説明

金型取付構造、金型セット及びシェルモールド造型機

【課題】シェルモールド造型機において、鋳型を変更するときの段取替作業を容易にすると共に作業時間を短縮する。また予定していない場所又はタイミングで鋳型を切り離す事故の発生を防ぐことにより、不良な鋳型の発生を防止する。
【解決手段】コイルバネ3bを使用した押ユニット3により突張ピン3aを移動金型2に向かって押し、その反力によって移動連結板7を移動押出板9に向かって押す構成とし、移動金型2、移動連結板7、移動押出ピン7a、移動返しピン7c及び押ユニット3を組み付けてなるバネ付段取セットを有する移動金型取付構造14とする。そして、シリンダ15によって移動押出板9を押したときだけ、移動押出板9によって押された移動連結板7が移動金型2に近づき、移動連結板7に取り付けた移動押出ピン7aが移動金型2のキャビティ面2aから先端7bを突き出し、鋳型をキャビティ面2aから切り離す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物の製造に使用される鋳型の生産、特に中子の生産に使用されることの多いシェルモールド造型に係り、金型を取り替える作業を容易にすると共に不良な鋳型の発生を防止する効果が得られる、金型取付構造、金型セット及びシェルモールド造型機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シェルモールド造型では、レジンコーテッドサンド(以下単に「RCS」という。)を所定の焼成温度に加熱した金型セットのキャビティに吹き込み、金型セットの中でRCSを焼成させることにより鋳型を製造している。また金型セットは固定金型と移動金型を組み合わせて構成したものである。
固定金型も移動金型も金型取付構造の一部を構成しており、従来の金型取付構造は、金型をダイプレートに取り付け、金型とダイプレートの間に連結板を設けていた。さらに、連結板とダイプレートとの間に押出板を設け、連結板と押出板をボルトで締結し、押出板を押し引きすることによって連結板を移動させていた。
また連結板に押出ピンを取り付け、連結板を金型に接近させたときに、押出ピンは金型を貫通してキャビティ面からその先端を突き出し、鋳型が押出ピンに押されてキャビティ面から分離するようにしていた。また連結板に頭部を有する返しピンを取り付け、連結板を金型に近づけたときに、返しピンは金型を貫通して金型の合面からその頭部を出すようにしていた。一方連結板を金型から遠ざけたときに、返しピンの頭部が金型の合面に設けた窪みの中に収まるようにしていた。
そして金型セットを構成したときには、相手側の金型の合面によって返しピンの頭部が押され、返しピンの頭部が窪みの中に押し込められた位置において連結板が位置決めされた状態(以下単に「押位置決状態」という。)になるようにし、押位置決状態において、押出ピンの先端が金型のキャビティ面と一致して、押出ピンの先端の面が金型のキャビティ面の一部を構成するようにしていた。
以上のような従来の金型取付構造においては、予め金型に押出ピンと返しピンと連結板を取り付けた状態のセット(以下単に「段取セット」という。)にして、製造する鋳型を変更するときは、使用済みの金型の段取セットを取り外して、次に使用する金型の段取セットを取り付ける作業(以下単に「段取替作業」という。)を行っていた。
【0003】
従来の段取替作業では、段取セットの金型をダイプレートにボルト締めして取り付けた後に、押出板とダイプレートの間の狭い隙間に手を入れ、押出板側から連結板に向けてボルトを挿入し、押出板に対して連結板をボルト締めにより締結していた。
しかし従来行っていた、連結板と押出板とを締結するボルト締め作業は、狭いスペースの中に手を挿入して、多数のボルトを締め付けるという困難な作業を要する問題と、段取替作業に要する時間が過大となることから、シェルモールド造型機の稼働率を低下させる問題があった。
さらに、連結板と押出板とを締結するボルトを強く締め付けたとしても、多数の鋳型を生産すると、時間の経過と共にボルトが弛む問題があった。連結板と押出板とを締結するボルトに緩みが発生すると、金型が移動する間に押出ピンがキャビティ面から先端を出してしまい、予定していない場所とタイミングで鋳型を押し出す事故が発生し、落下した鋳型が不良品となる問題があった。
特に移動金型を転倒させて、移動合面を重力方向下に向けて鋳型を取り出すシェルモールド造型機では、連結板と押出板を締結するボルトが弛んだ場合は、自重により連結板が移動して押出ピンが鋳型を押してしまい、移動合面が完全に下に向く前に、鋳型が移動金型から離れて落下してしまう事故が発生した。
また「シェルモールド」「金型」及び「バネ」をキーワードとして特許電子図書館のキーワード検索を行ったところ、上金型と下金型とからなる保持型の中に上主型と下主型を入れ、バネで支持する傾動鋳造用砂型装置の発明があった(例えば、特許文献1参照。)が、本願発明とは全く異なる発明と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−34080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明の目的は、製造する鋳型を変更するときの段取替作業を容易にし、段取替作業に要する時間を短縮して、シェルモールド造型機の稼働率を向上させると共に、予定していない場所又はタイミングで鋳型を押し出す事故の発生を防いで、不良な鋳型の発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
バネ又はバネを使用した押ユニット(以下単に「バネ等」という。)により連結板を押出板に向かって押す構成とし、押引機構によって押出板を強制的に押したときだけ、押出板によって押された連結板が金型に近づき、連結板に取り付けた押出ピンが金型のキャビティ面から先端を突き出し、鋳型をキャビティ面から切り離す構成とする。
【発明の効果】
【0007】
バネ等によって連結板が押出板に向かって押されているので、金型を転倒させて合面を重力方向下に向けても、押出ピンがキャビティ面から先端を出すことはなく、所定の位置以外の位置において、また所定のタイミング以外のタイミングにおいて、鋳型が金型から切り離されることがなくなり、不良な鋳型の発生を防ぐことができた。
予め金型、連結板、押出ピン、返しピン及びバネ等を取り付けた状態のセット(以下単に「バネ付段取セット」という。)とし、バネ付段取セットをダイプレートに取り付ける構成としたため、狭いスペースに手を入れて多数のボルトを挿入して締め付ける、という困難な作業が不必要となり段取替作業が楽になった。さらに段取替作業に要す間が短縮し、シェルモールド造型機の稼働率を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】固定金型取付構造と移動金型取付構造を離した状態の断面図である。
【図2】金型セットを構成した状態の断面図である。
【図3】移動金型取付構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
金型をダイプレートに取り付け、金型とダイプレートの間に連結板を設け、連結板に押出ピンと返しピンを取り付け、押出ピンは金型を貫通してキャビティ面からその先端を出すことが可能な構成とし、返しピンは頭部を有するものとし、返しピンは金型を貫通して合面から頭部を出すことが可能な構成とする。
金型の大きさの違い、キャビティーの位置や形状の違いによって、返しピンの長さ、押出ピンの長さ及び先端の面の形状が異なり、返しピンや押出ピンを取り付ける位置や本数も異なるため、金型毎に返しピン、押出ピン及び連結板の組合せを用意しておくことが好ましい。
また連結板とダイプレートとの間に押出板を設け、さらに押出板を押し引きする押引機構を設け、押出板によって連結板を金型に向かって押す構成とした金型取付構造とする。押引機構としては油圧シリンダ、液圧シリンダ、空圧シリンダなどのシリンダを使用したり、電動シリンダやボールネジを使用することが可能である。
またバネにより連結板を押出板に向かって押す構成とし、返しピンの頭部が金型の合面又は合面に設けた窪みの底面によって止められることにより、連結板が位置決めされた状態(以下単に「止位置決状態」という。)となるものとし、止位置決状態において押出ピンの先端が金型のキャビティ面と一致して、押出ピンの先端の面が金型のキャビティ面の一部を構成するようにした金型取付構造とする。
【0010】
連結板と押出板との間にバネを設ける構成もあるが、金型と連結板の間にバネを設けると、単純な構成となるため好ましい。バネとしてはコイルバネ、板バネ及び皿バネなどを使用することができ、バネの種類についてはこだわるものではない。またバネは複数個設けるものとし、とくに4〜12個設けることが適当である。
金型の合面には返しピンの頭部が収まる窪みを設ける。返しピンを取り付ける自分側の金型に窪みを設ける場合が多いが、金型セットを構成する相手側に窪みを設けることも可能である。相手側に窪みを設けた場合は自分側の金型の合面によって返しピンの頭部が止められて止位置決状態位置になるようにし、自分側の金型に窪みを設けた場合は窪みの底面によって返しピンの頭部が止められて止位置決状態位置になるようにすればよい。
そして、押引機構により押出板を金型に向かって押すことにより、押出板によって押された連結板が金型に近づき、金型のキャビティ面から押出ピンの先端を突き出し、金型から鋳型を切り離して、鋳型を金型から取り出すようにする。
以上の構成とすれば、押引板を押引機構と共にダイプレートに常に取り付けた状態にして、製造する鋳型を変更する時は、金型と返しピンと押出ピンと連結板とバネを取り付けたバネ付段取セットを用意して、バネ付段取セットをまとめて一緒に取り替えることにより、段取替作業を行うことが可能になる。
【0011】
移動金型を移動ダイプレートに取り付け、移動金型と移動ダイプレートの間に移動連結板を設け、移動連結板に移動押出ピンと移動返しピンを取り付け、移動押出ピンは移動金型を貫通してキャビティ面からその先端を出すことが可能な構成とし、移動返しピンは頭部を有するものとし、移動返しピンは移動金型を貫通して移動合面から頭部を出すことが可能な構成とする。
また移動連結板と移動ダイプレートとの間に移動押出板を設け、さらに移動押出板を押し引きする押引機構を設け、移動押出板によって移動連結板を移動金型に向かって押す構成とした移動金型取付構造とする。
そして、バネにより移動連結板を移動押出板に向かって押す構成とし、移動返しピンの頭部が移動合面又は移動合面に設けた窪みの底面によって止められることにより、移動連結板が止位置決状態となるものとし、止位置決状態において移動押出ピンの先端が移動金型のキャビティ面と一致して、移動押出ピンの先端の面が移動金型のキャビティ面の一部を構成するようにした移動金型取付構造とする。
本段落の発明は段落番号0009及び0010に記載した、金型取付構造を移動金型取付構造として表現したものである。固定金型を取り付ける場合にも本発明は使用可能であるが、移動金型を取り付ける場合において特に有用だからである。
【0012】
上記した金型取付構造又は移動金型取付構造であって、バネを組み込んだ押ユニットを設け、押ユニットにより連結板又は移動連結板を押出板又は移動押出板に向かって押すものとする。押ユニットは複数セット設け、とくに4〜12セット設けることが好ましい。
そして押ユニットはコイルバネと、コイルバネを収納するケースと、コイルバネによって金型又は移動金型に向かって押される突張ピンとを有するものとし、突張ピンはケースから片方の端部を金型又は移動金型に向かって突き出す構成とした、金型取付構造又は移動金型取付構造とする。
金型とバネの間に断熱材を挟み、断熱材と連結板の間にバネ取り付けて、バネで直接連結板を押す方法も好ましいが、突張ピンを設けて突張ピンによって金型を押し、その反力によって連結板を押出板に向かって押す構成にすると、加熱された金型からコイルバネに伝わる熱量が少なくなり、バネ綱が熱により変質することがなく好ましい。
【0013】
移動金型取付構造と固定金型取付構造を組み合わせてなる金型セットとする。固定金型取付構造は、固定ダイプレートに取り付けた固定金型と、固定金型と固定ダイプレートの間に設けた固定連結板と、固定連結板に取り付けた固定押出ピンと固定返しピンを有するものとし、固定押出ピンと固定返しピンはそれぞれ固定金型を貫通させて取り付ける。
また固定連結板を固定金型に向かって押すバネを設け、自由な状態においては固定押出ピンは固定金型のキャビティ面からその先端を突き出し、また固定返しピンは固定合面からその頭部を突き出すものとする。
そして固定金型の固定合面と移動金型の移動合面を合わせて金型セットを構成したときに、移動合面又は移動合面に設けた窪みの底面によって、固定返しピンの頭部が押されることにより、固定連結板が位置決めされた状態である押位置決状態となるものとし、押位置決状態において、固定押出ピンの先端が固定金型のキャビティ面と一致して、固定押出ピンの先端の面が固定金型のキャビティ面の一部を構成するようにした移動金型取付構造とする。
固定金型では、バネにより常に連結板を金型に向かって押すようにし、鋳型を焼成した後に移動金型が固定金型から離れるときに、固定返しピンの頭部が移動合面又は移動合面に設けた窪みの底面に接触した状態で、固定返しピンが移動金型の移動と共に移動し、固定返しピンの移動に伴い固定押出ピンの先端がキャビティ面から突き出し、鋳型を固定金型のキャビティ面から切り離す構成にしたものである。
【0014】
上記した金型セットを有し、さらにガイドシャフトとガイドシャフトに取り付けたガイドを設け、移動ダイプレートをガイドに取り付け、ガイドシャフト上を移動ダイプレートがスライド移動可能に構成し、さらに移動ダイプレートをスライド移動させるための、スライド駆動部を設けたスライド機構付金型セットとする。
また移動ダイプレートとガイドとの間に軸受部を設け、軸受部を中心にして移動金型取付構造を90度転倒させ、移動金型の移動合面を重力方向下に向けることを可能に構成した転倒機構付金型セットとする。
また金型セットを上下反転させる反転装置を設け、金型セットの中の不要なRCSを回収することを可能に構成した反転機構付金型セットとする。
さらに金型セットのキャビティにRCSを吹き込む吹込装置、RCSを吹込装置に供給するRCS供給装置、金型セットの中でRCSを焼成させるために、固定金型と移動金型を加熱するための加熱機構を有するシェルモールド造型機とする。
本段落に記載した発明は、段落番号0013に記載した金型セットと、公知のスライド機構、公知の転倒機構、公知の反転機構、公知の吹込装置、公知のRCS供給装置及び公知の加熱機構を組み合わせた発明である。
【実施例1】
【0015】
以下本発明の実施例1を図1〜図3に示し説明する。実施例1の金型セット11は固定金型取付構造12と移動金型取付構造14を有している。固定金型取付構造12は、固定ダイプレート4と、固定ダイプレート4のブラケット4aに対してボルト締めにより取り付けた固定金型1と、固定ダイプレート4と固定金型1との間に取り付けた、固定連結板6と固定押出板8を有するものとした。
固定連結板6と固定押出板8との間に取付ブロック8cをかませ、固定連結板6と固定押出板8とをボルト締めして一体にした。また固定ダイプレート4と固定押出板8の間にスライドピン8aとバネ8bを設け、バネ8bによりスライドピン8aを固定金型1に向かって押すものとし、ストッパ8dによりスライドピン8aが停止する構成とした。
固定連結板6には複数の固定押出ピン6aと4個の固定返しピン6cを、それぞれ固定金型1を貫通させて取り付け、固定合面1bには固定返しピン6cの頭部6dが収まる窪み1cを設けた。
図1に示した自由な状態においては、固定バネ8bによりスライドピン8aを介して固定押出板8が押され、固定連結板6が最も固定金型1に近づいた所定の位置になり、所定の位置において固定押出ピン6aはその先端6bをキャビティ面1aから突き出し、固定返しピン6cは頭部6dを固定合面1bから突き出すようにした。
また図2に示した金型セット11を構成したときには、固定返しピン6cの頭部6dは移動金型2の移動合面2bに押されて窪み1cの中に収まり、固定連結板6が位置決めされて押位置決状態となり、固定押出ピン6aの先端6bはキャビティ面1aと一致して、固定押出ピン6aの先端6bの面はキャビティ面1aの一部を構成するようにした。
【0016】
移動金型取付構造14は、移動ダイプレート5と、移動ダイプレート5のブラケット5aに対してボルト締めにより取り付けた移動金型2と、移動ダイプレート5と移動金型2との間に取り付けた、移動連結板7と移動押出板9を有するものとした。
移動連結板7の移動押出板9側には押ブロック7eを取り付け、押ブロック7eと移動押出板9との間は結合しない構成とした。
また移動金型2と移動連結板7との間に押ユニット3を6セット設けた。押ユニット3はケース3cに入れたコイルバネ3bと、コイルバネ3bによって移動金型2に向かって押される突張ピン3aとからなるものとし、突張ピン3aが抜けないように止輪3dを取り付けた。
移動連結板7には複数の移動押出ピン7aと移動返しピン7cを、それぞれ移動金型2を貫通させて取り付け、移動合面2bには移動返しピン7cの頭部7dが収まる窪み2cを設けた。
またシリンダ15からなる押引機構を設けて移動押出板9を押し引きするものとし、図1、2に示したようにシリンダ15で移動押出板9を引いたときには、移動押引板9と押ブロック7eとは離れ、両者の間に隙間が生じるようにした。
そして、コイルバネ3bにより突張ピン3aが移動金型2向かって押され、その反力によって移動連結板7が移動押出板9に向かって押されるようにした。シリンダ15を引いたときには、移動返しピン7cの頭部7dは移動金型2の窪み2cの底面に止められ、移動連結板7が位置決めされて止位置決状態となる。さらにこのとき移動押出ピン7aの先端7bはキャビティ面2aと一致して、移動押出ピン7aの先端7bの面はキャビティ面2aの一部を構成するようにした。
一方、図3に示したようにシリンダ15で移動押出板9を押したときには、移動押引板9は押ブロック7eを押し、押された移動連結板7はコイルバネ3bを縮めながら移動金型2に接近する。このとき、移動押出ピン7aはその先端7bをキャビティ面2aから突き出し、移動返しピン7cは頭部7dを移動合面2bから突き出すようにした。
【0017】
移動金型取付構造14においては、押ユニット3のコイルバネ3bによって突張ピン3aが移動金型2に向かって押され、その反力によって移動連結板7が移動押出板9に向かって押されているため、移動金型2を90度転倒させて移動合面2bを重力方向下に向けても移動連結板7は動くことなく、移動押出ピン7aがキャビティ面2aから先端7bを出すことはない。
このため、予め予定した所定の位置においてかつ所定のタイミングにおいて、シリンダ15により移動押出板9を押すことにより、常に鋳型を金型から切り離さすことが可能になり、予定していない場所又は予定していないタイミングで、鋳型が金型から切り離されることがなくなり、鋳型が落下して不良な鋳型が発生する事故を防ぐことができた。
また移動金型取付構造14においては、移動押出ピン7aを移動連結板7に取り付け、移動連結板7の穴に押ユニット3を挿入し、移動押出ピン7aを移動金型2に挿入しつつ
、移動返しピン7cを移動合面2b側から移動金型2に挿入し、移動返しピン7cを移動連結板7に取り付けることにより、バネ付段取セットを金型毎に用意しておく。
製造する鋳型を変更するときの段取替作業では、変更前に使用していたバネ付段取セットを取り外した後に、次に使用するバネ付段取セットを取り付ける作業を行う。移動金型取付構造14では、移動金型2と移動ダイプレート5のブラケット5aとの間をボルト締めする締結ボルト5bのみにより、バネ付段取セットを移動ダイプレート5に取り付けているので、締結ボルト5bを1回緩めてバネ付段取セットを取り替えた後に再び締結ボルト5bを締め付ける作業となる。
このため従来行っていた、連結板と押出板とを締結するボルトを緩めたり締めたりする作業であって、狭いスペースの中に手を挿入して多数のボルトを緩めたり締めたりするという困難な作業を行う必要が無くなった。さらに段取替作業に要する時間を短縮することができたので、シェルモールド造型機の稼働率を向上させることができた。
【実施例2】
【0018】
実施例1の金型セット11を有するシェルモールド造型機について実施例2として記載する。実施例2のシェルモールド造型機では、ガイドシャフト17とガイドシャフト17に取り付けたガイド18を設け、移動ダイプレート5をガイド18に取り付けた。
このようにして移動ダイプレート5と共に移動金型取付構造14が、ガイドシャフト17上をスライド可能に構成すると共に、移動ダイプレート5を駆動する図示しないスライド駆動機構を設けた。
また、移動ダイプレート5とガイド18との間に軸受部16を設け、軸受部16を中心にして移動金型取付構造14を90度転倒させ、移動金型2の移動合面2b及びキャビティ面2aを水平方向に向いた図1、2の状態から、移動合面2b及びキャビティ面2aを重力方向下に向けるための、図示しない転倒機構を設けた。
また、金型セット11を上下反転させる図示しない上下反転装置を設け、金型セット11のキャビティの中に吹き込んだRCSの内の不要なRCSを落下させて、回収ホッパの中に回収する構成とした。
さらに、金型セット11のキャビティにRCSを吹き込むための図示しない吹込装置、RCSを吹込装置に供給するための図示しないRCS供給装置、及び可燃ガスを噴出するバーナ10aを取り付け、可燃ガスが燃焼する炎10bによって、固定金型1と移動金型2を加熱する加熱機構を設けてなるシェルモールド造型機とした。
【0019】
実施例2のシェルモールド造型機では、予め加熱機構によって固定金型1と移動金型2を所定の温度に加熱し、図2に示した金型セット11のキャビティの中に、吹込装置によりRCSを吹き込む。その後金型セット11の中でRCSを焼成させるため焼成工程を行う。また燃焼工程の途中で金型セット11を上下反転装置によって反転させ、不要なRCSを落下させて回収ホッパに回収する。
焼成工程に続いて移動金型取付構造14をスライドさせて金型セット11を開くと、移動合面2bが固定合面1bから離れるに従い、固定返しピン6cの頭部6dが固定合面1bから突き出ると共に、固定押出ピン6aの先端6bがキャビティ面1aから突き出て、鋳型を押し出すことにより鋳型がキャビティ面1aから離れる。
鋳型はキャビティ面2aに接触した状態で移動金型2と共にスライド移動して、移動金型取付構造14は図1の状態になる。図1、2に示したようにシリンダ15により移動押出板9を引いているので、移動押出ピン7aはその先端7bをキャビティ面2aから突き出すことはない。
その後、転倒機構によって移動金型取付構造14を90度転倒させ、移動金型2の移動合面2b及びキャビティ面2aを重力方向下に向けた状態にして、シリンダ15により移動押出板9を押す。移動押出板9は押ブロック7eに接触して押ブロック7eを押すため、移動連結板7はコイルバネ3bを圧縮しつつ移動金型2に近づく。すると移動連結板7の移動と共に移動押出ピン7aの先端7bがキャビティ面2aから突き出て図3の状態となる。このとき移動押出ピン7aの先端7bが鋳型を押し出すため、鋳型はキャビティ面2aから離れる。
鋳型を取り出した後に、転倒機構によって移動金型取付構造14を90度反転させると共に、シリンダ15により移動押出板9を引いて図1の状態に戻し、移動金型取付構造14を固定金型取付構造12に向かってスライドさせ金型セット11を構成する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、シェルモールド造型方法を使用して中子や主型などを製造する産業だけでなく、シェルモールド造型機を製造販売する産業においても利用される。
【符号の説明】
【0021】
1 :固定金型 1a:キャビティ面 1b:固定合面
1c:窪み 2 :移動金型 2a:キャビティ面
2b:移動合面 2c:窪み 3 :押ユニット
3a:突張ピン 3b:コイルバネ 3c:ケース
3d:止輪 4 :固定ダイプレート 4a:ブラケット
5 :移動ダイプレート 5a:ブラケット 5b:締結ボルト
6 :固定連結板 6a:固定押出ピン 6b:先端
6c:固定返しピン 6d:頭部 7 :移動連結板
7a:移動押出ピン 7b:先端 7c:移動返しピン
7d:頭部 7e:押ブロック 8 :固定押出板
8a:スライドピン 8b:バネ 8c:取付ブロック
8d:ストッパ 9 :移動押出板 10a:バーナ
10b:炎 11 :金型セット 12 :固定金型取付構造
14 :移動金型取付構造 15 :シリンダ 16 :軸受部
17 :ガイドシャフト 18 :ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型をダイプレートに取り付け、前記金型と前記ダイプレートの間に連結板を設け、前記連結板に押出ピンと返しピンを取り付け、前記押出ピンは前記金型を貫通してキャビティ面からその先端を出すことが可能な構成とし、前記返しピンは頭部を有するものとし、前記金型を貫通して合面から前記頭部を出すことが可能な構成とし、
また、前記連結板と前記ダイプレートとの間に押出板を設け、さらに前記押出板を押し引きする押引機構を設け、前記押出板によって前記連結板を前記金型に向かって押す構成とした金型取付構造において、
バネにより前記連結板を前記押出板に向かって押す構成とし、前記返しピンの前記頭部が前記合面又は前記合面に設けた窪みの底面によって止められた位置において、前記連結板が位置決めされた状態(以下単に「止位置決状態」という。)となるものとし、前記止位置決状態において、前記押出ピンの前記先端の面が、前記金型の前記キャビティ面の一部を構成するようにしたことを特徴とする前記金型取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載した金型取付構造であって、バネを組み込んだ押ユニットを設け、前記押ユニットにより連結板を押出板に向かって押すものとし、
前記押ユニットはコイルバネと、前記コイルバネを収納するケースと、前記コイルバネによって金型に向かって押される突張ピンを有するものとし、前記突張ピンは前記ケースから片方の端部を、前記金型に向かって突き出す構成としたことを特徴とする前記金型取付構造。
【請求項3】
移動金型を移動ダイプレートに取り付け、前記移動金型と前記移動ダイプレートの間に移動連結板を設け、前記移動連結板に移動押出ピンと移動返しピンを取り付け、前記移動押出ピンは前記移動金型を貫通してキャビティ面からその先端を出すことが可能な構成とし、前記移動返しピンは頭部を有するものとし、前記移動金型を貫通して移動合面から前記頭部を出すことが可能な構成とし、
また、前記移動連結板と前記移動ダイプレートとの間に移動押出板を設け、さらに前記移動押出板を押し引きする押引機構を設け、前記移動押出板によって前記移動連結板を前記移動金型に向かって押す構成とした移動金型取付構造において、
バネにより前記移動連結板を前記移動押出板に向かって押す構成とし、前記移動返しピンの前記頭部が前記移動合面又は前記移動合面に設けた窪みの底面によって止められた位置において、前記移動連結板が止位置決状態となるものとし、前記止位置決状態において前記移動押出ピンの前記先端の面が、前記移動金型の前記キャビティ面の一部を構成するようにしたことを特徴とする前記移動金型取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載した移動金型取付構造であって、バネを組み込んだ押ユニットを設け、前記押ユニットにより移動連結板を移動押出板に向かって押すものとし、
前記押ユニットはコイルバネと、前記コイルバネを収納するケースと、前記コイルバネによって移動金型に向かって押される突張ピンとを有するものとし、前記突張ピンは前記ケースから片方の端部を、前記移動金型に向かって突き出す構成としたことを特徴とする前記移動金型取付構造。
【請求項5】
請求項3又は請求項4のいずれかに記載した移動金型取付構造と固定金型取付構造を組み合わせてなる金型セットであって、
前記固定金型取付構造が、固定ダイプレートに取り付けた固定金型と、前記固定金型と前記固定ダイプレートの間に設けた固定連結板と、前記固定連結板に取り付けた固定押出ピンと固定返しピンを有するものとし、前記固定押出ピンと前記固定返しピンはそれぞれ前記固定金型を貫通するものとし、
前記固定連結板を前記固定金型に向かって押すバネを設け、自由な状態においては前記固定押出ピンは前記固定金型のキャビティ面からその先端を突き出し、また前記固定返しピンは前記固定金型の固定合面からその頭部を突き出すものとし、
前記固定金型の前記固定合面と移動金型の移動合面を合わせて金型セットを構成したときに、前記移動合面又は前記移動合面に設けた窪みの底面によって、前記固定返しピンの頭部が押されることにより、前記固定連結板が位置決めされた状態(以下単に「押位置決状態」という。)となるものとし、前記押位置決状態において前記固定押出ピンの先端の面が、前記固定金型の前記キャビティ面の一部を構成するようにした、前記固定金型取付構造であることを特徴とする前記金型セット。
【請求項6】
請求項5に記載した金型セットを有し、さらにガイドシャフトと前記ガイドシャフトに取り付けたガイドを設け、移動ダイプレートを前記ガイドに取り付けることにより、前記ガイドシャフト上を前記移動ダイプレートがスライド可能に構成し、さらに前記移動ダイプレートをスライド移動させるための、スライド駆動部を設けたことを特徴とするスライド機構付金型セット。
【請求項7】
請求項6に記載したスライド機構付金型セットであって、移動ダイプレートとガイドとの間に軸受部を設け、前記軸受部を中心にして移動金型取付構造を90度転倒させ、移動金型の移動合面を重力方向下に向けることを可能に構成した転倒機構付金型セット。
【請求項8】
請求項6又は請求項7のいずれかに記載した金型セットであって、前記金型セットを上下反転させる上下反転装置を設け、金型セットの中の不要なレジンコーテッドサンド(以下単に「RCS」という。)を回収することを可能に構成した反転機構付金型セット。
【請求項9】
請求項6〜請求項8のいずれかに記載した金型セットを有し、さらに金型セットのキャビティにRCSを吹き込む吹込装置、RCSを吹込装置に供給するRCS供給装置、金型セットの中でRCSを焼成させるために、固定金型と移動金型を加熱するための加熱機構を有するシェルモールド造型機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−79047(P2011−79047A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235815(P2009−235815)
【出願日】平成21年10月12日(2009.10.12)
【出願人】(591143788)クロタ精工株式会社 (4)
【Fターム(参考)】