説明

金属酸化物微粒子、研磨材、これを用いる基板の研磨方法及び半導体装置の製造方法

【課題】層間絶縁膜平坦化、シャロートレンチ分離形成、金属埋め込み配線形成等のCMP技術において、酸化珪素膜、金属埋め込み膜等へ研磨傷を発生させずに短時間でCMPが実施できる微粒子、研磨材、及びそれを用いた基板の研磨方法、半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】金属化合物を含有する溶液を微細に液滴化し、該液滴を300℃以上で加熱処理することによって作製された結晶の歪が3%以下であることを特徴とする金属酸化物微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物微粒子、研磨材、これを用いる基板の研磨方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体素子の高密度化・高精細化が進み、デザインルールは0.1μm前後になっている。このような厳しい微細化の要求を満足するために開発されている技術として、CMP(化学機械研磨)がある。この技術は、半導体装置の製造工程において、露光を施す層を完全に平坦化し、露光技術の負担を軽減し、歩留まりを安定させることができるため、例えば、層間絶縁膜の平坦化、トレンチ分離時の埋め込み絶縁膜の平坦化、また銅配線等の平坦化処理の際に必須となる技術であり、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
集積回路内の素子分離形成技術においてデザインルール0.5ミクロン以上の世代ではLOCOS(シリコン局所酸化)が用いられてきたが、加工寸法の更なる微細化に伴い、素子分離幅の小さいシャロートレンチ分離技術が採用されている。シャロートレンチ分離では基板上に埋め込んだ余分な酸化珪素膜を除去するためにCMPが必須な技術となる。
【0004】
金属配線形成技術においても、加工寸法の微細化に伴い要求される電気特性を満たすためにCuやCuAl合金が採用されている。CuやCuAl合金の配線技術としては、ダマシンやデュアルダマシン等の埋め込み配線技術が検討されており、基板上に埋め込んだ余分な金属を取り除くためにCMPが必須となる。ダマシン法については、例えば特許文献2に開示されている。
【0005】
従来、半導体素子の製造工程において、プラズマ−CVD(化学気相蒸着)、低圧−CVD、スパッタ、電気メッキ等の方法で形成される酸化珪素絶縁膜等の絶縁膜、キャパシタ強誘電体膜、配線用金属や金属合金等を平坦化するためのCMP研磨材、または金属埋め込み層を形成するためのCMP研磨材としてフュームドシリカ系、コロイダルシリカ系、アルミナ系、セリア系などの砥粒を含んでなる研磨材を使用している。近年のデザインルールの縮小に伴い、層間絶縁膜、シャロートレンチ分離用絶縁膜、金属埋め込み層に導入される研磨傷による半導体チップ不良がクローズアップされてきている。研磨傷は、配線ショートの原因となり、半導体チップの歩留まり低下に繋がるため問題となっている。
【特許文献1】米国特許第4944836号明細書
【特許文献2】特開平2−278822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、層間絶縁膜平坦化、シャロートレンチ分離用絶縁膜の平坦化、金属埋め込み配線の形成等のCMP処理において、絶縁膜、金属埋め込み層等に研磨傷を発生させずに短時間でCMPが実施できる金属酸化物微粒子、研磨材、該研磨材を用いる基板の研磨方法、半導体装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的に、絶縁膜や金属埋め込み層をCMP処理する場合、研磨材中の砥粒が大きいと研磨傷が発生しやすく、逆に粒子が小さいと研磨傷の発生は低減されるが、研磨速度が遅くなってしまう。本発明者らは、研磨材中の砥粒の結晶の歪の大きさに着目し、研磨傷の発生と研磨速度に及ぼす影響を検討した結果、本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明は、(1)金属化合物を含有する溶液を微細に液滴化し、該液滴を加熱処理することによって作製された結晶の歪が3%以下であることを特徴とする金属酸化物微粒子に関する。
【0009】
また、本発明は、(2)前記加熱処理を300℃以上で行なうことを特徴とする前記(1)記載の金属酸化物微粒子に関する。
【0010】
また、本発明は、(3)前記金属化合物が、金属の硝酸塩、硝酸アンモニウム塩、硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、炭酸塩、酢酸塩、しゅう酸塩、塩化物、アセチルアセトナート塩、アルコキシド、水酸化物、酸化物から選ばれる1種類以上の金属化合物であることを特徴とする前記(1)記載の金属酸化物微粒子に関する。
【0011】
また、本発明は、(4)前記金属酸化物が、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化アルミニウムから選ばれる1種類以上の金属酸化物であることを特徴とする前記(1)記載の金属酸化物微粒子に関する。
【0012】
また、本発明は、(5)前記金属酸化物が、セリウム、ジルコニウム、チタン、珪素、アルミニウムから選ばれる2種類以上の金属の複合酸化物であることを特徴とする前記(1)記載の金属酸化物微粒子。
【0013】
また、本発明は、(6)二流体ノズル法、三流体ノズル法、超音波霧化法、静電霧化法、加熱霧化法、ガラスフィルター法またはこれらを組み合わせた方法によって前記金属化合物を含有する溶液を微細に液滴化することを特徴とする前記(1)記載の金属酸化物微粒子に関する。
【0014】
また、本発明は、(7)前記液滴の加熱が、電気炉、火炎炉、プラズマ炉から選ばれる1種類以上の反応炉内で行なわれることを特徴とする前記(1)記載の金属酸化物微粒子に関する。
【0015】
また、本発明は、(8)前記(1)〜(7)いずれか一項に記載の金属酸化物微粒子を含んでなるとことを特徴とする研磨材に関する。
【0016】
また、本発明は、(9)前記(8)記載の研磨材を用いて、被研磨面が形成された基板を研磨することを特徴とする基板の研磨方法に関する。
【0017】
また、本発明は、(10)前記被研磨膜が、絶縁膜又は金属膜であることを特徴とする前記(9)記載の基板の研磨方法に関する。
【0018】
また、本発明は、(11)前記絶縁膜が、酸化珪素膜であることを特徴とする前記(10)記載の基板の研磨方法に関する。
【0019】
また、本発明は、(12)前記金属膜が、銅、アルミニウム、タングステン、タンタル、チタン、それらの金属化合物、それらの金属合金のいずれか1種類以上であることを特徴とする前記(10)記載の基板の研磨方法に関する。
【0020】
また、本発明は、(13)被研磨膜を前記(8)記載の研磨材を使用して研磨する工程、または前記(9)〜(12)のいずれか一項に記載の基板の研磨方法で研磨する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の金属酸化物微粒子を含んでなる研磨材は、CMP処理において、絶縁膜や金属埋め込み層等の被研磨膜に研磨傷を発生させずに高速で研磨することができ、歩留まりの安定した半導体装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の金属酸化物微粒子は、金属化合物を含有する溶液を微細に液滴化し、該液滴を加熱処理することによって作製された結晶の歪が3%以下、好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である金属酸化物微粒子である。結晶の歪が3%を超えると、研磨速度が遅くなり本発明の効果を達成することができない。
【0023】
結晶の歪の大きさは、粉末X線回折を測定し、プロファイル関数としてThompson、Cox、Hastingsの擬フォークト関数を用いてリートベルト解析によって対称プロファイルパラメーターYを求め、次式より計算することができる。
【0024】
S=(π/180)Y*100
(S:結晶の歪、π:円周率、Y:ローレンツパラメーター)
本発明で用いる金属化合物は、金属の硝酸塩、硝酸アンモニウム塩、硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、炭酸塩、酢酸塩、しゅう酸塩、塩化物、アセチルアセトナート塩、アルコキシド、水酸化物、酸化物等であり、これらは水和物であってもよい。これらのなかでも、セリウム化合物が好ましく、セリウムの硝酸塩、硝酸アンモニウム塩、酢酸塩、水酸化物、酸化物、これらの水和物が特に好ましい。かかる金属化合物は、単独で用いても複数種からなる混合物として用いてもよく、混合物を用いた場合は複合金属酸化物微粒子が得られる。
【0025】
金属化合物を含有する溶液は、金属化合物を溶媒に溶解または懸濁させたものである。溶媒としては、水、アルコール類、アセトン類、ケトン類、エーテル類、これらの混合溶媒などが用いられ、なかでも水が好ましい。溶液中の金属化合物の濃度は特に限定されないが、通常は、0.1〜70重量%である。
【0026】
金属化合物を含有する溶液を微細に液滴化する方法は特に制限されず、例えば、二流体ノズル法、三流体ノズル法、超音波霧化法、静電霧化法、加熱霧化法、ガラスフィルター法又はこれらを組み合わせた方法等が挙げられる。これらの中でも、二流体ノズル法、超音波霧化法が賞用される。二流体ノズル法は公知のニ流体ノズルを用いて行なわれ、超音波霧化法は0.5〜5MHz程度の超音波を利用して行われる。微細に液滴された液滴の平均直径は50μm以下が好まく、20μm以下がより好ましく、10μm以下が特に好ましい。液滴の平均直径が50μmを越える場合は、得られる金属酸化物微粒子が大きくなってしまう場合がある。かかる液滴の大きさは液滴化方法や溶液中の金属化合物の濃度などより調整される。
【0027】
次いで、液滴を加熱処理する。加熱処理の方法は、特に制限されないが、通常は液滴を反応炉に導入して加熱処理することにより行なわれる。反応炉としては一般に知られているものであれば特に制限されず、例えば、管状電気炉、火炎炉、プラズマ炉などを用いることができる。炉の設計形態は縦型、横型のどちらでもよく、縦型の場合は液滴の導入を上側から行っても下側から行ってもどちらでもよい。
【0028】
反応炉内への液滴の導入は、自然落下による方法、空気、窒素、アルゴン、水素、酸素などのキャリヤガスと共に導入する方法、減圧吸引による方法等あるいはこれらの組み合わせにより行われ、導入の速度は一定であることが好ましい。液滴中の金属化合物を酸化物にするため又は酸化物の結晶性を上げるために酸素を含むガスを加熱帯に導入してもよい。
【0029】
加熱温度は、好ましくは300℃以上、より好ましくは500℃以上、さらにより好ましくは700℃以上である。加熱温度が300℃未満の場合は金属酸化物微粒子の結晶の歪が3%超となる傾向にあり、完全な金属酸化物にならない可能性がある。設定する加熱温度によって適当な反応炉を適宜選択し用いる。加熱時間は適宜選択されるが、通常は1〜30秒程度である。
【0030】
以上により得られる金属酸化物微粒子としては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物の微粒子、または、または、セリウム、ジルコニウム、チタン、珪素、アルミニウムなどの金属の複合酸化物の微粒子である。複合金属酸化物の微粒子は金属化合物として複数種からなる混合物を用いた場合に得られる。
【0031】
本発明の研磨材は、上記本発明の金属酸化物微粒子を含むことを特徴とする。かかる研磨材は、金属酸化物微粒子を媒体中にスラリー状に分散させたものであり、金属酸化物微粒子は単独で用いても複数種を用いてもよい。媒体としては、水が好ましく使用される。研磨材中の金属酸化物微粒子の濃度に制限は無いが、研磨材の取り扱い易さから0.1〜5重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3重量%の範囲である。
【0032】
金属酸化物微粒子を媒体中に分散させる際には、必要に応じて分散剤を用いることができる。分散剤としては、金属酸化物微粒子を媒体中に分散できるものであれば特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリル酸系ポリマーやそのアンモニウム塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性有機高分子類;ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム等の水溶性陰イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート等の水溶性非イオン性界面活性剤;及びモノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の水溶性アミン類などが挙げられる。分散剤の添加量は、スラリー中の金属酸化物微粒子の分散性及び沈降防止性などから金属酸化物微粒子100重量部に対して0.01重量部〜5重量部の範囲が好ましく、その分散効果を高めるためには分散処理時に分散機の中に金属酸化物微粒子と同時又はほぼ同時に入れることが好ましい。金属酸化物微粒子を媒体中に分散させる方法としては、通常の撹拌機による分散処理の他に、ホモジナイザー、超音波分散機、ビーズミル、ボールミルなどを用いることができる。また、分散処理後、必要に応じて分級してもよく、一般に知られている自然沈降法、液体サイクロン法、遠心沈降法、湿式高圧分散機等を用いて行なうことができる。
【0033】
本発明の研磨材には、上述した成分の他に、染料、顔料等の着色剤や、pH調整剤、水以外の溶媒などの、一般に研磨材に添加される添加剤を、研磨材の作用効果を損なわない範囲で添加しても良い。
【0034】
本発明の研磨方法は、上記本発明の研磨材を用いて被研磨膜が形成された基板を研磨することを特徴とする。研磨対象である被研磨膜は絶縁膜又は金属膜であり、これら膜は単層でも積層でも構わない。絶縁膜としては酸化珪素絶縁膜、窒化珪素絶縁膜などが例示され、例えば、SiH又はテトラエトキシシラン(TEOS)をSi源とし、酸素又はオゾンを酸素源としたCVD法により形成されたSiO膜が挙げられる。金属膜としては、銅、アルミニウム、タングステン、タンタル、チタンなどの金属、それらの金属の合金、それら金属または金属合金の酸化物や窒化物などの化合物のいずれか1種類以上が例示される。金属膜はスパッタ法やメッキ法などの公知の方法により成膜される。金属膜が形成された基板を研磨する場合は、酸化剤、金属エッチング剤、防食剤等を研磨材に添加し使用することができる。酸化剤としては、過酸化水素、硝酸、オゾン水等が例示され、過酸化水素が好ましい。金属エッチング剤としては、蟻酸、酢酸、クエン酸等の有機酸が例示され、防食剤としては、アンモニア、ベンゾトリアゾール等が例示される。基板としては、半導体装置製造に係る基板、例えば回路素子と配線パターンが形成された段階の半導体基板、回路素子が形成された段階の半導体基板等の半導体基板上に、絶縁層が形成された基板などが挙げられる。
【0035】
被研磨膜の研磨は化学機械研磨により行なわれ、具体的には、被研磨膜が形成された基板を研磨布に押しあて加圧し、本発明の研磨材を被研磨膜と研磨布との間に供給しながら、基板の被研磨膜と研磨布とを相対的に動かすことにより被研磨膜を研磨する。
【0036】
以下、被研磨膜として無機絶縁膜が形成された半導体基板の場合を例に挙げて研磨方法を説明する。
【0037】
本発明の研磨方法において、使用出来る研磨装置としては、被研磨膜を有する基板を保持するホルダーと、研磨布(パッド)を貼り付け可能で、回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある研磨定盤とを有する一般的な研磨装置が使用できる。例えば、株式会社荏原製作所製研磨装置:型番EPO111が使用できる。
【0038】
研磨定盤上の研磨布としては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。また、研磨布には研磨材がたまるような溝加工を施すことが好ましい。研磨条件に制限はないが、定盤の回転速度は半導体基板が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましく、半導体基板にかける圧力(加工荷重)は研磨後に傷が発生しないように1kg/cm(98kPa)以下が好ましい。研磨速度の被研磨面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、5kPa〜50kPaであることがより好ましい。
【0039】
基板の被研磨膜を研磨布に押圧した状態で研磨布と被研磨膜とを相対的に動かすには、具体的には基板と研磨定盤との少なくとも一方を動かせば良い。研磨定盤を回転させる他に、ホルダーを回転や揺動させて研磨しても良い。また、研磨定盤を遊星回転させる研磨方法、ベルト状の研磨布を長尺方向の一方向に直線状に動かす研磨方法等が挙げられる。なお、ホルダーは固定、回転、揺動のいずれの状態でも良い。これらの研磨方法は、研磨布と被研磨膜とを相対的に動かすのであれば、被研磨面や研磨装置により適宜選択できる。
【0040】
研磨している間、研磨布と被研磨膜の間にはスラリー状の本発明の研磨材をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨布の表面が常に研磨材で覆われていることが好ましい。具体的には、研磨布面積1cm当たり、0.005〜0.40ミリリットル供給されることが好ましい。
【0041】
研磨終了後の半導体基板は、流水中で良く洗浄後、スピンドライヤ等を用いて半導体基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。このように被研磨膜である無機絶縁層を上記研磨材で研磨することによって、表面の凹凸を解消し、半導体基板全面にわたって平滑な面とすることができる。
【0042】
本発明の研磨材及び研磨方法は、半導体基板に形成された酸化珪素膜の研磨だけでなく、各種半導体装置の製造プロセス内において適用することができる。すなわち、本発明の半導体装置の製造方法は、本発明の研磨材を使用して被研磨膜を研磨する工程、または本発明の研磨方法で被研磨膜を研磨する工程を含むことを特徴とする。本発明を適用できる被研磨膜として、例えば所定の配線を有する配線板に形成された酸化珪素膜、ガラス、窒化珪素等の無機絶縁膜、ポリシリコン、Al、Cu、Ti、TiN、W、Ta、TaN等を主として含有する膜、フォトマスク・レンズ・プリズムなどの光学ガラス、ITO等の無機導電膜、光集積回路・光スイッチング素子・光導波路を構成するガラス及び結晶質材料、光ファイバーの端面、シンチレータ等の光学用単結晶、固体レーザ単結晶、青色レーザLED用サファイヤ基板、SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶等が挙げられる。さらに磁気ディスク用ガラス基板、磁気ヘッド等の研磨工程にも本発明を適用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
硝酸セリウムアンモニウムの50重量%水溶液を二流体ノズルを用いて液滴化し(平均直径は推定数10μm)、この液滴を管状電気炉内に導入し900℃で約5秒間加熱を行い微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折精密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶の歪は0.51%であった。
【0045】
次に得られた酸化セリウム微粒子100g、ポリアクリル酸(重量平均分子量10000)1gを1kgの純水に分散させ、自然沈降法により分級し、純粋を添加して濃度調整を行い固形分濃度1重量%の研磨材とした。研磨装置(株式会社荏原製作所製EPO−111)を用いて直径(φ)200mmの酸化珪素絶縁膜付を形成させたシリコンウェハを研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は210nm研磨された。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡(1000倍)で観察したが、研磨傷は認められなかった。
【0046】
(実施例2)
酢酸セリウム・一水和物の10重量%水溶液を二流体ノズルを用いて液滴化し(平均直径は推定数十μm)、この液滴を管状電気炉内に導入し900℃で約5秒間加熱を行い微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折精密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶の歪は0.54%であった。
【0047】
次いで、得られた酸化セリウム微粒子を用いて、実施例1と同様に操作し研磨材を作製し、絶縁膜を研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は220nm研磨された。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡で観察したが、研磨傷は認められなかった。
【0048】
(実施例3)
硝酸セリウム・六水和物の20重量%水溶液を二流体ノズルを用いて液滴化し(平均直径は推定数十μm)、この液滴を管状電気炉内に導入し900℃で約5秒間加熱処理を行い、微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折精密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶子の歪は0.58%であった。
【0049】
次いで、得られた酸化セリウム微粒子を用いて、実施例1と同様に操作し研磨材を作製し、絶縁膜を研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は170nm研磨された。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡で観察したが、研磨傷は認められなかった。
【0050】
(実施例4)
水酸化セリウムの10重量%懸濁液を二流体ノズルを用いて液滴化し(平均直径は推定数十μm)、この液滴を管状電気炉内に導入し900℃で約5秒間加熱処理を行い、微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折設密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶の歪は0.45%であった。
【0051】
次いで、得られた酸化セリウム微粒子を用いて、実施例1と同様に操作し研磨材を作製し、絶縁膜を研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は170nm研磨された。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡で観察したが、研磨傷は認められなかった。
【0052】
(実施例5)
酸化セリウムの10重量%懸濁液を二流体ノズルを用いて液滴化し(平均直径は推定数十μm)、この液滴を電気炉内に導入し900℃で約5秒間加熱処理を行い、微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折精密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶の歪は0.10%であった。
【0053】
次いで、得られた酸化セリウム微粒子を用いて、実施例1と同様に操作し研磨材を作製し、絶縁膜を研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は230nm研磨された。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡で観察したが、研磨傷は認められなかった。
【0054】
(実施例6)
硝酸セリウムアンモニウムの50重量%水溶液を二流体ノズルを用いて液滴化し(平均直径は推定数十μm)、この液滴を火炎炉内に導入し2000℃以上で約1秒間加熱処理を行い、微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折精密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶の歪は0.10%であった。
【0055】
次いで、得られた酸化セリウム微粒子を用いて、実施例1と同様に操作し研磨材を作製し、絶縁膜を研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は200nm研磨された。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡で観察したが、研磨傷は認められなかった。
【0056】
(実施例7)
酢酸セリウム・一水和物の10重量%水溶液を二流体ノズルを用いて液滴化し(平均直径は推定数十μm)、この液滴を火炎炉内に導入し2000℃以上で加熱処理を行い、微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折精密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶の歪は0.06%であった。
【0057】
次いで、得られた酸化セリウム微粒子を用いて、実施例1と同様に操作し研磨材を作製し、絶縁膜を研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は250nm研磨された。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡で観察したが、研磨傷は認められなかった。
【0058】
(実施例8)
硝酸セリウムアンモニウムの1重量%水溶液を2.4MHzの振動子が備えられた超音波振動子を用いて液滴化し(平均直径は推定数3μm)、この液滴を管状電気炉内に導入し1000℃で約5秒間加熱処理を行い、微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折精密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶の歪は1.3%であった。
【0059】
次いで、得られた酸化セリウム微粒子を用いて、実施例1と同様に操作し研磨材を作製し、絶縁膜を研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は200nm研磨された。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡で観察したが、研磨傷は認められなかった。
【0060】
(実施例9)
硝酸セリウムアンモニウムの50重量%水溶液を二流体ノズルを用いて液滴化し(平均直径は推定数十μm)、この液滴をアルゴンプラズマ炉内に導入し約10000℃で約1秒間加熱処理を行い、微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折精密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶子の歪は0.002%であった。
【0061】
次いで、得られた酸化セリウム微粒子を用いて、実施例1と同様に操作し研磨材を作製し、絶縁膜を研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は270nm研磨された。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡で観察したが、研磨傷は認められなかった。
【0062】
(実施例10)
酢酸セリウムの10重量%水溶液を二流体ノズルを用いて液滴化し(平均直径は推定数十μm)、この液滴をアルゴンプラズマ炉内に導入し約10000℃で約1秒間加熱処理を行い、微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折精密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶の歪は0.014%であった。
【0063】
次いで、得られた酸化セリウム微粒子を用いて、実施例1と同様に操作し研磨材を作製し、絶縁膜を研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は280nm研磨された。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡で観察したが、研磨傷は認められなかった。
【0064】
(実施例11)
硝酸セリウムアンモニウムの1重量%水溶液を2.4MHzの振動子が備えられた超音波振動子を用いて液滴化し(平均直径は推定3μm)、この液滴を管状電気炉内に導入し700℃で約5秒間加熱処理を行い、微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折精密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶の歪は2.0%であった。
【0065】
次いで、得られた酸化セリウム微粒子を用いて、実施例1と同様に操作し研磨材を作製し、絶縁膜を研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は150nm研磨された。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡で観察したが、研磨傷は認められなかった。
【0066】
(実施例12)
硝酸セリウムアンモニウムの1重量%水溶液を2.4MHzの振動子が備えられた超音波振動子を用いて液滴化し(平均直径は推定3μm)、この液滴を管状電気炉内に導入し500℃で約5秒間加熱処理を行い、微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折精密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶の歪は2.5%であった。
【0067】
次いで、得られた酸化セリウム微粒子を用いて、実施例1と同様に操作し研磨材を作製し、絶縁膜を研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は110nm研磨された。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡で観察したが、研磨傷は認められなかった。
【0068】
(比較例1)
酢酸セリウム・一水和物の10重量%水溶液を二流体ノズルを用いて液滴化し(平均直径は推定数10μm)、この液滴を管状電気炉内に導入し290℃で約5秒間加熱処理を行い、微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折精密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶子の歪は3.7%であった。
【0069】
次いで、得られた酸化セリウム微粒子を用いて、実施例1と同様に操作し研磨材を作製し、絶縁膜を研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は100nmしか研磨されなかった。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡で観察したが、研磨傷は認められなかった。
【0070】
(比較例2)
硝酸セリウム水和物の10重量%水溶液を二流体ノズルを用いて液滴化し(平均直径は推定数10μm)、この液滴を管状電気炉内に導入し290℃で加熱処理を行い、微粒子100gを得た。この微粒子をX回折法で相同定を行なったところ酸化セリウムであることを確認した。また、得られた酸化セリウム微粒子について粉末X線回折精密測定を行い、その結果についてリートベルト解析を行った結果、結晶子の歪は3.3%であった。
【0071】
次いで、得られた酸化セリウム微粒子を用いて、実施例1と同様に操作し研磨材を作製し、絶縁膜を研磨したところ、1分間で酸化珪素膜は80nmしか研磨されなかった。研磨後のウェハ表面を光学顕微鏡で観察したが、研磨傷は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化合物を含有する溶液を微細に液滴化し、該液滴を加熱処理することによって作製された結晶の歪が3%以下であることを特徴とする金属酸化物微粒子。
【請求項2】
前記加熱処理を300℃以上で行なうことを特徴とする請求項1記載の金属酸化物微粒子。
【請求項3】
前記金属化合物が、金属の硝酸塩、硝酸アンモニウム塩、硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、炭酸塩、酢酸塩、しゅう酸塩、塩化物、アセチルアセトナート塩、アルコキシド、水酸化物、酸化物から選ばれる1種類以上の金属化合物であることを特徴とする請求項1記載の金属酸化物微粒子。
【請求項4】
前記金属酸化物が、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化アルミニウムから選ばれる1種類以上の金属酸化物であることを特徴とする請求項1記載の金属酸化物微粒子。
【請求項5】
前記金属酸化物が、セリウム、ジルコニウム、チタン、珪素、アルミニウムから選ばれる2種類以上の金属の複合酸化物であることを特徴とする請求項1記載の金属酸化物微粒子。
【請求項6】
二流体ノズル法、三流体ノズル法、超音波霧化法、静電霧化法、加熱霧化法、ガラスフィルター法又はこれらを組み合わせた方法によって前記金属化合物を含有する溶液を微細に液滴化することを特徴とする請求項1記載の金属酸化物微粒子。
【請求項7】
前記液滴の加熱処理が、電気炉、火炎炉、プラズマ炉から選ばれる1種類以上の反応炉内で行なわれることを特徴とする請求項1記載の金属酸化物微粒子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属酸化物微粒子を含んでなることを特徴とする研磨材。
【請求項9】
請求項8記載の研磨材を用いて、被研磨膜が形成された基板を研磨することを特徴とする基板の研磨方法。
【請求項10】
前記被研磨膜が、絶縁膜又は金属膜であることを特徴とする請求項9記載の基板の研磨方法。
【請求項11】
前記絶縁膜が、酸化珪素絶縁膜であることを特徴とする請求項10記載の基板の研磨方法。
【請求項12】
前記金属膜が、銅、アルミニウム、タングステン、タンタル、チタン、それらの金属化合物、それらの金属合金のいずれか1種類以上であることを特徴とする請求項10記載の基板の研磨方法。
【請求項13】
被研磨膜を請求項8記載の研磨材を使用して研磨する工程、または請求項9〜12のいずれか一項に記載の基板の研磨方法で研磨する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【公開番号】特開2007−153728(P2007−153728A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260661(P2006−260661)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】