本発明のさらなる目的は、1.5/1以下の球形形状係数(sphericity shape factor)(Lmax/Lmin)と40度以下の安息角とを有する粒子の形態にあるフルオロポリマー[ポリマー(F)]である。
【0031】
本発明のさらに別な目的は、成形物品を製造するための成形方法であって、前記方法には以下の工程が含まれる:
− 重合媒体中で少なくとも1種のフッ素化モノマーを重合させる工程であって、前記重合媒体が少なくとも2つの逆方向に回転するインペラを含む撹拌システムによって混合されて、フルオロポリマー[ポリマー(F)]が得られる工程;および
− 前記ポリマー(F)を圧縮成形して成形物品を得る工程であって、ポリマー(F)が、圧縮成形の前に、いかなるサイズリダクション工程にもかけられない、工程。
【0032】
本発明の成形方法は、成形製品が、有利なことには、実質的に省エネルギー的に製造できるので特に有利であるが、それの理由は、極めて大量のエネルギーを必要とするサイズリダクション工程が不要であるからである。
【0033】
有利には、重合媒体中でフッ素化モノマーを重合させると、重合媒体中にポリマー(F)生成物を含む、不均一系反応混合物が得られる。
【0034】
本発明の方法の重合媒体には、有利には、水が含まれる。本発明の重合媒体は、基本的には水からなるのが好ましく、その水の中に、一般的には、必要とされる重合成分(例えば、特に、1種または複数のモノマー、重合開始剤、界面活性剤など)が可溶化または分散される。
【0035】
「不均一系反応混合物」という用語は、本明細書において使用する場合、少なくとも2つの相を有する反応混合物を指している。1つの相は「連続相」と呼ばれて、それには流体、好ましくは水が含まれ、もう1つの相は「固体相」と呼ばれて、ポリマー(F)生成物が含まれる。
【0036】
「不均一系反応混合物」という用語には、重合が均一系として開始される分散重合と、重合が不均一系で開始され、重合開始剤が好ましくは連続相の中に可溶化されているエマルション重合との、いずれの反応生成物も包含されているものとする。本明細書において使用する場合、ある化合物が、ある相の方に他の相よりも「優先的に可溶化されている」ということは、それがその相により溶解しやすい場合である。
【0037】
本発明の重合媒体は、最初は均一系であってもよい、すなわちそれは、その中でフッ素化モノマーならびにその他すべての任意の重合成分(例えば、特に、重合開始剤)が可溶化されているが、一般的には重合が進行してポリマーが生成すると不均一系となるような、媒体である。その新規に製造されたポリマー(F)が、有利には、反応の固体相を形成する。
【0038】
そのポリマーは、特に、相の間の表面張力を低下させる適切な界面活性剤を存在させることによって、固体層の分散体として安定化させることができる。このタイプの重合方法は一般的に、分散重合として知られている。分散重合についての一般的な説明は、バレット・K.E.J.(BARRET,K.E.J.)、「ディスパーション・ポリメリゼーション・イン・オーガニック・メディア(Dispersion Polymerization in Organic Media)」(ロンドン(London)、ワイリー(Wiley)、1975)、およびナッパー・D.H.(NAPPER,D.H.)、「ポリマー・スタビリゼーション・オブ・コロイダル・ディスパーション(Polymer Stabilization of Colloidal Dispersion)」(ロンドン(London)、アカデミック・プレス(Academic Press)、1983)に見出すことができる。
【0039】
その方法が分散状態で実施されるのならば、その重合媒体に界面活性剤を含んでいるのが有利である。
【0040】
その界面活性剤が、フッ素化界面活性剤であるのが好ましい。次式のフッ素化界面活性剤:
f§(X(M
が最も一般的に使用されるが、ここで、Rf§は、(ペル)フルオロアルキル鎖C〜C16もしくは(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖であり、Xは、−COOもしくは−SOであり、Mは、H、NH、アルカリ金属イオンから選択され、そしてjは1または2とすることができる。
【0041】
非限定的なフッ素化界面活性剤の例としては、ペルフルオロカルボン酸アンモニウムおよび/またはペルフルオロカルボン酸ナトリウム、および/または1個または複数のカルボキシル末端基を有する(ペル)フルオロポリオキシアルキレンを挙げることができる。
【0042】
より好ましくは、フルオロ界面活性剤は、以下のものから選択される:
− CF(CFn1COOM’[式中、nは、4〜10、好ましくは5〜7の整数、より好ましくは6に等しく、M’は、H、NH、Na、Li、またはK、好ましくはNHである];
− T(CO)n0(CFXO)m0CFCOOM”[式中、Tは、Cl、または式C2k+1Oのペルフルオロアルコキシド基(ここで、kは1〜3の整数であり、F原子の1つは、場合によっては、Cl原子によって置換されていてもよい);nは、1〜6の範囲の整数であり;mは、0〜6の範囲の整数であり;M”は、H、NH、Na、Li、またはKを表し;XはFまたはCFを表す];
− F−(CF−CFn2−CH−CH−SOM”’[式中、M’”は、H、NH、Na、Li、またはK、好ましくはHを表し;nは、2〜5の範囲の整数、好ましくはn=3である];
− A−R−B二官能フッ素化界面活性剤[式中、AおよびBは、互いに同じであっても異なっていてもよいが、−(O)CFX−COOMであって;MはH、NH、Na、Li、またはKを表すが、好ましくはMがNHを表し;X=FまたはCFであり;pは、0または1に等しい整数であり;Rは、直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキル鎖、または(ペル)フルオロポリエーテル鎖であって;A−R−Bの数平均分子量が、300〜1,800の範囲である]。
【0043】
共安定剤を、界面活性剤と組み合わせて使用するのが有利である。48℃〜62℃の範囲の軟化点を有するパラフィンが、共安定剤として好ましい。
【0044】
別な場合として、ポリマー(F)が固体相の中に離散粒子として存在していてもよいが、それは典型的には、混合によって懸濁液の中に維持されている。この方法は一般的には、懸濁重合と呼ばれる。
【0045】
本発明の目的のためには、「粒子」という用語は、幾何学的な観点からは、明瞭に三次元の容積および形状を有する物体を指すことが意図されているが、ここで、前記のいずれかの次元が、残る2つの次元の20倍を超えることがない三次元を特徴としている。
【0046】
本発明の方法を懸濁液の中で実施するのが好ましい。本出願人の考えるところでは、(これによって本発明の範囲が限定される訳ではない)、逆方向に回転するインペラを含む撹拌システムを使用することによって、激しい撹拌と高度に均質な混合とを達成することが、懸濁重合には特に有利である。この方法においては、そのようにして得られる混合によって、球状の形状を有する極めて規則的な粒子の形態でのポリマー(F)の沈殿を有利に促進させることが可能となる。
【0047】
その方法を懸濁液中で実施するならば、少量、典型的には1〜1500ppm、好ましくは5〜1000ppm、より好ましくは10〜300ppmの、上述のようなフッ素化界面活性剤を使用することができる。
【0048】
場合によっては、アルカリ側のpHの緩衝塩を使用することもできる。好適なアルカリ側のpHの緩衝塩は、特に、アルカリ金属ピロリン酸塩および/またはシュウ酸アンモニウムもしくはアルカリ金属シュウ酸塩である。
【0049】
本発明の方法には、有利には、ラジカル開始剤の存在下にフッ素化モノマーを重合させる工程が含まれる。
【0050】
本発明による方法に好適なラジカル開始剤は、重合を開始および/または加速させることが可能な化合物である。
【0051】
重合開始剤は、有利には、重合媒体の0.001〜20重量%の範囲の濃度で含まれる。
【0052】
当業者であれば、本発明の方法に好適な多くの重合開始剤についてはよく知っているであろう。
【0053】
有機フリーラジカル重合開始剤を使用することが可能であって、以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定される訳ではない:アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド;ジアセチルペルオキシジカーボネート;ジアルキルペルオキシジカーボネート例えば、ジエチルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート;tert−ブチルペルネオデカノエート;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4ジメチルバレロニトリル;tert−ブチルペルピバレート;ジオクタノイルペルオキシド;ジラウロイル−ペルオキシド;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル);tert−ブチルアゾ−2−シアノブタン;ジベンゾイルペルオキシド;tert−ブチル−ペル−2エチルヘキサノエート;tert−ブチルペルマレエート;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル);ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート;tert−ブチルペルアセテート;2,2’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン;ジクミルペルオキシド;ジ−tert−アミルペルオキシド;ジ−tert−ブチルペルオキシド;p−メタンヒドロペルオキシド;ピナンヒドロペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド;およびtert−ブチルヒドロペルオキシド。その他の好適な重合開始剤としては、以下のものが挙げられる:ハロゲン化フリーラジカル重合開始剤、例えばクロロカーボンおよびフルオロカーボンベースのアシルペルオキシド例えば、トリクロロアセチルペルオキシド、ビス(ペルフルオロ−2−プロポキシプロピオニル)ペルオキシド、[CFCFCFOCF(CF)COO]、ペルフルオロプロピオニルペルオキシド、(CFCFCFCOO)、(CFCFCOO)、{(CFCFCF)−[CF(CF)CFO]−CF(CF)−COO}(ここで、m=0〜8)、[ClCF(CFCOO]、および[HCF(CFCOO](ここで、n=0〜8);ペルフルオロアルキルアゾ化合物例えばペルフルオロアゾイソプロパン、[(CFCFN=]、R゜N=NR゜(ここで、R゜は、1〜8個の炭素を有する直鎖状または分岐状のペルフルオロカーボン基である);安定または立体障害のあるペルフルオロアルカンラジカル、例えばヘキサフルオロプロピレントリマーラジカル、[(CFCF](CFCF)C・ラジカル、およびペルフルオロアルカン。
【0054】
レドックス対を形成する少なくとも2種の成分を含むレドックス系、例えばジメチルアニリン−ベンゾイルペルオキシド、ジエチルアニリン−ベンゾイルペルオキシド、およびジフェニルアミン−ベンゾイルペルオキシドなどもまた、重合を開始させるのに使用することができうる。
【0055】
無機フリーラジカル重合開始剤を使用することも可能であり、例えば以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:過硫酸塩、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、もしくは過硫酸アンモニウム、過マンガン酸塩、例えば過マンガン酸カリウム。
【0056】
フッ素化モノマーにTFEが含まれているような場合には、本発明の方法において重合開始剤としては、アルカリ金属もしくはアンモニウムの過硫酸塩と還元剤としてのFe(II)塩(例えばモール塩)との組合せ、US特許第6,822,060号に記載されているようなハロゲン酸の塩と亜硫酸塩との組合せ、もしくは、US特許第4,654,406号に記載されているようなCe(IV)塩/シュウ酸の組合せ、またはUS特許第4,766,188号に記載されているような二コハク酸ペルオキシド(DSAP)と亜硫酸アンモニウム(AMS)との組合せを含むレドックス重合開始剤を、特に、使用することができる。
【0057】
上述のようなハロゲン酸塩は、一般式YXOとして表すことができるが、ここでXは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、Yは、水素原子、アンモニウム、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である。上述のような亜硫酸塩は、一般式Z’SO(ここでZは、アンモニウム、アルカリ金属である)またはZ”SO(ここでZ”はアルカリ土類金属である)として表すことができる。
【0058】
そのようなレドックスラジカル開始剤の中では、アルカリ金属またはアンモニウムの過硫酸塩、好ましくは過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムと、Fe(II)塩、好ましくはモール塩(式(NHFe(SO・6HOの硫酸鉄(II)六水和物)を含むレドックス重合開始剤が好ましい。
【0059】
前記レドックス重合開始剤を採用する場合、反応容器には、その両方の成分を同時に加えても、あるいは順次に加えてもよい。いずれか一方を前もって反応容器に仕込み、次いで重合させながら他の1つを間欠的または連続的に添加するのが好ましい。
【0060】
連鎖調節剤またはその他の重合添加剤例えば、懸濁剤、ファウリング防止剤などの存在下に、重合を実施することもできる。
【0061】
連鎖調節剤を使用する場合、これは通常使用される量で使用する。より詳しくは、連鎖調節剤は、一般的には、用いるフッ素化モノマーを基準にして、約0.5〜5重量%の量で使用される。連鎖調節剤は、重合開始時に全部を用いてもよいし、あるいは重合の間に少しずつ、または連続的に用いてもよい。
【0062】
本明細書において使用する場合、「ポリマー」という用語には、10〜10の分子量を有するオリゴマーおよびポリマーが包含され、またその用語には、採用されたモノマーの数に依存して、ホモポリマーおよびコポリマーが包含される。
【0063】
本発明の目的のためには、「フルオロポリマー」および「ポリマー(F)」という表現は、繰り返し単位(R)を含む、各種のポリマーを表わすが、前記繰り返し単位(R)の25重量%を超えるものは、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以後フッ素化モノマー)から誘導される。
【0064】
フルオロポリマーには、フッ素化モノマーから誘導される繰り返し単位を、好ましくは30重量%を超えて、より好ましくは40重量%を超えて含む。
【0065】
フッ素化モノマーには、1個または複数の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)がさらに含まれていてもよい。そのフッ素化モノマーが水素原子を含まない場合には、それはペル(ハロ)フルオロモノマーと呼ばれる。そのフッ素化モノマーが少なくとも1種の水素原子を含む場合には、それは水素含有フッ素化モノマーと呼ばれる。
【0066】
フッ素化モノマーの例としては、まずは、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0067】
場合によっては、そのフルオロポリマーが、一つの第一のモノマー(前記モノマーは上述のようなフッ素化モノマーである)と、少なくとも1種の他のモノマー[以下、コモノマー(CM)]から誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0068】
以下においては、「コモノマー(CM)」という用語は、1種のコモノマーと、2種以上のコモノマーの両方を包含していることを意図しているものとする。
【0069】
そのコモノマー(CM)は、特に、水素化されている(すなわち、フッ素原子を含まない)[以後、コモノマー(HCM)]またはフッ素化されている(すなわち、少なくとも1個のフッ素原子を含む)[以後、コモノマー(FCM)]のいずれかである。
【0070】
好適な水素化コモノマー(HCM)の非限定的な例としては、まず、エチレン、プロピレン、ビニルモノマーたとえば酢酸ビニル、アクリルモノマーたとえばメタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、およびアクリル酸ヒドロキシエチル、さらにはスチレンモノマーたとえばスチレンおよびp−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0071】
さらに、好適なフッ素化コモノマー(FCM)の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
− C〜Cフルオロ−および/またはペルフルオロオレフィン、たとえばヘキサフルオロプロペン、ペンタフルオロプロピレン、およびヘキサフルオロイソブチレン;
− C〜C水素化モノフルオロオレフィンたとえば、フッ化ビニル;
− 1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、およびトリフルオロエチレン;
− 式CH=CH−Rf0に従うペルフルオロアルキルエチレン[式中、Rf0はC〜Cペルフルオロアルキルである];
− クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C〜Cフルオロオレフィンたとえば、クロロトリフルオロエチレン;
− 式CF=CFORf1に従うフルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf1は、C〜Cフルオロ−またはペルフルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−Cである];
− 式CF=CFOXに従うフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル[式中、Xは、1個または複数のエーテル基を有する、C〜C12オキシアルキル、またはC〜C12(ペル)フルオロオキシアルキル、たとえばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピルである];
− 式CF=CFOCFORf2に従うフルオロアルキル−メトキシ−ビニルエーテル[式中、Rf2は、C〜Cフルオロ−もしくはペルフルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−C、または1個もしくは複数のエーテル基を有するC〜C(ペル)フルオロオキシアルキル、たとえば−C−O−CFである];
− 次式のフルオロジオキソール:
【0072】
【化1】

[式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6は、互いに同じであっても異なっていてもよく、独立して、フッ素原子、場合によっては1個もしくは複数の酸素原子を含む、C〜Cフルオロ−もしくはペル(ハロ)フルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである]。
【0073】
本発明の第一の実施態様においては、そのポリマー(F)が水素含有フルオロポリマーである。
【0074】
「水素含有フルオロポリマー」という用語は、少なくとも1種の水素含有モノマーから誘導される繰り返し単位を含む、先に定義されたようなフルオロポリマーを意味している。前記水素含有モノマーは、フッ素化モノマーと同一のモノマーであってもよく、あるいは別なモノマーとすることもできる。
【0075】
したがって、この定義に包含されるのは、特に、ペル(ハロ)フルオロモノマー(たとえば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテルなど)の1種または複数と、水素化コモノマー(たとえば、エチレン、プロピレン、ビニルエーテル、アクリルモノマーなど)の1種または複数とのコポリマー、および/または水素含有フッ素化モノマー(たとえばフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなど)のホモポリマー、ならびにフッ素化および/または水素化コモノマーとのそれらのコポリマーである。
【0076】
水素含有フルオロポリマーは、以下のものから選択するのが好ましい:
(F−1)TFEおよび/またはCTFEのエチレン、プロピレンまたはイソブチレン(好ましくはエチレン)とのコポリマーであって、ペル(ハロ)フルオロモノマー/水素化コモノマーのモル比が(30:70)から(70:30)までであり、場合によってはTFEおよび/またはCTFEと水素化コモノマーの合計した量を基準にして、0.1〜30モル%の量で1種または複数のコモノマーを含むもの(たとえば、US特許第3,624,250号およびUS特許第4,513,129号参照);
(F−2)フッ化ビニリデン(VdF)ポリマーであって、場合によっては、少量の、一般的には0.1〜15モル%の間の、1種または複数のフッ素化されたコモノマーを含み(たとえば、U.S.Pat.No.4,524,194およびU.S.Pat.No.4,739,024参照)、場合によってはさらに、1種または複数の水素化コモノマーを含むもの;ならびに
それらの混合物。
【0077】
本発明の第二の好ましい実施態様においては、そのポリマー(F)がペル(ハロ)フルオロポリマーである。
【0078】
本発明の目的のためには、「ペル(ハロ)フルオロポリマー」という用語は、実質的に水素原子を含まないフルオロポリマーを指すものとする。
【0079】
「実質的に水素原子を含まない」という用語は、そのペル(ハロ)フルオロポリマーが、少なくとも1個のフッ素原子を含み水素原子を含まないエチレン性不飽和モノマー[ペル(ハロ)フルオロモノマー)(PFM)]から誘導される繰り返し単位から基本的になっている、ということを意味するものと理解されたい。
【0080】
ペル(ハロ)フルオロポリマーには、1個または複数の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)を含む繰り返し単位が含まれていてもよい。
【0081】
ペル(ハロ)フルオロポリマーは、ペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)のホモポリマーであってもよいし、あるいは、2種以上のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)から誘導される繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。
【0082】
特に、好適なペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
− C〜Cペルフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)およびヘキサフルオロプロペン(HFP);
− クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C〜Cペル(ハロ)フルオロオレフィン例えば、クロロトリフルオロエチレン;
− 一般式CF=CFORf3に従うペル(ハロ)フルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf3は、C〜Cペル(ハロ)フルオロアルキル、例えば−CF、−C、−Cである];
− 一般式CF=CFOX01に従うペル(ハロ)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル[式中、X01は1個または複数のエーテル基を有するC〜C12ペル(ハロ)フルオロオキシアルキル、例えばペルフルオロ−2−プロポキシ−プロピル基である];
− 一般式CF=CFOCFORf4に従うペル(ハロ)フルオロ−メトキシ−アルキルビニルエーテル[式中、Rf4はC〜Cペル(ハロ)フルオロアルキル、例えば−CF、−C、−Cまたは、1個または複数のエーテル基を有するC〜Cペル(ハロ)フルオロオキシアルキル、例えば−C−O−CFである];
− 次式のペル(ハロ)フルオロジオキソール:
【0083】
【化2】

[式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは、互いに同じであっても異なっていてもよいが、独立して、フッ素原子、場合によっては1個または複数の酸素原子を含むC〜Cペルフルオロアルキル基、例えば−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである];好ましくは上に挙げた式に従うペル(ハロ)フルオロジオキソールで、Rf3とRf4がフッ素原子であり、そしてRf5とRf6がペルフルオロメチル基(−CF)であるもの[ペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)]か、または、上に挙げた式に従うペル(ハロ)フルオロジオキソールで、Rf3、Rf5およびRf6がフッ素原子であり、そしてRf4がペルフルオロメトキシ基(−OCF)であるもの[2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソール、またはペルフルオロメトキシジオキソール(MDO)]。
【0084】
ペル(ハロ)フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)のホモポリマー、またはTFEと少なくとも1種のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)とのコポリマーから選択するのが有利である。
【0085】
好適なペル(ハロ)フルオロポリマーは、TFEホモポリマー、および以下のものからなる群から選択される少なくとも1種のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)から誘導される繰り返し単位を含むTFEコポリマーから選択される:
1.式CF=CFORf1’に従うペルフルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf1’は、C〜Cペルフルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−Cである];および/または
2.次式のペル(ハロ)フルオロジオキソール:
【0086】
【化3】

[式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは、互いに同じであっても異なっていてもよいが、独立して、フッ素原子、場合によっては1個または複数の酸素原子を含むC〜Cペルフルオロアルキル基、たとえば−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである]。
【0087】
より好適なペル(ハロ)フルオロポリマーは、TFEホモポリマー、および以下のものからなる群から選択される少なくとも1種のフッ素化コモノマーから誘導される繰り返し単位を含むTFEコポリマーから選択される:
1.式CF=CFORf7’に従うペルフルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf7’は、−CF、−C、−Cから選択される基である];および/または
2.次式のペル(ハロ)フルオロジオキソール:
【0088】
【化4】

[式中、Rf3とRf4はフッ素原子であり、Rf5とRf6はペルフルオロメチル基(−CF)である[ペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)]か、または、Rf3、Rf5およびRf6がフッ素原子であり、Rf4がペルフルオロメトキシ基(−OCF)である[2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソール、またはペルフルオロメトキシジオキソール(MDO)]]。
【0089】
ペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)はTFEコポリマーの中に、TFEとペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)の合計モル数を基準にして、有利には少なくとも0.01、好ましくは0.1モル%の量で存在させる。
【0090】
ペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)はTFEコポリマーの中に、TFEとペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)の合計モル数を基準にして、有利には多くとも3モル%、好ましくは1モル%の量で存在させる。
【0091】
TFEホモポリマー、およびそのフッ素化コモノマーが先に挙げたような1種または2種以上のペルフルオロアルキルビニルエーテルであるTFEコポリマーを用いると、良好な結果が得られ;そのフッ素化コモノマーが、(式CF=CFOCFの)ペルフルオロメチルビニルエーテル、(式CF=CFOCの)ペルフルオロエチルビニルエーテル、(式CF=CFOCの)ペルフルオロプロピルビニルエーテル、およびそれらの混合物であるTFEコポリマーを用いると、特に良好な結果が得られた。
【0092】
TFEホモポリマー、ならびにフッ素化コモノマーが、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテルとペルフルオロプロピルビニルエーテルとの混合物、ペルフルオロエチルビニルエーテルとペルフルオロプロピルビニルエーテルとの混合物、またはペルフルオロプロピルビニルエーテルであるようなTFEコポリマーを用いると、最善の結果が得られた。
【0093】
本発明の好ましい実施態様においては、ポリマー(F)は上述したようなTFEコポリマーである。
【0094】
本発明の方法によって製造することが可能なTFEのホモポリマーおよびコポリマーは、ソルベー・ソレクシス・S.p.A.(Solvay Solexis S.p.A.)から、商品名アルゴフロン(ALGOFLON)(登録商標)PTFEとして市販されている。
【0095】
ポリマー(F)は、溶融加工不能であるのが有利である。
【0096】
本発明の目的のためには、「溶融加工不能な(non melt−processable)」という用語は、そのポリマー(F)が、従来の溶融押出、射出または鋳造手段によっては、加工できない(すなわち、成形物品例えば、フィルム、繊維、チューブ、ワイヤコーティングなどに加工できない)ということを意味している。このためには一般的には、加工温度における溶融粘度が、10ポアズを超える、好ましくは10〜1013ポアズ、最も好ましくは10〜1012ポアズの範囲であることを必要とする。
【0097】
ポリマー(F)の溶融粘度は、AJROLDI,G.ら、「Some Rheological Properties of molten Polytetrafluoroethylene」、J.Appl.Polym.Sci.、1970、第14卷、p.79〜88に記載の方法に従って、360℃での引張クリープ試験により測定することできるが、この方法は、(溶融粘度が1010を超える)高粘度化合物の場合に特に適している。
【0098】
別な方法として、ポリマー(F)の溶融粘度は、ASTM D−1238−52Tに従って測定することも可能であるが、その場合は、耐蝕性合金でできたシリンダー、オリフィスおよびピストンチップを用い、融点よりも高い温度に維持した内径9.5mmのシリンダーに5.0gのサンプルを仕込み、仕込み5分後にそのサンプルを、5kgの荷重(ピストン+重り)の下で、直径2.10mm、長さ8.00mmのスクエアエッジタイプオリフィスを通して押出す。観測された押出し速度(グラム/分)から、ポアズの単位で溶融粘度を計算する。
【0099】
本発明の方法の混合システムにおいては、幅広いスターラーまたはインペラを使用することができる。
【0100】
インペラは、それらが作る混合流れに応じて、軸流インペラ、輻流(radial−flow)インペラ、および混合流インペラと、大きく3種にざっと分類することができる。
【0101】
それらのスターラーのタイプを、それらが作り出す主なフローパターン(flow pattern)に従って、図1に配列したが、インペラ(A)〜(F)は、主として輻流(すなわち接線流)を作り、インペラ(G)〜(N)は主として軸流(すなわち鉛直流)を作る。
【0102】
輻流インペラは、一般的にはドライブシャフトの軸に平行なブレードを有している。輻流インペラの非限定的な例としては、特に、以下のものが挙げられる:
− タービンスターラー、例えば円板上に6枚のブレードを有するラシュトン(Rushton)タービン[図1のインペラ(A)]、これは、有利には、高速スターラーであって、典型的には流体に放射状の動きを与えるか、または高粘度の場合には、接線方向の動きを与える。このタイプのインペラは、低粘度の液体およびバッフル付きの容器で特に有効である。このタイプのインペラでは、その直径比D/d(D=反応容器の直径;d=スターラーの直径)が、有利には3〜5の範囲である。回転中に、タービンスターラーは、典型的には高いレベルの剪断を与え、これは一般的には分散体工程に好適である;
− インペラスターラー[図1のインペラ(B)]、これは、特に、ほうろう引きの容器で使用する目的で以前に開発されたものであり、そのために、丸みのある撹拌アームを有している。これは、一般的には、底部からのクリアランスを小さくして使用される。このタイプのインペラでは、直径比D/dは、有利には1.5程度(すなわち、1〜2、好ましくは1.2〜1.8の間)であり、バッフルは有っても無くてもよい。これはさらに、充填レベルが極端に変動する場合(例えば、容器からの排出の間)でも使用することができるが、その理由は、液体が少量であっても混合することが可能であるからである;
− クロスビームインペラ[図1のインペラ(C)]、グリッドインペラ[図1のインペラ(D)]およびブレードインペラ[図1のインペラ(E)]、これらは、有利には低速スターラータイプの群に属し、典型的には、1.5〜2のD/dで使用される。それらは、バッフルを用いても、あるいは特に粘度の高い媒体の場合にはバッフル無しで運転することも可能であり、均質化には特に適している;
− 低速アンカースターラー[図1のインペラ(F)]、これは、一般的には、器壁から極めて小さなクリアランス、すなわち、1.005〜1.5、好ましくは1.005〜1.05の直径比D/dで運転され、高粘度媒体における伝熱を促進させるのに特に適している;
− ローター−ステーターの原理で運転されるスターラー、すなわちローター−ステータースターラー(図2)では、そのローターが有利には、環となったバッフル(ステーター)(2)の中に閉じ込められたブレード(1)またはパドルスターラー(1)からなっている。その結果、一般的には、極端に小さな容積に対して高いレベルの剪断がかけられる;
− 歯付きディスク(図4)、このスターラーを使用すると、液体が、有利には、薄いリングの中で中心から外側に放射状に加速され、次いで急速に減速される。そのため、ステーターリングやバッフル無しでも高いレベルの剪断が得られる。
【0103】
軸流および混合流のインペラには、回転面に対して90度未満の角度をなしているブレードを有するすべてのインペラが含まれる。前記インペラの非限定的な例としては、特に、以下のものが挙げられる:
− 傾斜ブレード付きパドルスターラー(傾斜ブレードタービンとも呼ばれる)[図1のインペラ(G)]およびプロペラスターラー(マリンタイプ混合プロペラとも呼ばれる)[図1のインペラ(H)]、これらは、典型的には、有利には軸流のパターンを発生させる高速ミキサーの群に属する。それらは、有利には、均質化および固体の懸濁によく適していて、典型的には、2〜3のD/dで使用される。
− 傾斜を付けた撹拌表面を有する多段(multistage)スターラー、例えば傾斜ビームを有するクロスビームスターラー[図1のインペラ(I)]ならびにMIGスターラー[図1のインペラ(L)]およびINTERMIGスターラー[図1のインペラ(M)](独国ショップハイム(Schopfheim,Germany)のエカト・カンパニー(Ekato company)製)、これらは、軸流を増進させたり、および/または、高い液体レベル対直径比(H/D>1、ここで、D=反応容器直径、H=反応容器中の液体の高さ)が必要となったりする場合には、特に適している。これらのスターラーは、低速で運転するのが有利である。これらのスターラーの直径比D/dは、有利には、バッフルと組み合わせて使用する場合には1.5を超え、バッフル無しで使用する場合には、約1.1(すなわち、1.005〜1.5の間)とする。
− 低速ヘリカルリボンスターラー[図1のインペラ(N)]、これは、一般的には、壁との間で小さなクリアランスで使用し(D/d>1.05)、典型的には、それが液体を壁に沿って押し下げるように運転される;
− 中空スターラー(図3)、これは、典型的には、中空のヘッドを有しており、中空のシャフトを通して液体媒体の上の空間に充満している気体とつながっていて、そのため一般的には、気体を液体の中に供給するのに適している;回転させたときにスターラーの縁部の後ろの発生する吸引力を有利に利用して、反応容器の中に気体を供給することが可能である。
【0104】
本発明の方法の撹拌システムのそれぞれのインペラは、有利には、タービンスターラー、インペラスターラー、グリッドインペラ、クロスビームインペラ、ブレードインペラ、低速アンカースターラー、ローター−ステータースターラー、歯付きディスク、傾斜ブレード付きパドルスターラー、プロペラスターラー、傾斜撹拌表面付き多段スターラー、低速ヘリカルリボンスターラー、および中空スターラーからなる群の中から独立して選択される。
【0105】
その撹拌システムが、少なくとも1種の傾斜ブレード付きのパドルスターラーを含んでいるのが好ましい。
【0106】
その撹拌システムが、回転面に対して、有利には60度未満、好ましくは50度未満、かつ有利には少なくとも20度、好ましくは少なくとも30度、最も好ましくは少なくとも40度の角度を作る、少なくとも1枚のブレードを含む、少なくとも1種のインペラを含んでいるのが好ましい。
【0107】
本発明の方法における混合に使用される撹拌システムには、少なくとも2つの逆方向に回転するインペラが含まれる。
【0108】
「2つの逆方向に回転するインペラ」という用語は、本明細書において使用する場合、逆の方向に回転する、すなわちその内の1つは時計回りに、もう1つは反時計回りに回転する、2つのインペラを表すものとする。
【0109】
その撹拌システムには、2つのインペラまたは3つ以上の(すなわち、3つ、4つ、またはそれ以上の)インペラが含まれていてよく、その撹拌システムが3つ以上のインペラを含んでいるならば、基本的には、それらの内の少なくとも1つが、他のものとは逆の方向に回転している。
【0110】
図7に、3つのインペラを含む撹拌システムの一例を示すが、(A)は反応容器(70)の側面図であり、それに対して(B)は同じものの断面図である。図7(A)および(B)において、反応容器(70)が壁面(71)と底面(72)によって形成される丸底を有する円筒形状となっていて、3本の平行な回転シャフト(76、77、78)にとりつけた傾斜ブレードを有する3つのパドルスターラー(73、74、75)を備えているが、それぞれのインペラは、回転面に対して45度の角度を形成する4枚の傾斜ブレード(79)を有している。インペラ(73、74、75)の内の1つが、他の2つとは逆の方向に回転している。例えば、インペラ74および75が時計回りに回転しているのに対して、インペラ73が反時計回りに回転している。
【0111】
撹拌システムに2つの逆方向に回転するインペラが含まれているのが好ましい。
【0112】
本発明の方法の混合システムのインペラは、同一のタイプであってもよいし、あるいは異なったタイプであってもよい。例えば、時計回りに回転する傾斜ブレード付きパドルスターラーを、例えば反時計回りに回転する別の傾斜ブレード付きパドルスターラーと組み合わせて使用することもできる。別な例としては、例えば時計回りに回転する傾斜ブレード付きパドルスターラーを、例えば反時計回りに回転するプロペラスターラーまたはマリンタイプのプロペラスターラーと組み合わせて使用することもできる。
【0113】
インペラの全部が同じタイプであるのが好ましい。
【0114】
撹拌システムに2つの傾斜ブレード付きパドルスターラーが含まれているのが好ましく、前記パドルスターラーが、回転面に対して約45度の角度を形成する傾斜ブレードを有しているのが、さらにより好ましい。
【0115】
撹拌システムのインペラは、同一の直径を有していてもよく、あるいは異なった直径を有していてもよい。一般的には、インペラは同一の直径を有しているであろう。この構成は、インペラが同じタイプのものである場合には特に好ましいであろう。
【0116】
逆方向に回転するインペラを同一の回転軸の周りに回転させるのならば、それらは、同軸インペラと呼ばれ、それらを異なった回転軸の周りに回転させるのならば、それらは非同軸と呼ばれる。
【0117】
インペラを異なった回転軸の周りに回転させるならば、前記回転軸は一般的には平行である。
【0118】
図8に、明らかに平行な回転軸の周りで回転するインペラを含む撹拌システムの一例を示すが、(A)が反応容器(80)の側面図であるのに対して、(B)は同じものの断面図である。図8(A)および(B)において、反応容器(80)が壁面(81)と底面(82)によって形成される丸底を有する円筒形状となっていて、2本の平行な回転シャフト(85、86)に取り付けた2つの傾斜ブレード付きパドルスターラー(83、84)を備えていて、それぞれのインペラが回転面に対して45度の角度を形成する4枚の傾斜ブレード(87)を有している。その反応容器には、一般的には、モノマー、重合開始剤、液体媒体およびその他の重合成分を供給するための手段(図示せず)、ならびに一般的には容器の底部(82)からポリマーの懸濁液を抜き出すための手段(図示せず)が備えられている。
【0119】
それらのインペラが同一の回転軸の周りに回転するのが好ましい、すなわち、それらが同軸であるのが好ましい。
【0120】
本発明の第一の実施態様においては、インペラ(54、55)を、反応容器(50)の中の別々な同軸シャフト(52および56)に取り付けるが、それらのインペラは、図5に示したように取り付けてもよいし、あるいは、反応容器の側面に、互いに向かい合うように取り付けてもよいが、これはすなわち、シャフトの軸が図5に示したように垂直であってもよいし、あるいは水平であってもよい。図5に、本発明の第一の実施態様に従った撹拌システムの例を示しているが、(A)が反応容器(50)の側面図であるのに対して、(B)が同じものの断面図である。図5(A)および(B)においては、反応容器(50)が壁面(51)と底面(57)によって形成される丸底を有する円筒形状となっていて、2本の別個の同軸回転シャフト(52、56)に取り付けた2つの傾斜ブレード付きパドルスターラー(54、55)を備えていて、前者(52)が容器の頂部から、後者(56)が底部から出ており、それぞれのインペラは、回転面に対して45度の角度を形成する4枚の傾斜ブレード(53)を有している。その反応容器には、一般的には、モノマー、重合開始剤、液体媒体およびその他の重合成分を供給するための手段(図示せず)、ならびに一般的には容器の底部(57)からポリマーの懸濁液を抜き出すための手段(図示せず)が備えられている。
【0121】
第二の本発明の好ましい実施態様においては、図6に示したように、インペラが同一の回転シャフト(60)に取り付けられている。図6に、本発明の第二の好ましい実施態様に従った撹拌システムの例を示しているが、(A)が反応容器(65)の側面図であるのに対して、(B)が同じものの断面図である。図6(A)および(B)においては、反応容器(65)が壁面(63)と底面(64)によって形成される丸底を有する円筒形状となっていて、同一の回転シャフト(62)に取り付けられた2つの傾斜ブレード付きパドルスターラー(60)を備えていて、それぞれのインペラは、回転面に対して45度の角度を形成する4枚の傾斜ブレード(61)を有している。その反応容器には、一般的には、モノマー、重合開始剤、液体媒体およびその他の重合成分を供給するための手段(図示せず)、ならびに一般的には容器の底部(64)からポリマーの懸濁液を抜き出すための手段(図示せず)が備えられている。
【0122】
本発明の方法の撹拌システムのインペラは、同一の回転速度で回転させてもよいし、あるいは異なった回転速度で回転させてもよい。
【0123】
言うまでもないことであるが、それぞれのインペラの回転の速度は、当業者周知の良好な実施手順に従って、インペラのタイプならびにインペラおよび反応容器の直径の関数として設定されるであろう。
【0124】
一般的に好ましくは、撹拌システムを用いて得られるエネルギー密度が、有利には少なくとも2kW/cm、好ましくは少なくとも2.5kW/cm、より好ましくは少なくとも3kW/cmである。
【0125】
最大エネルギー密度は、特には厳密なものではない。一般的には、撹拌システムを用いて得られるエネルギー密度は、有利には多くとも15kW/cm、好ましくは多くとも12.5kW/cm、より好ましくは多くとも10kW/cmである。
【0126】
本願出願人の考えるところでは(本発明の範囲を限定する訳ではない)、本発明の二重撹拌システムによって、所与の平均エネルギー密度において、全反応容器にわたって前記エネルギー密度の最適な分布を得ることが可能となるのが有利であり、それによって、有利なことには、局所的なエネルギー密度が一般的には単一の撹拌装置で観察されるような、2kW/mよりも低くなる、デッドゾーンの存在を回避することができる。
【0127】
インペラの回転速度は、広い範囲で変化させることが可能であるが、一般的には、それぞれのインペラの回転の速度が、有利には少なくとも150rpm、好ましくは少なくとも175rpm、より好ましくは少なくとも200rpm、かつ、有利には多くとも1500rpm、好ましくは多くとも1000rpm、より好ましくは多くとも500rpmである。
【0128】
具体的には、750〜1000mmの直径を有する反応器で、インペラの回転の速度を250〜450rpmの間で選択するのが有利である。
【0129】
一般的に、それらのインペラの回転の速度を変化させて、上側のインペラの方が、下側のインペラよりも高い回転の速度を有するようにするのが好ましい。
【0130】
具体的には、2つの同軸で逆方向に回転するインペラを備えた750〜1000mmの直径を有する反応器では、下側のインペラの回転の速度を、有利には、280〜360rpmの間に選択し、上側のインペラの回転の速度を、有利には、300〜400rpmの間に選択する。
【0131】
本発明のまた別の目的は、1.5/1以下の球形形状係数(Lmax/Lmin)と40度以下の安息角とを有する粒子の形態にあるフルオロポリマー[ポリマー(F)]である。
【0132】
本発明の方法は、上述のようなフルオロポリマー[ポリマー(F)]を得るのに特に適しているが、それにも関わらず、前記ポリマー(F)を得るには、その他の各種好適な方法を使用することもできる。
【0133】
ポリマー(F)の球形形状係数は、本発明の目的のために、顕微鏡からの画像解析によって測定した、粒子の最大寸法(Lmax)と粒子の最小寸法(Lmin)との間の比率(Lmax/Lmin)を表すものとする。
【0134】
本発明のポリマー(F)の粒子は、有利には1.4/1以下、好ましくは1.3/1以下の球形形状係数を有する。
【0135】
そのポリマー(F)の粒子は、有利には39度以下、好ましくは38度以下の安息角を有する。
【0136】
安息角は、粒子状のポリマー(F)の流動性の測定値である。ポリマー(F)の粒子を水平な表面の上に注ぐと、一般的には、円錐状の堆積物が形成される。堆積物の縁と水平表面との間の角度が安息角(図12中のα)と呼ばれ、一般的にはその物質の、密度、表面積、モルフォロジーおよび摩擦係数に関連する。低い安息角の物質は、高い安息角の物質よりも平らな堆積物を形成する。
【0137】
安息角は、ASTM D6393−99標準に従って測定することができるが、その方法によれば、オリフィス(内径:6mm、長さ:3mm)を備えたステンレス鋼のロート(漏斗(fuunel))(上側の内径:40mm、下側の内径:6mm、高さ:40mm)を、水平面(92)の上、距離20mmのところにセットする。試験するポリマー(F)をそのロートに入れ、ロートを通過させて、床面の上に堆積させて円錐状の堆積物(91)を生じさせ、次いで、その堆積させた粉末の頂部がロートの出口にまで達するまで続ける。その堆積された粉末が円錐状の堆積物(91)を形成するので、円錐状の堆積物の底の半径(mm)を測定することによって、その安息角を次式に従って計算することができる:
安息角(α)=tan−1(20/r)
この測定は23℃で実施した。
【0138】
本発明のポリマー(F)は、その粒子の球形形状係数および安息角のために、有利なことには、十分な加工性と流動性とを有していて、そのために、サイズリダクションや球状化(ペレット化)の前処理を必要とすることなく、加工例えば、自動成形またはRAM押出成形するのに好適となっている。
【0139】
本発明のさらなる目的は、成形物品を製造するための成形方法であって、前記方法には以下の工程が含まれる:
(i)重合媒体中で少なくとも1種のフッ素化モノマーを重合させる工程であって、前記重合媒体が少なくとも2つの逆方向に回転するインペラを含む撹拌システムによって混合されて、フルオロポリマー[ポリマー(F)]が得られる工程;および
(ii)前記ポリマー(F)を圧縮成形して成形物品を得る工程であって、ポリマー(F)が、圧縮成形の前に、いかなるサイズリダクション工程にもかけられない、工程。
【0140】
本発明の成形方法の重合工程(i)の特徴は、上述の重合方法のところで説明したのと同じである。
【0141】
上述の成形方法において使用されるフルオロポリマー[ポリマー(F)]が本発明のポリマー(F)であるのが好ましい。
【0142】
「サイズリダクション工程」という用語には、その平均粒径が修正されるか、および/またはその粉末のモルフォロジーが修正されるような(例えば、球形形状係数および/または安息角の修正)条件下にポリマー(F)を置く、全ての処理が含まれているものとする。
【0143】
当業者に周知のサイズリダクション工程の非限定的な例は、引延しまたは研磨工程である。
【0144】
本発明の成形方法に、当業者周知のさらなる工程が含まれていてもよいということは理解されたい。その成形方法には、特に、ポリマー(F)を重合媒体から分離させる乾燥工程、および/またはポリマー(F)を添加剤、特に、顔料、充填剤、安定剤などと混合する配合工程が含まれていてよい。
【0145】
本発明の成形方法においては、ポリマー(F)は、先にも述べたように、溶融加工不能であるのが好ましい。
【0146】
そのポリマー(F)が溶融加工不能であるとすれば、本発明の成形方法には、一般的には、以下の工程が含まれる:
(1)圧力の作用を用いてポリマー(F)を成形して予備成形物を得る工程;
(2)前記予備成形物を300℃を超える温度で焼結処理にかけて、成形物品を得る工程。
【0147】
上述のようなTFEホモポリマーおよびコポリマーは通常、340℃を超える、好ましくは350℃を超える、より好ましくは360℃を超える温度で焼結させる。
【0148】
本発明の成形方法は、上述のようなTFEホモポリマーおよびコポリマーを成形するのに特に適している。
【0149】
本発明の第一の実施態様においては、その成形方法には、自動成形によってポリマー(F)を圧縮成形する工程が含まれる。
【0150】
自動成形においては、一般的には、重量または容積計量システムによって、貯蔵ホッパ(storage hopper)からのポリマー(F)を用いて型を充填する。
【0151】
上述のように重合工程(i)で得られたポリマー(F)は、有利なことには、そのような自動成形方法において使用するのに適した自由流動特性を有しているが、特にポリマー(F)は、有利なことには、前記重量または容積計量システムを使用して、装置のブロッキングが起きる危険性もなく、有利には均質なフィード速度を維持しながら、供給することができる。
【0152】
本発明の第二の実施態様においては、その成形方法に、RAM押出法による圧縮成形が含まれる。
【0153】
RAM押出成形法においては、ポリマー(F)を、重量または容積計量装置を介して、円筒状のダイ管(die tube)の中に供給し、ラムを用いて圧縮して、ラムが、その圧縮された物質を、管を通して焼結ゾーンに押し込む。
【0154】
上述のように重合工程(i)で得られたポリマー(F)は、有利なことには、そのようなRAM押出法において使用するのに適した自由流動特性を有しているが、特にポリマー(F)は、有利なことには、前記重量または容積計量システムを使用して、装置のブロッキングが起きる危険性もなく、有利には均質なフィード速度を維持しながら、供給することができる。
【0155】
以下の実施例を参照しながら本発明をさらに詳しく説明するが、その目的は単に説明のためであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0156】
ペルフルオロプロピルビニルエーテル含量(PPVE)の測定方法
PPVE含量は、IR分光光度法により、100mgのポリマーペレットの上での994cm−1における吸収(A994)を測定し、次式に従って計算することにより求めた:
PPVE(重量%)=A994:(W*5.5)
[式中、W=ペレット重量(グラム)]
【0157】
非晶質指数は、モイニハン(Moynihan)法(J.Am.Chem.Soc.、1959、81、1045)に従ってIR分光光度法により測定し、次式によるA778とA2653の吸収の比とした:
非晶質指数=A778/A2365
【0158】
引張特性の測定方法
引張特性を測定するためには、300kg/cmの圧力下で直径90mm、重量3kgの円筒状のブロックを成形し、所定の温度プログラムに従って370℃で焼結させた。ASTM D638法に従った試験片を調製し、引張動力計により変形速度50mm/分で破断するまで引張させた。
【0159】
光学的特性および均質性特性の測定方法
光学的特性および均質性特性を測定するために、300kg/cmの圧力下で、外径100mm、内径43mmの筒状の1kgのブロックを成形した。その筒状のブロックを、370℃で焼結させ、次いで、旋盤上でスカイブ(skive)して、厚み125ミクロンを有するテープ(フィルム)とした。そのスカイビング作業のときに、下記のものの存在を肉眼で観察する方法で、テープの均質性を評価した:
− 透明な暈模様、すなわちテープよりも透明度の高い小さな点;および
− 大理石模様、すなわち、境目のはっきりしない白色ゾーン。
【0160】
そのスカイブさせたテープについて、ASTM D149法に従った絶縁耐力および、ASTM D1003法に従った球状のヘイズメータでの光学的特性(透過率およびヘイズ)を測定した。
【0161】
球形形状係数の測定方法
球形形状係数は、ポリマー(F)粒子を顕微鏡で拡大した画像解析によって測定した。形状係数は、5個の測定値を平均して求めた。
【0162】
安息角の測定方法
安息角は、ASTM D6393−99標準に従って測定することができるが、その方法によれば、オリフィス(内径:6mm、長さ:3mm)を備えたステンレス鋼のロート(上側の内径:40mm、下側の内径:6mm、高さ:40mm)を、水平面(92)の上、距離20mmのところにセットした。試験するポリマー(F)をそのロートに入れ、ロートを通過させて、床面の上に堆積させて円錐状の堆積物(91)を生じさせ、次いで、その堆積させた粉末の頂部がロートの出口にまで達するまで続けた。その堆積された粉末が円錐状の堆積物(91)を形成したので、円錐状の堆積物の底の半径(mm)を測定することによって、その安息角を次式に従って計算することができる:
安息角(α)=tan−1(20/r)
この測定は23℃で実施した。
【0163】
[実施例1]
1100リットルの全容積を有し、2つの同軸で逆方向に回転するインペラ(回転面に対して45度の角度を形成する4枚の傾斜ブレードを有するパドルスターラー、直径380mm、D/d=2.6)を有する混合システムを備えた垂直オートクレーブの中に、480Lの脱イオンかつ脱気した水を表1に示した重合開始剤(過硫酸アンモニウム、APS)と共に導入した。
【0164】
そのオートクレーブを真空ラインに接続することによって、オートクレーブ上の環境空気を排気し、次いで窒素流を用いて再充填した。そのオートクレーブの中に、コモノマーの初期量(ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、表1参照)を導入し、次いでオートクレーブを、下側のインペラを330rpmで反時計回りに、上側のインペラを360rpmで時計回りに回転させて撹拌条件下におき、TFEを用いて17バールに加圧した。オートクレーブを反応温度にまで持っていき、その温度を試験の間を通して一定に保った。反応器の圧力は、TFEを連続的に供給することによって一定に保った。
【0165】
反応の最後に、TFEの流量調節をして、系が反応して圧力が所望の値にまで低下できるようにしてから、オートクレーブを減圧させる。ポリマーを洗浄機に排出させ、母液を除去し、脱イオン水を用いて数回反応生成物を洗浄した。次いで、振動ふるいによってそのポリマーを水から連続的に分離し、オーブン中210℃で乾燥させた。重合条件、反応剤の量、粒子形状および流動性に関する結果を表2に示した。得られた反応生成物の写真を図9に示す。この二重撹拌システムによって得られたエネルギー密度は、6.3kW/cmであった。
【0166】
その乾燥させた反応生成物は、RAM押出成形および自動圧縮成形に適したものであることが判った。
【0167】
[実施例2]
1100リットルの全容積を有し、2つの同軸で逆方向に回転するインペラ(回転面に対して45度の角度を形成する4枚の傾斜ブレードを有するパドルスターラー、直径380mm、D/d=2.6)を有する混合システムを備えた垂直オートクレーブの中に、550Lの脱イオンかつ脱気した水を表1に示したレドックス重合開始剤[過硫酸アンモニウム(APS)および式(NHFe(SO・6HOである硫酸鉄アンモニウム六水和物、別名モール塩]と共に導入した。そのオートクレーブを真空ラインに接続することによって、オートクレーブ上の環境空気を排気し、次いで窒素流を用いて再充填した。
【0168】
そのオートクレーブを、下側のインペラを325rpmで反時計回りに、上側のインペラを390rpmで時計回りに回転させて撹拌条件下におき、TFEを用いて17バールに加圧した。
【0169】
加圧下に、所望の量の還元剤を導入した(表参照)。オートクレーブを反応温度にまで持っていき、その温度を試験の間を通して一定に保った。反応器の圧力は、TFEを連続的に供給することによって一定に保った。
【0170】
反応の最後に、TFEの供給を調節して、系が反応して圧力が所望の値にまで低下できるようにしてから、オートクレーブを減圧させる。ポリマーを洗浄機に排出させ、母液を除去し、脱イオン水を用いて数回反応生成物を洗浄した。次いで、振動ふるいによってそのポリマーを水から連続的に分離し、オーブン中210℃で乾燥させた。
【0171】
重合条件、反応剤の量、粒子形状および流動性に関する結果を表2に示した。この二重撹拌システムによって得られたエネルギー密度は、7.0kW/mであった。得られた反応生成物の写真を図10に示す。
【0172】
その乾燥させた反応生成物は、RAM押出成形および自動圧縮成形に適したものであることが判った。
【0173】
[比較例1]
実施例1を繰り返したが、ただし、2つの同軸で逆方向に回転するインペラを有する混合システムに代えて、バッフルなしで、単一の標準的なパドルインペラを使用した。重合条件、反応剤の量、粒子形状および流動性に関する結果を表2に示した。
【0174】
この標準的な撹拌システムによって得られたエネルギー密度は、6.6kW/mであった。
【0175】
乾燥させたポリマーを、エアジェットミル(air jets mill)の中で引延し、RAM押出成形に適した約20μmの平均重量直径(d50)を有する粉末を得た。
【0176】
[比較例2]
実施例2を繰り返したが、ただし、2つの同軸で逆方向に回転するインペラを有する混合システムに代えて、バッフルなしで、単一の標準的なパドルインペラを使用した。
【0177】
重合条件、反応剤の量、粒子形状および流動性に関する結果を表2に示した。得られた反応生成物の写真を図11に示す。
【0178】
この標準的な撹拌システムによって得られたエネルギー密度は、6.6kW/cmであった。
【0179】
乾燥させたポリマーを、エアジェットミルの中で引延し、RAM押出成形に適した約20μmの平均重量直径(d50)を有する粉末を得た。
【0180】
【表1】

【0181】
【表2】

【0182】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】インペラのスターラーのタイプを示す。
【図2】ローター−ステータースターラーを示す。
【図3】中空スターラーを示す。
【図4】歯付きディスクスターラーを示す。
【図5】本発明の第一の実施態様に従った撹拌システムにおける、反応容器の側面図および断面図である。
【図6】本発明の第二の好ましい実施態様に従った撹拌システムにおける、反応容器の側面図および断面図である。
【図7】3つのインペラを含む撹拌システムにおける、反応容器の側面図および断面図である。
【図8】平行な回転軸の周りで回転するインペラを含む撹拌システムにおける、反応容器の側面図および断面図である。
【図9】実施例1により得られた反応生成物の写真である。
【図10】実施例2により得られた反応生成物の写真である。
【図11】比較例2により得られた反応生成物の写真である。
【図12】粒子状のポリマー(F)の流動性の測定値である安息角を示す。
【図1(A)】

【図1(B)】

【図1(C)】

【図1(D)】

【図1(E)】

【図1(F)】

【図1(G)】

【図1(H)】

【図1(I)】

【図1(L)】

【図1(M)】

【図1(N)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー[ポリマー(F)]を製造するための重合方法であって、前記方法には重合媒体中で少なくとも1種のフッ素化モノマーを重合させる工程が含まれ、ここで、前記重合媒体が、少なくとも2個の逆方向に回転するインペラを含む撹拌システムにより混合される、方法。
【請求項2】
前記インペラのそれぞれが、独立して、タービンスターラー、インペラスターラー、グリッドインペラ、クロスビームインペラ、ブレードインペラ、低速アンカースターラー、ローター−ステータースターラー、歯付きディスク、傾斜ブレード付きパドルスターラー、プロペラスターラー、傾斜撹拌表面付き多段スターラー、低速ヘリカルリボンスターラー、および中空スターラー、からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記撹拌システムが、回転面に対して、有利には60度未満、好ましくは50度未満、かつ有利には少なくとも20度、好ましくは少なくとも30度、最も好ましくは少なくとも40度の角度を作る少なくとも1枚のブレードを含む少なくとも1種のインペラを含んでいる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が懸濁液中で実施される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、ラジカル開始剤の存在下でフッ素化モノマーを重合させる工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー(F)がペル(ハロ)フルオロポリマーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ペル(ハロ)フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン(TFE)のホモポリマー、またはTFEと少なくとも1種のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)とのコポリマーから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ペル(ハロ)フルオロポリマーが、TFEのホモポリマー、ならびに、
1.式CF=CFORf1’に従うペルフルオロアルキルビニルエーテル[式中、Rf1’は、C〜Cペルフルオロアルキル、たとえば、−CF、−C、−Cである];および/または
2.次式のペル(ハロ)フルオロジオキソール:
【化1】

[式中、Rf3、f4、Rf5、Rf6のそれぞれは、互いに同じであっても異なっていてもよいが、独立して、フッ素原子、場合によっては1個または複数の酸素原子を含むC〜Cペルフルオロアルキル基、たとえば−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである]
からなる群から選択される少なくとも1種のペル(ハロ)フルオロモノマー(PFM)から誘導される繰り返し単位を含むTFEコポリマー、
から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
1.5/1以下の球形形状係数(Lmax/Lmin)と40度以下の安息角とを有する粒子の形態にあるフルオロポリマー[ポリマー(F)]。
【請求項10】
成形物品を製造するための成形方法であって、前記方法が:
(i)重合媒体中で、少なくとも1種のフッ素化モノマーを重合させる工程であって、前記重合媒体を、少なくとも2つの逆方向に回転するインペラを含む撹拌システムによって混合して、フルオロポリマー[ポリマー(F)]を得る工程;および
(ii)前記ポリマー(F)を圧縮成形して成形物品を得る工程であって、前記ポリマー(F)が、圧縮成形の前に、いかなるサイズリダクション工程にもかけられない工程、
を含む方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(A)】
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【図5(B)】
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【図6(A)】
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【図6(B)】
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【図7(A)】
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【図7(B)】
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【図8(A)】
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【図8(B)】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−533508(P2009−533508A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504705(P2009−504705)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053418
【国際公開番号】WO2007/116031
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508305960)ソルヴェイ・ソレクシス・エッセ・ピ・ア (53)
【Fターム(参考)】