金型構造及び成形装置
【課題】 発泡体を押し出して金型から離脱させるために従来必要であった押出ピンを不要にすることができる雄金型、金型構造、及び成形装置を提供する。
【解決手段】 成形装置は、凹状に形成される雌金型11と、雌金型11と接離することにより、雌金型11とで発泡体Xを成形する凸状の雄金型21とを有する金型構造を備える。そして、雄金型21は、発泡体Xを成形する際に雌金型11の内部に配置される凸部311を有する凸金型31と、凸部311よりも外側に配置され、発泡体Xを成形する際に凸金型31と雌金型11との間を閉塞する蓋金型41とを備え、凸金型31は、外側から凸部311に嵌着する発泡体Xを蓋金型41に係止させることで凸部311から離脱させるべく、蓋金型41よりも雌金型11から離反するように、蓋金型41に対して変位可能に構成されることを特徴とする。
【解決手段】 成形装置は、凹状に形成される雌金型11と、雌金型11と接離することにより、雌金型11とで発泡体Xを成形する凸状の雄金型21とを有する金型構造を備える。そして、雄金型21は、発泡体Xを成形する際に雌金型11の内部に配置される凸部311を有する凸金型31と、凸部311よりも外側に配置され、発泡体Xを成形する際に凸金型31と雌金型11との間を閉塞する蓋金型41とを備え、凸金型31は、外側から凸部311に嵌着する発泡体Xを蓋金型41に係止させることで凸部311から離脱させるべく、蓋金型41よりも雌金型11から離反するように、蓋金型41に対して変位可能に構成されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹状の雌金型と接離することにより、雌金型とで発泡体を成形する凸状の雄金型に関し、また、その雄金型を備える金型構造に関し、さらに、その金型構造を備える成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型構造として、凹状に形成される雌金型と、雌金型と接離することにより、雌金型とで発泡体を成形する雄金型とを備える金型構造が知られている(例えば、特許文献1)。斯かる金型構造によれば、押出ピンが雌金型(又は雄金型)から突出することで、成形された発泡体を雌金型(又は雄金型)から離脱させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−341149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に係る金型構造においては、成形された発泡体を雌金型(又は雄金型)から離脱させるために、押出ピンが必要となるため、金型構造を型替えする作業が非常に煩雑となるという問題を生じさせている。また、成形された発泡体を雌金型(又は雄金型)から離脱させる際に、押出ピンが発泡体を押し出すため、成形された発泡体に押し跡が残るという問題も生じさせている。
【0005】
よって、本発明は、斯かる事情に鑑み、発泡体を押し出して金型から離脱させるために従来必要であった押出ピンを不要にすることができる雄金型と、その雄金型を備える金型構造と、その金型構造を備える成形装置とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る雄金型は、凹状の雌金型と接離することにより、雌金型とで発泡体を成形する凸状の雄金型において、発泡体を成形する際に雌金型の内部に配置される凸部を有する凸金型と、凸部よりも外側に配置され、発泡体を成形する際に凸金型と雌金型との間を閉塞する蓋金型とを備え、凸金型は、外側から凸部に嵌着する発泡体を蓋金型に係止させることで凸部から離脱させるべく、蓋金型よりも雌金型から離反するように、蓋金型に対して変位可能に構成されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る金型構造は、凹状に形成される雌金型と、雌金型と接離することにより、雌金型とで発泡体を成形する前記の雄金型とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る雄金型及び金型構造によれば、発泡体を成形する際には、凸金型の凸部が雌金型の内部に配置されていると共に、凸部よりも外側に配置される蓋金型が凸金型と雌金型との間を閉塞している。これより、雄金型と雌金型とで発泡体を成形する空間が形成されるため、発泡体を成形することができる。
【0009】
そして、雌金型から雄金型が離反すると、例えば、成形体が若干縮小したり、雌金型から成形体に向けて圧縮空気が噴かれたりすることにより、成形体が凸部に外側から嵌着する。斯かる状態から、凸金型が蓋金型に対して変位し、凸金型が蓋金型よりも雌金型から離反すると、発泡体が蓋金型に係止されるため、発泡体を凸部から離脱させることができる。
【0010】
また、本発明に係る金型構造においては、雌金型を有する雌金型部と、蓋金型を有する蓋金型部とを備えると共に、一方側が雌金型部に固定され、蓋金型が雌金型に接離する際に蓋金型部を長手方向に沿って案内する長尺な案内体を複数備え、各案内体は、他方側が変位自在となるように、一方側のみが固定されてもよい。
【0011】
斯かる構成の金型構造によれば、一方側が雌金型部に固定される長尺な各案内体は、蓋金型が雌金型に接離する際に、蓋金型部を長手方向に沿って案内する。そして、各案内体の一方側のみが固定されているため、各案内体の他方側が変位自在となっている。これにより、蓋金型が雌金型に接離する際に、蓋金型部が伸縮(例えば熱伸縮)しても、その熱伸縮に応じて各案内体の他方側が変位するため、複数の案内体で蓋金型部を確実に案内することができる。
【0012】
また、本発明に係る金型構造においては、凸金型が蓋金型よりも雌金型から離反すべく、蓋金型が雌金型から離反するのを停止させる停止手段を備えてもよい。
【0013】
斯かる構成の金型構造によれば、停止手段は、蓋金型が雌金型から離反するのを停止させる。これにより、凸金型が蓋金型よりも雌金型から離反するため、発泡体が蓋金型に係止され、その結果、発泡体を凸部から確実に離脱させることができる。
【0014】
また、本発明に係る金型構造においては、発泡体を成形する際に、熱媒体が流通するための間隙を凸金型と蓋金型との間に形成すべく、凸金型及び蓋金型の少なくとも何れか一方に凹状部を備えてもよい。
【0015】
斯かる構成の金型構造によれば、凸金型及び蓋金型の少なくとも何れか一方に凹状部が設けられているため、発泡体を成形する際に、凸金型と蓋金型との間に間隙が形成される。これにより、発泡体を成形する際に、熱媒体(蒸気や冷却水等)が該間隙を流通することで、内部(発泡体を成形する空間)に熱媒体を供給することができる。
【0016】
また、本発明に係る成形装置は、前記の金型構造と、雌金型と雄金型とを接離させる接離手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上の如く、本発明によれば、発泡体を押し出して金型から離脱させるために従来必要であった押出ピンを不要にすることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る成形装置の要部図であって、金型が閉じた状態の断面図を示す。
【図2】同実施形態に係る成形装置の要部図であって、金型が開いた状態の断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る雄金型の全体図であって、(a)は凸金型と蓋金型とが結合した状態の断面図、(b)は凸金型と蓋金型とが分離した状態の断面図を示す。
【図4】同実施形態に係る成形装置で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)は断面図、(b)は(a)の拡大断面図を示す。
【図5】同実施形態に係る成形装置で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)は断面図、(b)は(a)の拡大断面図を示す。
【図6】同実施形態に係る成形装置で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)は断面図、(b)は(a)の拡大断面図を示す。
【図7】同実施形態に係る成形装置で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)は断面図、(b)は(a)の拡大断面図を示す。
【図8】本発明の他の実施形態に係る金型構造で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)及び(b)はそれぞれ断面図を示す。
【図9】同実施形態に係る金型構造で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)及び(b)はそれぞれ断面図を示す。
【図10】本発明のさらに他の実施形態に係る金型構造で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)及び(b)はそれぞれ断面図を示す。
【図11】同実施形態に係る金型構造で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)及び(b)はそれぞれ断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る成形装置における一実施形態について、図1〜図7を参酌して説明する。
【0020】
本実施形態に係る成形装置は、図1〜図3に示すように、凹状の雌金型(「キャビティ」ともいう)11を有する雌金型部1と、雌金型11とで発泡体Xを成形する凸状の雄金型(「コア」ともいう)21を有する雄金型部2とを備える。なお、雄金型部2は、雌金型11の内部に配置される凸状の凸金型31を有する凸金型部3と、凸金型31と雌金型11との間を閉塞する蓋金型41を有する蓋金型部4とを備える。即ち、雄金型21は、凸金型31と蓋金型41とを備えている。
【0021】
そして、成形装置は、雌金型11と雄金型21とを接離させるべく、雄金型部2を移動させる接離手段(図示していない)5と、雄金型21が雌金型11に対して所定方向(本実施形態においては横方向であって、以下「接離方向」という)に沿って接離するように、雄金型部2を案内する案内手段6とを備える。また、成形装置は、発泡体Xの成形空間Yに原料を充填する充填手段7を備える。
【0022】
雌金型部1は、雌金型11を他方側の側部で固定する雌金型本体部12と、案内手段6の一方側を固定する案内固定部13とを備える。なお、雌金型本体部12は、装置本体(図示していない)8に固定されていると共に、案内固定部13は、雌金型本体部12の上部に固定されている。
【0023】
雌金型11は、矩形状に凹んだ凹部111と、側部に配置される開口端部112とを備える。また、雌金型11は、熱媒体が内部及び外部間を流通するための貫通部(図示していない)113,…を複数備えている。そして、雌金型11は、一方側の側部が充填手段7に接続されていると共に、他方側の側部が開放するように配置されている。なお、雌金型11は、棒状の支持部材121を介して、支持されている。
【0024】
凸金型部3は、凸金型31を一方側の側部で固定する凸金型本体部32を備える。そして、凸金型部3は、蓋金型部4と連結するための凸金型連結部33を備える。さらに、凸金型部3は、案内手段6に案内される凸金型被案内部34を備える。
【0025】
凸金型31は、発泡体Xを成形する際(金型11,21を閉めた際)に、雌金型11の内部に配置される矩形状の凸部311を備えると共に、発泡体Xを成形する際に、蓋金型41と接合する凸金型接合部312を備える。また、凸金型31は、熱媒体が内部及び外部間を流通するための貫通部(図示していない)313,…を複数備えている。
【0026】
そして、凸金型31は、接離方向において、蓋金型41に対して変位可能に構成されている。具体的には、凸金型31は、接離方向において、蓋金型41よりも雌金型11から離反可能に構成されている。なお、凸金型31は、棒状の支持部材321,321を介して、支持されている。
【0027】
凸金型接合部312は、発泡体Xを成形する際に、熱媒体が流通するための間隙Z,…を蓋金型41との間に形成すべく、凹状部312a,…を複数備える。また、凸金型接合部312は、接離方向と直交するように配置される板状に形成されており、凸部311から外方に突出している。そして、凸金型接合部312は、接離方向において他方側から一方側に向けて幅寸法が小さくなるようなテーパ状に形成されており、外周部で蓋金型41と接合する。
【0028】
凸金型本体部32は、装置本体8に対して変位可能に構成されている。また、凸金型連結部33は、凸金型本体部32の上部に固定されている。そして、凸金型被案内部34は、案内手段6が内部に挿通されていると共に、凸金型本体部32の上部に固定されている。
【0029】
蓋金型部4は、蓋金型41を固定する蓋金型本体部42を備える。そして、蓋金型部4は、凸金型連結部33と連結するための蓋金型連結部43を備える。さらに、蓋金型部4は、案内手段6に案内される蓋金型被案内部44を備える。
【0030】
蓋金型41は、発泡体Xを成形する際に、凸金型31と雌金型11との間を閉塞する蓋部411を備える。また、蓋金型41は、凸金型31の凸部311に挿入され且つ凸金型31の凸金型接合部312と接合する開口状の蓋金型接合部412を備える。さらに、蓋金型41は、発泡体Xを成形する際に、雌金型11と接合する外周部413を備える。
【0031】
蓋部411は、環状に形成されていると共に、接離方向と直交するように配置される板状に形成されている。そして、蓋部411は、発泡体Xを成形する際に、凸金型31の凸部311よりも外側に配置されると共に、雌金型11の開口端部112よりも内側に配置される。
【0032】
蓋金型接合部412は、接離方向において他方側から一方側に向けて開口が小さくなるように形成されている。そして、蓋金型接合部412は、凸金型接合部312に対応して、内周部がテーパ状に形成されており、内周部で凸金型接合部312の外周部と接合する。また、蓋金型接合部412は、凸金型接合部312が接離方向の一方側に抜けるのを防止すべく、凸金型接合部312を係止可能な大きさに形成されている。
【0033】
蓋金型本体部42は、装置本体8に対して変位可能に構成されている。また、蓋金型連結部43は、蓋金型被案内部44の上部に固定されている。そして、本実施形態において、凸金型連結部33と蓋金型連結部43とは、それぞれ磁性体であって、連結と分離とができるように構成されている。また、蓋金型被案内部44は、案内手段6が内部に挿通されていると共に、蓋金型本体部42の上部に固定されている。
【0034】
案内手段6は、凸金型部3を接離方向に沿って案内する凸金型案内部61を備える。そして、案内手段6は、蓋金型部4を接離方向に沿って案内する蓋金型案内部62を備える。
【0035】
凸金型案内部61は、接離方向に沿って配置される長尺な長尺体611,…を複数(図1及び図2には1つのみ図示している)備える。そして、各長尺体611は、一方側が雌金型部1の案内固定部13に固定されていると共に、他方側が装置本体8に固定される支持体9に固定されている。また、各長尺体611は、凸金型被案内部34の内部に挿通して配置されることにより、凸金型部3を接離方向に沿って案内する。
【0036】
蓋金型案内部62は、蓋金型41が雌金型11に接離する際に蓋金型部4を長手方向に沿って案内する長尺な案内体621,…を複数(図1及び図2には1つのみ図示している)備える。また、蓋金型案内部62は、凸金型31が蓋金型41よりも雌金型11から離反すべく、蓋金型41が雌金型11から離反するのを停止させる停止手段622と、蓋金型部4を凸金型部3に向けて付勢する弾性の付勢手段623とを備える。
【0037】
各案内体621は、長手方向が接離方向に沿うように配置されている。そして、各案内体621は、他方側が変位自在となるように、一方側のみが雌金型部1の案内固定部13に固定されている。具体的には、各案内体621は、一方側に周方向に沿って延設される溝部621に、案内固定部13の係止部材131が係止され、斯かる係止される部位を支点として揺動可能に構成されている。また、各案内体621は、蓋金型被案内部44の内部に挿通して配置されることにより、蓋金型部4を接離方向に沿って案内する。
【0038】
停止手段622は、案内体621の他方側の端部に配置されている。また、停止手段622は、案内体621よりも大きい径(幅寸法)で形成されており、蓋金型部4の蓋金型被案内部44を係止可能に構成されている。これにより、停止手段622は、蓋金型部4を係止することで、蓋金型部4が雌金型部1から所定距離以上離反するのを防止する。
【0039】
本実施形態に係る成形装置の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る成形装置で発泡体を成形する方法について、図4〜図7を参酌して説明する。
【0040】
図4に示すように、雄金型21を雌金型11に接近させ、雌金型11と雄金型21との間にクラックCが生じる位置(クラッキング位置)に、雄金型21を移動させる。このとき、付勢手段623が蓋金型部4を他方側に向けて付勢しているため、雄金型21が位置決めされる。そして、雌金型11と雄金型21とで形成される成形空間Yに、充填手段7から原料樹脂粒子が充填される。
【0041】
そして、図5に示すように、雄金型21を雌金型11にさらに接近させ、金型が閉まる位置(型閉め位置)に、雄金型21を移動させる。これにより、成形空間Yが小さくなるため、充填された原料樹脂粒子が圧縮される。斯かる状態においては、凸金型31の凸部311が雌金型11の内部に配置されていると共に、蓋金型41が凸金型31と雌金型11との間を閉塞している。
【0042】
そして、雌金型11及び雄金型21の外部から蒸気を供給すると、加熱された原料樹脂粒子が発泡成形することで、発泡体Xが成形される。その後、蒸気に代わって冷却水を供給することで、発泡体Xが冷却され、さらに、真空引きをすることで、発泡体Xが乾燥される。
【0043】
このとき、熱媒体(蒸気、冷却水)は、雌金型11の貫通部113,…及び凸金型31の貫通部313,…だけでなく、凸金型31と蓋金型41との間に形成される間隙Z,…(凸金型31の凹状部312a,…)をも介して、成形空間Yに供給されている。なお、各貫通部113,313及び各間隙Z(各凹状部312a)は、図5において図示していない。
【0044】
そして、図6に示すように、雄金型21が雌金型11から離反すると、若干縮小した成形体Xが凸部311に外側から嵌着する。このとき、凸金型連結部33と蓋金型連結部43とが連結しているため、雄金型21が雌金型11から離反し且つ停止手段622が蓋金型部4を係止する間の位置(型開き位置)において、凸金型部3と蓋金型部4とは、一体となって移動する。
【0045】
なお、雄金型21が雌金型11から離反する際に、外気に触れた蓋金型部4(蓋金型41及び蓋金型本体42)が熱伸縮することがある。しかしながら、各案内体621の一方側のみが固定されているため、蓋金型部4の熱伸縮に応じて、各案内体621の他方側が変位する。これにより、蓋金型部4が熱伸縮しても、各案内体621が蓋金型部4を継続して案内する。
【0046】
さらに、雄金型21が雌金型11から離反すると、図7に示すように、停止手段622が蓋金型部4の蓋金型被案内部44を係止するため、蓋金型41が雌金型11から離反するのを停止する一方、凸金型31は、雌金型11からさらに離反し、蓋金型41から分離する位置(離型位置)まで移動する。すると、凸部311に嵌着している発泡体Xが蓋金型41の蓋部411に係止されるため、発泡体Xが凸部311から離脱して落下する。
【0047】
そして、発泡体Xを連続的に成形するために、凸金型部3が雌金型11に接近すると、テーパ状の凸金型接合部312とテーパ状の蓋金型接合部412とが接合することにより、凸金型部3と蓋金型部4とが位置決めされる。さらに、凸金型連結部33と蓋金型連結部43とが連結することにより、凸金型部3と蓋金型部4とが一体となって雌金型部1に接近する。そして、図4に示すように、雄金型21をクラッキング位置まで移動させる。このようにして、発泡体Xを連続的に成形する。
【0048】
以上より、本実施形態に係る成形装置によれば、発泡体Xを成形する際には、凸金型31の凸部311が雌金型11の内部に配置されていると共に、凸部311よりも外側に配置される蓋金型41が凸金型31と雌金型11との間を閉塞している。これより、雄金型21と雌金型11とで発泡体Xを成形する成形空間Yが形成されるため、発泡体Xを成形することができる。
【0049】
そして、雌金型11から雄金型21が離反すると、若干縮小した成形体Xが凸部311に外側から嵌着する。斯かる状態から、凸金型31が蓋金型41に対して変位し、凸金型31が蓋金型41よりも雌金型11から離反すると、発泡体Xが蓋金型41に係止されるため、発泡体Xを凸部311から離脱させることができる。したがって、従来必要であった押出ピンを不要にすることができる。
【0050】
また、上記実施形態に係る成形装置によれば、一方側が雌金型部1に固定される長尺な各案内体621は、蓋金型41が雌金型11に接離する際に、蓋金型部4を長手方向に沿って案内する。そして、各案内体621の一方側のみが固定されているため、各案内体621の他方側が変位自在となっている。これにより、蓋金型41が雌金型11に接離する際に、蓋金型部4が熱伸縮しても、その熱伸縮に応じて各案内体621の他方側が変位するため、複数の案内体621,…が蓋金型部4を継続して案内できる。
【0051】
また、上記実施形態に係る成形装置によれば、停止手段622は、蓋金型41が雌金型11から離反するのを停止させる。これにより、凸金型31が蓋金型41よりも雌金型11から離反するため、発泡体Xが蓋金型41に係止され、その結果、発泡体Xを凸部311から確実に離脱させることができる。
【0052】
また、上記実施形態に係る成形装置によれば、凸金型31に凹状部312aが設けられているため、発泡体Xを成形する際に、凸金型31と蓋金型41との間に間隙Zが形成される。これにより、発泡体Xを成形する際に、熱媒体が間隙Z,…を流通することで、金型11,21内部の成形空間Yに熱媒体を供給することができる。
【0053】
なお、本発明に係る雄金型及び金型構造並びに成形装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0054】
例えば、上記実施形態に係る雄金型2及び金型構造並びに成形装置においては、蓋金型41は、凸金型31と雌金型11との間を閉塞する蓋部411が接離方向と直交する面に沿って面一となるように形成される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。具体的には、図8及び図9に示すように、蓋金型41は、蓋部411,411が接離方向で位置ずれするように形成される構成でもよい。
【0055】
なお、図8(a)においては、雄金型21がクラッキング位置に位置(移動)することで、雌金型11と雄金型21との間にクラックが生じている状態を示し、図8(b)においては、雄金型21が型閉め位置に位置(移動)することで、金型を閉めて発泡体Xが発泡成形されている状態を示している。
【0056】
そして、図9(a)においては、雄金型21が型開き位置に位置(移動)することで、雄金型21が雌金型11から離反し、成形体Xが凸部311に外側から嵌着している状態を示し、図9(b)においては、雄金型21が離型位置に位置(移動)することで、凸部311に嵌着している発泡体Xが蓋金型41の蓋部411に係止され、発泡体Xが凸部311から離脱して落下する状態を示している。
【0057】
また、上記実施形態に係る雄金型2及び金型構造並びに成形装置においては、凸金型31は、先端部に向けて小さくなる凸部311を備える構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、図10及び図11に示すように、凸金型31は、先端部に向けて大きくなるピン状の凸部311,311を備える構成でもよい。
【0058】
なお、図10(a)においては、雄金型21がクラッキング位置に位置(移動)した状態、図10(b)においては、雄金型21が型閉め位置に位置(移動)した状態、図11(a)においては、雄金型21が型開き位置に位置(移動)した状態、図11(b)においては、雄金型21が離型位置に位置(移動)した状態を示す。
【0059】
また、上記実施形態に係る雄金型2及び金型構造並びに成形装置においては、雌金型11が装置本体8に対して固定されると共に、雄金型21が装置本体8に対して変位する構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、雌金型11が装置本体8に対して変位すると共に、雄金型21が装置本体8に対して固定される構成でもよく、また、雌金型11及び雄金型21が装置本体8に対して変位する構成でもよい。要するに、雌金型11と雄金型21とが接離する構成であればよい。
【0060】
また、上記実施形態に係る雄金型2及び金型構造並びに成形装置においては、凸金型31の凸金型接合部312が凹状部312a,…を備えることで、凸金型31と蓋金型41との間に熱媒体を流通させるための間隙Z,…が形成される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。
【0061】
例えば、蓋金型41の蓋金型接合部412が凹状部を備えることで、凸金型31と蓋金型41との間に間隙Z,…が形成される構成でもよく、また、凸金型31及び蓋金型41の各接合部312,412がそれぞれ凹状部312a,…を備えることで、凸金型31と蓋金型41との間に間隙Z,…が形成される構成でもよい。
【0062】
また、上記実施形態に係る雄金型2及び金型構造並びに成形装置においては、雄金型21が雌金型11から離反すると、成形体Xが若干縮小することにより、成形体Xが凸部311に外側から嵌着する構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、雄金型21が雌金型11から離反する際に、雌金型11から成形体Xに向けて圧縮空気が噴かれることにより、成形体Xが凸部311に外側から嵌着する構成でもよい。
【0063】
また、本発明に係る成形装置においては、雌金型11及び雄金型21を有する金型構造を一つ備える構成でもよく、また、複数(二つ以上)備える構成でもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…雌金型部、2…雄金型部、3…凸金型部、4…蓋金型部、11…雌金型、21…雄金型、31…凸金型、41…蓋金型、311…凸部、621…案内体、622…停止手段、X…発泡体、Y…成形空間、Z…間隙
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹状の雌金型と接離することにより、雌金型とで発泡体を成形する凸状の雄金型に関し、また、その雄金型を備える金型構造に関し、さらに、その金型構造を備える成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型構造として、凹状に形成される雌金型と、雌金型と接離することにより、雌金型とで発泡体を成形する雄金型とを備える金型構造が知られている(例えば、特許文献1)。斯かる金型構造によれば、押出ピンが雌金型(又は雄金型)から突出することで、成形された発泡体を雌金型(又は雄金型)から離脱させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−341149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に係る金型構造においては、成形された発泡体を雌金型(又は雄金型)から離脱させるために、押出ピンが必要となるため、金型構造を型替えする作業が非常に煩雑となるという問題を生じさせている。また、成形された発泡体を雌金型(又は雄金型)から離脱させる際に、押出ピンが発泡体を押し出すため、成形された発泡体に押し跡が残るという問題も生じさせている。
【0005】
よって、本発明は、斯かる事情に鑑み、発泡体を押し出して金型から離脱させるために従来必要であった押出ピンを不要にすることができる雄金型と、その雄金型を備える金型構造と、その金型構造を備える成形装置とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る雄金型は、凹状の雌金型と接離することにより、雌金型とで発泡体を成形する凸状の雄金型において、発泡体を成形する際に雌金型の内部に配置される凸部を有する凸金型と、凸部よりも外側に配置され、発泡体を成形する際に凸金型と雌金型との間を閉塞する蓋金型とを備え、凸金型は、外側から凸部に嵌着する発泡体を蓋金型に係止させることで凸部から離脱させるべく、蓋金型よりも雌金型から離反するように、蓋金型に対して変位可能に構成されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る金型構造は、凹状に形成される雌金型と、雌金型と接離することにより、雌金型とで発泡体を成形する前記の雄金型とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る雄金型及び金型構造によれば、発泡体を成形する際には、凸金型の凸部が雌金型の内部に配置されていると共に、凸部よりも外側に配置される蓋金型が凸金型と雌金型との間を閉塞している。これより、雄金型と雌金型とで発泡体を成形する空間が形成されるため、発泡体を成形することができる。
【0009】
そして、雌金型から雄金型が離反すると、例えば、成形体が若干縮小したり、雌金型から成形体に向けて圧縮空気が噴かれたりすることにより、成形体が凸部に外側から嵌着する。斯かる状態から、凸金型が蓋金型に対して変位し、凸金型が蓋金型よりも雌金型から離反すると、発泡体が蓋金型に係止されるため、発泡体を凸部から離脱させることができる。
【0010】
また、本発明に係る金型構造においては、雌金型を有する雌金型部と、蓋金型を有する蓋金型部とを備えると共に、一方側が雌金型部に固定され、蓋金型が雌金型に接離する際に蓋金型部を長手方向に沿って案内する長尺な案内体を複数備え、各案内体は、他方側が変位自在となるように、一方側のみが固定されてもよい。
【0011】
斯かる構成の金型構造によれば、一方側が雌金型部に固定される長尺な各案内体は、蓋金型が雌金型に接離する際に、蓋金型部を長手方向に沿って案内する。そして、各案内体の一方側のみが固定されているため、各案内体の他方側が変位自在となっている。これにより、蓋金型が雌金型に接離する際に、蓋金型部が伸縮(例えば熱伸縮)しても、その熱伸縮に応じて各案内体の他方側が変位するため、複数の案内体で蓋金型部を確実に案内することができる。
【0012】
また、本発明に係る金型構造においては、凸金型が蓋金型よりも雌金型から離反すべく、蓋金型が雌金型から離反するのを停止させる停止手段を備えてもよい。
【0013】
斯かる構成の金型構造によれば、停止手段は、蓋金型が雌金型から離反するのを停止させる。これにより、凸金型が蓋金型よりも雌金型から離反するため、発泡体が蓋金型に係止され、その結果、発泡体を凸部から確実に離脱させることができる。
【0014】
また、本発明に係る金型構造においては、発泡体を成形する際に、熱媒体が流通するための間隙を凸金型と蓋金型との間に形成すべく、凸金型及び蓋金型の少なくとも何れか一方に凹状部を備えてもよい。
【0015】
斯かる構成の金型構造によれば、凸金型及び蓋金型の少なくとも何れか一方に凹状部が設けられているため、発泡体を成形する際に、凸金型と蓋金型との間に間隙が形成される。これにより、発泡体を成形する際に、熱媒体(蒸気や冷却水等)が該間隙を流通することで、内部(発泡体を成形する空間)に熱媒体を供給することができる。
【0016】
また、本発明に係る成形装置は、前記の金型構造と、雌金型と雄金型とを接離させる接離手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上の如く、本発明によれば、発泡体を押し出して金型から離脱させるために従来必要であった押出ピンを不要にすることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る成形装置の要部図であって、金型が閉じた状態の断面図を示す。
【図2】同実施形態に係る成形装置の要部図であって、金型が開いた状態の断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る雄金型の全体図であって、(a)は凸金型と蓋金型とが結合した状態の断面図、(b)は凸金型と蓋金型とが分離した状態の断面図を示す。
【図4】同実施形態に係る成形装置で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)は断面図、(b)は(a)の拡大断面図を示す。
【図5】同実施形態に係る成形装置で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)は断面図、(b)は(a)の拡大断面図を示す。
【図6】同実施形態に係る成形装置で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)は断面図、(b)は(a)の拡大断面図を示す。
【図7】同実施形態に係る成形装置で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)は断面図、(b)は(a)の拡大断面図を示す。
【図8】本発明の他の実施形態に係る金型構造で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)及び(b)はそれぞれ断面図を示す。
【図9】同実施形態に係る金型構造で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)及び(b)はそれぞれ断面図を示す。
【図10】本発明のさらに他の実施形態に係る金型構造で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)及び(b)はそれぞれ断面図を示す。
【図11】同実施形態に係る金型構造で発泡体を成形する工程を説明する要部図であって、(a)及び(b)はそれぞれ断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る成形装置における一実施形態について、図1〜図7を参酌して説明する。
【0020】
本実施形態に係る成形装置は、図1〜図3に示すように、凹状の雌金型(「キャビティ」ともいう)11を有する雌金型部1と、雌金型11とで発泡体Xを成形する凸状の雄金型(「コア」ともいう)21を有する雄金型部2とを備える。なお、雄金型部2は、雌金型11の内部に配置される凸状の凸金型31を有する凸金型部3と、凸金型31と雌金型11との間を閉塞する蓋金型41を有する蓋金型部4とを備える。即ち、雄金型21は、凸金型31と蓋金型41とを備えている。
【0021】
そして、成形装置は、雌金型11と雄金型21とを接離させるべく、雄金型部2を移動させる接離手段(図示していない)5と、雄金型21が雌金型11に対して所定方向(本実施形態においては横方向であって、以下「接離方向」という)に沿って接離するように、雄金型部2を案内する案内手段6とを備える。また、成形装置は、発泡体Xの成形空間Yに原料を充填する充填手段7を備える。
【0022】
雌金型部1は、雌金型11を他方側の側部で固定する雌金型本体部12と、案内手段6の一方側を固定する案内固定部13とを備える。なお、雌金型本体部12は、装置本体(図示していない)8に固定されていると共に、案内固定部13は、雌金型本体部12の上部に固定されている。
【0023】
雌金型11は、矩形状に凹んだ凹部111と、側部に配置される開口端部112とを備える。また、雌金型11は、熱媒体が内部及び外部間を流通するための貫通部(図示していない)113,…を複数備えている。そして、雌金型11は、一方側の側部が充填手段7に接続されていると共に、他方側の側部が開放するように配置されている。なお、雌金型11は、棒状の支持部材121を介して、支持されている。
【0024】
凸金型部3は、凸金型31を一方側の側部で固定する凸金型本体部32を備える。そして、凸金型部3は、蓋金型部4と連結するための凸金型連結部33を備える。さらに、凸金型部3は、案内手段6に案内される凸金型被案内部34を備える。
【0025】
凸金型31は、発泡体Xを成形する際(金型11,21を閉めた際)に、雌金型11の内部に配置される矩形状の凸部311を備えると共に、発泡体Xを成形する際に、蓋金型41と接合する凸金型接合部312を備える。また、凸金型31は、熱媒体が内部及び外部間を流通するための貫通部(図示していない)313,…を複数備えている。
【0026】
そして、凸金型31は、接離方向において、蓋金型41に対して変位可能に構成されている。具体的には、凸金型31は、接離方向において、蓋金型41よりも雌金型11から離反可能に構成されている。なお、凸金型31は、棒状の支持部材321,321を介して、支持されている。
【0027】
凸金型接合部312は、発泡体Xを成形する際に、熱媒体が流通するための間隙Z,…を蓋金型41との間に形成すべく、凹状部312a,…を複数備える。また、凸金型接合部312は、接離方向と直交するように配置される板状に形成されており、凸部311から外方に突出している。そして、凸金型接合部312は、接離方向において他方側から一方側に向けて幅寸法が小さくなるようなテーパ状に形成されており、外周部で蓋金型41と接合する。
【0028】
凸金型本体部32は、装置本体8に対して変位可能に構成されている。また、凸金型連結部33は、凸金型本体部32の上部に固定されている。そして、凸金型被案内部34は、案内手段6が内部に挿通されていると共に、凸金型本体部32の上部に固定されている。
【0029】
蓋金型部4は、蓋金型41を固定する蓋金型本体部42を備える。そして、蓋金型部4は、凸金型連結部33と連結するための蓋金型連結部43を備える。さらに、蓋金型部4は、案内手段6に案内される蓋金型被案内部44を備える。
【0030】
蓋金型41は、発泡体Xを成形する際に、凸金型31と雌金型11との間を閉塞する蓋部411を備える。また、蓋金型41は、凸金型31の凸部311に挿入され且つ凸金型31の凸金型接合部312と接合する開口状の蓋金型接合部412を備える。さらに、蓋金型41は、発泡体Xを成形する際に、雌金型11と接合する外周部413を備える。
【0031】
蓋部411は、環状に形成されていると共に、接離方向と直交するように配置される板状に形成されている。そして、蓋部411は、発泡体Xを成形する際に、凸金型31の凸部311よりも外側に配置されると共に、雌金型11の開口端部112よりも内側に配置される。
【0032】
蓋金型接合部412は、接離方向において他方側から一方側に向けて開口が小さくなるように形成されている。そして、蓋金型接合部412は、凸金型接合部312に対応して、内周部がテーパ状に形成されており、内周部で凸金型接合部312の外周部と接合する。また、蓋金型接合部412は、凸金型接合部312が接離方向の一方側に抜けるのを防止すべく、凸金型接合部312を係止可能な大きさに形成されている。
【0033】
蓋金型本体部42は、装置本体8に対して変位可能に構成されている。また、蓋金型連結部43は、蓋金型被案内部44の上部に固定されている。そして、本実施形態において、凸金型連結部33と蓋金型連結部43とは、それぞれ磁性体であって、連結と分離とができるように構成されている。また、蓋金型被案内部44は、案内手段6が内部に挿通されていると共に、蓋金型本体部42の上部に固定されている。
【0034】
案内手段6は、凸金型部3を接離方向に沿って案内する凸金型案内部61を備える。そして、案内手段6は、蓋金型部4を接離方向に沿って案内する蓋金型案内部62を備える。
【0035】
凸金型案内部61は、接離方向に沿って配置される長尺な長尺体611,…を複数(図1及び図2には1つのみ図示している)備える。そして、各長尺体611は、一方側が雌金型部1の案内固定部13に固定されていると共に、他方側が装置本体8に固定される支持体9に固定されている。また、各長尺体611は、凸金型被案内部34の内部に挿通して配置されることにより、凸金型部3を接離方向に沿って案内する。
【0036】
蓋金型案内部62は、蓋金型41が雌金型11に接離する際に蓋金型部4を長手方向に沿って案内する長尺な案内体621,…を複数(図1及び図2には1つのみ図示している)備える。また、蓋金型案内部62は、凸金型31が蓋金型41よりも雌金型11から離反すべく、蓋金型41が雌金型11から離反するのを停止させる停止手段622と、蓋金型部4を凸金型部3に向けて付勢する弾性の付勢手段623とを備える。
【0037】
各案内体621は、長手方向が接離方向に沿うように配置されている。そして、各案内体621は、他方側が変位自在となるように、一方側のみが雌金型部1の案内固定部13に固定されている。具体的には、各案内体621は、一方側に周方向に沿って延設される溝部621に、案内固定部13の係止部材131が係止され、斯かる係止される部位を支点として揺動可能に構成されている。また、各案内体621は、蓋金型被案内部44の内部に挿通して配置されることにより、蓋金型部4を接離方向に沿って案内する。
【0038】
停止手段622は、案内体621の他方側の端部に配置されている。また、停止手段622は、案内体621よりも大きい径(幅寸法)で形成されており、蓋金型部4の蓋金型被案内部44を係止可能に構成されている。これにより、停止手段622は、蓋金型部4を係止することで、蓋金型部4が雌金型部1から所定距離以上離反するのを防止する。
【0039】
本実施形態に係る成形装置の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る成形装置で発泡体を成形する方法について、図4〜図7を参酌して説明する。
【0040】
図4に示すように、雄金型21を雌金型11に接近させ、雌金型11と雄金型21との間にクラックCが生じる位置(クラッキング位置)に、雄金型21を移動させる。このとき、付勢手段623が蓋金型部4を他方側に向けて付勢しているため、雄金型21が位置決めされる。そして、雌金型11と雄金型21とで形成される成形空間Yに、充填手段7から原料樹脂粒子が充填される。
【0041】
そして、図5に示すように、雄金型21を雌金型11にさらに接近させ、金型が閉まる位置(型閉め位置)に、雄金型21を移動させる。これにより、成形空間Yが小さくなるため、充填された原料樹脂粒子が圧縮される。斯かる状態においては、凸金型31の凸部311が雌金型11の内部に配置されていると共に、蓋金型41が凸金型31と雌金型11との間を閉塞している。
【0042】
そして、雌金型11及び雄金型21の外部から蒸気を供給すると、加熱された原料樹脂粒子が発泡成形することで、発泡体Xが成形される。その後、蒸気に代わって冷却水を供給することで、発泡体Xが冷却され、さらに、真空引きをすることで、発泡体Xが乾燥される。
【0043】
このとき、熱媒体(蒸気、冷却水)は、雌金型11の貫通部113,…及び凸金型31の貫通部313,…だけでなく、凸金型31と蓋金型41との間に形成される間隙Z,…(凸金型31の凹状部312a,…)をも介して、成形空間Yに供給されている。なお、各貫通部113,313及び各間隙Z(各凹状部312a)は、図5において図示していない。
【0044】
そして、図6に示すように、雄金型21が雌金型11から離反すると、若干縮小した成形体Xが凸部311に外側から嵌着する。このとき、凸金型連結部33と蓋金型連結部43とが連結しているため、雄金型21が雌金型11から離反し且つ停止手段622が蓋金型部4を係止する間の位置(型開き位置)において、凸金型部3と蓋金型部4とは、一体となって移動する。
【0045】
なお、雄金型21が雌金型11から離反する際に、外気に触れた蓋金型部4(蓋金型41及び蓋金型本体42)が熱伸縮することがある。しかしながら、各案内体621の一方側のみが固定されているため、蓋金型部4の熱伸縮に応じて、各案内体621の他方側が変位する。これにより、蓋金型部4が熱伸縮しても、各案内体621が蓋金型部4を継続して案内する。
【0046】
さらに、雄金型21が雌金型11から離反すると、図7に示すように、停止手段622が蓋金型部4の蓋金型被案内部44を係止するため、蓋金型41が雌金型11から離反するのを停止する一方、凸金型31は、雌金型11からさらに離反し、蓋金型41から分離する位置(離型位置)まで移動する。すると、凸部311に嵌着している発泡体Xが蓋金型41の蓋部411に係止されるため、発泡体Xが凸部311から離脱して落下する。
【0047】
そして、発泡体Xを連続的に成形するために、凸金型部3が雌金型11に接近すると、テーパ状の凸金型接合部312とテーパ状の蓋金型接合部412とが接合することにより、凸金型部3と蓋金型部4とが位置決めされる。さらに、凸金型連結部33と蓋金型連結部43とが連結することにより、凸金型部3と蓋金型部4とが一体となって雌金型部1に接近する。そして、図4に示すように、雄金型21をクラッキング位置まで移動させる。このようにして、発泡体Xを連続的に成形する。
【0048】
以上より、本実施形態に係る成形装置によれば、発泡体Xを成形する際には、凸金型31の凸部311が雌金型11の内部に配置されていると共に、凸部311よりも外側に配置される蓋金型41が凸金型31と雌金型11との間を閉塞している。これより、雄金型21と雌金型11とで発泡体Xを成形する成形空間Yが形成されるため、発泡体Xを成形することができる。
【0049】
そして、雌金型11から雄金型21が離反すると、若干縮小した成形体Xが凸部311に外側から嵌着する。斯かる状態から、凸金型31が蓋金型41に対して変位し、凸金型31が蓋金型41よりも雌金型11から離反すると、発泡体Xが蓋金型41に係止されるため、発泡体Xを凸部311から離脱させることができる。したがって、従来必要であった押出ピンを不要にすることができる。
【0050】
また、上記実施形態に係る成形装置によれば、一方側が雌金型部1に固定される長尺な各案内体621は、蓋金型41が雌金型11に接離する際に、蓋金型部4を長手方向に沿って案内する。そして、各案内体621の一方側のみが固定されているため、各案内体621の他方側が変位自在となっている。これにより、蓋金型41が雌金型11に接離する際に、蓋金型部4が熱伸縮しても、その熱伸縮に応じて各案内体621の他方側が変位するため、複数の案内体621,…が蓋金型部4を継続して案内できる。
【0051】
また、上記実施形態に係る成形装置によれば、停止手段622は、蓋金型41が雌金型11から離反するのを停止させる。これにより、凸金型31が蓋金型41よりも雌金型11から離反するため、発泡体Xが蓋金型41に係止され、その結果、発泡体Xを凸部311から確実に離脱させることができる。
【0052】
また、上記実施形態に係る成形装置によれば、凸金型31に凹状部312aが設けられているため、発泡体Xを成形する際に、凸金型31と蓋金型41との間に間隙Zが形成される。これにより、発泡体Xを成形する際に、熱媒体が間隙Z,…を流通することで、金型11,21内部の成形空間Yに熱媒体を供給することができる。
【0053】
なお、本発明に係る雄金型及び金型構造並びに成形装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0054】
例えば、上記実施形態に係る雄金型2及び金型構造並びに成形装置においては、蓋金型41は、凸金型31と雌金型11との間を閉塞する蓋部411が接離方向と直交する面に沿って面一となるように形成される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。具体的には、図8及び図9に示すように、蓋金型41は、蓋部411,411が接離方向で位置ずれするように形成される構成でもよい。
【0055】
なお、図8(a)においては、雄金型21がクラッキング位置に位置(移動)することで、雌金型11と雄金型21との間にクラックが生じている状態を示し、図8(b)においては、雄金型21が型閉め位置に位置(移動)することで、金型を閉めて発泡体Xが発泡成形されている状態を示している。
【0056】
そして、図9(a)においては、雄金型21が型開き位置に位置(移動)することで、雄金型21が雌金型11から離反し、成形体Xが凸部311に外側から嵌着している状態を示し、図9(b)においては、雄金型21が離型位置に位置(移動)することで、凸部311に嵌着している発泡体Xが蓋金型41の蓋部411に係止され、発泡体Xが凸部311から離脱して落下する状態を示している。
【0057】
また、上記実施形態に係る雄金型2及び金型構造並びに成形装置においては、凸金型31は、先端部に向けて小さくなる凸部311を備える構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、図10及び図11に示すように、凸金型31は、先端部に向けて大きくなるピン状の凸部311,311を備える構成でもよい。
【0058】
なお、図10(a)においては、雄金型21がクラッキング位置に位置(移動)した状態、図10(b)においては、雄金型21が型閉め位置に位置(移動)した状態、図11(a)においては、雄金型21が型開き位置に位置(移動)した状態、図11(b)においては、雄金型21が離型位置に位置(移動)した状態を示す。
【0059】
また、上記実施形態に係る雄金型2及び金型構造並びに成形装置においては、雌金型11が装置本体8に対して固定されると共に、雄金型21が装置本体8に対して変位する構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、雌金型11が装置本体8に対して変位すると共に、雄金型21が装置本体8に対して固定される構成でもよく、また、雌金型11及び雄金型21が装置本体8に対して変位する構成でもよい。要するに、雌金型11と雄金型21とが接離する構成であればよい。
【0060】
また、上記実施形態に係る雄金型2及び金型構造並びに成形装置においては、凸金型31の凸金型接合部312が凹状部312a,…を備えることで、凸金型31と蓋金型41との間に熱媒体を流通させるための間隙Z,…が形成される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。
【0061】
例えば、蓋金型41の蓋金型接合部412が凹状部を備えることで、凸金型31と蓋金型41との間に間隙Z,…が形成される構成でもよく、また、凸金型31及び蓋金型41の各接合部312,412がそれぞれ凹状部312a,…を備えることで、凸金型31と蓋金型41との間に間隙Z,…が形成される構成でもよい。
【0062】
また、上記実施形態に係る雄金型2及び金型構造並びに成形装置においては、雄金型21が雌金型11から離反すると、成形体Xが若干縮小することにより、成形体Xが凸部311に外側から嵌着する構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、雄金型21が雌金型11から離反する際に、雌金型11から成形体Xに向けて圧縮空気が噴かれることにより、成形体Xが凸部311に外側から嵌着する構成でもよい。
【0063】
また、本発明に係る成形装置においては、雌金型11及び雄金型21を有する金型構造を一つ備える構成でもよく、また、複数(二つ以上)備える構成でもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…雌金型部、2…雄金型部、3…凸金型部、4…蓋金型部、11…雌金型、21…雄金型、31…凸金型、41…蓋金型、311…凸部、621…案内体、622…停止手段、X…発泡体、Y…成形空間、Z…間隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状の雌金型と接離することにより、雌金型とで発泡体を成形する凸状の雄金型において、
発泡体を成形する際に雌金型の内部に配置される凸部を有する凸金型と、凸部よりも外側に配置され、発泡体を成形する際に凸金型と雌金型との間を閉塞する蓋金型とを備え、
凸金型は、外側から凸部に嵌着する発泡体を蓋金型に係止させることで凸部から離脱させるべく、蓋金型よりも雌金型から離反するように、蓋金型に対して変位可能に構成されることを特徴とする雄金型。
【請求項2】
凹状に形成される雌金型と、雌金型と接離することにより、雌金型とで発泡体を成形する請求項1に記載の雄金型とを備えることを特徴とする金型構造。
【請求項3】
雌金型を有する雌金型部と、蓋金型を有する蓋金型部とを備えると共に、一方側が雌金型部に固定され、蓋金型が雌金型に接離する際に蓋金型部を長手方向に沿って案内する長尺な案内体を複数備え、
各案内体は、他方側が変位自在となるように、一方側のみが固定される請求項2に記載の金型構造。
【請求項4】
凸金型が蓋金型よりも雌金型から離反すべく、蓋金型が雌金型から離反するのを停止させる停止手段を備える請求項2又は3に記載の金型構造。
【請求項5】
発泡体を成形する際に、熱媒体が流通するための間隙を凸金型と蓋金型との間に形成すべく、凸金型及び蓋金型の少なくとも何れか一方に凹状部を備える請求項2〜4の何れか1項に記載の金型構造。
【請求項6】
請求項2〜5の何れか1項に記載の金型構造と、雌金型と雄金型とを接離させる接離手段とを備えることを特徴とする成形装置。
【請求項1】
凹状の雌金型と接離することにより、雌金型とで発泡体を成形する凸状の雄金型において、
発泡体を成形する際に雌金型の内部に配置される凸部を有する凸金型と、凸部よりも外側に配置され、発泡体を成形する際に凸金型と雌金型との間を閉塞する蓋金型とを備え、
凸金型は、外側から凸部に嵌着する発泡体を蓋金型に係止させることで凸部から離脱させるべく、蓋金型よりも雌金型から離反するように、蓋金型に対して変位可能に構成されることを特徴とする雄金型。
【請求項2】
凹状に形成される雌金型と、雌金型と接離することにより、雌金型とで発泡体を成形する請求項1に記載の雄金型とを備えることを特徴とする金型構造。
【請求項3】
雌金型を有する雌金型部と、蓋金型を有する蓋金型部とを備えると共に、一方側が雌金型部に固定され、蓋金型が雌金型に接離する際に蓋金型部を長手方向に沿って案内する長尺な案内体を複数備え、
各案内体は、他方側が変位自在となるように、一方側のみが固定される請求項2に記載の金型構造。
【請求項4】
凸金型が蓋金型よりも雌金型から離反すべく、蓋金型が雌金型から離反するのを停止させる停止手段を備える請求項2又は3に記載の金型構造。
【請求項5】
発泡体を成形する際に、熱媒体が流通するための間隙を凸金型と蓋金型との間に形成すべく、凸金型及び蓋金型の少なくとも何れか一方に凹状部を備える請求項2〜4の何れか1項に記載の金型構造。
【請求項6】
請求項2〜5の何れか1項に記載の金型構造と、雌金型と雄金型とを接離させる接離手段とを備えることを特徴とする成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−39794(P2013−39794A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179540(P2011−179540)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【特許番号】特許第4918623号(P4918623)
【特許公報発行日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(598045221)株式会社山正製作所 (6)
【出願人】(593086805)イビデン樹脂株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【特許番号】特許第4918623号(P4918623)
【特許公報発行日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(598045221)株式会社山正製作所 (6)
【出願人】(593086805)イビデン樹脂株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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