説明

金属ストランドを溶融浸漬被覆するための装置

本発明は、金属ストランド1、特に鋼ストリップを溶融浸漬被覆するための装置であって、金属ストランド1が、溶融された被覆金属2を収容する容器3を通して、かつ前もって接続された案内通路6を通して垂直に貫通案内され、金属ストランド1の両側の案内通路の領域内に、容器3内の被覆金属2を保持するために電磁場を発生するための少なくとも2つの誘電子8が配置され、そして案内手段を備えかつ保護ガス下にある炉空間9が案内通路6に前もって接続される装置に関する。所定条件の場合に、案内通路6と炉空間9との間の永続的に優れた封隙を保証するために、本発明によれば、炉空間9と案内通路6との間に、ガス密の耐熱性で柔軟な封止部13が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストランド、特に鋼ストリップを溶融浸漬被覆するための装置であって、金属ストランドが、溶融された被覆金属を収容する容器を通して、かつ前もって接続された案内通路を通して垂直に貫通案内され、金属ストランドの両側の案内通路の領域内に、容器内の被覆金属を保持するために電磁場を発生するための少なくとも2つの誘電子が配置され、そして案内手段を備えかつ保護ガス下にある炉空間が案内通路に前もって接続される装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、例えば、特許文献1又は特許文献2から公知である。
【0003】
従来技術による装置の場合、炉空間と案内通路との間に、効果的な封隙が確保されることを配慮しなければならない。しかし、このことは、そこで支配する炉温及び強制的に使用される耐熱性材料の場合、例えば、案内通路と炉空間との間の避けられない相対運動の発生のため問題となることがある。
【0004】
【特許文献1】独国特許第19628512C1号明細書
【特許文献2】欧州特許第0630421B1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、同一範疇の装置の場合に特に発生する事情を考慮する封隙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるこの課題の解決方法は、まず一般に、炉空間と案内通路との間に、ガス密の耐熱性で柔軟な封止部が配置されることを特徴とする。
【0007】
このまとまった性質により、炉空間内への案内通路の移行領域の永続的に確実な封隙が得られる。
【0008】
本発明の好ましい一形態では、封止部が、容器に収容された液体を含むことによって、特に柔軟性が確保される。この場合、液体及び容器の両方が、そこで支配する温度に耐えなければならないことが明らかである。
【0009】
液体の貯蔵は、容器が、液体が充填されたリング状の溝を含み、このリング状の溝が、炉空間の上方開口部の上に密に着座するか又は密に結合され、かつ案内通路の下方部分の周りに延在するように行われることが好ましい。
【0010】
ある程度の全側面の移動余地を形成しつつ、上方に対して封隙するために、容器が、案内通路と結合されかつ案内通路の周りに延在する鉢状の蓋体を含み、この蓋体の下方に向けられた縁部が、液体の中の周囲にかつ溝の内側に対し軸方向及び半径方向の遊びを有しつつ浸漬することを意図することができる。浸漬深さ及び溝に対する縁部の同心性も幾分変化することがあるので、軸方向及び半径方向の両方の移動余地が確保される。
【0011】
耐熱性に対する高い要件要求を満たすために、特に、溝が液体金属で充填され、かつ液体状態を常時確保するために加熱されることも考えられる。
【0012】
溝が、案内通路の下方部分に対しある程度半径方向の間隔をあけて配置される場合、封止部にも、水平の移動余地が付与され、これにより、上述の相対運動が水平に補正されるのみならず、特に加熱装置を配置するためにもこの移動余地を利用できる。
【0013】
特に、次に、リング状の溝が、溝の両側に、すなわち半径方向に配置されたコンパクトな配置の加熱導体によって電気的に加熱されることが可能になる。
【0014】
封隙するための液体が、例えば、錫、軽合金又は亜鉛などからなる溶融合金のような被覆金属と同一の金属から構成される場合、材料選択に関しても、装置の構造全体を単純化又は統一化することができる。
【0015】
提案した本発明の措置により、ガス密性の機能を失うことなく、案内通路と、炉空間を含む案内ローラのような案内手段との間の各々の方向の相対運動を可能にする柔軟な結合が達成される。特に、これによって、案内通路の周りに配置された誘電子も、装置の運転時間の過程に発生する、漏れのある結合箇所から流出する高温のガスから保護される。
【0016】
図面に、本発明の実施例が示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
唯一の図1は、溶融浸漬被覆用の装置によって貫通案内される中心切断面の金属ストランド1を有する当該装置の部分的に大まかな概略図を示しており、この場合、本発明にとって重要な装置の領域のみが示されている。
【0018】
図1に部分的にのみ示した装置では、被覆すべき鋼ストリップの形態の金属ストランド1は、溶融液体の被覆金属2からなる浴を通して搬送方向FRに垂直に引き抜かれる。被覆金属2は、特に亜鉛又はアルミニウムであることができ、そしてそれらである。適切な単に図示した容器3に、空気遮断の下に収容される。
【0019】
容器3の底部4に、金属ストランド1用の通過開口部5が配置される。底部4の通過開口部5の下方に、狭い長方形の管の形態の案内通路6が隣接する。帯状の金属ストランド1は、全側面の遊びで案内通路6を通して案内され、この場合、環状隙間RSの形態の案内通路6の空いたままの断面は、ある程度の垂直距離にわたって被覆金属2で充填され、この結果、案内通路6の上方部分7の金属ストランド1は、被覆金属2によって囲まれる。したがって、被覆金属2は、上方領域7で、環状隙間RSをある程度の軸方向距離だけ下方に充填する液体の環状封止部を形成する。
【0020】
この環状封止部の封止作用を確実にするために、すなわち、案内通路6の環状隙間RSの永続的に確実な下方への封隙のために、誘電子8が案内通路6の縦方向壁9の両側に配置される。誘電子8は、案内通路6の領域に強い磁場を発生し、この磁場は、被覆金属2が案内通路6から下方に流出できずに、ほぼ固定して留まる程度に、そこのリング状の被覆金属2の重力に対抗作用する。
【0021】
誘電子8の種類及びそれらの動作方法、ならびに別の装置の特徴は、上述の従来技術に個別に説明されている。
【0022】
下方に向かって、案内通路6は、金属ストランド1を備えかつ保護ガス下にある炉空間9用の図示していない案内ローラに開く。この結合部を封隙するために、案内通路6の下端10は、遊びを有して炉空間9の上方開口部11に延在する。開口部11の周囲にかつその上方に位置する案内通路6の下方部分12の周りに、次のように組み立てられる柔軟な封止部13が配置される。
【0023】
主に溶融液体の金属16が充填される、案内通路6に対し同軸に配置されかつ炉空間9の覆い14の上に密に位置するか又は結合されたリング状で断面がU字状の溝15。案内通路6の部分12を共軸に囲み、かつ下方に向けられた周囲縁部18により金属16の中に浸漬し、この場合、溝15の内側19に対し半径方向及び軸方向の遊びSPを含む、案内通路6と密に結合された鉢状の蓋体17。
【0024】
溝15は、案内通路6に対し軸方向間隔ABに配置される。この環状隙間で、封止金属16を液体に維持するために、溝15の内側ならびに外側に電気加熱導体20を配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】溶融浸漬被覆用の装置の概略図である。
【符号の説明】
【0026】
1 金属ストランド
2 被覆金属
3 容器
4 底部
5 通過開口部
6 案内通路
7 上方部分
8 誘電子
9 炉空間
10 下端
11 上方開口部
12 下方部分
13 封止部
14 覆い
15 溝
16 金属
17 蓋体
18 縁部
19 内側
20 加熱導体
AB 間隔
FR 搬送方向
RS 環状隙間
SP 遊び

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストランド(1)、特に鋼ストリップを溶融浸漬被覆するための装置であって、前記金属ストランド(1)が、溶融された被覆金属(2)を収容する容器(3)を通して、かつ前もって接続された案内通路(6)を通して垂直に貫通案内され、前記金属ストランド(1)の両側の前記案内通路の領域内に、前記容器(3)内の前記被覆金属(2)を保持するために電磁場を発生するための少なくとも2つの誘電子(8)が配置され、そして案内手段を備えかつ保護ガス下にある炉空間(9)が前記案内通路(6)に前もって接続される装置において、
前記炉空間(9)と前記案内通路(6)との間に、ガス密の耐熱性で柔軟な封止部(13)が配置されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記封止部(13)が、容器(15、17)に収容された液体(16)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記容器が、前記液体(16)が充填されたリング状の溝(15)を含み、前記リング状の溝が、前記炉空間(9)の上方開口部(11)の上に密に着座し、かつ前記案内通路(6)の下方部分(12)の周りに延在することを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記容器が、前記案内通路(6)と結合されかつ前記案内通路(6)の周りに延在する鉢状の蓋体(17)を含み、前記蓋体の下方に向けられた縁部(18)が、前記液体(16)の中の周囲にかつ前記溝(15)の内側(19)に対し軸方向及び半径方向の遊び(SP)を有しつつ浸漬することを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記溝(15)が液体金属(16)で充填されかつ加熱されることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記溝(15)が、前記案内通路(6)の下方部分(12)に対し半径方向の間隔(AB)を有して配置されることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記溝(15)が、前記溝(15)の両側に配置された加熱導体(20)によって電気的に加熱されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記液体(16)が、前記被覆金属(2)と同一の金属から構成されることを特徴とする、請求項2〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記液体(16)が、亜鉛、アルミニウム又は錫からなる溶融合金から構成されることを特徴とする、請求項2〜8のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2008−544087(P2008−544087A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517415(P2008−517415)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006011
【国際公開番号】WO2007/000277
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】