説明

金属ドープゼオライト及びその製造プロセス

本発明は、それぞれ、ドーピング金属が、個々の原子の形態で、即ち、単量体として及び/又は二量体の種としてゼオライト内に存在する金属ドープ若しくは金属交換ゼオライトに関する。さらに、本発明は、そのような金属交換ゼオライトを生成するプロセスに関する。前記金属ドープゼオライトは、特に、窒素酸化物の還元に役立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒活性のドーピング金属がゼオライト中に孤立して、即ち、単量体種及び/又は二量体種として存在する金属ドープゼオライトと、そのようなゼオライトの製造プロセスと、特に排ガスの浄化のための、更に窒素酸化物の減少のための、それらの触媒材料としての使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
金属ドープゼオライトは、最新技術で知られ、排ガスの浄化のための触媒材料として広く用いられている。
【0003】
環境に対する窒素酸化物の有害性のために、これらの排出をさらに減らすことは重要である。固定発生源及び自動車からのガスに対する、今日よりも明らかに低いNOx排出規制は、アメリカ合衆国において近い将来計画され、また、欧州連合で議論されている。
【0004】
これらの規制を順守することができるように、移動式燃焼エンジン(ディーゼルエンジン)の場合では、これは、前記エンジン内での測定によってではなく、例えば適切な触媒を用いた排ガスの後処理によって達成される。
【0005】
また、燃焼ガスの脱窒は、DeNOxと呼ばれている。自動車エンジンでは、選択接触還元 (SCR)は、もっとも重要なDeNOx技術の一つである。炭化水素(HC-SCR)若しくはアンモニア(NH3-SCR)若しくは尿素(Ad-Blue(商標登録))等のNH3前駆体は、通常還元剤としての機能を果たす。金属交換ゼオライト(金属ドープゼオライトとも呼ばれる。)は、とても活性があり且つ広い温度範囲で用いられ得るSCR触媒であることが証明されている。それらは、ほとんど毒性がなく、V2O5をベースとした通常の触媒よりもN2O及びSO3の生成が少ない。特に、鉄ドープゼオライトは、通常用いられるバナジウム触媒のよい代替物となるが、それは、なぜなら、熱水条件におけるそれらの高い活性及び硫黄に対する耐性のためである。金属をゼオライトにドーピングする通常のプロセスは、例えば、液体イオン交換、固相イオン交換、蒸気相イオン交換、機械的化学的プロセス、含浸プロセス及びいわゆる特別な骨格プロセス等の方法を含む。
【0006】
US 5,171,553は、例えば、水溶液におけるイオン交換プロセスを開示し、ここでは、5を超え約50までのSi/Al比を有するケイ素リッチゼオライトが、通常、担体として用いられている。
【0007】
問題は、例えば、鉄、バナジウム、コバルト及びニッケル等の活性成分をゼオライトにドーピングし又は導入した時に生じるが、それは、これらの触媒活性金属の様々な酸化数が互いに隣接して生じ所望の触媒活性種がいつでも得られないからであり、又は、ドーピングプロセスのパラメータ(酸素、温度、湿度等)のために前記触媒活性の種が触媒的に不活性な種に変化するからである。
【0008】
固体イオン交換によって鉄をゼオライトにドーピングすることは、知られており(EP 0 955 080 B1)、ここでは、前記所望のゼオライト、金属化合物及びアンモニア化合物の混合物が、保護雰囲気下、特に、還元的な保護雰囲気下で焼結され、その結果、金属含有の、特に鉄ドープの、増加された長期安定性を有する触媒が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特に知られた最新技術のプロセスすべてにおいては、前記触媒活性金属のクラスター種が、触媒的に不活性であり若しくは触媒活性をかなり低下させるが、前記触媒活性金属のクラスター種は、前記ゼオライト内での前記金属交換の結果として生じることが示されている。"クラスター"によって、少なくとも3つの同質の若しくは異なる金属原子を有し架橋され若しくは架橋されていない多核の金属化合物が意味される。このように、ゼオライト骨格内で金属クラスターが検出されない金属交換ゼオライトは、ほとんど知られていない。
【0010】
従って、本発明の目的は、これまで知られた金属含有ゼオライト材料に比して高い触媒活性を有する金属含有ゼオライト材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、金属交換ゼオライトによって達成されるが、ここでは、前記交換金属は、孤立した個々の原子若しくはカチオン(単量体種)及び/又は二量体種としてゼオライト中に存在する。"金属交換"によって、金属若しくは金属カチオンが、ゼオライト若しくはゼオライト骨格に存在するカチオン、通常H+、Na+、NH4+等によって交換されることが意味される。
【0012】
本発明に係る金属交換ゼオライト(ここでは、同意語として金属ドープゼオライトと呼ばれる。)は、触媒不活性な若しくは触媒活性の小さい金属クラスターを含まず、その結果、単量体(個々の金属原子若しくは金属カチオンの形態での孤立した種)の若しくは二量体の触媒的に極めて活性のある金属種が、前記細孔構造、すなわち、より正確にはゼオライト骨格に存在する。前記金属種は、言い換えれば、“骨格金属種”とも呼ばれ得る。本発明で用いられている"単量体若しくは二量体の種"という語は、例えば、ゼオライト細孔に組み込まれたコバルト−シクロペンタジエニル若しくは二量体の酢酸銅に対してUS 5,603,914若しくはS. Chavan et al. J. Catalysis 192, pp. 286-295 (2000)等に記載されているような、いわゆる"シップインボトル"ゼオライトのホスト−ゲスト錯体を含まない。
【0013】
本発明に係るゼオライトの二量体金属種は、架橋され(例えば、O若しくはOH原子で架橋され)若しくは架橋されずに存在し、このようにして、金属−金属バンドを有する。
【0014】
それ故に、より一層少ない量が、金属ドーピング若しくは金属交換(しばしば金属負荷とも呼ばれる。)中に用いられる。さらに、本発明に係るゼオライトの活性及び選択性は、知られた最新技術のゼオライトに比して、かなり増加されている。上述したような主に金属クラスターがゼオライトに存在している同じ金属でドーピングされ若しくは交換された最新技術のゼオライトに比して、本発明に係る金属交換ゼオライトは、NOからN2への還元中に各金属に対して約30%の活性での増加を示すことがわかった。また、不活性の金属クラスターは、細孔体積を減少しそしてガス拡散を遅らせ、若しくは望まれない二次反応を導くが、それは、本発明に係るゼオライトによって有利に妨げられ得る。
【0015】
“ゼオライト”によって、International Mineralogical Association (D.S. Coombs et al., Can. Mineralogist, 35, 1997, 1571)の定義に従った本発明の枠組み内で、以下の一般式の空間的なネットワーク構造を有するケイ酸アルミニウムの群からの結晶物質が意味される。

Mn+n[ (AlO2)x(SiO2)y]itH2O

これは、通常三次元ネットワークを形成する共通の酸素原子によって結びつけられた四面体のSiO4/2及びAlO4/2を有する。Si/Al=y/x比は、いわゆる“Lowenstein Rule(ここで、「o」の文字はウムラウト)”に従っていつも1以上であり、それは、2つの近くにある負電荷の四面体のAlO4-は互いに隣り合わないであろうことを示す。従って、より多くの交換スペースは、低いSi/Al比を有する金属に対して利用できるが、一方で、前記ゼオライトは、ますます熱的に不安定になる。
【0016】
前記ゼオライトの構造は、各々のゼオライトの特徴である空隙及びチャンネルを有する。前記ゼオライトは、それらのトポロジーに従った様々な構造様式(上記を参照。)に分類される。前記ゼオライトの骨格は、水分子と、交換され得る特別な骨格カチオンとによって通常占領されるチャンネル及びケージの形態の空いた空隙を有する。アルミニウム原子は、これらのカチオンによって補正された過剰な負電荷を引きつける。細孔システムの内部は、触媒活性の表面によって表される。ゼオライトがより多くのアルミニウム及びより少ないケイ素を備えるほど、前記負電荷は、その空間格子においてより濃密になり、その内部表面がより極性になる。前記細孔のサイズ及び構造は、前記パラメーターに加えて、生産中に(鋳型の使用若しくはタイプ、pH、温度、種晶の存在)、ゼオライトの触媒特性の最も大きい部分を決定するSi/Al比によって決定される。本ケースでは、本発明に係るゼオライトのSi/Al比が、10〜20(20〜40のSiO2/Al2O3比に相当する。)の範囲にあることが特に好ましい。
【0017】
金属ドープ若しくは交換ゼオライトの生成のための液交換プロセスでは、多価の重金属をより軽いものに、特に水素及び/又はNH4+に交換することに対して強い親和性がある。
【0018】
水和したゼオライトでは、脱水は、約400℃よりも低い温度でもっとも起こり、とても大きな可逆性を有する。
【0019】
前記ゼオライト骨格の四面体の中心としての2価若しくは3価のカチオンの存在のために、前記ゼオライトは、いわゆるアニオンサイトの形態で負電荷を受け取るが、その付近で、対応するカチオンの位置が定まる。前記負電荷は、前記ゼオライト材料の細孔の中に、例えば金属カチオン等のカチオンを組み込むことによって補正される。ゼオライト間の区別は、SiO4/AlO4-四面体の堅いネットワークによって形成される空隙の形状に従って主になされる。前記空隙の入り口は、8、10若しくは12の"リング"(狭い−、平均の−、及び広い−有孔ゼオライト)から形成される。特別なゼオライトは、直線若しくはジグザグチャンネルで均一の構造(MFIトポロジーを有するZSM-5)を示し、他方では、より大きな空隙は、例えばトポロジーFAU及びLTAを有するY及びAゼオライトの場合に、細孔の穴の後方に配置される。一般に、10及び12"リング"ゼオライトは、本発明では好ましい。
【0020】
原則的に、本発明の枠組み内では、いかなるゼオライト、特にいかなる10及び12“リング”ゼオライトも、用いられ得る。トポロジーAEL、BEA、CHA、EUO、FAO、FER、KFI、LTA、LTL、MAZ、MOR、MEL、MTW、LEV、OFF、TON及びMFIを有するゼオライトは、本発明では好ましい。トポロジー構造BEA、MFI、FER、MOR、MTW及びTRIのゼオライトは、より好ましい。
【0021】
本発明によれば、ゼオライト様材料は、同様に用いられ、このことは、例えば、US 5,250,282に記載され、ここでの参照は全公開内容に対するものである。さらに、本発明に係る好ましいゼオライト材料は、M41Sという名で知られている、ケイ酸塩若しくはアルミノケイ酸塩のメソポーラスゼオライト材料であり、US 5,098,684及びUS 5,102,643に詳細に記載されており、その全公開内容に対してここで同様に参照される。
【0022】
さらに、同形に交換されたアルミノリン酸塩から形成された、いわゆるケイ素−アルミノリン酸塩(SAPOs)は、本発明に従って用いられ得る。
【0023】
好ましくは、本発明に従って用いられるゼオライトの細孔サイズは、0.4〜1.5nmの範囲にあるが、その範囲は、単量体若しくは二量体の金属種にとってもっとも有利な立体比であるために金属クラスターの代わりの単量体若しくは二量体の金属種にとって有利に寄与する。
【0024】
通常、ゼオライトの金属含有量若しくは交換度は、該ゼオライトに存在する金属種によって決定的に測定される。また、前記ゼオライトは、一つの金属のみで若しくは様々な金属でドーピングされ若しくは交換され得る。
【0025】
交換スペース(“交換可能な位置若しくは場所”とも呼ばれる。)の位置を明確にする、いわゆるα−、β−及びγ−位置として記述されるゼオライトの3つの異なる中心が通常ある。3つの位置すべては、NH3-SCR反応中に、特に、MFI、BEA、FER、MOR、MTW及びTRIゼオライトを用いるときに、反応物質にとって利用できる。
【0026】
いわゆるα−タイプカチオンは、ゼオライト骨格に対してもっとも弱い結合を示し、液体イオン交換において占有される最後のものである。占有の度合いは、10%程度の交換度から著しく増加するが、それは、前記金属含有量が、増加し、M/Al=0.5までの交換度での全体における約10〜50%に達するからである。この場所でのカチオンは、とても活性のあるレドックス系触媒を形成する。
【0027】
反対に、もっとも占有されたポジションを表し且つ液体イオン交換中に特に小さな交換度でもっとも効果的に前記HC-SCR反応に触媒作用を及ぼすβ−タイプカチオンは、ゼオライト骨格に対する平均の接着強度を示す。このポジションは、γ-ポジションの後にすぐに満たされ、その占有度は約10%の交換度から減少するが、それは、前記金属含有量が、増加し、M/Al=0.5までの交換度に対して約50〜90%になるからである。最新技術では、0.56よりも大きいM/Alの交換度から、通常、多核の金属酸化物のみが沈着されることが知られている。
【0028】
前記γ-タイプカチオンは、前記ゼオライト骨格に対してもっとも強い結合を有するカチオンであり、且つもっとも熱安定性を有する。それらは、液体イオン交換中では最小の占有されたポジションであるが、最初は満たされている。これらのポジションのカチオン、特に鉄及びコバルトは、極めて活性があり且つもっとも触媒活性のあるカチオンである。
【0029】
交換若しくはドーピングのための好ましい金属(若しくは金属カチオン)は、Fe、Co、Ni、Ag、Co、V、Rh、Pd、Pt、Ir等の触媒活性金属であり、より好ましくはFe、Co、Ni及びCuであるが、それらは、本発明に係るゼオライトの場合に特に高い交換度で主に存在し且つ架橋された二量体の種を形成する。
【0030】
概して、対応する金属酸化物として計算される金属の量は、前記金属交換ゼオライトの重量に対して1〜5重量%である。特に、交換し得るサイト(即ち、α−、β−及びγ−サイト)の50%よりも多くが交換されていることが好ましい。より好ましくは、交換し得る場所の70%以上が交換されている。しかしながら、フリーの場所は、そのままであるべきであり、それは、好ましくは、ブレンステッド酸の中心である。これは、NOが交換金属の中心及びイオン交換ポジションで又は前記ゼオライト骨格のブレンステッド中心で強く吸収されるからである。さらに、NH3は、好ましくは強酸のブレンステッド中心で反応するが、このように、その存在は、良好なNH3-SCR反応にとってとても重要である。このように、フリーラジカル交換スペース及び/又はブレンステッド酸中心及び金属交換空間格子場所の存在は、本発明ではもっとも特に好ましい。従って、70〜90%の交換度が、もっとも好ましい。90%よりも大きい交換度では、活動における減少が、NOのN2への還元及びSCR-NH3反応中に観察される。
【0031】
脱アルミニウムと、前記ゼオライトのイオン交換の中心からの金属の移動とにより始まる、金属交換ゼオライトの熱水失活の危険性のため、前記ドーピング金属は、もし可能であれば安定な化合物を形成しないことが好ましいが、それは、脱アルミニウムが安定な化合物によって促進されるからである。
【0032】
さらに、本発明の目的は、まず、密閉可能な反応容器でゼオライトの水懸濁液若しくは水含有懸濁液が準備され、さらに、
a) 8〜10の範囲の値に前記懸濁液のpHを増加させ、好ましくはNH4OH(アンモニア水)を用いて該pHを増加させ、且つ前記反応容器の酸素レベルを10%未満、好ましくは5%未満の値にセットするステップと、
b)1.5〜6の範囲の値に前記pHを減少させるステップと、
c)金属塩を加え、そして1〜15時間にわたって反応させるステップと、
d)前記金属交換(ドープ)ゼオライトを濾過し洗浄するステップと
を含んでいる、前記金属交換ドープゼオライトの生成のためのプロセスによって達成される。
【0033】
反応をコントロールすることの効果、特に前記pHを増加させ及び減少させること(本発明に係るプロセスのいわゆる“pHコントロール”)による効果は、前記金属交換ゼオライトでの触媒反応形成にとって不適切な金属クラスターがなく約70〜90%の高い交換度が達成されることであるが、このことは、最新技術で特に液交換分野で知られるプロセスにおいて以前では達成されないものである。
【0034】
交換速度及び交換度は、前処理によって、特にアンモニアによってさらに増加される。前記反応混合物は、酸素レベルをセットした後、約1〜60分間かき混ぜられる。
【0035】
最新技術では、低いpHにおいて、最も触媒活性のある金属で、触媒不活性である多核のヒドロキソ若しくはオキソ種が生じることが推測され若しくはわかっているが、一方で、たとえpHが本発明に係るプロセスのステップb)で1.5〜6の値に減少されても、金属クラスターなしで極めて交換されたゼオライト(交換限界 約90%)が生じることが意外にもわかった。
【0036】
上述したように90%が好ましい上限を表すが、本発明に係るプロセスを数回繰り返すことによって、交換若しくはドーピングの度合いが、前記ゼオライトの交換し得るサイトの100%まで増加され得る。好ましさが劣る実施形態ではあるが、様々な金属を、交換若しくはドーピングのために用いてステップc)における金属塩の選択を変えることは、同様に可能である。好ましくは、前記触媒活性金属の上述された塩、例えば、触媒活性金属の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、混合アンモニウム−金属塩、硫酸塩及び可溶性複合化合物等が、用いられる。
【0037】
前記金属塩は、固体状で、及び溶液状で加えられることができ、ここでは、水溶液がより容易に機能するため水溶液が好ましいが、しかし、溶解した金属塩が、有機溶媒、又は水性溶媒若しくは有機溶媒の混合物で用いられるのを妨げるものはない。
【0038】
通常、より高いレベルにより前記混合物が凝固されるように、かき混ぜることにより良い完全な混合を保証するべく、結果として得られる懸濁液は、5〜25重量%のゼオライトを含有する。
【0039】
前記pHは、好ましくは、強塩基を加えること、より好ましくはアンモニア水の形態で強塩基を加えることによって高められる。また、他の適した塩基ももちろん用いられるが、ここでは、NaOH若しくはKOH等の塩基は、あまり有利ではなく、それは、なぜなら、前記金属塩を有する多核のヒドロキソ種の構造を促進するそれらの傾向のためである。
【0040】
pHレベルを正確にセットすることができるように、ゼオライトに対するアンモニアのモル比は、0.01〜0.1である。
【0041】
前記懸濁液は、HCl、H2SO4、HNO3等の鉱酸を加えることによって通常酸性にされる。前記酸は用いられるが、該酸のアニオンは、好ましくは加えられる対応した金属塩のアニオンである。しかしながら、HClはより少ないことが好ましいが、それは、廃水浄化中のその高い腐食性のためである。
【0042】
従って、より好ましくは、前記pHは、1.5〜3の範囲に減少されるが、そのことは、最新技術とは違ってすでに述べたように、意外にも多核のヒドロキソ−架橋された金属クラスター種を導かない。
【0043】
前記懸濁液の酸性化は、最初に80〜100℃の範囲の温度で加熱され約2時間かき混ぜることによって生じる。イオン交換中に増加された温度は、有利に、減少された金属イオンの水和層を導き、このようにして、該交換は促進される。
【0044】
本発明に係るプロセスの枠組み内では、前記反応中の反応容器内の酸素レベルが10%未満、より好ましくは5%未満であることが重要であり、それは、ここでは、同様に、多核の酸素−若しくはヒドロキソ−架橋された金属種の構造が抑えられるからである。
【0045】
金属交換のための反応時間は、約2〜8時間、より好ましくは3〜5時間である。反応及びドーピング後に得られる粉末は、濾過され洗浄されて、任意的に100℃よりも高い温度で乾燥され、ここでは、乾燥中の温度は250℃を超えるべきではないが、そうでなければこれは部分的な焼成を導くからである。
【0046】
焼成は、400〜600℃の範囲で、好ましくは不活性ガスのもとで実施され得る。
【0047】
酸化還元対が焼成中に通常バランスを保つので、通常、上記金属塩は、金属が2、3若しくは4価の酸化工程で存在するかどうかに関わらず用いられる。しかしながら、二価塩は、特に鉄塩の場合に、より好ましいが、それは、これらが、通常、溶解し難い水酸化金属の沈殿と、ゼオライト細孔の閉塞とを生じ難いからである。従って、より高い価数の鉄塩を用いる場合、選ばれる交換時間は長すぎないようにすべきであるが、それは、より多くの水酸化物が結果として沈殿するからである。
【0048】
本発明に係るプロセスによって準備されたゼオライトは、通常、排ガスを浄化するのに、特に窒素酸化物の還元に用いられる。
【実施例】
【0049】
本発明は、実施例を参照して以下でより詳細に記述されるが、しかしながら、それは、制限と考えるべきではない。
【0050】
一般:
UV/VIS MIR拡散反射測定は、拡散反射を有するPerkin Elmer UV/VISスペクトロメータと、参照としてのBaSO4とを用いて、本発明に従って得られたゼオライトにおいて実施された。吸収強度は、Schuster-Kubelka-Munk式(しばしば、Kubelka Munk理論とも呼ばれる。)に従って求められた。
【0051】
例1
鉄交換(若しくはドープ)ゼオライトの生成
2 gのNH4-ZSM5(代わりにH-ZSM5若しくはNa-ZSM5も用いられた。)は、水溶液に該水溶液に対して10〜15重量%の量で懸濁され、室温下でかき混ぜられた。そして、アンモニア水の形態でのアンモニアが、ゼオライトに対するNH3の比0.04で加えられ、その結果、9よりも大きいpHがセットされた。該pHはほとんど10であった。
【0052】
そして、反応容器は閉じられ、不活性ガスでフラッシュされ、該容器内の雰囲気が5%未満の酸素レベルにセットされ、20分間待った。
【0053】
それから、希硫酸濃度(25体積%)の形態での硫酸が加えられたが、ここでは、ゼオライトに対する硫酸の比は0.05であった。前記酸素レベルは、5%未満のままにされ、pHが4.0にセットされた。そして、この酸性にされた懸濁液は、90℃の温度に加熱され、その後すぐに、固体FeSO4・7H2Oは、ゼオライトに対するFeSO4・7H2Oの重量比0.2で加えられた。pHは3であり、この反応は、5%未満の酸素レベルでかき混ぜられつつ、8時間にわたって反応容器で実施された。
【0054】
それから、略白色を有する交換ゼオライトは、濾過され、蒸留水で3回洗浄され、そして150℃で乾燥された。焼成は、不活性ガスのもと、500℃で3時間行われた。
【0055】
この結果として生じる生成物は、ゼオライトの全質量に対して1.5重量%のFe2O3を含有した。
【0056】
UV/VIS スペクトル:
このようにして得られた鉄交換ゼオライトは、SCR反応中に仮にあったとしてもほんのわずかしか活性がない多核の鉄クラスター(即ち、3よりも多い鉄原子)に割り当てられた10 - 25,000 cm-1の範囲の波長でのバンドを示さなかった。
【0057】
反対に、本発明に係る鉄交換ゼオライトは、SCR反応中に極めて活性のある鉄−酸素二量体(Fe-O-Fe)に割り当てられる25,000〜30,000 cm-1の波長範囲で厚いバンドを示す。同様に、例1で得られたゼオライトは、モノマー、ゼオライト空間格子に配置された鉄種、又は特に同様にSCR反応に対して極めて活性のある単量体のFeOH種に割り当てられる30,000〜50,000 cm-1の波長範囲でバンドを示した。
【0058】
このように、例1で得られた本発明に係る鉄ゼオライトによって準備された触媒は、多核で触媒不活性の鉄クラスターを備えない。
【0059】
例2
コバルト交換ゼオライトの生成
硫酸鉄(FeSO4・7 H2O)の代わりに、対応する量のCo(NO3)2若しくは代わりのCo(acac)2((acac)=アセチルアセトネート)が用いられたこと以外は、例1と同様に反応が実施された。硫酸の代わりに、対応する量の0.01 MのHNO3が用いられた。
【0060】
UV/VIS:10〜15,000 cm-1(クラスター種)にはバンドなし、38-45,000 cm-1 (m)(SCR活性モノマー、及び二量体の共通の中心)
【0061】
例3
銅交換ゼオライトの生成
対応する量の銅−アセチルアセトネート溶液が金属塩として用いられ、さらに0.01 MのHNO3が酸として用いられたこと以外は、例1と同様に合成が行われた。
【0062】
UV/VIS: 10〜15,000 cm-1(クラスター種)にはバンドなし、37-45,500 cm-1 (m)(SCR活性モノマー、及び二量体の共通の中心)
【0063】
例4
銀交換ゼオライトの生成
AgNO3が金属塩として用いられ、且つ0.01 MのHNO3が酸として用いられたこと以外は、例1と同様に合成が行われた。
【0064】
例5
ニッケル交換ゼオライトの生成
Ni(NO3)2が金属塩として用いられ、且つ0.01 MのHNO3が酸として用いられたこと以外は、例1と同様に合成が行われた。
【0065】
例6
例1で得られた触媒は、NOのN2への還元中にテストされた。
【0066】
本発明に従って得られた触媒は、800℃で水蒸気10%の大気下において12時間熱水劣化させられ、それから成形体に圧入され、0.4〜0.8 mmのサイズに篩にかけられた。
【0067】
同様に、EP 955 080 B1の例に従って得られた比較触媒は、同じ方法で熱水により劣化された。
この比較触媒は、固体イオン交換により得られた。
【0068】
比較テストのための排ガスの構成は、以下の通りである。
NO: 500 ppm
NH3: 500 ppm
H2O: 50体積%
SV (空間速度): 80,000
残り: N2
【0069】
前記テストは、通常のテストコンディションのもとで行われた。
【0070】
【表1】

【0071】
表1に示すように、本発明に従って得られた触媒を用いたNOのN2への変換は、最新技術の比較触媒を用いたときに比して、350℃では明らかに高い。350℃の温度は、前記DeNOxプロセスに対して最適な温度である。
【0072】
このように、350℃における活性の増加は、約58%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換金属が単量体として、及び/または二量体の種としてゼオライト中に存在する金属交換ゼオライト。
【請求項2】
前記ゼオライトが、構造様式AEL、BEA、CHA、EUO、FAO、FER、KFI、LTA、LTL、MAZ、MOR、MEL、MTW、LEV、OFF、TON及びMFIのゼオライトから選ばれることを特徴とする請求項1記載のゼオライト。
【請求項3】
前記ゼオライトが、構造様式BEA、MFI、FER、MOR、MTW、ERIを有するゼオライトから選ばれることを特徴とする請求項2記載のゼオライト。
【請求項4】
前記ゼオライトの細孔サイズが、0.4〜1.5nmであることを特徴とする請求項2又は3記載のゼオライト。
【請求項5】
前記交換金属が触媒活性であることを特徴とする請求項4記載のゼオライト。
【請求項6】
前記交換金属が、Fe、Co、Ni、Ag、Cu、V、Rh、Pd、Pt、Irからなる群から選ばれることを特徴とする請求項5記載のゼオライト。
【請求項7】
前記交換金属が、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選ばれることを特徴とする請求項6記載のゼオライト。
【請求項8】
前記交換金属が、前記ゼオライトの全重量に対して金属酸化物として計算される1〜5重量%の量で存在することを特徴とする請求項6又は7記載のゼオライト。
【請求項9】
ゼオライト骨格の交換し得る場所の50%よりも多くが、前記交換金属で占められていることを特徴とする請求項8記載のゼオライト。
【請求項10】
まずゼオライトの懸濁水溶液が密閉可能な反応容器内で準備され、さらに、
a)前記懸濁液のpHを8〜10の範囲の値に増加させ、且つ前記反応容器の酸素レベルを10%未満の値にセットするステップと、
b)前記pHを1.5〜6の範囲の値に減少させるステップと、
c)金属塩を加え、そして1〜15時間にわたって反応させるステップと、
d)前記金属交換ゼオライトを濾過し且つ洗浄するステップと
を備える先の請求項の何れか一項に記載の金属交換ゼオライトの生成のためのプロセス。
【請求項11】
前記懸濁液が、5〜25重量%のゼオライトを含有することを特徴とする請求項10記載のプロセス。
【請求項12】
アンモニア水の形態でのアンモニアを加えることにより、ステップa)でのpHの増加が行われることを特徴とする請求項11記載のプロセス。
【請求項13】
ゼオライトに対するアンモニアのモル比が、0.01〜0.1の値を有することを特徴とする請求項12記載のプロセス。
【請求項14】
鉱酸を加えることにより、前記pHがステップb)で減少されることを特徴とする請求項13記載のプロセス。
【請求項15】
前記pHが1.5〜3の範囲の値でセットされることを特徴とする請求項14記載のプロセス。
【請求項16】
前記pHを減少させた後に、前記懸濁液が、80〜100℃の範囲の温度で加熱されることを特徴とする請求項14又は15記載のプロセス。
【請求項17】
ステップc)での交換反応中に、前記反応容器での酸素レベルが5%未満にセットされることを特徴とする請求項16記載のプロセス。
【請求項18】
工程d)の後に得られるゼオライトが、100℃よりも高い温度で乾燥されることを特徴とする請求項17記載のプロセス。
【請求項19】
前記プロセスが、数回実施されることを特徴とする請求項17又は18記載のプロセス。
【請求項20】
前記乾燥されたゼオライトが、400〜600℃の温度で焼成されることを特徴とする請求項18又は19記載のプロセス。
【請求項21】
前記焼成が不活性ガスのもとで行われることを特徴とする請求項20記載のプロセス。
【請求項22】
前記金属が、単量体として及び/又は二量体の種として存在し、請求項10〜21の何れか1項に記載のプロセスで得られる金属交換ゼオライト。

【公表番号】特表2010−527877(P2010−527877A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508740(P2010−508740)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004089
【国際公開番号】WO2008/141823
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(508131358)ズード−ケミー アーゲー (30)
【Fターム(参考)】