説明

金属触媒担持ケミカルフィルタ

【課題】トリメチルシラノール等のシラノール化合物を効率的に除去可能なケミカルフィルタを提供する。
【解決手段】内部ケミカルフィルタ15は、三次元網状骨格構造を有するフィルタ基材50に、無数の吸着剤51を固着したものである。吸着剤51は、活性炭等の粉末ないし粒子状の多孔質体の表面に白金、パラジウム等の金属触媒を担持したものである。吸着剤51は、空気中に含まれるシラノール化合物を、金属触媒で二量化して吸着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光工程で露光障害等を引き起こすおそれのあるシラノール化合物を空気中から除去するためのケミカルフィルタに関し、特に吸着剤に金属触媒が担持されたケミカルフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスの露光工程において、ヘキサメチルジシラザン(HDMS)のようなジシラザン化合物が、フォトレジスト密着剤として使用されることが知られている。HDMSは、例えばガスとしてウエハ表面に吹き付けられることにより、ウエハ表面の水酸基をトリメチルシラノール基に置換させることで、ウエハ表面を疎水化させて、ウエハ表面のレジスト剤との密着性を向上させている。HDMSは加水分解してトリメチルシラノール(TMS)として露光装置内にガス状で浮遊することがあるが、浮遊したTMSはレンズ等に付着して曇りの原因となり、露光障害等を引き起こすおそれがある。
【0003】
露光工程が行われる露光装置のチャンバ内部には、通常、活性炭等の吸着剤を有するケミカルフィルタを通過した空気が供給される。TMS等のガス状不純物は、ケミカルフィルタによって除去されることにより、チャンバ内部は一定の清浄度に保持され、露光障害等が防止されるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−181968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、TMSは、低分子量物質であり、活性炭等では吸着し難くまた吸着してもすぐに脱離するため、一般的な吸着剤を有するケミカルフィルタでは、効率的に除去することは難しい。したがって、従来、TMSを必要量除去するために、ケミカルフィルタを厚くし若しくは多層にしたり、活性炭を多量に使用したりする必要があった。
【0006】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、TMS等のシラノール化合物を効率的に除去可能なシラノール化合物除去用ケミカルフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシラノール化合物除去用ケミカルフィルタは、多孔質体から構成される多数の吸着剤を備え、前記多数の吸着剤の少なくとも一部は、金属触媒が担持されており、金属触媒によって空気中に含まれるシラノール化合物を、二量化して多孔質体によって吸着させることを特徴とする。
【0008】
金属触媒は、白金又はパラジウムを少なくとも含むことが好ましい。上記ケミカルフィルタは、例えば多数の吸着剤が固着されたフィルタ基材を備え、また多孔質体は、活性炭であることが好ましい。なお、シラノール化合物は、通常、トリメチルシラノールである。
【0009】
本発明に係るケミカルフィルタは、吸着剤に金属触媒が担持されている第1のフィルタ部と、吸着剤に金属触媒が担持されていない第2のフィルタ部とを備えることが好ましい。これら第1及び第2のフィルタ部は空気が通過する方向に沿って上流側からこの順に配置される。この場合、第1のフィルタ部は、金属触媒によって空気中に含まれるシラノール化合物を二量化し、その二量体を第2のフィルタ部の吸着剤が吸着する。
【0010】
本発明に係る露光装置は、上記したケミカルフィルタによって内部の空気が浄化されることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る空気浄化方法は、多孔質体から構成される多数の吸着剤を備えるとともに、多数の吸着剤の少なくとも一部が、金属触媒が担持されているケミカルフィルタに、シラノール化合物を含む空気を通過させて、シラノール化合物を二量化して吸着剤によって吸着させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、シラノール化合物が、多孔質体によって吸着されやすく、かつ吸着剤から脱離しにくい二量体とされたうえで吸着剤に吸着されるので、ケミカルフィルタのシラノール化合物の除去効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のケミカルフィルタが適用される露光装置を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るケミカルフィルタを示す拡大図である。
【図3】第2の実施形態に係るケミカルフィルタを示す斜視図である。
【図4】第2の実施形態の変形例に係るケミカルフィルタを示す斜視図である。
【図5】通気実験1を実施するためのカラムを示す模式図である。
【図6】通気実験2を実施するためのカラムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るケミカルフィルタが適用される露光装置を示す概略図である。図1に示すように、露光装置10は、その外部チャンバ11内部に、内部チャンバ12と空気循環路13とが設けられた構造となっており、内部チャンバ12の内部には露光本体部20が配置される。空気循環路13は、内部チャンバ12内部の空気を循環させるための通路である。空気循環路13内部には、内部チャンバ12内部の空気の温度及び湿度を一定に保つための調温調湿装置14と、内部チャンバ12の空気を浄化するための内部ケミカルフィルタ15が設けられる。
【0015】
露光本体部20は、照明光学系21、レクチル22、投影光学系23、及びウエハステージ24を備え、ウエハステージ24上には、ウエハWが載置させられている。ウエハWは、下記一般式(1)で示されるジシラザン化合物であるフォトレジスト密着剤によって表面が疎水化された後、フォトレジスト剤が塗布されたものである。
【0016】
SiNHSiR ・・・・(1)
式(1)において、Rはメチル、エチル等の炭素数1〜3のアルキル基であるが、Rのうち一部は水素原子、又はふっ素原子、塩素原子等のハロゲン原子であっても良い。当該ジシラザン化合物としては、上記式(1)においてRが全てメチルであるヘキサメチルジシラザン(HDMS)が一般的に使用される。
【0017】
照明光学系21は、リレーレンズ系、コンデンサーレンズ等を含み、外部チャンバ11の外部に設けられた光源26から出射されたレーザー光を、レクチル22に入射させる。レクチル22は所定のマスクパターンを有するフォトマスクであって、そのマスクパターンは投影光学系23を介して、ウエハステージ24上に配置されるウエハWに結像され、ウエハWに対して露光処理が行われる。
【0018】
空気循環路13内部等には不図示のファンが設けられ、外部チャンバ11内部の空気は、そのファンによって、一定経路Sに沿って循環させられる。具体的には、空気循環路13の空気は、内部供給口16を介して内部チャンバ12内部に供給され、内部チャンバ12内部を循環して、内部排出口17を介して空気循環路13に排出される。内部排出口17から排出された空気は、空気循環路13内部において、内部ケミカルフィルタ15及び調温調湿装置14を通って再び、内部供給口16を介して、内部チャンバ12内部に供給される。また、内部チャンバ12内部の空気は、一部が局部排出口18を介して外部に排気されるとともに、外部の空気は、外部供給口19を介して空気循環路13内部に供給される。
【0019】
調温調湿装置14は、内部供給口16の上流に配置され、空気循環路13から内部チャンバ12内部に供給される空気は、調温調湿装置14によって、一定湿度、一定温度に調整されたものである。また、外部供給口19の上流には、外部ケミカルフィルタ25が配置され、外部からの空気は、外部ケミカルフィルタ25によって、ガス状汚染物質が除去されたうえで、空気循環路13に供給される。
【0020】
図2に示すように、空気循環路13内部に設けられた内部ケミカルフィルタ15は、ポリウレタンフォーム等の発泡体やから構成される三次元網状骨格構造を有し、例えばマット形状を呈するフィルタ基材50に、無数の吸着剤51が公知のバインダによって固着されたものである。なお、フィルタ基材50としては、発泡体の代わりに有機繊維や無機繊維から構成される繊維状基材やハニカム構造体が使用されても良い。本実施形態における内部ケミカルフィルタ15は、以下の構成を有することにより、後述するシラノール化合物を効率的に除去することが可能なシラノール化合物除去用ケミカルフィルタである。
【0021】
内部ケミカルフィルタ15の吸着剤51は、破砕状、粉末状、粒子状等の多孔質体の表面に金属触媒が担持されたものである。吸着剤51に使用される多孔質体としては、活性炭、シリカ、ゼオライト、アルミナ、多孔質ガラス等のガス状有機物を物理的吸着により吸着可能なものが挙げられるが、これらのうち活性炭が好ましい。活性炭は、後述するシラノール化合物やジシロキサン化合物を吸着しやすいからである。
【0022】
金属触媒としては、白金、パラジウム、銀、銅、亜鉛、鉄、及びニッケルの群から選択される1種以上のものが使用されるが、後述するシラノール化合物をより効果的に二量化するために、白金又はパラジウムを少なくとも含むことが好ましい。吸着剤は、特に限定されるわけではないが、例えば、金属触媒の酸金属塩の水溶液に、活性炭等の多孔質体を浸漬等して、多孔質体表面に当該水溶液を付着させた後、窒素雰囲気下で加熱(例えば、700℃)し還元させることにより、多孔質体表面に金属触媒を添着させたものである。上記金属触媒の多孔質体への添着量は、多孔質体(100重量%)に対して、例えば0.1〜15重量%、好ましくは1〜8重量%である。
【0023】
上記したように、ウエハWは、ジシラザン化合物によって構成されるフォトレジスト密着剤によって、疎水化処理が施され、また、チャンバ12内部は、一定の相対湿度に保たれる。そのため、内部チャンバ12内部には、ジシラザン化合物の加水分解反応(反応式(2)’参照)によって生成される、化学式(2)のシラノール化合物が浮遊しており、一定経路Sに沿って循環する空気には、シラノール化合物が含まれる。
SiNHSiR +2HO → 2RSiOH + NH・・・・(2)’
【0024】
SiOH ・・・・(2)
シラノール化合物は、式(2)に示すように、SiOH基を1つだけ有するものである。式(2)において、Rはメチル、エチル等の炭素数1〜3のアルキル基であるが、Rのうち一部は水素原子、又はふっ素原子、塩素原子等のハロゲン原子であっても良い。当該シラノール化合物は、一般的には、HDMSの分解物であって、式(2)においてRが全てメチルとなるトリメチルシラノール(TMS)である。
【0025】
シラノール化合物は、下記式(3)に示すように、脱水縮合することにより二量化される。この脱水縮合反応は、露光装置10内部のように、シラノール化合物低濃度下では通常殆ど起こらないが、上記した金属触媒が添着された吸着剤があると低濃度下でも、吸着剤の吸着作用及び金属触媒の触媒作用により発生しやすくなる。したがって、シラノール化合物の少なくとも一部(通常、半分以上程度)は、内部ケミカルフィルタ15を通過する際に二量化され、二量体であるジシロキサン化合物に化学変化させられる。二量体であるジシロキサン化合物は、シラノール化合物よりも分子量が大きいため、シラノール化合物よりも、内部ケミカルフィルタ15の多孔質体によって吸着されやすく、また吸着された後脱離しにくくなる。
【0026】
すなわち、内部ケミカルフィルタ15は、金属触媒でシラノール化合物を積極的に二量化させることにより、効率的にシラノール化合物を吸着剤51に吸着させることが可能になる。このように、本実施形態では、吸着剤51によって、効率的にシラノール化合物を除去可能であるので、内部ケミカルフィルタ15の寿命を長くすることができる。
【0027】
2RSiOH → RSiOSiR + HO ・・・(3)
式(3)において、ジシロキサン化合物(RSiOSiR)は一般的に、TMSの二量体であるヘキサメチルジシロキサンである。
【0028】
なお、外部ケミカルフィルタ25は、内部ケミカルフィルタ15と同様の構成を有するケミカルフィルタであっても良いが、金属触媒が担持されていない活性炭等の多孔質体が、フィルタ基材に固着されたケミカルフィルタであっても良い。勿論、内部ケミカルフィルタ15は、吸着剤51によってシラノール化合物及びその二量体以外のガス状不純物も除去する。また、経路S上には、他の種類のエアフィルタがさらに設けられていても良い。
【0029】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るケミカルフィルタの構造を示す。第1の実施形態においては、内部ケミカルフィルタ15は、1つのケミカルフィルタによって構成されたが、第2の実施形態では、内部ケミカルフィルタ65は、図3に示すように、第1及び第2のケミカルフィルタ66、67が重ねられて構成される。第1及び第2のケミカルフィルタ66、67は、空気が通過する方向S’に沿って上流側からこの順に配置される。
【0030】
この場合、第1のケミカルフィルタ66は、第1の実施形態の内部ケミカルフィルタ15と同様の構成を有しており、フィルタ基材50に、金属触媒が担持された無数の吸着剤が固着されたものである。一方、第2のケミカルフィルタ67は、フィルタ基材50に、金属触媒が担持されていない無数の吸着剤が固着されたものである。
【0031】
このような構成によれば、シラノール化合物は、第1のケミカルフィルタ66で、二量化されつつ吸着・除去されるとともに、第1のケミカルフィルタ66で吸着されなかった二量体(ジシロキサン化合物)は、第2のケミカルフィルタ67で吸着・除去される。そのため本実施形態では、より効率的に空気中のシラノール化合物を除去することが可能になる。
【0032】
さらには、金属触媒が担持されたケミカルフィルタ66の厚みを、第1の実施形態より薄くしてもシラノール化合物の除去効果を高めることができるので、金属触媒が担持された吸着剤の量を少なくすることもできる。したがって、白金、パラジウム等の比較的高価な金属触媒の使用量を抑制できるので、コストが高くなることを抑制できる。
【0033】
さらに、第2の実施形態における第1及び第2のケミカルフィルタ66、67は、別体のフィルタ基材50、50それぞれに無数の吸着剤が固着されて構成されたが、図4に示すように、1つのフィルタ基材50から構成されたケミカルフィルタ70であっても良い。この場合、ケミカルフィルタ70の上流側の部分(上流部分70A)に金属触媒が担持された吸着剤が固着され、下流側の部分(下流部分70B)に金属触媒が担持されていない吸着剤が固着される。
【0034】
また、第1の実施形態では、金属触媒が担持された活性炭と、金属触媒が担持されない活性炭の両方が混合されて、フィルタ基材50に固着されていても良い。さらに、第2の実施形態のように、第1及び第2のケミカルフィルタが重ねられているような場合において、これらいずれのフィルタにも金属触媒が担持された活性炭が固着されても良い。
【0035】
なお、第1及び第2の実施形態において、各ケミカルフィルタは、フィルタ基材に吸着剤が固着されたものでなくても良く、例えば容器やケース中に吸着剤が充填されたものであっても良い。例えば、第2の実施形態では、第1のケミカルフィルタを容器やケース中に金属触媒が担持された吸着剤が充填されたものとするとともに、第2のケミカルフィルタを、金属触媒が担持されていない吸着剤が、フィルタ基材に固着されたものとしても良い。
【実施例】
【0036】
本発明について、以下実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の構成に限定されるわけではない。
【0037】
[通気試験1]
通気実験1では、図5に示すように、内部に6層のケミカルフィルタ83A〜83Fを重ねて配置したカラム80を用意した。ケミカルフィルタ83A〜83Fとしては、ウレタンフォームに、添着剤未添着の活性炭を固着して構成されるギガソーブL(商品名、ニッタ株式会社製)であって、直径19mm、高さ20mmの円柱状に切り出したものを用いた。カラム80のエア排出口82側には、エアの流量を調整するバルブ84と、カラム80に通気されるエアの流量を計測する流量計85と、カラム80にエアを通気させるためのポンプ86を接続した。最も上流側のケミカルフィルタ83Aは、約450g/mのTMSを付着させて、TMS発生源として使用した。
【0038】
カラム80には、10.2リットル/分(面風速0.6m/秒)で、23℃に空調したエアを240時間通気させた。TMSは一部がヘキサメチルジシロキサン(以下、“D2”と略する)に二量化されるとともに、エア通気によりケミカルフィルタ83AからTMSないしD2が脱離して、下流側に流された。
【0039】
通気終了後、ケミカルフィルタ83A〜83Fそれぞれを20mlのアセトン中に入れて、各フィルタに吸着されたガス状有機物を超音波振動により2時間かけて抽出し、GC−FIDによって、フィルタ83A〜83Fそれぞれに吸着されたTMSとD2の量を測定した。また、通気前(0時間)のケミカルフィルタ83A〜83Fに関しても、ブランクとして同様にTMSとD2の重量を測定した。表1には、TMS及びD2それぞれに関し、各層における測定値と、全体の吸着量を100重量%としたときの各層の吸着量の比率(重量%)とを示した。
【0040】
GC−FIDの測定条件は、以下のとおりである。
GC−FID:島津製作所社製、GC−2010
カラム:Inert Cap 1MS 内径0.25mm 長さ60m
カラム温度:40℃で5分間維持した後、10℃/分で280℃まで昇温。その後、280℃で21分ホールド。
キャリアガス:He カラム流量:1.16ml/分
注入量:1.0μl 測定時間:50分
【0041】
【表1】

【0042】
表1の結果から明らかなように、TMSは、1層目のケミカルフィルタからその多くが脱離し、その脱離したTMSは3層目のケミカルフィルタに最も多く吸着された。一方、D2はその多くが1層目のケミカルフィルタに保持されたままであり、脱離したものも2層目のフィルタに最も多く吸着された。すなわち、TMSはケミカルフィルタに吸着されにくく、一旦吸着されても脱離しやすいが、その二量体(D2)は、ケミカルフィルタに吸着されやすく、一旦吸着されたものはフィルタから脱離しにくいことが理解できる。
【0043】
[通気試験2]
通気実験2では、図6に示すように、エア注入口を構成する第1の管部101、内部に吸着剤112を充填し、第1のケミカルフィルタを構成する第2の管部102、内部に吸着層113を配置し、第2のケミカルフィルタを構成する第3の管部103、及びエア排出口を構成する第4の管部104をこの順に接続したカラム100を用意した。第1〜第4の管部101〜104それぞれは、SUS製の網121〜123を介して接続した。エア排出口には、エアの流量を調整するバルブ108と、カラム100に通気されるエアの流量を計測する流量計109と、カラム100にエアを通気させるためのポンプ110を接続した。
【0044】
吸着層113は、4層のケミカルフィルタ113A〜113Dを重ねて構成したものであった。また、第1の管部101内部にケミカルフィルタ111を配置した。ケミカルフィルタ111は、TMSを約300g/m付着させてあり、TMS発生源として使用した。ケミカルフィルタ111、113A〜113Fとしては、通気試験1と同様のものを使用した。
【0045】
実施例1では、吸着剤112としては、ギガソープL(ニッタ株式会社製)用のビーズ状活性炭表面に、白金を2.9重量%担持させた吸着剤を使用した。実施例2では、活性炭表面にパラジウムを4.7重量%担持させた以外は実施例1と同様に実施した。比較例1は、活性炭に金属触媒を担持させなかった点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0046】
ポンプ110の吸気によって、カラム100に23℃に空調したエアを、5.1L/分(面風速0.3m/秒)で50時間通気させた。この通気により、ケミカルフィルタ111からはTMSが脱離して、第1の管部101から下流側には、TMSを含むエアが流された。TMSは、吸着剤の金属触媒作用等によって一部がD2に変化した。
【0047】
通気終了後、通気実験1と同様にして、フィルタ111、吸着剤112、フィルタ113A〜113Dそれぞれのサンプルに吸着されたTMSとD2の吸着量を測定した。その測定結果を表2に示す。表2では、フィルタ113A〜113Dの吸着量については、1層目と2層目(フィルタ113A、113B)、及び3層目と4層目(フィルタ113C、113D)の合計量として示した。また、測定された吸着量から、吸着剤112(第1のケミカルフィルタ)、吸着層113(第2のケミカルフィルタ)、並びに吸着剤112と吸着層113の吸着量合計におけるTMSとD2の比率(%)を算出し、その結果も表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
金属触媒を担持した吸着剤を用いた実施例1、2では、表2の結果から明らかなように、TMSはその多くがD2に変化したうえで、吸着剤112、吸着層113に吸着された。一方、金属触媒が担持されていない吸着剤を用いた比較例1では、TMSはほとんどD2に変化することなく、吸着剤112、吸着層113に吸着された。
【符号の説明】
【0050】
10 露光装置
15 内部ケミカルフィルタ
50 フィルタ基材
51 吸着剤
66 第1のケミカルフィルタ(第1のフィルタ部)
67 第2のケミカルフィルタ(第2のフィルタ部)
70A 上流部分(第1のフィルタ部)
70B 下流部分(第2のフィルタ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質体から構成される多数の吸着剤を備え、前記多数の吸着剤の少なくとも一部は、金属触媒が担持されており、前記金属触媒によって空気中に含まれるシラノール化合物を、二量化して前記吸着剤によって吸着させることを特徴とする、シラノール化合物除去用ケミカルフィルタ。
【請求項2】
前記金属触媒は、白金又はパラジウムを少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載のケミカルフィルタ。
【請求項3】
前記吸着剤に前記金属触媒が担持されている第1のフィルタ部と、前記吸着剤に前記金属触媒が担持されていない第2のフィルタ部とを備え、これら第1及び第2のフィルタ部は空気が通過する方向に沿って上流側からこの順に配置され、前記第1のフィルタ部において前記金属触媒によって空気中に含まれるシラノール化合物を二量化し、その二量体を前記第2のフィルタ部の吸着剤に吸着させることを特徴とする請求項1又は2に記載のケミカルフィルタ。
【請求項4】
前記多数の吸着剤が固着されたフィルタ基材を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のケミカルフィルタ。
【請求項5】
前記多孔質体は、活性炭であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のケミカルフィルタ。
【請求項6】
前記シラノール化合物は、トリメチルシラノールであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のケミカルフィルタ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のケミカルフィルタによって内部の空気が浄化されることを特徴とする露光装置。
【請求項8】
多孔質体から構成される多数の吸着剤を備えるとともに、前記多数の吸着剤の少なくとも一部が、金属触媒が担持されているケミカルフィルタに、シラノール化合物を含む空気を通過させて、前記シラノール化合物を二量化し、前記吸着剤によって吸着させることを特徴とする空気浄化方法。


【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−166085(P2011−166085A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30505(P2010−30505)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】