説明

金属粉末の製造方法、それにより製造された金属粉末、および金属粉末製造装置

【課題】金属粉末の製造方法、それにより製造された金属粉末、および金属粉末製造装置において、脱酸素された金属粉末を効率的に製造することができるようにする。
【解決手段】金属粉末製造装置1により、粉末化する金属を溶融する金属溶融工程と、カルシウムとハロゲン化カルシウムとを加熱し溶解させ、混合溶融物を形成する混合溶融物形成工程と、金属溶融工程で溶融された金属を流下ノズル4から流下させ、混合溶融物形成工程によって形成された混合溶融物を加圧して、流下された金属に吹き付けて、粒子化された金属20Aを形成する混合溶融物吹き付け工程と、混合溶融物吹き付け工程によって金属に吹き付けられた混合溶融物を、金属の表面から除去する除去工程とを備える金属粉末の製造方法を行って、金属粉末を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末の製造方法、それにより製造された金属粉末、および金属粉末製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属粉末の製造方法の一つに、アトマイズ法と呼ばれる技術が知られている。このアトマイズ法は、金属溶湯に空気や水、不活性ガスのジェット流を吹きつけて溶湯を粉砕、液滴として凝固させることで粉末を作るという方法である。
例えば、特許文献1には、このような金属粉末の製造方法として水を用いた水アトマイズ法およびそれを用いた金属粉末製造装置が記載されている。この水アトマイズ法は、工業的によく利用されている方法であり、溶融金属流体の流路に噴射された水に溶融金属を接触させることにより、溶融金属を分裂させると同時に冷却・固化させて金属粉末を製造する方法である。
また、特許文献2には、水アトマイズ法によって金属粉末を製造する際に、アミン系の酸化抑制剤を添加したアトマイズ水を使用することで、粒子化と同時に粒子の酸化を抑制する方法が開示されている。
また、他の脱酸素方法としては、例えば、特許文献3に、金属チタンまたはチタン合金から脱酸素を実施するために、金属カルシウムと溶融塩化カルシウムの混合溶融物を使用するチタン材料の脱酸素方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−291454号公報
【特許文献2】特開平6−330110号公報
【特許文献3】特開2000−345252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の金属粉末の製造方法、それにより製造された金属粉末、および金属粉末製造装置には、以下のような問題があった。
高純度の金属粉末を低コストで製造するには、不純物の混入を防ぐとともに、金属材料に含まれる酸素を効率よく除去することが必要である。
従来のアトマイズ法は、例えば、特許文献1に記載の技術のように、金属溶湯に空気や水のジェット流を吹きつけて溶湯を粉砕、液滴として固化させることで金属粉末を得る。このように空気や水を用いると金属の酸化が生じてしまい、金属粉末の純度低下を引き起こすという問題がある。
一方、特許文献2に記載の技術では、酸化抑制剤として芳香族アミンを添加したアトマイズ水を用いることにより脱酸素を行って金属粉末を製造するので、高温の金属とアトマイズ水の反応による酸化は軽減できるものの、元々金属材料に含まれている酸素を除去することはできないという問題がある。
また、ジェット流の噴射による酸化を防止するため、不活性ガスを用いたガスアトマイズ法を採用することも考えられるが、この場合にも元々金属材料に含まれている酸素は除去できないという問題がある。
また、特許文献3には、金属合金を作製する際に含有酸素を取り除き、合金純度を高める方法の一つとして、カルシウム溶融塩等を使用した脱酸素法が開示されている。これは、合金表面に溶融カルシウムをコート後に高温に保つことで合金内部の酸素を表面カルシウムと反応させて取り除く方法であるが、微細形状の合金以外では内部酸素の表面への移動に時間を要するため、脱酸素効率が低く十分な効果が得られないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、脱酸素された金属粉末を効率的に製造することができる金属粉末の製造方法、それにより製造された金属粉末、および金属粉末製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の金属粉末の製造方法は、粉末化する金属を溶融する金属溶融工程と、カルシウムとハロゲン化カルシウムとを加熱し溶解させ、混合溶融物を形成する混合溶融物形成工程と、前記金属溶融工程で溶融された前記金属をノズルから流下させ、前記混合溶融物形成工程によって形成された前記混合溶融物を加圧して、流下された前記金属に吹き付けて、前記金属を粒子化する混合溶融物吹き付け工程と、該混合溶融物吹き付け工程によって前記金属に吹き付けられた前記混合溶融物を、前記金属の表面から除去する除去工程とを備える方法とする。
この発明によれば、金属溶融工程で粉末化する金属を溶融し、混合溶融物形成工程でカルシウムとハロゲン化カルシウムを加熱、溶解させて混合溶融物を形成する。そして、混合溶融物吹き付け工程では、溶融された金属をノズルから流下させ、この金属に加圧された混合溶融物を吹き付けて、金属を粒子化するとともに、金属の表面に混合溶融物を付着させる。粒子化された金属の表面に付着した混合溶融物のカルシウムは、金属表面に現れる酸素と反応して酸化カルシウムを形成する。
このとき、混合溶融物は、混合溶融物の吹き付けにより粒子化された状態の金属の表面を覆うように層状に付着する。そのため、金属を粒子化しない状態で混合溶融物を付着させる場合に比べて、金属の体積当たりに対する接触面積が増大する。また、付着時に金属および混合溶融物は溶融状態のため、金属内部に含まれる酸素とカルシウムが反応しやすくなり、また高温状態を保っているためカルシウムの反応が促進される。そして、発生した酸化カルシウムはフラックス層であるハロゲン化カルシウムの層部分に溶融拡散していく。この結果、金属の表面および内部から酸素が除去され、混合溶融物の層部分に移動される。
次に、除去工程によって、金属の粒子表面から、酸化カルシウムを内部に含む混合溶融物を除去することにより、酸素が除去された高純度の金属粉末が得られる。
なお、本明細書における金属とは、単一元素からなる純金属と、または複数の元素からなる合金を意味するものとする。
また、本明細書におけるハロゲン化カルシウムは、すべてのハロゲン化物を採用することができるが、価格や扱いやすさの点で、塩化カルシウムを採用することがより好ましい。
また、金属溶融工程および混合溶融物形成工程は、混合溶融物吹き付け工程に先立ってさえいれば、特に順序関係はなく、どちらを先に開始してもよいし、同時並行的に行ってもよい。
【0007】
また、本発明の金属粉末の製造方法では、前記混合溶融物吹き付け工程は、前記混合溶融物を、不活性ガスと混合された状態で吹きつけることが好ましい。
この場合、混合溶融物吹き付け工程で、混合溶融物を不活性ガスと混合した状態で吹き付けるので、不活性ガスのガス圧を制御することによって、粒子化される金属の粒子径の制御が容易となり、粒子径をより微小化していくことで、脱酸素反応の速度をより向上することが可能となる。
【0008】
また、本発明の金属粉末の製造方法では、前記除去工程は、前記混合溶融物吹き付け工程によって粒子化された前記金属の粒子表面の前記混合溶融物の層を極性溶剤により洗浄することで、前記混合溶融物を除去する工程であることが好ましい。
この場合、カルシウム、ハロゲン化カルシウムは、極性溶剤に容易に溶解するので、金属の表面から、カルシウム、および金属から除去された酸化カルシウムを含むハロゲン化カルシウムを容易に除去することができる。
極性溶剤としては、酸化カルシウムを含むハロゲン化カルシウムを除去できる極性溶剤であれば、水や適宜の水溶液などを採用することができる。ただし、洗浄後に金属粒子の表面に残留したりしないように、乾燥除去が容易な極性溶剤、例えば、アセトンなどの極性溶剤を用いることがより好ましい。
【0009】
また、本発明の金属粉末の製造方法では、前記混合溶融物吹き付け工程と前記除去工程との間に、前記混合溶融物吹き付け工程によって粒子化された前記金属を、前記混合溶融物の融点以上であり前記金属の融点以下である温度に保温する保温工程を備えることが好ましい。
この場合、保温工程によって、混合溶融物吹き付け工程と除去工程との間で、表面に混合溶融物が付着した状態で粒子化された金属を、前記混合溶融物の融点以上であり前記金属の融点以下である温度に保温することができる。
この保温工程では、金属の粒子は金属の融点以下であるため、固体状態の金属になっていて、この中で酸化カルシウムが表面に向って拡散していく。
一方、金属粒子表面の混合溶融物はその融点以上に保温されるので液体状態となっている。このため、金属の表面まで拡散した酸化カルシウムはすばやく混合溶融物の層に拡散するので、効率よく酸素が除去される。
なお、保温温度を金属の融点以上に上げると、金属粒子が融けるため、混合溶融物と混じってしまい、金属粉末が得られない。
【0010】
本発明の金属粉末の製造方法は、粉末化する金属を溶融する金属溶融工程と、カルシウムを加熱し溶融状態に保持するカルシウム溶融工程と、ハロゲン化カルシウムを加熱し溶融状態に保持するハロゲン化カルシウム溶融工程と、前記金属溶融工程で溶融された前記金属をノズルから流下させ、前記カルシウム溶融工程によって溶融された前記カルシウムを加圧して、流下された前記金属に吹き付けて、前記金属を粒子化するカルシウム吹き付け工程と、該カルシウム吹き付け工程によって粒子表面に前記カルシウムが吹き付けられた金属を、前記ハロゲン化カルシウム溶融工程で溶融されたハロゲン化カルシウムによって被覆するハロゲン化カルシウム被覆工程と、該ハロゲン化カルシウム被覆工程後に、前記粒子化された金属の表面から、前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムを除去する除去工程を備える方法とする。
この発明によれば、金属溶融工程で粉末化する金属を溶融し、カルシウム溶融工程でカルシウムを加熱し溶融させ、ハロゲン化カルシウム溶融工程でハロゲン化カルシウムを加熱し溶融させる。そして、カルシウム吹き付け工程では、溶融された金属をノズルから流下させ、この金属に溶融されたカルシウムを加圧して吹き付けて、金属を粒子化するとともに、金属の表面に溶融されたカルシウムを付着させる。粒子化された金属の表面に付着したカルシウムは、金属の酸素と反応して酸化カルシウムを形成する。
このとき、カルシウムは、カルシウムの吹き付けにより粒子化された状態の金属の表面を覆うように層状に付着する。そのため、金属を粒子化しない状態でカルシウムを付着させる場合に比べて、金属の体積当たりに対する接触面積が増大する。また、付着時に金属およびカルシウムが溶融状態のため、金属内部に含まれる酸素とカルシウムが反応しやすくなり、また高温状態を保っているためカルシウムの反応が促進される。また、金属にカルシウムが直に吹き付けられるので、カルシウムとの混合物を吹き付ける場合に比べて、カルシウムと金属との接触量が大きくなり、より効率的に反応が進行する。
次に、ハロゲン化カルシウム被覆工程を行うことにより、粒子表面にカルシウムが付着された状態で粒子化された金属を、ハロゲン化カルシウム溶融工程で加熱し溶融されたハロゲン化カルシウムによって被覆する。
これにより、カルシウムの層部分に形成された酸化カルシウムは、ハロゲン化カルシウムの層部分に溶融拡散していく。この結果、金属の表面および内部から酸素が除去され、ハロゲン化カルシウムの層部分に移動される。
次に、除去工程によって、金属の粒子表面から、酸化カルシウムを内部に含むカルシウムおよびハロゲン化カルシウムの混合溶融物を除去することにより、酸素が除去された高純度の金属粉末が得られる。
なお、金属溶融工程、カルシウム溶融工程、およびハロゲン化カルシウム溶融工程は、金属溶融工程およびカルシウム溶融工程はカルシウム吹き付け工程に、また、ハロゲン化カルシウム溶融工程はハロゲン化カルシウム被覆工程に、それぞれ先立ってさえいれば、特に順序関係はなく、例えば、いずれも同時並行的に行ってもよい。
【0011】
また、本発明の金属粉末の製造方法では、前記カルシウム吹き付け工程は、前記溶融されたカルシウムを、不活性ガスと混合された状態で吹き付けることが好ましい。
この場合、カルシウム吹き付け工程で、カルシウムを不活性ガスと混合した状態で吹き付けるので、不活性ガスのガス圧を制御することによって、金属の粒子の径の制御が容易となり、粒子径を微小化していくことで、脱酸素反応の速度をより向上することが可能となる。
【0012】
また、本発明の金属粉末の製造方法では、前記除去工程は、前記カルシウム吹き付け工程および前記ハロゲン化カルシウム被覆工程によって、前記金属の表面に付着した前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムを極性溶剤により洗浄することで、前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムを除去する工程であることが好ましい。
この場合、カルシウム、ハロゲン化カルシウムは、極性溶剤に容易に溶解するので、金属の表面から、カルシウム、および金属から除去された酸化カルシウムを含むハロゲン化カルシウムを容易に除去することができる。
極性溶剤としては、酸化カルシウムを含むハロゲン化カルシウムを除去できる極性溶剤であれば、水や適宜の水溶液などを採用することができる。ただし、洗浄後に金属粒子の表面に残留したりしないように、乾燥除去が容易な極性溶剤、例えば、アセトンなどの極性溶剤を用いることがより好ましい。
【0013】
また、本発明の金属粉末の製造方法では、前記ハロゲン化カルシウム被覆工程と前記除去工程との間に、前記ハロゲン化カルシウム被覆工程によって前記ハロゲン化カルシウムが吹き付けられた状態で粒子化された前記金属を、前記混合溶融物の融点以上であり前記金属の融点以下である温度に保温する保温工程を備えることが好ましい。
この場合、保温工程によって、ハロゲン化カルシウム被覆工程と除去工程との間に、ハロゲン化カルシウム被覆工程によってハロゲン化カルシウムが吹き付けられた状態で粒子化された金属を、前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムの混合溶融物の融点以上であり前記金属の融点以下である温度に保温することができる。
この保温工程では、金属の粒子は金属の融点以下であるため、固体状態の金属になっていて、この中で酸化カルシウムが表面に向って拡散していく。
一方、金属粒子表面のカルシウムおよびハロゲン化カルシウムの混合溶融物はその融点以上に保温されるので液体状態となっている。このため、金属の表面まで拡散した酸化カルシウムはすばやく混合溶融物の層に拡散するので、効率よく酸素が除去される。
なお、保温温度を金属の融点以上に上げると、金属粒子が融けるため、混合溶融物と混じってしまい、金属粉末が得られない。
【0014】
また、本発明の金属粉末の製造方法では、前記保温工程では、前記粒子化された金属に振動を与える加振工程をさらに含むことが好ましい。
この場合、加振工程により、粒子化された金属が加振されて攪拌作用を受け、これにより、ハロゲン化カルシウムの層部分への酸化カルシウムの溶出拡散を促進させることができる。
【0015】
また、本発明の金属粉末の製造方法では、前記加振工程は、超音波により振動を与えることが好ましい。
【0016】
また、本発明の金属粉末の製造方法では、前記加振工程は、振動ふるいにより振動を与えることが好ましい。
【0017】
本発明の金属粉末は、本発明の金属粉末の製造方法で製造された金属粉末とする。
この発明によれば、本発明の金属粉末の製造方法と同様の作用効果を奏する。
【0018】
また、本発明の金属粉末は、前記金属は、Zr、Cu、Al、Ni、Ti、Nbのうちから選択された一つの元素からなる純金属、または、Zr、Cu、Al、Ni、Ti、Nbのうち少なくとも2種類以上の元素を含む合金からなること
が好ましい。
【0019】
本発明の金属粉末製造装置は、粉末化する金属を加熱し溶融状態に保持する金属加熱槽と、該金属加熱槽と接続され、該金属加熱槽で溶融された金属を流下させるノズルと、カルシウムとハロゲン化カルシウムとを加熱し溶解させて混合溶融物を形成する混合溶融物形成加熱槽と、該混合溶融物形成加熱槽で形成された前記混合溶融物を加圧して噴射させ、前記ノズルから流下された前記金属に吹き付けて、該金属を粒子化する第1の吹き付け機構と、該第1の吹き付け機構により前記混合溶融物が吹き付けられた前記金属から前記混合溶融物を除去する混合溶融物除去部とを備える構成とする。
この発明によれば、金属加熱槽で粉末化する金属を溶融し、混合溶融物形成加熱槽でカルシウムとハロゲン化カルシウムを加熱、溶解させて混合溶融物を形成する。そして、溶融された金属をノズルから流下させる。そして、この金属に、第1の吹き付け機構により加圧された混合溶融物を噴射させて吹き付けて、金属を粒子化するとともに、金属の表面に混合溶融物を付着させる。粒子化された金属の表面に付着した混合溶融物のカルシウムは、金属表面に現れる酸素と反応して酸化カルシウムを形成する。
このとき、混合溶融物は、混合溶融物の吹き付けにより粒子化された状態の金属の表面を覆うように層状に付着する。そのため、金属を粒子化しない状態で混合溶融物を付着させる場合に比べて、金属の体積当たりに対する接触面積が増大する。また、付着時に金属および混合溶融物が溶融状態のため、金属内部に含まれる酸素とカルシウムが反応しやすくなり、また高温状態を保っているためカルシウムの反応が促進される。そして、発生した酸化カルシウムはフラックス層であるハロゲン化カルシウムの層部分に溶融拡散していく。この結果、金属の表面および内部から酸素が除去され、混合溶融物の層部分に移動される。
次に、混合溶融物除去部によって、金属の粒子表面から、酸化カルシウムを内部に含む混合溶融物を除去することにより、酸素が除去された高純度の金属粉末が得られる。
本発明の金属粉末製造装置は、本発明の金属溶融工程、混合溶融物形成工程、混合溶融物吹き付け工程、および除去工程を備える金属粉末の製造方法に用いることができる装置となっている。
【0020】
また、本発明の金属粉末製造装置では、前記第1の吹き付け機構は、前記溶解加熱槽によって形成された前記混合溶融物に不活性ガスを混合する不活性ガス混合部を備えることが好ましい。
この場合、第1の吹き付け機構は、不活性ガス混合部によって、混合溶融物を不活性ガスと混合した状態で吹き付けることができるので、不活性ガスのガス圧を制御することによって、金属の粒子の径の制御が容易となり、粒子径をより微小化していくことで、脱酸素反応の速度をより向上することが可能となる。
【0021】
また、本発明の金属粉末製造装置では、前記混合溶融物除去部は、前記混合溶融物が吹き付けられた金属を極性溶剤で洗浄を行うものであることが好ましい。
この場合、カルシウム、ハロゲン化カルシウムは、極性溶剤に容易に溶解するので、金属の表面から、カルシウム、および金属から除去された酸化カルシウムを含むハロゲン化カルシウムを容易に除去することができる。
【0022】
また、本発明の金属粉末製造装置では、前記ノズルの下方で、前記第1の吹き付け機構から前記混合溶融物を吹き付けられて粒子化された金属を収容し、前記混合溶融物の融点以上であり前記金属の融点以下である温度に保温する保温収容部が設けられた構成とすることが好ましい。
この場合、保温収容部によって、ノズルの下方で、表面に混合溶融物が吹き付けられて粒子化された金属を収容し、混合溶融物の融点以上であり金属の融点以下である温度に保温することができる。
この保温収容部内では、金属の粒子は金属の融点以下であるため、固体状態の金属になっていて、この中で酸化カルシウムが表面に向って拡散していく。
一方、金属粒子表面の混合溶融物はその融点以上に保温されるので液体状態となっている。このため、金属の表面まで拡散した酸化カルシウムはすばやく混合溶融物の層に拡散するので、効率よく酸素が除去される。
なお、保温温度を金属の融点以上に上げると、金属粒子が融けるため、混合溶融物と混じってしまい、金属粉末が得られない。
【0023】
本発明の金属粉末製造装置は、粉末化する金属を加熱し溶融状態に保持する金属加熟槽と、該金属加熱槽と接続され、該金属加熱槽で溶融された金属を流下させるノズルと、カルシウムを加熱し溶融状態に保持するカルシウム加熱槽と、該カルシウム加熱槽で溶融されたカルシウムを加圧して噴射させ、前記ノズルから流下された金属に吹き付けて、該金属を粒子化する第2の吹き付け機構と、前記ノズルの下方に配置され、ハロゲン化カルシウムを溶融してハロゲン化カルシウム溶湯を内部に保持するとともに、前記第2の吹き付け機構によって粒子表面に前記カルシウムが付着された状態で粒子化された前記金属を、前記ハロゲン化カルシウム溶湯内に収容するハロゲン化カルシウム被覆収容部と、該ハロゲン化カルシウム被覆収容部内に収容された前記粒子化された金属から、前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムを除去する吹き付け物除去部とを備える構成とする。
この発明によれば、金属加熱槽で粉末化する金属を溶融し、カルシウム加熱槽でカルシウム加熱し溶融させる。そして溶融された金属をノズルから流下させ、第2の吹き付け機構によって加圧されたカルシウムの溶融物を噴射させ、流下された金属に吹き付けて、金属を粒子化するとともに、金属の表面にカルシウムを付着させる。粒子化された金属の表面に付着したカルシウムは、金属の酸素と反応して酸化カルシウムを形成する。
このとき、カルシウムは、カルシウムの吹き付けにより粒子化された状態の金属の表面を覆うように層状に付着する。そのため、金属を粒子化しない状態でカルシウムを付着させる場合に比べて、金属の体積当たりに対する接触面積が増大する。また、付着時に金属およびカルシウムが溶融状態のため、金属内部に含まれる酸素とカルシウムが反応しやすくなり、また高温状態を保っているためカルシウムの反応が促進される。また、金属にカルシウムが直に吹き付けられるので、カルシウムとの混合物を吹き付ける場合に比べて、カルシウムと金属との接触量が大きくなり、より効率的に反応が進行する。
この粒子化された金属は、ノズルの下方に配置された、ハロゲン化カルシウム溶湯を内部に保持したハロゲン化カルシウム被覆収容部内に落下して、ハロゲン化カルシウム溶湯に浸かった状態で収容される。これにより、粒子化された金属のカルシウムが、ハロゲン化カルシウムによって被覆される。
このため、カルシウムの層部分に形成された酸化カルシウムは、ハロゲン化カルシウム溶融塩の層部分に溶融拡散していく。この結果、金属の表面および内部から酸素が除去され、ハロゲン化カルシウムの層部分に移動される。
次に、吹き付け物除去部によって、金属の粒子表面から、酸化カルシウムを内部に含むカルシウムおよびハロゲン化カルシウムを除去することにより、酸素が除去された高純度の金属粉末が得られる。
本発明の金属粉末製造装置は、本発明の金属溶融工程、カルシウム溶融工程、カルシウム吹き付け工程、ハロゲン化カルシウム溶融工程、ハロゲン化カルシウム被覆工程、および除去工程を備える金属粉末の製造方法に用いることができる装置となっている。
【0024】
また、本発明の金属粉末製造装置では、前記第2の吹き付け機構は、前記カルシウム加熱槽で溶融されたカルシウムに不活性ガスを吹き付けて混合する不活性ガス吹き付け部を備えることが好ましい。
この場合、第2の吹き付け機構の不活性ガス吹き付け部で、カルシウム加熱槽で溶融されたカルシウムに不活性ガスを吹き付けて、カルシウムと混合した状態として、流下された金属に吹き付けるので、不活性ガスのガス圧を制御することによって、金属の粒子の径の制御がより容易となり、粒子径をより微小化することで、より脱酸素反応の速度が向上することが可能となる。
【0025】
また、本発明の金属粉末製造装置では、前記吹き付け物除去部は、前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムが吹き付けられた金属を極性溶剤で洗浄を行うものであることが好ましい。
この場合、カルシウム、ハロゲン化カルシウムは、極性溶剤に容易に溶解するので、金属の表面から、カルシウム、および金属から除去された酸化カルシウムを含むハロゲン化カルシウムを容易に除去することができる。
【0026】
また、本発明の金属粉末製造装置では、前記ハロゲン化カルシウム被覆収容部は、前記粒子化された金属を、前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムの混合溶融物の融点以上であり前記金属の融点以下である温度に保温する加熱機構が設けられた構成とすることが好ましい。
この場合、ハロゲン化カルシウム被覆収容部に収容された、金属表面にカルシウムが付着し、カルシウムがハロゲン化カルシウムによって被覆された状態の粒子化された金属を、加熱機構によってカルシウムおよびハロゲン化カルシウムの混合溶融物の融点以上であり前記金属の融点以下である温度に保温することができる。
このハロゲン化カルシウム被覆収容部では、金属の粒子は金属の融点以下であるため、固体状態の金属になっていて、この中で酸化カルシウムが表面に向って拡散していく。
一方、金属粒子表面のカルシウムおよびハロゲン化カルシウムの混合溶融物はその融点以上に保温されるので液体状態となっている。このため、金属の表面まで拡散した酸化カルシウムはすばやく混合溶融物の層に拡散するので、効率よく酸素が除去される。
なお、保温温度を金属の融点以上に上げると、金属粒子が融けるため、混合溶融物と混じってしまい、金属粉末が得られない。
【0027】
また、本発明の金属粉末製造装置では、前記ハロゲン化カルシウム被覆収容部内の前記粒子化された金属に振動を与える加振機構をさらに備えることが好ましい。
この場合、加振機構により、粒子化された金属が加振されて攪拌作用を受け、これにより、ハロゲン化カルシウムの層部分への酸化カルシウムの溶出拡散を促進させることができる。
【0028】
また、本発明の金属粉末製造装置では、前記加振機構は、超音波加振機構であることが好ましい。
【0029】
また、本発明の金属粉末製造装置では、前記加振機構は、振動ふるいであることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の金属粉末の製造方法、それにより製造された金属粉末、および金属粉末製造装置によれば、少なくとも溶融されたカルシウムを吹き付けて溶融された金属を粒子化するとともに、金属に含まれる酸素と化合した酸化カルシウムをハロゲン化カルシウムに溶出拡散させて脱酸素を行うので、脱酸素された金属粉末を効率的に製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る金属粉末製造装置の概略構成を示す模式的な構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る金属粉末製造装置1のノズルの近傍の模式的な拡大図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の混合溶融物吹き付け工程で粒子化された金属、その反応進行後の様子、および除去工程で得られる金属粉末を示す模式的な断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の変形例に係る金属粉末製造装置の概略構成を示す模式的な構成図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る金属粉末製造装置の概略構成を示す模式的な構成図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る金属粉末製造装置のノズル近傍の模式的な拡大図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る金属粉末製造装置の概略構成を示す模式的な構成図である。
【図8】本発明の第3の実施形態のカルシウム吹き付け工程で粒子化された金属の様子、およびハロゲン化カルシウム被覆工程における粒子化された金属の一例および他例の反応進行後の様子を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0033】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る金属粉末製造装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る金属粉末製造装置の概略構成を示す模式的な構成図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る金属粉末製造装置1のノズルの近傍の模式的な拡大図である。
【0034】
本実施形態の金属粉末製造装置1は、本発明の第1の実施形態の金属粉末の製造方法を用いて、純金属または合金からなる金属粉末を、脱酸素した状態で製造するための装置である。
金属粉末製造装置1の概略構成は、図1に示すように、金属加熱槽2、流下ノズル4(ノズル)、混合溶融物形成加熱槽3、混合溶融物吹き付けノズル5、ガス加圧機構6、粒子回収機構8、加熱機構9、および極性溶剤供給部12からなる。
ここで、金属加熱槽2、流下ノズル4、混合溶融物形成加熱槽3、混合溶融物吹き付けノズル5、粒子回収機構8、加熱機構9は、例えば、アルゴン(Ar)ガスなど、粉末化する金属に対して不純物成分とならない不活性ガスに満たされた装置筐体1aの内部に設けられ、ガス加圧機構6、極性溶剤供給部12は、装置筐体1aの外部に設置されている。
【0035】
金属加熱槽2は、粉末化する金属20を加熱し溶融状態に保持するものであり、金属加熱槽2内部に金属20を収容する溶融空間2bが形成され、この溶融空間2bの外周側に金属加熱槽2を加熱するヒータ2aが埋設されてなる。
粉末化する金属20は、必要に応じて、単一元素からなる適宜の純金属、または複数の元素からなる適宜の合金を採用することができ、ヒータ2aの温度は、それぞれの溶湯状態を維持できる温度に設定可能となっている。
金属20として好ましい純金属としては、Zr(ジルコニウム)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Nb(ニオブ)のうちから選択された一つの元素からなるものを挙げることができる。
また、合金としては、Zr、Cu、Al、Ni、Ti、Nbのうち少なくとも2種類以上の元素を含む合金を挙げることができる。
【0036】
合金の具体例としては、例えば、Zr55Cu30Al10Ni(atm%)の組成比を有する合金(以下、合金Aと称する)、Ti50Cu25Ni15ZrSn(atm%)の組成比を有する合金(以下、合金Bと称する)、Ni53Nb20Ti10ZrCoCu(atm%)の組成比を有する合金(以下、合金Cと称する)などを挙げることができる。
これらの合金A、B、Cを金属20として用いる場合には、ヒータ2aを温度制御して、溶融空間内の金属20の温度を、それぞれ950℃、1000℃、1100℃に保持すればよい。
【0037】
流下ノズル4は、金属加熱槽2で溶融状態に保持された金属溶湯である金属20を流下させるもので、金属加熱槽2の溶融空間2bの下部に接続されて鉛直下向きに延ばされ、下端部に流下口4aを有する筒状部材である。金属加熱槽2と流下ノズル4との間には不図示の開閉弁が設けられ、金属20の流下の開始を制御できるようになっている。
【0038】
混合溶融物形成加熱槽3は、カルシウム(Ca)とハロゲン化カルシウム(CaX、Xは、任意のハロゲン元素を表す)とを加熱し溶解させて混合溶融物21(図2参照)を形成するものであり、外周部にヒータ3aが設けられ、混合溶融物形成加熱槽3内部に投入されたCaおよびCaXの混合物をそれぞれ溶融する温度以上に加熱できるようになっている。また、本実施形態の混合溶融物形成加熱槽3は、金属加熱槽2を挟んで略対向する位置に1対設けられている。
ハロゲン化カルシウムは、すべてのハロゲン化物を採用することができるが、本実施形態では、価格や扱いやすさの点で有利な塩化カルシウム(CaCl)を採用している。このような混合溶融物21の一例として、CaとCaClを質量比で、1:60に混合した試料を挙げることができる。
この混合溶融物21を溶融状態に保つため、本実施形態では、ヒータ3aを温度制御して、混合溶融物形成加熱槽3の内壁温度を、混合溶融物21の融点以上であり金属20の融点以下の温度、例えば850℃に保持している。
【0039】
混合溶融物吹き付けノズル5は、各混合溶融物形成加熱槽3で溶融状態に保持された混合溶融物21を、それぞれ流下ノズル4の流下口4aから流下される金属20に向けて噴射するためのものである。混合溶融物吹き付けノズル5は、混合溶融物形成加熱槽3の下端部から流下ノズル4の流下口4a近傍に向けて延ばされ、延在方向の下端部に混合溶融物21を噴射する噴射口5aを有する筒状部材からなる。
各噴射口5aは、流下ノズル4の中心軸に対して対称の位置に配置され、これにより、流下口4aから流下する金属20に対して、混合溶融物21を対称に吹き付けられるようになっている。
【0040】
ガス加圧機構6は、不図示の不活性ガス供給源から供給される不活性ガスGを加圧源として、混合溶融物吹き付けノズル5内の混合溶融物21を加圧し、噴射口5aから混合溶融物を噴射させる機構である。
本実施形態では、不活性ガスGとして、装置筐体1a内のガス雰囲気と同様のArガスを採用している。
【0041】
ガス加圧機構6および混合溶融物吹き付けノズル5は、混合溶融物形成加熱槽3で形成された混合溶融物を加圧して噴射させ、流下ノズル4から流下された金属20に吹き付けて、表面に混合溶融物21が層状に付着された状態で粒子化された金属20Aを形成する第1の吹き付け機構を構成している。
【0042】
粒子回収機構8は、この粒子化された金属20Aを収容する粒子収容空間8aが内部に設けられた耐熱性容器であり、流下ノズル4の下方において金属粉末製造装置1の装置本体に着脱可能に設けられている。
流下ノズル4および各混合溶融物吹き付けノズル5と、粒子回収機構8の粒子収容空間8aとの間には、粒子化された金属20を粒子収容空間8aに導く粒子ガイド7が設けられている。
【0043】
加熱機構9は、温度制御可能なヒータ9aを備え、粒子回収機構8の外周部と当接して取り囲むことができるように設けられており、これにより、粒子回収機構8の粒子収容空間8a内に収容された粒子化された金属20Aを、混合溶融物21の融点以上であり金属20の融点以下の温度、例えば、700℃〜850℃の高温状態に保温することができるようになっている。
したがって、本実施形態の粒子回収機構8、加熱機構9は、本実施形態の保温収容部を構成している。
【0044】
極性溶剤供給部12は、粒子回収機構8の粒子収容空間8a内に連通された極性溶剤供給路12aを介して、粒子収容空間8a内に極性溶剤13を供給するものである。
極性溶剤13としては、酸化カルシウムを含むハロゲン化カルシウムを除去できる極性溶剤であれば、水や適宜の水溶液などを採用することができる。ただし、洗浄後に金属粒子の表面に残留したりしないように、乾燥除去が容易な極性溶剤、例えば、アセトンなどの極性溶剤であることがより好ましい。
これにより、粒子収容空間8a内に粒子化された金属20Aが収容された状態で、極性溶剤供給部12から極性溶剤13を供給し、粒子化された金属20Aの表面に付着した混合溶融物21を洗浄することが可能となっている。
したがって、粒子回収機構8、極性溶剤供給部12は、本実施形態の混合溶融物除去部を構成している。
【0045】
次に、本実施形態に係る金属粉末の製造方法について、金属粉末製造装置1の動作とともに説明する。
図3(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態の混合溶融物吹き付け工程で粒子化された金属、およびその反応進行後の様子を示す模式的な断面図である。図3(c)は、本発明の第1の実施形態の除去工程で得られる金属粉末を示す模式的な断面図である。
本実施形態の金属粉末の製造方法の概略工程は、金属溶融工程、混合溶融物形成工程をそれぞれ行った後、混合溶融物吹き付け工程、保温工程、および除去工程をこの順に行うものである。
【0046】
金属溶融工程は、粉末化する金属を溶融する工程である。
例えば、金属20として、上記合金Aを用いる場合、Zr55Cu30Al10Ni(atm%)の組成比となるように、Zr、Cu、Al、Niの各金属材料を秤量し、不活性ガス雰囲気中でアーク溶解法にて加熱して金属溶湯とした後、温度を低下させて、950℃の金属溶湯である金属20を形成する。
そして金属20を金属加熱槽2内に投入し、ヒータ2aで加熱制御して、950℃の温度を保つ。
金属材料は、一般には表面に酸化膜が形成されていたり、酸素が付着したりしているため、溶融状態の金属20には、これらに由来する酸素原子が不純物として混合されることになる。
【0047】
混合溶融物形成工程は、CaとCaXとを加熱し溶解させ、これらの混合溶融物を形成する工程である。
本実施形態では、Ca、CaClを、質量比で、例えば、1:60となるように混ぜ合わせた試料を、各混合溶融物形成加熱槽3内で850℃まで加熱して混合溶融物21(図2参照)を作製する。ここで、Ca、CaClの質量比は、一例であり、除去する酸素量などの必要に応じて適宜の質量比を設定することができる。
なお、金属溶融工程および混合溶融物形成工程は、混合溶融物吹き付け工程までの間に行っておけばよく、どちらを先に行ってもよいし、同時並行的に行ってもよい。
【0048】
次に、混合溶融物吹き付け工程を行う。本工程は、金属溶融工程で溶融された金属20を流下ノズル4から流下させ、混合溶融物形成工程によって形成された混合溶融物21を加圧して、流下ノズル4から流下された金属20に吹き付けて、金属20を粒子化する工程である。
まず、金属加熱槽2と流下ノズル4との間の不図示の開閉弁を開いて、図2に示すように、流下ノズル4の流下口4aから溶湯状態の金属20を流下させる。
これと同時に、ガス加圧機構6によって、Arガスのガス圧を調整して、混合溶融物形成加熱槽3内に形成された混合溶融物21を加圧して、各混合溶融物吹き付けノズル5に押し出し、各噴射口5aから混合溶融物21を噴射させる。
各噴射口5aから噴射された混合溶融物21は、流下する金属20に吹き付けられ、金属20は混合溶融物21の噴射圧によって粒子化され、表面に混合溶融物21が層状に付着した状態で、粒子化された金属20Aとして落下していく。
このとき、各噴射口5aは対称に配置されているため、混合溶融物21は、流下する金属20を挟むように噴射され、粒子化された金属20Aの表面にまんべんなく混合溶融物21が付着される。また、流下する金属20に対称に噴射圧が作用するため、粒子化された金属20Aが、流下方向である鉛直軸を中心として形成され、斜め方向に大きく飛び散ることなく、流下方向を中心とする下方領域に落下する。
これら粒子化された金属20Aは、粒子ガイド7を介して、流下ノズル4の下方に設けられた粒子回収機構8内に順次収容される。
【0049】
次に、保温工程を行う。本工程は、混合溶融物吹き付け工程による粒子化された金属20Aを700℃以上850℃以下の温度で保温する工程である。
本実施形態では、加熱機構9によって、粒子回収機構8に収容された粒子化された金属20Aが、一例として850℃に保温されるようにしている。そして、粒子回収機構8に収容された、粒子化された金属20Aの温度を、10分間850℃に保持した後、加熱機構9による加熱を停止して、保温工程を終了し、室温まで冷却する。
【0050】
ここで、混合溶融物吹き付け工程から保温工程までの間に、金属20が受ける作用について説明する。
混合溶融物吹き付け工程において、各粒子化された金属20Aは、図3(a)に模式的に示すように、粒子状の金属20の表面に混合溶融物21の層が形成された粒子となっている。
上述したように、金属20には、一般に表面および内部に、例えば金属酸化物などの形で酸素が含まれている。このため、例えば、混合溶融物21に含まれるCaが、金属20に含まれる金属酸化物に接触すると、Caによってこの金属酸化物が還元され、図3(b)に示すように、粒子化された金属20A内に酸化カルシウム22が発生する。
溶融物吹き付け工程では、溶融された金属20に溶融された混合溶融物21が吹き付けられるため、粒子化される過程での接触となり、混合溶融物21中のCaと金属20との接触面積が、同体積の粒子化されていない固体の金属20に比べて著しく大きくなり、かつ高運動エネルギーを有する状態での動的な接触となる。そのため、金属20の酸素とCaとの反応が効率的に促進される。
酸化カルシウム22は、例えば、図3(b)に示す酸化カルシウム22aのように金属20の表面で形成されると、例えば、酸化カルシウム22cのように、混合溶融物21内のCaClの層部分に溶融拡散していく。また、金属20内に拡散した酸化カルシウム22bも、金属20が溶融状態または高温状態に保持される間は、拡散移動を続け、金属20の表面に到達すると混合溶融物21のCaClの層部分に溶融拡散していく。
【0051】
保温工程では、粒子化された金属20Aを、混合溶融物21が溶融状態を保つ温度である850℃に保温するため、金属20の酸素とCaとの反応速度が高められ、さらに酸化カルシウム22の形成し継続させることができる。また、このような高温に保温することにより、酸化カルシウム22のCaClの層部分への溶融拡散も促進される。
このため、保温工程中に、金属20内の脱酸素が促進される。
【0052】
粒子化された金属20Aが室温に冷却されたら、次に除去工程を行う。本工程は、混合溶融物吹き付け工程によって金属20に吹き付けられ、固化された混合溶融物21を、金属20から除去する工程である。
粒子化された金属20Aを、粒子回収機構8に収容した状態で、極性溶剤供給部12から極性溶剤13を供給し、粒子収容空間8a内に満たす。これにより、金属20Aが極性溶剤13に浸漬させて、洗浄を行う。
混合溶融物21は、極性溶剤13に容易に溶解するため、このような洗浄により、金属20の表面から除去される。これにより、脱酸素された高純度の金属粒子として、金属20が取り出される。
そこで、Arガス雰囲気において、粒子回収機構8を金属粉末製造装置1から取り出し、真空乾燥を行うことで、図3(c)に示すように、粒子化され脱酸素化された金属20からなる金属粉末23が得られる。
【0053】
このように、金属粉末製造装置1を用いた本実施形態の金属粉末の製造方法によれば、混合溶融物吹き付け工程によって、少なくとも溶融されたカルシウムを含む混合溶融物21を金属20に吹き付けることで、金属20を粒子化するとともに、金属20に含まれる酸素と化合した酸化カルシウム22を混合溶融物21中の塩化カルシウム(ハロゲン化カルシウム)に溶融拡散させて脱酸素を行って、除去工程によってこの混合溶融物を除去するので、脱酸素された金属粉末23を効率的に製造することができる。
【0054】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る金属粉末製造装置の概略構成を示す模式的な構成図である。
【0055】
本変形例の金属粉末製造装置1Aは、上記第1の実施形態の金属粉末製造装置1に、加振機構11を追加したものである。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0056】
加振機構11は、粒子回収機構8の粒子収容空間8a内に収容された粒子化された金属20Aに振動を与えるもので、粒子回収機構8の底面に耐熱部材10を介して当接される超音波振動機構からなる。
なお、加振機構11は、粒子化された金属20Aに振動を与えることができれば、他の振動源を用いてもよく、例えば、振動ふるいを採用してもよい。
【0057】
金属粉末製造装置1Aを用いた金属粉末の製造方法は、上記第1の実施形態の保温工程の間、加振機構11の超音波振動機構によって、粒子回収機構8を加振し、振動を粒子回収機構8内の粒子化された金属20Aに伝播させて、粒子化された金属20Aに振動を与える加振工程を並行して行うようにした方法である。
本変形例では、保温工程において、加振機構11によって粒子化された金属20Aに振動を与えることにより、金属20の表面で発生した酸化カルシウム22が移動しやすくなり、混合溶融物21のCaClの層部分と接触しやすくなるため、CaClの層部分への溶出拡散を促進することができる。
これにより、金属20から、酸化カルシウム22が効率的に除去され、未反応のCaと未反応の酸素との反応が促進される。
【0058】
加振機構11が振動ふるいの場合には、粒子化された金属20Aがふるわれることによって、各粒子化された金属20Aの間およびふるいに対して衝突が繰り返されることによって、混合溶融物21内の酸化カルシウム22が機械的に衝突移動され、CaClの層部分への溶出拡散が促進される。
これにより、金属20から、酸化カルシウム22が効率的に除去され、未反応のCaと未反応の酸素との反応が促進される。
【0059】
このように、金属粉末製造装置1Aによれば、加振工程を行わない場合に比べて、より効率的に脱酸素を行うことができる。
なお、除去工程の洗浄の際に、加振機構11を起動して、粒子化された金属20Aを加振しながら洗浄を行うと、洗浄の効率的をより向上することができる。
【0060】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る金属粉末製造装置について説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る金属粉末製造装置の概略構成を示す模式的な構成図である。図6は、本発明の第2の実施形態に係る金属粉末製造装置のノズル近傍の模式的な拡大図である。
【0061】
本実施形態の金属粉末製造装置1Bは、本発明の第2の実施形態の金属粉末の製造方法を用いて、純金属または合金からなる金属粉末を、脱酸素した状態で製造するための装置である。
金属粉末製造装置1Bは、上記第1の実施形態の変形例の金属粉末製造装置1Aからガス加圧機構6を削除し、不活性ガス吹き付け部15を追加したものである。以下、上記第1の実施形態およびその変形例と異なる点を中心に説明する。
【0062】
本実施形態では、ガス加圧機構6が削除されており、混合溶融物形成加熱槽3と混合溶融物吹き付けノズル5との間に設けられた不図示の開閉弁を開くと、混合溶融物吹き付けノズル5からは、混合溶融物形成加熱槽3で溶融された混合溶融物21が第1の実施形態に係るに比べて低圧で吐出あるいは噴出(以下、単に噴出という)されるようになっている。
不活性ガス吹き付け部15は、各混合溶融物吹き付けノズル5の噴射口5aから噴出される混合溶融物21に、不活性ガスGを吹き付けて混合溶融物21を混合した状態のガス流を形成し、このガス流を、流下ノズル4から流下される金属20に吹き付けるものである。不活性ガスGの供給源(不図示)は、不活性ガスの加圧機構(不図示)とともに、金属粉末製造装置1Bの外部に配置され、この加圧機構によって噴射速度、噴射量などが調整して、不活性ガス吹き付け部15の先端に設けられた噴射口15aから不活性ガスGを噴射できるようになっている。
不活性ガス吹き付け部15のノズル先端15aは、図6に示すように、各混合溶融物吹き付けノズル5の噴射口5aの下方近傍で、混合溶融物21の噴出方向および金属20の流下方向に交差する斜め下方に向けて噴射方向が設定されている。
また、各ノズル先端15aは、流下ノズル4の中心軸に対して対称の位置に配置され、これにより、流下口4aから流下する金属20に対して、各ノズル先端15aから混合溶融物21を対称に吹き付けられるようになっている。
【0063】
なお、本実施形態では、混合溶融物吹き付けノズル5および不活性ガス吹き付け部15が、第1の吹き付け機構を構成している。
【0064】
金属粉末製造装置1Bを用いた本実施形態の金属粉末の製造方法は、上記第1の実施形態の変形例において混合溶融物吹き付け工程のみが異なる。
本実施形態の混合溶融物吹き付け工程は、流下ノズル4から流下された金属20に対して、混合溶融物21を不活性ガスGと混合された状態で吹きつける工程である。
【0065】
まず、金属加熱槽2と流下ノズル4との間の不図示の開閉弁を開いて、図6に示すように、流下ノズル4の流下口4aから溶湯状態の金属20を流下させる。
これと同時に、各混合溶融物吹き付けノズル5の噴射口5aから、金属20に向けて混合溶融物21を斜め下方に噴出させるとともに、各不活性ガス吹き付け部15のノズル先端15aから、不活性ガスGを噴射する。
これにより、各噴射口5aから噴出される混合溶融物21が、不活性ガスGのガス流により霧状に微細化されて、ガス流中に混合された状態で、流下する金属20に吹き付けられる。
金属20は、混合溶融物21が混合された不活性ガスGのガス流の噴射圧によって、粒子化されるとともに、表面に混合溶融物21が層状に付着し、粒子化された金属20Aとして落下していき、粒子ガイド7を介して、流下ノズル4の下方に設けられた粒子回収機構8内に収容される。このとき、不活性ガス吹き付け部15は、金属20の流下方向に対して対称に配置されているので、第1の実施形態と同様、また、流下する金属20に対称に噴射圧が作用するため、粒子化された金属20Aが、流下方向である鉛直軸を中心として形成され、斜め方向に大きく飛び散ることなく、流下方向を中心とする下方領域に落下する。
粒子回収機構8内に収容された粒子化された金属20Aに対して、上記第1の実施形態またはその変形例に記載されたのと同様の各工程を行うことにより、脱酸素された高純度の金属粉末が得られる。
【0066】
金属粉末製造装置1Bによれば、混合溶融物吹き付け工程で、混合溶融物21を不活性ガスGと混合した状態で吹き付けるので、不活性ガスGのガス圧を制御することによって、混合溶融物21のみを噴射して吹き付ける場合に比べて、粒子化された金属20Aの粒子径の制御がより容易となる。そのため、粒子径をより微小化することで、より脱酸素反応の速度が向上することが可能となる。
【0067】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る金属粉末製造装置について説明する。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る金属粉末製造装置の概略構成を示す模式的な構成図である。
【0068】
本実施形態の金属粉末製造装置1Cは、本発明の第3の実施形態の金属粉末の製造方法を用いて、純金属または合金からなる金属粉末を、脱酸素した状態で製造するための装置である。
金属粉末製造装置1Cは、上記第2の実施形態の金属粉末製造装置1Bの各混合溶融物形成加熱槽3、混合溶融物吹き付けノズル5に代えて、それぞれ同様な装置構成を有するカルシウム加熱槽3C、カルシウム吹き付けノズル5Cを備える。以下、上記第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
カルシウム加熱槽3Cは、それぞれカルシウム21Aを加熱して溶融し、カルシウム21Aを溶融状態に保持するものである。本実施形態では、ヒータ3aによって、カルシウム21Aの温度を900℃に保持できるようになっている。
カルシウム加熱槽3Cで溶融されたカルシウム21Aは、カルシウム吹き付けノズル5Cの噴射口5aから、上記第2の実施形態の混合溶融物21と同様に噴出できるようになっている。
このため、カルシウム吹き付けノズル5Cと不活性ガス吹き付け部15とは、カルシウム加熱槽3Cで溶融されたカルシウム21Aを加圧して噴射させ、流下ノズル4から流下された金属20に吹き付けて、金属20を粒子化する第2の吹き付け機構を構成している。
【0069】
また、本実施形態の粒子回収機構8および加熱機構9は、上記第2の実施形態に説明した動作に加えて、塩化カルシウム21Bを加熱し溶融させて、塩化カルシウム21Bの溶湯を粒子収容空間8a内に満たすことができるようになっている。このため、本実施形態のハロゲン化カルシウム被覆収容部を兼ねている。
【0070】
次に、本発明の第3の実施形態に係る金属粉末の製造方法について、金属粉末製造装置1Cの動作とともに説明する。
図8(a)は、本発明の第3の実施形態のカルシウム吹き付け工程で粒子化された金属の様子を示す模式的な断面図である。図8(b)、(c)は、本発明の第3の実施形態のハロゲン化カルシウム被覆工程における粒子化された金属の一例および他例の反応進行後の様子を示す模式的な断面図である。
本実施形態の金属粉末の製造方法の概略工程は、金属溶融工程、カルシウム溶融工程をそれぞれ行った後、カルシウム吹き付け工程を行い、ハロゲン化カルシウム溶融工程およびカルシウム吹き付け工程を行った後、ハロゲン化カルシウム被覆工程、保温工程、および除去工程をこの順に行うものである。
【0071】
金属溶融工程は、上記第2の実施形態の金属溶融工程と同様の工程である。
カルシウム溶融工程は、Caを加熱し溶融状態に保持する工程である。本実施形態では、図7に示すように、カルシウム加熱槽3Cによって、カルシウム21Aを900℃に加熱して溶融させ、溶融状態に保持する。
ハロゲン化カルシウム溶融工程は、CaXを加熱し溶融状態に保持する工程である。本実施形態では、図7に示すように、塩化カルシウム21Bを粒子回収機構8内に投入し、加熱機構9によって粒子回収機構8内の塩化カルシウム21Bを850℃に加熱し、溶融状態に保持する
【0072】
カルシウム吹き付け工程は、金属溶融工程で溶融された金属20を流下ノズル4から流下させ、カルシウム溶融工程によって溶融されたカルシウム21Aを加圧して、流下された金属20に吹き付けて、金属20を粒子化する工程である。
まず、金属加熱槽2と流下ノズル4との間の不図示の開閉弁を開いて、図6に示すように、流下ノズル4の流下口4aから溶湯状態の金属20を流下させる。
これと同時に、各カルシウム吹き付けノズル5Cの噴射口5aから、金属20に向けてカルシウム21Aを斜め下方に噴出させるとともに、各不活性ガス吹き付け部15のノズル先端15aから、不活性ガスGを噴射する。
これにより、各噴射口5aから噴出されるカルシウム21Aが、不活性ガスGのガス流により霧状に微細化されて、ガス流中に混合された状態で、流下する金属20に吹き付けられる。
金属20はカルシウム21Aが混合された不活性ガスGのガス流の噴射圧によって、粒子化されるとともに、表面にカルシウム21Aが層状に付着し、粒子化された金属20B(図8(a)参照)として落下していき、粒子ガイド7を介して、流下ノズル4の下方に設けられた粒子回収機構8内に収容される。このとき、流下する金属20に対称に噴射圧が作用するため、粒子化された金属20Aが、流下方向である鉛直軸を中心として形成され、斜め方向に大きく飛び散ることなく、流下方向を中心とする下方領域に落下することは、上記第2の実施形態と同様である。
【0073】
ハロゲン化カルシウム被覆工程は、カルシウム吹き付け工程によって粒子表面にカルシウムが吹き付けられた金属である粒子化された金属20Bを、ハロゲン化カルシウム溶融工程で溶融されたハロゲン化カルシウムによって被覆する工程である。
本実施形態では、粒子回収機構8内に溶融状態に保持された塩化カルシウム21Bが配置されているため、図8(b)に示すように、粒子回収機構8内に粒子化された金属20Bが落下すると、塩化カルシウム21Bに浸漬され、各粒子化された金属20Bは、粒子表面が塩化カルシウム21Bによって被覆される。
【0074】
次に、上記第1の実施形態の変形例と同様に、保温工程、加振工程を行う。本実施形態では、塩化カルシウム21Bを850℃の保持しているため、その温度状態を保つことで、粒子化された金属20Bの保温が達成される。本実施形態では、この状態を10分間保ち、この間に加振機構11による加振を続ける。
加振工程を設けることで、粒子化された金属20Bが塩化カルシウム21B内を移動する。例えば、落下した粒子化された金属20Bが山状となっても塩化カルシウム21Bの表面から突出しても、塩化カルシウム21Bの山は振動により徐々に崩され、各粒子化された金属20Bは塩化カルシウム21Bによってまんべんなく被覆される。このため、塩化カルシウム21Bの量は、例えば、図8(c)に示すように、少なくとも各粒子化された金属20Bの表面に塩化カルシウム21Bの被膜が形成される程度の量があればよい。このように、塩化カルシウム21Bの被膜が形成された状態では、塩化カルシウム21Bの液面から飛び出していてもよい。
保温終了後、加熱機構9による加熱を停止して、保温工程を終了し、室温まで冷却する。このとき、粒子回収機構8内に、洗浄の負荷を増大させる液状の塩化カルシウム21Bが多く残留している場合には、粒子回収機構8から液状の塩化カルシウム21Bを排出した後、冷却しておくことが好ましい。
【0075】
次に除去工程を行う。本工程は、ハロゲン化カルシウム被覆工程後に、粒子化された金属20Bの表面から、固化されたカルシウム21A、塩化カルシウム21Bの混合物を除去する工程である。
本実施形態では、上記第1の実施形態の除去工程と同様、粒子化された金属20Bを、粒子回収機構8に収容した状態で、粒子収容空間8a内に、極性溶剤供給部12から極性溶剤13を導入し、粒子化された金属20Bを極性溶剤13に浸漬して洗浄を行う。
カルシウム21A、塩化カルシウム21Bの混合物は、極性溶剤13に容易に溶解するため、このような洗浄により、いずれも金属20の表面から除去される。これにより、脱酸素された高純度の金属粒子として、金属20が取り出される。
そこで、Arガス雰囲気において、粒子回収機構8を金属粉末製造装置1から取り出し、真空乾燥を行うことで、粒子化された状態の金属20からなる金属粉末23(図3(c9参照)が得られる。
【0076】
カルシウム吹き付け工程から保温工程までの間に、金属20が受ける作用については、第1の実施形態の混合溶融物吹き付け工程から保温工程における作用と略同様なので、第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
本実施形態では、カルシウム吹き付け工程において、金属20の粒子表面全体にカルシウム21Aが層状に付着するので、金属20とカルシウム21Aとの間で、酸化カルシウム22が発生する反応が進行する。このため、カルシウム21Aが一部に含まれる混合溶融物21が表面に吹き付けられる場合に比べて、より多くの反応が進行し、より効率的に脱酸素が進行する。
次に、ハロゲン化カルシウム被覆工程では、金属20の粒子表面のカルシウム21Aの層を塩化カルシウム21Bが全周にわたって被覆するので、図8(b)に示すように、酸化カルシウム22は、酸化カルシウム22cとして、溶融状態の塩化カルシウム21Bへカルシウム21Aの層部分の全体から効率的に溶融拡散する。また、金属20の表面のカルシウム21Aも塩化カルシウム21Bに溶解するので、結果としてカルシウム21A内および金属20の表面の酸化カルシウム22aも、塩化カルシウム21B内に溶融拡散していく。
また、金属20の内に拡散した酸化カルシウム22bも、第1の実施形態同様、金属20が溶融状態または高温状態に保持される間は拡散移動を続けるので、金属20の表面に到達すると塩化カルシウム21B内に溶融拡散していく。
【0077】
このように、金属粉末製造装置1Cを用いた本実施形態の金属粉末の製造方法によれば、カルシウム吹き付け工程によって、金属20を粒子化するとともに、カルシウム21Aにより金属20の酸素から酸化カルシウム22を形成し、ハロゲン化カルシウム被覆工程を行うことにより、酸化カルシウム22を塩化カルシウム21Bに溶融拡散させることで、金属20からの脱酸素を行い、除去工程によってカルシウム21A、塩化カルシウム21Bを除去するので、脱酸素された金属粉末23を効率的に製造することができる。
【実施例】
【0078】
上記各実施形態、変形例に対応する実施例について説明する。各実施例の条件と、それぞれの実施例で得られた金属粉末中の酸素濃度(ppm)、および金属粉末の平均粒径(μm)の測定結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
[実施例1〜5]
実施例1〜4では、金属20として上記合金Aを採用し、上記第1の実施形態の製造方法によって金属粉末23を製造した。また実施例5では、金属20として上記合金Aを採用し、上記第1の実施形態の製造方法において、保温工程を削除した場合の製造方法によって金属粉末23を製造した。
実施例1〜5に共通な条件は以下の通りである。
製造に用いた合金Aに含まれる酸素濃度は600ppmであった。これは、Ar雰囲気の下で合金Aを950℃に加熱して金属溶湯を作製し、そのまま冷却固化した金属合金の酸素濃度をヘリウム搬送融解赤外線吸収法によって測定して得たものである。
金属溶融工程では、合金Aの組成比が得られるように、Zr、Cu、Al、Niの各金属材料を秤量し、合計の質量を200gとして、不活性ガス雰囲気中でアーク溶解法にて加熱して金属溶湯とした後、温度を低下させて、950℃の金属溶湯を得て、金属加熱槽2でこの温度を保持した。混合溶融物形成工程では、混合溶融物21は、CaとCaClとの質量比が1:60の混合物を溶融させ850℃に保持している。混合溶融物吹き付け工程では、Arガスによって混合溶融物21を加圧して吹き付けている。なお、混合溶融物吹き付け工程以後には、加振工程を行っていない。また、除去工程では、極性溶剤13としてアセトンを用いて洗浄を行っている。
【0081】
実施例1〜5で異なる条件は以下の通りである。
実施例1〜4では、それぞれ、保温温度をそれぞれ850℃、800℃、700℃、600℃に変え、それぞれの保温時間を10分として、保温工程を行っている。
実施例5では、保温工程を行わず、混合溶融物吹き付け工程後、粒子回収機構8に粒子化された金属20Aを収容し、自然放冷してから除去工程を行っている。
【0082】
これら実施例で得られた金属粉末23中の酸素濃度をヘリウム搬送融解赤外線吸収法により、また金属粉末の平均粒径をレーザー散乱式粒子径分布測定装置により、それぞれ測定したところ(以下の実施例の測定も同様)、表1に示すように、以下の測定結果を得た。
金属粉末中の酸素濃度は、実施例1〜5の順に、それぞれ、90ppm、92ppm、98ppm、116ppm、120ppmであった。
また、金属粉末23の平均粒子径は、いずれも31μmであった。
【0083】
[実施例6]
実施例6では、金属20として上記合金Bを採用し、上記第2の実施形態の製造方法によって金属粉末23を製造した。
製造に用いた合金Bに含まれる酸素濃度は、実施例1〜5と同様の測定を行ったところ、800ppmであった。
また、金属溶融工程における金属溶湯の温度は1000℃であり、混合溶融物21は、実施例1〜5と同様のものを溶融させ850℃に保持している。また、混合溶融物吹き付け工程では、混合溶融物21を2MPaで加圧された不活性ガスGであるArガスと混合された状態で吹き付けている。
保温工程では、保温温度を850℃、保温時間を10分とし、保温工程に並行して超音波振動機構により加振工程を行っている。また、除去工程では、極性溶剤13としてアセトンを用いて洗浄を行っている。
【0084】
実施例6の金属粉末23中の酸素濃度は、45ppm、金属粉末23の平均粒子径は、9μmであった。
【0085】
[実施例7]
実施例7では、金属20として上記合金Cを採用し、上記第3の実施形態の製造方法によって金属粉末23を製造した。
製造に用いた合金Cに含まれる酸素濃度は、実施例1〜5と同様の測定を行ったところ、750ppmであった。
また、金属溶融工程における金属溶湯の温度は1100℃であり、カルシウム溶融工程でのカルシウム21Aは900℃に保持している。ハロゲン化カルシウム溶融工程では850℃で塩化カルシウム21Bを溶融し、同温度を保持してハロゲン化カルシウム被覆工程を行い、さらに同温度で保温時間を10分として、保温工程を行い、この保温工程に並行して超音波振動機構により加振工程を行っている。また、除去工程では、極性溶剤13としてアセトンを用いて洗浄を行っている。
【0086】
実施例7の金属粉末23中の酸素濃度は、測定限界の30ppm以下、金属粉末23の平均粒子径は、11μmであった。
【0087】
これらの実施例によれば、金属粉末23中の酸素濃度は、初期の金属20中の酸素濃度に比べて1.5%(実施例7)〜20%(実施例5)に低減されているため、いずれも良好に脱酸素されていることが分かる。
実施例1〜5を比較すると、保温工程を備える方が、より脱酸素効果が高くなっている。また、実施例4のように700℃より低温の600℃では、保温工程なしの実施例5との酸素濃度の差が少なく、実施例1〜3では、より低酸素濃度となりかつそれぞれの間の酸素濃度差が少ないため、700℃〜850℃の温度範囲で、特に良好な脱酸素効果が得られていることが分かる。
また、特に測定結果を示していないが、850℃より高温で金属の融点以上に上げると、金属粒子が融けるため、混合溶融物と混じってしまい、金属粉末が得られない。
ただし、保温工程では、金属粒子が融けない範囲で、できるだけ高い方が、カルシウムの脱酸素反応と反応により生成した塩化カルシウムの溶融拡散が早く進むため、脱酸素効果が大きくなる。
【0088】
保温温度が同一条件の実施例1と、実施例6、7とを比較すると、実施例6、7では、初期の酸素濃度が高いにもかかわらず、格段に高い脱酸素効果が得られていることが分かる。すなわち、不活性ガスの混合した吹き付けおよび加振工程を行うことによって、脱酸素効果が向上されている。
実施例7が特に良好な脱酸素効果が得られているのは、粒子化とともにCaを吹き付けてから、CaClを被覆したことで、脱酸素効果が向上されたためである。
【0089】
また、平均粒径を比較すると、不活性ガスを混合した吹き付けの有無が、平均粒子の大きさに寄与しており、2MPaに加圧した不活性ガスを混合して吹き付けた実施例6、7の方が、実施例1〜5に比べて、平均粒子径を小さくする事ができる。
【0090】
なお、上記の各実施形態の説明では、いずれも保温工程を備える場合の例で説明したが、実施例4、5に示したように、保温温度範囲が700℃より低い場合や、自然放冷した場合でも、約80%程度の脱酸素効果が得られるので、酸素濃度が許容範囲であれば、保温温度を低減したり、自然放冷させたりしてもよい。
【0091】
また、上記の説明では、保温工程に並行して加振工程を行った場合の例で説明したが、ハロゲン化カルシウムが高温状態にあり、酸化カルシウムの溶融拡散が促進される間は、加振工程によって脱酸素化が促進されるため、保温工程を行わず自然放冷される間、加振工程を行うようにしてもよい。
【0092】
また、上記の説明では、いずれも、粒子回収機構8を装置本体に設置した状態で、除去工程を行うようにした場合の例で説明したが、例えば、粒子回収機構8に粒子化された金属を収容した後、もしくは、保温工程が終了した後に、粒子回収機構8を装置本体から外して除去工程を行ってもよい。
【0093】
また、上記の説明では、除去工程として洗浄を行う場合の例で説明したが、除去工程は洗浄のみには限定されない。
例えば、除去工程は、次のようにして行うこともできる。
ハロゲン化カルシウム等が被覆された金属微粒子を不活性(アルゴン)ガス雰囲気の下、十分な量のアセトンによる洗浄をおこない、ろ過して金属微粒子のケーキを回収する。ケーキ状金属微粒子の上方からさらにアセトン100mlを金属微粒子100gに対する割合で加えてろ過した後、室温にて真空乾燥を3時間実施して、金属微粒子表面のアセトンを除去する。これにより被覆が除去された金属微粒子を得ることができた。
【0094】
また、上記第2(第3)の実施形態の説明では、金属粉末製造装置1B(1C)において、ガス加圧機構6を削除し、混合溶融物21(カルシウム21A)が混合溶融物吹き付けノズル5(カルシウム吹き付けノズル5C)の噴射口5aから噴出される場合の例で説明した。これは、金属粉末製造装置1B(1C)は、不活性ガスGを加圧して吹き付ける不活性ガス吹き付け部15を備えるため、混合溶融物21(カルシウム21A)は、噴射口5aから高圧に噴射されなくても、不活性ガスGと混合された状態で、金属20に高圧に吹き付けられるためである。
ただし、ガス加圧機構6を設けて、混合溶融物吹き付けノズル5(カルシウム吹き付けノズル5C)内の混合溶融物21(カルシウム21A)を適宜加圧して、噴射口5aから高速に噴射し、この噴射流を不活性ガスGのガス流と混合してもよい。
【0095】
また、上記第3の実施形態の説明では、カルシウムが表面に被覆された金属粉末を、ハロゲン化カルシウム溶湯に落下させて、ハロゲン化カルシウムを被覆する場合の例で説明したが、ハロゲン化カルシウムを被覆するには、カルシウムが表面に被覆された金属粉末にハロゲン化カルシウムを吹き付けて被覆してもよい。
【0096】
また、上記の各実施形態、変形例に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
例えば、上記第2、第3の実施形態において、保温工程や加振工程を適宜削除してもよい。
また、例えば、上記第3の実施形態において、不活性ガス吹き付け部15を削除して、カルシウム吹き付けノズル5Cとガス加圧機構6とからなる機構を第2の吹き付け機構として用いてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1、1A、1B、1C 金属粉末製造装置
2 金属加熱槽
3 混合溶融物形成加熱槽
3C カルシウム加熱槽
4 流下ノズル(ノズル)
5 混合溶融物吹き付けノズル(第1の吹き付け機構)
5C カルシウム吹き付けノズル(第2の吹き付け機構)
6 ガス加圧機構(第1の吹き付け機構)
8 粒子回収機構(保温収容部、混合溶融物除去部、ハロゲン化カルシウム被覆収容部)
9 加熱機構(保温収容部、ハロゲン化カルシウム被覆収容部)
11 加振機構
12 極性溶剤供給部(混合溶融物除去部)
13 極性溶剤
15 不活性ガス吹き付け部(第1の吹き付け機構、第2の吹き付け機構)
20 金属(粉末化する金属)
20A、20B 粒子化された金属
21 混合溶融物
21A カルシウム
21B 塩化カルシウム(ハロゲン化カルシウム)
22、22a、22b、22c 酸化カルシウム
23 金属粉末
A、B、C 合金(粉末化する金属)
G 不活性ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末化する金属を溶融する金属溶融工程と、
カルシウムとハロゲン化カルシウムとを加熱し溶解させ、混合溶融物を形成する混合溶融物形成工程と、
前記金属溶融工程で溶融された前記金属をノズルから流下させ、前記混合溶融物形成工程によって形成された前記混合溶融物を加圧して、流下された前記金属に吹き付けて、前記金属を粒子化する混合溶融物吹き付け工程と、
該混合溶融物吹き付け工程によって前記金属に吹き付けられた前記混合溶融物を、前記金属の表面から除去する除去工程とを備える金属粉末の製造方法。
【請求項2】
前記混合溶融物吹き付け工程は、
前記混合溶融物を、不活性ガスと混合された状態で吹きつけることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末の製造方法。
【請求項3】
前記除去工程は、
前記混合溶融物吹き付け工程によって粒子化された前記金属の粒子表面の前記混合溶融物の層を極性溶剤により洗浄することで、前記混合溶融物を除去する工程であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属粉末の製造方法。
【請求項4】
前記混合溶融物吹き付け工程と前記除去工程との間に、前記混合溶融物吹き付け工程によって粒子化された前記金属を、前記混合溶融物の融点以上であり前記金属の融点以下である温度に保温する保温工程を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
【請求項5】
前記保温工程では、
前記粒子化された金属に振動を与える加振工程をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の金属粉末の製造方法。
【請求項6】
前記加振工程は、
超音波により振動を与えることを特徴とする請求項5に記載の金属粉末の製造方法。
【請求項7】
前記加振工程は、振動ふるいにより振動を与えることを特徴とする請求項5に記載の金属粉末の製造方法。
【請求項8】
粉末化する金属を溶融する金属溶融工程と、
カルシウムを加熱し溶融状態に保持するカルシウム溶融工程と、
ハロゲン化カルシウムを加熱し溶融状態に保持するハロゲン化カルシウム溶融工程と、
前記金属溶融工程で溶融された前記金属をノズルから流下させ、前記カルシウム溶融工程によって溶融された前記カルシウムを加圧して、流下された前記金属に吹き付けて、前記金属を粒子化するカルシウム吹き付け工程と、
該カルシウム吹き付け工程によって粒子表面に前記カルシウムが吹き付けられた金属を、前記ハロゲン化カルシウム溶融工程で溶融されたハロゲン化カルシウムによって被覆するハロゲン化カルシウム被覆工程と、
該ハロゲン化カルシウム被覆工程後に、前記粒子化された金属の表面から、前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムを除去する除去工程を備える金属粉末の製造方法。
【請求項9】
前記カルシウム吹き付け工程は、
前記溶融されたカルシウムを、不活性ガスと混合された状態で吹き付けることを特徴とする請求項8に記載の金属粉末の製造方法。
【請求項10】
前記除去工程は、
前記カルシウム吹き付け工程および前記ハロゲン化カルシウム被覆工程によって、前記金属の表面に付着した前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムを極性溶剤により洗浄することで、前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムを除去する工程であることを特徴とする請求項8または9に記載の金属粉末の製造方法。
【請求項11】
前記ハロゲン化カルシウム被覆工程と前記除去工程との間に、前記ハロゲン化カルシウム被覆工程によって前記ハロゲン化カルシウムが吹き付けられた状態で粒子化された前記金属を、前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムの混合溶融物の融点以上であり前記金属の融点以下である温度に保温する保温工程を備えることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
【請求項12】
前記保温工程では、
前記粒子化された金属に振動を与える加振工程をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の金属粉末の製造方法。
【請求項13】
前記加振工程は、
超音波により振動を与えることを特徴とする請求項12に記載の金属粉末の製造方法。
【請求項14】
前記加振工程は、
振動ふるいにより振動を与えることを特徴とする請求項12に記載の金属粉末の製造方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の金属粉末の製造方法によって製造された金属粉末。
【請求項16】
前記金属は、
Zr、Cu、Al、Ni、Ti、Nbのうちから選択された一つの元素からなる純金属、
または、Zr、Cu、Al、Ni、Ti、Nbのうち少なくとも2種類以上の元素を含む合金からなることを特徴とする請求項15に記載の金属粉末。
【請求項17】
粉末化する金属を加熱し溶融状態に保持する金属加熱槽と、
該金属加熱槽と接続され、該金属加熱槽で溶融された金属を流下させるノズルと、
カルシウムとハロゲン化カルシウムとを加熱し溶解させて混合溶融物を形成する混合溶融物形成加熱槽と、
該混合溶融物形成加熱槽で形成された前記混合溶融物を加圧して噴射させ、前記ノズルから流下された前記金属に吹き付けて、該金属を粒子化する第1の吹き付け機構と、
該第1の吹き付け機構により前記混合溶融物が吹き付けられた前記金属から前記混合溶融物を除去する混合溶融物除去部とを備えることを特徴とする金属粉末製造装置。
【請求項18】
前記第1の吹き付け機構は、前記混合溶融物形成加熱槽によって形成された前記混合溶融物に不活性ガスを混合する不活性ガス混合部を備えることを特徴とする請求項17に記載の金属粉末製造装置。
【請求項19】
前記混合溶融物除去部は、前記混合溶融物が吹き付けられた金属を極性溶剤で洗浄を行うものであることを特徴とする請求項17または18に記載の金属粉末製造装置。
【請求項20】
前記ノズルの下方で、前記第1の吹き付け機構から前記混合溶融物を吹き付けられて粒子化された金属を収容し、前記混合溶融物の融点以上であり前記金属の融点以下である温度に保温する保温収容部が設けられたことを特徴とする請求項17から19のいずれかに記載の金属粉末製造装置。
【請求項21】
前記保温収容部内の前記粒子化された金属に振動を与える加振機構をさらに備えることを特徴とする請求項20に記載の金属粉末製造装置。
【請求項22】
前記加振機構は、超音波加振機構であることを特徴とする請求項21に記載の金属粉末製造装置。
【請求項23】
前記加振機構は、振動ふるいであることを特徴とする請求項21に記載の金属粉末製造装置。
【請求項24】
粉末化する金属を加熱し溶融状態に保持する金属加熟槽と、
該金属加熱槽と接続され、該金属加熱槽で溶融された金属を流下させるノズルと、
カルシウムを加熱し溶融状態に保持するカルシウム加熱槽と、
該カルシウム加熱槽で溶融されたカルシウムを加圧して噴射させ、前記ノズルから流下された金属に吹き付けて、該金属を粒子化する第2の吹き付け機構と、
前記ノズルの下方に配置され、ハロゲン化カルシウムを溶融してハロゲン化カルシウム溶湯を内部に保持するとともに、前記第2の吹き付け機構によって粒子表面に前記カルシウムが付着された状態で粒子化された前記金属を、前記ハロゲン化カルシウム溶湯内に収容するハロゲン化カルシウム被覆収容部と、
該ハロゲン化カルシウム被覆収容部内に収容された前記粒子化された金属から、前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムを除去する吹き付け物除去部とを備えることを特徴とする金属粉末製造装置。
【請求項25】
前記第2の吹き付け機構は、前記カルシウム加熱槽で溶融されたカルシウムに不活性ガスを吹き付けて混合する不活性ガス吹き付け部を備えることを特徴とする請求項24に記載の金属粉末製造装置。
【請求項26】
前記吹き付け物除去部は、前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムが被覆された前記粒子化された金属を極性溶剤で洗浄を行うものであることを特徴とする請求項24または25に記載の金属粉末製造装置。
【請求項27】
前記ハロゲン化カルシウム被覆収容部は、前記粒子化された金属を、前記カルシウムおよび前記ハロゲン化カルシウムの混合溶融物の融点以上であり前記金属の融点以下である温度に保温する加熱機構が設けられたことを特徴とする請求項24から26のいずれかに記載の金属粉末製造装置。
【請求項28】
前記ハロゲン化カルシウム被覆収容部内の前記粒子化された金属に振動を与える加振機構をさらに備えることを特徴とする請求項27に記載の金属粉末製造装置。
【請求項29】
前記加振機構は、超音波加振機構であることを特徴とする請求項28に記載の金属粉末製造装置。
【請求項30】
前記加振機構は、振動ふるいであることを特徴とする請求項28に記載の金属粉末製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−248546(P2010−248546A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96881(P2009−96881)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】