説明

金属蒸着層保護コート剤及び積層体

【課題】 金属蒸着基材の金属蒸着層に、耐アルカリ性、耐ボイル性、耐レトルト性を付与することができる保護コート剤を提供することにある。また、金属蒸着基材(a)の金属蒸着層面に金属蒸着層保護コート剤を塗布してなる耐アルカリ性、耐ボイル性、耐レトルト性に優れた積層体を提供する。
【解決手段】 酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、アミノ系シランカップリング剤(B)および水性媒体を含有し、(B)の含有量が、(A)100質量部に対して、0.2〜2質量部であることを特徴とする金属蒸着層保護コート剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属蒸着基材における金属蒸着層を保護するためのコート剤及び該コート剤を金属蒸着基材の金属蒸着層面に塗布してなる積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂などで形成された基材上に、アルミニウム、金、銀、白金などの金属を蒸着してなる金属蒸着基材は、自動車、家電、食品、衣類などに使用される各種の構造物などに広く用いられている。特にアルミニウムを蒸着した金属蒸着基材は、安価であるため、様々な用途に使用されている。
基材上の金属蒸着層には、その用途によって様々な耐性が要求されることがあり、金属蒸着層を保護するために、アクリル系樹脂、変性エポキシ樹脂、変性エポキシ・アミノ樹脂などを金属蒸着層面に塗布することが知られている(特許文献1)。しかしながら、金属蒸着層面にこれらの樹脂を保護コート層として塗布しても、特にアルミニウムを蒸着した層では、耐アルカリ性、耐ボイル性、耐レトルト性などの耐性を充分に向上させることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−324541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は上記の問題点を解決し、金属蒸着基材の金属蒸着層に、耐アルカリ性、耐ボイル性、耐レトルト性を付与することができる保護コート剤を提供することにある。また、金属蒸着基材(a)の金属蒸着層面に金属蒸着層保護コート剤を塗布してなる耐アルカリ性、耐ボイル性、耐レトルト性に優れた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、酸変性ポリオレフィン樹脂とアミノ系シランカップリング剤とを含有する水性の保護コート剤を金属蒸着層面に塗布することにより、金属蒸着層の耐アルカリ性、耐ボイル性、耐レトルト性を向上させることができ、さらに、アルカリ性や酸性などの過酷な条件下においても、耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性などに優れた性能を発現することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、アミノ系シランカップリング剤(B)および水性媒体を含有し、(B)の含有量が、(A)100質量部に対して、0.2〜2質量部であることを特徴とする金属蒸着層保護コート剤。
(2)アミノ系シランカップリング剤(B)が、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランであることを特徴とする(1)記載の金属蒸着層保護コート剤。
(3)基材に金属を蒸着させた金属蒸着基材(a)の金属蒸着層面に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とアミノ系シランカップリング剤(B)を含有する樹脂組成物の層(b)を設けてなる積層体。
(4)基材に金属を蒸着させた金属蒸着基材(a)の金属蒸着層面に、(1)または(2)記載の金属蒸着層保護コート剤を塗布し、水性媒体を除去して得られるものである(3)記載の積層体。
(5)金属蒸着基材(a)における基材が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンを用いて形成されたものである(3)又は(4)記載の積層体。
(6)金属蒸着基材(a)における金属が、アルミニウムである(3)〜(5)のいずれかに記載の積層体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の金属蒸着層保護コート剤は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とアミノ系シランカップリング剤(B)を適量含有しているため、金属蒸着層面との密着性に優れ、本発明の金属蒸着層保護コート剤から水性媒体を除去してなる樹脂組成物の層(b)(塗膜)は、耐アルカリ性、耐ボイル性、耐レトルト性、耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性に優れる。さらに得られる塗膜は透明性が高いため、金属蒸着層面の金属光沢による意匠性を損なうことがない。
本発明の積層体は、金属蒸着基材(a)の金属蒸着層面に本発明の金属蒸着層保護コート剤をコートしてなるものであるため、金属蒸着基材(a)と樹脂組成物の層(b)との密着性に優れ、耐アルカリ性、耐ボイル性、耐レトルト性、耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性に優れ、かつ金属光沢による意匠性も損なわないものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の金属蒸着層保護コート剤(以下、保護コート剤と略することがある)は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、アミノ系シランカップリング剤(B)と、水性媒体とを含有するものであって、水性の保護コート剤である。そして、本発明の保護コート剤は金属蒸着層面に塗布(コート)され、水性媒体が除去されると、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とアミノ系シランカップリング剤(B)を含有する樹脂組成物の層(b)(塗膜)が形成される。
【0008】
本発明の保護コート剤においては、ポリオレフィン樹脂を使用し、酸変性ポリオレフィン樹脂であることが必要である。酸変性されていないポリオレフィン樹脂では、水性媒体に樹脂が十分に分散せず、水性の保護コート剤を得ることが困難となる。
【0009】
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、不飽和カルボン酸成分とオレフィン成分とを含有することが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂(A)における不飽和カルボン酸成分の含有量は、金属蒸着層面との密着性の点から、0.1〜25質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1〜8質量%がさらに好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。
【0010】
不飽和カルボン酸成分を導入するための、不飽和カルボン酸やその無水物としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0011】
また、不飽和カルボン酸成分は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
【0012】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)におけるオレフィン成分の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、さらには80質量%以上であることが好ましい。オレフィン成分の含有量が50質量%未満では、密着性等のポリオレフィン樹脂由来の特性が失われてしまう。
オレフィン成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のアルケンや、ノルボルネンのようなシクロアルケンが例示され、これらの混合物を用いることもできる。中でも、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが好ましく、この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0013】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、金属蒸着層面との密着性を向上させる理由から、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有していることが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂(A)における(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、0.5〜40質量%であることが好ましく、1〜35質量%であることがより好ましく、2〜30質量%であることがさらに好ましく、3〜25質量%であることが特に好ましく、5〜25質量%であることが最も好ましい。この成分の含有量が0.5質量%未満では、金属蒸着層面との密着性を向上させることが困難となり、また、40質量%を超えると、オレフィン樹脂由来の性質が失われ、金属蒸着層面との密着性が低下するおそれがある。
【0014】
(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、金属蒸着層との密着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。
【0015】
また、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、他の成分を10質量%以下程度含有していてもよい。他の成分としては、ジエン類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、一酸化炭素、二酸化硫黄などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。
【0016】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)としては、たとえば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸−無水マレイン酸共重合体、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、酸変性エチレン−プロピレン樹脂、酸変性エチレン−ブテン樹脂、酸変性プロピレン−ブテン樹脂、酸変性エチレン−プロピレン−ブテン樹脂、あるいはこれらの酸変性樹脂にさらにアクリル酸エステル等でアクリル変性したもの等が挙げられる。さらに、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、5〜40質量%の範囲で塩素化されていてもよい。
【0017】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.01〜5000g/10分であることが好ましく、中でも0.1〜1000g/10分であることが好ましく、より好ましくは1〜500g/10分、さらに好ましくは2〜300g/10分、特に好ましくは2〜200g/10分である。酸変性ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレートが0.01g/10分未満では、金属蒸着層面との密着性が低下しやすい。一方、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレートが5000g/10分を超えると、塗膜は硬くてもろくなり、金属蒸着層面との密着性が低下しやすくなる。
【0018】
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂(A)としては、アルケマ社製のHX−8290、TX−8030、HX−8210などが挙げられる。
【0019】
そして、本発明の保護コート剤は、アミノ系シランカップリング剤(B)を含有することが必要である。アミノ系シランカップリング剤(B)を含有することにより、本発明の保護コート剤と金属蒸着層面との密着性が向上し、保護コート剤を塗布して得られる塗膜は、耐ボイル性、耐レトルト性、耐アルカリボイル性、耐酢酸ボイル性、耐酢酸レトルト性に優れるものとなる。中でも耐アルカリボイル性の向上効果が顕著である。このため、本発明の保護コート剤を塗布した金属蒸着層面は、耐ボイル性、耐レトルト性、耐アルカリボイル性、耐酢酸ボイル性、耐酢酸レトルト性が向上したものとなる。
【0020】
本発明の保護コート剤におけるアミノ系シランカップリング剤(B)の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して、0.2〜2質量部であることが必要であり、0.2〜1.5質量部であることが好ましく、0.5〜1質量部であることが特に好ましい。アミノ系シランカップリング剤(B)の含有量が0.2質量部未満の場合は、上記したようなアミノ系シランカップリング剤(B)を含有することによる効果を奏することができない。一方、アミノ系シランカップリング剤(B)の含有量が2質量部よりも多い場合、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と反応するアミノ系シランカップリング剤(B)の量が過剰に存在することにより、本発明の保護コート剤と金属蒸着層面との密着性が低下し、保護コート剤を塗布して得られる塗膜は、耐アルカリ性、耐ボイル性、耐レトルト性、耐アルカリボイル性に劣るものとなる。
【0021】
本発明において、アミノ系シランカップリング剤(B)として用いることのできる化合物としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルエトキシシランを挙げることができ、耐酢酸ボイル性、耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性に優れることから、中でもN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましい。
【0022】
アミノ系シランカップリング剤の市販品としては、信越化学工業社製シランカップリング剤シリーズなどが挙げられる。より具体的には、水溶性タイプの「KBM−602」、「KBM−603」、「KBE−603」、「KBM−903」、「KBE−903」などが挙げられる。
【0023】
本発明の保護コート剤は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とアミノ系シランカップリング剤(B)と水性媒体とを含有する。本発明における水性媒体とは、水または、水と有機溶媒との混合液をいう。本発明においては、環境への影響、作業者や作業環境への安全性を考慮して水性媒体を用いるものである。
【0024】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性化を促進し、分散粒子径を小さくするために、水性媒体としては水と有機溶媒との混合液を用いることが好ましい。使用する有機溶媒の量は、水性媒体中の40質量%以下が好ましく、1〜40質量%であることがより好ましく、2〜35質量%がさらに好ましく、3〜30質量%が特に好ましい。有機溶媒の量が40質量%を超える場合には、実質的に水性媒体とはみなせなくなり、使用する有機溶媒によっては水性分散体の安定性が低下してしまう場合がある。なお、水性化の際に添加した有機溶媒は、ストリッピングと呼ばれる脱溶剤操作で系外へ留去させて適度に減量してもよく、有機溶媒量を低くしても、特に性能面での影響はない。
【0025】
本発明において使用される有機溶媒としては、沸点が30〜250℃のものが好ましく、50〜200℃のものが特に好ましい。これらの有機溶媒は2種以上を混合して使用してもよい。なお、有機溶媒の沸点が30℃未満の場合は、樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化の効率が十分に高まらない場合がある。沸点が250℃を超える有機溶媒は塗布した後に塗膜から乾燥によって飛散させることが困難であり、塗膜の耐水性が低下する場合がある。
【0026】
上記の有機溶媒の中でも、樹脂の水性化促進に効果が高く、しかも水性媒体中から有機溶媒を除去し易いという点から、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、低温乾燥性の点からエタノール、n−プロパノール、イソプロパノールが特に好ましい。
【0027】
また、本発明における水性媒体中には、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を水性化する際に添加される水溶性の塩基性化合物を含む場合もある。
つまり、本発明の保護コート剤において、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基は、塩基性化合物によって中和されていることが好ましい。中和によって生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に安定性が付与される。水性化の際に用いる塩基性化合物はカルボキシル基を中和できるものであればよい。従って、このような目的で添加される塩基性化合物は、水性化助剤といえるが、本発明の効果を損なわないためには塩基性化合物は揮発性のものを用いることが好ましい。
【0028】
水溶性の塩基性化合物としては、塗膜形成時に揮発するアンモニア又は有機アミン化合物が塗膜の耐水性の面から好ましく、中でも沸点が30〜250℃、さらには50〜200℃の有機アミン化合物が好ましい。沸点が30℃未満の場合は、樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化が完全に進行しない場合がある。沸点が250℃を超えると樹脂塗膜から乾燥によって塩基性化合物を飛散させることが困難になり、塗膜の耐水性が低下する場合がある。
【0029】
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。
【0030】
塩基性化合物の添加量は酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基に対して0.5〜3.0倍当量であることが好ましく、0.8〜2.5倍当量がより好ましく、1.01〜2.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、3.0倍当量を超えると塗膜形成時の乾燥時間を長くする必要があり、塗膜が着色する場合がある。
【0031】
本発明の保護コート剤における酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とアミノ系シランカップリング剤(B)の含有量((A)と(B)の合計量)は、成膜条件、目的とする塗膜厚さや要求される耐性等に応じて適宜選択され、特に限定されるものではない。保護コート剤の粘性を適度に保ち、かつ良好な塗膜形成能を発現させる点から、1〜60質量%であることが好ましく、3〜55質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることがさらに好ましく、5〜45質量%であることが特に好ましい。
【0032】
次に、本発明の保護コート剤の製造方法を説明する。
本発明の保護コート剤の製造方法としては、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とアミノ系シランカップリング剤(B)とを水性媒体中に均一に分散または溶解することができる方法であれば、特に限定されるものではない。たとえば、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体とアミノ系シランカップリング剤(B)の液状物とを混合し、さらに必要に応じて水または有機溶媒などを添加する方法が挙げられる。酸変性ポリオレフィン樹脂(A)やアミノ系シランカップリング剤(B)を水性分散体とする方法としては、これらの成分を、水性媒体、塩基性化合物とともに加熱、攪拌する方法が挙げられる。
【0033】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体としては、三井化学社製のケミパールSA−100、ケミパールS−75N、日本製紙社製のスーパークロンE−723などを用いることができる。
【0034】
また、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とアミノ系シランカップリング剤(B)の各原料樹脂を混合した後、水性媒体と混合して水性分散化または溶解させる方法も挙げられる。
いずれの製法においても、工程後や工程中に、水や有機溶媒を留去したり、水や有機溶媒により希釈することによって任意に濃度調整を行うことができる。
【0035】
本発明の保護コート剤中には、乳化剤あるいは保護コロイド作用を有する化合物を実質的に含有しないことが性能面、衛生面から好ましい。
ここで、「乳化剤あるいは保護コロイド作用を有する化合物を実質的に含有しない」とは、水性媒体と混合して水性分散化させる際に、水性化促進や水性分散体の安定化の目的で積極的にこれらの不揮発性の薬剤や化合物を系に添加せずに、結果的にこれらを含有しないことを意味し、添加量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で樹脂成分に対して0.1質量%未満添加しても差し支えない。
【0036】
本発明の保護コート剤は上述したような製造方法を採用することで、乳化剤成分や保護コロイド作用を有する化合物等の不揮発性水性分散化助剤を含有しなくとも、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)やアミノ系シランカップリング剤(B)が良好に分散された(粒子径が微細な)水性分散体を得ることができる。
【0037】
本発明で言う乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
保護コロイドを有する化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
【0038】
また、本発明の保護コート剤は、必要に応じて、架橋剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤を含有していてもよい。
【0039】
さらに、本発明の保護コート剤は、必要に応じて、他の重合体を含有していてもよい。例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、フェノール樹脂が挙げられ、2種以上使用してもよい。添加時期は特に限定されず、たとえば、上記重合体の液状物を適宜添加すればよい。
【0040】
次に、本発明の積層体について説明する。本発明の積層体は、基材に金属を蒸着させた金属蒸着基材(a)の金属蒸着層面に、上記した酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とアミノ系シランカップリング剤(B)を含有する樹脂組成物の層(b)を形成してなるものである。本発明の積層体は、中でも本発明の保護コート剤を塗布し、保護コート剤中の水性媒体を除去することによって、樹脂組成物の層(b)を設けたものであることが好ましい。
【0041】
金属蒸着基材(a)における基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂や、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂や、ポリスチレン、ABS等のスチレン系樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂や金属を用いて形成されたものや、紙、糸等を用いることができる。中でも成形性と耐熱性の点からポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンを用いて形成されたものであることが好ましい。さらには、フィルム状のものであることが好ましい。
【0042】
金属蒸着基材(a)の厚さは特に限定されるものではないが、通常0.5〜1000μm、好ましくは1〜500μm、より好ましくは1〜100μm、特に好ましくは1〜50μmである。金属蒸着基材(a)の基材が上記したような熱可塑性樹脂からなるフィルム状の場合、ヒートシール性を十分高めるためには、厚さは0.1μm以上であることが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましく、0.2〜8μmがさらに好ましく、0.3〜7μmが特に好ましい。
【0043】
金属蒸着基材(a)における蒸着させる金属としては、特に限定されないが、金、銀、銅、鉄、真鍮、アルミニウム、アルミナ、クロム、ニッケル、錫、ステンレスを用いることができる。成形性、価格面の点からアルミニウムまたは銀を使用することが好ましい。また、2種類以上の金属を重ねて基材に蒸着してもよい。例えば、アルミニウム蒸着層の上にさらに銀を蒸着することによって、アルミニウムの抜けをより効果的に抑制することができる。
金属蒸着層の厚さは特に限定されるものではないが、通常0.02〜0.1μm、好ましくは0.02〜0.09μm、より好ましくは0.03〜0.08μm、特に好ましくは0.03〜0.07μmである。蒸着方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0044】
また、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とアミノ系シランカップリング剤(B)を含有する樹脂組成物の層(b)の厚さや保護コート剤の塗布量も特に限定されるものではなく、金属蒸着基材(a)の種類や用途によって適宜、選択すればよい。
【0045】
本発明の積層体は、バリアフィルムやめっき調鏡面シート、金銀糸、反射板、反射ワッペンなどとして使用することができる。めっき調鏡面シートは、その金属調の意匠性により、様々な用途に好適に使用できる。たとえば、エンブレム、フロントグリル、ドアノブ、スイッチ、ボタン類のような自動車用内外装部品、看板、展示材、パーティションのような建材、コンピュータ、楽器、家電、ゲーム機などの本体やカバーなどが挙げられる。反射板、反射ワッペンは、道路標識や高輝度反射ベストなどの衣服などに用いられる。
【0046】
本発明の積層体の製造方法は、上記したように本発明の保護コート剤を金属蒸着基材(a)の金属蒸着層面に塗布し、その後保護コート剤中の水性媒体を除去する方法を採用することが好ましい。
本発明の保護コート剤を金属蒸着基材(a)の金属蒸着層面に塗布する方法は特に限定されるものではないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が採用できる。
保護コート剤中の水性媒体を除去するための方法としては、塗布した金属蒸着層面を乾燥させる方法が好ましく、温度100〜180℃、時間10秒〜10分の条件で乾燥させることが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。なお、各種の特性値、評価方法については以下のように測定または評価を行った。
【0048】
1.保護コート剤の特性
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の構成
オルトジクロロベンゼン(d)中、120℃にてH−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレート
JIS 6730記載の方法(190℃、2160g荷重)で測定した。
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の融点
DSC(Perkin Elmer社製DSC−7)を用いて昇温速度10℃/分で測定した値である。
(4)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)水性分散体中の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の固形分濃度
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
(5)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の平均粒子径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用い、数平均粒子径(mn)、重量平均粒子径(mw)を求めた。
【0049】
2.塗膜(樹脂組成物の層(b))の特性
以下の評価においては、金属蒸着基材(a)として、基材にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、金属にアルミニウムを用いたアルミニウム蒸着PETフィルム(尾池工業社製、エコモールド、厚み12μm)を用いた。そして、アルミニウム蒸着PETフィルムのアルミニウム蒸着面に、得られた保護コート剤を乾燥後の塗膜の厚みが1μmになるようにマイヤーバーを用いて塗布した後、100℃で2分間乾燥させて水性媒体を除去し、塗膜の厚みが1μmである積層フィルムを得た。この積層フィルムを用いて下記の性能を評価した。
(1)テープ剥離性
得られた積層フィルムを室温で1日放置後、塗布面にセロハンテープ(ニチバン社製TF−12)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の剥がれの程度を目視にて、下記の3段階で評価した。
○:全く剥がれなし。
△:一部、剥がれた。
×:全て剥がれた。
(2)耐ブロッキング性
得られた積層フィルムを2枚用意し、保護コート剤の塗布面同士を重ね合わせた状態で、0.1MPaの負荷をかけ、30℃、65%RHの雰囲気下で24時間放置後、その耐ブロッキング性を下記の3段階で評価した。
○:軽く持ち上げる程度で剥離する。
△:引っ張ることで剥離する。
×:塗膜の界面あるいは凝集剥離が認められる。
(3)塗膜の透明性
得られた積層フィルムの保護コート剤塗布面の状態を目視にて下記の3段階で評価した。
○:塗膜は透明であり、塗膜を通して蒸着面が鏡面状に見える。
△:部分的に塗膜が白濁している。
×:塗膜は白濁しており、塗膜を通して蒸着面が曇って見える。
(4)耐アルカリ性
得られた積層フィルムを、40℃の5%水酸化ナトリウム水溶液中に24時間浸漬し、金属蒸着層上の塗膜の状態を目視にて下記の3段階で評価した。
○:変化なし。
△:塗膜の一部に剥がれが見られるか又は白色になっている。
×:塗膜のすべてが剥がれるか又は白色になっている。
(5)耐酢酸ボイル性
得られた積層フィルムを、98℃の1%酢酸水溶液中に2時間浸漬し、金属蒸着層上の塗膜の状態を目視にて下記の3段階で評価した。
○:変化なし。
△:塗膜の一部に剥がれが見られるか又は白色になっている。
×:塗膜のすべてが剥がれるか又は白色になっている。
(6)耐ボイル性
得られた積層フィルムを、98℃の熱水中に2時間浸漬し、金属蒸着層上の塗膜の状態を目視にて下記の3段階で評価した。
○:変化なし。
△:塗膜の一部に剥がれが見られるか又は白色になっている。
×:塗膜のすべてが剥がれるか又は白色になっている。
(7)耐レトルト性
得られた積層フィルムと水とを密閉金属容器に入れて130℃のオイルバスに1時間浸漬し、金属蒸着層上の塗膜の状態を目視にて下記の3段階で評価した。
○:変化なし。
△:塗膜の一部に剥がれが見られるか又は白色になっている。
×:塗膜のすべてが剥がれるか又は白色になっている。
(8)耐アルカリボイル性
得られた積層フィルムを98℃の5%水酸化ナトリウム水溶液中に6時間浸漬し、金属蒸着層上の塗膜の状態を目視にて下記の3段階で評価した。
○:変化なし。
△:塗膜の一部に剥がれが見られるか又は白色になっている。
×:塗膜のすべてが剥がれるか又は白色になっている。
(9)耐酢酸レトルト性
得られた積層フィルムと1%酢酸水溶液とを密閉金属容器に入れて130℃のオイルバスに1時間浸漬し、金属蒸着層上の塗膜の状態を目視にて下記の3段階で評価した。
○:変化なし。
△:塗膜の一部に剥がれが見られるか又は白色になっている。
×:塗膜のすべてが剥がれるか又は白色になっている。
【0050】
実施例及び比較例で使用した下記に示す酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の組成を表1に示す。
酸変性ポリオレフィン樹脂(ア):〔ボンダインHX−8290、アルケマ社製〕
酸変性ポリオレフィン樹脂(イ):〔ボンダインTX−8030、アルケマ社製〕
酸変性ポリオレフィン樹脂(ウ):〔ボンダインHX−8210、アルケマ社製〕
【0051】
【表1】

【0052】
〔酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体E−1の製造〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1Lガラス容器を備えた撹拌機を用いて、125.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂(ア)、75.0gのイソプロパノール(以下、IPA)、7.0gのトリエチルアミン(以下、TEA)および293gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を130℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体E−1を得た。
【0053】
〔酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体E−2の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1Lガラス容器を備えた撹拌機を用いて、100.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂(イ)150.0gのIPA、6.0gのTEAおよび244.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を130℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体E−2を得た。
【0054】
〔酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体E−3の製造〕
酸変性ポリオレフィン樹脂(ウ)を用いた以外は、E−1と同様にして酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体E−3を得た。
【0055】
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体E−1〜E−3の特性値を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
〔シランカップリング剤溶液:S−1〕
アミノ系シランカップリング剤として、信越化学工業社製KBM−602(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、有効成分100%)を用い、これを水に溶解して、シランカップリング剤の有効成分量が1%の溶液とした。
〔シランカップリング剤溶液:S−2〕
アミノ系シアンカップリング剤として、信越化学工業社製KBM−603(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、有効成分100%)を用い、これを水に溶解して、シランカップリング剤の有効成分量が1%の溶液とした。
〔シランカップリング剤溶液:S−3〕
エポキシ系シランカップリング剤として、信越化学工業社製KBM−403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、有効成分100%)を用い、これを水に溶解して、シランカップリング剤の有効成分量が1%の溶液とした。
〔シランカップリング剤溶液:S−4〕
イソシアネート系シランカップリング剤として、信越化学工業社製KBE−9007(3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、有効成分100%)を用い、これをイソプロパノールに溶解し、シランカップリング剤の有効成分量が1%の溶液とした。
【0058】
実施例1
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体E−1とアミノ系シランカップリング剤溶液S−1とを、室温にてメカニカルスターラーで攪拌(100rpm)・混合し、シランカップリング剤(B)の含有量が酸変性ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して0.2質量部となる保護コート剤を得た。また、保護コート剤中の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とシランカップリング剤(B)の含有量((A)と(B)の合計量)は24.0質量%であった。
【0059】
実施例2〜24、比較例1〜15
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体とシランカップリング剤溶液の種類、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とシランカップリング剤(B)の含有比〔(A)/(B)(質量部)〕、保護コート剤中の(A)と(B)の含有量等を表3〜7に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行って保護コート剤を得た。
【0060】
実施例1〜24、比較例1〜15で得られた保護コート剤の評価結果を表3〜6に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【0065】
表3〜6から明らかなように、実施例1〜24で得られた保護コート剤は、金属蒸着層面との密着性に優れ、塗膜(樹脂組成物の層(b))は、テープ剥離性、耐アルカリ性、耐ボイル性、耐レトルト性、耐アルカリボイル性、耐酢酸ボイル性、耐酢酸レトルト性に優れるものであった。また、ブロッキング性や塗膜の透明性にも優れるものであった。
一方、比較例1〜3で得られた保護コート剤は、シランカップリング剤を含有していないため、また、比較例4、6、8で得られた保護コート剤は、アミノ系シランカップリング剤(B)の含有量が本発明で規定する量よりも少なかったため、金属蒸着層面との密着性が不十分であり、塗膜(樹脂組成物の層(b))の評価において、耐ボイル性、耐レトルト性、耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性、耐酢酸ボイル性に劣っていた。
比較例5、7、9で得られた保護コート剤は、アミノ系シランカップリング剤(B)の含有量が本発明で規定する量よりも多かったため、金属蒸着層面との密着性が不十分となり、塗膜(樹脂組成物の層(b))の評価において、テープ剥離性、透明性、耐アルカリ性、耐ボイル性、耐レトルト性、耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性、耐酢酸ボイル性などに劣るものであった。
比較例10〜15で得られた保護コート剤は、アミノ系のシランカップリング剤を使用していないため、金属蒸着層面との密着性が不十分となり、耐アルカリ性、耐ボイル性、耐レトルト性、耐アルカリボイル性、耐酢酸レトルト性、耐酢酸ボイル性などに劣るものであった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、アミノ系シランカップリング剤(B)および水性媒体を含有し、(B)の含有量が、(A)100質量部に対して、0.2〜2質量部であることを特徴とする金属蒸着層保護コート剤。
【請求項2】
アミノ系シランカップリング剤(B)が、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項1記載の金属蒸着層保護コート剤。
【請求項3】
基材に金属を蒸着させた金属蒸着基材(a)の金属蒸着層面に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とアミノ系シランカップリング剤(B)を含有する樹脂組成物の層(b)を設けてなる積層体。
【請求項4】
基材に金属を蒸着させた金属蒸着基材(a)の金属蒸着層面に、請求項1または請求項2記載の金属蒸着層保護コート剤を塗布し、水性媒体を除去して得られるものである請求項3記載の積層体。
【請求項5】
金属蒸着基材(a)における基材が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンを用いて形成されたものである請求項3又は請求項4記載の積層体。
【請求項6】
金属蒸着基材(a)における蒸着させる金属が、アルミニウムである請求項3〜請求項5のいずれかに記載の積層体。



【公開番号】特開2011−42725(P2011−42725A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191017(P2009−191017)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】