説明

金属板被覆用ポリエステルフィルム

【課題】
耐経時劣化性、耐熱性、耐薬品性、エンボス加工性、意匠性、接着性、成形加工性、耐傷性に優れた、金属板被覆用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】
少なくとも一方の面にエンボス加工が施されたポリエステルフィルムであって、ポリエステルの全グリコール由来成分中の55モル%以上95モル%以下が1,4−ブタンジオール由来成分、全グリコール由来成分中の2モル%以上40モル%以下がエチレングリコール由来成分、全グリコール由来成分中の0.5モル%以上20モル%以下が脂環族グリコール由来成分であり、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の70モル%以上100モル%以下がテレフタル酸由来成分、であることを特徴とする、金属板被覆用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐経時劣化性、耐熱性、耐薬品性、エンボス加工性、意匠性、接着性、成形加工性、耐傷性に優れた、金属板被覆用ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建材、家具、電機・電子機器、音響機器、事務機器などの外部あるいは内部部品の化粧金属板被覆用フィルムとしては、金属板と接さない表面にエンボス加工を施したポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステルからなるフィルムや二軸延伸ポリエステルフィルムが用いられてきた。
【0003】
しかし、ポリ塩化ビニル樹脂は耐熱性、エンボス加工性、意匠性、成形加工性、経済性などには優れるが、軟質であるために表面に傷が付きやすく、成形加工性を容易にするために添加されたジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの可塑剤が経時により表面にブリードアウトしたり、また燃焼時に塩化水素ガスを発生し、これに起因して環境への悪影響を及ぼすなどの問題がある。
【0004】
可塑剤を添加しないポリ塩化ビニルなども検討されているが、可塑剤を添加しないポリ塩化ビニルは硬質であり、エンボス加工が困難である。
【0005】
ポリ塩化ビニルに代わる樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが検討されているが、耐経時劣化性、エンボス加工性、意匠性、経済性などは優れるものの、耐傷性に劣り、さらには金属板に積層した後の成形加工により、成形加工部が白化して意匠性が損なわれる。
【0006】
ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルからなるものが主である二軸延伸ポリエステルフィルムは耐経時劣化性、耐熱性、成型加工性には優れるが、エンボス加工を施した場合、剛性があるために深く鮮明な凹凸を得ることが困難である。
【0007】
これらのフィルムの問題を解決すべく、ポリエステルからなるフィルムの検討が進められており、ポリエチレンテレフタレートおよび/もしくはポリブチレンテレフタレートからなる凹凸模様を形成させた無配向ポリエステル層(特許文献1)や、表面にエンボス加工を設けたポリブチレンテレフタレートフィルム(特許文献2)が知られている。
【0008】
しかしながら、ポリエチレンテレフタレートからなる無配向の金属板被覆用フィルムは、接着性、耐傷性には優れるものの、フィルムの成形時に結晶性が低いために経時で体積緩和が進行し、それに伴って成形加工性等が低下するため、長期保管および使用後の成形加工等への耐性に問題があり、さらには耐熱性、耐薬品性、エンボス加工性にも問題があった。また、ポリブチレンテレフタレートからなる無配向の金属板被覆用フィルムは、成形時に結晶性が高いため、耐経時劣化性、耐熱性、耐薬品性、エンボス加工性、耐傷性、成形加工性には優れるものの、結晶性が高いことにより軟化しにくいために接着性が低下する問題、また結晶性が高いことにより表面粗さが増すために光沢度が低下することで、光沢度の調整が困難となり、意匠性が低下する問題があった。さらに、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの二種類のポリエステルからなる金属板被覆用フィルムは、上記同様の理由から、接着性、耐傷性、耐熱性、耐薬品性、エンボス加工性、意匠性、成形加工性には優れるものの、耐経時劣化性には劣る問題があった。
【特許文献1】特許第3544648号公報
【特許文献2】特許第3693920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解消することにあり、耐経時劣化性、耐熱性、耐薬品性、エンボス加工性、意匠性、接着性、成形加工性、耐傷性に優れた、金属板被覆用ポリエステルフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、次に挙げる手段を採用することにより達成することができる。すなわち、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムは、
少なくとも一方の面にエンボス加工が施されたポリエステルフィルムであって、
ポリエステルの全グリコール由来成分中の55モル%以上95モル%以下が1,4−ブタンジオール由来成分、全グリコール由来成分中の2モル%以上40モル%以下がエチレングリコール由来成分、全グリコール由来成分中の0.5モル%以上20モル%以下が脂環族グリコール由来成分であり、
ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の70モル%以上100モル%以下がテレフタル酸由来成分、
であることを特徴とする、金属板被覆用ポリエステルフィルム、である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐経時劣化性、耐熱性、エンボス加工性、意匠性、接着性、成形加工性、耐傷性に優れた、金属板被覆用ポリエステルフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムについて、実施の形態を説明する。
【0013】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムは、少なくとも一方の面にエンボス加工が施され、金属板に積層して使用される。
【0014】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムは、金属板被覆用フィルムとして用いる際の意匠性の観点から、少なくとも一方の面にエンボス加工を施す必要がある。エンボス加工を施す方法としては公知の方法を使用することができ、特に限定されないが、例えば、一方がエンボス目を設けたロール、他方が表面に弾性体を設けたロールからなる一対の加圧ロールに、加熱溶融した樹脂をTダイから押し出し、エンボス目を有するフィルムを製膜する方法、熱プレス盤とエンボス賦形型との間でフィルムを加圧することでフィルムにエンボス目を付与する方法、一方がエンボス目を設けたロール、他方が加熱ロールからなる一対の加熱加圧ロールにフィルムを加熱加圧しながら通過させることでフィルムにエンボス目を付与する方法などが用いられる。
【0015】
エンボス形状としては、砂目、石目、布目、木目、絹目、梨地、皮模様、ヘアーラインなどの形状を任意に選択することができる。
【0016】
本発明の金属板被覆用積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、グリコール成分とジカルボン酸成分とを基本的な構成単位とするポリマーである。
【0017】
グリコール成分として例えば、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環族グリコール、ビスフェノール−A、ビスフェノール−Sなどの芳香族グリコールなどのグリコール成分やポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−プロピレングリコール共重合体等を用いることができる。
【0018】
本発明の金属板被覆用積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルにおいては、耐経時劣化性、耐熱性、耐薬品性、エンボス加工性、意匠性、接着性、成形加工性の観点から、ポリエステルの全グリコール由来成分中の55モル%以上95モル%以下が1,4−ブタンジオール由来成分、全グリコール由来成分中の2モル%以上40モル%以下がエチレングリコール由来成分、全グリコール由来成分中の0.5モル%以上20モル%以下が脂環族グリコール由来成分であることが重要である。上記範囲から外れると、耐経時劣化性、耐熱性、耐薬品性、エンボス加工性、意匠性、接着性、成形加工性が低下しやすくなるので好ましくない。また、より好ましくは、ポリエステルの全グリコール由来成分中の65モル%以上95モル%以下が1,4−ブタンジオール由来成分、全グリコール由来成分中の3モル%以上26モル%以下がエチレングリコール由来成分、全グリコール由来成分中の1モル%以上12モル%以下が脂環族グリコール由来成分であることが好ましい。
【0019】
また、脂環族グリコールとしては、コストの面から1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いることが好ましい。
グリコール由来成分において、1,4−ブタンジオール由来成分は、耐熱性、耐薬品性、エンボス加工性、耐傷性に、エチレングリコール由来成分は、意匠性、接着性、成型加工性に、脂環族グリコール成分は、耐経時劣化性、意匠性、接着性、成型加工性に、それぞれ寄与する。これらのグリコール由来成分を上記範囲に制御することで、本発明の金属板被覆用積層ポリエステルフィルムは、耐経時劣化性、耐熱性、耐薬品性、エンボス加工性、意匠性、接着性、成形加工性、耐傷性の全てを満足する。
【0020】
また、ジカルボン酸成分として例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、マロン酸、1,1−ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、デカメチレンジカルボン酸などを用いることができる。本発明の金属板被覆用積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルにおいては、耐熱性、耐薬品性、生産性の点から、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の70モル%以上100モル%以下がテレフタル酸由来成分であることが重要である。上記範囲から外れると、耐熱性、耐薬品性、生産性が低下しやすくなるので好ましくない。また、好ましくは、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の75モル%以上100モル%以下がテレフタル酸由来成分であることが好ましい。
【0021】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムを形成するポリエステルは、ポリエステルの全グリコール由来成分中の55モル%以上95モル%以下が1,4−ブタンジオール由来成分、全グリコール由来成分中の2モル%以上40モル%以下がエチレングリコール由来成分、全グリコール由来成分中の0.5モル%以上20モル%以下が脂環族グリコール由来成分であり、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の70モル%以上100モル%以下がテレフタル酸由来成分である範囲を満たす限りにおいて、その達成手段は限定されないが、例えば、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリエステル(A)と、エチレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリエステルの、エチレングリコール由来成分の10モル%以上90モル%以下を、脂環族グリコール由来成分で置換したポリエステル(B)の合計100重量%において、ポリエステル(A)が全ポリエステル成分中の60重量%以上95重量%以下、および、ポリエステル(B)が全ポリエステル成分中の5重量%以上40重量%以下とすることで達成可能である。また、より好ましくは、ポリエステル(A)が全ポリエステル成分中の70重量%以上95重量%以下、ポリエステル(B)が全ポリエステル成分中の5重量%以上30重量%以下、および、ポリエステル(B)のエチレングリコール由来成分中の20モル%以上70モル%以下が脂環族グリコール由来成分からなる範囲である。
【0022】
なお本発明でいう、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリエステル(A)とは、ポリエステル中のグリコール由来成分が1,4−ブタンジオールであり、かつポリエステル中のジカルボン酸由来成分がテレフタル酸由来成分であるポリエステルを示し、上記他成分を共重合した場合も含む。
【0023】
同様に本発明でいう、エチレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリエステル(B)とは、ポリエステル中のグリコール由来成分がエチレングリコール由来成分であり、かつポリエステル中のジカルボン酸由来成分がテレフタル酸由来成分であるポリエステルを示し、上記他成分を共重合した場合も含む。
【0024】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムは、耐経時劣化性、耐熱性、耐薬品性の観点から、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の30モル%以下がイソフタル酸由来成分であることが好ましい。また、より好ましくは5モル%以上25モル%以下である。
【0025】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムは、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の30モル%以下がイソフタル酸由来成分である範囲を満たす限りにおいて、その達成手段は限定されないが、例えば、前記ポリエステル(A)、および前記ポリエステル(B)の合計100重量部に対して、エチレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリエステルの、テレフタル酸由来成分中の5モル%以上30モル%以下をイソフタル酸由来成分で置換したポリエステル(C)を40重量部以下含有することで達成することができる。また、より好ましくは、10重量部以上30重量部以下である。
また、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムが、ポリエステル(C)を含有する場合、金属板被覆用ポリエステルフィルムを形成するポリエステルは、前記ポリエステル(A)と、前記ポリエステル(B)の合計100重量%において、ポリエステル(A)が70重量%以上95重量%以下、および、ポリエステル(B)が5重量%以上30重量%以下の範囲からなることが好ましい。
【0026】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルには、ポリエステルの全グリコール由来成分中の55モル%以上95モル%以下が1,4−ブタンジオール由来成分、全グリコール由来成分中の2モル%以上40モル%以下がエチレングリコール由来成分、全グリコール由来成分中の0.5モル%以上20モル%以下が脂環族グリコール由来成分であり、ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の70モル%以上100モル%以下がテレフタル酸由来成分である範囲を満たす限りにおいて、必要に応じてジカルボン酸成分とグリコール成分とを基本的な構成単位とするポリエステルを適量添加することができる。
【0027】
例えば、添加することができるポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリヒドロキシベンゾエート(PHB)等のポリエステルが挙げられる。また、これらのポリエステルは、2種類以上を共重合して用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
より具体的には、ジカルボン酸成分として例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、マロン酸、1,1−ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、デカメチレンジカルボン酸などを用いることができる。
また、グリコール成分として例えば、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノール−A、ビスフェノール−Sなどの芳香族グリコールなどのグリコール成分やポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−プロピレングリコール共重合体等を用いることができる。
【0028】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムは、ゴム状弾性体を、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムの全重量に対して0.01重量%以上10重量%以下含有することが好ましい。ゴム状弾性体を、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムの全重量に対して0.01重量%以上10重量%以下含有することで、フィルムの耐衝撃性、耐傷性、ハンドリング性が向上するために好ましい。また、より好ましくは本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムの全重量に対して0.03重量%以上5重量%である。
【0029】
また、ゴム状弾性体としては、公知のゴム状弾性体を用いることができ、特に限定されないが、ポリメチレン型の主鎖をもつ重合体および/または共重合体、主鎖に炭素と酸素をもつ重合体および/または共重合体、主鎖に不飽和炭素結合をもつ重合体および/または共重合体、主鎖にケイ素と酸素をもつ重合体および/または共重合体、主鎖に炭素、酸素および窒素をもつ重合体および/または共重合体などのゴム状弾性体を使用することができる。
【0030】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムは、ヤング率が2,000MPa以下であることが好ましい。ヤング率を2,000MPa以下とすることで、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムを金属板に被覆した際に、成型加工性に優れるために好ましい。また、より好ましくはヤング率が1,600MPa以下である。なお、ヤング率の下限値は特に限定されないが、ポリエステルフィルムの生産性、耐傷性を考慮すると、下限値は10MPaと考えられる。
【0031】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムにおいてヤング率が2,000MPa以下となる方向は、フィルム面内の少なくとも一方向、より好ましくはヤング率が2,000MPa以下である該一方向と同一面内にあるその直行方向であることが好ましい。
【0032】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムにおいてヤング率が2,000MPa以下とするためには、無配向フィルムであることが好ましい。フィルムの流れ方向もしくは幅方向の一方向への延伸処理、または逐次もしくは同時に流れ方向および幅方向の両方向に延伸処理を行うと、少なくとも一方向のヤング率が2,000MPaより大きくなりやすく、成型加工性が低下しやすくなるので好ましくない。
【0033】
本発明における無配向フィルムとは、KSシステムズ(株)製分子配向計MOA−2001Aを用いて、配向パターン測定により測定した、透過マイクロ波強度の最大値と最小値の比を最小二乗法により補正した値(MOR)が2以下であることが好ましい。また、透過マイクロ波強度の最大値と最小値の比を最小二乗法により補正した値(MOR)が1以下とはならないため、1が下限値となる。
【0034】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムは、意匠性の観点から、フィルム全体の光学濃度が0.5以上であることが好ましい。。また、より好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは0.7以上である。なお、光学濃度の上限値は特に限定されないが、現存する測定装置では6以上は測定不能であることから、上限値は6未満と考えられる。光学濃度を0.5以上とすることで、金属板被覆用ポリエステルフィルムが被覆する金属板の色の影響が、被覆する金属板被覆用ポリエステルフィルムにあっては不都合である用途に使用することができる。
【0035】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムは、着色顔料を含むフィルムであって、着色顔料の濃度が、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムの全重量に対して5重量%以上30重量%以下であることが好ましい。好ましくは、7.5重量%以上25重量%以下である。本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルム中の着色顔料の濃度を、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムの全重量に対して5重量%以上30重量%以下とすることで、光学濃度が0.5以上のフィルムとしやすくなるために好ましい。
【0036】
着色顔料の濃度を増やすほど光学濃度を高めることができるものの、着色顔料の濃度が本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムの全重量に対して30重量%を超えると、該フィルムを金属板と貼り合わせる際に、金属板との接着性が悪くなることがある。また、着色顔料の濃度がフィルムの全重量に対して5重量%未満であると、金属板被覆用ポリエステルフィルムの光学濃度が低下し、金属板被覆用ポリエステルフィルムが被覆する金属板の色の影響を受け、化粧金属板としての外観を損ねる場合がある。
【0037】
ここで着色顔料とは、色彩を与える微細な色粉のことであり、無機系、有機系のものがあるが、種類は特に限定されず、該フィルムに必要な色彩、着色度に応じて適宜選択、設定することができる。例えば、白色顔料としては酸化チタン、黒色顔料としてはカーボンブラックなどを使用することができる。
【0038】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムの厚みは、50〜250μmであることが好ましい。50μm未満の場合、光学濃度、生産性が低下しやすくなるので好ましくない。また、250μmを超える場合、加工性、コスト性が低下しやすくなるので好ましくない。
【0039】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムには、目的や用途に応じて各種の粒子を添加することができる。添加する粒子は、ポリエステル樹脂に不活性なものであれば特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、架橋高分子粒子、重合系内で生成させる内部粒子などを挙げることができる。これらの粒子を2種以上添加しても構わない。かかる粒子の添加量は、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムの全重量に対して0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3重量%である。
【0040】
無機粒子の種類としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの各種炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの各種硫酸塩、カオリン、タルクなどの各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどの各種リン酸塩、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの各種酸化物、フッ化リチウムなどの各種塩を使用することができる。
【0041】
また有機粒子としては、蓚酸カルシウムや、カルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩などが使用される。
【0042】
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸のビニル系モノマーからの単独重合体または共重合体が挙げられる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機微粒子も好ましく使用される。
ポリエステル重合系内で生成させる内部粒子としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などをポリエステルの反応系内に添加して、さらにリン化合物も重合系内に添加する公知の方法によって生成される粒子が挙げられる。
【0043】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムには各種の添加剤を含有することができる。つまり、ポリエステル樹脂以外の成分として、必要に応じて公知の添加剤、例えば、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、粘着性付与剤、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤またはポリシロキサン等の消泡剤を適量配合することができる。
【0044】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルには、必要に応じて公知のポリマーを添加することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル、ポリカーボネート等のポリマーを適量配合することができる。
【0045】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムは、金属板に積層することができる。金属板への積層方法としては公知の方法を用いることができ、特に限定されないが、金属板被覆用ポリエステルフィルムの軟化点もしくは融点以上の温度に金属板を加熱し、金属板被覆用ポリエステルフィルムと金属板を一対の加圧ロールに通し接触させる方法、金属板被覆用ポリエステルフィルムもしくは金属板に、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などの公知の塗布方法により接着層を設け、貼り合わせる方法などを使用できる。また、これらの方法を二種以上併用してもよい。さらに、接着層としては、公知の接着性樹脂を使用することができ、特に限定されないが、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−ビニルアセテート樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂などの接着性樹脂を使用できる。
【0046】
金属板の金属としては公知の金属を使用することができ、特に限定されないが、鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、マグネシウムなどを素材とする金属が好ましく用いられる。また、その表面に接着性や耐腐食性を改良する無機酸化物被膜層、例えばクロム酸処理、リン酸処理、クロム酸/リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理、クロムクロメート処理などで代表される化成処理被膜層を設けてもよい。さらに、展延性金属メッキ層、例えばニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、砲金、真ちゅうなどの被膜層を設けてもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、諸特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)厚み
(株)ミツトヨ製デジマチックマイクロメータMDC−25Sを用いて、フィルムの幅方向に等間隔に10点測定し、その平均値を求めて測定結果とした。
(2)光学濃度
Macbeth社製マクベス濃度計TD−904を用いて、JIS K 7605−1976に従って測定した。なお、測定は5回行い、平均値を求めて測定結果とした。
【0048】
光学濃度が5を超える場合は、X−Rite社製白黒透過濃度計X−Rite 361Tを用いて、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムに垂直透過光束を照射し、試料が無い状態との比を常用対数で表したものを光学濃度として、測定することができる。なお、光束幅は直径1mmの円形もしくはそれ以上の広さとする。また、測定は5回行い、平均値を求めて測定結果とする。
(3)分子配向係数
KSシステムズ(株)製分子配向計MOA−2001Aを用いて、配向パターン測定により透過マイクロ波強度の最大値と最小値の比を最小二乗法により補正した値(MOR)を測定した。
(4)ヤング率
(株)オリエンテック製引張試験器UCT−100を用いて、ASTM D−882に従って測定した。なお、引っ張り方向は金属板被覆用ポリエステルフィルムの製膜方向および幅方向の2方向とし、試料の幅は10mm、初期長は20mm、引っ張り速度は100mm/分とした。
(5)光沢度
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムのエンボス面を、スガ試験機(株)製デジタル変角光沢度計UGV−5Bを用いて、JIS Z 8741−1997に従って測定した。なお、入射角は60°、受光角は60°とした。
(6)成形加工性
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムが積層された金属板を、JIS K 6744−1992の折曲げ性試験に従って評価した。なお、曲げ角度は密着とし、以下の基準で評価した。
○:金属板被覆用ポリエステルフィルムにひび、割れおよび剥離がない。
△:金属板被覆用ポリエステルフィルムにひび、割れおよび剥離があるが、実用上問題ない外観を有する。
×:金属板被覆用ポリエステルフィルムにひび、割れもしくは剥離がある。
(7)耐経時劣化性
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムが積層された金属板を、150℃にて1時間熱処理を施した後、JIS K 6744−1992の折曲げ性試験に従って評価した。なお、曲げ角度は密着とし、以下の基準で評価した。
○:金属板被覆用ポリエステルフィルムにひび、割れおよび剥離がない。
×:金属板被覆用ポリエステルフィルムにひび、割れもしくは剥離がある。
(8)金属板との密着性
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムが積層された金属板を、JIS K 6744−1992の密着性試験に従って評価した。なお、ポンチ押し込み量は6mm、ポンチ押し込み速度は50mm/分とした。
○:金属板被覆用ポリエステルフィルムと金属板との間に剥離がない。
×:金属板被覆用ポリエステルフィルムと金属板との間に剥離がある。
(9)鉛筆硬度
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムが積層された金属板の金属板被覆用ポリエステルフィルム面(金属板被覆用ポリエステルフィルムのポリエステル樹脂層(A)面)を、新東科学(株)製HEIDONを用いてJIS K 5400−1990の鉛筆引っかき値に従って測定し、B以上を合格とした。なお測定は各鉛筆硬度で5回行い、鉛筆硬度が隣り合う二つの鉛筆について、すり傷が2回以上と2回未満とになる一組を求め、2回未満となる鉛筆硬度を測定結果とした。
(10)エンボス性
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムが積層された金属板の金属板被覆用ポリエステルフィルムのエンボス形状を肉眼にて観察した。なお、以下の基準で評価した。
○:本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムと同様に、製膜、エンボス加工、金属板への積層を行ったポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムのエンボス形状と同等以上の外観を有する。
△:本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムと同様に、製膜、エンボス加工、金属板への積層を行ったポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムのエンボス形状にはやや劣るが、実用上問題ない外観を有する。
×:本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムと同様に、製膜、エンボス加工、金属板への積層を行ったポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムのエンボス形状に劣り、実用上に耐えない外観を有する。
(11)耐薬品性
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムが積層された金属板の金属板被覆用ポリエステルフィルム面(金属板被覆用ポリエステルフィルムのポリエステル樹脂層(A)面)に、メチルエチルケトンを含浸させたスポンジを載せ、24時間放置した後の金属板被覆用ポリエステルフィルムの形状の変化および変色の発生程度を肉眼にて観察した。なお、以下の基準で評価した。
○:金属板被覆用ポリエステルフィルムに形状の変化および変色が全く認められない。
△:金属板被覆用ポリエステルフィルムに形状の変化および変色が認められるが、実用上問題ない外観を有する。
×:金属板被覆用ポリエステルフィルムに大きな形状の変化および変色が認められ、実用上に耐えない外観を有する。
(12)耐衝撃性
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムが積層された金属板を60mm×60mmの大きさに切り出し、デュポン式落錘衝撃試験機により、金属板被覆用ポリエステルフィルム面に50cmの高さから1kgの鉄球を落下させて衝撃を与えた後、金属板被覆用ポリエステルフィルムの表面状態を肉眼にて観察した。なお、以下の基準で評価した。
○:割れの発生が全く認められない。
△:割れの発生が認められるが、実用上問題ない外観を有する。
×:大きな割れの発生が認められ、実用上に耐えない外観を有する。
(13)耐熱性
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムが積層された金属板をJIS A 4416−2005の化粧金属板の耐熱性試験に従って評価し、以下の基準で評価した。
○:金属板被覆用ポリエステルフィルムの外観に変化が全く認められない。
△:金属板被覆用ポリエステルフィルムの外観の変化が認められるが、実用上問題ない。
×:金属板被覆用ポリエステルフィルムの大きな外観の変化が認められ、実用上に耐えない。
(14)耐沸騰水性
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムが積層された金属板をJIS A 4416−2005の化粧金属板の耐熱性試験に従って評価し、以下の基準で評価した。
○:金属板被覆用ポリエステルフィルムにしわ、割れ、膨れ、はばれ等が認められない。
△:金属板被覆用ポリエステルフィルムにしわ、割れ、膨れ、はばれ等が認められるが、実用上問題ない。
×:金属板被覆用ポリエステルフィルムに大きなにしわ、割れ、膨れ、はばれ等が認められ、実用上に耐えない。
(15)外観評価
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムが積層された金属板の、該フィルムが積層された面(ポリエステル樹脂層(A)面側)を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:金属板の色の透過による外観の変化が全く認められない。
△:金属板の色の透過による外観の変化が認められる。
[ポリブチレンテレフタレートA(PBT−A)]
東レ(株)製 “トレコン”(登録商標)1400Sのポリブチレンテレフタレート(融点224℃、固有粘度1.74dl/g)を用いた。
[ポリブチレンテレフタレートB(PBT−B)]
ルチル型の二酸化チタン60重量%を東レ(株)製 “トレコン”(登録商標)1400Sのポリブチレンテレフタレート(融点224℃、固有粘度1.74dl/g)に添加し、得られた混合物を250℃に設定したベント式二軸押出機(L/D=35)に供給した。押出機にて溶融した溶融樹脂を口金に供給して直径5mmの円状の穴から押出し、ただちに10℃の冷却水にて急冷して得られたガット状樹脂を4mm間隔で切断し、ポリブチレンテレフタレートペレット(融点226℃、固有粘度1.55dl/g)を得た。
[ポリブチレンテレフタレートC(PBT−C)]
添加物をJSR(株)製EBM2041のエチレンブテンラバー1.0重量%とした以外は、PBT−Bと同様にしてポリブチレンテレフタレート(融点223℃、固有粘度1.65dl/g)を得た。
[ポリブチレンテレフタレートD(PBT−D)]
添加物をJSR(株)製EBM2041のエチレンブテンラバー30重量%とした以外は、PBT−Bと同様にしてポリブチレンテレフタレート(融点223℃、固有粘度1.50dl/g)を得た。
[ポリエチレンテレフタレートA(PET−A)]
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部の混合物に、テレフタル酸ジメチル量に対して酢酸マグネシウム0.09重量%、三酸化アンチモン0.03重量部を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行なった。次いで、該エステル交換反応生成物に、テレフタル酸ジメチル量に対して、リン酸85%水溶液0.020重量部を添加した後、重縮合反応槽に移行する。次いで、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、融点257℃、固有粘度0.65dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
[シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートA(PETG−A)]
イーストマンケミカル(株)製 “イースター”(登録商標)6763の1,4−シクロヘキサンジメタノール31モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.70dl/g)を用いた。
[シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートA(PETG−B)]
イーストマンケミカル(株)製 “イースター”(登録商標)5445の1,4−シクロヘキサンジメタノール66モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.70dl/g)を用いた。
[イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートB(PET−B)]
ジカルボン酸成分をテレフタル酸ジメチル82.5モル%、イソフタル酸ジメチル17.5モル%としたこと以外は、PET−Aと同様にしてイソフタル酸17.5モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(融点223℃、固有粘度0.58dl/g)を得た。
[イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートC(PET−C)]
ジカルボン酸成分をテレフタル酸ジメチル60モル%、イソフタル酸ジメチル40モル%としたこと以外は、PET−Aと同様にしてイソフタル酸40モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(融点223℃、固有粘度0.58dl/g)を得た。
[イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートD(PET−D)]
ルチル型の二酸化チタン60重量%をPET−Bに添加し、得られた混合物を250℃に設定したベント式二軸押出機(L/D=35)に供給した。押出機にて溶融した溶融樹脂を口金に供給して直径5mmの円状の穴から押出し、ただちに10℃の冷却水にて急冷して得られたガット状樹脂を4mm間隔で切断し、イソフタル酸17.5モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(融点222℃、固有粘度0.50dl/g)を得た。
[イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートE(PET−E)]
添加物をJSR(株)製EBM2041のエチレンブテンラバー1.0重量%とした以外は、PBT−Bと同様にしてイソフタル酸17.5モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(融点224℃、固有粘度0.56dl/g)を得た。
(実施例1)
表1の配合で混合した、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムに用いるポリマーを一軸押出機(L/D=36)に供給した。供給した樹脂は、280℃で溶融した後に、濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、金属板と接しない表面を形成する層がエンボス目を設けたロール面となるようにダイに供給した。スリット状のダイからシート状に押出し、押出されたシートを一方がエンボス目を設けたロール、他方が表面に弾性体を設けたロールからなる一対の加圧ロールに通し、冷却、固化し、シート化することで本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムを得た。
【0049】
得られた本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムをエンボス加工を施していない面を金属板と接する面として、ポリエステル系接着剤が塗布されて250℃に加熱された亜鉛メッキ鋼板と一対の加圧ロールに通し、直後に35℃の流水にて冷却することで、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムを積層した金属板を得た。
【0050】
この様にして得られた、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルム、および本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムを積層した金属板は、表1に示すように耐経時劣化性、耐熱性、耐薬品性、エンボス加工性、意匠性、接着性、成形加工性、耐傷性に優れた特性を示した。
(実施例2〜5)
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムに用いるポリマーを、表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムを得た。
【0051】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルム、および本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムを積層した金属板の特性は、表1に示す通りであり、一部の特性ではわずかに劣るものの、その他は優れた特性を示した。
(比較例1〜5)
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムに用いるポリマーを、表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムを得た。
【0052】
本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルム、および本発明の金属板被覆用ポリエステルフィルムを積層した金属板の特性は、表1に示す通りであり、一部の特性に劣る点があった。
【0053】
【表1−1】

【0054】
【表1−2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
耐経時劣化性、耐熱性、耐薬品性、エンボス加工性、意匠性、接着性、成形加工性、耐傷性に優れた金属板被覆用ポリエステルフィルムを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面にエンボス加工が施されたポリエステルフィルムであって、
ポリエステルの全グリコール由来成分中の55モル%以上95モル%以下が1,4−ブタンジオール由来成分、全グリコール由来成分中の2モル%以上40モル%以下がエチレングリコール由来成分、全グリコール由来成分中の0.5モル%以上20モル%以下が脂環族グリコール由来成分であり、
ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の70モル%以上100モル%以下がテレフタル酸由来成分、
であることを特徴とする、金属板被覆用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記ポリエステルの全ジカルボン酸由来成分中の30モル%以下がイソフタル酸由来成分であることを特徴とする、請求項1に記載の金属板被覆用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
ゴム状弾性体を、前記ポリエステルフィルムの全重量に対して0.01重量%以上10重量%以下含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の金属板被覆用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
ヤング率が2,000MPa以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の金属板被覆用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
光学濃度が0.5以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の金属板被覆用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
着色顔料を前記ポリエステルフィルムの全重量に対して5重量%以上30重量%以下含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の金属板被覆用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2009−35670(P2009−35670A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202666(P2007−202666)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】