説明

重油燃料の往復動内燃機関における排気駆動式過給機の案内羽根装置およびその案内羽根装置の機能確保方法

【課題】本発明は、調整リング(6)によって調整可能な複数の案内羽根(2)を備え、前記調整リング(6)が、調整リング(6)の円周に分布された少なくとも2個の連結装置(8)を介して調整装置(10)に連結されている、特に排気駆動式過給機の軸流タービンの案内羽根装置に関し、機能確実性の高い案内羽根装置およびそのような案内羽根装置の機能確保方法を提供する。
【解決手段】案内羽根装置が、案内羽根を調整するために調整装置によって各連結装置に与えられた力を直接および/又は間接的に検出するための力検出装置と、および/又は、各連結装置が取っている位置を直接および/又は間接的に検出するための位置検出装置を有し、案内羽根装置がさらに、調整装置によって各連結装置に与えられた力および/又は各連結装置が取っている位置を相互に比較するためおよびその比較結果を排気ガスタービンの制御装置に伝えるための監視装置を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重油燃料の往復動内燃機関における排気駆動式過給機のタービンの案内羽根装置並びにその案内羽根装置の機能確保方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排気駆動式過給機のタービンは内燃機関の排気ガスで貫流される。その貫流排気ガスはタービンに連結された圧縮機インペラを駆動し、この圧縮機インペラは圧縮された新鮮空気を内燃機関に供給し、そのようにして効率を高める。排気ガスは、その圧力エネルギをできるだけ最良に転換するために、案内羽根装置によってタービン翼に向けて方向転換される。
【0003】
或る運転点に対してしか最良に設計されていない固定案内羽根装置のほかに、特許文献1および特許文献2において、排気ガス流を制御ないし調整するために案内羽根を調整することができるタービンの案内羽根装置が知られている。そのためにこの公知の案内羽根装置において、調整リングは、この調整リングに複数の連結装置を介して連結された調整装置によって回動でき、その際、調整レバーを介して調整リングに結合された案内羽根が回動される。
【0004】
重油燃料の往復動内燃機関において、案内羽根装置を貫流する排気ガスは多量の異物を含み、その異物は部分的に、案内羽根、調整レバー、調整リング、連結装置および調整装置にも付着し、そのためにそれらの機能を害する。調整リングが調整装置によって調整リング円周に分布された複数の連結装置を介して作動されたとき、別々の連結装置特にその調整リングや調整装置との結合部における異なった付着物量が、調整リングへの力導入を非対称にさせ、このために、軸受が荷重を受け且つ案内羽根の同期調整が害されるだけでなく、調整機構が自己固着させられる。
【0005】
このために特許文献1に、案内羽根とこの案内羽根がその中に配置されている流路の壁面との間に固着した固形粒子を、案内羽根の回動で削り取るように、流路壁面に対して案内羽根に予圧を与えることが提案されている。しかしこれでは、異物付着が認識できず、あるいは、調整機構全体において異物付着が防止できない。
【特許文献1】独国特許出願公告第10311205号明細書
【特許文献2】独国特許出願未公開第102006023661.6号(発明の名称“排気駆動式過給機の軸流タービンの案内羽根装置”)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、機能確実性の高い案内羽根装置およびそのような案内羽根装置の機能確保方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は請求項1、請求項3ないし請求項4に記載の特徴によって解決される。
【0008】
本発明の第1実施態様における案内羽根装置は、排気ガス流を調整するために、調整リングによって調整できる複数の案内羽根を有している。この調整リングは、調整リングの円周に分布された少なくとも2個の連結装置を介して調整装置に連結されている。それらの連結装置は、好適には、円周に対称に分布され、例えば2個の連結装置の場合、互いに180°ずらされ、3個の連結装置の場合、互いに120°ずらされ、さらに多くの連結装置の場合、相応した角度でずらされている。
【0009】
案内羽根装置はまた、案内羽根を調整するために調整装置によって各連結装置に与えられた力を直接および/又は間接的に検出するための力検出装置を有している。各連結装置は、調整装置の別々のアクチュエータに連結され、例えば空気圧式あるいは液圧式調整シリンダあるいは電動機に連結され、その場合、個々のアクチュエータは互いに同期される。各連結装置に1個あるいは数個のアクチュエータを付属することができる。同様に1個のアクチュエータで数個の連結装置を付勢することができる。
【0010】
調整装置によって連結装置に与えられた力を直接検出するために、例えば調整シリンダにおける圧力、連結装置における力あるいは電動機のトルクが測定される。そのために、力測定装置は、相応した圧力計、動力計、ないしトルク計を有する。
【0011】
力を間接的に検出するために、例えばアクチュエータが受けた電力あるいは機械的動力が検出される。
【0012】
案内羽根装置はさらに、調整装置によって各連結装置に与えられた力を相互に比較するためおよびその比較結果を排気ガスタービンの制御装置に伝えるための監視装置を有している。
【0013】
調整リングがアクチュエータ例えば位置制御式電動機あるいは液圧シリンダによって動かされ、その際に個々の連結装置における異なった付着物量のためあるいは他の理由から個々の連結装置の非同期調整が生じたとき、その結果として、調整リングから個々の連結装置に異なった力が与えられる。
【0014】
監視要素は、調整装置によって各連結装置に与えられた力を相互に比較することによって、そのような非同期調整を検出し、この非同期調整を排気ガスタービンの制御装置に伝える。
【0015】
非同期調整時、強く負荷される連結装置における力が、同期調整時には到達しない或る限界値を超過する。従って、監視装置は、調整装置によって各連結装置に与えられた力を相互に比較する代わりに、あるいはそれに加えて、個々の力を限界値と比較し、この限界値を超過したことによって非同期調整を検出し、この非同期調整を排気ガスタービンの制御装置に伝える。
【0016】
各連結装置に与えられた力の相互の差ないし限界値とそれを超過する力との差の大きさに応じて、制御装置が排気ガスタービンの運転を制限し、例えば負荷を抑制し、運転を完全に阻止し、例えば排気駆動式過給機を制御して停止する。この場合、例えば第1限界値とそれより大きな第2限界値が設定される。1個の連結装置に与えられた力が、ないし2個の連結装置にそれぞれ与えられた力の相互の差が、第1限界値を超過したとき、負荷抑制が指令される。その力ないし差が第2限界値を超過したとき、排気駆動式過給機が停止される。
【0017】
調整装置によって各連結装置に与えられた力の検出および相互の比較あるいは所定の限界値との比較は、排気駆動式過給機の運転前、運転中および/又は運転終了後に行われる。そのために運転前に、案内羽根が試験的に変位調整され、個々の力が検出され、相互に比較される。これにより、機能障害を早期に認識し、除去することが可能となる。また運転前の場合、排気ガス圧力がないために調整力は全体としてかなり小さくて済み、このため、個々の連結装置に与えられた力の相互の微細な差が良好に認識できる。運転中の場合、はっきりした機能障害が非常に早期に認識でき、迅速に応答できる。また運転終了後に、案内羽根が試験的に変位調整され、個々の力が検出され、例えば運転に続く期間内における浄化の必要性を検出するために、相互に比較される。
【0018】
本発明の第2実施態様における案内羽根装置は、上述した第1実施態様にほぼ相当し、力検出装置に加えてあるいはそれに代えて、各連結装置が取っている位置を直接および/又は間接的に検出するための位置検出装置を有している。
【0019】
各連結装置が取っている位置を直接検出するために、例えば各連結装置の移動行程および/又は角度が検出される。その位置を間接的に検出するために、例えば調整シリンダの移動行程あるいは電動機の回転角が測定される。
【0020】
第2実施態様における案内羽根装置の監視装置は、各連結装置が取っている位置を相互に比較し、その比較結果を排気ガスタービンの制御装置に伝える。
【0021】
調整リングがアクチュエータ例えば力制御式電動機や液圧シリンダによって動かされる場合、個々の連結装置における異なった付着物量のためにあるいは他の理由から、個々の連結装置の非同期調整が生じ、その非同期調整は、各連結装置が取っている位置の相互の比較によって認識される。その場合勿論、個々の連結装置の異なった伝達比やてこ比が考慮されねばならない。調整リングを同じ角度範囲だけ回動するために、例えば一方の連結装置が他方の連結装置の2倍の大きさの角度を移動させねばならないとき、調整リングを同じ角度だけ回動するためには、案内羽根の変位調整時におけるその位置の変化は、他方の連結装置の位置と比べられる前の半分とされる。
【0022】
また、各連結装置が取っている位置の相互の差の大きさに応じて、制御装置が排気ガスタービンの運転を制限するか、あるいは運転を完全に阻止し、その場合さらに、例えば第1限界値の超過時に負荷抑制を指令し、第2限界値の超過時に排気駆動式過給機を制御して停止するために、種々の限界値が設定される。
【0023】
各連結装置が取っている位置の検出およびそれらの相互比較は、排気駆動式過給機の運転前、運転中および/又は運転終了後に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の上述した第1実施態様および第2実施態様における案内羽根装置によれば、案内羽根、調整レバー、調整リング、連結装置あるいは調整装置における異物粒子の付着のために生じて案内羽根装置の機能を害する個々の連結装置の非同期調整が検出できる。これに対応して、適切な対抗処置、例えば負荷抑制や、点検目的および浄化目的のための排気駆動式過給機の停止が応答され、そのようにして、案内羽根装置の機能確保が保証される。
【0025】
しかし、かかる機能障害を早期に検出するだけでなく、機能障害を引き起こす付着物を特に適時に除去すること、およびそのようにしてかかる機能障害の危険を低減することが望まれる。
【0026】
そのために、本発明の第3実施態様において、排気駆動式過給機の運転前、運転中および/又は運転終了後に、調整装置によって両側終端位置間を変位調整可能な案内羽根が、まず両側終端位置の一方の位置に変位調整され、続いて、その一方の位置から出発して両側終端位置の他方の位置に変位調整される、ことを提案する。換言すれば、排気駆動式過給機の運転前、運転中および/又は運転終了後に、案内羽根が少なくとも1回だけ、調整範囲全体にわたって変位調整される。その終端位置は、例えば機械的ストッパによってあるいは調整装置の制御装置における相応して指令によって一定してあるいは可変的に設定された案内羽根の終端位置によって形成され、即ち、最大開放ないし最大閉鎖された案内羽根装置に相当している。同じようにして、終端位置はそれと異なって規定できる。即ち、本発明の意味において終端位置は、例えば、機械的ストッパへの突き当たりを防止し、そのようにして調整装置を大事にするために、案内羽根装置の機械的に可能な最大開放位置ないし閉鎖位置の僅か手前に選定することもできる。
【0027】
案内羽根や調整機構の構成要素に付着した付着物が、案内羽根の変位調整時に機械的に除去される。例えば案内羽根自体が、案内羽根の端面とそれに対向して位置する流路の壁との間に付着した異物を擦り取る。調整装置が1個あるいは複数個の連結装置を介して調整リングに連結されているとき、第1実施態様および第2実施態様において既に述べたように、調整リングが調整レバーを介して個々の案内羽根を動かし、そのようにして、連結装置がその運動によって、各連結装置を調整装置ないし調整リングに結合している連結部を浄化する。例えば、液圧シリンダのピストンが、その往復運動時にシール舌片における異物を擦り取り、あるいは、線形スピンドル伝動装置のスピンドル上を移動するナットが、スピンドルのねじ溝から異物を除去する。
【0028】
通常運転中、案内羽根は全調整範囲の小さな部分範囲にわたってしか変位調整されず、従って、この変位調整時に通過されない壁部位や連結部位やねじ部位が、運転時間の増大と共に付着物が増える。これは特に、(例えば負荷低下時や瞬間的な最大負荷要求時)案内羽根が一方の終端位置まで変位調整されねばならないときに危険である。即ち、通常運転中では滅多に通過されないか全く通過されない位置への変位調整が、相応した最外側の壁部位や連結部位やねじ部位における付着物によって妨げられる。従って、本発明の第3実施態様において、排気ガス流の制御ないし調節のために実際に必要な案内羽根の変位調整と無関係に、全調整範囲が少なくとも1回だけ完全に通過され、そのようにして、通常運転中では滅多に通過されないか全く通過されない領域における付着物も除去される。
【0029】
調整範囲が排気駆動式過給機の運転前に通過されるとき、これにより、それまでの間に堆積されて運転の受入れを妨げる付着物が除去される。排気ガスの圧力のもとでは案内羽根や調整機構に付着されないそのような異物粒子は、排気ガス圧力が存在しないためにそれほど強く固着されず、調整範囲の通過時にまだ容易に除去される。
【0030】
調整範囲が排気駆動式過給機の運転中に通過されるとき、付着物は殆んど早期に除去される。これにより、相応した多量の付着物の堆積および固着が防止される。その場合、付着物が排気ガス流によって一緒に運ばれ、案内羽根装置から搬出されることが有利である。
【0031】
排気駆動式過給機の運転終了直後に調整範囲が通過されることにより、排気ガス流制御に使用しない案内羽根装置の調整によって運転の障害が防止される。運転前の通過と同様に、排気ガス圧力が克服される必要がないので、僅かな力しか必要とされない。運転終了直後において、付着物がまだ乾燥などによって化学的に硬化されておらず、従って、容易に除去できる。
【0032】
案内羽根の両側終端位置の一方の位置および/又は他方の位置への変位調整中、そのために必要な力が、直接および/又は間接的に検出される。それに加えてあるいはその代わりに、案内羽根が取っている位置が、直接および/又は間接的に検出される。第1実施態様および第2実施態様に関して上述したように、変位調整のために必要な力ないし所定の調整力のもとに案内羽根が取っている位置から、付着物による調整機構の障害が推論できる。調整リングが調整装置によって例えば1個あるいは数個の連結装置を介して回動され、その際に調整装置の1個あるいは数個のアクチュエータが意図しない大きな力を与えねばならず、ないしは、過度に大きな動力を受けねばならず、あるいは、支障のない調整機構の場合に所定の十分な力を付与しても案内羽根が所定の位置に到達しないとき、これは、付着物による調整機構の障害を意味する。
【0033】
この場合、第1実施態様および第2実施態様に関して上述したように、排気ガスタービンの運転が制限され、ないし阻止される。即ち、浄化目的のための全調整範囲の通過が同じように同期調整の機能検査のために利用されることにより、第3実施態様が第1あるいは第2の実施態様と組み合わされる。
【0034】
それに加えてあるいはそれに代えて、案内羽根の両側終端位置の一方の位置および/又は他方の位置への変位調整中に必要な力ないし案内羽根が取っている位置の監視も、浄化の必要性を検出するために利用される。即ち、調整機構が支障なしに機能し、付着物により許容できないほどに妨げられていないことが、力や取られた位置を用いて認識されるまで、案内羽根は複数回にわたり両側終端位置の一方の位置および/又は他方の位置に変位調整される。
【0035】
例えば動力計やトルク計を介して直接、あるいは受けた動力を介して間接的に検出される調整装置によって与えられた力が、変位調整が付着物によって過度に強く妨げられていることを表す所定の限界値をもはや超過しなくなるまで、例えば案内羽根が両側終端位置の一方の位置から他方の位置に変位調整され、再び元の終端位置に変位調整される。同じようにして、案内羽根が所定の力によって所定の最低位置に、例えば一方および/又は他方の終端位置に変位調整できるまで、案内羽根が両側終端位置間を変位調整される。
【0036】
それに加えてあるいはそれに代えて、排気駆動式過給機の運転前に、および/又は各運転終了後に、および/又は、排気駆動式過給機の各運転中に所定の時間間隔で、全調整範囲にわたる変位調整が所定の最低回数実施される。
【0037】
同じように、力ないし案内羽根位置を用いて案内羽根装置の障害が認識されたとき、浄化目的で全調整範囲にわたる通過が実施される。
【0038】
上述の説明から明らかなように、第1実施態様あるいは第2実施態様の特徴を第3実施態様の特徴と組み合わせることは必要ではないが、有利である。
【0039】
本発明の他の課題、利点および特徴は、従属請求項および以下に述べる実施例から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1は、重油燃料の2サイクルディーゼルエンジンの排気駆動式過給機の軸流タービンにおける本発明の第1実施態様に応じた案内羽根装置を示している。この案内羽根装置は、調整リング6によって調整できる複数の案内羽根2を有し、これらの案内羽根2は、案内羽根ホルダ(静翼ホルダ)3に支持されている。調整リング6に調整レバー5を介して結合された案内羽根2は、タービン軸線Aを中心とした調整リング6の回転によって回動され、そのようにして、排気ガス流を調整する。
【0041】
調整リング6は、その円周に分布された2個の連結装置8を介して調整装置に連結されている。この調整装置は、この実施例において、調節モータの形をした2個のアクチュエータ10を有している。調整リング6とアクチュエータ10はそのために、詳細に図示されていない様式で、アクチュエータ10の出力軸(図示せず)の回転が連結装置8のスピンドル7を回転するように互いに結合され、これにより、スピンドル7のねじにかみ合うナット9がスピンドル7に対して軸方向に相対移動される。連結装置8とナット9は調整リング6ないし排気駆動式過給機の排気ガス入口室(図示せず)に固定され、これにより、アクチュエータ10の出力軸の回転が、線形スピンドル伝動装置7〜9によって、調整リング6の回転に変換され、その調整リング6が案内羽根2を回動する。
【0042】
連結装置8は調整リング6の円周に対称に分布され、その力導入によって、調整リング6の自律的な調心を生じさせる。このために、両連結装置に同期して力導入することを保証することが必要とされる。これに対して、非同期的力導入は調整リングの固着(かじり)を生じさせてしまう。
【0043】
そのために実施例の案内羽根装置は、調整装置10により案内羽根2を調整するために連結装置8に与えられた力を間接的に検出するための力検出装置を有している。この力検出装置の動力計(図示せず)は、アクチュエータ10が受けた動力、例えば電動機が受けた電力を検出する。その電力に、効率や伝達比を考慮に入れて連結装置8に相応した与えられた力が関連づけられる。
【0044】
案内羽根装置はさらに監視装置(図示せず)を有している。この監視装置は、調整装置10から各連結装置8に与えられた力を相互に比較する。その際、所定の限界値を超過する差が生ずると、監視装置は排気ガスタービンの制御装置に相応した信号を伝える。
【0045】
運転中、2サイクルディーゼルエンジンの排気ガスからの異物粒子が、特に案内羽根2、調整リング6および連結装置8に付着し、それらの動きを妨げる。このために一方では、基本的に案内羽根装置の機能が害される。他方では、両連結装置8が時間の経過と共に付着物により異なった度合いで害され、このために、両アクチュエータ10の同じ調整トルクが、両連結装置8において異なった力を生じさせ、これにより、非同期的力導入を生じさせる。
【0046】
そのような非同期的な力導入を防止するために、排気駆動式過給機の運転中、上述したように、案内羽根2を調整するために調整装置10から連結装置8に与えられた力が、両アクチュエータ10が受けた電力を介して間接的に検出される。両アクチュエータ10は位置制御され、案内羽根2の所望の回動距離に相当する所定の角度位置に到達することを試みる。一方の連結装置8が付着物により他方の連結装置8よりひどく妨げられたとき、所定の角度位置まで動かすため、そして、付着物により生ずる摩擦力・排除力に打ち勝つために、相応したアクチュエータ10はより多くの電力を受ける。
【0047】
監視装置は調整装置10から各連結装置8に与えられた力を相互に比較する。その力は受けた電力から力検出装置で間接的に検出される。その監視装置が所定の限界値を超過する差を検出したとき、監視装置は排気ガスタービンの運転を制限し、相応した警報を発する。その際、点検作業員が案内羽根装置を浄化する。差が所定の限界値を超過している限り、排気ガスタービンの制御装置において負荷が相応して抑制される。
【0048】
さらに、付着物による案内羽根装置の障害を単に検出するだけでなく、その障害を防止し、そのようにして、案内羽根装置の機能を保証するために、排気駆動式過給機の運転終了後、案内羽根がまず、その両側終端位置の一方の位置、即ち、案内羽根が例えば全閉あるいはほぼ全閉される。続いて案内羽根が、その一方の終端位置から他方の終端位置に変位調整され、即ち、案内羽根が例えば全開あるいはほぼ全開される。換言すれば、排気駆動式過給機の運転が終了された直後で、案内羽根2、調整リング6および連結装置8における付着物がまだ固着(硬化)しないうちに、案内羽根装置の全調整範囲が通過させられる。その際、通常運転中では滅多に通過されない範囲でも付着物が機械的に除去される。
【0049】
案内羽根の終端位置への変位調整中、非同期的力導入について上述したように、そのために必要な力が、各アクチュエータ10が受けた電力を介して間接的に検出される。これらの力はいまや互いに比較されず、所定の限界値と比較される。少なくともその一方の力が限界値を超過したとき、これは、案内羽根装置の調整を許容できないほど害する付着物がなお存在していることを意味する。従って、すべての力が限界値を下回る(これは案内羽根装置が付着物などによってもはや許容できないほどに妨げられないことを意味する)まで、案内羽根2が両側終端位置間を変位調整される。
【0050】
付着物の堆積と固着(硬化)を早期に防止するために、上述した調整範囲全体の通過が排気駆動式過給機の運転中も追加的に、それに伴って生ずるタービン・圧縮機出力の変化が是認できる限りにおいて実施されることができる。その際に案内羽根2の調整のために必要な少なくとも一方の力が所定の限界値を超過したとき、付着物が十分に除去されるまで、および/又は、同時に排気駆動式過給機の負荷が抑制され、即ち、その運転が制限されるまで、調整範囲の通過が続けられる。
【0051】
異なった実施例において、案内羽根の調整中、案内羽根が取っている位置ないしこの位置に相応した連結装置8の位置が、連結装置8に対するナット9の相対運動を行程計(図示せず)が検出することにより、間接的に検出される。そのナット9の相対運動は、調整レバー5を介して案内羽根2の相応した位置に転換される。これにより、ナット9の位置から案内羽根2が取っている位置を位置検出装置(図示せず)が検出できる。ナット9の位置の代わりに、アクチュエータの角度位置を同じように検出することもできる。
【0052】
両アクチュエータ10が力制御して作動されたとき、即ち、案内羽根2を所定の位置に調整するために両アクチュエータ10にそれぞれ所定の力が与えられたとき、案内羽根2、調整リング6、調整レバー5あるいは連結装置8における付着物が、その変位調整に対する運動抵抗を高め、その付着物は所定の調整ができないようにさせる。このため、位置検出装置で検出された案内羽根の位置からも、付着物による案内羽根装置の障害が推論できる。それに応じて、付着物を除去するために、運転が制限され、あるいは調整範囲が1回あるいは複数回にわたり通過される。
【0053】
浄化目的のために調整範囲全体を通過することおよびそのために必要な力あるいは案内羽根又は連結装置が実際に取っている位置から付着物による障害を検出することのさらなる利点は、通常運転中では滅多に通過されない調整範囲の周縁領域の近くの付着物による障害が早期に認識でき、対抗処置が講じられる、ことにある。これによって、限界状態でも、例えば負荷低下などに対しても、案内羽根装置の機能が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に基づく案内羽根装置の正面図。
【符号の説明】
【0055】
2 案内羽根
6 調整リング
8 連結装置
10 調整装置(アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整リング(6)により調整できる複数の案内羽根(2)を備え、前記調整リング(6)が、調整リング(6)の円周に分布された少なくとも2個の連結装置(8)を介して調整装置(10)に連結されている、排気駆動式過給機の特に軸流タービンの案内羽根装置において、
案内羽根装置が、案内羽根を調整するために調整装置によって連結装置に与えられた力を直接および/又は間接的に検出するための力検出装置と、および/又は、連結装置が取っている位置を直接および/又は間接的に検出するための位置検出装置を有し、案内羽根装置がさらに、調整装置によって各連結装置に与えられた力および/又は連結装置が取っている位置を相互に比較するためおよびその比較結果を排気駆動式過給機の制御装置に伝えるための監視装置を有していることを特徴とする排気駆動式過給機の特に軸流タービンの案内羽根装置。
【請求項2】
各連結装置が調整装置の別々のアクチュエータに連結され、力検出装置が、アクチュエータが受けた動力と、アクチュエータにより発生された力やトルクと、および/又は、各連結装置および/又は調整リングに作用する力やトルクとを検出することを特徴とする請求項1に記載の案内羽根装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の案内羽根装置の機能を、排気駆動式過給機の運転前、運転中および/又は運転終了後に確実に遂行する方法において、案内羽根を調整するために調整装置によって各連結装置に与えられた力を直接および/又は間接的に検出する段階と、および/又は、連結装置が取っている位置を直接および/又は間接的に検出する段階と、調整装置によって各連結装置に与えられた力および/又は各連結装置が取っている位置を相互に比較する段階と、案内羽根の調整中にそのために必要な力、それらの力の差、および/又は連結装置が取っている位置とその設定位置との差が所定の限界値を超過したとき、排気ガスタービンの運転を制限あるいは阻止する段階とを有していることを特徴とする案内羽根装置の機能確保方法。
【請求項4】
調整装置(10)によって両側終端位置間を調整可能な複数の案内羽根(2)を備えた特に重油燃料の往復動内燃機関における排気駆動式過給機の軸流タービンの案内羽根装置の機能を、排気駆動式過給機の運転前、運転中および/又は運転終了後に確保する方法において、案内羽根を両側終端位置の一方の位置に変位調整する段階と、案内羽根をその一方の位置から出発して両側終端位置の他方の位置に変位調整する段階とを有していることを特徴とする特に重油燃料の往復動内燃機関における排気駆動式過給機の軸流タービンの案内羽根装置の機能確保方法。
【請求項5】
案内羽根の両側終端位置の一方の位置および/又は他方の位置への変位調整中、そのために必要な力が直接および/又は間接的に検出されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
案内羽根の両側終端位置の一方の位置および/又は他方の位置への変位調整中、案内羽根が取っている位置が直接および/又は間接的に検出されることを特徴とする請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
案内羽根の両側終端位置の一方の位置および/又は他方の位置への変位調整中、そのために必要な力および/又は案内羽根が取っている位置とその設定位置との差が所定の限界値を超過したとき、排気ガスタービンの運転が制限あるいは阻止されることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
排気駆動式過給機の運転前、運転中および/又は運転終了後に、案内羽根が複数回にわたり両側終端位置の一方の位置および/又は他方の位置に変位調整されることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−309323(P2007−309323A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132037(P2007−132037)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ ディーゼル エスエー (59)
【Fターム(参考)】