説明

金属缶用天板およびその補正方法ならびに補正装置

【課題】環境汚染を防止しつつ、手環取り付けのためのスポット溶接の際に生じたラミネート層の損傷箇所を適切に補正することができる金属缶用天板およびその補正方法ならびに補正装置を提供すること。
【解決手段】天板本体3の一方の表面上に、スポット溶接によるラミネート層5の損傷箇所14を補正するための補正フィルム15が、損傷箇所14を含む所定範囲のフィルム形成領域に亘って形成され、補正フィルム15は、フィルム形成領域の面形状に対応する外周面形状を有する加熱ローラによって、フィルム形成領域上に熱溶着されてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属缶用天板およびその補正方法ならびに補正装置に係り、特に、ラミネート層が形成されたラミネート金属板からなる天板本体に手環取り付け用の座金をスポット溶接した際に生じたラミネート層の損傷箇所を補正するのに好適な金属缶用天板およびその補正方法ならびに補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、石油、塗料、化学薬品または食料等の種々の液体の内容物を収容する手段として、天板、缶胴および地板(底板)によって構成される18リットル缶等の金属缶が用いられていた。
【0003】
この種の金属缶としては、缶の腐食(錆の発生等)ひいては缶内の内容物の品質の劣化を防止する観点から、缶内面に樹脂材料によるラミネート層を形成したものが普及していた。
【0004】
また、従来から、18リットル缶用の天板としては、運搬の際の利便性を考慮して、缶を把持するための手環が取り付けられた天板が用いられていた。
【0005】
このような天板を得るためには、天板本体に手環を取り付ける作業が必要となるが、この手環を取り付ける方法の1つとして、従来から、スポット溶接が採用されていた。
【0006】
すなわち、手環を天板本体に取り付ける際には、天板本体の缶外面側の表面と手環取り付け用の座金との間に手環の基端部を遊びを持たせた状態で挟み込むように配置した上で、当該座金を天板本体にスポット溶接するようになっていた。
【0007】
このようにして、手環が天板本体と座金との間にその基端部を介して起倒自在に取り付けられるようになっていた。
【0008】
ここで、従来から、このような手環の取り付けの際に、スポット溶接の熱によって、天板の缶内面側の表面を形成するラミネート層に破れや剥離等の損傷が生じてしまうことが問題となっていた。
【0009】
このような問題を解決するため、これまでにも、例えば、ラミネート層の損傷箇所に、ニス等の液体塗料を用いた焼き付け塗装を行うことによって損傷箇所を補正する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平09−99941号公報(特に、段落0003参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の焼き付け塗装による補正方法においては、液体塗装のため、塗装膜の膜厚が安定しないばかりでなく十分な膜厚を得ることができず、ひいては、ラミネート層の損傷箇所を適切に補正することができず、缶内の内容物によって缶内面における損傷箇所に対応する部位が腐食してしまうといった問題が生じていた。
【0012】
また、かかる従来の補正方法においては、液体塗料の焼き付け時に大気中に溶剤などが飛散することによって、環境汚染をもたらすといった問題も生じていた。
【0013】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、環境汚染を防止しつつ、手環取り付けのためのスポット溶接の際に生じたラミネート層の損傷箇所を適切に補正することができる金属缶用天板およびその補正方法ならびに補正装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するため、本発明に係る金属缶用天板は、厚み方向における少なくとも一方の表面がラミネート層によって形成されたラミネート金属板からなる天板本体と、この天板本体の前記厚み方向における他方の表面にスポット溶接された手環取り付け用の座金と、この座金と前記天板本体との間に基端部を介して起倒自在に取り付けられた手環とを備えた金属缶用天板において、前記天板本体の前記一方の表面上に、前記スポット溶接による前記ラミネート層の損傷箇所を補正するための補正フィルムが、前記損傷箇所を含む所定範囲のフィルム形成領域に亘って形成され、前記補正フィルムは、前記フィルム形成領域の面形状に対応する外周面形状を有する加熱ローラにより、前記フィルム形成領域上に熱溶着されてなることを特徴としている。
【0015】
ここで、前記補正フィルムは、前記ラミネート層と同一の樹脂材料からなるものであってもよい。
【0016】
また、本発明に係る金属缶用天板の補正方法は、厚み方向における少なくとも一方の表面がラミネート層によって形成されたラミネート金属板からなる天板本体と、この天板本体の前記厚み方向における他方の表面にスポット溶接された手環取り付け用の座金と、この座金と前記天板本体との間に基端部を介して起倒自在に取り付けられた手環とを備えた金属缶用天板に対して、前記スポット溶接による前記ラミネート層の損傷箇所の補正を行うための金属缶用天板の補正方法において、前記天板本体の前記一方の表面における前記損傷箇所を含む所定範囲のフィルム形成領域上に、このフィルム形成領域に対応する大きさの補正フィルムを配置した状態で、前記フィルム形成領域の面形状に対応する外周面形状を有する加熱ローラを、前記補正フィルムの上から前記フィルム形成領域側に押圧させながら前記フィルム形成領域に沿って相対移動させることによって、前記フィルム形成領域上に前記補正フィルムを熱溶着することを特徴としている。
【0017】
ここで、前記天板本体における所定範囲の部位は、前記座金との間で前記スポット溶接における複数の溶接点を形成して前記座金をスポット溶接すべきスポット溶接部位とされ、このスポット溶接部位は、その前記厚み方向における他方の表面が、前記厚み方向における他方の側に突出されるとともに、その前記厚み方向における一方の表面が、前記厚み方向における他方の側に凹入された形状に形成され、前記補正フィルムの熱溶着の際に、前記加熱ローラとして、その外周面の一部が前記スポット溶接部位の前記一方の表面に対応するように突出された加熱ローラを用いるようにしてもよい。
【0018】
また、前記加熱ローラによる前記補正フィルムの溶着後に、第2の加熱ローラを、前記補正フィルムの上から前記フィルム形成領域側に押圧させながら前記フィルム形成領域に沿って相対移動させることにより、前記補正フィルムの前記天板本体への密着力を高めるようにしてもよい。
【0019】
さらに、本発明に係る金属缶用天板の補正装置は、厚み方向における少なくとも一方の表面がラミネート層によって形成されたラミネート金属板からなる天板本体と、この天板本体の前記厚み方向における他方の表面にスポット溶接された手環取り付け用の座金と、この座金と前記天板本体との間に基端部を介して起倒自在に取り付けられた手環とを備えた金属缶用天板に対して、前記スポット溶接による前記ラミネート層の損傷箇所の補正を行う金属缶用天板の補正装置において、前記金属缶用天板を所定の搬送経路にしたがって搬送する天板搬送手段と、前記搬送経路上に複数の前記金属缶用天板を一枚ずつ順次供給可能とされた天板供給手段と、前記搬送経路上における前記天板供給手段に対する下流側の位置に配設され、前記金属缶用天板に対して加熱を行う天板乾燥手段と、前記搬送経路上における前記天板乾燥手段に対する下流側の位置に配設され、前記天板本体の前記一方の表面における前記損傷箇所を含む所定範囲のフィルム形成領域に対応する大きさに切断加工された補正フィルムを、前記天板乾燥手段による乾燥後の前記金属缶用天板の前記フィルム形成領域上に供給するフィルム供給手段と、前記搬送経路上における前記フィルム供給手段に対する下流側の位置に配設され、前記フィルム供給手段による前記補正フィルムの供給後の前記金属缶用天板に対して、当該補正フィルムの前記フィルム形成領域上への熱溶着を行うフィルム溶着手段と、前記搬送経路上における前記フィルム溶着手段に対する下流側の位置に配設され、前記フィルム溶着手段による前記補正フィルムの熱溶着後の前記金属缶用天板に対して、前記補正フィルムの前記天板本体への密着力を高めるための加熱処理を行う加熱処理手段と、前記搬送経路上における前記加熱処理手段に対する下流側の位置に配設され、前記加熱処理手段による前記加熱処理後の前記金属缶用天板を冷却する天板冷却手段とを備え、前記フィルム溶着手段は、前記フィルム形成領域の面形状に対応する外周面形状であって、外周面の一部が、前記フィルム形成領域のうちの前記スポット溶接における複数の溶接点に対応する所定範囲の領域の面形状に対応するように突出された外周面形状を有する第1の加熱ローラと、この第1の加熱ローラを前記フィルム形成領域上に供給された前記補正フィルムの上から前記フィルム形成領域側に押圧させる第1の押圧手段と、この第1の押圧手段による押圧状態のまま前記第1の加熱ローラを前記フィルム形成領域に沿って相対移動させる第1の移動手段と、第2の加熱ローラと、この第2の加熱ローラを、前記第1の加熱ローラによる前記補正フィルムの熱溶着後に、当該熱溶着された前記補正フィルムの上から前記フィルム形成領域側に押圧さる第2の押圧手段と、この第2の押圧手段による押圧状態のまま前記第2の加熱ローラを前記フィルム形成領域に沿って相対移動させる第2の移動手段とを備えたことを特徴としている。
【0020】
ここで、本発明によれば、液体塗料に比べて厚みおよび厚みの安定性・均一性に優れた補正フィルムを、フィルム形成領域の面形状に対応する外周面形状を有する加熱ローラによって十分な密着性を持たせてフィルム形成領域上に熱溶着することができるため、ラミネート層の損傷箇所を適切に補正することができ、ひいては、缶内面における損傷箇所に対応する部位の腐食を確実に抑制することができる。また、本発明によれば、スポット溶接や口元加工の際の熱によって天板本体にねじれが生じた場合においても、ラミネート層の損傷箇所を適切に補正することができる。さらに、本発明によれば、補正フィルムの熱溶着の際に、焼き付け塗装の場合のように溶剤等の有害物質が飛散することはないため、環境汚染を防止することができる。さらにまた、補正フィルムをラミネート層と同一の樹脂材料からなるものとすれば、損傷箇所を適切に補正することができるとともに、コストを削減することができる。また、加熱ローラによる補正フィルムの熱溶着を行った後に、さらに、第2の加熱ローラによって補正フィルムの天板本体への密着力を高めるようにすれば、ラミネート層の損傷箇所をより適切に補正することができる。さらにまた、このようなラミネート層の損傷箇所の補正を一連のライン上において自動的に行うようにすれば、当該補正を効率的に行うことができ、ひいては、金属缶用天板の量産性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明方法を実施する金属缶用天板の補正装置としては、少なくとも、前記フィルム供給手段と前記フィルム溶着手段とを備えていればよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、環境汚染を防止しつつ、手環取り付けのためのスポット溶接の際に生じたラミネート層の損傷箇所を適切に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る金属缶用天板の実施形態を示す平面図
【図2】図1の下面図
【図3】図2のA−A断面図
【図4】図2のB−B断面図
【図5】本発明に係る金属缶用天板の補正装置の実施形態において、全体構成を示す概略平面図
【図6】本発明に係る金属缶用天板の補正装置の実施形態において、天板供給装置を示す概略構成図
【図7】本発明に係る金属缶用天板の補正装置の実施形態において、フィルム溶着装置を示す概略構成図
【図8】本発明に係る金属缶用天板の補正装置の実施形態において、第1のヒートローラを示す正面図
【図9】図8の側面図
【図10】本発明に係る金属缶用天板の補正装置の実施形態において、第2のヒートローラを示す正面図
【図11】図10の側面図
【図12】本発明に係る金属缶用天板の補正装置の実施形態において、天板受け部を示す平面図
【図13】図12の側面図および部分断面図
【図14】加熱電気炉内の搬送コンベアを示す概略側面図並びに要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る金属缶用天板およびその補正方法ならびに補正装置の実施形態について、図1乃至図14を参照して説明する。
【0025】
図1は、本実施形態における金属缶用天板1を示す平面図であり、図2は、図1の下面図である。また、図3は、図2のA−A断面図であり、図4は、図2のB−B断面図である。
【0026】
図1および図2に示すように、本実施形態における金属缶用天板1は、口元2を備えた平面略正方形状の天板本体3を有している。
【0027】
天板本体3は、ラミネート金属板としてのラミネート鋼板からなり、図3および図4に示すように、その厚み方向における一方(図3および図4における上方)(以下、缶内面側と称する)の表面が、鋼鈑6にラミネートされた樹脂材料のラミネート層5によって構成されている。このラミネート層5は、金属缶用天板1が金属缶(図示せず)を構成した状態において、鋼板6が缶内の内容物に直に触れることを防止するようになっている。
【0028】
また、図示はしないが、天板本体3は、その厚み方向における他方(図3および図4における下方)(以下、缶外面側と称する)の表面も、後述する手缶取り付け用の座金が取り付けられた一部の範囲を除いて、鋼板6にラミネートされた樹脂材料のラミネート層によって構成されている。
【0029】
なお、鋼板6としては、例えば、ティンフリースチールを好適なものとして用いることができる。また、ラミネート層5を構成する樹脂材料としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂フィルムを好適なものとして用いることができる。
【0030】
また、本発明においては、ラミネート層5として、その代替物として鋼板6にエポキシ−フェノール樹脂やエポキシ−ユリア樹脂等の樹脂塗料を塗装して形成したものを含むものである。
【0031】
また、図1および図3に示すように、天板本体3の缶外面側の表面には、断面形状が略Ω字状を呈する手環取り付け用の座金(以下、手環用座金と称する)7が、天板本体3との間に手環配置用の間隙部10(図3参照)を設けた状態でスポット溶接されている。そして、この手環用座金7と天板本体3との間に挟まれた間隙部10には、手環8の基端部8aが遊びを持った状態で配置されている。
【0032】
このようにして、手環8が、その基端部8aを介して手環用座金7と天板本体3との間に起倒自在に取り付けられている。
【0033】
より具体的には、図2乃至図4に示すように、天板本体3は、その中央の所定範囲の部位が、手環用座金7との間でスポット溶接における複数の溶接点を形成して手環用座金7をスポット溶接すべきスポット溶接部位11とされている。
【0034】
また、図2乃至図4に示すように、本実施形態においては、スポット溶接部位11が2つ形成されている。これら2つのスポット溶接部位11,11は、ともに天板本体3の一方の対角方向(図2における左斜め約45°方向)に長尺とされているとともに、当該対角方向に直交する天板本体3の他方の対角方向(図2における右斜め約45°方向)に互いに間隔を隔てるように並設されている。
【0035】
図3に示すように、各スポット溶接部位11,11は、その缶外面側の表面が缶外面側に突出されるとともに、その缶内面側の表面が缶外面側に凹入された突起状に形成されている。
【0036】
一方、図1および図4に示すように、手環用座金7には、天板本体3側に突出するようなU字形状の複数(図1においては12個)の突起部12が、手環用座金7の長手方向(図1における右斜め方向、図4における横方向)およびこれに直交する方向(図1における左斜め方向)に互いに間隔を設けて形成されている。
【0037】
そして、図4に示すように、手環用座金7は、各突起部12の天板本体3側の表面が、これらに対向する各スポット溶接部位11,11の缶外面側の表面にそれぞれ接した状態で、各突起部12ごとにスポット溶接部位11,11との間で溶接点Pが形成されるようにして、スポット溶接部位11,11上にスポット溶接されている。
【0038】
このようなスポット溶接によって、各スポット溶接部位11,11には、それぞれの長手方向に沿って複数の溶接点Pが整列形成されている。
【0039】
さらに、このスポット溶接によって、各スポット溶接部位11,11の缶内側表面における各溶接点Pに対応する位置には、スポット溶接の際の溶接熱によって、ラミネート層5の損傷部(クラックや剥離部分等)14が形成されている。
【0040】
このような損傷部14は、これに対して何等対策を採らない場合には、金属缶用天板1が金属缶を構成した際に、缶内の内容物による鋼板6の腐食をもたらすことになる。
【0041】
そこで、本実施形態においては、このような損傷部14を補正するための手段が講じられている。
【0042】
すなわち、図2乃至図4に示すように、天板本体3の缶内面側の表面であって、各損傷部14を含む所定範囲に亘るフィルム形成領域上には、各損傷部14を補正するための樹脂材料からなる平面長方形状の補正フィルム15が形成されている。なお、フィルム形成領域は、各スポット溶接部位11,11の缶内面側の表面を含んでいる。
【0043】
また、本実施形態において、補正フィルム15は、フィルム形成領域の面形状に対応する外周面形状を有する加熱ローラによって、フィルム形成領域上に熱溶着されている。この加熱ローラの詳細は後述する。
【0044】
なお、補正フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ラミネート層5を構成する樹脂材料と同一の樹脂材料(PET(ポリエチレンテレフタレート))を好適なものとして用いることができる。また、補正フィルムを構成する樹脂材料としては、前記PETの他にPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を用いることができる。
【0045】
このような金属缶用天板1は、例えば、図5乃至図14に示す補正装置17によって得ることができる。
【0046】
この補正装置17は、金属缶用天板1における前述した損傷部14の補正を、一連のライン上において自動的に行うことが可能とされている。
【0047】
すなわち、図5に示すように、補正装置17は、金属缶用天板1をその搬送経路(以下、天板搬送経路と称する)にしたがって搬送する天板搬送手段として、天板搬送経路に沿って順次配設された複数の搬送コンベア18を有している。各搬送コンベア18は、損傷部14を補正するための後述する一連の各工程において、タクト送りによって前工程から次工程への金属缶用天板1の受け渡しを行うようになっている。各搬送コンベア18は、モータ等の図示しない駆動源によって独立に駆動されるようになっている。なお、各搬送コンベア18の駆動源は、補正装置17全体の動作を電気的に制御する図示しない制御部(マイコン)によって駆動制御されるようになっている。
【0048】
また、図5に示すように、補正装置17は、天板供給手段としての天板供給装置19を有しており、この天板供給装置19には、損傷部14の補正前の複数の金属缶用天板1が、その缶内面側の表面を鉛直上方に向けるようにして鉛直方向に積載収容されている。そして、天板供給装置19は、積載収容されている複数の金属缶用天板1を、最上段の金属缶用天板1から順に、天板搬送経路上の上流端に一枚ずつ順次タクト送りによって供給するようになっている。この金属缶用天板の供給動作は、前記制御部から供給指令信号が入力されることによって開始されるようになっている。なお、天板供給装置19は、収容位置に積載収容されている金属缶用天板1をバキュームパッドに吸着させて収容位置から取り出し、取り出された金属缶用天板1を、最も上流側の天板搬送手段としてのマグネットが設けられた吊り下げコンベア(図示せず)に渡すものであってもよい。この場合、吊り下げコンベアは、天板供給装置19から受けた金属缶用天板1を、マグネットの磁力を介して吊り下げ、吊り下げされた金属缶用天板1を最も上流側の搬送コンベア18側へとタクト送りによって搬送すればよい。
【0049】
さらに、図5に示すように、天板搬送経路上における天板供給装置19に対する下流側の位置には、天板洗浄手段としての天板洗浄装置20が配設されている。この天板洗浄装置20は、天板供給装置19によって天板搬送経路上に供給された後に天板搬送手段(例えば、吊り下げコンベア)によって下流側に搬送された金属缶用天板1に対して、揮発性洗浄液を用いた拭き取り洗浄を行うようになっている。具体的には、天板洗浄装置20は、エチルアルコールが塗布されたフェルトによって金属缶用天板1の少なくともフィルム形成領域を自動的に拭き取る機構を備えたものであってもよい。
【0050】
そして、このような天板洗浄装置20による洗浄工程により、手環用座金7のスポット溶接や口元加工等の天板加工工程において飛散した油分、粉塵または湿気等の異物を金属缶用天板1から取り除くことができる。
【0051】
なお、金属缶用天板1の少なくともフィルム形成領域が補正フィルム15の熱溶着ができる状態である場合等の条件が許す場合には、天板洗浄装置20による洗浄工程若しくは天板洗浄装置20自体を省くことができる。
【0052】
さらにまた、図5に示すように、天板搬送経路上における天板洗浄装置20に対する下流側の位置には、天板乾燥手段としての天板乾燥装置21が配設されている。この天板乾燥装置21は、天板洗浄装置20による洗浄後の金属缶用天板1に対して、それぞれ熱風によって乾燥を行うようになっている。この天板乾燥装置21は、公知の熱風発生器を備えたものであってもよい。熱風は金属缶用天板1の上下両面にそれぞれ吹き付けて行うとよい。
【0053】
そして、このような天板乾燥装置21による乾燥工程により、揮発性洗浄液(たとえばエチルアルコール)が蒸発する際に空気中から吸引されて金属缶用天板1上に付着した水分を蒸発させることができる。
【0054】
また、天板乾燥装置21としては、遠赤外線ヒータあるいは近赤外線ヒータ(図示せず)を金属缶用天板1の上下両面側に配置して乾燥するように形成してもよい。
【0055】
なお、天板洗浄装置20を省いた場合には、天板乾燥装置21も省くことができるし、下流側の補正テープの熱溶着を実行する場合の予加熱を施す場合には省かないこととするとよい。
【0056】
また、図5に示すように、天板搬送経路上における天板乾燥装置21に対する下流側の位置には、フィルム供給手段としてのフィルム供給装置23が配設されている。このフィルム供給装置23は、天板乾燥装置21による乾燥後に搬送コンベア18によって天板搬送経路上を搬送された金属缶用天板1に対して、そのフィルム形成領域上への補正フィルム15の供給を行うようになっている。
【0057】
具体的には、フィルム供給装置23は、フィルムカット装置24を有しており、このフィルムカット装置24は、ロール状の補正フィルムを先頭側から順に繰り出しつつ、繰り出された補正フィルムを、フィルム形成領域の面積に対応する所定の長さ(大きさ)に切断加工するようになっている。そして、切断加工後の補正フィルム15は、図5においてP1で示す待機位置に位置されるようになっている。
【0058】
また、図5および図6に示すように、フィルム供給装置23は、フィルムカット装置24によって切断加工された補正フィルム15を待機位置P1から図5においてP2に示す供給位置まで搬送する吸着搬送装置25を有している。図6に示すように、吸着搬送装置25は、サクションパッド26と、このサクションパッド26をシリンダチューブ27の長手方向に沿って往復動させる第1のフィルム供給用エアシリンダ28と、サクションパッド26の姿勢を図6の破線部に示すパッド26の位置との間の90°の角度範囲内で調整可能とされた第2のフィルム供給用エアシリンダ29とを有している。第1のフィルム供給用エアシリンダ28は、公知のロッドレスシリンダであってもよい。また、第2のフィルム供給用エアシリンダ29は、公知の耐熱型オートスイッチ付きの回転シリンダであってもよい。このような吸着搬送装置25は、待機位置P1に位置された補正フィルム15をサクションパッド26によって吸着し、吸着された補正フィルム15を、第1のフィルム供給用エアシリンダ28によってサクションパッド26ごと供給位置P2まで搬送するようになっている。そして、供給位置P2において、第2のフィルム供給用エアシリンダ29により、サクションパッド26をこれに吸着されている補正フィルム15がフィルム形成領域に接触するようにした後に、サクションパッド26の吸着を解除することによって、フィルム形成領域上に補正フィルム15を載置するようになっている。なお、サクションパッド26にスプリングクッションを設けることによって、補正フィルム15をフィルム形成領域上に載置する際のアジャスト性を高めるようにしてもよい。
【0059】
このようにして、フィルム形成領域上への補正フィルム15の供給が行われるようになっている。なお、図5に示すように、吸着搬送装置25による補正フィルム15の搬送方向は、金属缶用天板1の搬送方向に対して約45°の傾きを有しているが、これは、図2に示したような金属缶用天板1の向きに対する補正フィルム15の向きの関係をそのまま反映したものである。すなわち、図2を用いて説明すれば、金属缶用天板1の搬送方向は、図2における下方向となるのに対して、補正フィルム15の搬送方向は、図2における右下方向となる。
【0060】
なお、補正フィルム15の供給後の金属缶用天板1は、搬送コンベア等の不図示の搬送手段によって天板搬送経路上を次工程まで搬送されるようになっている。
【0061】
図5に戻って、天板搬送経路上におけるフィルム供給装置23に対する下流側の位置には、フィルム溶着手段としてのフィルム溶着装置32が配設されている。このフィルム溶着装置32は、フィルム供給装置23による補正フィルム15の供給後の金属缶用天板1に対して、当該補正フィルム15のフィルム形成領域上への熱溶着を行うようになっている。
【0062】
具体的には、図7に示すように、フィルム溶着装置32は、第1の移動手段および第2の移動手段としての第1の溶着用エアシリンダ33を有している。この第1の溶着用エアシリンダ33は、図7における横方向に長尺とされたシリンダチューブ34と、このシリンダチューブ34に対するエアの給排によってシリンダチューブ34の長手方向に往復動可能とされた移動部31とを有している。なお、図5に示すように、第1の溶着用エアシリンダ33のシリンダチューブ34は、前述した第1のフィルム供給用エアシリンダ28のシリンダチューブ27に平行とされている。
【0063】
また、図7に示すように、移動部31には、第1の押圧手段としての第2の溶着用エアシリンダ35と、第2の押圧手段としての第3の溶着用エアシリンダ36とが、図7における横方向に互いに間隔を設けるようにしてボルト等の固定手段によって固定されている。
【0064】
さらに、図7に示すように、第2の溶着用エアシリンダ35におけるシリンダチューブ37の下端部には、第1のヒートローラ取り付け板38が連結されており、この第1のヒートローラ取り付け板38は、第2の溶着用エアシリンダ35によって上下動可能とされている。なお、第1のヒートローラ取り付け板38は、図7の紙面垂直方向に間隔を設けるようにして一対配設されており、これら一対の第1のヒートローラ取り付け板38,38はブラケット構造をなしている。
【0065】
さらにまた、図7に示すように、第3の溶着用エアシリンダ36におけるシリンダチューブ39の下端部には、第2のヒートローラ取り付け板40が連結されており、この第2のヒートローラ取り付け板40は、第3の溶着用エアシリンダ36によって上下動可能とされている。なお、第2のヒートローラ取り付け板40も、図7の紙面垂直方向に間隔を設けるようにして一対配設されており、これら一対の第2のヒートローラ取り付け板40,40はブラケット構造をなしている。
【0066】
そして、一対の第1のヒートローラ取付板38,38の間には、図7乃至図9に示すような第1の加熱ローラとしての第1のヒートローラ41が回転自在に取り付けられている。
【0067】
一方、一対の第2のヒートローラ取付板40,40の間には、図7、図10および図11に示すような第2の加熱ローラとしての第2のヒートローラ42が回転自在に取り付けられている。
【0068】
ここで、まず、第1のヒートローラ41について更に詳述すると、図8および図9に示すように、第1のヒートローラ41は、第1のヒートローラ取り付け板38に回転自在に支持された回転軸43を有している。また、回転軸43の軸方向における中央の所定範囲の部位の外側には、略円筒状のフランジ部44が、回転軸43と一体的に形成されている。さらに、フランジ部44には、その周方向に等間隔を設けて合計3つのヒータ45が埋設されており、このヒータ45には、その発熱温度を調整するための図示しないパイロメータが接続されている。さらにまた、フランジ部44の軸方向における中央の所定範囲の部位の外側には、耐熱性の弾性材料(エラストマー)からなる筒状のフィルム接触部46が、フランジ部44と一体的に形成されている。
【0069】
図8に示すように、フィルム接触部46は、その外径が軸方向に沿って変化するような部分を含む凹凸状の外周面形状を有している。このフィルム接触部46の外周面形状は、天板本体3のフィルム形成領域の面形状にほぼ沿うようなフィルム形成領域の面形状に対応する形状となっている。例えば、図8に示すように、フィルム接触部46の外周面上には、所定の頂角を有する三角形状の一対の凸面部47,47が、軸方向に互いに間隔を設けるようにして形成されているが、これら凸面部47,47の面形状は、図3に示した畝状の各スポット溶接部位11,11の缶内面側の表面の面形状にほぼ沿った当該面形状に対応する面形状となっている。
【0070】
なお、フランジ部44の材料としては、例えば、熱伝導性に優れたアルミニウムを好適な材料として用いることができる。また、フィルム接触部46を構成する弾性材料としては、例えば、耐熱シリコーンゴムを好適な材料として用いることができる。また、ヒータ45の発熱温度(調整温度)としては、フランジ部44およびフィルム接触部46の熱伝導率を考慮した上で、好適な温度を採用するとよい。例えば、フィルム接触部46の外周面の温度が200℃となるような温度(例えば、230℃)を好適な温度として採用することができる。さらに、ヒータ45としては、赤外線ヒータ等の種々の発熱方式のヒータを用いることができる。
【0071】
このような第1のヒートローラ41は、初期状態においては、図7に示すように、第1の溶着用エアシリンダ33によって第1のヒートローラ41の水平移動範囲内における一端部のホームポジションに位置されるようになっている。さらに、初期状態において、第1のヒートローラ41は、第2の溶着用エアシリンダ35によって第1のヒートローラ41の上下方向の移動範囲内における上端部の退避位置に位置されるようになっている。
【0072】
また、第1のヒートローラ41は、金属缶用天板1が、そのフィルム形成領域上の補正フィルム15を第1の溶着用エアシリンダ33の真下に位置させるような所定の熱溶着位置まで搬送されると、第2の溶着用エアシリンダ35によって退避位置から下方向に移動されて補正フィルム15の押圧位置に位置されるようになっている。このとき、金属缶用天板1が熱溶着位置に搬送されたことを、例えば、光センサ等の天板位置検出手段によって検出し、この検出結果に基づいて、前述した制御部が第2の溶着用エアシリンダ35を駆動制御して前記第1のヒートローラ41を押圧位置まで移動させるように構成してもよい。また、押圧位置において、第1のヒートローラ41は、フィルム形成領域上の補正フィルム15における熱溶着進行方向の上流端を押圧した状態になっていてもよく、あるいは、金属缶用天板1における当該補正フィルム15の上流端に上流側において近接する部位を押圧した状態となっていてもよい。
【0073】
さらに、第1のヒートローラ41は、退避位置から押圧位置に移動された後に、この押圧位置において、フィルム接触部46の外周面の温度がヒータ45によって十分な温度(たとえば200℃)となるように所定時間待機させられるようになっている。
【0074】
この所定時間の待機の後、第1のヒートローラ41は、上下方向における位置を押圧位置に維持したまま、第1の溶着用エアシリンダ33によってホームポジションから水平移動範囲内における他端部に向かって所定の移動速度で移動されるようになっている。これにより、加熱状態の第1のヒートローラ41が、そのフィルム接触部46を介して補正フィルム15の上からフィルム形成領域側に押圧された状態で、フィルム形成領域に沿って移動されることになる。
【0075】
以上のように構成された第1のヒートローラ41によれば、フィルム形成領域上の補正フィルム15を、この補正フィルム15に接触したフィルム接触部46の熱によって溶融してフィルム形成領域上に熱溶着することができる。このとき、フィルム接触部46の外周面形状がフィルム形成領域の面形状に対応する形状に形成されているため、補正フィルム15を天板本体3への十分な密着力を持たせた状態に熱溶着することができる。
【0076】
そして、このようにして補正フィルム15の熱溶着を行った後に、第1のヒートローラ41は、第2の溶着用エアシリンダ35によって初期状態と同様の退避位置に戻されるとともに、第1の溶着用エアシリンダ33によって初期状態と同様のホームポジションに戻されるようになっている。
【0077】
なお、前述した押圧位置における第1のヒートローラ41の加圧力としては、例えば、0.2〜0.3〔MPa〕を好適な加圧力として採用することができる。このような加圧力を採用すれば、補正フィルム15を十分な加圧力を以て適切に熱溶着することができるとともに、加圧力が大きすぎることによって金属缶用天板1に後述する天板受け部50(図12、図13参照)による押圧痕が生じることを防止することができる。押圧痕は、金属缶の製品外観を損ねるため、可及的に低減することが望ましい。
【0078】
また、第1のヒートローラ41を補正フィルム15の熱溶着のためにフィルム形成領域に沿って移動させる際の移動速度としては、例えば、50mmの長さの補正フィルム15の熱溶着進行方向の上流端から下流端まで1〜2秒で移動するような十分に遅い速度を、好適な移動速度として採用することができる。
【0079】
次に、第2のヒートローラ42について更に詳述すると、図10および図11に示すように、第2のヒートローラ42は、第1のヒートローラ41と同様に、第2のヒートローラ取り付け板40に回転自在に支持された回転軸43、フランジ部44、ヒータ45およびフィルム接触部49を有している。
【0080】
ただし、第2のヒートローラ42のフィルム接触部49は、第1のヒートローラ41のフィルム接触部46とは異なり、その外径が軸方向に沿って一定とされた平坦な円筒状の外周面形状を有している。
【0081】
このような第2のヒートローラ42は、初期状態においては、図7に示すように、第1の溶着用エアシリンダ33によって第2のヒートローラ42の水平移動範囲内における一端部のホームポジションに位置されるようになっている。さらに、初期状態において、第2のヒートローラ42は、第3の溶着用エアシリンダ36によって第2のヒートローラ42の上下方向の移動範囲内における上端部の退避位置に位置されるようになっている。
【0082】
また、第2のヒートローラ42は、第1のヒートローラ41による補正フィルム15の熱溶着の際に、第1の溶着用エアシリンダ33によって第1のヒートローラ41と一体的に水平移動されるようになっている。ただし、このとき、第2のヒートローラ42の上下方向における移動位置は、退避位置に維持されたままであり、第2のヒートローラ42が熱溶着に関与することはない。
【0083】
さらに、第2のヒートローラ42は、第1のヒートローラ41による補正フィルム15の熱溶着の完了後、第1の溶着用エアシリンダ33によってホームポジションに戻された後に、第3の溶着用エアシリンダ36によって退避位置から下方向に移動されて補正フィルム15の押圧位置に位置されるようになっている。
【0084】
さらにまた、第2のヒートローラ42は、退避位置から押圧位置に移動された後に、この押圧位置において、フィルム接触部49の外周面の温度がヒータ45によって十分な温度(たとえば200℃)となるように所定時間待機させられるようになっている。
【0085】
この所定時間の待機の後、第2のヒートローラ42は、上下方向における位置を押圧位置に維持したまま、第1の溶着用エアシリンダ33によってホームポジションから第2のヒートローラ42の水平移動範囲内における他端部に向かって所定の移動速度で移動されるようになっている。これにより、加熱状態の第2のヒートローラ42が、そのフィルム接触部49を介して補正フィルム15の上からフィルム形成領域側に押圧された状態で、フィルム形成領域に沿って移動されることになる。
【0086】
以上のように構成された第2のヒートローラ42によれば、第1のヒートローラ41によってフィルム形成領域上に熱溶着された補正フィルム15に対して、更に補強的な熱溶着を行って、溶着浮き等の溶着不良部分を可及的に解消することができる。この結果、天板本体3に対する補正フィルム15の密着力を更に高めることができる。
【0087】
その後、第2のヒートローラ42は、第3の溶着用シリンダ36によって退避位置に戻されるとともに、第1の溶着用エアシリンダ33によって再びホームポジションに戻されるようになっている。
【0088】
なお、前述した押圧位置における第2のヒートローラ42の加圧力は、第1のヒートローラ41の加圧力と同様であってもよい。
【0089】
また、第2のヒートローラ42を補正フィルム15の補強的な熱溶着のためにフィルム形成領域に沿って水平移動させる際の移動速度は、第1のヒートローラ41を補正フィルム15の熱溶着のために水平移動させる際の移動速度と同様であってもよい。
【0090】
さらに、フィルム溶着装置32は、天板搬送経路上における第1の溶着用エアシリンダ33に対する鉛直下方位置に、図12および図13に示すような天板受け部50を有している。
【0091】
図12および図13に示すように、天板受け部50は、その中央に位置する座金支承プレート51と、この座金支承プレート51を包囲する天板周縁部支承フレーム52とを有しており、これら座金支承プレート51と天板周縁部支承フレーム52とは、板状の連結プレート53を介して互いに連結されている。座金支承プレート51は、手環用座金7に対応する大きさに形成されているとともに、その表面が、手環用座金7および手環8の形状に対応するような凹凸形状に形成されている。
【0092】
このような天板受け部50は、第1のヒートローラ41による補正フィルム15の熱溶着および第2のヒートローラ42による補強的な熱溶着の際に、その座金支承プレート51によって手環用座金7を下方から支承するようになっている。また、このとき、天板受け部50は、その天板周縁部支承フレーム52によって、金属缶用天板1の周縁部を下方から支承するようになっている。これにより、補正フィルム15を安定的に熱溶着させることができるようになっている。
【0093】
さらにまた、図13に示すように、座金支承プレート51の下部近傍位置には、プレートヒータ54が水平に配設されており、このプレートヒータ54は、補正フィルム15の熱溶着の際に、所定の発熱温度によって、フィルム形成面を下方から加熱するようになっている。これにより、補正フィルム15の熱溶着を補助することができる。なお、プレートヒータ54の発熱温度としては、例えば、80℃を好適な温度として採用することができる。
【0094】
図5に戻って、天板搬送経路上におけるフィルム溶着装置32に対する下流側の位置には、加熱処理手段としての加熱電気炉56が配設されている。この加熱電気炉56は、フィルム溶着装置32による補正フィルム15の熱溶着後に搬送コンベア18によって搬送経路上を搬送された金属缶用天板1に対して、ヒータ等を用いた加熱処理を行うようになっている。これにより、補正フィルム15の天板本体3への密着力を高めることができる。加熱電気炉56においては、図14に示すように、搬送コンベア60によって金属缶用天板1を立てた状態で搬送するように形成されている。この搬送コンベア60は、天板搬送経路に沿って平行に設けられた一対のチエン61の各ピンリンクプレート62の間に支え棒63をかけ渡して形成されており、各支え棒63の二股の間に金属缶用天板1を挿入して搬送する。搬送コンベア60に対する金属缶用天板1の挿入と取り出しは、搬送コンベア60の両端部において各支え棒63が広角に開いている個所において行われる。
【0095】
なお、この加熱電気炉56の上流側にハロゲンヒータ(図示せず)を設けて予め加熱するようにしてもよい。
【0096】
また、図5に示すように、加熱電気炉56以後の搬送経路は、金属缶用天板1をマグネットの磁力を介して吊り下げた状態(立てた状態)で下流側に搬送するハンガースタッカ58によって構成されている。
【0097】
さらに、図5に示すように、天板搬送経路上における加熱電気炉56に対する下流側の位置には、天板冷却手段としての冷却ブロワ57が配設されている。この冷却ブロワ57は、加熱電気炉56による加熱処理後に天板搬送経路上を搬送された金属缶用天板1に対して、送風による冷却処理を行うようになっている。
【0098】
そして、冷却後の金属缶用天板1は、図示しない整理箱(例えば、内部に縦方向の仕切りを並設した整理箱)に搬送されて各仕切り間に立てた状態に並列収容されることになる。
【0099】
なお、このような一連のライン上の各処理工程を実施する各装置19,20,21,23,32,56,57の動作は、前述した制御部によって電気的に制御されるようになっている。また、各処理工程においては、前記制御部の制御により、各処理工程に要する単位処理時間だけ金属缶用天板1の搬送が一時的に停止されることがあることは勿論である。
【0100】
以上のように構成された補正装置17によれば、本発明に係る金属缶用天板の補正方法を実施することができる。
【0101】
すなわち、補正装置17によれば、天板供給装置19によって天板搬送経路上に供給されて、天板洗浄装置20による洗浄工程および天板乾燥装置21による乾燥工程を順次経た後にフィルム供給位置に搬送された金属缶用天板1に対して、フィルム供給装置23によって、フィルム形成領域に対応する大きさに切断加工された補正フィルム15のフィルム形成領域上への配置を行うことができる。
【0102】
次いで、補正フィルム15の供給後に熱溶着位置に搬送された金属缶用天板1に対して、フィルム溶着装置32により、フィルム形成領域の面形状に対応する外周面形状を有する第1のヒートローラ41を、フィルム形成面上の補正フィルム15の上からフィルム形成領域側に押圧させながらフィルム形成領域に沿って移動させることによって、フィルム形成領域上に補正フィルム15を熱溶着することができる。
【0103】
さらに、第1のヒートローラ41による補正フィルム15の熱溶着後に、第2のヒートローラ42を、当該補正フィルム15の上からフィルム形成領域側に押圧させながらフィルム形成領域に沿って移動させることにより、補正フィルム15の天板本体3への密着力を高めることができる。
【0104】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上述べたように、本発明によれば、液体塗料に比べて厚みおよび厚みの安定性・均一性に優れた補正フィルム15を、フィルム形成領域の面形状に対応する外周面形状を有する第1のヒートローラ41によって十分な密着性を持たせてフィルム形成領域上に熱溶着することができるため、損傷箇所14を適切に補正することができ、ひいては、缶内面における損傷箇所14に対応する部位の腐食を確実に抑制することができる。ここで、従来の塗装ガンを用いた補正方法においては、塗装膜の膜厚が20μm程度に止まっていたのに対して、本発明によれば、80μm程度の十分な厚みの補正フィルム15を用いて損傷箇所14を適切に補正することができる。
【0106】
また、本発明によれば、補正フィルム15の熱溶着の際に、焼き付け塗装の場合のように溶剤等の有害物質が飛散することはないため、環境汚染を防止することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 金属缶用天板
3 天板本体
5 ラミネート層
7 手環用座金
8 手環
14 損傷箇所
15 補正フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向における少なくとも一方の表面がラミネート層によって形成されたラミネート金属板からなる天板本体と、
この天板本体の前記厚み方向における他方の表面にスポット溶接された手環取り付け用の座金と、
この座金と前記天板本体との間に基端部を介して起倒自在に取り付けられた手環と
を備えた金属缶用天板において、
前記天板本体の前記一方の表面上に、前記スポット溶接による前記ラミネート層の損傷箇所を補正するための補正フィルムが、前記損傷箇所を含む所定範囲のフィルム形成領域に亘って形成され、
前記補正フィルムは、前記フィルム形成領域の面形状に対応する外周面形状を有する加熱ローラにより、前記フィルム形成領域上に熱溶着されてなること
を特徴とする金属缶用天板。
【請求項2】
前記補正フィルムは、前記ラミネート層と同一の樹脂材料からなること
を特徴とする請求項1に記載の金属缶用天板。
【請求項3】
厚み方向における少なくとも一方の表面がラミネート層によって形成されたラミネート金属板からなる天板本体と、この天板本体の前記厚み方向における他方の表面にスポット溶接された手環取り付け用の座金と、この座金と前記天板本体との間に基端部を介して起倒自在に取り付けられた手環とを備えた金属缶用天板に対して、前記スポット溶接による前記ラミネート層の損傷箇所の補正を行うための金属缶用天板の補正方法において、
前記天板本体の前記一方の表面における前記損傷箇所を含む所定範囲のフィルム形成領域上に、このフィルム形成領域に対応する大きさの補正フィルムを配置した状態で、前記フィルム形成領域の面形状に対応する外周面形状を有する加熱ローラを、前記補正フィルムの上から前記フィルム形成領域側に押圧させながら前記フィルム形成領域に沿って相対移動させることにより、前記フィルム形成領域上に前記補正フィルムを熱溶着すること
を特徴とする金属缶用天板の補正方法。
【請求項4】
前記天板本体における所定範囲の部位は、前記座金との間で前記スポット溶接における複数の溶接点を形成して前記座金をスポット溶接すべきスポット溶接部位とされ、
このスポット溶接部位は、その前記厚み方向における他方の表面が、前記厚み方向における他方の側に突出されるとともに、その前記厚み方向における一方の表面が、前記厚み方向における他方の側に凹入された形状に形成され、
前記補正フィルムの熱溶着の際に、前記加熱ローラとして、その外周面の一部が前記スポット溶接部位の前記一方の表面に対応するように突出された加熱ローラを用いること
を特徴とする請求項3に記載の金属缶用天板の補正方法。
【請求項5】
前記加熱ローラによる前記補正フィルムの溶着後に、第2の加熱ローラを、前記補正フィルムの上から前記フィルム形成領域側に押圧させながら前記フィルム形成領域に沿って相対移動させることにより、前記補正フィルムの前記天板本体への密着力を高めること
を特徴とする請求項3または4に記載の金属缶用天板の補正方法。
【請求項6】
厚み方向における少なくとも一方の表面がラミネート層によって形成されたラミネート金属板からなる天板本体と、この天板本体の前記厚み方向における他方の表面にスポット溶接された手環取り付け用の座金と、この座金と前記天板本体との間に基端部を介して起倒自在に取り付けられた手環とを備えた金属缶用天板に対して、前記スポット溶接による前記ラミネート層の損傷箇所の補正を行う金属缶用天板の補正装置において、
前記金属缶用天板を所定の搬送経路にしたがって搬送する天板搬送手段と、
前記搬送経路上に複数の前記金属缶用天板を一枚ずつ順次供給可能とされた天板供給手段と、
前記搬送経路上における前記天板供給手段に対する下流側の位置に配設され、前記金属缶用天板に対して加熱を行う天板乾燥手段と、
前記搬送経路上における前記天板乾燥手段に対する下流側の位置に配設され、前記天板本体の前記一方の表面における前記損傷箇所を含む所定範囲のフィルム形成領域に対応する大きさに切断加工された補正フィルムを、前記天板乾燥手段による乾燥後の前記金属缶用天板の前記フィルム形成領域上に供給するフィルム供給手段と、
前記搬送経路上における前記フィルム供給手段に対する下流側の位置に配設され、前記フィルム供給手段による前記補正フィルムの供給後の前記金属缶用天板に対して、当該補正フィルムの前記フィルム形成領域上への熱溶着を行うフィルム溶着手段と、
前記搬送経路上における前記フィルム溶着手段に対する下流側の位置に配設され、前記フィルム溶着手段による前記補正フィルムの熱溶着後の前記金属缶用天板に対して、前記補正フィルムの前記天板本体への密着力を高めるための加熱処理を行う加熱処理手段と、
前記搬送経路上における前記加熱処理手段に対する下流側の位置に配設され、前記加熱処理手段による前記加熱処理後の前記金属缶用天板を冷却する天板冷却手段と
を備え、
前記フィルム溶着手段は、
前記フィルム形成領域の面形状に対応する外周面形状であって、外周面の一部が、前記フィルム形成領域のうちの前記スポット溶接における複数の溶接点に対応する所定範囲の領域の面形状に対応するように突出された外周面形状を有する第1の加熱ローラと、
この第1の加熱ローラを前記フィルム形成領域上に供給された前記補正フィルムの上から前記フィルム形成領域側に押圧させる第1の押圧手段と、
この第1の押圧手段による押圧状態のまま前記第1の加熱ローラを前記フィルム形成領域に沿って相対移動させる第1の移動手段と、
第2の加熱ローラと、
この第2の加熱ローラを、前記第1の加熱ローラによる前記補正フィルムの熱溶着後に、当該熱溶着された前記補正フィルムの上から前記フィルム形成領域側に押圧さる第2の押圧手段と、
この第2の押圧手段による押圧状態のまま前記第2の加熱ローラを前記フィルム形成領域に沿って相対移動させる第2の移動手段と
を備えたことを特徴とする金属缶用天板の補正装置。
【請求項7】
厚み方向における少なくとも一方の表面がラミネート層によって形成されたラミネート金属板からなる天板本体と、この天板本体の前記厚み方向における他方の表面にスポット溶接された手環取り付け用の座金と、この座金と前記天板本体との間に基端部を介して起倒自在に取り付けられた手環とを備えた金属缶用天板に対して、前記スポット溶接による前記ラミネート層の損傷箇所の補正を行う金属缶用天板の補正装置において、
前記金属缶用天板を所定の搬送経路にしたがって搬送する天板搬送手段と、
前記搬送経路上に複数の前記金属缶用天板を一枚ずつ順次供給可能とされた天板供給手段と、
前記搬送経路上における前記天板供給手段に対する下流側の位置に配設され、前記天板供給手段によって前記搬送経路上に供給された前記金属缶用天板に対して、洗浄液を用いた拭き取り洗浄を行う天板洗浄手段と、
前記搬送経路上における前記天板洗浄手段に対する下流側の位置に配設され、前記天板洗浄手段による洗浄後の前記金属缶用天板に対して熱風による乾燥を行う天板乾燥手段と、
前記搬送経路上における前記天板乾燥手段に対する下流側の位置に配設され、前記天板本体の前記一方の表面における前記損傷箇所を含む所定範囲のフィルム形成領域に対応する大きさに切断加工された補正フィルムを、前記天板乾燥手段による乾燥後の前記金属缶用天板の前記フィルム形成領域上に供給するフィルム供給手段と、
前記搬送経路上における前記フィルム供給手段に対する下流側の位置に配設され、前記フィルム供給手段による前記補正フィルムの供給後の前記金属缶用天板に対して、当該補正フィルムの前記フィルム形成領域上への熱溶着を行うフィルム溶着手段と、
前記搬送経路上における前記フィルム溶着手段に対する下流側の位置に配設され、前記フィルム溶着手段による前記補正フィルムの熱溶着後の前記金属缶用天板に対して、前記補正フィルムの前記天板本体への密着力を高めるための加熱処理を行う加熱処理手段と、
前記搬送経路上における前記加熱処理手段に対する下流側の位置に配設され、前記加熱処理手段による前記加熱処理後の前記金属缶用天板を冷却する天板冷却手段と
を備え、
前記フィルム溶着手段は、
前記フィルム形成領域の面形状に対応する外周面形状であって、外周面の一部が、前記フィルム形成領域のうちの前記スポット溶接における複数の溶接点に対応する所定範囲の領域の面形状に対応するように突出された外周面形状を有する第1の加熱ローラと、
この第1の加熱ローラを前記フィルム形成領域上に供給された前記補正フィルムの上から前記フィルム形成領域側に押圧させる第1の押圧手段と、
この第1の押圧手段による押圧状態のまま前記第1の加熱ローラを前記フィルム形成領域に沿って相対移動させる第1の移動手段と、
第2の加熱ローラと、
この第2の加熱ローラを、前記第1の加熱ローラによる前記補正フィルムの熱溶着後に、当該熱溶着された前記補正フィルムの上から前記フィルム形成領域側に押圧さる第2の押圧手段と、
この第2の押圧手段による押圧状態のまま前記第2の加熱ローラを前記フィルム形成領域に沿って相対移動させる第2の移動手段と
を備えたことを特徴とする金属缶用天板の補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−116458(P2011−116458A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114330(P2010−114330)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【特許番号】特許第4631039号(P4631039)
【特許公報発行日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(595177545)三興製罐株式会社 (1)
【出願人】(509307059)
【Fターム(参考)】