説明

金属間化合物の成長の阻害方法

【課題】ボンディング工程の前にはんだとCuとの迅速な反応によって形成される金属間化合物の成長を制御し、ボンディング工程の後に金属間化合物の成長を阻害する方法を提供する。
【解決手段】(i)基板を含み、その上に少なくとも一層の金属パッドを堆積させた基板要素を調製する工程であって、金属パッドの層上に少なくとも一つの薄層のはんだが堆積させられ、その後リフロー処理を実施する工程;および(ii)基板要素上に適宜の厚さのはんだのバンプをさらに堆積させる工程を含む金属間化合物の成長の阻害方法であって、薄いはんだ層の適宜の熱処理の後に、薄いはんだ層と金属パッド中の金属との反応によって薄い金属間化合物が形成されることを特徴とする金属間化合物の成長の阻害方法。薄い金属間化合物の形成は、金属間化合物の成長を遅らせ、金属間化合物の変換を防ぐことが可能。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属間化合物の成長の阻害方法に関する。特に、薄いはんだ層と金属パッド層との反応によって形成される金属間化合物の成長を阻害する方法を示す。さらに、本発明は、フリップチップボンディング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ技術の開発においては、チップ上のコンポーネント密度を増す傾向にあり、相互接続はますます小さくなる。現在のところ、フリップチップボンディング工程におけるはんだバンプのサイズ(直径)は、約100μmである。図1、図2Aおよび図2Bを参照し、従来のフリップチップにおけるはんだバンプを示す。従来のはんだバンプの製造方法は、以下の工程:シリコン(Si)基板(11)上に、厚さ5μmのCuパッド層(12)を堆積させ;Cuパッド層(12)上に、厚さ3μmのNiパッド層(13)を堆積させ;そして、Niパッド層(13)上に、厚さ70〜100μmのはんだ(14)を堆積させる工程を含み、その結果、マイクロバンプを含む半導体チップ素子(1)が形成される。さらに、半導体チップ素子(1)はフリップチップ過程が施行され、即ち、半導体チップ素子(1)は素子(2)と相互接続するが、これはCuパッド層(22)およびNiパッド層(23)を有するシリコン基板(21)である。3D IC中のマイクロバンプ(図2B参照)等の小型バンプにおいて、マイクロバンプの総バンプ高は約20μmであり、ここで、はんだの厚さは10μm以下であり、上側および下側のCuパッド層またはNiパッド層(アンダーバンプ金属被覆、UBM)は、それぞれ約8μmである。少なくとも3回のリフロー処理であるボンディング工程により、またはしばらく使用することにより、はんだバンプは最終的には、全体として、Cu-Sn、Ni-SnまたはCu-Ni-Sn等の金属間化合物を有するバンプに変わるであろう。前記の金属間化合物は脆弱であり、はんだバンプの機械的特性に重大な影響を及ぼすことが判っている。例えば、素子が携帯製品に使用される場合、製品を落とすかぶつけると、バンプが破損する可能性がある。近年、上記の問題を改善するために、拡散障壁層として、マイクロバンプ上にNi層が堆積させられる。しかし、この方法のコストは高く、Niの高応力のため、バンプの機械的特性に対する悪影響が現れる。
【0003】
パッケージ技術において、はんだとしては、通常、スズはんだが使用される。初期のパッケージ産業において、共融のSnPbはんだは、溶融状態(約220℃)のCuまたはNiとボンディングされた。しかし、共融のSnPbはんだは、Cuと反応して、Cu3-Snおよび/またはCu6-Sn5等の金属間化合物を形成するであろう。鉛を含む物質は環境に有害であり、環境保護責任は重要性を増していることから、この種の物質である共融のSnPbは、フリップチップバンプにおいてはんだとして使用することが禁止されており、代わりに無鉛はんだが使用される。
【0004】
現在、すず−銀またはすず−銀−銅等の、融点が従来の共融SnPbはんだより約50℃高い、無鉛はんだが通常使用される。続いて、無鉛はんだは、250〜260℃でボンディング工程を行うべきである。しかし、多くの無鉛はんだはCuおよびNiと相対的に速く反応し、厚い金属間化合物(例えば、Cu-Sn化合物)を形成する。はんだバンプの機械的特性は良好であり、応力を吸収し得るが、形成されたCu-Sn金属間化合物は機械的特性(例えば脆性)が不十分である。従って、厚いCu-Sn金属間化合物を有する全体の構造が応力を受けた場合、Cu-Sn金属間化合物内部の脆弱破壊が容易に発生し、全体の構造の破壊が起こるであろう。
【0005】
CuはSnと迅速に反応し、反応およびその後の成長は室温でも起こる。金属間化合物(例えばCu6Sn5)の成長は、従来技術では阻止または制御できない。一般的に、大きなサイズのはんだバンプ(例えばフリップチップ中のはんだバンプ)において、はんだバンプ上に形成される金属間化合物は、機械的特性に大きな影響を与えないであろう。反対に、非常に小さいサイズのはんだバンプ(例えば、3D ICプロセスにおけるマイクロバンプ)では、典型的なフリップチップ過程において、マイクロバンプ上のはんだの体積がはんだバンプの体積の100倍だけである場合には、少なくとも10回のリフロー処理であるボンディング工程により、またはしばらく使用することにより、マイクロバンプは、Cu-Sn金属間化合物を有するバンプに迅速に変わるであろうが、この化合物は脆弱であり、マイクロバンプの機械的特性に大きく影響するであろう。
【0006】
現在のところ、この問題の解決方法は、拡散障壁層としてマイクロバンプ上にNi層を堆積させることである。しかし、この方法のコストは高く、Niの高応力のため、バンプの機械的特性に対する悪影響が現れる。
【0007】
他の先行技術では、同時スパッタリング法により、CuおよびNiを堆積させる。しかし、この方法のコストは高く、この方法を用いて、より厚いフィルムは形成することができない。加えて、無鉛はんだのCuおよびNiとの反応速度は、鉛を含むはんだのCuおよびNiとの反応速度よりはるかに速いため、この方法に無鉛はんだを使用することはできない。
【0008】
米国特許第6716738 B2号(特許日:2004年4月6日)には、「電気めっきによるフリップチップ相互接続のための多層UBMの製作方法(Method of fabrication multilayered UBM for flip chip interconnections by electroplating.)」が開示されている。この特許は、電流密度を調節することによってCu-Ni合金層を電気めっきする方法に関する。Cu-Ni合金層は、金属層の応力および成分を制御するために使用され、ここでNi層は反応障壁層として使用して、はんだとCuおよびNiとの反応によって形成される化合物の成長を阻害する。しかし、Cu層とNi層を同時に電気めっきする方法は煩雑であり、金属層の成分および応力は制御しにくい。金属層の収率および安定性は悪い。さらに、Cuもはんだと反応する。
【0009】
米国特許第6602777号(特許日:2003年8月5日)には、「はんだ接合における金属間化合物形成の制御方法(Method for controlling the formation of intermetallic compound in solder joints.)」が開示されている。この特許は、はんだ中のCu濃度を調節することによって制御されている、はんだとNi層との間の反応によって形成される金属間化合物(例えば(Cu1-xNix)6Sn5または(Ni1-yCuy)3Sn4)に関する。しかし、はんだおよびCuによって形成される金属間化合物の成長は、この方法では制御することができない。
【0010】
台湾特許第I338344号(特許日:2011年3月1日)には、「金属間化合物の成長を抑制するはんだバンプを有する半導体チップおよびその製作方法(Semiconductor chip with solder bump suppressing growth of inter-metallic compound and method of fabricating the same.)」が開示されている。この特許は、浸透層のどのような物質がはんだバンプに浸透して、はんだバンプを多成分はんだバンプに変化させ、その結果金属間化合物の成長を抑制するかに関する。しかし、Cu-Sn金属間化合物の抑制は制限される。
【0011】
公になっている文献(「Cuを有するSn(Cu)はんだとの反応によるNi(P)基板におけるNi3P結晶層の成長遅延(Retarding growth of Ni3P crystalline layer in Ni(P) substrate by reacting with Cu-bearing Sn(Cu) solders)」、S.J.ワン(Wang)、C.Y.リウ(Liu)、Scripta Materialia 49(2003年) 813-818頁)は、SN-Cuはんだ中のCu濃度を調節することによって制御されるはんだとNiとの反応に関し、その結果Ni3P形成が阻害される。しかし、Cu-SnまたはNi-Sn化合物の成長は阻害されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した通りの問題および不利益を改善するため、本発明は、はんだとCuとの間に形成される金属間化合物、即ち、ボンディング工程の前にはんだとCuとの迅速な反応によって形成される金属間化合物(例えばSn-Cu化合物)の厚さの成長を制御し、ボンディング工程の後に金属間化合物の厚さの成長を阻害する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、以下の工程:
(i) 以下を含む、基板要素を調製する工程:
(i-1) 基板上に少なくとも一層の金属パッドを堆積させること;
(i-2) 金属パッドの層上に少なくとも一つの薄層のはんだを堆積させた後、熱処理を実施して基板要素を得ることであって、熱処理は、液体中のリフロー処理または固体状態のエイジング過程であってもよく;および、基板要素上に適宜の厚さのはんだのバンプを堆積させること;および
(ii) 続いて、基板要素と他の要素とのボンディング工程を実施する工程
を含む、金属間化合物の成長の阻害方法を提供することである。
【0014】
本発明は、特に、パッケージ技術において、薄いはんだ層をCuパッドと反応させることによって形成される金属安化合物の成長の阻害に使用される。前記の本発明の方法では、チップボンディング工程の前に、はんだの薄層を基板上の金属パッド層上に堆積させ、その後、熱処理を実施する。さらに、以下のフリップチップボンディング工程を実施する。ここで、薄いはんだ層は、金属間化合物の特徴および形態を変化させるために金属パッド中の金属と反応して、先ず薄い金属間化合物を形成する。ボンディング工程の前に、薄い金属間化合物が薄いはんだ層と金属パッド中の金属との反応によって形成されるため、ボンディング工程後のはんだバンプの金属間化合物の形成速度が阻害される。
【0015】
図3を参照して、本発明による方法を図示するスキームを示す。金属パッドの層を基板上に堆積させ(工程:S201)、はんだの薄層を金属パッドの層上に堆積させ(工程:S301)、その後、高温熱処理を実施して、基板要素を得る。ここで、高温熱処理を実施した後、薄い金属間化合物が、薄いはんだ層と金属パッド中の金属との反応によって形成される(工程:S401)。その後、適宜の厚さのはんだのバンプを、基板要素上に堆積させる(工程:S501)。工程S101、S201、S301、S401およびS501によって基板要素を調製した時点で、以下のボンディング工程をさらに実施し得る(工程:S601)。
【0016】
本発明の方法において、薄いはんだ層と金属パッド中の金属との反応によって形成される薄い金属間化合物は、金属パッド中の金属原子がはんだと反応することを避けるように、金属パッドとはんだとのチャネルを減じることができ、また、はんだバンプから金属パッド中の金属を単離するために使用され、その結果、はんだバンプの金属間化合物の成長を効率的に阻害し得る。半導体素子(例えば半導体チップ)がフリップチップボンディング工程によって施行される場合、薄い金属間化合物が、先ず、はんだと基板上の金属パッドとの間に形成され、これは金属パッド中の金属原子のはんだバンプへの浸透を回避し得る。従って、リフロー処理または多リフロー処理後のはんだバンプの金属間化合物の形成が減少する。他方では、金属パッド中の金属原子の還元速度もまた低下する。
【0017】
本発明の別の目的は、
(A) 以下を含む基板要素
(A-1) 基板;
(A-2) 基板上に堆積させられる、少なくとも一層の金属パッド;
(A-3) 金属パッドの層上に堆積させられる、少なくとも一つの薄層のはんだ;および
(A-4) 基板要素上に堆積させられる、適宜の厚さのはんだのバンプ
を含む、フリップチップボンディング構造又ははんだの界面を提供することであって、
ここで、基板要素(A)は、リフロー処理によってフリップチップにおける他の基板要素と結合して、フリップチップボンディング構造を得ることができ、基板要素(A)は、フリップチップボンディング工程の前に、薄いはんだと金属パッド中の金属との反応によって形成される、連続的積層構造または類似の連続的積層構造を有する薄い金属間化合物を含む。
【0018】
本発明の構造において、薄い金属間化合物は、(相互接続する)はんだバンプから金属パッド中の金属を単離するために使用される。従って、はんだバンプの金属間化合物の成長が効率的に阻害される。
【0019】
本発明において、金属パッドまたははんだの層を堆積させる方法は、本書では制限されず、銅を硫酸銅溶液によって堆積させる、およびSn-Agはんだを、Sn2P2O7およびAgIの溶液によって堆積させるなどの、従来技術におけるあらゆる堆積技術であり得る。
【0020】
本発明において、基板は本書では制限されず、本発明の実施態様による、半導体チップ、シリコンチップ、ポリマー、またはガラスであり得る。
【0021】
本発明において、金属パッドの金属は本書では制限されず、銅、ニッケル、金、またはそれらの合金であり得るが、好ましくは本発明の実施態様による銅である。本発明による金属パッドの厚さの範囲は、数μmから100μmであってもよい。
【0022】
本発明において、はんだは本書では制限されず、無鉛はんだであり得るが、好ましくは本発明の実施態様による無鉛はんだである。
【0023】
前記の薄いはんだ層は4μm以下であってもよく、本発明の実施態様では好ましくは2μmである。本発明において、はんだバンプの厚さは100μm以下であり、ボンディング工程の後、好ましくは20μmである。
【0024】
本発明による金属間化合物の成長の阻害方法は、特に、3D IC産業(例えば3D ICパッケージ技術)、中央演算処理装置(CPU)、携帯電話、画像処理チップ、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)等の分野において使用される。
【0025】
本発明の他の目的、利点、および新規な特徴は、添付した図面と組み合わせ、以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、フリップチップにおける従来のはんだバンプの概略図であり;
【図2A】図2Aは、フリップチップにおける従来のはんだバンプのSEM断面像であり;
【図2B】図2Bは、厚さが20μmのフリップチップにおける従来のマイクロバンプのSEM断面像であり;
【図3】図3は、本発明による方法を図示するスキームであり;
【図4】図4Aは、本発明の方法による薄いはんだ層を有する基板要素の実施態様の概略図であり; 図4Bは、本発明の方法によるはんだ層を有する基板要素の実施態様の概略図であり;
【図5】図5Aは、本発明の方法による、厚さが2μmの薄いはんだ層を堆積させた、厚さが5μmのCuパッドのSEM断面像であり; 図5Bは、本発明の方法による、厚さが2μmの薄いはんだ層を堆積させた、厚さが5μmのCuパッドのSEM断面像であって、薄いはんだ層を有するCuパッドは、260℃で10分間、リフロー処理を実施したものであり;
【図6】図6Aは、本発明の方法による、適宜の厚さのはんだ層を有する2μmのSnAg試料のSEM断面像であり、10分間のプレリフロー処理の後、厚さが20μmのはんだバンプを2μmのSnAg試料上にさらに堆積させ、さらに第二のリフロー処理を260℃で1分間実施したものであり; 図6Bは、本発明の方法による、適宜の厚さのはんだ層を有する2μmのSnAg試料のSEM断面像であり、10分間のプレリフロー処理の後、厚さが20μmのはんだバンプを2μmのSnAg試料上にさらに堆積させ、さらに第二のリフロー処理を260℃で5分間実施したものであり; 図6Cは、本発明の方法による、適宜の厚さのはんだ層を有する2μmのSnAg試料のSEM断面像であり、10分間のプレリフロー処理の後、厚さが20μmのはんだバンプを2μmのSnAg試料上にさらに堆積させ、さらに第二のリフロー処理を260℃で10分間実施したものであり;
【図7】図7Aは、本発明の方法による、19μmのSnAg試料のSEM断面像であり、19μmのSnAg試料は、リフロー処理を260℃で1分間実施したものであり; 図7Bは、本発明の方法による、19μmのSnAg試料のSEM断面像であり、19μmのSnAg試料は、リフロー処理を260℃で5分間実施したものであり; 図7Cは、本発明の方法による、19μmのSnAg試料のSEM断面像であり、19μmのSnAg試料は、リフロー処理を260℃で10分間実施したものであり;
【図8】図8は、リフロー時間を260℃で増加させたときの、Cu-Sn金属間化合物の厚さの変化図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本書では以下に、実施態様を参照して、本発明を詳細に記載する。しかし、本発明は、多数の異なる形態で具体化されてもよく、本書に示す実施態様に制限されるものとして解釈すべきではない。むしろ、これらの実施態様は、当業者に本発明の概念を完全に伝達するために提供される。
【0028】
初めに、2μmのSnAg/Cuパッド試料であって、薄いはんだ層を有する試料を調製する。
【0029】
薄いはんだ層を有する第一の試料(2μmのSnAg試料)およびはんだ層を有する第二の試料(19μmのSnAg試料)を調製する。
【0030】
図4Aを参照して、薄いはんだ層を有する第一の試料である、2μmのSnAg試料を、以下の工程によって調製する:
【0031】
初めに、第一の基板(31)としてシリコンチップを使用し、その上に、厚さが5μmの第一のCuパッド(Cu UBM)(321、322、32n;以下本書では「32」と記す)を堆積させる。厚さが2μmのSnAg無鉛はんだ層(331、332、33n;以下本書では「33」と記す)を、第一のCuパッド(32)の上に堆積させる。その後、リフロー処理を260℃で10分間実施する。無鉛はんだのリフローおよび冷却工程の後、Cuと無鉛はんだの反応によって、第一の薄いCu-Sn金属間化合物(Cu-Sn IMC)が形成され、その結果、2μmのSnAg試料が得られる。
【0032】
図4Bを参照し、はんだ層を有する第二の試料である、19μmのSnAg試料を調製する。
【0033】
第二の基板(41)として他のシリコンチップを使用し、その上に、厚さが20μmの第二のCuパッド(Cu UBM)(421、422、42n;以下本書では「42」と記す)を堆積させる。厚さが19μmのSnAg無鉛はんだ層(431、432、43n;以下本書では「43」と記す)を、第二のCuパッド(42)上に堆積させる。その後、リフロー処理を260℃で1〜10分間実施する。無鉛はんだのリフローおよび冷却工程の後、Cuと無鉛はんだの反応によって、第二のCu-Sn金属間化合物(Cu-Sn IMC)が形成され、その結果、19μmのSnAg試料が得られる。
【0034】
上記の工程において、ボンディング工程の前に、第一のCuパッド中のCu原子と薄いはんだ層(33)との反応によって、薄いCu-Sn金属間化合物が形成され、ここで、薄いCu-Sn金属間化合物は、Cu原子が薄いCu-Sn金属間化合物を通ってはんだと反応するのを阻害することができ、その結果、第一のCuパッド(32)は、はんだバンプ(相互接続)から単離される。
【0035】
本発明の実施態様において、前記の試料の構造の断面像の検出にはSEMを使用し、リフロー処理を260℃で5分および10分実施して、はんだバンプを試験する。
【0036】
図5Aおよび5Bを参照して、前記の2μmのSnAg試料を示す。図5Aは、上述の通り調製した2μmのSnAg試料のSEM断面像を示す。図5Bは、10分間のリフロー処理の後の、2μmのSnAg試料のSEM断面像を示す。10分間のリフロー処理の後、上記の無鉛はんだは完全に反応してCu-Sn金属間化合物となることが明らかに観察される。Cu-Sn金属間化合物の構造は、積層構造である。従って、積層構造のCu-Sn金属間化合物は、以下のボンディング工程の間、Cu原子がはんだの障壁層中に浸透するのを阻害するために使用される。
【0037】
図6A、6Bおよび6Cを参照して、260℃で10分間のプレリフロー処理の後に、厚さが20μmのはんだバンプを2μmのSnAg試料の上に堆積させ、その後、第二のリフロー処理を260℃で実施する。1分間(図6A)、5分間(図6B)および10分間(図6C)の第二のリフロー処理の後の、2μmのSnAg試料のSEM断面像をそれぞれ示す。図6Cに示す通り、薄いCu-Sn金属間化合物は、10分間の第二のリフロー処理の後、積層構造を維持する。従って、薄いCu-Sn金属間化合物はCu原子がはんだ中に浸透するのを阻害することができ、その結果Cu原子ははんだと反応することが困難である。
【0038】
他の側面において、試験結果から、薄いはんだ層をCuパッド上に最初に堆積させない場合、Cu-Sn金属間化合物は比較的速く成長することが示される。1分間(図7A)、5分間(図7B)および10分間(図7C)のリフロー処理後の、19μmのSnAg試料のSEM断面像をそれぞれ示す。図7A、7Bおよび7Cを参照して、Cu-Sn金属間化合物の厚さが、リフロー時間が長くなるにつれて大きくなることが示される。Cu-Sn金属間化合物の形状は半円であり、その結果、Cu原子は、Cu-Sn金属間化合物を通ってはんだ中に容易に浸透し、はんだと反応する。従って、Cu-Sn金属間化合物の厚さは、リフロー時間が長くなるにつれて、有意に大きくなる。
【0039】
図8を参照して、リフロー時間の延長に対するCu-Sn金属間化合物の厚さを表す、変化図を示す。図8に示す通り、2μmのSnAg試料のCu-Sn金属間化合物は、既に10分間のプレリフロー処理を実施しているが、第二のリフロー時間の延長に対して、Cu-Sn金属間化合物の厚さは有意に大きくならず、約0.2μmしか大きくならない。しかし、19μmのSnAg試料のCu-Sn金属間化合物の厚さは、10分間のリフロー処理の後、1.6μm大きくなる。従って、このことから、Cu-Sn金属間化合物の厚さの成長は、本発明の方法によって、ボンディング工程の前に金属パッド上に堆積させた薄いはんだ層によって阻害され得ることが明らかになる。一方、Cuパッドは、はんだバンプスから単離され、その結果、Cuパッドの厚さ低減速度は明らかに減少する。
【0040】
加えて、本発明の金属間化合物の成長を阻害する方法では、金属間化合物の成長を阻害するメカニズムは、以下の理由によって引き起こされる:
【0041】
(1)ボンディング工程の前に、薄いはんだを金属パッド上に堆積させない場合、類似の半円構造を有するCu-Sn金属間化合物(例えばCu6Sn5化合物)が形成されるであろう。1分間のリフロー処理の後の、19μmのSnAg試料におけるCu-Sn金属間化合物の形状を、図7Aに示す。Cu-Sn金属間化合物の形状を観察するため、19μmのSnAg試料のはんだバンプの残渣を、エッチング溶液によってエッチングする。半円構造を有するCu6Sn5には多数のチャネルがあり、その結果、Cu原子ははんだ中に浸透することができ、チャネルを通ってはんだと反応する。
【0042】
さらに、本発明の方法の通り、ボンディング工程の前に、薄いはんだ層を金属パッド上に堆積させる。10分間のプレリフロー処理の後、2μmのSnAg試料上に、ほとんどチャネルのない、類似の積層構造を有するCu6Sn5またはCu3Sn化合物を形成する。はんだはわずか2μmであり、10分間のリフロー処理の後、完全に消費され、その結果、Cu-Sn金属間化合物におけるチャネルは閉じられる。従って、適宜の厚さを有するはんだを2μmのSnAg試料上にさらに堆積させる場合、Cu原子の2μmのSnAg試料上のはんだとの反応を効率的に阻害し得る。
【0043】
(2)薄いはんだ層は、厚さが非常に薄く(例えば、わずか2μm)、リフロー処理の後、完全に消費される。Cu6Sn5化合物は、全体的または部分的に、積層構造を有するCu3Sn化合物に変換され得る。内在するCuは、はんだ中に容易には浸透せず、その結果、Cu原子とはんだとの反応を効率的に阻害することができ、Cu-Sn金属間化合物の厚さの成長も阻害することができる。
【0044】
本発明の方法は、上記の実施態様により、金属間化合物の成長を阻害することが明らかになる。金属間化合物の成長を阻害し得た時点で、Snウィスカーの成長もまた阻害し得る。従って、本発明は、Snウィスカーの成長を阻害するために使用される。
【0045】
本発明を、好ましい実施態様に関連して説明したが、以下に特許請求の範囲に記載された通りの本発明の精神および範囲を逸脱することなく、多数の他の可能な修飾および変化をなし得ることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(i)以下を含む、基板要素を調製する工程:
(i-1)基板上に少なくとも一層の金属パッドを堆積させること;
(i-2)金属パッドの層上に少なくとも一つの薄層のはんだを堆積させた後、熱処理を実施して基板要素を得て;基板要素上に適宜の厚さのはんだのバンプを堆積させること;および
(ii)続いて、基板要素と他の要素とのボンディング工程を実施する工程
を含み、
フリップチップボンディング工程の前に、薄いはんだ層の熱処理の後、薄いはんだ層と金属パッド中の金属との反応によって、薄い金属間化合物が形成される、金属間化合物の成長の阻害方法。
【請求項2】
基板が半導体チップまたはシリコンチップである、請求項1に記載の金属間化合物の成長の阻害方法。
【請求項3】
金属パッド中の金属が銅である、請求項1または2に記載の金属間化合物の成長の阻害方法。
【請求項4】
はんだが無鉛はんだである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属間化合物の成長の阻害方法。
【請求項5】
薄いはんだ層の厚さが4μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属間化合物の成長の阻害方法。
【請求項6】
(B)以下を含む基板要素
(A-1)基板;
(A-2)基板上に堆積させられる、少なくとも一層の金属パッド;
(A-3)金属パッドの層上に堆積させられる、少なくとも一つの薄層のはんだ;および
(A-4)薄いはんだ層の熱処理の後に、基板要素上に堆積させられる、適宜の厚さのはんだのバンプ
を含む、フリップチップボンディング構造であって、
基板要素(A)が、フリップチップボンディング工程の前に、熱処理の後、薄いはんだ層と金属パッド中の金属との反応によってその上に形成される、連続的積層構造を有する薄い金属間化合物を含むことを特徴とする、構造。
【請求項7】
基板が半導体チップまたはシリコンチップである、請求項6に記載の構造。
【請求項8】
金属パッド中の金属が銅である、請求項6又は7に記載の構造。
【請求項9】
はんだが無鉛はんだである、請求項6〜8のいずれか1項に記載の構造。
【請求項10】
薄いはんだ層の厚さが4μm以下である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の構造。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−38418(P2013−38418A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−163896(P2012−163896)
【出願日】平成24年7月24日(2012.7.24)
【出願人】(511193400)ナショナル チャオ ツン ユニヴァーシティー (4)
【Fターム(参考)】