説明

金属薄膜用被覆材組成物及び成型品

【課題】金属に対して優れた密着性を有し、優れた耐湿性及び硬度を有する硬化層を得ることができる金属薄膜用被覆材組成物及びその硬化層が積層された成型品を提供する。
【解決手段】ビニルカプロラクタム(A成分)、一分子中に二個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するウレタン(メタ)アクリレート(B成分)並びにA成分及びB成分と共重合可能な一分子中に少なくとも一個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物(C成分)を含有する金属薄膜用被覆材組成物であって、A成分、B成分及びC成分の配合量がA成分、B成分及びC成分の合計量を基準にしてA成分が0.5〜15質量%、B成分が10〜30質量%及びC成分が55〜85質量%である金属薄膜用被覆材組成物並びに樹脂成型品の表面に金属薄膜が積層された金属薄膜積層成型品の金属薄膜の表面に上記の金属薄膜用被覆材組成物の硬化層が積層された成型品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属薄膜用被覆材組成物及び成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
生産性や省エネルギーの観点から紫外線硬化型樹脂組成物が広く使用されており、特にプラスチック成型品へのハードコート処理や真空蒸着、スパッタリング等の金属化処理の際に用いられるアンダーコート材やトップコート材に利用されている。
【0003】
紫外線硬化型樹脂組成物が使用される用途としては、例えば、照明、ライト等のリフレクター部品及び携帯電話等の家電製品並びに化粧品容器の加飾用途が挙げられる。
【0004】
これら加飾用途においては、例えば、リフレクター部品の表面にアルミ等の金属蒸着層を形成したものが使用されるが、金属蒸着層を保護するために金属蒸着層の表面に紫外線硬化型樹脂組成物の硬化塗膜が積層されている。
【0005】
金属蒸着層を保護するための紫外線硬化型樹脂組成物としては、例えば特許文献1で、特定の重合体(P)とラジカル重合性化合物(M)及び光開始剤(C)を含む金属蒸着上塗り用光硬化型塗料組成物が提案されている。
【0006】
また、金属への良好な密着性を付与するために、例えば特許文献2では、塗料中にN−アクリロイルモルホリン、N−ビニルホルムアミド及びN−ビニルカプロラクタムから選ばれる少なくとも1種の単量体を含有させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−169,308号公報
【特許文献2】特開平10−183,014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況において、携帯電話の筐体等は電波を通過させる為に電気的に非導通の性質が必要となり、蒸着加工では蒸着する金属として錫を用いた蒸着技術が用いられる。
【0009】
このような錫金属の表面に被覆するための被覆材組成物として特許文献1の樹脂組成物を用いた場合、錫金属に対する密着性が低いという問題がある。
【0010】
また、特許文献2の組成物を金属表面に被覆した場合には、金属への密着性には優れるものの、硬化層の硬度が充分ではないという問題がある。
【0011】
本発明は、錫金属表面に対しても優れた密着性を有し、且つ優れた耐湿性及び硬度を有する硬化層を得ることができる金属薄膜用被覆材組成物並びに樹脂成型品の表面に金属薄膜が積層された金属薄膜積層成型品の金属薄膜の表面に金属薄膜用被覆材組成物の硬化層が積層された成型品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の要旨とするところは、ビニルカプロラクタム(A成分)、一分子中に二個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するウレタン(メタ)アクリレート(B成分)並びにA成分及びB成分と共重合可能な一分子中に少なくとも一個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物(C成分)を含有する金属薄膜用被覆材組成物であって、A成分、B成分及びC成分の配合量がA成分、B成分及びC成分の合計量を基準にしてA成分が0.5〜15質量%、B成分が10〜30質量%及びC成分が55〜85質量%である金属薄膜用被覆材組成物(以下、「本被覆材組成物」という)を第1の発明とする。
【0013】
また、本発明の要旨とするところは、樹脂成型品の表面に金属薄膜が積層された金属薄膜積層成型品の金属薄膜の表面に本被覆材組成物の硬化層が積層された成型品(以下、「本成型品」という)を第2の発明とする。
【発明の効果】
【0014】
本被覆材組成物の硬化層は錫金属表面に対しても優れた密着性を有し、且つ優れた耐湿性及び硬度を有していることから、本成型品は照明、ライト等の反射鏡、リフレクター部品、携帯電話等の家電製品、化粧品容器等の各種用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A成分
本発明に使用されるA成分(ビニルカプロラクタム)は本被覆材組成物の構成成分の1つである。
【0016】
B成分
本発明に使用されるB成分は本被覆材組成物の構成成分の1つであり、一分子中に二個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するウレタンポリ(メタ)アクリレートである。
【0017】
B成分としては、例えば、多価アルコール(b−1)、ジイソシアネート(b−2)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b−3)の反応によって得られるウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0018】
尚、本発明において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」から選ばれる少なくとも1種を示す。
【0019】
多価アルコール(b−1)としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール;上記多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテル変性ポリオール;上記多価アルコールとε−カプロラクトン等のラクトン類との反応によって得られるポリラクトンポリオール;ポリカーボネートジオール;及びポリブタジエングリコールが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併せて使用できる。
【0020】
ジイソシアネート(b−2)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びメチルシクロヘキサンジイソシアネートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併せて使用できる。
【0021】
これらの中で、B成分の粘度が低く、本被覆材組成物の塗装時の作業性が良好な点で、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0022】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b−3)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート及びそのカプロラクトン変性品やアルキルオキサイド変性品が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併せて使用できる。
【0023】
これらの中で、B成分の粘度が低く、本被覆材組成物の塗装時の作業性を向上させる点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
ジオール(b−1)、ジイソシアネート(b−2)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b−3)の反応により得られるウレタンジ(メタ)アクリレートの製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0025】
まず、30〜90℃に加温したジオール(b−1)とジブチル錫ジラウレート等の触媒との混合物中にジイソシアネート(b−2)を2〜6時間かけて滴下し、更に1〜3時間反応させる。
【0026】
次いで、得られた反応液中にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b−3)を1〜3時間かけて滴下し、更に1〜3時間反応させることによりウレタンジ(メタ)アクリレートを得る。
【0027】
C成分
本発明に使用されるB成分は本被覆材組成物の構成成分の1つであり、A成分及びB成分と共重合可能なA成分及びB成分以外の一分子中に少なくとも一個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物である。
【0028】
本発明に使用されるC成分としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(付加モル数2〜5)のジ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併せて使用できる。
【0029】
これらの中で、本被覆材組成物の硬化層の耐熱性と本被覆材組成物の塗膜表面の平滑性とのバランスの点で2官能以上の(メタ)アクリレートが好ましく、3官能以上の(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0030】
本被覆材組成物
本被覆材組成物はA成分、B成分及びC成分を含有する。
【0031】
A成分の配合量は本被覆材組成物中にA成分、B成分及びC成分の合計量を基準にして0.5〜15質量%、好ましくは1〜5質量%である。A成分の配合量が15質量%以下で本被覆材組成物の硬化層の硬度が良好であり、0.5質量%以上で本被覆材組成物の硬化層と金属との付着性が良好である。
【0032】
B成分の配合量は本被覆材組成物中にA成分、B成分及びC成分の合計量を基準にして10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%である。B成分の配合量が30質量%以下で本被覆材組成物の硬化層の硬度が良好であり、10質量%以上で本被覆材組成物の硬化層と金属との付着性が良好である。
【0033】
C成分の配合量は本被覆材組成物中にA成分、B成分及びC成分の合計量を基準にして55〜85質量%、好ましくは70〜80質量%である。C成分の配合量が85質量%以下で本被覆材組成物の硬化層と金属との付着性が良好であり、55質量%以上で本被覆材組成物の硬化層の硬度が良好である。
【0034】
本発明においては、本被覆材組成物を活性エネルギー線で硬化させる場合には本被覆材組成物中に光重合開始剤を配合することができる。
【0035】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−エチルアントラキノン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併せて使用できる。これらの中で、本被覆材組成物の硬化性の点でベンゾフェノン及びメチルフェニルグリオキシレートが好ましい。
【0036】
光重合開始剤の配合量は本被覆材組成物100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましい。
【0037】
本発明においては、必要に応じて本被覆材組成物中に4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の光増感剤を配合することができる。
【0038】
また、必要に応じて、本被覆材組成物を望ましい粘度に調整するために有機溶剤を添加することができる。
【0039】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル化合物;エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール化合物、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル化合物;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;及びペンタン、ヘキサン、石油ナフサ等の脂肪族化合物が挙げられる。
【0040】
有機溶剤の配合量は本被覆材組成物100質量部に対して100〜500質量部が好ましい。
【0041】
本被覆材組成物には、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、潤滑剤、研磨剤、防錆剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤等の添加剤を配合することができる。
【0042】
金属薄膜
本発明において、金属薄膜は樹脂成型品の表面に積層されている。
【0043】
金属薄膜を形成する金属としては、例えば、アルミニウム及び錫が挙げられる。
【0044】
本発明においては、金属薄膜の厚みとしては10〜100nm程度である。
【0045】
樹脂成型品
本発明に用いられる樹脂成型品としては、例えば、ABS樹脂、PC樹脂、AS樹脂及びPP樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂から得られる成型品が挙げられる。
【0046】
金属薄膜積層成型品
本発明において、金属薄膜積層成型品は樹脂成型品の表面に金属薄膜が積層されたものである。
【0047】
尚、本発明においては金属薄膜積層成型品としては樹脂成型品と金属薄膜との間に必要に応じてアンダーコート層を有するものを使用することができる。
【0048】
アンダーコート層を形成するためのアンダーコート材としては、例えば、公知の熱硬化性組成物及び活性エネルギー線硬化性組成物が挙げられる。
【0049】
金属薄膜積層成型品を得る方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0050】
まず、樹脂成型品の表面にアンダーコート材を塗付した後に硬化させて樹脂成型品の表面にアンダーコート層を形成する。その後、形成されたアンダーコート層の表面に真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法等によって金属薄膜を形成させて、金属薄膜積層樹脂成型品を得る。
【0051】
本成型品
本成型品は、金属薄膜積層成型品の金属薄膜の表面に本被覆材組成物の硬化層が積層されたものである。
【0052】
本被覆材組成物の硬化層の膜厚としては、本被覆材組成物の硬化層の硬度及び本被覆材組成物の硬化層の金属との良好な密着性維持の点で、3〜40μm程度が好ましい。
【0053】
金属薄膜積層成型品の金属薄膜の表面への本被覆材組成物の塗付方法としては、例えば、ハケ塗り法、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法及びフローコート法が挙げられる。
【0054】
これらの中で、本被覆材組成物の塗付作業性、本被覆材組成物の塗膜の平滑性及び均一性の点で、スプレーコート法及びフローコート法が好ましい。
【0055】
本被覆材組成物として有機溶剤を配合したものを使用する場合には、本被覆材組成物を塗付して得られる本被覆材組成物の塗膜中の溶剤を揮発させ、次いで、本被覆材組成物を硬化させる。
【0056】
溶剤を揮発させる方法としては、例えば、赤外線ヒーターや温風により40〜130℃で1〜20分間加温する方法が挙げられる。
【0057】
本被覆材組成物の塗膜の硬化法としては、例えば、活性エネルギー線照射により硬化する方法が挙げられる。
【0058】
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線及び電子線が挙げられる。
【0059】
活性エネルギー線の照射条件としては、例えば、高圧水銀灯を用いた場合には、照射される紫外線エネルギー量は500〜4,000mJ/cm程度である。
【0060】
本成型品は照明、ライト等の反射鏡、リフレクター部品、携帯電話等の家電製品、化粧品容器等の各種用途に用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例により説明する。尚、以下において「部」は「質量部」を意味する。また、被覆材組成物の硬化層の各種評価は以下の方法により実施した。
【0062】
(1)付着性
被覆材組成物の硬化層と金属との付着性を碁盤目剥離試験により評価した。
金属薄膜積層成型品の金属薄膜の表面に被覆材組成物の硬化層が積層された成型品の表面に、1mm間隔で樹脂成型品まで達するクロスカットをカッターナイフで入れ、1mmの碁盤目を100個作成した。作成した碁盤目の上にセロハンテープを貼りつけ、急激に剥がした後に、剥離した碁盤目を数えた。付着性の判定は以下の基準で行った。
「〇」:剥離なし。
「△」:剥離の数1〜50個。
「×」:剥離の数51〜100個。
【0063】
(2)耐湿性
金属薄膜積層成型品の金属薄膜の表面に被覆材組成物の硬化層が積層された成型品を80℃及び相対湿度85%の恒温恒湿器に24時間入れた。次いで、恒温恒湿器から成型品を取り出し、被覆材組成物の硬化層の表面に樹脂成型品まで達するクロスカットをカッターナイフで入れ、1mmの碁盤目を100個作成した。作成した碁盤目の上にセロハンテープを貼りつけ、急激に剥がした後に、剥離した碁盤目を数えた。耐湿性の判定は以下の基準で行った。
「◎」:剥離なし。
「〇」:剥離の数1〜10個。
「△」:剥離の数11〜50個。
「×」:剥離の数51〜100個。
【0064】
(3)硬度
金属薄膜積層成型品の金属薄膜の表面に被覆材組成物の硬化層が積層された成型品の表面をスチールウール(#0000、ボンスター(株)製)で表面を5往復擦り、成型品の表面の傷つき易さを目視にて観察し、以下の基準で硬度を評価した。
「◎」:傷の跡がない。
「○」:僅かに傷跡がある。
「△」:傷跡がはっきりと残っている。
「×」:傷跡が多く残っている。
【0065】
[製造例1]ウレタンジアクリレート(B−1)の製造
(1)3Lの4つ口フラスコに、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物((株)ADEKA製、商品名:アデカポリエーテルBPX−11)285g、ネオペンチルグリコール21g及びジブチル錫ジラウレート0.2gを仕込んでウォーターバスで内温が60℃になるように加温した。
(2)次いで、イソホロンジイソシアネート436gを側管付きの滴下ロートに仕込み、この滴下ロート内の液を、上記(1)で調整したフラスコ中の内容物を攪拌しつつ、フラスコ内温を60℃に保ちながら、フラスコ内に2時間の等速滴下により滴下した後、内容物を同温度で1時間攪拌することによりイソホロンジイソシアネートを反応させた。
(3)この後、(2)で得られたフラスコ内容物の温度を70℃に上げ、別の滴下ロートに仕込んだ2−ヒドロキシエチルアクリレート232gと2,6−ジ−ターシャリブチル−4−メチルフェノール1.5gの均一混合溶液を、フラスコ内温を70℃に保ちながら、フラスコ内に1時間等速滴下により滴下した。その後、フラスコ内容物の温度を70℃に保って6時間撹拌することにより、GPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量が6,800となるウレタンジアクリレート(B−1)を製造した。
【0066】
[製造例2]ポリマー(D)の製造
2Lの4つ口フラスコに、トルエン500gを仕込み、内温が80℃になるように加温した。次いで、メチルメタクリレート250g(50質量%)、スチレン175g(35質量%)、及びヘドロキシエチルメタアクリレート75g(15質量%)と重合触媒としてアゾビスイソブチルニトリル1gを混合し、フラスコ内を攪拌しつつ、内温を80℃に保ちつつ、2時間等速滴下により滴下した。その後1時間毎にアゾビスイソブチルニトリル0.2gを合計4回追加投入しながら6時間攪拌し、GPC測定によるポリスチレン換算による重量平均分子量が3.2×10となる共重合体(ポリマーD)を得た。
【0067】
[実施例1]
表1に示す組成(数値は質量部)の被覆材組成物の原料をステンレス容器に投入し、全体が均一になるまで約30分間攪拌して、被覆材組成物(1)を調製した。
【0068】
幅5cm、長さ9cm及び厚さ3mmのABS樹脂成型品のテストピースにアンダーコート材(商品名:ダイヤビームUM−479U、三菱レイヨン(株)製)を硬化後の膜厚が10〜20μmとなるようにスプレー塗装した。
【0069】
アンダーコート材が塗装されたテストピースを60℃の温風乾燥器中に5分間保持して有機溶剤を揮発させた。次いで、得られたテストピースのアンダーコート材塗装面に、高圧水銀灯を用い、空気中、波長340〜380nm及び積算光量1,000mJ/cmの条件で活性エネルギー線を照射し、アンダーコート層が形成されたテストピースを得た。
【0070】
次いで、日本真空技術(株)製の真空蒸着装置(商品名:EBX−6D)を使用して錫膜厚が約100nmとなるようにテストピースのアンダーコート層の表面に錫を真空蒸着させて、錫薄膜が積層されたテストピースを得た。
【0071】
その後、テストピースの錫薄膜の表面に前述の被覆材組成物(1)を硬化後の膜厚が5〜10μmとなるようにスプレー塗装した。
【0072】
更に、被覆材組成物(1)がスプレー塗装されたテストピースを60℃の温風乾燥器中に5分間保持して有機溶剤を揮発させた後に、得られたテストピースの被覆材組成物(1)の塗膜に、高圧水銀灯を用い、空気中、波長340〜380nm及び積算光量1,000mJ/cmの条件で活性エネルギー線を照射し、成型品を得た。得られた成型品の評価結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

表1中の略号は以下の化合物を表す。
NVC:ビニルカプロラクタム
UA:ウレタンジアクリレート(B−1)
PETA:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NKエステル A−TMMT)
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA)
IBXA:イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:IBXA)
Ir184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバジャパン(株)製、商品名:イルガキュア184)
MIBK:メチルイソブチルケトン
MEK:メチルエチルケトン
【0074】
[実施例2〜4及び比較例1〜6]
表1に示す組成の被覆材組成物を使用する以外は実施例1と同様にして成型品を得た。得られた成型品の評価結果を表1に示す。
【0075】
実施例1〜4では成型品の表面の被覆材組成物の硬化層は金属薄膜との付着性、耐湿性及び硬度に優れていることがわかる。
【0076】
これに対し、比較例1では被覆材組成物中にA成分が配合されていないので、成型品の表面の被覆材組成物の硬化層の金属薄膜との付着性と耐湿性が不良であった。
【0077】
また、比較例2では被覆材組成物中のA成分とB成分の配合量が多すぎ、成型品の表面の被覆材組成物の硬化層の耐湿性が不十分であり、硬度が不良であった。
【0078】
更に、比較例3では被覆材組成物中のB成分の配合量が少な過ぎ、成型品の表面の被覆材組成物の硬化層の付着性が不十分であり、耐湿性が不良であった。
【0079】
また、比較例4ではA成分の配合量が多すぎ、成型品の表面の被覆材組成物の硬化層の耐湿性及び硬度が不十分であった。
【0080】
更に、比較例5ではB成分の配合量が多すぎ、成型品の表面の被覆材組成物の硬化層の硬度が不十分であった。
【0081】
また、比較例6ではA成分とB成分が配合されていないため、成型品の表面の被覆材組成物の硬化層の金属薄膜との付着性と耐湿性が不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルカプロラクタム(A成分)、一分子中に二個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するウレタン(メタ)アクリレート(B成分)並びにA成分及びB成分と共重合可能な一分子中に少なくとも一個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物(C成分)を含有する金属薄膜用被覆材組成物であって、A成分、B成分及びC成分の配合量がA成分、B成分及びC成分の合計量を基準にしてA成分が0.5〜15質量%、B成分が10〜30質量%及びC成分が55〜85質量%である金属薄膜用被覆材組成物。
【請求項2】
樹脂成型品の表面に金属薄膜が積層された金属薄膜積層成型品の金属薄膜の表面に請求項1に記載の金属薄膜用被覆材組成物の硬化層が積層された成型品。

【公開番号】特開2012−87176(P2012−87176A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232932(P2010−232932)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】